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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005980
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】吸水性樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240110BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240110BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/532 200
A61F13/15 142
A61F13/511 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106494
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茜
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB17
3B200BB24
3B200DA12
3B200DB18
3B200DC02
(57)【要約】
【課題】吸収性樹脂シートにおいて、抗菌剤の機能を効果的に発揮させる。
【解決手段】おむつ200の吸収体150よりも着用者の肌に近い側に配置される、SAP10を厚さ方向Dに不織布シート30で挟んだSAPシート100であって、厚さ方向Dに直交する平面視でそれぞれ仕切られた複数の区画41,42を形成し、SAP10の目付量が相対的に高いSAP高目付区画である区画41とSAP10の目付量が相対的に低いSAP低目付区画である区画42とを有し、抗菌剤20の目付量が相対的に高い高目付領域と目付量が相対的に低い低目付領域とを有し、SAP高目付区画と抗菌剤高目付領域とが、平面視で7割以上の重なりで形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の吸収体よりも着用者の肌に近い側に配置される、高吸収性樹脂を厚さ方向に液透過性シートで挟んだ吸収性樹脂シートであって、
前記厚さ方向に直交する平面視でそれぞれ仕切られた複数の区画を形成し、
前記複数の区画は、前記高吸収性樹脂の目付量が相対的に高い吸収性樹脂高目付区画と、前記高吸収性樹脂の目付量が相対的に低い吸収性樹脂低目付区画と、を有し、
抗菌剤は、前記区画に又は前記液透過性シートのうち前記着用者の肌から遠い側の液透過シートに配置され、前記平面視で、前記抗菌剤の目付量が相対的に高い抗菌剤高目付領域と、前記抗菌剤の目付量が相対的に低い抗菌剤低目付領域と、を有し、
前記吸収性樹脂低目付区画と前記抗菌剤高目付領域とが、前記平面視で7割以上の重なりで形成されている吸収性樹脂シート。
【請求項2】
前記吸収性樹脂高目付区画と前記抗菌剤低目付領域とが、前記平面視で7割以上の重なりで形成されている、請求項1に記載の吸収性樹脂シート。
【請求項3】
前記吸収性樹脂高目付区画は、前記着用者に着用された際の前記着用者の左右方向に対応した幅方向に沿って、分散して形成されている、請求項2に記載の吸収性樹脂シート。
【請求項4】
前記吸収性樹脂低目付区画は前記吸収性樹脂高目付区画に比べて、前記着用者の肌に近い側に向いた高さが低く形成されている、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の吸収性樹脂シート。
【請求項5】
前記吸収性樹脂高目付区画と前記吸収性樹脂低目付区画との間を仕切る複数の仕切り部のうち少なくとも一部は、前記吸収性樹脂高目付区画と前記吸収性樹脂低目付区画との間を仕切る複数の仕切り部のうち他の一部、または前記吸収性樹脂低目付区画同士の間を仕切る仕切り部に比べて、破断し易く設定されている請求項1から3のうちいずれか1項に記載の吸収性樹脂シート。
【請求項6】
前記着用者に着用された際の前記着用者の左右方向に対応した幅方向に沿って、少なくとも1つの前記吸収性樹脂低目付区画が形成され、
前記少なくとも1つの前記吸収性樹脂低目付区画の、前記幅方向における仕切り部は、前記複数の仕切り部のうち破断し易く設定されている前記少なくとも一部の仕切り部に比べて、破断し難く設定されている、請求項5に記載の吸収性樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等や、使い捨ておむつ等の内側に重ねて配置して使用される補助吸収パッドなどの各種吸収性物品には、いわゆる吸水性樹脂シート(以下、SAPシートともいう)を備えたものがある。SAPシートは、高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を、表面側の液透過性シートと裏面側の液透過性シートとで厚さ方向に挟んでシート状に形成されたものである。
