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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059834
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】処置方法および新規構築物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20240423BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240423BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 5/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K38/02 ZNA
A61K47/42
A61P9/00
A61P27/02
A61P27/04
A61P35/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/00
A61K47/62
A61K38/10
C07K7/00
C07K5/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026786
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2019558511の分割
【原出願日】2018-04-30
(31)【優先権主張番号】731353
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(31)【優先権主張番号】731364
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508037005
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コリン リチャード グリーン
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー ポール コウチーニョ
(72)【発明者】
【氏名】イルバ ダナ ラペントホール
(57)【要約】
【課題】処置方法および新規構築物の提供。
【解決手段】本発明は、低酸素細胞への化合物の標的化送達、例えば、低酸素症に関連する疾患および障害の処置の新規方法であって、低酸素細胞に送達するために標的化キャリアペプチドおよび化合物を含む構築物を投与することを含む方法を提供する。本発明は、新規構築物、新規構築物をコードする核酸、および/または新規構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの投与による眼の疾患または障害の処置のための新規方法も提供する。本発明は、新規構築物、このような構築物をコードする核酸、および/またはこのような構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターをさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低酸素細胞に化合物を標的化するための新規方法(これに関与する処置方法を含む)、およびこのような使用のための構築物に関する。本発明は、眼の障害および/または疾患の処置において使用するための新規方法ならびにこのような使用のための構築物に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患および障害は、低酸素細胞および/または組織に関連する。例えば、加齢性黄斑変性(AMD)と糖尿病性網膜症は両方、網膜の虚血に関連し、網膜色素上皮細胞を死滅させる。さらなる例として、腫瘍(例えば、がんの腫瘍)は、血管供給が乏しく、低酸素でありおよび/または低酸素である部分もしくはゾーンを有し、酸素レベルの低い組織をもたらす。腫瘍の場合には、継続した虚血によって、正常細胞よりも低酸素耐性腫瘍細胞の生存が促進され得る。腫瘍血管における構造上の異常は、処置に対する治療応答に影響を及ぼす場合がある。
【0003】
さらなる例として、卒中および一過性脳虚血発作、心虚血、虚血性大腸炎(大腸の虚血)、敗血症、急性下肢虚血、皮膚虚血、多発性硬化症、血管性認知症、およびアルツハイマー病を含む、低酸素症を導く低灌流に関連するいくつかの疾患および障害が存在する。
【0004】
低酸素症に関連するある特定の疾患に利用可能ないくつかの処置が存在するが、これらには問題がない訳ではない。
【0005】
例えば、急性虚血に対する現在の処置選択肢は、最も一般的には、虚血の原因(例えば、血栓症)を標的化し、抗凝血剤の注射、血栓溶解、塞栓除去、外科的血行再建、または切断を含む。別の選択肢は、罹患した細胞の有酸素代謝率を低減しようとして、身体または器官の温度を低下させ、低酸素症の即時効果を低減することである。しかしながら、虚血組織は、このような処置後も変質し続ける。例えば、敗血症は、低灌流の発症を伴う。次いで、処置の手法は、虚血発作の次の作用を制限する試みへと移行する。しかしながら、これらの手法は、オフターゲット作用および副作用を伴うことが多い。
【0006】
同様に、慢性虚血に関連する疾患および障害の処置に対する現在の手法は、オフターゲット作用および副作用を伴う。例えば、AMDと糖尿病性網膜症は両方、現在、例えば、VEGF-Trapを含む抗VEGF剤の硝子体内注射によって主に処置される。長期処置は、処置の5年後に、いくつかの症例でベースラインを下回る最高矯正視力に関する抗VEGF耐性を生じる場合があることが最近認識されている(1~3)。さらに、抗VEGF剤の過剰使用は、良好な血管の損失の原因となる場合があり、組織虚血が増加する(24)。
【0007】
腫瘍の症例では、化学療法の副作用について十分に文書化されている。これらの副作用は、がんの処置において使用する治療剤が、非特異的に細胞に取り込まれ、正常細胞に有害な作用を有するという事実の原因となることが多い。
【0008】
コネキシンチャネル遮断剤は、慢性炎症を低減し、血管完全性を促進することが以前に示されている(18、29、30)。ある特定のコネキシンチャネル遮断剤、例えば、Gap19は、コネキシンの細胞質ドメインに結合するために細胞に侵入する必要がある。例えば、Gap19は、コネキシンCx43の細胞質テイルに結合する。真核細胞の原形質膜は、多くの化学化合物に対する透過性に乏しく、例えば、治療剤または実験試薬として、特に、それらが有効であるために細胞質に到達する必要がある場合に、それらの有効性を著しく低減する。Gap19などのコネキシンチャネル遮断剤の透過性が乏しいために、有効性を達成するために、高濃度が以前から使用されている(6、7)。しかしながら、高濃度でのGap19の投与は、オフターゲット作用などの望ましくない副作用または求められていない免疫応答を有する場合がある。
【0009】
脂質、ポリカチオン、ナノ粒子およびペプチドベースの方法の使用を含む、化学化合物の細胞透過性を改善するための技術が開発されている。しかしながら、これらの技術に問題がない訳ではない。例えば、細胞透過性キャリアペプチドは大きく、製造に費用がかかる場合があるため、これらを商業的に実行不能にする。キャリアペプチドはまた、これらが有する分子のコンフォメーションを妨害し、これらの化合物の有効性を低減する場合がある。キャリアペプチドはまた、標的組織または細胞に対する特異性を欠き、望ましくない可能性のあるオフターゲット作用をもたらす場合がある。多くのキャリアペプチドはカチオン性が高い。例えば、これらは、アミノ酸であるアルギニンを高濃度で含有する場合がある。このようなキャリアペプチドは、誘導された膜漏出のために、高濃度の毒性を示す場合がある(31)。
【0010】
上記の例は、低酸素細胞への送達に関する代わりの処置選択肢、および細胞内で作用するコネキシン(connexion)チャネル遮断剤の送達に関する代わりの選択肢の必要性を実証する。
本明細書で言及される刊行物の書誌詳細は、本明細書の末尾にまとめられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Abudara,V.ら、Front Cell Neurosci(2014)8:306頁
【非特許文献2】Ponsaerts,R.ら、FASEB J(2010)24(11):4378~95頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
目的
本発明の目的は、低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法、低酸素症と関連する疾患または障害を処置する方法、眼の疾患または障害を処置する方法、構築物の使用、核酸の使用、構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用、化合物の取込みを増加させる方法、化合物の取込みを増加させるための医薬を調製する方法、治療剤のオフターゲット作用を低減する方法、構築物、構築物をコードする核酸、および/または先行技術の不利益を克服もしくは改善する構築物をコードする核酸ベクターを提供することである。本発明のさらなる代わりの目的は、公衆に有益な選択肢をもたらすことである。
【0013】
発明の説明
本発明は、低酸素細胞への化合物の標的化送達、例えば、低酸素症に関連する疾患および障害の処置の新規方法であって、低酸素細胞に送達するための標的化キャリアペプチドおよび化合物を含む構築物の投与を含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、新規構築物、新規構築物をコードする核酸、および/または新規構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの投与による眼の疾患および障害の処置のための新規方法も提供する。
【0015】
本発明は、新規構築物、このような構築物をコードする核酸、および/またはこのような構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターをさらに提供する。
【0016】
したがって、第1の広範な態様では、本発明は、被験体における低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)化合物を含む構築物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
第2の広範な態様では、本発明は、被験体における低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド化合物を含む構築物をコードする核酸を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0018】
第3の広範な態様では、本発明は、被験体における低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド化合物を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0019】
第4の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用な治療剤を含む構築物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
第5の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0021】
第6の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用なペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0022】
第7の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0023】
第8の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用なペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0024】
第9の広範な態様では、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0025】
第10の広範な態様では、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用な治療剤を含む構築物を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0026】
第11の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0027】
第12の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用なペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0028】
第13の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0029】
第14の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)疾患または障害を処置するのに有用なペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
第15の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
第16の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)治療剤を含む構築物の使用を提供する。
【0032】
第17の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための医薬の製造における(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。
【0033】
第18の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。
【0034】
第19の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。
【0035】
第20の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0036】
第21の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0037】
第22の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害の処置のための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)治療剤を含む構築物の使用を提供する。
【0038】
第23の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。
【0039】
第24の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害の処置のための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。
【0040】
第25の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。
【0041】
第26の広範な態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害の処置のための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド治療剤を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0042】
第27の広範な態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0043】
第28の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)化合物を含む構築物を、低酸素細胞の集団と接触させることを含む、方法を提供する。
【0044】
第29の広範な態様では、本発明は、低酸素および非低酸素細胞の混合集団における低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)化合物を含む構築物を、細胞の混合集団または細胞の混合集団を含む組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0045】
第30の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド化合物を含む構築物をコードする核酸を、低酸素細胞の集団と接触させることを含む、方法を提供する。
【0046】
第31の広範な態様では、本発明は、低酸素および非低酸素細胞の混合集団における低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)化合物を含む構築物をコードする核酸を、細胞の混合集団または細胞の混合集団を含む組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0047】
第32の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)ペプチド化合物を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、低酸素細胞の集団と接触させることを含む、方法を提供する。
【0048】
第33の広範な態様では、本発明は、低酸素および非低酸素細胞の混合集団における低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)化合物を含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、細胞の混合集団または細胞の混合集団を含む組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0049】
第34の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞(複数可)による化合物(治療剤を含む)の取込みを増加させる方法であって、化合物をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドに接続することを含む、方法を提供する。
【0050】
第35の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞(複数可)によるペプチド化合物(治療剤を含む)の取込みを増加させる方法であって、ペプチド化合物をコードする核酸をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドをコードする核酸に接続することを含む、方法を提供する。
【0051】
第36の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞(複数可)による化合物(治療剤を含む)の取込みを増加させるための医薬を調製する方法であって、化合物をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドに接続することを含む、方法を提供する。
【0052】
第37の広範な態様では、本発明は、低酸素細胞(複数可)によるペプチド化合物(治療剤を含む)の取込みを増加させるための医薬を調製する方法であって、ペプチド化合物をコードする核酸をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドをコードする核酸に接続することを含む、方法を提供する。
【0053】
第38の広範な態様では、本発明は、治療剤のオフターゲット作用を低減する方法であって、治療剤をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドに接続することを含み、治療剤が、低酸素細胞(複数可)への送達のためのものである、方法を提供する。
【0054】
第39の広範な態様では、本発明は、ペプチド治療剤のオフターゲット作用を低減する方法であって、ペプチド治療剤をコードする核酸をB型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドをコードする核酸に接続することを含む、方法を提供する。
【0055】
第40の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を提供する。
【0056】
第41の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0057】
第42の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を提供する。
【0058】
第43の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0059】
第44の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを提供する。
【0060】
第45の広範な態様では、本発明は、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0061】
本発明は、概して、部分、要素および特徴のうちの2つまたはそれより多くのいずれかまたはすべての組合せで、個々にまたは集合的に、本出願の明細書において言及されるかまたは示される前記部分、要素および特徴からなると述べることもでき、ここで、特定の整数が本明細書に述べられるが、これらは、本発明が関連する技術分野の公知の均等物を有し、このような公知の均等物は、個々に示されているかのように、本明細書に組み入れられると考えられる。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
被験体における低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)前記化合物を含む構築物を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目2)
低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)前記化合物を含む構築物を、低酸素細胞の集団と接触させることを含む、方法。
(項目3)
低酸素および非低酸素細胞の混合集団における低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)前記化合物を含む構築物を、細胞の混合集団または細胞の混合集団を含む組成物と接触させることを含む、方法。
(項目4)
低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)前記疾患または前記障害を処置するのに有用な治療剤を含む構築物を被験体に投与することを含む、方法。
(項目5)
眼の疾患または障害を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を被験体に投与することを含む、方法。
(項目6)
前記標的化キャリアペプチドが、アミノ酸配列LCL(配列番号4)を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCLRP(配列番号5);
LCLRPV(配列番号2);
LCLRPVG(配列番号6);
LCLRPVGAE(配列番号7);
LCLRPVGAESR(配列番号8);
LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9);
LCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCL(配列番号4);
LCLRP(配列番号5);
LCLRPV(配列番号2);
LCLRPVG(配列番号6);
LCLRPVGAE(配列番号7);
LCLRPVGAESR(配列番号8);
LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9);
LCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCLX(配列番号11);
XLCL(配列番号12);
XLCLX(配列番号13);
LCLK(配列番号14);
LCLH(配列番号15);
LCLR(配列番号16);
LCLE(配列番号17);
LCLN(配列番号18);
LCLQ(配列番号19);
VLCLR(配列番号20);または
LCLD(配列番号21);
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、
ここで、Xが、任意のアミノ酸である、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記標的化キャリアペプチドが、
XCXR(配列番号22);
ICIR(配列番号23);または
VCVR(配列番号24)
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
ここで、Xが、任意の疎水性アミノ酸である、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記標的化キャリアペプチドが、
XCXR(配列番号22);
ICIR(配列番号23);または
VCVR(配列番号24)
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、
ここで、Xが、任意の疎水性アミノ酸である、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記化合物または前記治療剤が、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、項目1から4または6から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害することができる、項目5または項目12に記載の方法。
(項目14)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、好ましくはギャップジャンクションを遮断することなく、Cx43ヘミチャネル開口を阻害することができる、項目5、12、または13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、
KQIEIKKFK(配列番号3);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目5または12から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、
KQIEIKKFK(配列番号3);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、項目5または12から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
低酸素症に関連する前記疾患または前記障害が、がんである、項目4または6から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
低酸素症に関連する前記疾患または前記障害が、卒中である、項目4または6から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記疾患または前記障害が、心血管疾患である、項目4または6から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記心血管疾患が、心虚血、心膜炎、心筋梗塞、および虚血性弁膜症からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
眼の前記疾患または前記障害が、AMD(ウェットおよび/またはドライAMDを含む)、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜卒中、黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、糖尿病性末梢性ニューロパチー、および視神経炎からなる群より選択される、項目3から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物。
(項目23)
前記標的化キャリアペプチドが、アミノ酸配列LCL(配列番号4)を含む、項目22に記載の構築物。
(項目24)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCLRP(配列番号5);
LCLRPV(配列番号2);
LCLRPVG(配列番号6);
LCLRPVGAE(配列番号7);
LCLRPVGAESR(配列番号8);
LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9);
LCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目22または項目23に記載の構築物。
(項目25)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCL(配列番号4);
LCLRP(配列番号5);
LCLRPV(配列番号2);
LCLRPVG(配列番号6);
LCLRPVGAE(配列番号7);
LCLRPVGAESR(配列番号8);
LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9);
LCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、項目22または項目23に記載の構築物。
(項目26)
前記標的化キャリアペプチドが、
LCLX(配列番号11);
XLCL(配列番号12);
XLCLX(配列番号13);
LCLK(配列番号14);
LCLH(配列番号15);
LCLR(配列番号16);
LCLE(配列番号17);
LCLN(配列番号18);
LCLQ(配列番号19);
VLCLR(配列番号20);または
LCLD(配列番号21);
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、
ここで、Xが、任意のアミノ酸である、項目22または項目23に記載の構築物。
(項目27)
前記標的化キャリアペプチドが、
XCXR(配列番号22);
ICIR(配列番号23);または
VCVR(配列番号24)
からなる群より選択されるアミノ酸を含み、
ここで、Xが、任意の疎水性アミノ酸である、項目22に記載の構築物。
(項目28)
前記標的化キャリアペプチドが、
XCXR(配列番号22);
ICIR(配列番号23);または
VCVR(配列番号24)
からなる群より選択されるアミノ酸からなり、
ここで、Xが、任意の疎水性アミノ酸である、項目23に記載の構築物。
(項目29)
コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害することができる、項目22から28のいずれか一項に記載の構築物。
(項目30)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、好ましくはギャップジャンクションを遮断することなく、Cx43ヘミチャネル開口を阻害することができる、項目22から29のいずれか一項に記載の構築物。
(項目31)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、
