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  • 特開-摺動部材用樹脂組成物及び摺動部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059831
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】摺動部材用樹脂組成物及び摺動部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240423BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L23/06 ZAB
C08L23/26
C08L91/00
C08L1/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026719
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2020075752の分割
【原出願日】2020-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年6月10日にオイレス工業株式会社の下記ウエブサイトのウエブページ1)~6)に掲載。1)https://www.oiles.co.jp/bearing/、 2)https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/product/38941/、 3)https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/product/38956/、 4)https://www.oiles.co.jp/bearing/e_catalog/pdffiles/bearing/oiles-81-b1.pdf、 5)https://www.oiles.co.jp/bearing/oiles_bearing/product/38958/、6)https://www.oiles.co.jp/bearing/e_catalog/pdffiles/bearing/oiles-83-b1.pdf。
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形性及び摺動特性に優れた植物由来ポリエチレン樹脂を主成分とする摺動部材用樹脂組成物及び摺動部材を提供する。
【解決手段】摺動部材用樹脂組成物には、主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合されている。この摺動部材用樹脂組成物の成形により摺動部材を作製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合されている摺動部材用樹脂組成物。
【請求項2】
植物由来ポリエチレン樹脂は、植物由来高密度ポリエチレン樹脂からなる請求項1に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項3】
石油由来ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂及び酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂から選択される請求項1又は2に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項4】
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、及び分子鎖中にアセトキシ基を有するポリオレフィン樹脂をアルカリによりケン化したポリオレフィン樹脂ケン化物から選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項5】
不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体でグラフト変性したポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体から選択される請求項4に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン樹脂ケン化物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる請求項4に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項7】
植物由来フィラーは、セルロース繊維、セルロース粒状物(粉末)及びセルロースナノ繊維(セルロースナノファイバー)から選択される請求項1から6に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項8】
潤滑油は、パラフィン系及びナフテン系鉱油、動物油、植物油、炭化水素系合成油及びエーテル系合成油から選択される請求項1から7に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項9】
追加成分として、天然ワックス、炭化水素系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸塩(金属石ケン)から選択される滑剤が0.1~5質量%の割合で配合される請求項1から8のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項10】
追加成分として、染料又は顔料からなる着色剤が1~5質量%の割合で配合される請求項1から9のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来ポリエチレン樹脂を主成分とする摺動部材用樹脂組成物及び摩擦摩耗特性に優れた軸受等の摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止ならびに枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、穀類、豆類、イモ類などに含まれる炭水化物(澱粉など)を分解して得られる糖、サトウキビなどに含まれる糖を原料として用いて、それを乳酸発酵させることによって製造することができる乳酸系重合体や、とうもろこし等を原料に製造されるバイオエタノールから取り出したエチレンを元に製造される植物由来ポリエチレン樹脂等が注目されている。
