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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059817
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抽出法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/80 20220101AFI20240423BHJP
   C08B 15/08 20060101ALI20240423BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20240423BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20240423BHJP
【FI】
B09B3/80
C08B15/08
C08B37/00 Z
B09B101:85
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026129
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2021577878の分割
【原出願日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】1919267.3
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1909583.5
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521566829
【氏名又は名称】フタムラ ケミカル ユーケー エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】FUTAMURA CHEMICAL UK LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】コックロフト マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ルーク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固形精製物をアルカリ性多糖類含有前駆体材料から抽出するための方法を提供する。
【解決手段】(a)アルカリ性多糖類含有前駆体材料を酸で中和して、中和された固形多糖類含有材料を得るステップ、(b)中和された固形多糖類含有材料を漂白剤と混合して、混合物を作製するステップ、及び(c)固形精製物を混合物から分離するステップを含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性多糖類含有前駆体材料から固形精製物を抽出するための方法であって、
(b)前記アルカリ性多糖類含有前駆体材料を酸で中和して、中和された固形多糖類含有材料を得るステップ、
(b)前記中和された固形多糖類含有材料を漂白剤と混合して、混合物を作製するステップ、及び
(c)固形精製物を前記混合物から分離するステップ
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性多糖類含有前駆体材料から固形精製物を抽出するための方法を提供する。特に、固形生成物は、これのみではないが、セルロースを含む。
【背景技術】
【0002】
プラスチック及び非生分解性材料は、世界の包装材料による環境汚染の問題の中で一番の懸念材料である。多糖材料、及び特にセルロース系材料、例えば、フィルムは、堆肥化でき、生分解性のある一連の包装材料を生成するために使用することができる。しかし、多糖類含有材料からのこのような多糖の抽出は、特に農業廃棄物、例えば、カラスムギ外皮、トマトの葉及び籾殻が使用されている場合、労力を有し、コストが高くなり得る。さらに、多くの公知のプロセスから生成した多糖溶液は時間の経過と共に不安定となり、よって、このような包装を作製するために商業的生産ラインに導入するのは容易ではない。
【0003】
現在、農業廃棄物は、非常に安く販売され、時には損失まで出し、多くの場合焼却される、地面に戻される、又は動物飼料と混合される。したがって、これら廃棄材を利用することが現在要求されている。UKだけでも莫大な量の農業廃棄物が毎年生み出されている。例えば、1つの50エーカーの敷地では、1日当たり約4トンのトマトの葉が廃棄物として生成され、これは150~200kgの使用可能なセルロースを含有する。よって、この使用可能なセルロースを入手することにより、廃棄される材料の一部分を減少させることは、環境にとって、生産者にとって、及び消費者にとって極めて有益となる。UKのスーパーマーケットは、プラスチックトレイを農業廃棄物から生成されたトレイに変えた場合、1年で約350万個分のプラスチックトレイを節約することになる。
【0004】
農業廃棄材などの供給源から精製された多糖生成物を抽出するため、特定の方法が考えられてきた。
【0005】
例えば、国際公開第0214598号パンフレットは、水蒸気を使用して、リグノセルロースバイオマスの他の構成物質からセルロースを分離するための多機能プロセスについて記載している。
【0006】
中国特許第102733219号公報は、農業廃棄物の化学的抽出方法、特にレドックス薬剤に基づき、タバコ廃棄物からセルロースを抽出する方法について記載している。このプロセスは、レドックス剤方法を使用して、タバコ原料からヘミセルロース、リグニン、可溶性物質及びセルロース結晶を除去する。
【0007】
国際公開第2012/021056パンフレットは、バイオマス廃棄物から微結晶性セルロースを生成するための方法について記載している。具体的には、開示された方法は、バイオマス廃棄物をαセルロースに変換して、結晶の生成を促進するための塩素化前処理プロセスを利用している。
【0008】
中国特許第105648120号公報は、農業廃棄物中のヘミセルロース多糖からキシロース機能性糖質を調製するための方法について記載している。
【0009】
中国特許第105669879号公報は、キシロオリゴ糖の調製方法について記載しており、この方法はアルカリ法を使用して、ヘミセルロースを含有する農業繊維廃棄物からキシランを抽出する。
【0010】
中国特許第108557802号公報は、農業廃棄物を使用して、セルロース炭素エアロゲルを調製するための方法について記載している。
【0011】