KQIEIKKFK(配列番号3);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目22から30のいずれか一項に記載の構築物。
(項目32)
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができる前記ペプチドが、
KQIEIKKFK(配列番号3);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);および
その機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、項目22から31のいずれか一項に記載の構築物。
(項目33)
項目22から32のいずれか一項に記載の構築物をコードする核酸。
(項目34)
項目22から32のいずれか一項に記載の構築物をコードする核酸を含む核酸ベクター。
【0062】
本発明のこれらのおよび他の態様は、そのすべての新規態様において検討されるべきであり、添付の図面を参照して、例のみとして与えられる以下の記載から明らかとなろう。
【0063】
いくつかの図面は、標識されたまたは様々な色で染色された細胞または細胞核を示す。黒白で再現される場合、これらの図面で目に見えるすべてのスポットは、別段述べられていなければ、使用された標識または染料に応じて、細胞または細胞核を表す。一部の場合には、図が黒白で再現される場合、色が非常にぼんやりとしたり見えなかったりするため、コントラストや明るさを増加させた。カラー写真を忠実に再現するよう変化させた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、Gap19およびXG19のhRMECによる取込みを示す。hRMEC細胞を、XG19(10、20または50μM)もしくはGap19(10、20、50または100μM)で処置するか、または対照として未処置のまま(ペプチドなし)とした。ペプチドをFITCで標識し、したがって、細胞質におけるFITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルにおける白の領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルにおける白の領域)。マージ(merge)パネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。この図は、わずか10μMの濃度で、有効なXG19の内皮細胞への取込みを示し、一方、Gap19単独では、50μMでさえ細胞内で検出不能である。
【0065】
図2図2は、Gap19およびXG19のARPE-19による取込みを示す。ARPE-19細胞を、XG19(10、20または50μM)、Gap19(10、20、50または100μM)で処置するか、または対照として未処置のまま(ペプチドなし)とした。ペプチドをFITCで標識し、したがって、細胞質におけるFITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルにおける白の領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルにおける白の領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。この図は、わずか10μMの濃度で、有効なXG19のARPE-19細胞への取込みを示し、一方、Gap19単独では、100μMでさえ細胞内で検出不能である。
【0066】
図3図3は、ARPE-19細胞へのTAT-Gap19およびXG19の取込みを示す。ARPE-19細胞を、XG19(10、20または50μM)もしくはTAT-Gap19(10、20、50μM)、Gap19(100μM)で処置するか、または対照として未処置のまま(ペプチドなし)とした。ペプチドをFITCで標識し、したがって、細胞質におけるFITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルにおける白の領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルにおける白の領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。TAT-Gap19は、この倍率で、XG19よりも高い細胞による取込みを有するようであり、TAT-Gap19は、主に、細胞核内に蓄積される(図4および4Aを参照のこと)。
【0067】
図4図4は、TAT-Gap19のARPE-19細胞内への細胞核による取込みを示す。ARPE19細胞におけるTAT-GAP19(右)およびXG19(左)の細胞核による取込みの観察および比較。ペプチドをFITCで標識し、したがって、FITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルにおける白の領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルにおける白の領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。TAT-Gap19はより高い取込みを有するようである一方、細胞核内に蓄積される。これは、細胞核の機能にとって有害となり得、付着したGap19がヘミチャネル開口の遮断に利用することができないことを意味する。
【0068】
図4A図4Aは、TAT-Gap19のARPE-19細胞内への細胞核による取込みを示す。これは、図4と同じであるが、黒白ではなくグレースケールで再現されている。ARPE19細胞におけるTAT-GAP19(右)およびXG19(左)の細胞核による取込みの観察および比較。ペプチドをFITCで標識し、したがって、FITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルにおける白のスポットとグレーの領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルにおけるグレーの領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。TAT-Gap19はより高い取込みを有するようである一方、FITCチャネルに見られる細胞核領域の白いスポットの存在によって示されるように、細胞核内に蓄積され、これは、XG19の取込みに関しては見られない。これは、細胞核の機能にとって有害となり得、Gap19がヘミチャネル開口の遮断に利用することができないことを意味する。
【0069】
図5図5は、XG19が、細胞毒性を示さないことを示す。濃度の増加するXG19(5μM(縦縞)、10μM(市松柄)または20μM(横縞))に1または24時間曝露され、対照(黒色)として未処置の細胞と比較されるARPE-19細胞のMTT細胞毒性アッセイ。試験した濃度または時点のいずれにおいても、XG19で処置した細胞と比較して、未処置細胞の細胞生存率に有意な差はなかった。このことは、XG19が、短時間間隔と長時間間隔の両方で、細胞に対して毒性でなかったことを示した。統計分析は、二元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用する事後比較(post hoc comparison)によって行った。
【0070】
図6図6は、ヘミチャネルに媒介されるEthD-1の取込みを示す。ARPE-19細胞を、ヘミチャネル開口を許容するために低カルシウム溶液のみで(上段左)、ヘミチャネル開口を遮断するために高カルシウム溶液で(上段右)、低カルシウム溶液中5μMのXG19(下段左)または5μMのFITC-XG19(下段右)で処置し、EthD-1(白い領域)の取込みを共焦点顕微鏡法で観察した。5μMのXG19(またはFITCがカップリングしたXG19)で処置した細胞は、EthD-1の取込みの低減を示し、Gap19によるヘミチャネル開口の阻害を示す(FITC標識は機能に影響を及ぼさないことを示す)。処置毎に4つの領域で平均EthD-1蛍光強度を測定することによって画像を定量化し、グラフにプロットした(右)(n=4;平均+SD)。一元配置ANOVAを事後ダネット検定(post hoc Dunett’s test)を用いて行い、有意性を低カルシウム対照との差として表した(***p<0.001、****p<0.0001)。
【0071】
図7-1】図7は、ヘミチャネルに媒介されるATP放出を示す。5μMのXG19(縞)、100μMのペプチド5(Pep5)(ひし形)および100μMのカルベノキソロン(CBX)(レンガ状)を、ARPE-19細胞に1時間適用し、その後低カルシウム溶液(ヘミチャネルを開口するために)(黒塗り)で25~45分間細胞を処置した。この溶液を採取し、ルミネセンスアッセイによってATPを測定した(n=3;平均+SD)。低濃度のXG19(わずか5μMでさえも)は、さらにより高い濃度の細胞外で作用するPep5と同程度にATP放出を低減するのに有効であった。二元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用する事後比較によって統計分析を行った。各時点で低カルシウム対照と比較して有意である(p<0.05、p***<0.001、p****<0.0001)。
図7-2】同上。
【0072】
図8図8は、XG19が、取込みの1時間および2時間後にCx43ヘミチャネルに媒介されるATP放出を阻害することを示す。ヘミチャネルの機能は、濃度を増加させたXG19(5μM(縦縞)、10μM(市松柄)または20μM(横縞))の細胞内取込みの1時間または24時間後のいずれかの、ARPE-19細胞におけるATP放出アッセイによって評価し、未処置細胞(黒)と比較した。XG19で処置した細胞は、1時間と24時間の両方の時点で、未処置細胞と比較して有意に少ないATP放出を示した。これは、XG19の機能が、細胞内取込みの24時間後に維持され得ることを示した。したがって、XG19は、取込みの24時間後に、生物学的に利用可能かつ機能的な形態にある。二元配置ANOVAおよびシダックの多重比較検定を使用する事後比較によって統計分析を行った。各時点で未処置対照と比較して有意である(p**<0.01、p***<0.001、p****<0.0001)。
【0073】
図9図9は、ARPE-19細胞における染料の擦過/ロードギャップジャンクションアッセイを示す。擦過されなかったARPE-19細胞(上段左)は、ルシファーイエロー染料を取り込まなかった(全パネルの白い領域)。擦過された細胞(白い破線)は、ギャップジャンクションの開口により隣接する細胞に移った損傷の部位で染料を取り込んだ(上段右)。カルベノキソロン(CBX)は、公知のギャップジャンクション遮断剤であり、ギャップジャンクション連絡、よって、染料の広がりを阻害した(下段左)。染料の広がりがXG19で処置した細胞において見られ、機能的ギャップジャンクションを示した(下段右)。ヘミチャネル開口を遮断することが以前に示された用量のXG19は、ギャップジャンクションのカップリングには効果を有さない。
【0074】
図10図10は、正常対高血糖性かつ炎症性ARPE-19細胞におけるシンデカン4発現を示す。ARPE-19細胞を、正常培地または高血糖および炎症溶液のいずれかに、1、3、6または24時間曝露した。細胞をシンデカン4について標識し、Alexa Fluor 488(AF488)で検出し(AF488パネルの白い領域)、細胞核をDAPI染色で可視化した(DAPIパネルの白い領域)。マージパネルは、各処置に対するAF488およびDAPIパネルの重複を示す。シンデカン4発現は、各処置に対するAF488の平均蛍光強度の3領域の測定値を得ることによって定量化し、グラフにプロットした(下段)(n=3;平均+SD)。二元配置ANOVAを、シダックの事後検定を用いて実行し、有意性を各時点に対する正常細胞からの発現の差として表す(**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。シンデカン4レベルは、高血糖性かつ炎症性細胞において増加した。
【0075】
図11図11は、正常対高血糖性かつ炎症性ARPE-19細胞におけるXG19およびGap19の取込みを示す。XG19およびGap19の取込みを、正常(培地)および高血糖性かつ炎症性ARPE-19細胞において調査し、ペプチドなしの対照と比較した。ペプチドをFITCで標識し、したがって、細胞質のFITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルの白い領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルの白い領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。XG19の取込みは、高血糖性かつ炎症性細胞において増加したが、一方、Gap19のみの取込みには変化はない。
【0076】
図12図12は、正常対低酸素ARPE-19細胞におけるシンデカン4発現を示す。ARPE-19細胞を、培地または低酸素症を誘導するための低酸素溶液のいずれかに、1、3、6または24時間曝露した。細胞をシンデカン4について標識し、Alexa Fluor 488(AF488)で検出し(AF488パネルの白い領域)、細胞核をDAPI染色で可視化した(DAPIパネルの白い領域)。マージパネルは、各処置に対するAF488およびDAPIパネルの重複を示す。シンデカン4発現は、各処置に対するAF488の平均蛍光強度の4領域の測定値を得ることによって定量化し、グラフにプロットした(下段)(n=4;平均+SD)。二元配置ANOVAを、シダックの事後検定を用いて実行し、有意性を各時点に対する正常細胞からの発現の差として表す(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。シンデカン4レベルは、正常条件と比較して、各時点の低酸素細胞で増加した。
【0077】
図13図13は、低酸素対正常ARPE-19細胞におけるXG19およびGap19の取込みを示す。XG19およびGap19の取込みを、正常(培地)および低酸素ARPE-19細胞において調査し、ペプチドなしの対照と比較した。ペプチドをFITCで標識し、したがって、細胞質のFITCレベルを可視化することによって取込みを観察し(FITCパネルの白い領域)、細胞核をDAPI染色によって可視化した(DAPIパネルの白い領域)。マージパネルは、各処置に対するDAPIおよびFITCパネルの重複を示す。XG19の取込みは、低酸素細胞において有意に増加したが、一方、Gap19のみの取込みに変化はなかった。したがって、低酸素細胞によるGap19の取込みの増加は、標的化キャリアペプチドの包含に依存した。
【0078】
図14図14は、XG19が、低酸素症の間の細胞生存率を維持することを示す。細胞を、HAIR溶液を適用することによって細胞を低酸素にする前に、5μM(縦縞)もしくは20μM(横縞)のいずれかのXG19で処置するかまたは未処置(クロスハッチ)とした。細胞生存率をMTTアッセイで評価し、対照としての正常培地中の細胞(黒)と比較した。XG19で処置した細胞の細胞生存率は、正常培地中の未処置細胞と有意に異ならなかった。HAIR中の未処置細胞は、正常培地中の未処置細胞と比較して有意に低い生存率を示した。これは、XG19が、低酸素症の間、細胞生存率を維持できることを示した。一元配置ANOVAを、ダネットの事後検定を用いて行い、有意性を正常培地対照における未処置細胞との差として表した(***p<0.001)。
【0079】
図15図15は、XG19が、HAIR溶液においてCx43ヘミチャネルに媒介されるATP放出を阻害することを示す。細胞を、HAIR溶液を適用して低酸素症を誘導する前に、5μM(縦縞)、10μM(市松柄)もしくは20μM(横縞)のXG19で処置するかまたは未処置(黒)のままとしてから、その後ATP放出アッセイによってヘミチャネル機能を評価した。すべてのXG19で処置した細胞は、未処置細胞と比較して有意に少ないATP放出を生じた。したがって、XG19は、特に、Cx43ヘミチャネルを阻害することによって、低酸素障害の間のATP放出を有意に低減した。一元配置ANOVAを、ダネットの事後検定を用いて行い、有意性をHAIR溶液中の未処置細胞との差として表した(***p<0.001、(****p<0.0001)。
【0080】
図16図16は、レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)マウスモデルの眼底測定値を示す。病変面積をレーザーによる誘導の1日および7日後に獲得した眼底の画像から測定し、眼当たりで平均した。1日目には、生理食塩水(n=8個の眼)、低用量(n=8個の眼)または高用量のXG19(n=7個の眼)の群の間に差はなかった。7日目には、生理食塩水で処置した群が最も大きな病変面積を生じたが、一方、高用量のXG19群は最も小さな病変面積を生じた。これは、XG19が、用量依存的様式で、病変面積を低減することができることを示した。
【0081】
図17図17は、レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)マウスモデルのエリプソイド体積(ellipsoid volume)の測定値を示す。レーザーによる誘導の7日後に獲得した光干渉断層撮影(OCT)画像を測定し、CNV領域のエリプソイド体積の測定値を得るために定量し、眼当たりで平均した。低用量のXG19(n=8個の眼)または高用量のXG19(n=7個の眼)で処置したマウスは、生理食塩水のみ(n=8個の眼)で処置したマウスと比較して、有意により小さいエリプソイド体積をもたらした。一元配置ANOVAをダネットの事後検定を用いて行い、有意性を生理食塩水の群との差として表した(**p<0.01、平均+SD)。この図は、XG19による処置が、CNV病変の体積を低減したことを示す。
【0082】
図18図18は、CNVレーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)マウスモデルの組織におけるシンデカン4およびグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の発現を示す。生理食塩水、低用量のXG19または高用量のXG19を注射したマウス由来の眼組織を、シンデカン4、GFAPに対して標識し、細胞核をDAPIで染色した。マージしたパネルは、各画像の上部の神経節細胞層(GCL)中間の内顆粒層(INL)および底部の外顆粒層(ONL)と配向されたマウスの網膜の細胞核のGFAP、シンデカン4の標識およびDAPI染色を示す。シンデカン4のパネルは、最も多い量のシンデカン4の標識が、GCL層からONLに下がって伸びて、生理食塩水を注射した群において見られることを示す。GFAPの標識は、GFAPパネルに示されるすべての群において見られたが、しかしながら、生理食塩水を注射した群のGFAPの標識は、XG19を注射した群におけるよりも強かった。生理食塩水を注射したマウスで見られるシンデカン4およびGFAP発現の上昇は、これらのマウスが網膜の炎症および虚血を経験していたことを示唆した。XG19を注射したマウスは、シンデカン4およびGFAP発現の低減によって示されるように、網膜の炎症および虚血を低減したため、CNVのマウスモデルにおいてXG19によって促進される治癒を示した。
【0083】
図19図19は、ヒトの網膜切片におけるシンデカン4の発現を示す。ヒトドナーの組織由来の網膜切片は、シンデカン4の発現(左)に対して標識されるかまたは抗体対照として未標識(右)であった。シンデカン4は、Alexa Fluor 488(AF488)により検出され(AF488パネルの白い領域)、細胞核は、DAPI染色によって可視化された(DAPIパネルの白い領域)。画像では、外側網膜層;外顆粒層(ONL)、網膜色素上皮(RPE)および脈絡膜に焦点を当てる。この図は、シンデカン4が、XG19が標的化する眼組織、特に、血管周辺に存在することを示す。
【0084】
図20図20は、ヒトドナーの組織の黄斑領域におけるシンデカン4およびGFAPの発現を示す。マージしたパネルは、正常または糖尿病性網膜症(DR)のヒトドナーの組織におけるGFAP、シンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。シンデカン4パネルは、正常組織と比較したDR組織における標識の増加を示す。神経節細胞層(GCL)、とりわけ、ミュラー細胞エンドフィートに、および切片の上部に見られる血管周辺にシンデカン4標識の増加があった。DR組織も、強力なシンデカン4標識を示す、十分に保存された内境界膜(ILM)を有した。GFAPパネルも、組織の上部のGCLに見られるように、正常と比較して、DR組織において標識の増加を示した。これは、GFAPが活性化星状細胞およびミュラー細胞を標識するため、組織損傷および網膜炎症を示した。シンデカン4およびGFAPの発現は、DRで上方調節され、組織損傷の指標である。したがって、XG19を使用して、これらの組織のシンデカン4を標的化し、網膜の炎症および虚血を低減することができる。
【0085】
図21図21は、ヒトドナーの組織の傍黄斑領域におけるシンデカン4およびGFAPの発現を示す。マージしたパネルは、正常または糖尿病性網膜症(DR)のヒトドナーの組織におけるGFAP、シンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。シンデカン4パネルは、正常組織と比較したDR組織における標識の増加を示した。下部網膜層の調節不全をもたらす、GCLとINLの間の組織の上部にシンデカン4標識の増加があり、これは、この領域における漏出性血管の成長を示唆した。GFAPパネルも、組織の上部のGCLに見られるように、正常と比較して、DR組織において標識の増加を示した。これは、組織損傷および網膜炎症を示した。シンデカン4およびGFAPの発現は、DRで上方調節され、組織損傷の指標であった。したがって、XG19を使用して、これらの組織のシンデカン4を標的化し、網膜の炎症および虚血を低減することができる。
【0086】
図22図22は、ラットの敗血症モデルの肺組織におけるシンデカン4の発現を示す。マージしたパネルは、敗血症モデルに由来し、疑似組織と比較したラットの肺組織におけるシンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。シンデカン4の発現は、シンデカン4パネルに見られるように、敗血症組織におけるより、疑似組織における方が低かった。疑似組織は、組織の残りの部分において、弱いシンデカン4標識を有する細気管支および肺胞周辺に別個のシンデカン4の発現を有する。敗血症組織は、細気管支および肺胞周辺の発現の上昇した部分全体を通して強いシンデカン4の発現を有する。これは、敗血症によって引き起こされる全体的な炎症が、シンデカン4の発現の増加によって示される肺組織における損傷をもたらしたことを示す。
【0087】
図23図23は、ラットの急性膵炎モデルの肺組織におけるシンデカン4の発現を示す。マージしたパネルは、急性膵炎(AP)モデルに由来し、疑似対照と比較したラットの肺組織におけるシンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。シンデカン4の発現は、シンデカン4パネルに見られるように、AP組織におけるより、疑似組織における方が低かった。疑似組織は、組織の残りの部分において、弱いシンデカン4標識を有する細気管支および肺胞周辺に別個のシンデカン4の発現を有した。AP組織は、細気管支および肺胞周辺の発現の上昇した部分全体を通して強いシンデカン4の発現を有する。これは、APによって、肺のシンデカン4の上方調節がもたらされることを示す。
【0088】
図24図24は、正常副鼻腔および慢性副鼻腔炎(CRS)ヒト組織のシンデカン4標識を示す。シンデカン4(左パネル)に対して標識し、DAPI(真中のパネル)で細胞核を染色した正常副鼻腔(上のパネル)および慢性副鼻腔炎(下のパネル)のヒト組織切片の共焦点画像。マージした画像を右のパネルに示す。画像は、各群において分析した3つの個々の組織の代表である。これらの組織のシンデカン4の発現を、各画像の平均蛍光強度を測定することによって定量した(CRS試料および3つの正常試料のそれぞれに対してn=3;平均+SD)。この図は、シンデカン4の発現が、正常組織と比較してCRS組織で上昇することを示す。
【0089】
図25図25は、マウスの神経膠腫モデルにおけるシンデカン4およびGFAPの発現を示す。マージしたパネルは、マウスの脳組織が腫瘍に接触する部位におけるGFAP、シンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。シンデカン4パネルは、正常な隣接する脳組織(下の三分の二)に対して腫瘍組織(上の三分の一)におけるシンデカン4標識の増加を示す。脳に浸潤し、周囲の組織に炎症を引き起こす腫瘍細胞のために、脳組織内でシンデカン4が増加する別個の領域も存在する。GFAPパネルは、脳組織内(下の三分の二)および腫瘍との境界面においてのみ活性化した星状細胞の標識を示す。腫瘍(上の三分の一)は、星状細胞を含有していないためGFAPを発現しない。脳組織内の浸潤腫瘍細胞は、脳と腫瘍組織の境界面に見られるものと同様の上昇したGFAPの発現に囲まれており、これらの部位に炎症および虚血が存在することを示唆する。
【0090】
図25A図25Aは、マウスの神経膠腫モデルの血管におけるシンデカン4およびGFAPの発現を示す。マージしたパネルは、腫瘍半球および隣接する半球におけるGFAP、シンデカン4の標識および細胞核のDAPI染色を示す。隣接する半球は、GFAPの標識および血管に沿って単一の伸長した細胞核を示す。血管と周囲の組織に沿って弱いシンデカン4の標識が存在する。腫瘍半球では、血管に沿っておよび周囲の組織内に強いシンデカン4の標識が存在する。GFAP標識もまた、組織内および血管に沿って増加し、これは、この組織が高度に炎症を起こしたことを示した。さらに、血管は、極めて接近して複数の細胞核を含有し、これは、血管が、血管内に増殖する細胞を含有することを示唆した。これは、シンデカン4が、炎症を起こした低酸素組織の血管周辺で上方調節され、さらに、血液脳関門(BBB)において高度に発現されることを示した。これは、本発明の構築物を、脳損傷の治療剤の送達の標的化に使用することができることを示唆する。
【0091】
図26図26は、マウスの脇腹の皮下ヒトA431腫瘍のシンデカン4の発現を示す。マウスの脇腹の皮下で成長したヒトA431(表皮癌)腫瘍組織の切片をシンデカン4に対して標識し、細胞核をDAPIに対して染色した。画像は、4×、10×、20×および60×で撮られ、腫瘍の中央領域が非常に高いレベルのシンデカン4を発現したことが示された。高いシンデカン4の標識は、有核細胞のクラスターに見られた。
【0092】
図27図27は、SKOV3腫瘍のシンデカン4の発現を示す。マウスの脇腹の皮下で成長したヒトSKOV3腫瘍組織の切片をシンデカン4に対して標識し、細胞核をDAPIに対して染色した。画像は、4×、10×および20×で撮られ、高いシンデカン4の標識の領域を示した。シンデカン4の標識は、細胞クラスターと周囲の組織に見られた。
【発明を実施するための形態】
【0093】
好ましい実施形態
以下は、本発明の説明であり、その好ましい実施形態を含み、一般的用語で示される。本発明は、本発明、本発明の種々の態様の具体例、および本発明を実施する手段を裏付ける実験データを提供する、本明細書の以下の「実施例」のセクションに示される開示からさらに明らかにされる。
【0094】
本発明者らは、驚くべきことに、B型肝炎ウイルス(HBV)のXタンパク質に由来するキャリアペプチドを含む構築物を、細胞の細胞質への化合物の有効な送達のために使用することができることを見出した。
【0095】
本発明者らはまた、驚くべきことに、構築物が、非低酸素細胞よりも低酸素細胞により多く取り込まれることを見出した。したがって、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来するキャリアペプチドの使用は、低酸素細胞および組織による化合物(治療剤を含む)の優先的な取込み、すなわち、低酸素細胞を標的化することを有益に可能とすることになる。これによって、いずれの潜在的なオフターゲット作用も最小限にしながら、有効性および安全性を改善するのに必要とされる有効薬物用量が低減されることになる。
【0096】
本発明者らは、思いがけなく、B型肝炎ウイルス(HBV)のXタンパク質に由来するキャリアペプチドを、標的化キャリアペプチドおよび化合物を含む構築物によって、低酸素細胞に化合物、例えば、治療剤を標的化するための標的化キャリアペプチドとして使用することができることを特定した。このような構築物は、本明細書で概説されるように、調査適用および治療の両方に関するいくつかの適用における用途を有する。一例では、このような構築物は、眼の疾患および障害、特に、炎症、低酸素症、虚血、出血、および/または血管新生に関連する眼の疾患および障害の処置における用途を有する。このような疾患および障害として、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、糖尿病黄斑浮腫(oedema)、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、および視神経炎を含む、次に血管の死滅(die back)および/または漏出が続く炎症性眼状態が挙げられる。
【0097】
さらに、本発明者らは、炎症を起こした低酸素脳組織の血管内皮周辺でシンデカン4の発現の増加(血液脳関門(BBB)で高レベルの発現を有する)が存在することを見出した。BBBは、中枢神経系への薬物送達の障壁である場合が多い。したがって、本発明の構築物は、中枢神経系の疾患および障害を処置するために、血液脳関門を横切る移行を必要とする治療剤の送達を有利に標的化するために使用され得る。
【0098】
認識されるように、血液網膜関門は、血液脳関門に類似する。
【0099】
低酸素および炎症状態のBBBにおけるシンデカン4の発現の増加に加えて、本発明者らは、低酸素および炎症状態の網膜と硝子体液の間に障壁を形成する、網膜の内境界膜(ILM)におけるシンデカン4の発現の増加も見出した。ILMは、硝子体液から網膜への薬物送達のための障壁として作用する場合が多い。しかしながら、ILMの活性化ミュラー細胞は、細胞が網膜全体に広がるため、外側の網膜への薬物送達を改善する可能性を有する(32)。例えば、ナノ粒子などの薬物送達系は、ミュラー細胞の内境界膜にエンドサイトーシスされ、それらの細胞内空間に拡散し、次いで、外境界膜でミュラー細胞からエクソサイトーシスされ光受容体間マトリクスに入る(33)。したがって、ILMにおけるシンデカン4の上方調節は、本発明の構築物が網膜に有効に送達され得ることを意味する。さらに、シンデカン4は、脈絡膜および網膜の内皮細胞において上方調節され、これは、本発明の構築物が、血液網膜関門を横切る移行を支持するこれらの組織によって取り込まれることを意味する。
【0100】
本明細書における「構築物」への言及は、別段に本文脈が明確に要求しなければ、本発明の第1から第33の態様における有用な構築物と同様に、本発明の第40から第45の態様による構築物を含むことが、当業者に明らかであろう。
【0101】
HBVウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドを含む構築物の使用は、眼と他の器官の両方における低酸素症に関連する疾患および障害に適用可能である。特に、非限定例として、このような構築物の使用は、AMDおよび/または糖尿病性網膜症と同様の病因論を有する疾患および障害に適用可能である。これは、例えば、炎症、出血および/または虚血をもたらす血管の漏出が一因となる疾患または障害である。非限定例として、構築物の使用は、心臓発作、卒中、がん、一過性脳虚血発作、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、血管性認知症、心虚血、虚血性大腸炎、急性下肢虚血、皮膚虚血、AMD、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜卒中、黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、または視神経炎などの障害および疾患に適用可能である。本発明が適用される他の疾患および障害は、本明細書の記載から明らかであろう。