【0003】
例えば、乳酸系重合体を使用した樹脂組成物として、乳酸成分の含有量が50~100容量%の脂肪族ポリエステルを主要成分とし、四フッ化エチレン樹脂、黒鉛およびマイカからなる群から選ばれる一種以上の固体潤滑剤を5~30容量%配合してなる生分解性を有する潤滑性樹脂組成物(特許文献1)が提案されている。しかしながら、この潤滑性樹脂組成物の主成分をなすポリ乳酸樹脂は、機械的強度が低く加水分解を起こす虞があるので摺動用途には適していない。
【0004】
また、1種のジカルボン酸と1種のジアミンからなる単位とを含有するポリアミドと無機充填材とを含有する摺動部品(特許文献2)が提案されており、ジアミンとして植物由来のデカメチレンジアミンを使用し、バイオマス度を高めた摺動部品が提案されているが、この摺動部品は、摺動時の摩擦面間にスティックスリップ(付着-滑り)を惹起する虞がある。
【0005】
一方、植物由来ポリエチレン樹脂を使用した技術として、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6等に植物由来ポリエチレン樹脂を使用した包装容器あるいは包装用積層体が提案され一部実用化されているが、機械要素、例えばすべり軸受等の摺動用途へはまだ提案されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-212400号公報
【特許文献2】特開2015-129244号公報
【特許文献3】特開2014-30942号公報
【特許文献4】特開2015-231870号公報
【特許文献5】特開2018-135133号公報
【特許文献6】特開2019-34519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実情に鑑み、本発明者は、植物由来ポリエチレン樹脂の摺動用途への適用について鋭意検討の結果、植物由来ポリエチレン樹脂に所定量の添加剤を配合することにより摺動用途、例えばすべり軸受等への適用が可能であることを見出したものであり、その目的とするところは、成形性及び摺動特性に優れた植物由来ポリエチレン樹脂を主成分とする摺動部材用樹脂組成物及び摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の摺動部材用樹脂組成物(以下、樹脂組成物と略称する)は、主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%と、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%と、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合されている。
【0009】
本発明の樹脂組成物によれば、該樹脂組成物からなる成形材料は、成形機のスクリューへの食い込み性がよく成形加工性が優れており、成形品の表面は優れた表面状態を有しており、該樹脂組成物からなる摺動部材によれば、主成分をなす植物由来ポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させ、相手材との摺動摩擦においては、低摩擦性及び耐摩耗性を含む摺動特性を向上させることができる。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、追加成分として、滑剤を0.1~5質量%の割合で、また着色剤を1~5質量%の割合で含有してもよい。
【0011】
追加成分としての滑剤は、樹脂組成物の成形時の金型からの離型性を向上させる離型剤の役割を果たすと共に、潤滑油を吸収保持する担体の役割を果たすため、潤滑油のブリードアウトを抑制できるので、潤滑油の配合量を多くできるばかりでなく、潤滑油と滑剤の併合により摺動部材の摺動性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形機のスクリューへの食い込み性等の成形加工性が良好であり、主成分をなす植物由来ポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させると共に、低摩擦性及び耐摩耗性を含む摺動特性を向上させることができる樹脂組成物及び摺動部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、スラスト試験方法を説明するための斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%と、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%と、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合されている。
【0015】
本発明の樹脂組成物において、植物由来ポリエチレン樹脂は、サトウキビやトウモロコシ等の植物を原料として得られるバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンの単独重合体、或いはこの植物由来エチレンと他のモノマーとの共重合体である。エチレンからポリエチレン(PE)への重合反応は、石油由来のエチレンを重合させる場合と同様である。
【0016】
具体的には、上記バイオエタノールから誘導された植物由来エチレンを重合して成る、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びこれらの混合物を例示することができる。植物由来エチレンと共重合させる他のモノマー(コモノマー)としては、炭素数3~20、好適には炭素数4~8のα-オレフィンであり、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。