Hu et al. [2017] EXTRACTION AND CHARACTERIZATION OF CELLULOSE FROM AGRICULTURAL WASTE ARGAN PRESS CAKE. Cellulose Chem. Technol. 51 p263-272は、漂白シーケンスを使用して、農業廃棄物APCから高い純度のセルロースを抽出する有効な方法について記載している。
【0012】
このような固形精製多糖生成物は、多くの場合、さらなる加工のために、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液に溶解する。しかし、T. Budtova and P. Navard, “Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55.で論じ
られているように、これらの溶液を作製することは、低い溶解度及びその後の溶液のゲル化を含む様々な問題を伴う。ゲルの形成は、溶液中のセルロースの濃度を減少させる、温度を減少させる又は添加剤を含めることにより減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第0214598号パンフレット
【特許文献2】中国特許第102733219号公報
【特許文献3】国際公開第2012/021056号パンフレット
【特許文献4】中国特許第105648120号公報
【特許文献5】中国特許第105669879号公報
【特許文献6】中国特許第108557802号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Hu et al. [2017] EXTRACTION AND CHARACTERIZATION OF CELLULOSE FROM AGRICULTURAL WASTE ARGAN PRESS CAKE. Cellulose Chem. Technol. 51 p263-272
【非特許文献2】T. Budtova and P. Navard, “Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、環境に優しく、効率的で、費用対効果の高い、多糖類含有材料から固形精製物を抽出する改善された方法を提供すること、並びに、特に前記溶液が水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液に溶解された多糖を含む場合、ゲル安定性が改善された多糖溶液を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様よれば、アルカリ性多糖類含有前駆体材料から固形精製物を抽出するための方法であって、
(a)アルカリ性多糖類含有前駆体材料を酸で中和し、中和された固形多糖類含有材料を得るステップ、
(b)中和された固形多糖類含有材料を漂白剤と混合して、混合物を作製するステップ、及び
(c)固形精製物を混合物から分離するステップ
を含む方法が提供される。
【0017】
「固形精製物」という用語は、アルカリ性多糖類含有前駆体材料と比較して、生成物が精製されていることを意味することを意図する。純度の増加は、脱色の増加により特定することができる。これは、この材料から生成した紙の輝度(TAPPI T452で概説
されている方法を使用)又はLAV数(TAPPI T562に概説されている方法を使用)を判定することによって測定することができる。
【0018】
よって、アルカリ性多糖類含有前駆体材料中に存在するいくつかの成分は、除去され、固形精製物中に存在しない。しかし、これは固形精製物が単一の成分を含有することを意味すると意図してはいない。一部の追加の成分が依然として存在してもよいからである。したがって、「固形生成物」という用語が代わりに使用されてもよい。
【0019】
本発明の方法は、前駆体材料から精製物を抽出する。よって、本方法は、材料を精製する方法又は精製された材料を得るための方法と考えることができる。
【0020】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、上述された方法の逐次的ステップが、当技術分野での従来の方法より優れた、固形精製物を抽出するための有効な方法を提供することを見出した。これは、本発明のプロセスが、費用対効果の高く、簡単に拡張可能であり、プロセス条件が穏やかであり、高価で、環境に害を与える組成物を使用する必要がないからである。
【0021】
例えば、本発明による方法は二硫化炭素の使用を必要とせず、よって、本発明による方法はあまり極端な条件では作動せず、従来の方法より環境に優しい。
【0022】
本発明の方法により作製された生成物は、従来技術の方法を使用して作られたものの多くよりも純粋である。さらに、生成物は、特にアルカリと組み合わせて多糖溶液、特にセルロース溶液を形成する場合にはより安定している。このような多糖溶液はゲル安定性が大きく改善している。
【0023】
木材パルプの水酸化ナトリウムへの直接的溶解は、24時間未満、多くの場合8時間未満でゲルの形成をもたらすことが知られている。本発明の生成物を水酸化ナトリウムに直接溶解しても24時間の時点でゲル形成をもたらさず、室温で1週間後、好ましくは2週間後、より好ましくは1カ月後、ゲルを形成しないことが判明した。
【0024】
ゲルの形成は、目視で、又は弾性率G’及び粘性弾性率G’’を追跡記録することにより測定することができ、G’の値がG’’と一緒になった点がゲル化点である。
【0025】
アルカリ性多糖類含有前駆体材料は、カラスムギ外皮、トマトの葉、籾殻、ジュート、わら、小麦、ススキ、麻(hemp)、イネ科草本、アマ及び食用作物廃棄物から選択される農業廃棄物から得ることができる。本明細書の農業廃棄物は植物性農業廃棄物を指す。
【0026】
他の適切な農業廃棄物発生源は、ココナッツ繊維、茶殻、もみ殻繊維、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)、オウギヤシ(Borassus flabellifer)、葉茎又はショウガを含み
得る。
【0027】
このような材料は広く利用可能であり、廃棄材と考えられる。よって、これらの材料は安価であり、現在のプロセスにおけるこれらの再循環は代替の廃棄処分法が必要とされないことを意味する。
【0028】
本発明のプロセスは、農業廃棄物から潜在的なフィルム形成材料を抽出するための商業的に可能な方法を、食料品の包装におけるこのような材料から、さらには農業廃棄物が回収されたまさに同じ食料品から形成されたフィルム、繊維又は成形品を使用する可能性を切り開くように初めて提供する。
【0029】
固形精製物は多糖を含み得る。多糖はデンプン、セルロース又はポリ乳酸(PLA)を含み得る。一部の実施形態ではセルロースが好ましい。よって、アルカリ性多糖類含有前駆体材料は、アルカリ性セルロース含有前駆体材料でもよい。