【0102】
特定の一例では、本発明者らは、コネキシン43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドであるGap19、およびB型肝炎ウイルス(HBV)のXタンパク質に由来するキャリアペプチドを含む構築物が、ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19)および初代ヒト網膜微小血管内皮細胞(hMREC)の細胞質へのGap19の有効な送達のために使用され得ることを特定した。本発明者らは、構築物が、コネキシン43(Cx43)ヘミチャネル開口を阻害するGap19の機能を維持し、思いがけなく、細胞への高い取込み、高い有効性、および低い毒性を有することを見出した。さらに、取込みは、低酸素ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19)および低酸素初代ヒト網膜微小血管内皮細胞(hMREC)において増加する。理論に拘束されることを望むものではないが、この標的化されたキャリア機能は、シンデカン4が低酸素組織において上方調節されるという本発明者らの驚くべき発見によって促進されるようである。
【0103】
眼の多くの障害または疾患は、炎症、出血、虚血および/もしくは低酸素症をもたらす血管の漏出の結果であるか、またはそれを一因とする。特に、眼の後部腔の多くの障害または疾患は、炎症、出血、虚血および/もしくは低酸素症をもたらす血管の漏出の結果であるか、またはそれを一因とする。本発明の構築物は、AMD、糖尿病性ニューロパチー、および同様の病因論を有する眼の他の疾患および障害(例えば、網膜静脈閉塞症および/もしくは網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、糖尿病黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群または視神経炎を含む)に対する治療における用途を有する。
【0104】
さらに、他の器官および器官系の多くの障害または疾患、特に慢性障害または疾患は、炎症、出血、虚血および/もしくは低酸素症をもたらす血管の漏出の結果であるか、またはそれを一因とする。特に、これらの疾患または障害として、多くのがん(例えば、一般的に、脳神経膠腫、卵巣がん、低酸素腫瘍を含む)、脳卒中、心血管疾患(心虚血、心膜炎、心筋梗塞、虚血性弁膜症(ischemic valve disease)を含む)、敗血症(急性膵炎、大腸炎、自己免疫疾患、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患、灌流前の損傷(pre-perfusion injury)および移植拒絶を含む)が挙げられる。
【0105】
本発明者らによって製造され、本発明者らの研究において使用される特定の構築物は、アミノ酸配列
【化1】
を有し、ここで、小文字はD-異性体を表す。この構築物は、標的化キャリアペプチドLCLRPV(配列番号2)およびGGリンカーを介して接続した、Cx43ヘミチャネルの細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドKQIEIKKFK(配列番号3)、別名Gap19を含む。参照しやすいように、配列番号1のペプチドは、XG19と称される。
【0106】
B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドのバリアントを含む構築物もまた、上記および本明細書の他の箇所で概説されるように、本発明の方法において有用である。低酸素細胞に送達するための代替化合物を含む構築物もまた、上記および本明細書の他の箇所で概説されるように、本発明の方法において有用である。例えば、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるバリアントおよび代替ペプチドを含む構築物は、上記および本明細書の他の箇所で概説されるように、眼の疾患および障害の処置において有用である。
【0107】
したがって、本発明は、低酸素細胞への化合物(治療剤を含む)の標的化送達のための、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来するこのような標的化キャリアペプチドの使用を含む。例えば、被験体において低酸素細胞(組織)への治療剤の標的化送達のための、および研究目的のために低酸素細胞への化合物の標的化送達のためのペプチド。
【0108】
B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび化合物(治療剤を含む)を含む構築物の使用は、化合物を、例えば、ネイティブ化合物より低い用量で投与し、副作用を低減することができることを意味することになる。さらに、低酸素細胞に化合物を標的化することによりオフターゲット作用が低減されることになり、化合物のより多くが標的細胞に利用可能となることを意味する。
【0109】
さらに、このような構築物をコードする核酸およびこのような構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターは、上記および本明細書の他の箇所で概説されるように、本発明の方法において有用である。
【0110】
当業者は、細胞への化合物の送達への言及が、本明細書で使用する場合、細胞の表面への送達または細胞内での送達を含むことを容易に認識するであろう。
【0111】
認識されるように、「キャリアペプチド」または「細胞透過性ペプチド」は、膜にトランスロケートし、分子送達ビヒクルとして作用し、細胞に積荷を送達するために機能することによって、種々の「積荷」の細胞による取入れまたは取込みを促進するペプチドである。
【0112】
本明細書で使用する場合、「細胞膜を横切って移動する」、「細胞膜を横切って積荷(cargo)を運ぶ」、「細胞膜トランスロケーション」という語句および同様の語句は、キャリアペプチド、細胞に送達するための化合物、ならびに/またはキャリアペプチドおよび化合物を含む構築物の、細胞の外側から細胞の内側への輸送を包含するよう広く解釈されるべきである。これらの語句などは、細胞膜を横切ってまたはそれを通る輸送の特定の方式または機序を意味すると解釈されるべきではない。
【0113】
本明細書で使用する場合、「標的化キャリアペプチド」などの語句は、特定の生理学的または病態生理学的状態の細胞(複数可)を標的化することができるキャリアペプチドを包含するよう広く解釈されるべきである。この文脈では、「標的化する(targeting)」という用語は、特定の細胞型または細胞株を標的化することを意味すると解釈されるべきではない。本発明の好ましい一実施形態では、標的化された細胞は、低酸素症の状態にあり、キャリアペプチドは、「低酸素標的化キャリアペプチド」または「低酸素細胞標的化ペプチド」と称されてもよい。
【0114】
さらに、キャリアペプチドとして使用することができる標的化ペプチドは、細胞の表面に積荷を送達するために使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0115】
本明細書で使用する場合、「標的(target)」および「標的化する(targeting)」などの用語は、特定の細胞との優先的相互作用、それとの優先的結合、またはそれによる優先的取込みを意味すると解釈されるべきであり、100%の特異性を要求すると解釈されるべきではない。
【0116】
本明細書で詳述するように、本発明は、低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、低酸素および非低酸素細胞の混合集団における低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法を提供する。
【0117】
本明細書で使用する場合、「低酸素細胞」は、細胞の酸素要求量を満たすのに不十分である酸素送達の濃度に曝露された細胞を指す。例えば、健康で十分に灌流した組織の正常な生理学的酸素濃度より有意に低い酸素濃度。この語句は、酸素送達が低減している状況および酸素送達が完全に欠如している状況を含むよう広く解釈されるべきである。好ましくは、低酸素細胞は、低酸素症の結果として、シンデカン4の上方調節を呈する。シンデカン4の上方調節を誘発する低酸素症は一過性であってもよく、持続したまたは特定レベルの低酸素症である必要はない。「低酸素細胞(hypoxic cells)」という語句は、この文脈が別段に明確に要求していなければ、単数形、すなわち「低酸素細胞(a hypoxic sell)」を含むと解釈されるべきである。
【0118】
「低酸素細胞」が、組織、または組織の一部もしくはゾーンを構成してもよいことは当業者に理解されるであろう。例えば、低酸素細胞は、酸素灌流の程度またはゾーンの異なる組織を構成してもよい。組織は、正常組織、罹患組織(例えば、腫瘍組織または炎症性組織)、またはこの2つの混合物から構成されてもよいことが認識されるべきである。必ずしもそうではないが、組織が疾患プロセスに起因して酸素灌流の異なる程度またはゾーンを有してもよいことが認識されるべきである。
【0119】
構築物、核酸、および/または核酸を含むベクターの送達は、送達が必要とされる目的に応じて、in vivoまたはin vitroで起こってもよい。このような方法は、調査目的でまたは疾患の処置において使用してもよい。
【0120】
本明細書で使用する場合、「処置(treatment)」、「処置する(treating)」、「処置した(treated)」などの用語は、これらの最も広い文脈で考慮されるべきである。これらの用語は、被験体が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味しない。したがって、「処置(treatment)」は、例えば、疾患または障害の1つまたは複数の症状、1つまたは複数の症状の重症度の予防、好転(amelioration)または管理、および二次的合併症の発症の予防または他の方法でそのリスクの低減を広く含む。
【0121】
本発明の方法が、本発明の構築物をコードする核酸を被験体に投与することおよび/または本発明の構築物をコードする核酸を含むベクターを被験体に投与することを含んでもよいことが認識されるべきである。同様に、本発明の方法が、本発明の構築物をコードする核酸を細胞の集団と接触させることおよび/または本発明の構築物をコードする核酸を含むベクターを細胞の集団と接触させることを含んでもよいことが認識されるべきである。
【0122】
構築物(またはこれをコードする核酸もしくはベクター)は、当業者に容易に認識されるようないくつかの異なる手段によって細胞に送達されてもよい。しかしながら、例として、in vitroの方法は、構築物(またはこれをコードする核酸もしくはベクター)を1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞を含む組成物と接触させること、例えば、構築物またはペプチド(またはこれをコードする核酸もしくはベクター)を、1つまたは複数の細胞が含有される試料、組成物または培地と接触させること(例えば、本発明の組成物を1つまたは複数の細胞を含有する液体試料と混合すること)を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の方法は、構築物(またはこれをコードする核酸もしくはベクター)を被験体に投与することを含む。
【0123】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちの一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列LCL(配列番号4)を含む。
【0124】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、LCLRP(配列番号5)、LCLRPV(配列番号2)、LCLRPVG(配列番号6)、LCLRPVGAE(配列番号7)、LCLRPVGAESR(配列番号8)、LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9)、またはLCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10)およびその機能的に同等なバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0125】
本発明のこれらの実施形態の標的化キャリアペプチドは、C末端、N末端、またはその両方に、1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでもよい。C末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸1から15に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。N末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸21から35に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応しないように、異種アミノ酸を含んでもよい。
【0126】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちの一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列LCL(配列番号4)からなる。
【0127】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、LCLRP(配列番号5)、LCLRPV(配列番号2)、LCLRPVG(配列番号6)、LCLRPVGAE(配列番号7)、LCLRPVGAESR(配列番号8)、LCLRPVGAESRGRPV(配列番号9)、またはLCLRPVGAESRGRPVSGPFG(配列番号10)およびその機能的に同等なバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。
【0128】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列LCLX(配列番号11)、XLCL(配列番号12)、またはXLCLX(配列番号13)からなり、ここで、Xは、任意のアミノ酸である。
【0129】
上述のように、ある特定の実施形態では、Xは、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を含む任意のアミノ酸であり得る。配列表では、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であることが留意されるが、本発明は、このように限定されるものと解釈されるべきではない。例のみとして、Xは、G、A、V、L、I、S、C、T、M、F、Y、W、P、H、K、R、D、E、N、Q、タウリン、オルニチン、5-ヒドロキシリシン、e-N-メチルリシン、および3-メチルヒスチジンから選択されてもよい。Xは、セレノシステイン、ヒドロキシプロリン、セレノメチオニン、ハイプシン、カルボキシル化グルタミン酸を含む修飾アミノ酸を含んでもよい。第一級アミン基および第一級カルボキシル基は、アミン基については求核付加、アミド結合形成およびイミン形成、ならびにカルボン酸基についてはエステル化、アミド結合形成および脱炭酸を含むよう修飾されてもよい。ある特定のアミノ酸残基は、膜局在化またはエンドソーム放出のために付加された疎水基を有するか、またはミリストイル化、パルミトイル化、イソプレニル化もしくはプレニル化、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化、グリピエーション(glypiation)、リポイル化、フラビン部分(FMNまたはFAD)の付着、ホスホパンテテイニル化、エタノールアミンホスホグリセロール付着、アシル化、N-アセチル化(アミド)、S-アセチル化(チオエステル)、アセチル化、アルキル化(メチル、エチル)、メチル化、アミド化、ポリグルタミル化、ブチリル化、グリコシル化、グリケーション、ポリシアル化、マロニル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、ヌクレオチド付加(例えば、ADP-リボシル化)、酸化、リン酸エステル(O-連結型)もしくはホスホルアミデート(N-連結型)形成、リン酸化、ヒスチジン(N-連結型)アデニリル化、プロピオニル化、ピログルタミン酸形成、S-グルタチオン化、S-ニトロシル化、スクシニル化付加、ステアリル化、硫酸化、セレノイル化、ビオチン化、ペグ化、シトルリン化、脱イミノ化もしくはカルバミル化を受けていてもよい。
【0130】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列LCLK(配列番号14)、LCLH(配列番号15)、LCLR(配列番号16)、LCLE(配列番号17)、LCLN(配列番号18)、LCLQ(配列番号19)、VLCLR(配列番号20)、またはLCLD(配列番号21)を含む。特定の一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、LCLK(配列番号14)、LCLH(配列番号15)、LCLR(配列番号16)、LCLE(配列番号17)、LCLN(配列番号18)、LCLQ(配列番号19)、またはLCLD(配列番号21)のL-異性体を含む。特定の一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、VLCLR(配列番号20)のD-異性体を含む。
【0131】
本発明のこれらの実施形態の標的化キャリアペプチドは、C末端、N末端、またはその両方に、1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでもよい。C末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸1から15に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。N末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸21から35に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応しないように、異種アミノ酸を含んでもよい。
【0132】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列LCLK(配列番号14)、LCLH(配列番号15)、LCLR(配列番号16)、LCLE(配列番号17)、LCLN(配列番号18)、LCLQ(配列番号19)、VLCLR(配列番号20)、またはLCLD(配列番号21)からなる。特定の一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、LCLK(配列番号14)、LCLH(配列番号15)、LCLR(配列番号16)、LCLE(配列番号17)、LCLN(配列番号18)、LCLQ(配列番号19)、またはLCLD(配列番号21)のL-異性体からなる。特定の一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、VLCLR(配列番号20)のD-異性体からなる。
【0133】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列XCXR(配列番号22)を含み、ここで、Xは、任意の疎水性アミノ酸である。一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、配列ICIR(配列番号23)またはVCVR(配列番号24)を含む。
【0134】
本発明のこれらの実施形態の標的化キャリアペプチドは、C末端、N末端、またはその両方に、1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでもよい。C末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸1から15に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。N末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブHBVのXタンパク質のアミノ酸21から35に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブHBVのXタンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応しないように、異種アミノ酸を含んでもよい。
【0135】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列XCXR(配列番号22)からなり、ここで、Xは、任意の疎水性アミノ酸である。一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、アミノ酸配列ICIR(配列番号23)またはVCVR(配列番号24)からなる。
【0136】
本発明のこの実施形態の疎水性アミノ酸は、天然に存在しても天然に存在しなくてもよく、または修飾アミノ酸(例えば、上述のように修飾されたもの)を含んでもよい。例のみとして、疎水性アミノ酸は、L、V、I、M、FおよびWから選択されてもよい。
【0137】
本明細書で別段に指定されていなければ、本発明において有用なペプチドおよび本発明の構築物は、L-アミノ酸、D-アミノ酸またはこれらの混合物から構成されてもよく、天然に存在しないアミノ酸を含んでもよい。
【0138】
当業者は、本明細書の情報および他の公開された配列情報に鑑みて、ネイティブXタンパク質の1から35位のアミノ酸を容易に認識するであろう。例として、GenBank受託番号Y18857も例示的配列情報を提供することを参照とし、読み手は、参照するためにこのデータベースに特に目を向け、登録は、本明細書の本発明の一般的記載に含まれる。さらに、Guenther S、Fischer L、Pult I、Sterneck M、Will H. Naturally occurring variants of hepatitis B virus. Adv Virus Res. 1999年;52巻:25~137頁は、いくつかのXタンパク質の配列情報を提供する。さらに、有用な配列情報の例は、以下の表1に提供される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0139】
本発明において有用な標的化キャリアペプチドに関するさらなる情報は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、WO2011/155853およびWO2013/165262において見出すことができる。熟練の読み手は、キャリアとして使用しないペプチドに対するこれらの刊行物における言及が関係ないことを理解するであろう。
【0140】
上記で概説されるように、本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様は、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物、このような構築物をコードする核酸、このような構築物をコードする核酸を含む核酸ベクター、それを含む組成物、処置の方法におけるその使用、医薬を製造するその方法の使用、および/または疾患もしくは障害の処置のためのその使用を提供する。
【0141】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、Cx43の細胞内C末端テイルと相互作用することができる。一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、Cx43の細胞内ループと相互作用することができる。一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、Cx43の細胞内N末端テイルと相互作用することができる。
【0142】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害することができる。
【0143】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、好ましくはギャップジャンクションを遮断することなく、Cx43ヘミチャネル開口を阻害することができる。
【0144】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、
KQIEIKKFK(配列番号3;Gap-19);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);
およびその機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0145】
本発明のこのような実施形態のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、C末端、N末端、またはその両方に、1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブCx43タンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブCx43タンパク質のアミノ酸に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブCx43タンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応しないように、異種アミノ酸を含んでもよい。
【0146】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、
KQIEIKKFK(配列番号3);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);
SRPRPDDLEI(配列番号72);
およびその機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。
【0147】
当業者は、本明細書の情報および他の公開された配列情報に鑑みて、ネイティブCx43タンパク質のアミノ酸を容易に認識するであろう。例として、http://www.uniprot.org/uniprot/P17302も例示的配列情報を提供し、読み手は、参照するためにこのデータベースに特に目を向け、登録は、本明細書の本発明の一般的記載に含まれる。
【0148】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの一実施形態では、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、ギャップジャンクションのカップリングを促進するおよび/またはギャップジャンクションコンダクタンスを増加させることができるペプチドである。当業者は、このようなペプチドを容易に同定することができるであろう。非限定例として、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができ、ならびにギャップジャンクションのカップリングを促進するおよび/またはギャップジャンクションコンダクタンスを増加させることができるペプチドとして、ロチガプチド(ZP-123;N-アセチル-D-チロシル-D-プロピル-(4S)-4-ヒドロキシ-D-プロリルグリシル-D-アラニルグリシンアミド;Ac-D-Tyr-D-Pro-D-Hyp-Gly-D-Ala-Gly-NH2)およびそのジペプチドアナログであるダネガプチド(ZP-1609;(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンズアミドピロリジン-2-カルボン酸;別名GAP-134)が挙げられる。
【0149】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、第27、第40、第41、第42、第43、第44および/または第45の態様のうちの特定の一実施形態では、標的化キャリアペプチドは、LCLRPV(配列番号2)であり、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、KQIEIKKFK(配列番号3)である。
【0150】
しかしながら、本明細書に記載の標的化キャリアペプチドおよび本明細書に記載のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、任意の好適な組合せで、本発明の構築物において使用され得ることが認識されるであろう。
【0151】
本明細書で使用する場合、「阻害する(inhibit)」、「阻害すること(inhibiting)」、「阻害(inhibition)」、「阻害剤(inhibitor)」、「遮断する(block)」、「遮断すること(blocking)」、「遮断剤(blocker)」および同様の用語は、機能または活性の低減を指すために広く解釈されるべきである。これらは、機能または活性の完全な阻害または遮断を意味すると解釈されるべきではない。当業者は、機能および活性を評価するために使用され得る方法を容易に認識するであろう。しかしながら、例として、「実施例」のセクションに記載される方法論を使用してもよい。
【0152】
本発明の他の態様では、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドは、血管の出血、炎症、および損傷の広がりを低減するならびに/または血管再生を促進する治療剤を送達するために使用される。このような処置として、例えば、ギャップジャンクションヘミチャネル開口を低減するための治療剤を挙げることができる(4)。本発明者らの研究において使用する場合、Gap19などのコネキシン43を標的化する治療剤は、このような戦略に適切な治療剤である。血管新生それ自体よりも乏しい完全性が腫瘍低酸素症の根底にある原因であることが提案されるこの性質の戦略は、腫瘍において使用するのに好適である(5)。
【0153】
したがって、本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38および/または第39の広範な態様のうちのある特定の実施形態では、化合物または治療剤は、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである。
【0154】
前述に従って、本明細書における「化合物」および「治療剤」への言及は、この文脈が別段明確に必要としていなければ、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを包含することが当業者にとって明らかであろう。
【0155】
上述のように、本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38および/または第39の態様は、被験体において低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法、低酸素症と関連する疾患または障害を処置する方法、医薬の製造における構築物、核酸、および核酸ベクターの使用、低酸素症に関連する疾患または障害の処置のための構築物、核酸、および核酸ベクターの使用、低酸素細胞への化合物の標的化送達の方法、化合物の取込みを増加させる方法、低酸素細胞(複数可)による化合物の取込みを増加させるための医薬を調製する方法、および化合物を含む治療剤または治療剤のオフターゲット作用を低減する方法を提供する。