【0017】
本発明において、植物由来ポリエチレン樹脂としては、密度が0.910~0.960g/cmの間にあるのが好ましく、また、植物由来ポリエチレンの植物度(%)(ASTM6866、 放射性炭素14Cの含有率測定)が80%以上のものが好ましい。植物度が80%以上の場合は、石油由来ポリエチレンに比べCOを70~74%程度削減が可能となり、枯渇性資源の有効利用及び温室効果ガスの原因となるCO発生量を大幅に削減することが可能となる。
【0018】
植物由来ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:2.16kg)は、押出加工性の観点から0.5~10g/10分が好ましく、特に1.0~5.0g/10分が更に好ましい。メルトフローレートが0.5~10g/10分であれば、押出加工性を良好に維持することができる。
【0019】
植物由来ポリエチレン樹脂の具体例としては、ブラスケム社製の植物由来高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)「GREEN-SHE150、-SGF4960」(いずれも商品名)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)「GREEN-SLH118」等が挙げられるが、摺動用途としては、植物由来高密度ポリエチレン樹脂が使用されて好適である。
【0020】
本発明の樹脂組成物に配合される石油由来ポリエチレン樹脂は、主成分をなす植物由来ポリエチレン樹脂に微細に分散して該樹脂組成物からなる成形物(以下、摺動部材という)の摩擦摩耗等の摺動性を向上させる役割を果たす。石油由来ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂等が使用される。酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂としては、無水マレイン酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0021】
高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)としては、中・低圧法で製造されるエチレンの単独重合体で、その密度は通常0.940~0.970g/cmであり、例えばプライムポリマー社製の「ハイゼックス(商品名)」、日本ポリエチレン社製の「ノバテック(商品名)」等を挙げることができる。超高分子量ポリエチレン樹脂(UHPE)としては、135℃のデカリン酸溶媒中で測定した極限粘度[η]が10dl/g以上で、その粘度平均分子量が50万~600万のものを使用することができ、例えば三井化学社製の「ハイゼックスミリオン(商品名)」、同社製の「ミペロン(商品名)」、旭化成ケミカルズ社製の「サンファイン(商品名)」等を挙げることができる。また、超高分子量ポリエチレン樹脂としては、135℃での極限粘度[η]が10~40dl/gの超高分子量ポリエチレン樹脂と同極限粘度[η]が0.1~5dl/gの低分子量ないし高分子量ポリエチレン樹脂とからなるものも使用することができ、例えば、三井化学社製の「リュブマー(商品名)」等を挙げることができる。酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂としては、例えば無水マレイン酸変性の三井化学社製の「変性リュブマー(商品名)」等を挙げることができる。
【0022】
上記石油由来ポリエチレン樹脂は一種又は二種以上が選択され、配合量は0.1~20質量%、好ましくは0.5~15質量%である。配合量が0.1質量%未満では、該樹脂組成物からなる摺動部材の摺動特性の向上に効果がなく、また配合量が20質量%を超えると該樹脂組成物の成形時の溶融粘度が上がり、流動性が悪くなる傾向があり、成形品の外観が悪くなる虞がある。
【0023】
本発明の樹脂組成物に配合される変性ポリオレフィン樹脂は、主成分をなす植物由来ポリエチレン樹脂との相互作用を発揮し得る変性ポリオレフィン樹脂であり、前記石油由来ポリエチレン樹脂を主成分の植物由来ポリエチレン樹脂のマトリックス中に微分散化させると共に後述する植物由来フィラーを植物由来ポリエチレン樹脂のマトリックス中に分散させる相溶化剤の役割を果たし、該樹脂組成物からなる摺動部材の機械的強度を低下させることなく、低摩擦性及び耐摩耗性を含む摺動特性を大幅に向上させる。
【0024】
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、及び分子鎖中にアセトキシ基を有するポリオレフィン樹脂をアルカリによりケン化したポリオレフィン樹脂ケン化物から選択される。ポリオレフィン樹脂としては、α-オレフィンの単独重合体、2種以上のα-オレフィンの共重合体、あるいはα-オレフィンと、該α-オレフィンと共重合可能な他の化合物との共重合体などが挙げられる。α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20のα-オレフィン等が挙げられる。また、他の化合物としては、例えば、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物あるいは酢酸ビニル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0025】
好適なポリオレフィン樹脂の例は、低密度、中密度あるいは高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィン共重合体〔エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)〕等である。
【0026】