【0030】
本発明のプロセスは、アルカリ性多糖類含有前駆体材料からヘミセルロース及びリグニンを除去する。これによって、キシラン、キシログルカン、グルコマンナン及びカロースを含むセルロース及びヘミセルロースを含む固形精製物をもたらすことができる。
【0031】
セルロースフィルムが、プラスチックフィルムの代替として包装に使用されることはすでに当技術分野で公知である。したがって、本発明の方法は、このようなフィルムに使用するための固形精製セルロース材料の代替の供給源を提供するために使用することができ、このようなフィルムはより安価で、より環境に優しい。さらに、本発明から生成したセルロース材料は、当技術分野で公知のセルロース材料より安定している。
【0032】
酸は弱酸を含むことができ、弱酸はカルボン酸、例えば、酢酸でもよい。酸の濃度は約1~約20%w/wでもよい。
【0033】
酸はアルカリ性多糖類含有材料を中和させるために使用される。これは、材料中の固体と液体の両方を中和することを含むことができる。結果として得られる、中和された固形多糖類含有材料のpHは、6~8の間、好ましくは約7でもよい。
【0034】
中和は、アルカリ性多糖類含有前駆体を生成するために使用される水酸化物の量を同定することにより達成することができ、よって、過剰の酸を加えて、完全な中和を確実にする(すなわち、材料中にアルカリ性基が残存しないことを確実にする)。次いで、酸は材料から洗浄して取り去ることができる。よって、使用される酸の量も濃度も使用される水酸化物の量に依存する。
【0035】
酸は、中和された固形多糖類含有材料を作製するために固形アルカリ性多糖類含有材料に加えることができる。酸は、多糖類含有材料を含むアルカリ溶液に加えてもよい。本実施形態では、中和された固形多糖類含有材料は、当技術分野で公知の任意の従来の手段、例えば、濾過により中和された溶液から得るが、ブフナー漏斗、真空及び/又は遠心分離を使用してもよい。
【0036】
発明者らは、アルカリ性多糖類含有材料を中和させるための酸の使用が、特に続いて漂白剤と混合する場合、固形物の溶解度を増加させるのを助けることが判明した。これは、酸性溶液を作製するために酸が使用される従来の方法とは異なる。
【0037】
多糖類含有材料は、約10分間~約3時間の間、好ましくは約0.5~約1時間の間、酸の中に残存させておくことができる。これによって、すべての固形物を確実に中和させることができる。
【0038】
漂白剤は純品でもよい。「純品」という用語は、漂白剤は他の成分を含有しない、例えば、漂白剤は希釈されておらず、溶媒を含まないことを意味すると解釈されるものとする。
【0039】
漂白剤は塩素含有漂白剤を含んでもよい。例えば、漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムを含んでもよい。
【0040】
漂白剤は非塩素含有漂白剤を含んでもよい。例えば、漂白剤は過酸化水素を含んでもよい。
【0041】
漂白剤は、0.1~10%w/wの間、好ましくは0.1~2%w/wの間の濃度でもよい。
【0042】
中和された固形多糖類含有材料と漂白剤の混合物は撹拌することができる。混合物は、約0.5~約20時間、好ましくは約1~約20時間、約1~約10時間又は約10~約20時間の範囲の間撹拌することができる。これによって、すべての固体を漂白剤と確実に反応させることができ、酸素への曝露の増加は生成物の反応性及び最終的溶解度を増加させると考えられている。この時間の間、漂白剤で処理すると、固形多糖類含有材料の膨潤を生じる。
【0043】
1つより多くの漂白ステップが本発明の方法に含まれてもよい。固形生成物は、各漂白ステップの間に水で洗浄してもよい。漂白ステップの数は、使用される多糖類含有前駆体材料の種類、並びに本方法の早期ステップの条件に依存し得る。
【0044】
本発明による方法の1又は2以上のステップは、約2~約90℃の間、好ましくは約2~約60℃の間の温度で行ってもよい。本発明による方法の1又は2以上のステップは約2~約50℃の間の温度で行ってもよい。よって、漂白ステップは前記温度で生じ得る。
【0045】
リグニンは、約90℃より上の温度でセルロースに架橋し得る。架橋の存在は、セルロースからのリグニンの分離をより困難にし、続いてリグニンの除去をより困難にする。したがって、本発明の方法は約90℃未満の温度で作動させることが好ましい。
【0046】
本発明の発明者らは予想外に、本発明による漂白剤をこの温度で使用することでリグニンが除去されることを発見した。リグニンは、従来の方法と比較してより低い温度のために、本発明による方法において対処可能である。これにより、精製物の抽出が、従来の方法より簡単で効率的になる。
【0047】
よって、上述された時間及び上述された温度で、漂白剤で処理することにより、すべてではないとしても、リグニンの大部分が確実に除去される。
【0048】
理論に制約されることを望むことなく、セルロース含有材料を90℃より上の温度に曝露することにより、材料中のリグニンはセルロース上に融解し得ると考えられる。よって、セルロースの加工性は、それが90℃よりも上の温度に曝露されてしまうと低減する。好ましくは、本発明のすべての方法ステップが90℃未満の温度で行われる。
【0049】
しかし、プロセスの一部の又はすべてのステップにおける温度の増加(すなわち、20℃より上)は、より混じりけのないパルプをもたらすことができる。洗浄ステップの間及び最初のアルカリ処理の間、好ましくは、20℃より上の温度、最も好ましくは20~40℃の間の温度が使用される。これは、より低い温度では溶解しにくい界面活性剤及び不純物を除去する能力を高めるという理由による。
【0050】
セルロースまたより高い温度で結晶化し得るが、これは望ましくない。よって、一部のステップにおいて、例えば、約2℃及び/又は約20℃までなどの低温を使用すれば、セルロースの結晶化を防止するのを助けることができる。このようなステップは、中和ステップ及びアルカリ処理ステップを含む。
【0051】
使用する温度は撹拌時間に影響を与え得る。例えば、温度の増加は、撹拌時間を減少させ得る。
【0052】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、アルカリ性多糖類含有前駆体材料を酸で中和するステップ、及びその後中和された固形多糖類含有前駆体材料をこれが膨張するように漂白するステップの組み合せが、当技術分野のプロセスよりも高い溶解度を材料に付与することを見出した。理論に制約されることを望むことなく、これら両方のステップを行った場合のみ材料が可溶性となると考えられる。