【0156】
化合物は、本発明に従って、低酸素細胞への送達のために標的化される任意の化合物であってもよい。本明細書における「低酸素細胞」への言及は、複数の「低酸素細胞」への言及を含むと解釈されるべきであることが認識されるであろう。このことは、低酸素組織(複数可)への言及を含むとも解釈されるべきであることが認識されるであろう。
【0157】
本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38および/または第39の態様のうちのある特定の実施形態では、化合物は、低酸素症に関連する疾患もしくは障害を処置するのに有用な治療剤または低酸素症に関連する疾患または障害に対して治療上有益な薬剤であってもよい。ある特定の実施形態では、化合物は、低酸素症に関連する疾患または障害に対して診断上の利益を与え得る。ある特定の実施形態では、化合物は、調査目的で使用するための化合物であってもよい。
【0158】
本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38および/または第39の態様のうちのある特定の実施形態では、化合物は、核酸、ペプチド核酸、ポリペプチド(例えば、融合タンパク質を含む)、炭水化物、ペプチド模倣体、小分子阻害剤、化学療法薬、抗炎症薬、抗体、単鎖Fv断片(SCFV)、脂質、プロテオグリカン、糖脂質、リポタンパク質、糖模倣体、天然産物、または融合タンパク質であってもよい。化合物が核酸である場合、例えば、DNAザイム、iRNA、siRNA、miRNA、piRNA、lcRNA、およびリボザイム、ファージミド、アプタマーを含む、二本鎖、一本鎖、センス、アンチセンス、または環状のDNA、RNA、cDNAであってもよい。
【0159】
ある特定の化合物(治療剤および診断剤を含む)が、ある特定の状況で低酸素細胞に送達されることが望まれることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、低酸素症に関連する障害または疾患の処置に関与する方法に関して、化合物は、低酸素細胞への薬剤の標的化が望ましいその疾患の処置のための治療剤であってもよい。さらなる例として、低酸素症に関連する障害または疾患の処置に関与する方法に関して、化合物は、低酸素症それ自体の処置のための治療剤であってもよい。
【0160】
例えば、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドは、血管の出血、炎症、および損傷の広がりを低減するならびに/または血管再生を促進する治療剤を送達するために使用することができる。このような処置には、例えば、ギャップジャンクションヘミチャネル開口を低減するための治療剤が含まれ得る(4)。本発明者らの研究において使用する場合、Gap19などのコネキシン43を標的化する治療剤は、このような戦略に適切な治療剤である。血管新生それ自体よりも乏しい完全性が腫瘍低酸素症の根底にある原因であることが提案されるこの性質の戦略は、腫瘍において使用するのに好適である(5)。
【0161】
上記で概説されるように、本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38、および/または第39の態様のうちのある特定の実施形態では、化合物または治療剤は、本明細書の他の箇所で記載されるコネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドであってもよい。特に、化合物または治療剤が、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである場合、化合物または治療剤は、
・ Cx43の細胞内C末端テイルと相互作用することができる;
・ Cx43の細胞内ループと相互作用することができる;
・ Cx43の細胞内N末端テイルと相互作用することができる;
・ Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害することができる;および/または
・ 好ましくはギャップジャンクションを遮断することなく、Cx43ヘミチャネル開口を阻害することができてもよい。
【0162】
本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38、および/または第39の態様のうちのある特定の実施形態では、化合物または治療剤は、
KQIEIKKFK(配列番号3;Gap-19);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);および
SRPRPDDLEI(配列番号72);
ならびにその機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドであってもよい。
【0163】
本発明の実施形態のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドは、C末端、N末端、またはその両方に1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、ペプチド配列がネイティブCx43タンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応するように、ネイティブCx43タンパク質のアミノ酸に対応する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。Cおよび/またはN末端のさらなるアミノ酸は、さらなるアミノ酸のペプチド配列がネイティブCx43タンパク質由来の連続アミノ酸の領域に対応しないように、異種アミノ酸を含んでもよい。
【0164】
本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38、および/または第39の態様のうちのある特定の実施形態では、化合物または治療剤は、
KQIEIKKFK(配列番号3;Gap-19);
DGVNVEMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号67);
DGANVDMHLKQIEIKKFKYGIEEHGK(配列番号68);
RPSSRASSRASSRPRPDDLEI(配列番号69);
RQPKIWFPNRRKPWKKRPRPDDLEI(配列番号70);
RPRPDDLEI(配列番号71);および
SRPRPDDLEI(配列番号72);
ならびにその機能的に同等なバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドであってもよい。
【0165】
本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、第26、第28、第29、第30、第31、第32、第33、第34、第36、第37、第38、および/または第39の態様のうちの他の実施形態では、化合物は、ギャップジャンクションのカップリングを促進するおよび/またはギャップジャンクションコンダクタンスを増加させることができるペプチドである。非限定例として、ギャップジャンクションのカップリングを促進するおよび/またはギャップジャンクションコンダクタンスを増加させることができるペプチドとして、ロチガプチド(ZP-123;N-アセチル-D-チロシル-D-プロリル-(4S)-4-ヒドロキシ-D-プロリルグリシル-D-アラニルグリシンアミド;Ac-D-Tyr-D-Pro-D-Hyp-Gly-D-Ala-Gly-NH2)およびそのジペプチドアナログであるダネガプチド(ZP-1609;(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンズアミドピロリジン-2-カルボン酸;別名GAP-134)が挙げられる。
【0166】
さらなる例として、本発明の第1、第2、第3、第4、第28、または第29の態様に従って、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドが、例えば、腫瘍の処置のために、低酸素(がん性)細胞に細胞毒を優先的に送達するために使用され、よって、正常な非がん細胞の曝露、したがって、副作用を低減する。結果として、副作用に遭遇することなく、より強力な治療剤またはより高い用量が投与され得ることになる。あるいは、より低い用量が、標的組織により効率的に送達され、副作用およびオフターゲット作用を低減することになる。
【0167】
例えば、がんの処置に関与する方法に関して、化合物(または治療剤)は、低酸素腫瘍細胞に標的化するための表面作用型または細胞質作用型毒素であってもよい。例えば、表面作用型毒素として、魚の毒素パルドキシン(pardoxin)(またはその活性部分)、脂質代謝の酵素(PLA2、PLC)、膜イオンチャネル機能に作用するもの(例えば、α-サソリ毒もしくはデンドロトキシンまたはその活性部分)、またはチロシンキナーゼ受容体に作用するもの(例えば、α-S.aureusまたはその活性部分)が挙げられる。例えば、細胞質作用型毒素として、ミトコンドリア呼吸系(ロテノン)、核酸(マイコトキシンまたはその活性部分)、リボゾーム(ジフテリアまたはその活性部分)または小胞放出(botulinum tetanusまたはその活性部分)を標的とするものを挙げることができる。
【0168】
がんの処置に関与する方法において有用な化合物の具体例として、
・ 脳のがんの処置に関するテモゾロミド、アルキル化剤;星状細胞腫に関するセカンドライン処置および多形神経膠芽腫(脳神経膠腫)に関するファーストライン処置として;
・ 乳がんに関するドセタキセル;
・ 乳がん、胃がんおよび結腸直腸がんに関する5-フルオロウラシル;
・ 乳がん、肺がん、膀胱がんまたはホジキンおよび非ホジキンリンパ腫に関するドキソルビシン
が挙げられる。
【0169】
当業者は、前述の化合物のうちの1つまたは複数を組み合わせて使用してもよいことを認識するであろう。非限定例として、表2で特定した化合物の組合せを使用してもよい。
【表2】
【0170】
当業者は、がんの処置に関与する方法において使用するのに好適なさらなる化合物または治療剤を容易に特定することができるであろう。
【0171】
本発明の構築物が特に有用である活性化合物の送達に加えて、本発明の化合物(または治療剤)がプロドラッグまたは活性化可能な薬物であり得ることが認識されるであろう。例えば、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドを使用して、腫瘍の処置のための低酸素活性化プロドラッグを標的化することができ、低酸素組織にプロドラッグを集中させてより少ない投与を可能とする。このようなプロドラッグとして、エボホスファミド、タルロキソチニブ、PR-104またはニトロCBIなどの芳香族ニトロ低酸素活性化プロドラッグ、およびチラパザミン、またはSN30000などのN-オキシド低酸素活性化プロドラッグが挙げられる。これらの薬物は、「酵素の一電子還元によって開始されるプロセスによって腫瘍中で活性化され、プロドラッグラジカルアニオンが生じる」(25)。
【0172】
別の例では、本発明の第4、第6、および/または第8の態様に従って、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物が、がんの処置、特に、腫瘍の成長を遮断するために使用される。腫瘍(例えば、がんにおける腫瘍)は、血管供給が乏しく、低酸素でありおよび/または低酸素である部分もしくはゾーンを有し、酸素レベルの低減した組織を生じる。腫瘍の場合には、継続した虚血によって、正常細胞よりも低酸素耐性の腫瘍細胞の生存が促進され得る。腫瘍血管における構造上の異常は、処置に対する治療応答に影響を及ぼす場合がある。
【0173】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の構築物を使用するコネキシン43ヘミチャネルの一時的な遮断によって、血管の漏出が低減され、正常な血管新生が促進され、血管系が保護、維持、および/または修復され、腫瘍成長が遮断され、組織回復が促進されると考えられる。さらに、これらの結果は、細胞毒性化学療法剤および/または放射線治療による処置より改善された結果を導くことになる。
【0174】
したがって、一実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を被験体に投与することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを被験体に投与することを含む、方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、記載される構築物、核酸、または核酸ベクターを、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0175】
したがって、別の実施形態では、本発明は、がんを処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置するための医薬の製造における(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0176】
したがって、別の実施形態では、本発明は、がんを処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、がんを処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0177】
ある特定の実施形態では、がんは、脳神経膠腫(神経膠芽腫)、星状細胞腫、卵巣癌、表皮癌、乳がん、胃がん、胚細胞腫瘍、結腸直腸がん、肺がん、膀胱がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫である。
【0178】
ある特定の実施形態では、がんの処置は、腫瘍成長を低減することに関与する。他の実施形態では、がんの処置は、血管の漏出の低減に関与する。他の実施形態では、がんの処置は、正常な血管新生の促進に関与する。他の実施形態では、がんの処置は、血管系の保護、維持および/または修復に関与する。
【0179】
別の例では、本発明の第4、第6、および/または第8の態様に従って、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドを、低酸素症の状態に起因する「二次的」疾患プロセスを処置するために使用することができる。例えば、保護剤は、さらなる細胞損傷を予防するまたは好転させるために、低酸素細胞に優先的に送達されることになる。Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチド化合物の使用は、このような戦略の一例である。
【0180】
非限定例として、本発明の第4、第6、および/または第8の態様に従って、神経保護剤を卒中の症例において使用することができる。本発明において有用な神経保護剤の例として、興奮毒性を標的とする化合物(例えば、NMDAアンタゴニスト)、抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャー、神経膠の炎症促進性の応答を低減する薬剤、および神経膠の抗炎症性の応答を増強する薬剤が挙げられる。
【0181】
さらなる非限定例として、神経修復剤を、卒中、筋ジストロフィー、多発性硬化症、アミロイド側索硬化症の症例において使用することができる。
【0182】
別の例では、本発明の第4、第6、および/または第8の態様に従って、卒中の処置に関与する方法に関して、化合物(または治療剤)は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)または組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)であってもよい。例えば、rtPAは、アルテプラーゼ(Activase、Actilyse)、レテプラーゼ(Retavase、Rapilysin)、テネクテプラーゼ(TNKase)、またはデスモテプラーゼであってもよい。
【0183】
さらなる非限定例として、本発明の第4、第6、および/または第8の態様に従って、心筋梗塞 卒中の処置に関与する方法に関して、化合物(または治療剤)は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)または組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)であってもよい。例えば、rtPAは、アルテプラーゼ(Activase、Actilyse)、レテプラーゼ(Retavase、Rapilysin)、テネクテプラーゼ(TNKase)、またはデスモテプラーゼであってもよい。
【0184】
本発明に従って低酸素細胞を標的化することによって、正常(非低酸素)細胞および組織への副作用およびオフターゲット作用が低減されることになる。結果として、副作用に遭遇することなく、より強力な治療剤またはより高い用量が投与され得る。あるいは、より低い用量が、標的組織により効率的に送達され、副作用およびオフターゲット作用を低減することになる。
【0185】
別の例では、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物は、卒中、特に虚血性卒中の処置に有用であり、より具体的には卒中後のニューロンの生存を促進することができる。
【0186】
理論に拘束されることを望むものではないが、コネキシン43ヘミチャネルの一時的な遮断によって、病変の広がりおよび血管の破壊の予防を介して、血管の漏出が低減され、虚血性卒中後のニューロンの生存が促進されて、再灌流傷害が最小限となり、機能の回復が増強されると理解される。本明細書に記載されるように、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の構築物が低酸素細胞に優先的に送達され、循環血球によって隔離されないことを見出した。このことにより、低酸素細胞への迅速な標的化送達がもたらされることになり、卒中の処置は緊急を要するため、これは有利である。このことは、本明細書の他の箇所で記載されるオフターゲット作用の有益な低減に追加される。本発明者らは、網膜投与の成功を観察している。このことは、血液脳関門を横切る有効な送達と言い換えられよう。さらに、上記で概説されるように、本発明者らは、血液脳関門内の高レベルの発現と共に、炎症を起こした低酸素脳組織の血管内皮周辺にシンデカン4の発現の増加を観察している。したがって、本発明の構築物を使用して、中枢神経系に薬物送達を標的化することができる。
【0187】
したがって、一実施形態では、本発明は、卒中を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を被験体に投与することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを被験体に投与することを含む、方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、卒中を処置する方法であって、記載される構築物、核酸、または核酸ベクターを、1つまたは複数の担体、賦形剤、および/または希釈剤と組み合わせて含む組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0188】
したがって、別の実施形態では、本発明は、卒中を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置するための医薬の製造における、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0189】
したがって、別の実施形態では、本発明は、卒中を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸の使用を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、卒中を処置するための、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターの使用を提供する。
【0190】
ある特定の例では、卒中は、虚血性卒中である。他の例では、卒中の処置は、卒中、特に虚血性卒中後のニューロンの生存の促進である。
【0191】
別の例では、本発明の第4の態様に従って、tPAを、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物と同時投与する。(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物の投与によって、病変の広がりおよび血管の破壊を予防する血管の漏出の低減を介して、tPAの治療ウインドウが拡大され得る。
【0192】
さらなる非限定例として、敗血症は低灌流と関連し、本発明によって、Xタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドを使用して、感染部位の低酸素(低灌流)細胞に抗菌または抗真菌剤を送達することができる。
【0193】
本発明に従って低酸素細胞を標的化することによって、正常(非低酸素)細胞および組織に対する副作用およびオフターゲット作用が低減されることになる。結果として、副作用に遭遇することなく、より強力な治療剤またはより高い用量が投与され得ることになる。あるいは、より低い用量が、標的組織により効率的に送達され、副作用およびオフターゲット作用を低減することになる。
【0194】
当業者は、本発明に従って、有用な化合物(治療剤を含む)のさらなる例を容易に認識することができる。
【0195】
上記のように、本発明は、本発明において有用なペプチドの機能的に同等なバリアント、例えば、標的化キャリアペプチドおよび/またはコネキシン43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの機能的に同等なバリアントを含む。「機能的に同等なバリアント」という語句は、本明細書で使用する場合、ペプチドの所望の機能を実質的に保持しながら、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換がなされたペプチドを含む。本明細書で使用する場合、ペプチドの「機能的に同等なバリアント」は、1つまたは複数のアミノ酸が欠失するかまたは付加されたペプチドの断片またはペプチドのバリアントを含むことを意図するが、但し、このようなバリアントが、タンパク質またはペプチド(バリアントは、このタンパク質またはペプチドのバリアントである)の所望の活性のレベルを少なくとも保持することを条件とする。
【0196】
例として、標的化キャリアペプチドの場合には、ペプチドおよびその機能的に同等なバリアントは、(a)細胞膜を横切って移動し、細胞に侵入する、好ましくは、化合物または治療剤またはコネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを、細胞膜を横切って運ぶ能力、および(b)特定の生理学的または病態生理学的状態の細胞(複数可)、好ましくは、低酸素症の状態の細胞を標的化する能力を有することになる。
【0197】
さらに、キャリアペプチドとして使用することができる標的化ペプチドを使用して、積荷を細胞の表面へと送達してもよいことが認識されるであろう。
【0198】
本発明において有用なペプチドおよびその機能的に同等なバリアントは、本明細書において、総称して「ペプチド」と称される場合がある。したがって、特に述べられていない場合は、本発明において有用な「ペプチド(複数可)」への言及は、本明細書において、その機能的に同等なバリアントへの言及も含むと解釈されるべきである。
【0199】
「機能的に同等なバリアント」は、ペプチド(バリアントはこのペプチドのバリアントである)よりも、高いまたは低いレベルの活性を有してもよいことが認識されるべきである。本発明の種々の実施形態では、機能的に同等なバリアントは、ペプチド(バリアントはこのペプチドのバリアントである)の活性のレベルの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%を有する。
【0200】
当業者は、本明細書に含有される情報に基づき、かつ当技術分野で公知の技法を使用して、所望の機能を容易に認識し、機能を評価して、ペプチドまたはその機能的に同等なバリアントの活性のレベルを決定することができるであろう。
【0201】
例として、標的化キャリアペプチドの場合には、ペプチドまたはバリアントは、(a)細胞膜を横切って移動し、細胞に侵入する、好ましくは、化合物を、細胞膜を横切って運ぶ能力、および(b)特定の生理学的または病態生理学的状態の細胞(複数可)、好ましくは、低酸素症の状態の細胞を標的化する能力を有することになる。この機能および活性のレベルは、例えば、「実施例」のセクションに記載される技法を使用して、バリアント(好ましくは、バリアントを含む構築物)の細胞内への取込みに基づいて評価され得る。
【0202】
例として、コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの場合には、ペプチドおよびその機能的に同等なバリアントは、コネキシン43の細胞内ドメインと相互作用する能力を有することになる。Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害することができるペプチドの場合には、ペプチドおよびその機能的に同等なバリアントは、Cx43の細胞内C末端テイルのCx43の細胞内ループとの相互作用を阻害する能力を有することになる。Cx43ヘミチャネル開口を阻害することができるペプチドの場合には、ペプチドおよびその機能的に同等なバリアントは、Cx43ヘミチャネル開口を阻害する能力を有することになる。この機能および活性のレベルは、例えば、「実施例」の項目に記載される技法を使用して評価され得る。
【0203】
本明細書で使用する場合、「保存的アミノ酸置換」は、同様の生化学的特性を有するアミノ酸の置換を意味すると広く解釈されるべきである。当業者は、アミノ酸側鎖の置換基の類似性を含む、様々なアミノ酸間の相対的類似性に基づいて(例えば、それらのサイズ、電荷、親水性、疎水性など)、適切な保存的アミノ酸置換を認識するであろう。例として、保存的置換として、一方の脂肪族アミノ酸を別の脂肪族アミノ酸の代わりに使用すること、ヒドロキシルもしくは硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のヒドロキシルもしくは硫黄含有側鎖を有する別のアミノ酸との置換、芳香族アミノ酸の別の芳香族アミノ酸との置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸との置換、または酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸との置換が挙げられる。さらなる例として、「保存的アミノ酸置換」として、
- グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンの互いとの置換;
- セリン、システイン、トレオニン、またはメチオニンの互いとの置換;
- フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの互いとの置換;
- ヒスチジン、リシン、またはアルギニンの互いとの置換;および
- アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンまたはグルタミンの互いとの置換
が挙げられる。
【0204】
本発明に従うアミノ酸置換を含有する機能的に同等なバリアントは、好ましくは、元のペプチドと少なくとも70%、80%、90%、95%または99%のアミノ酸配列類似性を保持することになる。一実施形態では、機能的に同等なバリアントは、元のペプチドと少なくとも70%、80% 90%、95%または99%の配列同一性を有する。
【0205】
本発明において有用なペプチド(機能的に同等なバリアントを含む)および本発明の構築物は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはその混合物から構成されてもよく、天然に存在しないアミノ酸を含んでもよい。特に、本発明による、有用なペプチドのD-異性体型は、化学的ペプチド合成によって生成することができる。本発明のある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび/またはCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドのD-異性体型が好ましい場合がある。例えば、D-異性体は、プロテアーゼに対してより耐性であるため、好ましい場合がある。本発明の他の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび/またはCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドのL-異性体型が好ましい場合がある。例えば、L-異性体は、天然に存在するペプチドをより厳密に模倣するため、好ましい場合がある。当業者は、D-異性体およびL-異性体の適切な使用を容易に認識するであろう。
【0206】
本発明において有用なペプチド、または融合ペプチドである本発明の構築物(機能的に同等なバリアントを含む)は、「単離された」または「精製された」ペプチドであることが理解されるべきである。「単離された」または「精製された」ペプチドは、それが天然に存在するか、または人工的に合成される環境から特定および分離されたものである。これらの用語は、ペプチドが、それが天然に存在する環境から精製または分離された程度を反映しないことが認識されるべきである。
【0207】
本発明において有用なペプチド、または融合ペプチドである本発明の構築物は、天然の供給源から単離されるか、または好ましくは、化学合成(例えば、Fields GB、Lauer-Fields JL、Liu RQおよびBarany G(2002年)
Principles and Practice of Solid-Phase peptide Synthesis;Grant G(2002年) Evaluation of Synthetic Product. Synthetic Peptides、A User’s Guide、Grant GA、第2版、93~219頁;220~291頁、Oxford University Press、New Yorkに記載されたfmoc固相ペプチド合成)または遺伝子発現技法、本発明が関連する技術分野においてよく知られている方法によって導出されてもよい。標準的組換えDNAおよび分子クローニング技法は、例えば:Sambrook、およびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年);Silhavyら、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1984年);ならびに、Ausubelら、Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscienceによって出版されたCurrent Protocols in Molecular Biology(1987年)に記載されている。本発明のペプチドの生成は、適切なトランスジェニック動物、微生物、または植物によって達成されてもよい。
【0208】