不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体は、1分子内にエチレン性不飽和結合とカルボキシル基、酸無水物又は誘導体基とを有する化合物である。不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸〔ナジック酸〕、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸〔メチルナジック酸〕等の不飽和カルボン酸;これらの不飽和カルボン酸の無水物;不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド及び不飽和カルボン酸イミド等の誘導体が挙げられる。より具体的には、塩化マレニル、マレイミド、N-フェニルマレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0027】
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体(エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等)、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0028】
ポリオレフィン樹脂ケン化物としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物が好ましい例として挙げられる。
【0029】
本発明において使用される変性ポリオレフィン樹脂は、JIS K7210(2014)に準拠し、温度190℃又は230℃おいて、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.1~50g/10分であることがより好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分未満であると、粘度が高くなり過ぎて樹脂組成物の流動性が悪く、溶融押出成形等の成形性を悪化させる虞があり、またメルトフローレートが100g/10分を超えると、成形性が不安定となり、摺動部材の機械的強度を低下させる虞がある。
【0030】
本発明において使用する変性ポリオレフィン樹脂の具体例を例示すると、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂としては、三井化学社製の「アドマー(商品名)」、三菱ケミカル社製の「モディック(商品名)」等が挙げられ、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体としては、三井化学社製の「タフマー(商品名)」等が挙げられ、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体としては、三井化学社製の「タフマー(商品名)」等が挙げられ、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体としては、旭化成社製の「タフテック(商品名)」、クラレ社製の「セプトン(商品名)」、クレイトンポリマージャパン社製の「クレイトン(商品名)」等が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、田岡化学社製の「テクノリンク(商品名)」、東ソー社製の「メルセン」(商品名)、クラレ社製の「エバール」(商品名)、三菱ケミカル社製の「ソアノール」(商品名)等が挙げられる。
【0031】
変性ポリオレフィン樹脂の配合量は、0.1~10質量%、好ましくは1~5質量%である。配合量が0.1質量%未満では、該樹脂組成物からなる摺動部材の機械的強度、特に圧縮強さの向上に起因する耐荷重性の向上及び摺動特性の向上に効果が発揮されず、また配合量が10質量%を超えると該樹脂組成物の成形性を悪化させる虞がある。
【0032】
本発明の樹脂組成物に配合される植物由来フィラーは、該樹脂組成物からなる摺動部材に分散含有されて当該摺動部材の機械的強度、特に圧縮強さを向上させると共に後述する潤滑油を吸収保持する担体の役割を果たす。この植物由来フィラーは、該フィラーの表面が前記相溶化剤の役割を果たす変性ポリオレフィン樹脂によって被覆されて樹脂組成物との馴染み性が良くなり、植物由来フィラーの分散性の向上が図られる。
【0033】
植物由来フィラーとしては、例えば、木材繊維(アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹パルプ及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹パルプ及びこれらの混合材など)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維〔綿繊維(コットンリンター)、カポックなど〕、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維〔マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻(ロープーマ)など〕、果実繊維(やし)、いぐさ、麦わら等の天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維)、セルロース粒状物(粉末)、セルロース繊維を原料として機械的解繊処理を行って製造されたセルロースナノ繊維(セルロースナノファイバー)が挙げられる。
【0034】
植物由来フィラーとしてのセルロース繊維及びセルロースナノ繊維の平均繊維長(L)は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.5~80μmであり
、平均繊維径(直径:D)は、好ましくは4nm~100μm、より好ましくは4nm~90μmであり、アスペクト比(L/D)は、好ましくは2~2,000、より好ましくは20~1,000である。また、セルロース粒状物の平均粒子径は、50μm以下、好ましくは40μm以下である。これらの性状の繊維又は粒状物であれば植物由来ポリエチレン樹脂に対する分散性や親和性を向上させることができ、該樹脂組成物からなる摺動部材の機械的強度、特に圧縮強さを向上させることができる。