【0003】
上述した各種吸収性物品が備えている吸収体は、繊維質のパルプにSAPを絡めて分散して配置したものであるが、この吸収体にSAPシートを重ねて配置することで、着用者の排尿をより多く吸収することができ、吸収性物品を長時間着用することが可能となる。
【0004】
なお、SAPシートは、吸収性物品が備えている吸収体よりも、厚さ方向において着用者の肌に近い側(以下、肌面側という。)に配置される。
【0005】
ところで、吸収性物品で吸収した排尿に対する菌の増殖を抑えるための抗菌剤や、臭いの拡散を抑える消臭剤を、吸収性物品に含ませたものが知られている。
【0006】
そのような例として、凹凸形状を有し、凸部に機能材(SAP、パルプ、制臭剤)を混合して備え、裏面側(着用者の肌から遠い面側)のシートが伸縮性を有する複合シート(特許文献1)、消臭材料と吸収体コアとの間に液透過性シートを配置して、消臭材料と吸収体コアと分離しているもの(特許文献2)、SAPを含むシートにカチオン性多糖類を混合や噴霧で振りかけることで経血の吸収を促進するもの(特許文献3)、親水性の抗菌剤を長手方向に連続して配置し、吸収体の溝部と重なる領域よりも吸収体の非溝部と重なる領域において抗菌剤の目付量を高くしたもの(特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-130819号公報
【特許文献2】特開2020-130951号公報
【特許文献3】特開2011-520531号公報
【特許文献4】特開2021-029928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、吸収物品に抗菌剤を配置する場合は、吸収体に保持される尿と多く接触させることで抗菌の機能を発揮させるために、抗菌剤を吸収体の付近に配置することが好ましい。また、抗菌剤をより広く拡散させるために、抗菌剤を、吸収体よりも肌面側に配置し、着用者から排出された尿の流れによって、尿とともに拡散されるように配置するのが好ましい。
【0009】
しかし、SAPシートに抗菌剤を配置する場合、SAPシートに一様に抗菌剤を配置した構成では、SAPが尿を吸収することで膨張したとき、その後に排出された尿は膨張したSAPの領域を流れることができなくなる。このため、膨張したSAPの領域に配置された抗菌剤は、吸収体に拡散し難くなり、SAPシートに設けられた抗菌剤の機能を効果的に発揮させることができない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、抗菌剤の機能を効果的に発揮させることができる吸収性樹脂シート(SAPシート)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、吸収性物品の吸収体よりも着用者の肌に近い側に配置される、高吸収性樹脂を厚さ方向に液透過性シートで挟んだ吸収性樹脂シートであって、前記厚さ方向に直交する平面視でそれぞれ仕切られた複数の区画を形成し、前記複数の区画は、前記高吸収性樹脂の目付量が相対的に高い吸収性樹脂高目付区画と、前記高吸収性樹脂の目付量が相対的に低い吸収性樹脂低目付区画と、を有し、抗菌剤は、前記区画に又は前記液透過性シートのうち前記着用者の肌から遠い側の液透過シートに配置され、前記平面視で、前記抗菌剤の目付量が相対的に高い抗菌剤高目付領域と、前記抗菌剤の目付量が相対的に低い抗菌剤低目付領域と、を有し、前記吸収性樹脂低目付区画と前記抗菌剤高目付領域とが、前記平面視で7割以上の重なりで形成されている、吸収性樹脂シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る吸収性樹脂シートによれば、抗菌剤の機能を効果的に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】SAPシートを備えた吸収性物品の一例である使い捨ておむつの両側部を前後に分離して展開した図である。
図2図1におけるA-A線に沿った面による使い捨ておむつの断面図である。
図3図1,2における実施形態1のSAPシートを示す平面図である。
図4図3におけるB-B線に沿った面によるSAPシートの断面図である。
図5】尿が流れ込んだ後のSAPシートを示す、図4相当の断面図である。
図6】実施形態1の変形例のSAPシートを示す図4相当の断面図である。
図7】実施形態2のSAPシートを示す図3相当の平面図である。
図8】実施形態2の変形例のSAPシートを示す図7相当の平面図である。