標的化キャリアペプチドおよび化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)は、化合物(または治療剤)の機能および構造のレベルを少なくとも保持しながら、標的化キャリアペプチドに、化合物(または治療剤)を細胞膜を横切って細胞へと運ばせる任意の手段によって、互いに「接続され」ていてもよい。「接続された」という語または同様の用語は、標的化キャリアペプチドと化合物または治療剤との間の任意の形態の付着、結合、融合または会合(例えば、これらに限定されないが、共有結合、イオン結合、水素結合、芳香族スタッキング相互作用、アミド結合、ジスルフィド結合、キレート化)を包含すると広く解釈されるべきであり、特定の強度の接続を意味すると解釈されるべきではない。標的化キャリアペプチドおよび化合物(または治療剤)は、細胞内に侵入した際に化合物が標的化キャリアペプチドから放出されるように、不可逆的または可逆的方式で接続されてもよい。
【0209】
化合物(または治療剤)は、標的化キャリアペプチドに、そのN末端、そのC末端、または任意の他の位置で接続されてもよい。特定の一実施形態では、化合物(または治療剤)は、標的化キャリアペプチドに、そのN末端で接続される。別の特定の実施形態では、化合物(または治療剤)は、標的化キャリアペプチドに、そのC末端で接続される。化合物(または治療剤)は、標的化キャリアペプチドに、上述のように接続されてもよい。本明細書に記載されるように、化合物(または治療剤)は、標的化キャリアペプチドに、直接的または間接的に接続されてもよい。
【0210】
標的化キャリアペプチドと化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)は互いに直接的に接続されてもよいが、本発明において有用な構築物は、標的化キャリアペプチドと化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)を接続するリンカー分子を利用してもよいことが認識されるべきである。当業者は、本発明において有用な適切なリンカー分子を認識するであろう。しかしながら、例として、リンカー分子は、ペプチド、例えば、可撓性ペプチドリンカー、剛性ペプチドリンカー、または切断可能なペプチドリンカーであってもよい。適切なリンカー分子の例は、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、およびWO01/13957にも提供される。リンカーの例として、グリシンリンカーおよびポリグルタミンリンカーが挙げられる。有用となり得るリンカー設計ツールの例として、アムステルダム自由大学(Vrije University of Amsterdam)の統合バイオインフォマティクスセンターVU(Centre for Integrative Bioinformatics VU)のリンカーデータベース(http://www.ibi.vu.nl/programs/linkerdbwww/)が挙げられる。
【0211】
一実施形態では、構築物は、標的化キャリアペプチドと化合物(または治療剤)を接続するためのリンカーをさらに含む。
【0212】
一実施形態では、化合物(または治療剤)は、ペプチドである。一実施形態では、化合物(または治療剤)は、ペプチドであり、構築物は、融合ペプチドである。
【0213】
例として、化合物(または治療剤)がペプチドである場合、構築物は、公知の組換え発現または化学合成技法(本明細書に記載される)を使用して生成されてもよい;例えば、構築物が、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む場合。標的化キャリアペプチドとペプチド化合物(または治療剤)は別々に製造され、後で互いに接続されてもよい。例えば、標的化キャリアペプチドは、公知の組換え発現または化学合成技法(本明細書に記載される)を使用して生成され、次いで、組換え発現されたまたは化学的に合成されたペプチド化合物(例えば、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチド)に後で接続されてもよい。
【0214】
例のみとして、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、WO01/13957に記載された方法論を使用して、本発明の種々の構築物を製造してもよい。
【0215】
本発明の第34、第36、および/または第38の態様に従って、本発明のある特定の方法は、化合物または治療剤を、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドに接続させることを含む。本明細書の他の箇所で記載される本発明のこれらの態様において有用な標的化キャリアペプチド。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるように、化合物または治療剤は、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである。しかしながら、当業者は、本発明のこれらの態様において有用な他の化合物を容易に認識するであろう。化合物/治療剤および標的化キャリアペプチドは、本明細書の他の箇所で記載されるように、製造および接続され得る。
【0216】
本発明の第35、第37、および/または第38の態様に従って、本発明のある特定の方法は、ペプチド化合物をコードする核酸またはペプチド治療剤を、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドをコードする核酸に接続させることを含む。本明細書の他の箇所で記載される本発明のこれらの態様において有用な標的化キャリアペプチド。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるように、ペプチド化合物またはペプチド治療剤は、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである。しかしながら、当業者は、本発明のこれらの態様において有用な他のペプチド化合物を容易に認識するであろう。ペプチド化合物/治療剤をコードする核酸および標的化キャリアペプチドをコードする核酸は、本明細書の他の箇所で記載されるように、製造および接続され得る。
【0217】
本明細書に記載の本発明の任意の態様のうちのある特定の実施形態では、構築物は、例えば、低酸素細胞に送達するための少なくとも1つのさらなる化合物を、すなわち、第1の化合物/治療剤/Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドに加えて、含む。
【0218】
前述したように、本明細書における「構築物」への言及が、この文脈が別段に明確に要求しなければ、本発明の第1から第33の態様において有用な構築物と同様に、本発明の第40から第45の態様に従う構築物を含むことは、当業者にとって明らかであろう。
【0219】
少なくとも1つのさらなる化合物は、例えば、治療または診断上の利益をもたらし得る化合物および調査目的で使用するための化合物を含む、低酸素細胞に送達されることが望ましい、任意の化合物であってもよい。ある特定の実施形態では、化合物は、核酸、ペプチド核酸、ペプチド、ポリペプチド(例えば、融合タンパク質を含む)、タンパク質、炭水化物、ペプチド模倣体、小分子阻害剤、化学化合物、薬物、治療化合物もしくは治療剤、化学療法薬、抗炎症薬、抗体、単鎖Fv断片(SCFV)、脂質、プロテオグリカン、糖脂質、リポタンパク質、リポソーム、糖模倣体、天然産物、放射性同位体、デンドリマー、ミセル、ナノ粒子、ナノチューブ、ポリマー粒子、イメージング剤(例えば、常磁性イオン)および分子、または融合タンパク質から選択される。化合物が核酸である場合、例えば、DNAザイム、iRNA、siRNA、miRNA、piRNA、lcRNA、およびリボザイム、ファージミド、アプタマーを含む、二本鎖、一本鎖、センス、アンチセンス、または環状のDNA、RNA、cDNAであってもよい。当業者は、本発明のこの実施形態に従って、化合物の適切なさらなる例を容易に認識することができる。
【0220】
標的化キャリアペプチドおよび低酸素細胞に送達するための少なくとも1つのさらなる化合物は、化合物の機能および構造のレベルを少なくとも保持しながら、標的化キャリアペプチドに、少なくとも1つのさらなる化合物を細胞膜を横切って細胞へと運ばせる任意の手段によって、互いに「接続され」ていてもよい。「接続された」という語または同様の用語は、標的化キャリアペプチドと少なくとも1つの化合物との間の任意の形態の付着、結合、融合または会合(例えば、これらに限定されないが、共有結合、イオン結合、水素結合、芳香族スタッキング相互作用、アミド結合、ジスルフィド結合、キレート化)を包含すると広く解釈されるべきであり、特定の強度の接続を意味すると解釈されるべきではない。標的化キャリアペプチドおよび少なくとも1つのさらなる化合物は、細胞内に侵入した際に化合物が標的化キャリアペプチドから放出されるように、不可逆的または可逆的方式で接続されてもよい。
【0221】
少なくとも1つのさらなる化合物は、標的化キャリアペプチドに、そのN末端、そのC末端、または任意の他の位置で接続されてもよい。特定の一実施形態では、化合物は、標的化キャリアペプチドに、そのN末端で接続される。別の特定の実施形態では、化合物は、標的化キャリアペプチドに、そのC末端で接続される。化合物は、標的化キャリアペプチドに、上述のように接続されてもよい。
【0222】
少なくとも1つのさらなる化合物は、標的化キャリアペプチドに直接的に接続されてもよいが、本発明の構築物は、少なくとも1つのさらなる化合物を標的化キャリアペプチドに接続するリンカー分子を利用してもよいことが認識されるべきである。当業者は、例えば、上記のように、本発明において有用な適切なリンカー分子を認識するであろう。
【0223】
少なくとも1つのさらなる化合物は、標的化キャリアペプチドに、別の化合物を介して、例えば、必ずしもそうである必要はないが、化合物/治療剤(例えば、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)を介して間接的に接続されてもよいことが認識されるべきである。特定の一実施形態では、化合物/治療剤はペプチドであり、少なくとも1つのさらなる化合物は、そのN末端で接続されてもよい。別の特定の実施形態では、化合物/治療剤はペプチドであり、少なくとも1つのさらなる化合物は、そのC末端で接続されてもよい。少なくとも1つのさらなる化合物は、ペプチド化合物に、上述のように接続されてもよい。
【0224】
当業者は、標的化キャリアペプチドおよび化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)、ならびに必要に応じて構築物に含まれるさらなる化合物の性質に鑑みて、本発明において有用な構築物を製造するための方法論を容易に認識するであろう。このような方法は、ペプチドと化合物(複数可)(または治療剤)を別々に製造し、次いで、これらを接続させること、構築物の化学合成、構築物の組換え発現などを含む。
【0225】
例えば、本発明による有用なペプチドまたは本発明の構築物は、液相および固相合成、例えば、FmocまたはBoc固相ペプチド合成などの公知の技法を使用する化学ペプチド合成によって製造され得る。特に、本発明による有用なペプチドのD-異性体型は、化学ペプチド合成によって生成され得る。本発明のある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび/またはペプチド化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)のD-異性体型が好ましい場合がある。例えば、D-異性体は、プロテアーゼに対してより耐性であるため、好ましい場合がある。本発明の他の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび/またはペプチド化合物(治療剤を含み、かつCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む)のL-異性体型が好ましい場合がある。例えば、L-異性体は、天然に存在するペプチドをより厳密に模倣するため、好ましい場合がある。当業者は、D-異性体およびL-異性体の適切な使用を容易に認識するであろう。
【0226】
例として、化合物、または治療剤、または少なくとも1つのさらなる化合物がペプチドである本発明の実施形態では、構築物は、本明細書に記載される公知の組換え発現または化学合成技法を使用して、融合ペプチドの形態で生成されてもよい。標的化キャリアペプチドおよびペプチド化合物は別々に製造され、後で互いに接続されてもよい。あるいは、構築物の部分は、公知の組換え発現または化学合成技法(本明細書に記載される)を使用して別々の融合ペプチドの形態で生成され、後で互いに接続されてもよい。例として、標的化キャリアペプチドおよびペプチド化合物、例えば、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む融合ペプチドが生成され、次いで、低酸素細胞に送達するためのさらなるペプチド化合物に後で接続されてもよい。さらなる例として、2つまたはそれより多いペプチド化合物を含む融合ペプチドが生成され、次いで、標的化キャリアペプチドに後で接続されてもよい。
【0227】
さらなる例として、化合物、または治療剤、または少なくとも1つのさらなる化合物が核酸である場合、標的化キャリアペプチドおよび核酸化合物は別々に作製され(例えば、化学合成または組換え技法を使用して)、次いで、いくつかの公知の技法のうちの1つを介して接続されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよびCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む融合ペプチドが生成され、次いで、細胞に送達するための核酸化合物に接続されてもよい。
【0228】
さらなる例として、化合物が炭水化物である本発明の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび炭水化物化合物は別々に作製され、次いで、いくつかの公知の技法のうちの1つを介して接続されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよびCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む融合ペプチドが生成され、次いで、細胞に送達するための炭水化物化合物に接続されてもよい。
【0229】
さらなる例として、化合物が脂質である本発明の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよび細胞に送達するための脂質化合物は別々に作製され、次いで、いくつかの公知の技法のうちの1つを介して接続されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、標的化キャリアペプチドおよびCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む融合ペプチドが生成され、次いで、細胞に送達するための脂質化合物に接続されてもよい。
【0230】
例のみとして、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、WO01/13957に記載された方法論を使用して、本発明の種々の構築物を製造してもよい。
【0231】
本発明の実施に必要ではないが、一実施形態では、本発明の第40から第45の態様に従ったまたは本発明の第1から第33の態様における有用な構築物は、少なくとも1つの追加の異種分子をさらに含んでもよい。例のみとして、異種分子は、構築物の活性(例えば、標的化キャリアペプチド、化合物、またはこれらの組合せの活性)を助長する、エンドソームからのペプチド(例えば、融合性脂質および膜破壊性ペプチドまたはポリマー)の放出を助ける、特定の細胞内区画もしくはオルガネラへの標的化を可能とする、構築物を分解から保護するかもしくは他の方法で構築物の半減期を増加させる、製造中の構築物の単離および精製を助ける、または積荷の結合を助けることができる分子であってもよい。
【0232】
一実施形態では、追加の異種分子は、組換えにより発現した構築物の単離を助けることができるhis-tag、c-myc tag、GST tag、またはビオチンであってもよい。
【0233】
別の実施形態では、追加の異種分子は、特定の細胞型への構築物の標的化を助けることができる分子であってもよい。本明細書で使用する場合、「特定の細胞型に構築物を標的化する」、「所望の細胞を特異的に標的化する」および同様の語句は、100%の特異性を要求するものと解釈されるべきではないが、このことが好ましい場合がある。本明細書で使用する場合、「特定の分子標的に構築物を標的化する」、「所望の分子を特異的に標的化する」および同様の語句は、100%の特異性を要求するものと解釈されるべきではないが、このことが好ましい場合がある。例えば、眼の疾患または障害に関するある特定の実施形態では、追加の異種分子は、内皮細胞または網膜色素上皮細胞への標的化を助長することができる。当業者は、特定の細胞型に構築物を標的化するのを助長することができる適切な異種分子を容易に特定することができるであろう。
【0234】
当業者は、例えば、処置される疾患または障害に鑑みて、標的化するための目的の細胞型を容易に特定することができるであろう。しかしながら、例として、本発明のある特定の態様および実施形態において有用な構築物は、血管内皮細胞、腫瘍細胞、ニューロン細胞、星状細胞、炎症細胞、網膜色素上皮細胞、または心筋細胞に標的化され得る。例えば、ニューロンの保護のための機能的な星状細胞の合胞体(astrocytic syncytium)を維持するために星状細胞を標的化することが望ましい場合がある。当業者は、特定の細胞型に構築物を標的化するのを助長することができる適切な異種分子を容易に特定することができるであろう。
【0235】
別の実施形態では、分子は、細胞へのRNA/DNA/核酸の送達を助長することができる核酸に結合するペプチドである。
【0236】
2つまたはそれより多い異なる異種分子の組合せが、本発明の構築物において使用されてもよいことが認識されるべきである。
【0237】
異種分子は、異種分子の化学的性質に鑑みて、任意の適切な手段(上述される)を使用して、標的化キャリアペプチドまたは化合物に接続されるか、または構築物の一部として合成されてもよい。一実施形態では、異種分子は、ペプチドベースである。しかしながら、本発明が関連する技術分野における当業者は、本発明の構築物に接続されるかまたは組み込むことができる代替の性質の分子を容易に認識するであろう。代替分子の例は、例えば、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、およびWO01/13957に提供される。
【0238】
上述のように、第10から第15の態様に従って、本発明は、(a)本発明の構築物、(b)本発明の構築物をコードする核酸、および(c)本発明の構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、1つまたは複数の希釈剤、担体および/もしくは賦形剤ならびに/または追加の成分と関連して含む組成物の投与を含む、処置方法も提供する。当業者は、本明細書で提供される記載を参照して、本発明において有用な、担体、賦形剤、希釈剤および/または追加の治療剤を認識するであろう。
【0239】
上述のように、第41、第43、および第45の態様に従って、本発明は、(a)本発明の構築物、(b)本発明の構築物をコードする核酸、および/または(c)本発明の構築物をコードする核酸を含む核酸ベクターを、1つまたは複数の希釈剤、担体および/もしくは賦形剤ならびに/または追加の成分と関連して含む組成物も提供する。当業者は、本明細書で提供される記載を参照して、本発明において有用な、担体、賦形剤、希釈剤および/または追加の治療剤を認識するであろう。
【0240】
この程度まで、本発明の構築物、核酸、および/または核酸ベクターへの本明細書における言及は、本発明の構築物、核酸、および/または核酸ベクターを含む組成物の送達または投与への言及を含むことができることが認識されるべきである。例えば、本発明の第1から第3の広範な態様では、構築物、核酸、および/または核酸ベクターの投与は、構築物、核酸、および/または核酸ベクターを含む組成物の投与を含むと解釈されるべきである。
【0241】
本発明の第10から第15、第41、第43、および第45の態様のうちの一実施形態では、1つまたは複数の希釈剤、担体および/または賦形剤は、in vitroでの使用に好適である。別の実施形態では、1つまたは複数の希釈剤、担体および/または賦形剤は、in vivoでの使用に好適である(この場合、これらは「薬学的に許容される」と称されてもよい)。本発明の第10から第15、第41、第43、および第45の態様において記載される組成物は、本発明の第16から第21の態様に従って医薬を製造する際に使用するのに好適であることが認識されるであろう。本発明の第10から第15、第41、第43、および第45の態様において記載される組成物は、本発明の第22から第27の態様に従う処置において使用するに好適であることも認識されるであろう。本発明の第40、第42、および第44の態様において記載される構築物、核酸、および核酸ベクターならびに本発明の第10から第15、第41、第43、および第45の態様において記載される組成物は、本発明の第1から第3および第28から第33の態様に従って、低酸素細胞へのペプチド化合物の標的化送達の方法において使用するのに好適であることがさらに認識されるであろう。
【0242】
「薬学的に許容される希釈剤、担体および/または賦形剤」は、医薬組成物を調製するのに有用であり、その意図した機能を実施させながら本発明の構築物または構築物をコードする核酸と同時投与されてもよく、一般的に安全で、非毒性かつ生物学的にもその他の点でも望ましい物質を含むことを意図する。薬学的に許容される希釈剤、担体および/または賦形剤として、ヒトの薬学的用途と同様に獣医学的用途にも好適なものが挙げられる。薬学的に許容される希釈剤、担体および/または賦形剤の例として、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤(delay agent)、乳剤などが挙げられる。
【0243】
標準的な希釈剤、担体および/または賦形剤に加えて、本発明に従って使用するための組成物は、例えば、構築物、構築物をコードする核酸、および/または細胞に送達するための化合物の活性を増強させ、このような薬剤の完全性を保護するかまたは半減期もしくは貯蔵寿命を増加させるのを助け、あるいは他の望ましい利益を与えるために、1つまたは複数の追加の構成要素と共に、またはこのような方式で製剤化されてもよい。例として、組成物は、タンパク質分解に対する保護をもたらすか、バイオアベイラビリティを増強させるか、抗原性を低下させるか、または被験体への投与の際の緩徐放出を可能にする構成要素をさらに含んでもよい。例えば、緩徐放出ビヒクルとして、マクロマー、ポリ(エチレングリコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)、またはヒドロゲルが挙げられる。さらなる例として、組成物は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、コーティング剤、緩衝剤などを含んでもよい。本発明が関連する技術分野における当業者は、特定の目的に対して望ましい場合があるさらなる添加剤を容易に特定するであろう。
【0244】
さらに、本発明の実施に必要ではないが、構築物、構築物をコードする核酸および/または化合物の細胞膜透過性は、組成物の製剤化によって、増加または促進されてもよい。例えば、本発明の構築物、構築物をコードする核酸、および/または化合物は、リポソームに製剤化されてもよい。さらなる例は、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、およびWO01/13957に提供される。
【0245】
さらに、本発明に従う医薬組成物は、特定の疾患および障害に対して特定の例で有益であり得る追加の有効成分と共に製剤化されてもよい。本発明が関連する技術分野における当業者は、本明細書における本発明の記載ならびに化合物および/または構築物が必要とされる目的、例えば、処置される任意の疾患の性質および進行に鑑みて、好適な追加の有効成分を容易に認識するであろう。
【0246】
一般例として、加齢黄斑変性症および/または糖尿病性網膜症を処置するために使用される薬剤、例えば、炎症または補体経路におけるタンパク質(例えば、Ang2、Tie2、インテグリンまたはCx43)の生成を低減するアンチセンスオリゴヌクレオチドあるいは任意のVEGFもしくはPDGFまたはそれらの受容体の生成を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが使用され得る。さらなる例は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症またはがんにおける血管新生を低減する抗VEGFおよび/または抗PDGFアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。
【0247】
本発明の組成物は、任意の慣習的形態、例えば、溶液剤(solution)、経口投与可能な液剤(liquid)、注射可能な液剤、注射可能な溶液剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、坐剤、経皮パッチ剤、懸濁剤、乳剤、持続放出製剤、ゲル剤、エアゾール剤、散剤、注射可能なコロイド系(例えば、ナノ粒子、リポソーム、およびマイクロエマルション)、ヒドロゲル、および固体インプラント(生分解性インプラント、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)をベースとするものを含む)などに製剤化されてもよい。さらに、持続放出製剤を利用してもよい。選択される形態は、組成物が意図される目的および試料(例えば、細胞の集団)または被験体への送達または投与の方式を反映することになる。
【0248】
例えば、本発明の組成物は、眼に送達するための慣習的な形態、例えば、注射可能な液剤、注射可能な溶液剤、注射可能なコロイド系(例えば、ナノ粒子、リポソーム、およびマイクロエマルション)、注射可能なヒドロゲル、および固体インプラントに製剤化されてもよい。
【0249】
当業者は、適切な製剤化方法を容易に認識するであろう。しかしながら、例として、組成物を製剤化するある特定の方法は、Gennaro AR:Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins、2000年に見出され得る。
【0250】
本発明が様々な異なる動物に適用可能であることは、本発明の性質および本明細書に報告される結果に鑑みて、本発明が関連する技術分野における当業者によって認識されるであろう。したがって、「被験体」は、目的の任意の動物を含む。しかしながら、特定の一実施形態では、「被験体」は、哺乳動物、より具体的にはヒトである。
【0251】
第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様では、本発明は、低酸素症に関連する疾患または障害を処置する方法、低酸素症に関連する疾患または障害を処置するための医薬の製造、および低酸素症に関連する疾患または障害の処置のための構築物の使用に関する。
【0252】
本明細書で使用する場合、「低酸素症に関連する疾患または障害」などの語句は、原発性疾患または障害および身体的損傷に続発する疾患または障害を含むよう広く解釈されるべきである。この語句は、構造および/または機能の疾患および障害を含むよう解釈されるべきである。これは、症候群を含むよう解釈されるべきである。この語句は、全身性、局部的な、または細胞の低酸素症との関連、つながり(linkage)、または相関を含むよう広く解釈されるべきであり、急性および慢性の低酸素症を含む。当業者に理解されるように、低酸素症は、健康で十分に灌流した組織の正常な生理学的酸素濃度より有意に低い酸素濃度に曝露された組織を指す。低酸素症は、酸素送達が低減している状況および酸素送達が完全に欠如している状況を含むよう広く解釈されるべきである。好ましくは、低酸素組織または組織内の低酸素細胞は、低酸素症の結果として、シンデカン4の上方調節を呈する。シンデカン4の上方調節を誘発する低酸素症は一過性であってもよく、持続したまたは特定レベルの低酸素症である必要はない。
【0253】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、疾患または障害は、虚血と関連する。別の実施形態では、疾患または障害は、出血と関連する。別の実施形態では、疾患または障害は、血管新生と関連する。一実施形態では、疾患または障害は、低灌流と関連する。
【0254】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの別の実施形態では、疾患または障害は、炎症に関与する。特定の実施形態では、疾患または障害は、慢性の炎症に関与する。
【0255】
疾患または障害が、前述のうちの2つまたはそれより多くに関連してもよいことが認識されるであろう。
【0256】
本明細書で使用する場合、「虚血に関連する」または「虚血性低酸素症に関連する」という語句は、組織または器官への不十分な血流と関連する低酸素症との関連、つながり、または相関を含むよう広く解釈されるべきである。例えば、当業者に理解されるように、虚血性低酸素症は、塞栓症、動脈瘤、心臓発作、外傷、または不十分な毛細管血流を含む病態生理学的プロセスに続発する不十分な血流の結果であり得る。これは急性および慢性の虚血を含むと解釈されるべきである。これは部分的および全体的虚血を含むと解釈されるべきである。
【0257】
本明細書で使用する場合、「出血に関連する」という用語は、動脈、静脈および毛細管の出血を含むよう広く解釈されるべきである。これは、一次的および二次的な出血、ならびに外部および内部の出血を含むよう解釈されるべきである。
【0258】
本明細書で使用する場合、「血管新生と関連する」という語句は、赤血球によって灌流することができる、微小血管のネットワークを含む、新たな血管の形成との関連、つながり、または相関を含むよう広く解釈されるべきである。これは、正常および異常な血管新生を含むよう解釈されるべきである。
【0259】
本明細書で使用する場合、「炎症に関与する疾患または障害」などの語句は、急性の炎症および/または慢性の炎症と関連する炎症プロセスに関与する疾患または障害を含むよう解釈されるべきである。これは、一連の重症度の炎症応答を含むよう解釈されるべきである。
【0260】
本明細書で使用する場合、「低灌流と関連する」という語句は、局部または全身の低灌流との関連、つながり、または相関を含むよう広く解釈されるべきである。これは、急性および慢性の低灌流を含むよう解釈されるべきである。これは、特定の程度の低灌流を示すよう解釈されるべきでない。
【0261】
低酸素症と関連する疾患または障害は、身体の任意の器官または器官系に影響を及ぼす場合があることが認識されるであろう。例えば、疾患または障害は、外皮系、筋骨格系、神経系(例えば、中枢神経系、末梢神経系、および感覚神経系を含む)、心血管系、リンパ系、呼吸器系、内分泌系、泌尿器系、消化器系、または生殖系に影響を及ぼす場合がある。
【0262】
当業者は、虚血性低酸素症、出血、および/または血管新生と関連するもの、ならびに炎症に関与するものを含む、低酸素症と関連する疾患または障害を容易に特定することができるであろう。
【0263】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、がんである。一実施形態では、がんは、脳神経膠腫、例えば、星状細胞腫、上衣腫、および乏突起神経膠腫である。別の実施形態では、がんは、表皮癌である。別の実施形態では、がんは、卵巣癌である。