【0035】
本発明において使用する植物由来フィラーとしてのセルロース繊維及びセルロースナノ繊維の具体例を例示すると、例えば、セライト社製の「Fibra・Cel(商品名)」、中越パルプ工業社製の「ナノフォレスト(商品名)」、スギノマシン社製の「BiNFi-s(ビンフィス:商品名)」、日本製紙社製の「セレンピア(商品名)」、ダイセルファインケム社製の「セリッシュ(商品名)」、大阪ガスケミカル社製の「フルオレンセルロース(商品名)」等が挙げられる。また、セルロース粒状物の具体例を例示すると、例えば、日本製紙社製の「KCフロック(商品名)」、旭化成社製の「セオラス(商品名)」、トスコ社製の「トスコ麻セルロースパウダー、トスコシルクパウダー、バンブーパウダー(いずれも商品名)」、ティーディーアイ社製の「セルロースパウダー(商品名)」等が挙げられる。
【0036】
植物由来フィラーの配合量は、0.1~50質量%、好ましくは2~30質量%である。配合量が0.1質量%未満では該樹脂組成物からなる摺動部材の強度向上に効果が発揮されず、また配合量が50質量%を超えると成形性を悪化させる虞がある。
【0037】
本発明の樹脂組成物に配合される潤滑油は、該樹脂組成物からなる摺動部材に低摩擦性を付与し、摺動性を向上させるものである。
【0038】
潤滑油としては、スピンドル油、冷凍機油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、シリンダー油、ギア油等のパラフィン系及びナフテン系鉱油、鯨油等の動物油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸を主成分とする亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、綿実油、ヤシ油、ナタネ油、ホホバ油等の植物油、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー及びエチレン-プロピレン共重合体等のα-オレフィンオリゴマー又はその水素化物等の炭化水素系合成油、ポリオキシアルキレングリコール油、ポリフェニルエーテル油等のエーテル系合成油が挙げられる。
【0039】
潤滑油の配合量は、0.5~5質量%、好ましくは1~3質量%である。配合量が0.5質量%未満では、摺動性の向上に効果がなく、また配合量が5質量%を超えると、摺動部材の機械的強度の低下や表面外観の低下、スクリューへの食み込み不良等を発生する虞がある。
【0040】
本発明の樹脂組成物においては、追加成分として、滑剤及び着色剤(顔料又は染料)を配合してもよい。
【0041】
滑剤は、樹脂組成物に配合される潤滑油と併用する場合、滑剤が潤滑油を吸収保持する担体の役割を果たすために、潤滑油としての配合量を多くすることができ、摺動部材の摺動性を一層向上させることができる。
【0042】
滑剤としては、成形加温時に液状を呈する潤滑油剤であり、モンタンワックス及びカルナウバワックス等の天然ワックス、炭化水素系ワックス及び高級脂肪酸、高級脂肪酸を誘導して得られるワックス等のロウ状を呈する物質が挙げられる。
【0043】
炭化水素系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0044】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、アラキジン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの炭素数10以上、好ましくは炭素数12以上の高級飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、オクタデセン酸、アラキドン酸、カドレイン酸、エルカ酸、パリナリン酸などの炭素数が12以上の不飽和脂肪酸などが挙げられる。
【0045】
上記の高級脂肪酸を誘導して得られるワックスとしては、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩などが挙げられる。
【0046】
高級脂肪酸エステルは、前記の高級脂肪酸と、一価の飽和脂肪族アルコール、一価の不飽和脂肪族アルコール、多価アルコール等の脂肪族アルコールとの反応によって得られるエステルである。
【0047】
高級脂肪酸エステルの具体例としては、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート等の炭素数12~26の高級脂肪酸と炭素数12~24のモノアルコールとのエステル、エチレングリコール-モノ又はジパルミチネート、エチレングリコールモノ又はジステアレート、エチレングリコールモノ又はジベヘネート、エチレングリコールモノ又はジモンタネート等の炭素数2~6のアルキレンジオールと炭素数12~26の高級脂肪酸とのエステル、グリセリンモノ、ジ又はトリパルミチネート、グリセリンモノ、ジ又はトリステアレート、グリセリンモノ、ジ又はトリベヘネート、グリセリンモノ、ジ又はトリモンタネート等の炭素数3~6のアルカントリオール(例えばグリセリン等)と炭素数12~24の高級脂肪酸とのモノ、ジ又はトリエステル;ペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ又はテトラパルミチネート、ペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ又はテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ又はテトラベヘネート、ペンタエリスリトールモノ、ジ、トリ又はテトラモンタネート等のペンタエリスリトールと炭素数14~24の高級脂肪酸とのモノ、ジ、トリ又はテトラエステル等が挙げられる。
【0048】
高級脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びベヘニン酸アミド等の飽和高級脂肪酸アミド;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド及びエライジン酸アミド等の不飽和高級脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