図9】実施形態3のSAPシートを示す図4相当の断面図である。
図10】実施形態3のSAPシートにおけるSAPの高目付領域の区画のSAPが膨張した状態を示す図9相当の断面図である。
図11】実施形態3のSAPシートにおけるSAPの高目付領域の区画のSAPがさらに膨張して弱接合部が破断した状態を示す図10相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明に係る吸収性樹脂シートの実施形態に関するものである。
【0015】
図1はSAPシート100を備えた吸収性物品の一例である使い捨ておむつ200の両側部を前後に分離して展開した図、図2図1におけるA-A線に沿った面による使い捨ておむつ200の断面図、図3図1,2における実施形態1のSAPシート100を示す平面図、図4図3におけるB-B線に沿った面によるSAPシート100の断面図、図5は尿が流れ込んだ後のSAPシート100を示す、図4相当の断面図である。図示のSAPシート100は、本発明に係る吸収性樹脂シートの一実施形態である。
【0016】
<実施形態1>
図1に示した使い捨ておむつ200(以下、単におむつ200という)は、腹側部110、股部120及び背側部130が長手方向Lに連なって形成されている。腹側部110は、おむつ200の着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。なお、おむつ200が着用者に着用された状態で、着用者の左右方向がおむつ200及びSAPシート100の幅方向Wとする。
【0017】
本実施形態のSAPシート100は、図1に示すように、おむつ200の、例えば背側部130に重ねて配置される。なお、SAPシート100は、背側部130に重ねて配置されるものに限定されず、腹側部110に重ねて配置されてもよいし、股部120に重ねて配置されてもよいし、又は、腹側部110、股部120及び背側部130の2か所以上にそれぞれ別々に配置され、又は2か所以上に亘る大きさで単一のものとして配置されてもよい。
【0018】
おむつ200は、図2において厚さ方向Dの、着用者の肌面側に配置されたトップシート141に、着用者の肌が接するように着用される。したがって、SAPシート100は、着用者に着用された状態のおむつ200において、おむつ200が備えた通常の吸収体150よりも、着用者の肌に近い側、つまりトップシート141に近い側に配置される。
【0019】
ここで、おむつ200が備えた通常の吸収体150は、液透過性のトップシート141と液不透過性のバックシート142との間に配置され、繊維質のパルプに粒状のSAP(高吸収性樹脂)を絡めて分散して配置したものである。吸収体150は、一例として、トップシート141に近い上層吸収体151とバックシート142に近い下層吸収体152とが相当する。
【0020】
本実施形態のSAPシート100は、図2に示すように、粒子状のSAP10と粒子状の抗菌剤20を、不織布シート30で厚さ方向Dに挟んで包み、シート状の一体物に形成したものである。不織布シート30は液透過性シートの一例であり、液透過性を有するシートであれば、不織布で形成されていなくてもよい。
【0021】
SAPシート100がおむつ200に配置された状態で、不織布シート30のうち着用者の肌に近い側(トップシート141に近い側)に配置されたものを不織布シート31、着用者の肌から遠い側(バックシート142に近い側)に配置されたものを不織布シート32と区別するものとする。
【0022】
また、SAPシート100は、図3,4に示すように、厚さ方向Dに直交する平面視で仕切られた複数の区画41,42を形成している。これらの区画41,42は、区画41,42として仕切られる領域の縁部における、上面側の不織布シート31と下面側の不織布シート32とを熱融着で接合することによって形成されている。
【0023】
つまり、区画41,42として仕切られた領域は、不織布シート31と不織布シート32との間に空間が形成され、一方、区画41,42を仕切っている部分は、不織布シート31と不織布シート32とが接合されているため不織布シート31と不織布シート32との間に空間がない。なお、不織布シート31と不織布シート32とが熱融着で接合された接合部43は、液不透過性となって尿が通過しない部分となる。
【0024】
区画41と区画42は、それそれ、図3に示すように長手方向Lに沿って延びた細長い形状に形成され、かつ、区画41と区画42は、おむつ200の幅方向Wに沿って交互に配列されている。
【0025】