【0264】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、卒中である。一実施形態では、疾患または障害は、一過性脳虚血発作である。一実施形態では、低酸素症に関連する疾患または障害は、アルツハイマー病である。一実施形態では、疾患または障害は、パーキンソン病である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、多発性硬化症である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、血管性認知症である。
【0265】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、心虚血である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、虚血性大腸炎である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、急性下肢虚血である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、皮膚虚血である。
【0266】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、敗血症である。例えば、任意の器官系の細菌、真菌、および/またはウイルス感染に続発する敗血症。非限定例として、感染は、肺炎、虫垂炎、腹膜炎、尿路感染症、胆嚢炎、胆管炎、蜂巣炎、髄膜炎、または脳炎であり得る。さらなる非限定例として、敗血症は、急性膵炎、大腸炎、自己免疫疾患、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患、灌流前の損傷、および移植拒絶に続発し得る。
【0267】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、眼の疾患または障害である。「眼の疾患または障害」という語句は、本明細書の他の箇所で記載されるように、広く解釈されるべきである。一実施形態では、疾患または障害は、眼の後部腔のものである。一実施形態では、疾患または障害は、眼の前部腔のものである。
【0268】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、AMD(ウェットおよび/またはドライAMDを含む)である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、糖尿病性網膜症である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症、または網膜卒中である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、黄斑浮腫である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、ブドウ膜炎である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、眼瞼炎である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、重度のドライアイ症候群である。一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、視神経炎である。
【0269】
本発明の第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16、第18、第20、第22、第24、および/または第26の態様のうちの一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、1つまたは複数のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、例えば、シンデカンまたはグリピカンの上方調節に関連する。特定の一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、シンデカン1、シンデカン2、シンデカン3、シンデカン4またはグリピカン4の上方調節に関連する。特定の一実施形態では、低酸素症と関連する疾患または障害は、シンデカン4の上方調節に関連する。
【0270】
当業者は、1つまたは複数のヘパリン硫酸プロテオグリカンの上方調節にも関連する低酸素症と関連する疾患または障害を容易に特定することができるであろう。
【0271】
第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様では、本発明は、眼の疾患または障害を処置する方法、眼の疾患または障害を処置するための医薬の製造、および眼の疾患または障害の処置のための構築物の使用に関する。
【0272】
本明細書で使用する場合、「眼の疾患または障害」などの語句は、身体的損傷に続発するものを含む、直接的または一次的である眼の疾患または障害および別の器官または器官系に直接的または一次的に影響を及ぼす疾患に続発する疾患または障害を含むよう広く解釈されるべきである。この語句は、構造および/または機能の疾患および障害を含むよう解釈されるべきである。これは、症候群を含むよう解釈されるべきである。
【0273】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、疾患または障害は、眼の後部腔のものである。本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、疾患または障害は、眼の前部腔のものである。
【0274】
本明細書で使用する場合、「眼の後部腔(posterior cavity)」(など)は、前部硝子体膜、硝子体液、網膜、脈絡膜、および視神経を含む水晶体の後部の眼の部分を指す。
【0275】
本明細書で使用する場合、「眼の前部腔(anterior cavity)」(など)は、水晶体、虹彩、結膜、小柱網(trabecular network)、眼の涙腺、瞼、および角膜を含む水晶体の前部の眼の部分を指す。
【0276】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害は、低酸素症に関連する。一実施形態では、眼の疾患または障害は、虚血性低酸素症に関連する。別の実施形態では、眼の疾患または障害は、出血に関連する。別の実施形態では、眼の疾患または障害は、血管新生に関連する。「低酸素症に関連する」などの用語は、本明細書の他の箇所で記載されるように解釈されるべきである。
【0277】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害は、炎症に関与するものである。特定の実施形態では、疾患または障害は、慢性の炎症に関与するものである。別の特定の実施形態では、疾患または障害は、急性の炎症に関与するものである。例えば、急性の炎症は、急性の網膜静脈閉塞症または網膜静脈分枝閉塞症において起こり得る。「炎症」などの用語は、本明細書の他の箇所で記載されるように解釈されるべきである。
【0278】
眼の疾患または障害は、前述のうちの2つまたはそれより多くに関連してもよいことが認識されるであろう。
【0279】
当業者は、低酸素症、低灌流、虚血性低酸素症、出血、および/または血管新生と関連する眼の疾患または障害を容易に特定することができるであろう。例のみとして、低酸素症に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、ならびに糖尿病黄斑浮腫が挙げられる。例のみとして、低灌流に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、および糖尿病黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、糖尿病性末梢性ニューロパチー、および視神経炎が挙げられる。例のみとして、虚血性低酸素症に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、および糖尿病黄斑浮腫が挙げられる。例のみとして、出血に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、糖尿病黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、糖尿病性末梢性ニューロパチー、および視神経炎が挙げられる。例のみとして、血管新生に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、および糖尿病黄斑浮腫が挙げられる。例のみとして、炎症に関与する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、糖尿病黄斑浮腫、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、糖尿病性末梢性ニューロパチー、および視神経炎が挙げられる。
【0280】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害は、コネキシン43ヘミチャネルの機能不全に関連する。一実施形態では、眼の疾患または障害は、制御されない病的なコネキシン43ヘミチャネル開口に関連する。
【0281】
当業者は、コネキシン43ヘミチャネルの機能不全に関連する眼の疾患または障害を容易に特定することができるであろう。例のみとして、コネキシン43ヘミチャネルの機能不全に関連する疾患として、AMD、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、糖尿病黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、糖尿病性末梢性ニューロパチー、および視神経炎が挙げられる。
【0282】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害は、1つまたは複数のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、例えば、シンデカンまたはグリピカンの上方調節に関連する。特定の一実施形態では、眼の疾患または障害は、シンデカン1、シンデカン2、シンデカン3、シンデカン4またはグリピカン4の上方調節に関連する。特定の一実施形態では、眼の疾患または障害は、シンデカン4の上方調節に関連する。
【0283】
当業者は、1つまたは複数のヘパリン硫酸プロテオグリカンの上方調節に関連する眼の疾患または障害を容易に特定することができるであろう。例のみとして1つまたは複数のヘパリン硫酸プロテオグリカンの上方調節に関連する眼の疾患または障害として、AMD、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症 、網膜動脈閉塞症または網膜卒中、糖尿病黄斑浮腫、ブドウ膜炎、眼瞼炎、重度のドライアイ症候群、および視神経炎が挙げられる。
【0284】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19、第21、第23、第25、および第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害は、ウェットおよび/またはドライAMDを含む加齢黄斑変性症(AMD)である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、糖尿病性網膜症である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、網膜静脈閉塞症および/または網膜静脈分枝閉塞症である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、網膜動脈閉塞症である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、網膜卒中である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、糖尿病黄斑浮腫である。一実施形態では、疾患または障害は、ブドウ膜炎である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、眼瞼炎である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、重度のドライアイ症候群である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、視神経炎である。一実施形態では、眼の疾患または障害は、糖尿病性末梢性ニューロパチーである
【0285】
本発明の第1から第15の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、全身的に投与される。一実施形態では、投与は、経腸的であり、例えば、経口的であるかまたは坐剤による。一実施形態では、投与は、非経口的であり、例えば、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射による。
【0286】
本発明の第1から第15の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、局所的に投与される。例えば、投与は、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、点眼剤、点耳剤、または吸入によるものであってもよい。例えば、投与は、経皮デバイス、ソフトコンタクトレンズ、または外部眼インサート(external ocular insert)などの局所デバイスによるものであってもよい。
【0287】
本発明の第1から第15の態様のうちの一実施形態では、構築物または構築物を含む組成物は、局部的に投与されてもよい。例えば、投与は、眼周囲注射(例えば、結膜下注射またはテノン嚢下注射)または眼内注射(例えば、腔内注射、硝子体内注射または上脈絡膜注射(suprachoroidal injection))によるものであってもよい。一実施形態では、投与は、局部インプラントまたはデバイス、例えば、眼内インサートもしくはインプラントまたは膣リングデバイスによるものであってもよい。眼内インプラントの例としては、PLGAなどの生分解性ポリマー(Ozurdex(登録商標)として使用される)、自己集合ポリマー粒子、薬物構築物を生成する細胞系インプラント、または半浸透性膜に包まれたペレット(Retisert(登録商標)またはVitrosert(登録商標)として使用される)が挙げられる。
【0288】
例えば、投与は、化学透過性促進剤、例えば、界面活性剤(Som, I.、Bhatia, K.、Yasir, M.、2012年 Status of surfactants as penetration enhancers in transdermal drug delivery. J. Pharm. Bioallied Sci. 4巻、2~9頁に記載される)、テルペン(例えば、Aqil, M.、Ahad, A.、Sultana, Y.、Ali, A.、2007年 Status of terpenes as skin penetration enhancers. Drug Discov. Today 12巻、1061~1067頁に記載される)、または物理学的方法、例えば、マイクロニードル、熱アブレーション、微小皮膚切除(microdermabrasion)、電気穿孔およびキャビテーション超音波(例えば、Mark R. PrausnitzおよびRobert Langer. Transdermal drug delivery Nat Biotechnol. 2008年 26巻(11号):1261~1268頁ならびにEscobar-Chavez, J.J.、Bonilla-Martinez, D.、Villegas-Gonzalez, M.A.、Revilla-Vazquez, A.L.、2009年 Electroporation as an efficient physical enhancer for skin drug delivery. J. Clin. Pharmacol. 49巻、1262~1283頁に記載される)およびパルス脱分極(PDP)イオントフォレーシスを含むイオントフォレーシス(例えば、Aramaki, Y.、Arima, H.、Takahashi, M.、Miyazaki, E.、Sakamoto, T.、Tsuchiya, S.、2003年 Intradermal delivery of antisense oligonucleotides by pulse depolarization iontophoretic system. Biol. Pharm. Bull. 26巻、1461~1466頁およびSakamoto, T.、Miyazaki, E.、Aramaki, Y.、Arima, H.、Takahashi, M.、Kato, Y.、Koga, M.、Tsuchiya, S.、2004年 Improvement of dermatitis by iontophoretically delivered antisense oligonucleotides for interleukin-10 in NC/Nga mice. Gene Ther. 11巻、317~324頁に記載される)によるものであってもよい。
【0289】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、および/または第15の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、眼周囲注射によって投与される。例えば、投与は、結膜下注射またはテノン嚢下注射によるものであってもよい。
【0290】
本発明の第5、第7、第9、第11、第13、および/または第15の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、眼内注射によって投与される。例えば、投与は、腔内注射、硝子体内注射または上脈絡膜注射によるものであってもよい。一実施形態では、投与は、眼内インサートまたはインプラントによるものであってもよい。様々な眼内インサートまたはインプラントが好適であり得る。例えば、眼内インプラントは、PLGAなどの生分解性ポリマー(Ozurdex(登録商標)として使用される)、自己集合ポリマー粒子、薬物構築物を生成する細胞系インプラント、または半浸透性膜に包まれたペレット(Retisert(登録商標)またはVitrosert(登録商標)として使用される)を含むことができる。
【0291】
当業者は、本発明の方法に対する他の適切な投与方式を特定することができる。
【0292】
本発明の第16から第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、全身投与のために製剤化される。一実施形態では、医薬は、例えば、経口または坐剤による、経腸投与のために製剤化される。一実施形態では、医薬は、例えば、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射による非経口投与のために製剤化される。
【0293】
本発明の第16から第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、局所投与のために製剤化される。例えば、医薬は、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、点眼剤、点耳剤、または吸入による投与のために製剤化されてもよい。例えば、医薬は、経皮デバイス、ソフトコンタクトレンズまたは外部眼インサートなどの局所デバイスによる投与のために製剤化されてもよい。
【0294】
本発明の第16から第21の態様のうちの一実施形態では、構築物または構築物を含む組成物は、局部投与のために製剤化される。例えば、医薬は、眼周囲注射(例えば、結膜下注射またはテノン嚢下注射)または眼内注射(例えば、腔内注射、硝子体内注射または上脈絡膜注射)による投与のために製剤化されてもよい。一実施形態では、医薬は、局部インプラントまたはデバイス、例えば、眼内インプラントまたは膣リングデバイスによる投与のために製剤化されてもよい。
【0295】
本発明の第17、第19、および/または第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、眼周囲注射による投与のために製剤化される。例えば、医薬は、結膜下注射またはテノン嚢下注射による投与のために製剤化されてもよい。
【0296】
本発明の第17、第19、および/または第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、眼内注射による投与のために製剤化される。例えば、医薬は、腔内注射、硝子体内注射または上脈絡膜注射による投与のために製剤化されてもよい。一実施形態では、医薬は、眼内インサートまたはインプラントによる投与のために製剤化されてもよい。
【0297】
本発明の第22から第27の態様のうちの一実施形態では、使用は、全身投与による。一実施形態では、使用は、例えば、経口または坐剤による経腸投与による。一実施形態では、使用は、例えば、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射による非経口投与による。
【0298】
本発明の第22から第27の態様のうちの一実施形態では、使用は、局所投与による。例えば、使用は、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、点眼剤、点耳剤、または吸入可能な製剤の投与によってもよい。例えば、使用は、経皮デバイス、ソフトコンタクトレンズ、または外部眼インサートなどの局所デバイスによる投与によってもよい。
【0299】
本発明の第22から第27の態様のうちの一実施形態では、使用は、局部投与による。例えば、使用は、眼周囲注射(例えば、結膜下またはテノン嚢下注射)または眼内注射(例えば、腔内注射、硝子体内注射、または上脈絡膜注射)によってもよい。一実施形態では、使用は、局部インプラントまたはデバイス、例えば、眼内インプラントまたは膣リングデバイスによる投与によってもよい。
【0300】
本発明の第23、第25、および/または第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害を処置する際の使用は、眼周囲注射による。例えば、使用は、結膜下またはテノン嚢下注射によってもよい。
【0301】
本発明の第23、第25、および/または第27の態様のうちの一実施形態では、眼の疾患または障害を処置する際の使用は、眼内注射によってもよい。例えば、使用は、腔内注射、硝子体内注射または上脈絡膜注射によってもよい。一実施形態では、使用は、眼内インサートまたはインプラントによる投与によってもよい。
【0302】
構築物、核酸、または核酸ベクターを含む医薬に言及される場合、医薬が、構築物、核酸、または核酸ベクターを含む組成物を含んでもよいことが認識されるであろう。
【0303】
認識されるように、本発明の第4から第15の態様に従う投与される用量、投与期間、および一般的投与レジームは、化合物または構築物を含む治療剤、処置される特定の疾患または障害、処置される被験体の任意の症状の重症度、選択される投与方式、ならびに被験体の年齢、性別および/または一般的健康のような変数に応じて被験体間で異なってもよい。
【0304】
投与は、毎日行われてもよく、適宜、1日1回用量、何回かの別個の分割用量の投与、または連続投与を含んでもよいことが認識されるべきである。例えば、連続投与は、外部または内部デバイスまたはインプラント、例えば、外眼球デバイスまたは眼内デバイスを使用して達成されてもよい。
【0305】
投与は、毎日よりも少ない頻度で行われてもよく、例えば、投与は、製剤および投与方式に応じて、週1回、2週間に1回、月1回、2カ月に1回投与されるなどの再投与を有する初回用量によるものであってもよいことが認識されるべきである。さらに、投与レジメンは、比較的頻繁な負荷用量の初期期間と、その後のより少ない頻度の維持用量を含んでもよいことが認識されるべきである。例えば、硝子体内注射の場合には、いくつかの負荷用量がおよそ月に1回投与され、その後、およそ2カ月に1回の維持用量が投与されてもよい。例のみとして、投与は、2、3、4、5または6回の負荷用量を含んでもよい。
【0306】
例として、単位用量は、1日当たり1回または1回より多く、例えば、1日に1、2、3、4、5または6回投与され、所望の総1日用量を達成してもよい。例として、本発明の構築物の単位用量は、1日1回用量または何回かの別個の用量でまたは連続的に投与されてもよい。
【0307】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第4から第15の態様のうちの実施形態では、全身的単位用量は、1日当たり1回または1回より多く、例えば、1日に1、2、3、4、5または6回投与され、所望の総1日用量を達成してもよい。例として、本発明の構築物の単位用量は、1日1回用量または何回かの別個の用量で、または連続的に投与され、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドのおよそ70mgからおよそ1,750mgの1日用量を達成してもよい。
【0308】
例として、本発明の構築物の全身的単位用量は、1日1回または1回より多く(例えば、1日に1、2、3、4、5または6回、典型的には、1から4回)投与されてもよく、その結果、総1日用量は、(70kgの成人に対して)およそ70mgからおよそ1,750mgの範囲、すなわち、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドが1日当たりおよそ1からおよそ25mg/kgの範囲となる。
【0309】
さらなる例として、本発明の構築物は、1日1回または1回より多く全身的に投与され、1日当たり、体重1kg当たりおよそ1mgからおよそ2mgまたは1日当たり、体重1kg当たりおよそ5mgからおよそ25mgのCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの用量を達成してもよい。
【0310】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第4から第15の態様のうちの実施形態では、本発明の構築物は、全身的に投与され、およそ5マイクロモル濃度からおよそ20マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物が投与され、およそ5マイクロモル濃度の循環濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物が全身的に投与され、およそ10マイクロモル濃度の循環濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物が全身的に投与され、およそ15マイクロモル濃度の循環濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物が全身的に投与され、およそ20マイクロモル濃度の循環濃度を達成してもよい。
【0311】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第4から第15の態様のうちの実施形態では、本発明の構築物は、所望の期間で、およそ2.5マイクロモル濃度からおよそ250マイクロモル濃度のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を維持するのに十分な濃度で、全身注入によって投与されてもよい。別の例では、本発明の構築物は、およそ2.5マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を維持するのに十分な濃度で、全身注入によって投与されてもよい。別の例では、本発明の構築物は、所望の期間で、およそ10マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度の循環濃度を維持するのに十分な濃度で、全身注入によって投与されてもよい。別の例では、本発明の構築物は、所望の期間で、およそ100マイクロモル濃度からおよそ250マイクロモル濃度の循環濃度を維持するのに十分な濃度で、全身注入によって投与されてもよい。
【0312】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第4から第15の態様のうちの実施形態では、本発明の構築物は、局所的に投与され、およそ1マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、1、2、3、4または5マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ10、15または20マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ30、40、50、60、70、80、90、または100マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ1からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ1からおよそ5マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ5からおよそ10マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ10からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の組織濃度を達成してもよい。
【0313】
局所投与は、例えば、眼の前部腔の疾患または障害、例えば、重度のドライアイまたは眼瞼炎などの処置に好適であり得ることが認識されるべきである。局所投与は、例えば、皮膚または粘膜(例えば、口腔粘膜、鼻粘膜、膣粘膜)の疾患または障害、例えば、がんの処置に好適であり得ることも認識されるべきである。
【0314】
当業者は、上述の変数に基づいて、特に、化合物または構築物を含む治療剤に鑑みて、適切な投与量を容易に決定することができるであろう。
【0315】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトにおいて使用するための様々な投与量を製剤化するのに使用することができる。投与量は、剤形および投与経路に応じてこの範囲内で変動してもよい。治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量阻害(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物の濃度)を含む細胞濃度範囲を達成するために、用量は細胞培養または動物モデルにおいて製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、Finglら、1975年、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第1章、1頁を参照のこと)。
【0316】
投与は、処置される疾患もしくは障害の進行中、または疾患もしくは障害の発症前もしくは後のいつでも行うことができる。
【0317】
本発明の第1から第9の態様のうちの一実施形態では、本発明の構築物または本発明の構築物を含む組成物は、疾患または障害の症状の進行中の管理を助長するために、延長された期間、毎日基準で投与される。本発明の第1から第9の態様のうちの別の実施形態では、本発明の構築物または本発明の構築物を含む組成物は、疾患または障害の発症を予防するかまたは遅延させるために、延長された期間または被験体の人生を通して、毎日基準で投与される。
【0318】
本発明の第16から第21の態様の医薬は、前述に従う適切な用量の投与のために製剤化されてもよいことが認識されるであろう。
【0319】
本発明の第22から第27の態様の処置における使用は、前述に従う適切な用量の投与を含み得ることが認識されるであろう。