【0053】
固形生成物は、濾過によって混合物を分離することができ、ブフナー漏斗、真空及び/若しくは遠心分離、又は当技術分野で公知の任意の従来の手段を使用してもよい。
【0054】
本プロセスは、アルカリ性多糖類含有前駆体材料を作製するための1又は2以上のステップをさらに含んでもよく、これらのステップは上記で論じた固形精製物を抽出するためのステップより前に行われる。
【0055】
アルカリ性多糖類含有前駆体材料は、多糖類含有前駆体材料をアルカリ溶液と組み合わせて、アルカリ混合物を生成し、アルカリ混合物を撹拌することにより作製することができ、固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料を、好ましくは濾過によりアルカリ混合物から分離してもよい。
【0056】
多糖類含有前駆体材料は固体でもよい。多糖類含有前駆体材料は農業用材料でもよく、上で論じられているような農業廃棄物でもよい。
【0057】
農業廃棄物は、カラスムギ外皮、トマトの葉、籾殻、ジュート、わら、小麦、ススキ、麻、イネ科草本、アマ又は食用作物廃棄物から選択することができる。他の適切な農業廃棄物発生源は、ココナッツ繊維、茶殻、もみ殻繊維、ナツメヤシ、オウギヤシ葉茎又はショウガを含み得る。
【0058】
このステップに対する温度は、漂白ステップに対する温度と同じでもよい。このステップに対する温度は漂白ステップに対する温度と異なってもよいが、上で論じた範囲のうちの1又は2以上以内である。アルカリ溶液は、上で論じた理由のため、約2~約90℃の間、好ましくは約20~約60℃の間、より好ましくは約30~約50℃の間の温度で混合してもよい。これにより、リグニンの除去及びより混じりけのない精製物の生成を改善することができる。
【0059】
低温、例えば、約2~約20℃の間などの低温は、セルロースの結晶化を防止するのを助けることができる。本発明による方法は従来の技術方法とは異なり高いプロセス温度を必要としないので、反応はより費用対効果が高く、あまり集中型でないプロセスを提供する。
【0060】
撹拌時間などの要素は、使用される温度により変えることができる。
【0061】
使用される温度は農業廃棄物に依存し得る。温度の増加はより混じりけのない精製物をもたらすことができる。温度の増加は界面活性剤及び不純物を農業廃棄物から除去するのを補助する。よって、約20℃より上の温度はまた、上で論じられているように有益となり得る。
【0062】
アルカリ溶液は水酸化物を含んでもよい。アルカリ溶液は水酸化ナトリウムでもよい。
【0063】
水酸化物は、アルカリ溶液の全重量の約1~約30%w/w又は約5~約25%w/wの濃度で存在してもよい。水酸化物はアルカリ溶液の全重量の約2~約22%w/w又は約10~約20%w/wの濃度で存在してもよい。しかし、低い水酸化物濃度、例えば、
約0.1~約6%w/wもまた使用し得る。
【0064】
好ましくは、水酸化ナトリウムはアルカリ溶液の全重量の約18%w/wの濃度で存在する。
【0065】
アルカリ混合物は撹拌してもよい。混合物は約0.5~約20時間、好ましくは約10~約20時間の範囲の時間撹拌してもよい。これにより、すべての固体がアルカリ混合物と反応することを確実にすることができる。
【0066】
撹拌時間の長さは使用する温度に依存し得る。非限定的例として、2℃の混合物は16時間撹拌してもよく、その一方で50℃の混合物は1時間混合してもよい。
【0067】
多糖類含有前駆体材料はまた過酸化物で処理することもできる。過酸化物は、低濃度、すなわち溶液中約0.05~約10%w/w、好ましくは溶液中約0.05~約6%w/wでもよい。過酸化物溶液はアルカリ溶液に加えてもよいし、又はアルカリ溶液での処理前又は処理後の別の処理ステップにおいて使用してもよい。別の処理ステップは12時間まで持続させることができる。
【0068】
撹拌量は農業廃棄物の組成に依存し得る。混合物は連続的に撹拌してもよい。
【0069】
リグニン、ヘミセルロース及び農業廃棄物中に存在する任意の他の混入物を除去するために、農業廃棄物の水酸化ナトリウムとの混合を開始する。上で論じた時間及び温度は、すべての多糖類含有前駆体材料が、本方法の後のステップで必要となるようなアルカリ性多糖類含有前駆体材料となることを確実にする。
【0070】
固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料は濾過により混合物から分離することができ、ブフナー漏斗、真空及び/若しくは遠心分離、又は当技術分野の任意の他の従来の手段を使用してもよい。
【0071】
水酸化ナトリウムは遠心分離を使用して回収することができる。
【0072】
多糖類含有前駆体材料は前処理してもよい。非限定的例として、農業廃棄物は、乾燥、破砕、切断、浸軟、洗浄により、並びに/又は酵素及び/若しくはイオン交換樹脂の添加により前処理してもよい。この前処理は、特に材料が農業廃棄物を含む場合、多糖類含有前駆体材料を清浄にするのを助けることができる。このような処理ステップはまた、多糖、例えば、セルロースをより入手しやすくするのを助けることができ、したがって抽出をより簡単にする。これにより、本発明の方法の効率を改善することができる。
【0073】
本方法は多糖類含有前駆体材料、固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料、中和された固形多糖類含有前駆体材料及び/又は固形精製物を洗浄するステップをさらに含むことができる。前記洗浄ステップは水で洗浄することを含むことができる。
【0074】
多糖類含有前駆体材料は前処理の間に洗浄することができる。前処理中の洗浄は、材料の粘度を改変し、ひいては加工性を高める助けとなる。洗浄は、約20~約50℃の間の温度で、約0.5~約3時間の間行うことができる。
【0075】
洗浄ステップは、多糖類含有前駆体材料をアルカリ溶液と合わせるステップより前に行うことができる。これは「予備洗浄する」ステップと解釈してもよい。多糖類含有前駆体材料は、十分な水で予備洗浄して、後の段階での水酸化ナトリウムの消費を減少させることができる。
【0076】
発明者らは、驚くべきことに、予備洗浄ステップの付加により、いくつかの利点がもたらされることを発見した。予備洗浄ステップの包含は、必要とされる水酸化ナトリウムの容量を減少させ、その後のアルカリ流の中の望ましくないヘミセルロースを除去することを助けることが判明した。水酸化ナトリウムの消費を減少させ、ヘミセルロースを除去することは、プロセスのコストと生成した材料の加工性との点から有益であり、並びにプロセスをより環境に優しいものにする。その後のアルカリ流の中の任意のヘミセルロースは、回収し、他のプロセスに含めることができる。