【0049】
高級脂肪酸塩(金属石ケン)は、前記高級脂肪酸とリチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等のアルカリ土類金属又は亜鉛との塩であり、高級脂肪酸塩の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0050】
これら滑剤の具体例としては、例えば、炭化水素系ワックスである酸化ポリエチレンワックスとしてクラリアントケミカルズ社製の「リコワックス(商品名)」、高級脂肪酸エステルであるグリセリンモノステアレートとして東邦化学工業社製の「アンステックス(商品名)」、理研ビタミン社製の「リケマール(商品名)」、高級脂肪酸アミドであるラウリン酸アミド、パルチミン酸アミドとして三菱ケミカル社製のダイヤミッド(商品名)」、エチレンビスステアリン酸アミドとして花王社製の「カオーワックス(商品名)」、高級脂肪酸塩であるステアリン酸カルシウムとして太平化学産業社製の「ステアリン酸カルシウム」、ステアリン酸亜鉛として日東化成工業社製の「ステアリン酸亜鉛」等が挙げられる。
【0051】
滑剤の配合量は、前記潤滑油の配合量との兼ね合いで決定され、配合量としては、0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%である。配合量が0.1質量%未満では、潤滑油を吸収保持する担体としての役割を果たすことができず、また配合量が5質量%を超えると摺動部材の機械的強度の低下や表面外観の低下、スクリューへの食い込み不良等を発生する虞がある。
【0052】
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等の染料、酸化チタン、硫化カドミウム、フタロシアニン及びカーボンブラック等の顔料等が挙げられる。配合量は、1~5質量%、好ましくは1~3質量%である。配合量が1質量%未満では着色剤としての効果がなく、また配合量が5質量%を超えると摺動部材の摺動性に悪影響を与える虞がある。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、従来の樹脂組成物の調製法として一般に用いられている公知の方法により容易に調製される。例えば、植物由来ポリエチレン樹脂と、添加剤としての石油由来ポリエチレン樹脂と変性ポリオレフィン樹脂と潤滑油及び植物由来フィラーを、あるいはこれらに加えて滑剤及び着色剤を所定量計量し、これらをヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合機で混合して混合物を作製し、該混合物を一軸又は二軸のスクリュー型押出機に投入し、溶融混練して紐状成形物(ストランド)に成形した後、裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とする方法、又は添加剤としての石油由来ポリエチレン樹脂と変性ポリオレフィン樹脂と潤滑油及び植物由来フィラーを、あるいはこれらに加えて滑剤及び着色剤を所定量計量し、これらを前記と同様の混合機で混合して混合物を作製し、該混合物を一軸又は二軸のスクリュー型押出機に投入し、溶融混練して紐状の成形物に成形した後、裁断してペレットを作製し、このペレットを主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に所定量の割合で配合してこれを成形材料とする方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、成形機のスクリューへの食い込み性がよく、成形加工性が優れており、該樹脂組成物からなる摺動部材によれば、植物由来ポリエチレン樹脂の機械的強度を向上させると共に、相手材との摺動摩擦においては、低摩擦性及び耐摩耗性を含む摺動特性を向上させることができる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何等限定されない。なお、樹脂組成物から成形材料への成形性及び成形材料から摺動部材への成形性の評価及び該樹脂組成物からなる摺動部材の摩擦摩耗特性の評価は、次の方法で行った。
【0056】
<成形性(1)>
押出機を使用して混合物(樹脂組成物)を溶融混錬し、紐状成形物を成形した後、裁断してペレットを作製する際の当該紐状成形物の切れ(切断)の有無、スクリューの食い込み性及びペレットの表面状態〔ボイド(気泡)の発生等〕を目視し、表1の評価基準にて評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
<成形性(2)>
射出成形機を使用してペレットから摺動部材を成形する際の当該ペレットのスクリューへの食い込み性、当該摺動部材の金型からの離型性及び摺動部材の表面状態(剥離等)を目視し、表2の評価基準にて評価した。
【0059】
【表2】
【0060】
<摩擦摩耗特性>
スラスト試験機を用いて、表3に示す条件で摩擦係数及び摩耗量を測定した。試験方法は、図1に示すように、一辺が30mm、厚さが3mmの方形状の軸受試験片(摺動部材)1を試験台に固定し、相手材となる円筒体2から軸受試験片1の一方の面3に、当該面3に直交する方向Xに所定の荷重をかけながら、円筒体2を当該円筒体2の軸心4の周りで方向Yに回転させ、軸受試験片1と円筒体2の間の摩擦係数及び試験後の軸受試験片1の面3の摩耗量を測定した。摩擦係数については、試験を開始してから1時間経過以降、試験終了までの安定時の摩擦係数を示し、また摩耗量については、試験時間8時間後の摺動面の寸法変化量で示した。
【0061】
【表3】
【0062】
以下の諸例において、植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリエチレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、潤滑油、植物由来フィラー、滑剤及び着色剤は、以下に示す材料を使用した。なお、以下の材料は、全て商品名を示す。