【0320】
本発明の第1から第9の態様の方法は、追加の薬剤または組成物の被験体への送達などの追加のステップをさらに含んでもよいことが認識されるべきである。
【0321】
本発明の第1から第9の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、または核酸ベクターは、1つまたは複数の追加の治療剤と同時並行で投与される。本発明の第1から第9の態様のうちの一実施形態では、構築物、核酸、または核酸ベクターは、1つまたは複数の追加の治療剤と逐次的に投与される。
【0322】
本発明の第10から第15の態様のうちの一実施形態では、組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤を含む。
【0323】
本発明の第16から第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、1つまたは複数の追加の治療剤を含む。
【0324】
本発明の第16から第21の態様のうちの一実施形態では、医薬は、1つまたは複数の追加の治療剤との同時並行投与のために製剤化される。本発明の第16から第21の態様のうちの別の実施形態では、医薬は、1つまたは複数の追加の治療剤との逐次的投与のために製剤化される。
【0325】
本発明の第22から第27の態様のうちの一実施形態では、処置における使用は、1つまたは複数の追加の治療剤との同時投与を含む。本発明の第22から第27の態様のうちの別の実施形態では、処置における使用は、1つまたは複数の追加の治療剤との同時並行投与を含む。本発明の第22から第27の態様のうちの別の実施形態では、処置における使用は、1つまたは複数の追加の治療剤との逐次的投与を含む。
【0326】
「治療剤」は、本明細書で使用する場合、低酸素症と関連する標的疾患もしくは障害または眼の標的疾患もしくは障害の処置に有用であるかまたはメリットを有すると考えられるこれらの薬剤または薬物を含むと広く解釈されるべきである。「治療剤」として、例えば、化学療法薬、免疫療法薬、標的化された治療薬(例えば、小分子またはモノクローナル抗体を含む)、ワクチンおよび遺伝子療法が挙げられる。このような薬物は、低酸素症と関連する標的疾患もしくは障害または眼の標的疾患もしくは障害と関連する臨床症状または診断マーカーのうちの1つまたは複数を緩和する、低減する、好転させる、または予防することができる。
【0327】
例えば、特定の実施形態では、本発明は、卒中を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)または組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)と組み合わせて、被験体に投与することを含む、方法を提供する。例えば、rtPAは、アルテプラーゼ(Activase、Actilyse)、レテプラーゼ(Retavase、Rapilysin)、テネクテプラーゼ(TNKase)、またはデスモテプラーゼであってもよい。
【0328】
別の例では、特定の実施形態では、本発明は、心筋梗塞を処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)または組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)と組み合わせて、被験体に投与することを含む、方法を提供する。例えば、rtPAは、アルテプラーゼ(Activase、Actilyse)、レテプラーゼ(Retavase、Rapilysin)、テネクテプラーゼ(TNKase)、またはデスモテプラーゼであってもよい。
【0329】
さらなる例では、特定の実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドおよび(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む構築物を、がんを処置するのに使用するための治療剤と組み合わせて、被験体に投与することを含む、方法を提供する。例えば、治療剤は、テモゾロミド、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、オキサリプラチン、またはこれらの組合せであってもよい。当業者は、処置されるがんおよび本明細書の開示に鑑みて、適切な治療剤および組合せを容易に特定することができるであろう。
【0330】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、第1から第9の態様のうちのある特定の実施形態では、本発明の構築物は、局部的に投与され、およそ1マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの最終組織濃度を達成してもよい。例えば、本発明の構築物は、局部的に投与され、1、2、3、4または5マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、局部的に投与され、およそ10、15または20マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、局部的に投与され、およそ30、40、50、60、70、80、90、または100マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、局部的に投与され、およそ1からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、局部的に投与され、およそ1からおよそ5マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ5からおよそ10マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ10からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終組織濃度を達成してもよい。
【0331】
例えば、肺の疾患または障害(例えば、肺がん、石綿症、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性の咳、クループ、嚢胞性線維症、ハンタウイルス、特発性肺線維症、インフルエンザ、汎発性インフルエンザ、百日咳、胸膜炎、肺炎、肺塞栓症、肺高血圧症、呼吸器合抱体ウイルス、サルコイドーシス、または結核など)の場合には、投与は、エアロゾル送達を介してであってもよい。例えば、脊髄に影響を及ぼす疾患または障害(例えば、脊髄腫瘍)の場合には、投与は、髄腔内薬物送達系を介してであってもよい。例えば、眼の疾患または障害の場合には、投与は、眼周囲注射、眼内注射、または眼内インサートもしくはインプラントを介してであってもよい。
【0332】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第1、第4、および/または第5の態様のうちの特定の実施形態では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ1マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの最終眼内濃度を達成してもよい。例えば、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、1、2、3、4または5マイクロモル濃度の最終眼内濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ10、15または20マイクロモル濃度の最終濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ30、40、50、60、70、80、90、または100マイクロモル濃度の最終眼内濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ1からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終眼内濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、硝子体内に投与され、およそ1からおよそ5マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ5からおよそ10マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ10からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終眼内濃度を達成してもよい。
【0333】
本発明の第1、第4、および/または第5の態様のうちの特定の実施形態では、本発明の構築物は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量で、硝子体内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ0.04mgから2.5mgの用量で、硝子体内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ0.04mgから1mgの用量で、硝子体内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ1mgからおよそ2.5mgの用量で、投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ2.5mgからおよそ5mgの用量で投与されてもよい。
【0334】
がんの処置に関し、化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第1および/または第4の態様の特定の実施形態では、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、およそ1マイクロモル濃度からおよそ100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの最終組織濃度を達成してもよい。例えば、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、1、2、3、4または5マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、およそ10、15または20マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、およそ30、40、50、60、70、80、90、または100マイクロモル濃度の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、およそ1からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終組織濃度を達成してもよい。別の例では、本発明の構築物は、腫瘍内に投与され、およそ1からおよそ5マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ5からおよそ10マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ10からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の最終組織濃度を達成してもよい。
【0335】
がんの処置に関し、化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである、本発明の第1および/または第4の態様の特定の実施形態では、本発明の構築物は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量で腫瘍内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ0.04mgから2.5mgの用量で、硝子体内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ0.04mgから1mgの用量で、硝子体内に投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ1mgからおよそ2.5mgの用量で、投与されてもよい。例えば、本発明の構築物は、およそ2.5mgからおよそ5mgの用量で投与されてもよい。
【0336】
Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドをコードする核酸に関与する本発明の第2、第3、第6、第7、第8および/または第9の態様のうちのある特定の実施形態では、核酸および/または核酸ベクターが投与され、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度がおよそ1マイクロモル濃度からおよそ250マイクロモル濃度の範囲であるような発現された構築物を達成してもよい。別の例では、1、2、3、4または5マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、およそ10、15または20マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、およそ30、40、50、60、70、80、90、または100マイクロモル濃度の組織濃度を達成してもよい。別の例では、およそ1からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の組織濃度を達成してもよい。別の例では、およそ1からおよそ5マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ5からおよそ10マイクロモル濃度の範囲、またはおよそ10からおよそ20マイクロモル濃度の範囲の組織濃度を達成してもよい。
【0337】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトにおいて使用するための様々な投与量を製剤化するのに使用することができる。投与量は、剤形および投与経路に応じてこの範囲内で変動してもよい。治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む細胞濃度範囲を達成するために、用量は細胞培養または動物モデルにおいて製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、Finglら、1975年、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第1章、1頁を参照のこと)。
【0338】
投与は、処置される特定の疾患または障害に鑑みて、処置される疾患もしくは障害の進行中、または疾患もしくは障害の発症前もしくは後のいつでも行うことができる。例えば、疾患または障害がAMDである場合、投与は、初期、中間期、および/または後期AMDの間に行うことができる。例えば、疾患または障害が糖尿病性網膜症である場合、投与は、軽度の非増殖性網膜症が存在する場合、中程度の非増殖性網膜症が存在する場合、重度の非増殖性網膜症が存在する場合、および/または増殖性糖尿病性網膜症が存在する場合に行うことができる。例えば、疾患または障害が卒中である場合、投与は、再灌流の前、再灌流の間または再灌流の後に行うことができ、クロット分解化合物(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アルテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼまたはレテプラーゼなど)または外科的手段によるクロット回収と共にであってよい(特に、排他的にではないが、投与される構築物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む場合)。特に、排他的にではないが、投与される構築物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドを含む場合、投与は、クロット分解化合物(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アルテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼまたはレテプラーゼなど)による処置の後または外科的手段によるクロット回収後であってもよい。例えば、疾患または障害ががんである場合、投与は、任意のステージ、例えば、TNM類別システム(ここで、Tは、主要な腫瘍のサイズおよび程度を指し、Nは、がんを有する隣接するリンパ節を指し、Mは、がんが転移したかどうかを指す)により判断された場合に行うことができる。異常細胞が存在するが、隣接組織に広がっていない場合、投与はステージ0においてであり得、またはがんが存在する場合、グレード1、IIもしくはIIにおいてであり得(数字が大きいほど、がんは大きく、より隣接組織に広がっている)、またはがんが体の遠位部分に広がっている場合、ステージIVにおいてであり得る。
【0339】
本発明の第4から第9の態様のうちの一実施形態では、本発明の構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または本発明の構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、疾患または障害の症状の進行中の管理を助長するために、延長された期間、毎日基準で投与される。本発明の第4から第9の態様のうちの別の実施形態では、本発明の構築物、核酸、もしくは核酸ベクター、または本発明の構築物、核酸、もしくは核酸ベクターを含む組成物は、疾患または障害の発症を予防するかまたは遅延させるために、延長された期間または被験体の人生を通して、毎日基準で投与される。
【0340】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ70mgから1,750mgの範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの用量の全身投与のために製剤化される。
【0341】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ5マイクロモル濃度から20マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を達成する用量の全身投与のために製剤化される。
【0342】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ2.5マイクロモル濃度から250マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を達成する用量の全身注入による投与のために製剤化される。
【0343】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ1マイクロモル濃度から100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成する用量の局所投与のために製剤化される。
【0344】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ1マイクロモル濃度から100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成する用量の局部投与のために製剤化される。
【0345】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ1マイクロモル濃度から100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成する用量の硝子体内投与のために製剤化される。
【0346】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ1マイクロモル濃度から100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成する用量の腫瘍内投与のために製剤化される。
【0347】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の局部投与のために製剤化される。
【0348】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第17の態様または本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の硝子体内投与のために製剤化される。
【0349】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第16の態様の一実施形態では、医薬は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の腫瘍内投与のために製剤化される。
【0350】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第23の態様または本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ70mgから1,750mgの範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの用量の投与による。
【0351】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第23の態様または本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ70mgから1,750mgの範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの用量の全身投与による。
【0352】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第23の態様または本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ2.5マイクロモル濃度から250マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの循環濃度を達成する用量の投与による。
【0353】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第23の態様または本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ1マイクロモル濃度から100マイクロモル濃度の範囲のCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度を達成する用量の投与による。
【0354】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の局部投与による。
【0355】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第23の態様または本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の硝子体内投与による。
【0356】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第22の態様の一実施形態では、使用は、およそ0.04mgからおよそ5mgの範囲の用量の腫瘍内投与による。
【0357】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第19および/もしくは第21の態様または本発明の第18および/もしくは第20の態様のうちの一実施形態では、医薬は、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度がおよそ1マイクロモル濃度からおよそ250マイクロモル濃度の範囲であるような発現された構築物を達成する用量の核酸および/または核酸ベクターの投与のために製剤化される。
【0358】
化合物がCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドである本発明の第19および/もしくは第21の態様または本発明の第18および/もしくは第20の態様のうちの一実施形態では、使用は、Cx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドの組織濃度がおよそ1マイクロモル濃度からおよそ250マイクロモル濃度の範囲であるような発現された構築物を達成する用量の投与による。
【0359】
本発明に従う有用なペプチドまたは本発明の構築物(例えば、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドまたはCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチド)が組換え技法によって生成され得る程度まで、本発明は、ペプチドのクローニングおよび発現を助けることができる、本発明において有用なペプチドをコードする核酸、本発明の構築物をコードする核酸、本発明において有用なペプチドをコードする核酸を含むベクター、および本発明の構築物をコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0360】
さらに、例えば、本明細書に詳述される第2、第3、第6、第7、第8、第9、第12から第15、および/または第24から第27の態様に従って、本発明の構築物をコードし、本発明において有用な核酸および/または本発明の構築物をコードし、本発明において有用な核酸を含む核酸ベクターを使用することができる(治療的に使用することを含む)ことが認識されるべきである。
【0361】
例えば、構築物をコードする核酸/発現ベクターは、次に発現されるペプチド/構築物と共に、被験体に投与されるかまたは細胞もしくは細胞の集団に接触させることができる。したがって、本発明は、これらの目的に好適な核酸および核酸ベクターを含む。
【0362】
本発明の、または本発明に従う有用な核酸は、「単離された」または「精製された」核酸であることが理解されるべきである。「単離された」または「精製された」核酸は、それが天然に存在するか、または人工的に合成される環境から特定および分離されたものである。これらの用語は、核酸が、それが天然に存在する環境から精製または分離された程度を反映しないことが認識されるべきである。本発明の、または本発明に従う有用な核酸は、天然の供給源から単離されるか、または好ましくは、当業者に容易に公知である化学合成または組換え技法によって導出されてもよい。
【0363】
本発明が関連する技術分野における当業者は、本発明における有用なペプチドおよび機能的に同等なバリアント(例えば、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドまたはCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチド)をコードする様々な核酸ならびに本明細書に提供されるアミノ酸配列に基づいた本発明の構築物、遺伝子コードおよびそこで理解される縮重、ならびに公開された核酸配列(例えば、Guo, Y.およびHou, J. Establishment of consensus sequence of hepatitis B virus prevailing in the mainland of China. Zhonghua Min Guo Wei Sheng Wu Ji Mian Yi Xue Za Zhi 19巻:189~2000頁、1999年を参照のこと)を容易に特定することができるであろう。
【0364】
しかしながら、例として、以下の核酸は、B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチドに関して好適である:
- ctt tgt cta cgt ccc(LCLRPを含むペプチド)(配列番号73)
- ctt tgt cta cgt ccc gtc ggc(LCLRPVGを含むペプチド)(配列番号74)
- ctt tgt cta cgt ccc gtc ggc gct gaa(LCLRPVGAEを含むペプチド)(配列番号75)
- ctt tgt cta cgt ccc gtc ggc gct gaa tcc cgc(LCLRPVGAESRを含むペプチド)(配列番号76)
- ctt tgt cta cgt ccc gtc ggc gct gaa tcc cgc gga cga ccc gtc tcg ggg ccg ttt ggg(LCLRPVGAESRGRPVSGPFGを含むペプチド)(配列番号77)
- gtc ctt tgt cta cgt(VLCLRを含むペプチド)(配列番号78)
- ctt tgt cta cgt(LCLRを含むペプチド)(配列番号79)
【0365】
さらなる例として、当業者は、公開された配列情報、例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.govで利用可能なGenBank受託番号U64573.1を参照してCx43の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチドをコードする核酸配列を容易に導出することができ、読み手は、参照するためにこのデータベースに特に目を向け、登録は、本明細書の本発明の一般的記載に含まれる。
【0366】
核酸ベクターおよび/または核酸構築物は、一般的に、異種核酸配列を含有することになる。すなわち、核酸ベクターおよび/または核酸構築物は、本発明において有用なペプチドが導出されるネイティブタンパク質/ペプチドをコードする核酸中に、本発明において有用なペプチドをコードする配列に隣接しない核酸配列を含有する。核酸ベクターおよび/または核酸構築物は、構築物それ自体をコードしない核酸配列を含有してもよい。例えば、核酸ベクターおよび/または核酸構築物は、当技術分野で公知であるプロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、終結配列、複製起点、および他の適切な調節配列などの調節配列を含有してもよい。さらに、これらは、発現したタンパク質が、その宿主細胞から分泌されるのを可能とする分泌配列を含有してもよい。さらに、核酸発現構築物は、融合タンパク質またはペプチドとして、挿入された本発明の核酸配列の発現を導く融合配列(異種アミノ酸配列をコードするものなど)を含有してもよい。
【0367】
有用な異種核酸配列として、例えば、ペプチドの次の単離および精製を助けることができるアミノ酸配列をコードするものを挙げることができる(例えば、ユビキチン、his-tag、c-myc tag、GST tag、またはビオチン)。異種核酸配列は、上述のように、ペプチドを別の化合物に連結させて本発明の構築物を形成するのを助けるペプチドリンカーをコードするものを含んでもよい。
【0368】
核酸構築物またはベクターは、RNAまたはDNAのいずれか、原核生物または真核生物のいずれかであってもよく、典型的には、ウイルスまたはプラスミドである。好適な核酸構築物は、好ましくは、宿主細胞に本発明の核酸を送達するのに適応しており、このような細胞中で複製可能であるかまたは複製不能である。本発明の核酸を含む組換え核酸構築物は、例えば、本発明の核酸配列のクローニング、シークエンシング、および発現において使用されてもよい。
【0369】
本発明の関連する技術分野における当業者は、本発明において使用するのに好適な多くの核酸構築物を認識するであろう。しかしながら、pUCおよびpBluescriptなどのクローニングベクターならびにpCDM8などの発現ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)またはレンチウイルスの使用は特に有用である。