【0077】
理論に制約されることを望むことなく、予備洗浄ステップは、農業廃棄物中に存在する繊維を分離し、清浄にし、微粒子を安定化させることができる成分を除去するのを助けると考えられている。このような微粒子の存在はフィルム、繊維又は成形品の生成に悪影響を及ぼすようなので、その後のフィルム、繊維又は成形品の生成はまた、安定化した微粒子の除去により改善することもできる。
【0078】
洗浄は、固形物が存在する、プロセスのいかなる段階においても行うことができる。例えば、洗浄は、アルカリ混合物からの固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料の分離後に行うことができる。洗浄は、アルカリ性多糖類含有前駆体材料を酸で中和する前に行うことができる。
【0079】
洗浄は、アルカリ性多糖類含有材料を酸で中和された後に行うことができる。洗浄は、中和された固形多糖類含有材料が清浄になり、酸が検出されなくなるまで行うことができる。アルカリの存在は、フェノールフタレイン指示薬で検出することができる。材料中の酸の存在は漂白ステップの効率を下げることもあるので、好ましくは、すべての酸を除去する。
【0080】
洗浄は、中和された固形多糖類含有材料が漂白剤と混合され、分離された後で行うことができる。洗浄は、固体が漂白剤を含まなくなり、漂白剤の臭いがなくなるまで行うことができる。漂白剤の存在はその後の固形精製物の使用に有害となり得るので、好ましくは、すべての漂白剤を除去する。
【0081】
洗浄ステップは、温水及び/又は冷水洗浄を含むことができる。洗浄ステップは温水と冷水洗浄のサイクルを含むことができる。温水は20℃超の水であるのに対し、冷水は20℃未満の水である。洗浄ステップは温水で洗浄し、これに続いて冷水で洗浄することを含むことができる。洗浄ステップは少なくとも2回又は少なくとも3回繰り返すことができる。洗浄ステップは少なくとも4回繰り返すことができる。サイクルの数は、材料が洗浄されるステップ、本プロセスで使用される条件及び/又は使用される多糖類含有前駆体材料に依存し得る。
【0082】
第2の態様によれば、本明細書に記載されている方法により生成される固形精製物が提供される。
【0083】
固形精製物は、さらなる加工を施してもよいし、及び/又は、例えば、固形分について分析してもよい。
【0084】
固形分は重量分析を使用して測定することができる。これは、オーブン内で、公知の量(W)の生成物をプレート上で乾燥させてから、これを塩酸と接触させることを含むことができる。生成した固体は取り出し、水で洗浄してから、加熱し、再度乾燥させ、その後秤量することができる(W)。固形分を(W2÷W1)×100として計算する。
【0085】
第3の態様によれば、本発明の方法を使用して得た固形精製物を水酸化物溶液に溶解するステップを含む、安定した多糖溶液を作製するためのプロセスが提供される。水酸化物は水酸化ナトリウム水溶液でもよい。固形精製物はセルロースを含み得るので、安定した多糖溶液は安定したセルロース溶液であってもよい。
【0086】
「安定した」という用語は、溶液が室温で長期間の間ゲルを形成しないことを意味すると解釈されるものとする。長期間とは、1週より長く、2週より長く、好ましくは、1カ月より長くてもよい。
【0087】
固形精製物は水酸化物に直接溶解することができる。公知の方法を使用して固形精製物を溶解すると、驚くべきことに、安定したセルロース溶液を生じる。溶液の粘度は温度の増加と共に増加する一方で、粘度の任意の増加が不可逆的である従来の技術とは異なり、温度が低下すると、粘度の任意の増加は可逆的となる。
【0088】
水酸化物は約-20~約20℃の間の温度、好ましくは約2~約15℃の間の温度でもよい。これらの低温は、特に多糖がセルロースの場合、多糖の結晶化を防止するのを助けることができる。これらの温度はまたセルロースの膨潤を補助し、したがって、セルロース材料の水酸化ナトリウムへの溶解を改善することができる。
【0089】
固形精製物は、約1~約20時間、好ましくは約10~約20時間、及び/又は固形精製物の大半若しくは全部が溶解するまで、水酸化物と混合することができる。
【0090】
次いで、任意の未溶解材料を分離して、安定した多糖溶液を生成することができ、これは濾過によって行ってもよい。任意の未溶解材料は、上で論じた方法において固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料として使用される。
【0091】
水酸化ナトリウム水溶液は、アルカリ溶液の全重量の約2~約22%w/wの濃度で存在してもよい。
【0092】
水酸化ナトリウムの濃度は固形精製物の固形分に依存することになる。水酸化ナトリウムの濃度は、固形精製物の固形分に基づき希釈することができる。
【0093】
安定した溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は、約1~約10%w/w、好ましくは約3~約8%w/wでもよい。好ましくは、安定した溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は約5~約7%w/wである。好ましくは、安定した溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は3%w/wより高く、及び/又は約10%w/w未満である。より好ましくは、安定した溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は約6%w/wである。
【0094】
多糖の濃度、例えば、安定した多糖溶液中に存在するセルロースの濃度は、農業廃棄物発生源に依存する。安定したセルロース溶液中のセルロースの濃度は約1~約10%の範囲でもよい。本発明の発明者らは、約1~20%、好ましくは6~12%のセルロース濃度が、工業プロセスにおいて液体をポンプで送れる適切な粘度をもたらすことを見出した。
【0095】
本発明の発明者らは、本発明により形成された多糖溶液、及び特にセルロース溶液が、水酸化ナトリウム又はビスコースに慣例的に溶解する木材パルプ由来の溶液とは異なり、ゲル化することなく室温で貯蔵することができることを予想外に見出した。よって、本発明により形成された多糖溶液は、従来の方法で形成された溶液よりもゲル安定性が高い。
【0096】
第4の態様によれば、本明細書に記載されているプロセスから得られた安定した多糖溶
液が提供される。安定した多糖溶液は安定したセルロース溶液でもよい。
【0097】