〔A〕植物由来ポリエチレン樹脂
(A-1)ブラスケム社製の植物由来高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)「GREEN-SHE150」 密度0.948g/cm MFR(メルトフローレート:温度190℃、荷重2.16kg)1.0g/10分
〔B〕石油由来ポリエチレン樹脂
(B-1)高密度ポリエチレン樹脂 プライムポリマー社製の「ハイゼックス」
(B-2)超高分子量ポリエチレン樹脂 三井化学社製の「ミペロン」
(B-3)無水マレイン酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂 三井化学社製の「変性リュブマー」
〔C〕変性ポリオレフィン樹脂
(C-1)エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物 田岡化学社製の「テクノリンクK431-80」(ケン化前の酢酸ビニル含有量28質量%、ケン化度80%、MFR4g/10分:190℃、荷重2.16kg)
(C-2)エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物 東ソー社製の「メルセンH-6051」(ケン化前の酢酸ビニル含有量28質量%、ケン化度100%、MFR5.5g/10分:190℃、荷重2.16kg)
(C-3)無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂 三井化学社製の「アドマーNF518」(MFR2.2g/10分:230℃、荷重2.16kg)
(C-4)無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体 三井化学社製の「タフマーMP0620」(MFR0.3g/10分:230℃、荷重2.16kg)
(C-5)無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体 三井化学社製の「タフマーMH7020」(MFR1.5g/10分:230℃、荷重2.16kg)
(C-6)無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体 旭化成ケミカルズ社製の「タフテックH1517」(MFR3.0g/10分:230℃、荷重2.16kg)
〔D〕潤滑油
(D-1)パラフィン油 MORESCO社製の「モレスコホワイトP-350P」
(D-2)炭化水素系合成油(エチレン・αオレフィンオリゴマー) 三井化学社製の「ルーカント」
(D-3)植物油(ホホバ油) ミツバ貿易社輸入品の「ホホバゴールデン」
〔E〕植物由来フィラー
(E-1)セルロースファイバー セライト社製の「Fibra-Cel SW-10:植物由来、平均繊維径:20μm、平均繊維長700μm」
(E-2)セルロースナノファイバー ダイセルファインケム社製の「セリッシュKY-100G:平均繊維径100nm」
(E-3)粉末セルロース(木材パルプ) 日本製紙社製の「KCフロック:平均粒子径37μm」
(E-4)竹繊維 那賀ウッド社製の「竹粉末:平均粒径178μm」
(E-5)麻繊維 トスコ社製の「トスコ麻セルロースパウダー:平均粒径22μm」
(E-6)木粉 那賀ウッド社製の「杉粉末:平均粒径178μm」
〔F〕滑剤
(F-1)炭化水素系ワックス(酸化ポリエチレンワックス) クラリアントケミカルズ社製の「リコワックス」
(F-2)高級脂肪酸アミド(エチレンビスステアリン酸アミド) 花王社製の「カオーワックス」
(F-3)高級脂肪酸エステル(グリセリンモノステアレート) 東邦化学工業社製の「アンステックス」
〔G〕着色剤
(G-1)カーボンブラック ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「ケッチェンブラック」
(G-2)フタロシアニンブルー 東京化成工業社製の「Pigment Blue 15」
【0063】
実施例1~20
主成分をなす植物由来ポリエチレン樹脂と、添加剤として(B-1)から(B-3)の石油由来ポリエチレン樹脂と、(C-1)から(C-6)の変性ポリオレフィン樹脂と、(D-1)から(D-3)の潤滑油と、(E-1)から(E-6)の植物由来フィラーと、(F-1)から(F-3)の滑剤、(G-1)及び(G-2)の着色剤を夫々用意し、これらを表4から表7に示す量比で計量し、次いでこれらをタンブラーミキサーで混合して混合物を作製したのち、該混合物を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状成形物を成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。この製造工程において、紐状成形物の切れ(切断)の有無、スクリューの食い込み性及びペレットの表面状態(ボイドの発生等)を目視にて観察し、その評価を表4~表7の諸特性に示す。
【0064】
次いで、この成形材料をスクリュー型射出成形機に供給して射出成形し、一辺30mm、厚さ3mmの寸法を有する方形状摺動部材を作製した。この製造工程において、ペレットから摺動部材を成形する際の当該ペレットのスクリューへの食い込み性、方形状摺動部材の金型からの離型性及び摺動部材の表面状態(剥離等)を目視にて観察し、その評価を表4~表7の諸特性に示した。また、方形状摺動部材について、摩擦係数及び摩耗量の評価を前記評価方法に基づき実施した結果を表4~表7の諸特性に示す。
【0065】
比較例1~4
前記実施例と同様の植物由来ポリエチレン樹脂と、添加剤として(B-3)の石油由来ポリエチレン樹脂と、(C-2)の変性ポリオレフィン樹脂と、(D-3)の潤滑油と、(E-3)の植物由来フィラーと、(F-3)の滑剤及び(G-1)の着色剤を夫々用意し、これらを表7に示す量比で計量し、次いでこれらをタンブラーミキサーで混合して混合物を作製したのち、該混合物を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状成形物を成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。この製造工程において、紐状成形物の切れ(切断)の有無、スクリューの食い込み性及びペレットの表面状態(ボイドの発生等)を目視にて観察し、その評価を表8の諸特性に示す。