なお、図4に示したSAPシート100の断面図においては、接合部43を、不織布シート31と不織布シート32との間を繋ぐ壁部で表しているが、これは、図示の簡略化のためであり、接合部43として表示した壁部は、不織布シート31と不織布シート32とが接合されている部分であるため、実際には、壁部ではない。ただし、接合部43を、不織布シート31と不織布シート32とに接合される壁部を形成することで、区画41,42を仕切ることを排除するものではない。
【0026】
区画41は区画42に比べて、SAP10の目付量(単位面積当たりの含有重量[g/m])が高く、かつ抗菌剤20の目付量が低くなるように、SAP10及び抗菌剤20が配置されている。つまり、区画41はSAP10の目付量が相対的に高く、区画42はSAP10の目付量が相対的に低い。一方、区画41は抗菌剤20の目付量が相対的に低い領域であり、区画42は抗菌剤20の目付量が相対的に高い領域である。
【0027】
SAP10の目付量が相対的に高い目付量としては、一例として130~300[g/m]であり、SAP10の目付量が相対的に低い目付量としては、一例として0~200[g/m]である。
【0028】
なお、SAP10の相対的に低い目付量を例えば200[g/m]とした場合、SAP10の相対的に高い目付量は200[g/m]を超える、例えば201~300[g/m]であり、SAP10の相対的に高い目付量を例えば130[g/m]とした場合、SAP10の相対的に低い目付量は130[g/m]に満たない、例えば0~129[g/m]である。
【0029】
抗菌剤20については、抗菌剤20の効果を発揮する重量が、抗菌剤20の種類に応じて大きな幅があるため、具体的な目付量の数値は、抗菌剤20の種類に応じて設定される。
【0030】
したがって、SAPシート100は、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域はいずれも区画41であるから、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域は、平面視での重なりが10割となっている。また、SAPシート100は、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域はいずれも区画42であるから、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域は、平面視での重なりが10割となっている。
【0031】
区画41と区画42は、それそれ、図3に示すように長手方向Lに沿って延びた細長い形状に形成され、かつ、区画41と区画42は、おむつ200の幅方向Wに沿って交互に配列されている。
【0032】
以上のように構成されたSAPシート100を備えたおむつ200の作用は、以下の通りである。図4に示すように着用者から排出された尿が、不織布シート31を通じてSAPシート100に流れ込んだとき、区画41においては、尿に接した抗菌剤20が尿に溶けて抗菌作用を発揮する。
【0033】
また、尿は区画41を通る間に、区画41のSAP10にある程度吸収され、図5に示すように、SAP10は次第に膨張する。区画41はSAP10の高目付領域であるため、尿の通過量が増えると、尿を吸収して膨張したSAP10が区画41内を満たし、尿の流れるべき通路が遮られて区画41内を通過し難くなる。この結果、区画41に流れ込むべき尿は、図5の曲がった矢印で示すように、区画41に隣接する区画42に流れ込む。
【0034】
一方、着用者から排出された尿が、SAPシート100に流れ込んだとき、区画42においては、尿に接した抗菌剤20が尿に溶けて抗菌成分による抗菌作用を発揮する。
【0035】
また、尿は区画42を通る間に、区画42のSAP10にある程度吸収され、SAP10は次第に膨張する。区画42はSAP10の低目付領域であるため、尿の通過量が増えても、膨張したSAP10が区画42内を満たすことがない。つまり、区画42は、SAP10が最も膨張した後も、尿の通過を遮ることがない。この結果、区画42は、隣接する区画41に流れ込めなくなった尿を通過させることができる。
【0036】
これにより、SAPシート100は、尿を、区画42において高目付の抗菌剤20と接触させ易くすることができ、抗菌剤20の抗菌成分を吸収体150に拡散させ易い。
【0037】
以上、詳細に説明したように、本実施形態1のSAPシート100は、抗菌剤20を、吸収体150よりも着用者の肌面側に配置しているため、着用者から排出された尿に抗菌剤20を接触させ易くことができる。また、SAPシート100は、SAP10が膨張した後も、尿の流れを遮ることがなく、しかも、その尿の流れを遮ることのない領域で、尿を抗菌剤20に接触させることができるため、SAPシート100に設けられた抗菌剤20の機能を効果的に発揮させることができる。
【0038】