本発明はまた、フィルム、繊維又は成形品における精製物の使用を提供する。本発明による精製物を含むフィルム、繊維又は成形品は、いくつかの利点を提示することが判明した。非限定的例として、本発明により作製されたフィルム、繊維又は成形品は、代替の費用対効果の高い原料を用いて、より環境重視のプロセスを介して作製され、標的とする農業廃棄物又は精製物内容物を用いた注文によるフィルム、繊維又は成形品の作製を可能にする。本発明に従い生成されたフィルム、繊維又は成形品は、農業廃棄物の少なくとも一部分を含み得る。
【0098】
よって、第5の態様によれば、本発明による安定したセルロース溶液を使用して、セルロースフィルム、繊維又は成形品を作製するためのプロセスが提供される。
【0099】
フィルム、繊維又は成形品は、例えば、ダイ、例えば、スリットダイを介して、非溶媒へと溶液を流し込んで、フィルム、繊維又は成形品を形成することにより、安定したセルロース溶液から直接作製することができる。
【0100】
代わりに、安定したセルロース溶液を、ビスコース溶液に加え、次いでこれを使用して、セルロースフィルム、繊維又は成形品を作製することもできる。ビスコース溶液を使用して、セルロース系フィルム、繊維又は成形品を作製することは当技術分野で一般的に公知であり、本発明の安定したセルロース溶液は、標準的加工法の前に標準的ビスコース溶液に単に含めることができる。
【0101】
安定した溶液は、このような溶液から生成された最終フィルム、繊維又は成形品中の1~99%の間、好ましくは10%より多く、最も好ましくは40~60%の間の固体が本発明の固形精製物となるように、ビスコース溶液に加えることができる。
【0102】
第6の態様によれば、本発明に従い得た固形精製物を、供給原料の少なくともの一部として使用するステップを含む、セルロースフィルム、繊維又は成形品を作製するためのプロセスが提供される。供給原料は、セルロース系フィルム、繊維又は成形品を作製するための従来のプロセスに使用されている従来の供給原材料であってよく、よって、固形精製物は従来の供給原材料に加えて、又は従来の供給原材に対する補充として単に含まれている。固形精製物はセルロースを含む。
【0103】
供給原料は木材パルプをさらに含んでもよい。
【0104】
供給原料中の固形精製物の、従来の供給原材料、例えば木材パルプに対する比は、約50:50又は約30:70でもよい。好ましくは、固形精製物の、従来の供給原材料、例えば木材パルプに対する比は約20:80又は約10:90である。
【0105】
固形精製物は、フィルム、繊維又は成形品を作製するプロセスの1つより多くの段階において使用することができる。固形精製物は、プロセスの開始時に供給原料の少なくとも一部として含まれていてもよいし、上で論じられているような安定したセルロース溶液としてビスコース溶液に注入されてもよい。
【0106】
第7の態様によれば、約5重量%まで又は約15重量%までの本発明による固形精製物を含むセルロースフィルム、繊維又は成形品が提供される。好ましくは、セルロースフィルム、繊維又は成形品は、約20重量%まで又は約25重量%までの本発明による固形精製物を含む。
【0107】
セルロースフィルム、繊維又は成形品は、本発明による任意の方法を使用して作製することができる。
【0108】
本発明の固形精製物が農業廃棄物から得られる場合、これを使用して、セルロースフィルム、繊維又は成形品を作製することは、必要とされる原料のコストを減少させることにより、セルロースフィルム、繊維又は成形品を生成するコストを減少させることができる。
【0109】
本発明の発明者らは、本発明が、標的とする農業廃棄物含有量を用いて注文によるフィルム、繊維又は成形品を生成するために使用することができることを有利に見出した。これは特定の農業セルロースの少なくとも一部分を含有するセルロースフィルム、繊維又は成形品の生成を可能にする。堆肥化でき、生分解性があり、再循環させた材料を含むフィルム、繊維又は成形品を提供するのであれば、これは有益である。
【0110】
第8の態様によれば、本発明は、本発明に従い得た固形精製物の、フィルム、繊維又は成形品への射出のための使用を提供する。
【0111】
固形精製物の小粒子を、フィルム、繊維又は成形品へと注入することは、フィルム、繊維又は成形品の機械的特性を改善することができる。粒子はセルロースを含み得る。フィルム、繊維又は成形品はセルロース系フィルム、繊維又は成形品でもよい。
【0112】
精製物は、注入前に小さな微粒子へと変換することができる。これは、機械的及び/又は酵素的処理により行うことができる。小粒子はマイクロ粒子又はナノ粒子でもよい。小粒子は20nm~10ミクロンサイズの間でもよい。
【0113】
これは、HefCelプロセスなどのプロセスを使用して行うことができ、このプロセスでは固形精製物は酵素と機械的に混合し、高温(例えば、約40℃~50℃の間)で長期間の間(例えば、30分間~2時間の間)で混合してもよい。次いで、温度を約50℃~70℃の間にさらに増加させ、溶液を6~9時間の間で混合してもよい。次いで、温度の、例えば、約90℃への最後の増加を使用して、酵素を失活させる。
【0114】
次いで、任意の当技術分野の従来の手段を使用して小粒子を溶液から分離することができる。粒子は洗浄し、温水と冷水で洗浄してもよい。これは、3~5回の間、又はすべての糖及び酵素が除去されるまで行うことができる。
【0115】
精製物の固形分によって注入速度を決定することができる。
【0116】
第9の態様によれば、本発明は、本発明に従い得た固形精製物の小粒子を含むフィルム、繊維又は成形品を提供する。
【0117】
粒子はセルロースを含んでもよい。精製物は、フィルム、繊維又は成形品への包含前に小さな微粒子へと変換しておいてもよい。フィルム、繊維又は成形品はセルロース系フィルム、繊維又は成形品でもよい。
【0118】
本発明のフィルム、繊維又は成形品は食物の包装に使用することができる。食物の包装は植物性物質を含有する食料品を含んでもよい。包装は、包装される食料品に適合するように調整することができる。例えば、本発明のフィルム、繊維又は成形品は、食料品中の植物性物質の農業廃棄物から得られた多糖類含有前駆体材料を使用して作製することができる。
【0119】
第10の態様によれば、本発明は、植物性物質を含有する包装された食料品を提供し、この包装は植物性物質の作物又は関連作物から回収した農業廃棄物から少なくとも部分的に製造された多糖性フィルム、繊維又は成形品を含む。
【0120】
関連作物は、食料品中の植物性物質として、同じドメイン、界、門、亜門、綱、亜綱、上目、目、亜目、科、亜科、属又は種からの作物を含むことができる。好ましくは、関連作物は、同じ門、亜門、綱、亜綱、上目、目、亜目、科、亜科、属又は種からの作物を食料品中の植物性物質として含む。