【0066】
次いで、この成形材料をスクリュー型射出成形機に供給して射出成形し、一辺30mm、厚さ3mmの寸法を有する方形状摺動部材を作製した。この製造工程において、ペレットから摺動部材を成形する際の当該ペレットのスクリューへの食い込み性、方形状摺動部材の金型からの離型性及び摺動部材の表面状態(剥離等)を目視にて観察し、その評価を表8の諸特性に示した。また、方形状摺動部材について、摩擦係数及び摩耗量の評価を前記評価方法に基づき実施した結果を表8の諸特性に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
上記の試験結果から、実施例1から実施例20の樹脂組成物は、押出成形におけるスクリューの食い込み性が良好であり、紐状成形物の成形工程においても当該紐状成形物の切れ(切断)は認められなかった。また、紐状成形物から形成された成形材料(ペレット)の射出成形機のスクリューへの食い込み性がよく成形加工性が優れており、成形品の表面に剥離がなく、優れた表面状態を有していることが認められた。一方、比較例1から比較例3の樹脂組成物は、押出成形におけるスクリューの食い込み性及び紐状成形物の成形性及び紐状成形物から形成された成形材料の成形性についてはとくに問題はなかったが、比較例4の樹脂組成物は、押出成形におけるスクリューの食い込み性が悪く、良好な紐状成形物を得ることができなかった。
【0073】
また、実施例1から実施例20の樹脂組成物からなる摺動部材は、いずれも低い摩擦係数を示すと共に摩耗量も少なかった。これに対して、比較例1の樹脂組成物からなる摺動部材は、摩擦係数が高く、摩耗量も非常に多い結果であった。また、比較例2及び比較例3の樹脂組成物からなる摺動部材は、特に摩耗量が多い結果であった。比較例4の樹脂組成物は、成形材料が得られず摺動部材を得ることができなかったので摩擦摩耗特性の試験は実施しなかった。以上より、実施例の樹脂組成物からなる摺動部材は、比較例の樹脂組成物からなる摺動部材の摺動特性との比較において、摺動特性が優れていることが分かる。
【0074】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物及び摺動部材によれば、成形機のスクリューへの食い込み性がよく成形加工性に優れており、成形品の表面に剥離がなく優れた表面状態を有しており、樹脂組成物からなる摺動部材によれば、相手材との摺動摩擦においては、低摩擦性及び耐摩耗性を含む摺動特性を大幅に向上させることができる樹脂組成物及び摺動部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 軸受試験片(摺動部材)
2 円筒体(相手材)
4 軸心
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合され
前記潤滑油は、動物油、植物油及びエーテル系合成油から選択される摺動部材用樹脂組成物。
【請求項2】
植物由来ポリエチレン樹脂は、植物由来高密度ポリエチレン樹脂からなる請求項1に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項3】
石油由来ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂及び酸変性超高分子量ポリエチレン樹脂から選択される請求項1又は2に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項4】
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、及び分子鎖中にアセトキシ基を有するポリオレフィン樹脂をアルカリによりケン化したポリオレフィン樹脂ケン化物から選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項5】
不飽和カルボン酸、その無水物又はそれらの誘導体でグラフト変性したポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体から選択される請求項4に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン樹脂ケン化物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる請求項4に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項7】
植物由来フィラーは、セルロース繊維、セルロース粒状物(粉末)及びセルロースナノ繊維(セルロースナノファイバー)から選択される請求項1から6に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項8】
追加成分として、天然ワックス、炭化水素系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸塩(金属石ケン)から選択される滑剤が0.1~5質量%の割合で配合される請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項9】
追加成分として、染料又は顔料からなる着色剤が1~5質量%の割合で配合される請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の摺動部材用樹脂組成物(以下、樹脂組成物と略称する)は、主成分の植物由来ポリエチレン樹脂に加えて、添加剤として石油由来ポリエチレン樹脂0.1~20質量%と、変性ポリオレフィン樹脂0.1~10質量%と、潤滑油0.5~5質量%及び植物由来フィラー0.1~50質量%が配合され、前記潤滑油は、動物油、植物油、及びエーテル系合成油から選択される