実施形態1のSAPシート100は、区画42にもSAP10を配置した構成であるが、区画42にはSAP10を配置しなくてもよい。つまり、区画42は抗菌剤20のみを配置した構成としてもよい。つまり、SAP10の低目付領域は、SAP10の目付量が0であることも含む。
【0039】
一方、区画41については、抗菌剤20を配置しないでSAP10のみを配置した構成としてもよいが、この場合、SAP10が膨張して区画41を尿が流れなくなる前に、区画41を通過した尿の抗菌ができないため、区画41には、抗菌剤20を配置したものとするのが好ましい。つまり、抗菌剤20は、SAPシート100の尿が通過しうる領域、すなわち、接合部43を除いた他の領域の全面に亘って配置することが好ましい。
【0040】
本実施形態のSAPシート100は、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域は、平面視での重なりが10割となっているが、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域は、平面視での重なりが7割以上であればよい。この程度の重なりであれば、SAP10が膨張しても尿の流れを確保して抗菌剤20の効果的に拡散させることができる。この点は、後述する実施形態のSAPシートにおいても同じである。
【0041】
なお、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域との平面視での重なりが7割以上とは、SAP10の低目付領域が抗菌剤20の高目付領域よりも面積が広く形成されている場合は、面積が小さい方の抗菌剤20の高目付領域の面積を基準として、抗菌剤20の高目付領域の面積の7割以上にSAP10の低目付領域が重なっていることを示す。
【0042】
これとは反対に、SAP10の低目付領域が抗菌剤20の高目付領域よりも面積が狭く形成されている場合、SAP10の低目付領域と抗菌剤20の高目付領域との平面視での重なりが7割以上とは、面積が小さい方のSAP10の低目付領域の面積を基準として、SAP10の低目付領域の面積の7割以上に抗菌剤20の高目付領域が重なっていることを示す。
【0043】
また、本実施形態のSAPシート100は、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域は、平面視での重なりが10割となっているが、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域は、平面視での重なりが7割以上であることが好ましい。この点も後述する実施形態のSAPシートにおいても同じである。
【0044】
なお、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域との平面視での重なりが7割以上とは、SAP10の高目付領域が抗菌剤20の低目付領域よりも面積が広く形成されている場合は、面積が小さい方の抗菌剤20の低目付領域の面積を基準として、抗菌剤20の低目付領域の面積の7割以上にSAP10の高目付領域が重なっていることを示す。
【0045】
これとは反対に、SAP10の高目付領域が抗菌剤20の低目付領域よりも面積が狭く形成されている場合、SAP10の高目付領域と抗菌剤20の低目付領域との平面視での重なりが7割以上とは、面積が小さい方のSAP10の高目付領域の面積を基準として、SAP10の高目付領域の面積の7割以上に抗菌剤20の低目付領域が重なっていることを示す。
【0046】
本実施形態のSAPシート100は、SAP10も抗菌剤20も粒状の固体のものを適用したが、抗菌剤20は液状であってもよい。すなわち、抗菌剤20として適用し得るものは、無機系の抗菌剤と有機系の抗菌剤とがある。無機系の抗菌剤は、一般的に、常温で固体であるが、有機系の抗菌剤は、常温で液状のものが多い。
【0047】
そして、固体の抗菌剤は、上述した粒状に形成して区画41,42内に収容して配置することができるが、液状の抗菌剤は、区画41,42内に収容した状態とすることはできない。
【0048】
したがって、抗菌剤20として有機系の抗菌剤を適用した場合は、抗菌剤20を区画41,42内に収容して配置するのではなく、SAPシート100の不織布シート30のうち着用者の肌から遠い側の不織布シート31に、液状の抗菌剤20を染み込ませたり塗布したりして配置すればよい。この場合、不織布シート31の領域ごとに染み込ませる量や塗布量に差を設けることで、抗菌剤20の高目付領域と低目付領域とを形成すればよい。この点は、後述する実施形態のSAPシートにおいても同じである。
【0049】
<実施形態1の変形例>