【0121】
多糖はデンプン、セルロース又はポリ乳酸でもよい。好ましくは、多糖はセルロースである。
【0122】
特に好ましいのは、関連作物が食料品中の植物性物質と同じ種の植物を含む、上記に従い包装された食料品である。
【0123】
本発明また、上記に従い包装された食料品を形成するための方法であって、外皮、さや、殻、葉、茎及び/又は細い茎から選択される可食物及び不可食農業廃棄物を含む作物を収穫するステップ、可食物を農業廃棄物から分離するステップ、フィルム、繊維又は成形品を少なくとも部分的に農業廃棄物から製造するステップ、並びに製造されたフィルム、繊維又は成形品を使用して、可食物を含む食料品を包装するステップを含む方法を提供する。
【0124】
フィルム、繊維又は成形品を製造する方法は、上で論じた方法ステップのいずれかを含むことができる。フィルム、繊維又は成形品は、上で論じたフィルム、繊維又は成形品のいずれかでもよい。
【0125】
このような包装された食料品のための包装もまた提供され、この包装は、植物性物質の作物又は関連作物から得られる農業廃棄物から少なくとも部分的に製造される多糖性フィルム、繊維又は成形品を含む。
【0126】
本発明は、ここで以下の非限定的例を参照してより具体的に記載されることになる。
【実施例0127】
1500mlの18%NaOHを水槽内で、30℃で予熱し、150gの予備洗浄したトマトの葉廃棄物と合わせた。混合物を約2時間連続的に撹拌した。ブフナー装置を使用して、生成したアルカリ混合物を真空下で濾過した。固体のトマトの葉残渣を洗浄し、およそ5Lの温水、これに続いて2Lの冷水で清浄にした。清浄な固形アルカリ性トマトの葉残渣を約600mlの10%酢酸で中和し、約30分間静置させて中和させた。次いで、中和された固形トマトの葉残渣を温水と冷水のサイクルで洗浄し、清浄にし、酢酸を含まなくなるまでこれを続けた。1500mLの2.5%次亜塩素酸ナトリウムを加えて、混合物を作製し、これは自由に連続的に混合できた。混合物を約12時間の期間連続的に撹拌した。次いで、ブフナー装置を使用して生成した混合物を真空下で濾過した。精製されたトマト廃棄材を一連のおよそ5~6回の温水と冷水洗浄で洗浄し、精製されたトマト廃棄材が漂白剤を含まなくなるまでこれを続けた。
【0128】
18%NaOHを2℃の水槽内に配置し、気温に到達するまで静置した。次いで、精製されたトマト廃棄材を18%NaOHに溶解し、気温で約2時間撹拌した。相対的容量は、6%NaOH溶液が形成されるような容量にした。次いで、ブフナー装置を使用して、混合物を真空下で濾過した。生成した安定したセルロース溶液を収集し、重量分析を使用して固形分について試験して、セルロースが確実に溶液中に存在するようにした。
【0129】
生成した安定したセルロース溶液は、目視検査で判定した場合、室温で1カ月後もゲルの形成を開始していなかった。
【0130】
これは、より詳細にゲル安定性の問題を概説している、T. Budtova and P. Navard, “Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55.において論じられている水酸化ナトリウム中のセルロース溶液とは対照的である。Z
nOなどの添加剤の添加、及び/又は非常に低い温度の使用が数日間ゲル化を遅らせることが開示されている一方で、この文献の図13及び15はほんの数分でゲル化が生じることを示している。したがって、この文献で論じられた溶液の中で、室温で1カ月後に安定している溶液はない。
【実施例0131】
1500mlの18%NaOHを水槽内で、2℃で予熱し、250gの予備洗浄したトマトの葉廃棄物と合わせた。混合物を約16時間連続的に撹拌した。ブフナー装置を使用して、生成したアルカリ混合物を真空下で濾過した。固形トマトの葉残渣を洗浄し、およそ4Lの温水、これに続いて2Lの冷水で清浄にした。清浄な固形アルカリ性トマトの葉残渣を約500mlの10%酢酸で中和し、約30分間静置させて中和させた。次いで、中和された固形トマトの葉残渣を温水と冷水のサイクルで洗浄し、清浄で、酢酸を含まなくなるまでこれを続けた。1500mLの2.5%次亜塩素酸ナトリウムを加えて、混合物を作製し、これは自由に連続的に混合することができた。混合物を約3時間の期間連続的に撹拌した。次いで、ブフナー装置を使用して、生成した混合物を真空下で濾過した。精製したトマト廃棄材を一連のおよそ5~6回の温水洗浄と冷水洗浄で洗浄し、精製されたトマト廃棄材が漂白を含まなくなるまでこれを続けた。
【0132】
18%NaOHを2℃の水槽内に配置し、気温に到達するまで静置した。次いで、精製したトマト廃棄材を18%NaOHに溶解し、気温で約16時間撹拌した。相対的容量を、6%NaOH溶液が形成されるような容量にした。次いで、ブフナー装置を使用して、混合物を真空下で濾過した。生成した安定したセルロース溶液を収集し、重量分析を使用して固形分について試験して、セルロースが確実に溶液中に存在するようにした。
【0133】
生成した安定したセルロース溶液は、目視検査で判定した場合、室温で1カ月後もゲルの形成を開始していなかった。
【0134】
これは、より詳細にゲル安定性の問題を概説している、T. Budtova and P. Navard, “Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55.において論じられている水酸化ナトリウム中のセルロース溶液とは対照的である。Z
nOなどの添加剤の添加、及び/又は非常に低い温度の使用が数日間ゲル化を遅らせることが開示されている一方で、この文献の図13及び15はほんの数分でゲル化が生じることを示している。したがって、この文献で論じられた溶液の中で、室温で1カ月後に安定している溶液はない。
【実施例0135】
150gのバガス廃棄物を秤量して、3Lプラスチックビーカーに入れた。1500mlの水をビーカーに加え、30℃で2時間混合した。次いで、セラミックブフナー漏斗及び腐蝕性フィルター布の予め切断した小片を使用して、バガススラリーを濾過した。次いで、部分的に乾燥したバガス廃棄物をVoreworkミキサーに移し、高速で2分間細かく刻んだ。細かく刻んだバガスをミキサーから出し、3Lプラスチックビーカーに戻した。
【0136】
1500mlの18%水酸化ナトリウムを、温度30℃でバガスを含有するプラスチッ
クビーカーに加えた。次いで、廃棄物スラリーを30℃で2時間混合した。次いで、セラミックブフナー漏斗及び腐蝕性フィルター布の予め切断した小片を使用して、バガススラリーを濾過した。次いで、温水と冷水での交互の洗浄を使用して、バガスを清浄にした。
【0137】