図6は実施形態1の変形例のSAPシート100を示す図4相当の断面図である。実施形態1のSAPシート100は、肌面側の不織布シート31が、区画41におけるSAP10が膨張する前は平坦であり、区画41におけるSAP10が膨張した後は肌面側に突出したものとなるが、不織布シート31が、図6に示すように、区画41におけるSAP10が膨張する前から、予め肌面側に突出したものとなっている変形例のSAPシート100であってもよい。
【0050】
このような変形例のSAPシート100は、区画42も、予め肌面側に突出していてもよい。ただし、その変形例のSAPシート100は、区画42の突出量が区画41の突出量よりも小さいことが好ましい。
【0051】
この変形例のSAPシート100は、実施形態1のSAPシート100と同様の効果を発揮する。
【0052】
<実施形態2>
図7はSAPシート300を示す図3相当の平面図である。SAPシート300は、本発明に係るSAPシートの一実施形態(実施形態2)である。
【0053】
実施形態1のSAPシート100は、図3に示すように、区画41が区画42と同様に長手方向Lに沿って延びた細長い形状に形成されているが、区画41の形状は、この形状に限定されるものではない。図7は、区画41が膨張した後に、区画41に流れるべき尿を、区画42に誘導し易い形状で形成された区画41を有するSAPシート300を示す、図3相当の平面図である。
【0054】
SAPシート300は、区画41が膨張した後に、区画41に流れ込む尿を、区画42に誘導し易い形状で形成されたものである。SAPシート300は、区画41の形状、及びその区画41の輪郭を仕切って形成するための接合部43の形状が異なる以外は、実施形態1のSAPシート100と同じ構成である。
【0055】
つまり、SAPシート300における区画41は、SAP10の高目付領域であるとともに抗菌剤20の低目付領域である。SAP10の低目付領域であるとともに抗菌剤20の高目付領域である区画42は、SAPシート100と同様に、幅方向Wにおいて間隔をあけて、長手方向Lに沿って細長く形成されている。
【0056】
そして、区画41は、幅方向Wにおいて区画42間の、区画42が形成されていない領域に形成されている。また、区画41は、それぞれ平面視で略菱形状に形成され、その菱形の輪郭辺縁が、長手方向Lと幅方向Wに対してそれぞれ傾いた姿勢となる向きで形成されている。この区画41の輪郭辺縁の一部は、平面視で、区画42に近接し又は区画42に一部が重なるように形成されている。なお、区画41は、区画42間の、区画42が形成されていない領域において、長手方向Lに沿って、複数、点在して形成されている。
【0057】
SAPシート300の、区画41も区画42も形成されていない領域は、接合部43であり、接合部43はSAPシート100と同様に尿を通さない。
【0058】
このように形成されたSAPシート300は、SAPシート100と同じ作用、効果を発揮する。さらに、SAPシート300は、SAPシート300に流れ込んだ尿を、区画42に、より誘導し易くすることができる。
【0059】
すなわち、図7に示すようにSAPシート300の面に沿って長手方向Lに流れた尿は、接合部43では、厚さ方向Dに通過しないが、SAPシート100と同様に、区画41,42において厚さ方向Dに通過する。
【0060】
ここで、区画41を通過した尿によって区画41のSAP10が膨張して、図5に示すように、区画41の不織布シート31が区画42の不織布シート31に比べて厚さ方向Dに突出することで、図7に示した菱形の区画41が突出する。これにより、図6の矢印に示すように、SAPシート300の面に沿って長手方向Lに流れた尿は、区画41の辺縁に当たって、区画41の辺縁に沿って流れ、辺縁が伸びた区画42に導かれる。
【0061】
このように、本実施形態のSAPシート300は、区画41のSAP10が膨張した後に、尿を、幅方向において区画41に隣接する区画42により導き易くすることができる。
【0062】
これにより、SAPシート300は、尿を、区画42において高目付の抗菌剤20と接触させ易くすることができ、抗菌剤20の抗菌成分を吸収体150に拡散させ易い。
【0063】
<実施形態2の変形例>
図8は実施形態2の変形例のSAPシート300を示す図7相当の平面図である。実施形態2のSAPシート300は、区画42が長手方向Lに沿って延びたものであるが、図8に示すように、区画42が幅方向Wに沿って長く形成されたものとしてもよい。この場合、区画42は、長手方向Lにおいて間隔をあけて、細長く形成されている。
【0064】
そして、区画41は、長手方向Lにおいて区画42間の、区画42が形成されていない領域に形成されている。また、区画41は、それぞれ平面視で長手方向Lの一方に向けて凸となる円弧状に形成されている。なお、区画41は、区画42間の、区画42が形成されていない領域において、幅方向Wに沿って、複数、点在して形成されている。
【0065】
SAPシート300の、区画41も区画42も形成されていない領域は、接合部43であり、接合部43はSAPシート100と同様に尿を通さない。
【0066】
このように形成された変形例のSAPシート300は、図7に示した実施形態2のSAPシート300と同様の効果を発揮する。また、変形例のSAPシート300は、区画41が幅方向Wに沿って、分散して形成されているため、区画41のSAP10が膨張して区画41を尿が流れない状態となっても、幅方向Wにおいて、区画41と他の区画41との間に、膨張していない部分としての接合部43が残っている。したがって、SAPシート300の区画42間の、区画42が形成されていない領域に流れ込んだ尿は、区画41が膨張した後も、図8に示すように、膨張していない部分を通って、長手方向Lに沿って区画42に導かれる。
【0067】
これにより、変形例のSAPシート300も、区画42において尿を、高目付の抗菌剤20と接触させ易くすることができ、抗菌剤20の抗菌成分を吸収体150に拡散させ易い。
【0068】
<実施形態3>
図9は実施形態3のSAPシート400を示す図4相当の断面図、図10はSAPシート400における区画41のSAP10が膨張した状態を示す図9相当の断面図、図11はSAPシート400における区画41のSAP10がさらに膨張して弱接合部である接合部43Aが破断した状態を示す図10相当の断面図である。
【0069】
本発明の実施形態3のSAPシート400は、図9に示すように、区画41と区画42との間を仕切る接合部43(仕切り部)のうち少なくとも一部の接合部43Aは、他の残りの接合部43Bに比べて、破断し易く設定されている。接合部43Aの破断のし易さは、区画41におけるSAP10が膨張したときに、膨張したSAP10によって高められた区画41の内部の圧力で破断される程度の強度である。
【0070】
つまり、接合部43Aは、区画41内のSAP10の膨張によって高められた区画41の内部の圧力で破断され、一方、接合部43Bは、区画41,42内のSAP10の膨張によって高められた区画41の内部の圧力によって破断されない。したがって、接合部43Aは、接合部43Bに比べて相対的に接合強度の低い弱接合部であり、接合部43Bは、接合部43Aに比べて相対的に接合強度の高い強接合部である。
【0071】
なお、SAPシート400は、幅方向Wに沿って、少なくとも1つの区画42が形成されていて、その区画42の幅方向Wの両側を仕切る接合部43は、強接合部である接合部43Bで形成されている。
【0072】
以上のように構成された実施形態3のSAPシート400は、SAPシート100と同様の効果を発揮する。また、SAPシート400は、尿が流れ込んで、図10に示すように、区画41のSAP10が膨張して、区画41における尿の流れが少なくなる。
【0073】
SAPシート400に、尿の流れ込みがさらに続くと、区画41内のSAP10がさらに尿を吸収してより大きく膨張し、区画41内の圧力が高くなる。そして、区画41内の圧力が所定以上の圧力になると、図11に示すように、弱接合部である接合部43Aが破断して、区画41の内部と区画42の内部が繋がる。
【0074】
これにより、区画41の内部に配置されていたSAP10の膨張することができる空間が拡大することで、SAP10の膨張をさらに促進させることができ、SAP10による尿の吸収量を増大させることができる。また、区画41と区画42とが繋がった空間において、SAP10がさらに膨張することで尿の通過できる区画と、通過できない区画との調整を図ることもできる。
【0075】
また、SAPシート400は、幅方向Wに沿って、少なくとも1つの区画42が形成され、その区画42の幅方向Wの両側を仕切る接合部43は強接合部である接合部43Bで形成されているため、長手方向Lに流れる尿は、両側部が接合部43Bで形成された区画42の表面を通って長手方向Lに拡散させることができる。
【0076】
なお、SAPシート400も、尿を、区画42において高目付の抗菌剤20と接触させ易くすることができ、抗菌剤20の抗菌成分を吸収体150に拡散させ易い。
【符号の説明】
【0077】
10 SAP(高吸収性樹脂)
20 抗菌剤
30,31,32 不織布シート
41 SAP高目付の区画
42 SAP低目付の区画
43 接合部
100,300,400 SAPシート
150 吸収体
200 使い捨ておむつ
D 厚さ方向
L 長手方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11