1000mlの10%酢酸を測定して3Lプラスチックビーカーに入れた。次いで、清浄にしたバガス廃棄物をセラミックブフナー漏斗から取り出し、酢酸を含有するビーカーの内側に配置した。全溶液を45分間の期間30℃で混合し、これによって、水酸化ナトリウムでの処理後、バガスを中和した。
【0138】
次いで、セラミックブフナー漏斗及びフィルター布を使用して、酢酸及びバガススラリーを再び濾過した。再度、温水と冷水での交互の洗浄を使用して、バガスを清浄にした。フェノールフタレインを使用して、バガス廃棄物が中和されたことをチェックし、適切に洗浄した。
【0139】
バガスを清浄にし、酢酸を含まなくなったら、セラミック漏斗の全内容物を3Lプラスチックビーカーの内側に配置して漂白した。1000mlの植物の標準的漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を測定して、バガスを含有するプラスチックビーカーに入れ、混合物を室温で48時間の期間連続的に撹拌した。次いで、セラミックブフナー漏斗及びフィルター布を使用して、バガスの漂白した材料及び溶液を濾過し、次いで温水と冷水で洗浄し、漂白剤がバガス材料中に存在しなくなるまでこれを続けた。
【0140】
次いで、残留するバガス材料を秤量して、1Lスチールビーカーに入れた。500mlの6%水酸化ナトリウムを、温度2℃でバガスセルロースを含有するスチールビーカーに加えた。次いで、1Lスチールビーカーの全内容物を2℃の水槽内で2時間混合した。
【0141】
混合が完了したら、次いで、セラミックブフナー漏斗及びフィルター布を使用して、スチールビーカーの全内容物を再び濾過した。次いで、フィルター布を通過した液体を収集し、以下の方法でその固形分について試験した:
1.ポット及びピペット/スプレッダー内の試料を一緒に秤量した。
2.ピペット/スプレッダーを使用して、1.0g~1.5gの間の試料をガラスプレートに移した。
3.試料、ポット及びピペット/スプレッダーを天秤に戻し、ガラスプレートに加えた試料の重量を測定した(W)。
4.プレートを60℃オーブン内に10~15分間配置した。
5.オーブンからプレートを取り出し、プレート上の試料を覆うのに十分な3.0%塩酸を含有するプラスチックトレイ内に配置した。試料を酸の中に20分間置いた。
6.再生された試料材料をガラスプレートから取り出し、流水で少なくとも10分間十分に洗浄した。
7.試料材料を蒸留水で洗浄した。
8.試料を155℃オーブン内のるつぼの中に移し、少なくとも1時間置いた。
9.乾燥した試料をるつぼから取り出し、秤量した(W)。
【0142】
次いで、固形分を(W2÷W1)×100として計算し、これによって、溶解したバガスを含有
する水酸化ナトリウム溶液のセルロース濃度を判定した。最終バガス溶液中の固形分は3.22%であった。
【0143】
生成した安定したセルロース溶液は、目視検査で判定した場合、室温で1カ月後もゲルの形成を開始していなかった。
【0144】
これは、より詳細にゲル安定性の問題を概説している、T. Budtova and P. Navard, “
Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55.において論じられている水酸化ナトリウム中のセルロース溶液とは対照的である。Z
nOなどの添加剤の添加、及び/又は非常に低い温度の使用が数日間ゲル化を遅らせることが開示されている一方で、この文献の図13及び15はほんの数分でゲル化が生じることを示している。したがって、この文献で論じられた溶液の中で、室温で1カ月後に安定している溶液はない。
【実施例0145】
5種の異なる農業廃棄物材料、すなわちカラスムギ外皮/さや、トマトの葉/柄、ジュート、干し草及びわらを機械的にプロセスし、水酸化ナトリウムで処理して、5種の異なる固形アルカリ性多糖類含有前駆体材料を作製した。
【0146】
農業廃棄物試料のそれぞれから得た前駆体材料を10%酢酸溶液中で中和し、45分間の期間静置させた。次いで、各試料を濾過し、水で洗浄し、あらゆる酸が残留しなくなるまでこれを続けた。その後試料を次亜塩素酸ナトリウム中で終夜漂白し、次いで濾過し、再度洗浄した。
【0147】
清浄にした材料のそれぞれの固形分を以下の方法を使用して試験した:
1.ポット及びピペット/スプレッダー内の試料を一緒に秤量した。
2.ピペット/スプレッダーを使用して、1.0g~1.5gの間の試料をガラスプレートに移した。
3.試料、ポット及びピペット/スプレッダーを天秤に戻し、ガラスプレートに加えた試料の重量を測定した(W)。
4.プレートを60℃オーブン内に10~15分間配置した。
5.オーブンからプレートを取り出し、プレート上の試料を覆うのに十分な3.0%塩酸を含有するプラスチックトレイ内に配置した。試料を酸の中に20分間置いた。
6.再生された試料材料をガラスプレートから取り出し、流水で少なくとも10分間十分に洗浄した。
7.試料材料を蒸留水で洗浄した。
8.試料を155℃オーブン内のるつぼの中に移し、少なくとも1時間置いた。
9.乾燥した試料をるつぼから取り出し、秤量した(W)。
【0148】
次いで、固形分を(W2÷W1)×100として計算し、結果は以下の表1に概説されている。
【0149】
【表1】
【0150】
その後、溶解に必要とされた正確な量の水及び水酸化ナトリウムを計算した。これらの結果は以下の表2に概説されている。
【0151】
【表2】
【0152】
すべての実験物質は、2℃の水槽内で2時間、高い剪断で混合した。混合前、水及びNaOHを一緒に混合し、水槽内に置いて冷却してから、固形精製物に加えた。
【0153】
溶液の混合が完了したら、これらを2回濾過し(25ミクロンフィルター布及び125ミクロンフィルター布を介して)、通過した液体を保持した。固形分を測定した。結果は以下の表3に概説されている。
【0154】
【表3】
【0155】
生成した安定したセルロース溶液は、目視検査で判定した場合、室温で1カ月後もゲルの形成を開始していなかった。
【0156】
これは、より詳細にゲル安定性の問題を概説している、T. Budtova and P. Navard, “Cellulose in NaOH-water based solvents: a review” Cellulose, 2016, 23(1), pp.5-55.において論じられている水酸化ナトリウム中のセルロース溶液とは対照的である。Z
nOなどの添加剤の添加、及び/又は非常に低い温度の使用が数日間ゲル化を遅らせることが開示されている一方で、この文献の図13及び15はほんの数分でゲル化が生じることを示している。したがって、この文献で論じられた溶液の中で、室温で1カ月後に安定している溶液はない。