【0370】
本発明に従って、核酸ベクターの宿主細胞への形質転換は、核酸配列を細胞へと挿入することができる任意の方法によって遂行することができる。例えば、形質転換技法として、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、細胞透過性キャリアペプチド送達、および遺伝子銃(biolistic bombardment)が挙げられる。
【0371】
認識されるように、形質転換された本発明の核酸配列は、染色体外に残存する場合があり、または発現されるそれらの能力が保持されるように、宿主細胞の染色体内の1つまたは複数の部位へと組み込まれ得る。
【0372】
当技術分野で公知の任意の数の宿主細胞を、本発明における有用な核酸配列および/または本発明の核酸配列のクローニングおよび発現に利用してもよい。例えば、これらは、これらに限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌などの微生物;組換え酵母発現ベクターにより形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;pEE14プラスミド系を使用するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞などの動物細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換された植物細胞系を含む。
【0373】
本発明に従う有用な組換えペプチドまたは本発明の組換えペプチド構築物は、形質転換された宿主細胞、または培養培地から回収し、その後、当技術分野で標準的な様々な技法を使用してそれを発現させてもよい。例えば、洗浄剤抽出、超音波処理、溶解、浸透圧ショック処理および封入体精製。タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気穿孔、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、および等電点電気泳動などの技法を使用してさらに精製されてもよい。
【0374】
本発明のペプチドの組換え発現のための追加のまたは代替の方法論は、例えば、SambrookおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年)から得ることができる。
【0375】
眼の疾患および/または障害、例えば、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、眼の腫瘍、および/または網膜卒中の処置に関与する本発明の態様における有用なペプチド治療剤の例として、炎症または補体経路におけるタンパク質(例えば、Ang2、Tie2、インテグリンもしくはCx43)の生成を低減するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは任意のVEGFもしくはPDGFまたはそれらの受容体の生成を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。さらなる例は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症またはがんにおける血管新生を低減する抗VEGFおよび/または抗PDGFアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。
【0376】
本発明の構築物は、組換えクローニングおよび発現技法を使用して生成されてもよく、したがって、本発明は、構築物をコードする核酸およびこのような核酸を含むベクターを含むと解釈されるべきである。
【0377】
当業者は、以前に本明細書に記載された標的化キャリアペプチドの核酸およびペプチド配列ならびに細胞に送達されるペプチド化合物の性質に鑑みて、本発明の構築物をコードする核酸の配列を容易に認識するであろう。同様に、当業者は、構築物をクローニングおよび発現するために適切なベクターを容易に認識するであろう。しかしながら、例として、核酸ベクター(例えば、pUCベクター、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス)および本明細書の他の箇所で詳述される技法(例えば、WO91/09958、WO03/064459、WO00/29427、およびWO01/13957に記載されたものを含む)を使用してもよい。
【0378】
ある特定の用語は、本明細書において、複数形;例えば、「細胞(cells)」、「化合物(compounds)」、「薬剤(agents)」で言及される場合がある。これは、この文脈が別段に要求しなければ、単数形への言及も含むと解釈されるべきである。
【実施例0379】
材料および方法
ペプチド配列
Gap19(KQIEIKKFK[配列番号3])、XG19と指定された融合ペプチド(
【化2】
)および融合ペプチドTAT-Gap19(YGRKKRRQRRRKQIEIKKFK[配列番号80])ならびにFITCで標識したペプチドはすべて、95%の純度で、ChinaPeptide Co Ltdから入手した。Peptide 5(VDCFLSRPTEKT[配列番号81])は、Auspepから購入した。ペプチドをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0380】
細胞の培養および維持
別段に述べられていなければ、すべての細胞培養試薬は、Gibco(登録商標)またはInvitrogen(商標)(Life Technologies)から購入した。ARPE-19細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入したヒト網膜色素上皮細胞株に由来し、T25フラスコにおいて、DMEM/F12(DMEM/F-12、10%の熱により不活性化したウシ胎仔血清(FBS)を含有するGlutaMAX(商標)培地、および1%のAntibiotic-Antimicotic(Sigma))中、37℃で、5%のCO2を用いて維持した。
【0381】
初代ヒト網膜微小血管内皮細胞(hRMEC;Neuromics)を、T25フラスコにおいて、10%のウシ胎仔血清と1%のAntibiotic-Antimicotic(Sigma)を補充した、内皮基本培地(EBM-2;Lonza)およびEGM-2 SingleQuots(商標)(Lonza)を含有するEGM-2(商標) BulletKit(商標)培地(Lonza)中、37℃で、5%のCO2を用いて培養および維持した。VEGFを、EGM-2培地から排除した。
【0382】
細胞を、70~80%コンフルエンスまで成長させ、週に1回または2回分けて、30継代未満で維持した。実験のために、細胞を、TrypLE(商標) Expressで採取し、1500rpmで7分間遠心分離し、培養培地中に再懸濁し、トリパンブルーとNeubauer血球計算器を使用してカウントした。必要とされる濃度の細胞をプレーティングし、終夜成長させ、それらをウェルの底に付着させた。
【0383】
高血糖および炎症溶液
高血糖および炎症溶液を、32.5mMの最終グルコース濃度を達成するために、DMEM/F12、GlutaMAX(商標)にグルコースを添加することによって生成した。炎症性サイトカインであるTNFαおよびIl-1β(PeproTech)を添加して、それぞれ10ng/mlの最終濃度を達成した。Antibiotic-Antimycoticを溶液に添加し、1%の濃度を達成した。溶液は、細胞に適用する前に新鮮にした。
【0384】
画像の獲得および分析
細胞および組織の可視化を、FV-1000レーザー走査共焦点システムを有するOlympus BX-10共焦点顕微鏡を使用して行った。Olympus FV-10ソフトウェアを使用して画像を獲得し、ImageJを使用して面積測定値を作製した。すべての統計分析は、Graphpad Prism 7ソフトウェアを使用して行った。
【0385】
細胞による取込み
ARPE-19またはhRMEC細胞を採取し、0.4mlのDMEM/F12またはEGM-2(商標)BulletKit(商標)培地中、1ml当たり2×105個の細胞密度で、8ウェルチャンバースライドに播種し、37℃、5%のCOで、二晩にわたってインキュベートした。ペプチドまたはコントロールチャネル遮断剤、カルベノキソロン(CBX)(Sigma)または塩化ランタン(LaCl;Sigma)を、適切な濃度で、DMEM/F12またはEGM-2(商標) BulletKit(商標)培地と混合し、37℃、5%のCOで、1時間、細胞に適用した。低酸素条件下での細胞の取込みのために、ペプチドを、低酸素、酸性イオンシフトリンガー(hypoxic acidic ion-shifted Ringers)(HAIR)溶液(13)中に、37℃、5%のCOで、1時間送達した。高血糖および炎症条件下での細胞の取込みのために、ペプチドを、高血糖および炎症溶液中に、37℃、5%のCOで、24時間送達した。溶液を除去し、細胞をPBS中で洗浄し、4%のホルムアルデヒドPBS中で固定し、細胞核をDAPIで対比染色した。退色防止剤(Citifluor(商標)AF1)中でカバーガラスを載せ、共焦点顕微鏡法によって細胞を可視化した。
【0386】
MTTアッセイ
ARPE-19細胞を、DMEM/F12(正常培地)またはHAIR溶液に1時間曝露させた。XG19をDMEM/F12またはHAIR溶液中で混合し、0、5、10または20μMの濃度で、37℃、5%のCOで、1または24時間、ARPE-19細胞に適用した。インキュベーション期間後、各ウェルの溶液を除去し、PBS中0.5mg/mLのMTT(Thermo Fisher Scientific)で置き換え、37℃、5%のCOで、4時間インキュベートした。次いで、MTT/PBS溶液を除去し、HCl-イソプロパノール溶液(0.04M)で置き換え、形成したホルマザンを溶解した。紫色の強度を、650nmで干渉を補正した570nmで吸光度を測定することによって定量した(BioTek Synergy HT)。
【0387】
EthD-1の取込み
以前に述べたように、ペプチドを、取込みのために細胞上に適用した。ペプチド溶液を細胞から除去し、ヘミチャネルを開口させるためのハンクス緩衝塩溶液(137mMのNaCl、5.4mMのKCl、0.25mMのNaHPO、0.1gのグルコース、0.44mMのKHPO、1.0mMのMgSO、4.2mMのNaHCO)+EGTA(5mM)(低カルシウム溶液)または高カルシウム(Ca2+)溶液(ハンクス緩衝塩溶液+1.3mMのCaCl)中の2μMのエチジウムホモ二量体-1(EthD-1)に、37℃、5%のCOで、30分間曝露した。溶液を除去し、細胞をPBS中で洗浄し、4%のホルムアルデヒドPBS中で固定し、その後、細胞核をDAPIで対比染色した。退色防止剤(Citifluor(商標)AF1)中でカバーガラスを載せ、スライドを画像化した。
【0388】
ATP放出アッセイ
以前に記載したように、取込みの研究のために、ペプチドを細胞上に適用した。ペプチド溶液を細胞から除去し、次いで、37℃、5%のCOで、30分間、低カルシウム(Ca2+)溶液またはHAIR溶液に曝露してヘミチャネルを開口させるかまたは高カルシウム溶液に曝露してヘミチャネルを閉じさせた。溶液を、黒色96ウェルプレート中に移し、ATPの測定を、ATPルミネセンスキット(Sigma)の指示に従い、Victor X Lightルミネセンスプレートリーダー(Perkin Elmer 2030)を使用して実施した。
【0389】
ギャップジャンクションアッセイ
以前に述べたように、ペプチドを、取込みのために細胞上に適用した。ペプチド溶液を細胞から除去し、細胞を、0.1%のルシフェラーゼイエロー/PBS染料(LY)に曝露した。ピペットチップを使用して、細胞単層において、縦と横の擦過を作出した。次いで、細胞を室温で、15分間インキュベートした。LY染料溶液を除去し、細胞をPBS中で洗浄し、4%のホルムアルデヒドPBS中で固定し、細胞核をDAPIで対比染色した。退色防止剤(Citifluor(商標)AF1)中でカバーガラスを載せ、スライドを画像化した。
【0390】
ARPE-19細胞のシンデカン4標識
ARPE-19細胞を、DMEM/F-12、高血糖および炎症溶液、またはHAIR溶液のいずれかで1時間処置し、その後、PBS中で細胞を洗浄し、室温で10分間、4%のホルムアルデヒド/PBS中で固定した。ホルムアルデヒド溶液をPBSで洗い流し、細胞を一次抗体(抗シンデカン4(R&D Systems))で終夜標識した。次いで、一次抗体をPBSで洗い流し、その後、PBS中の二次抗体(ロバ抗ヤギ488)およびDAPIを、湿度の高い箱の中で、室温で1時間適用した。退色防止剤(Citifluor(商標)AF1)中でカバーガラスを載せ、スライドを画像化した。
【0391】
レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生のマウスモデル
一般的手順
雌のC57BL/6マウスをオークランド大学(University of Auckland)のVernon Jansen Unit(VJU)から入手し、実験0日目に6週齢であった。すべての動物は、研究の期間、VJUに収容し、食餌と水には自由にアクセスさせた。すべての動物手順は、オークランド大学の動物実験委員会(Animal Ethics Committee)に承認され、視覚と眼科学研究協会会議(The Association for Research in Vision and Ophthalmology)(ARVO)のStatement for Use
of Animals in Ophthalmic and Visual Researchガイドライン(https://www.arvo.org/About/policies/statement-for-the-use-of-animals-in-ophthalmic-and-vision-research/)に従った。ケタミン(50mg/kg)/ドミトール(0.5mg/kg)の混合物の腹腔内注射によりマウスに麻酔をかける前に、マウスを秤量し、レーザー光凝固または眼の評価(眼底の画像化および光干渉断層撮影(OCT)のためにマウスステージに置いた。マウスステージを加熱し、マウスの体温を維持し、白内障の形成を予防した。1%のトロピカミド拡張点眼剤で、瞳孔を広げ、網膜の可視化を増大させた。潤滑性Poly Gelを各眼に適用し、Micron IV対眼レンズ(Phoenix Research Labs)と眼の表面の間のカップリング媒体として作用させた。レーザー光凝固または眼の評価が完了した後、潤滑性ゲルを生理食塩水で洗い流し、抗生物質溶液を両眼に適用し、感染を予防した。次いで、マウスを、アチパメゾール(5mg/kg)の腹腔内注射で起こし、35℃の温暖パッド上で回復させた。8日目にすべての動物をCOによる窒息および頚椎脱臼によって処分した。眼を眼球除去し、PBS中4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、組織切片作製用包埋剤(optimum cutting temperature compound)中で凍結させ、-80℃で保存し、その後、免疫組織化学分析のためにスライド上で切片化した。
【0392】
レーザー光凝固
製造業者のガイドラインに従って、レーザーインジェクターをMicron IVに取り付け、レーザーをアセンブルした。マウスの網膜を、明視野ライブ眼底画像を使用して観察し、Gongら、2015年(34)によって使用された方法に従って、視神経円板を中心にした。レーザー照準ビームを眼底画像で可視化し、その後、532nmのグリーンアルゴンレーザーパルス、50μmの固定直径、70ミリ秒の期間および240mWの出力を使用して、視神経円板から等距離(2円板直径)で、4回の逐次的レーザー熱傷を作出した。レーザー熱傷を作出する際に、主要な血管は避けた。最大60秒間のレーザー光凝固の直後に、眼底画像を得て、網膜下の気泡形成および病変の成長を観察した。
【0393】
眼底の画像化と測定
製造業者のガイドラインに従って、眼底/OCT対眼レンズをMicron IVに取り付けた。明視野眼底画像を、0(レーザー光凝固の前後)、1および7日目に得た。ImageJソフトウェアを使用して、断面積の測定を行った。
【0394】
光干渉断層撮影(OCT)
製造業者のガイドライン(Phoenix Research Labs)に従って、眼底/OCT対眼レンズをMicron IVに取り付けた。明視野ライブ眼底画像を使用して、OCT参照アームを配向し、Micron OCTソフトウェアを使用してOCTスキャンを得た。上位から下位まで、各病変に対して、いくつかのOCTスキャンを得た。OCT画像を、0日目のブルッフ膜の破断(RPE/脈絡膜層の低反射領域)、1日目のバタフライ様病変および7日目の病変部位の網膜層における高反射率の増加などの脈絡膜血管新生の古典的徴候を観察することによって、定量的に評価した。Sulaimanら、2015年(35)に記載された方法を使用し、ImageJソフトウェアを使用して、7日目の病変のエリプソイド測定値を得た。
【0395】
CNVマウスモデルの研究
15頭のマウスを得て、3週間にわたって、5つの群で、上述のように維持した。マウスに麻酔し、レーザー光凝固を行い、上述のように眼底画像を得た。両眼のレーザー光凝固の直後に、マウスは、25μM(低用量)もしくは250μM(高用量)の濃度の生理食塩水中のXG19または生理食塩水の腹腔内注射を受け、その後、眼底およびOCT画像を得た。眼底およびOCT画像は、上述のように、1および7日目に得た。8日目に、動物を処分し、眼の組織を切除し、上述のように、免疫組織化学について処理した。
【0396】
ラットの敗血症および急性膵炎モデル
この動物研究は、オークランド大学の動物実験委員会によって承認され、「Animal Research:Reporting of In Vivo Experiments(ARRIVE;https://www.nc3rs.org.uk/arrive-guidelines)ガイドライン」に概説される基準に順守した。雄のスプラーグドーリーラット(約450g)に、手術前に、タンパク質18%のげっ歯類用食餌を給餌し、食餌と水に自由にアクセスさせた。3~4%のイソフルランと2L/分のO2で全身麻酔を誘導し、1.5~2.5%のイソフルランと2L/分のOで維持した。ラットを温暖プレート上に置いて、体温を36~38℃に保ち、温度を直腸プローブでモニタリングした。14Gの修正血管カテーテルを気管に挿入し、小動物用人工呼吸器に接続した。吹き込まれたO/空気を40~45%で投与し、呼吸数と最大吸気圧を、それぞれ、60~80ブレス/分と14~18cmHOに設定した。呼吸終期のCOを35~45ml/Lに維持し、カプノグラフによりモニタリングした。維持流体(0.9%のNaCl)を、右大腿静脈中に投与し、2F圧力変換器を右大腿動脈中に挿入し、平均動脈圧をモニタリングした。
【0397】
中程度の重症度の急性膵炎(AP)モデルでは、胆管が一時的に閉塞し、主要な膵管に、24Gの血管カテーテルをカニューレ処置し、体重1kg当たり1mlに達するまで、0.1ml/分で、5%のタウロコール酸ナトリウム溶液をゆっくりと注入した。注入の10分後に、血管カテーテルを除去し、胆管を開き、膵管を結紮して流出を防いだ。
【0398】
敗血症モデルでは、盲腸を0.5cm切開して、糞便を腹部の四分円のすべてに広げた。腸を腹腔に戻した。APと敗血症の誘導には10~15分かかった。擬似ラットに、疾患モデルと同じ麻酔と腹部の横断切開プロトコールを行ったが、いずれの特異的な疾患誘導もなかった。擬似ラットの総持続期間は、麻酔からの効果を制御するために、APおよび敗血症モデルに合わせた。維持流体は連続してラットに投与したが、その注入速度はラットモデルに応じて異なり、1時間当たり、1kgにつき最低6mlは、APモデルに対して選択され、軽度~中程度の疾患重症度を与え、一方、1時間当たり、1kgにつき最低18mlは敗血症モデルに与えられ、ラットを十分に蘇生させ、5時間の実験期間の生存を保証した。各モデルの致死率は、それぞれ、敗血症では15%、APと擬似では0%であった。
【0399】
5時間の疾患進行中に、LabChart 5を使用して、手術中の平均動脈圧、心拍数および体温を連続的にモニタリングした。5時間の疾患進行の終わりに、血液を、下大静脈から、K2EDTAバキュテナーに回収した。肺を切除し、組織切片作製用包埋剤中に載せ、-80℃で凍結させ、その後、切断して、12μmの切片を、免疫組織化学のためにスライドに載せた。
【0400】
ヒトの副鼻腔組織
慢性副鼻腔炎(CRS)に対して、機能的内視鏡副鼻腔手術(FESS)を受けた3名の患者の中鼻道(middle meatus)から、粘膜生検材料を得た。対照群は、鼻中隔形成術を受けて、閉塞を有するが副鼻腔炎は有さない3名の患者からなった。生検材料を組織切片作製用包埋剤中に載せ、液体窒素で急速凍結させ、その後、切断して、12μmの切片を、免疫組織化学のためにスライドに載せた。
【0401】
神経膠腫のマウスモデル
頭皮に小切開を施した後、冠状縫合を介して、同系のSMA560神経膠腫腫瘍細胞(1×10個のSMA560神経膠腫細胞)を、10μlの頭蓋内注射(27ゲージの針)によって、麻酔したVmDKマウスの脳に挿入した。腫瘍細胞移植の14日後に神経学的症状を発症する前に、マウスを処分した。脳を除去し、外科用メスで注射部位から切断し、組織学的処理のために中性緩衝ホルマリンに置き、バラフィン包埋して、その後、切断して、12μmの切片を、免疫組織化学のためにスライドに載せた。
【0402】
A431およびSKOV3の腫瘍組織
ヒト腫瘍細胞であるA431およびSKOV3を、皮下注射により、免疫無防備状態のヌードマウスの脇腹に投与した。腫瘍を採取し、組織切片作製用包埋剤中で凍結させ、-80℃で保存し、その後、免疫組織化学分析のために、スライド上で切片化した。
【0403】
組織切片の免疫組織化学
マウス神経膠腫モデルからのパラフィン包埋脳組織切片(12μm)の免疫組織化学標識を始める前に、切片を、キシレン中で3分間、2回洗浄し、100%のエタノールを用いるキシレン1:1中で3分間洗浄し、100%のエタノール中で3分間を2回、95%のエタノールで3分間、70%のエタノールで3分間、50%のエタノールで3分間洗浄して脱パラフィン処理し、その後、冷たい流水中ですすぐことによって、スライドを再度湿潤化させた。圧力鍋中で、クエン酸ナトリウム緩衝液(10mMのクエン酸ナトリウム、0.05%のTween20、pH6.0)を1時間適用することによって、抗原を回収した。次いで、スライドを、室温で1時間、1%のウシ血清アルブミン(BSA)/PBS中でブロッキングした。
【0404】
ヒトドナーの網膜(正常および糖尿病性網膜症)、ヒトの副鼻腔組織(正常およびCRS)、マウスの眼組織(レーザーにより誘導されたCNVのマウスモデル)、ラットの肺組織(APおよび敗血症モデル)および腫瘍組織(A431およびSKOV3)に由来する凍結した組織(組織切片作製用包埋剤中に載せたもの)切片(12μm)を、室温で終夜乾燥させ、次いで、換気フード内で、室温で10分間、25%の無水エタノールと75%のアセトンの混合物中で固定した。切片を、室温で10分間乾燥させ、その後、1%のウシ血清アルブミン(BSA)/PBS中で、室温で1時間ブロッキングした。
【0405】
ブロッキング溶液を抜き取り、切片を、湿度の高い箱の中で、室温で終夜、1%のBSA/PBS中の20μg/mlのシンデカン4抗体(R&D Systems)で被覆した。対照切片を、1%のBSA/PBSのみで処置した。抗体を、0.05%のTween20/PBSを使用して洗い流し、組織を、湿度の高い箱の中で、室温で2時間、1%のBSA/PBS中の二次抗体(ロバ抗ヤギ488)およびDAPIを含有する溶液中で被覆した。切片を、0.05%のTween20/PBS中で洗浄した。退色防止剤(Citifluor(商標)AF1)中でカバーガラスを載せ、スライドを画像化した。
【0406】
結果
(実施例1)
hRMECおよびARPE-19細胞へのXG19の取込みは、Gap19単独よりも効率的である
XG19の取込みを、in vitroで、初代のhRMEC(図1)および不死化ARPE-19細胞(図2)を使用して試験した。XG19の細胞による取込みをGap19と比較して、LCLRPV配列の付加によって細胞による取込みが改善されたかどうかを観察した。
【0407】
hRMEC細胞によるXG19の取込みは、XG19の濃度を増加させながら、FITC蛍光の増加によって観察される(図1のFITCパネルの白い領域)用量依存方式で起こった。このアッセイでは、取込みは、XG19の最も低い濃度(10μM)でも観察された。Gap19の取込みは、蛍光が観察されないため、最大50μMでも検出不能であり、ペプチドなしの対照と同等であった(各処置のFITCパネルの白い領域の非存在によって示される、図1)。一部の取込みが100μMのGap19で観察されたが、これは、10μMのXG19よりもさらに低かった。したがって、LCLRPVのGap19への付加は、hRMEC細胞へのGap19の取込み効率を増加させた。このアッセイにより、XG19はhRMECに浸透し、LCLRPVのGap19への付加によって、これらの細胞における取込みが改善したことが示された。
【0408】
XG19のARPE-19細胞への細胞による取込みは、XG19の濃度を増加させながら、FITC蛍光の増加によって観察される(図2のFITCパネルの白い領域)用量依存方式で起こった。Gap19単独は、最大100μMまで、細胞内で検出不能であり、ペプチドなしの対照と同様であった(Gap19処置およびペプチド処置なしのFITCパネルの白い領域の非存在によって示される)。したがって、より多くの量のXG19が、低いGap19濃度の細胞内に送達されたため、LCLRPVのGap19への付加は、ARPE-19細胞へのGap19の取込み効率を改善した。
【0409】
ARPE19は、不死化細胞株であるので、培養しやすく、多継代で生存可能である一方、初代細胞は、非常に限定された継代数でのみ信頼できる。この理由のために、残りの実験は、ARPE-19細胞を使用して行った。
【0410】
(実施例2)
ARPE-19細胞へのTAT-Gap19の取込みは、XG19またはGap19単独よりも効率的であるが、XG19は細胞核に局在化しない
Gap19の取込み効率は、Gap19をTATペプチドと組み合わせて、TAT-Gap19を作出することによって、以前に改善された(6、7)。XG19の取込み効率を、ARPE-19細胞において、Gap19およびTAT-Gap19と比較した(図3)。ARPE-19細胞によるTAT-Gap19の取込みは、TAT-Gap19の濃度を増加させながら、FITC蛍光の増加によって観察される(図3のFITCパネルの白い領域)用量依存方式で起こった。取込みは、TAT-Gap19の最も低い濃度(10μM)でさえ観察され、20μMで、細胞はTAT-Gap19で飽和した。Gap19の取込みは、最大100μMでも検出不能であり(図3のFITCパネルの白い領域の非存在によって示される)、これは、ペプチドなしの対照と同等であった。
【0411】
XG19の取込みは、10μM程度の低さで検出され、最大50μMまで増加したが、TAT-Gap19の全体的取込みは、すべての試験濃度でXG19に対するよりもはるかに多かった(図3のFITCパネルの白い領域の増加によって示される)。これは、2つのペプチド間の取込みのメカニズムの差によるものであろう。TATは、他のメカニズムの中で、主として、マクロピノサイトーシスによって細胞に侵入するが(8、9)、一方、LCLRPVは、シンデカン4に特異的な方式で細胞に侵入する(10、11)。したがって、TAT-Gap19の取込みは、その複数の取込みのメカニズムによって、このアッセイでは、XG19よりも効率的であるが、これは、取込みは単一の因子によって限定されず、一方、XG19は、赤血球および非接着性単球などの非シンデカン4発現細胞から除外されるため(10、11)、ある特定の細胞型を標的化することに関する非特異性を強調するものである。
【0412】
ペプチドの取込みのより緻密な観察では(図4および図4A)、両方のペプチドは細胞によって取り込まれ、XG19のみが細胞質で可視化されたが(XG19のFITCパネルのグレーの領域、図4A)、一方、TAT-Gap19は、細胞核(TAT-Gap19のFITCパネルの白いスポット、図4A)と同様に細胞質で可視化され(TAT-Gap19のFITCパネルのグレーの領域、図4A)、これは、XG19処置では見られなかったことが分かった。したがって、TAT-Gap19の取込みはXG19よりも多いが、細胞核への輸送は、長期の細胞の機能および生存率に対して望ましくない作用を有し得る。TATは、他のペプチドおよび分子の細胞核への輸送のために以前より使用されてきたが(12、13)、しかしながら、Gap19の細胞核への送達は、より少ないペプチドがその作用部位に送達されるため、効率を低減させ得る。細胞核への輸送はまた、潜在的に毒性であり得る。
【0413】
(実施例3)
ARPE-19細胞へのXG19の取込みは細胞毒性を生じない
漸増濃度(5、10または20μM)のXG19を、MTT細胞毒性アッセイを行う前、1時間または24時間のいずれかにわたり、ARPE-19細胞に適用した。未処置細胞を生存率の陽性対照として使用した。これは、短期間と長期間の両方で、in vitroでのXG19の毒性を評価するためであった。図5に見られるように、XG19で処置した細胞は、1時間と24時間の時点の両方で、未処置細胞と比較した場合に、生存率に有意な差を示さなかった。これにより、細胞へのXG19の初期の取込みプロセスは毒性ではないことが示された。さらに、細胞内に入ったら、24時間でも、XG19は非毒性のままである。これにより、細胞内へのペプチドの取込みまたは保存は細胞毒性をもたらさなかったため、XG19の適用は非毒性であることが示された。これは、毒性に関する以前の文献と一致する(10、11)。
【0414】
(実施例4)
XG19はCx43ヘミチャネルに媒介されるEth-D1染料の取込みを阻害する
ヘミチャネル開口は、in vitroで刺激される可能性があり(14)、したがって、エチジウムホモ二量体(EthD-1)染料などの小分子の侵入を使用して、ヘミチャネルの機能を観察することができる。細胞による取込み後にヘミチャネル開口を阻害するXG19の能力は、EthD-1取込みアッセイを使用して観察された(図6)。細胞による取込み実験で使用されるFITC標識したXG19を、FITC標識がペプチドの機能を妨害するかどうかを観察するためにも試験した。
【0415】
低カルシウム溶液に曝露された細胞は、低カルシウムがヘミチャネルの開口を刺激し、染料の細胞内への侵入を可能としたため、EthD-1の取込みの増加をもたらした(図6の上段左パネル)。EthD-1は細胞核に結合するため、低濃度の細胞質中で、高濃度で超蛍光となるEthD-1染料のみが蛍光性を有する。
【0416】
高カルシウム溶液はCx43ヘミチャネルを閉じさせ、したがって、EthD-1染料の取込みを阻害した(図6の上段右パネル)。XG19とFITC-XG19は両方、観察された蛍光が高カルシウム対照と同様であったため、EthD-1染料の取込みを阻害することができた(それぞれ、図6の下段パネル)。したがって、XG19とFITC-XG19は両方、細胞による取込み後に生物学的に利用可能な形態であり、ヘミチャネル遮断剤として機能することができた。さらに、FITC標識は、XG19の機能を妨害しなかった。
【0417】
ヘミチャネルの阻害を定量し、処置毎に4つの領域の平均EthD-1蛍光強度を測定することによって(n=4;平均±SD)、グラフ(図6、右)にプロットした。ダネットの多重比較検定を使用する一元配置ANOVA事後比較によって、高カルシウム(****p<0.0001)、XG19およびFITC-XG19(***p<0.001)のすべてが、低カルシウム処置と比較して、平均蛍光強度の有意な低減を生じ、したがって、ヘミチャネルの機能を阻害することが示された。
【0418】
これにより、LCLRPVに媒介される取込み後に生物学的に利用可能な形態であるペプチドのGap19構成成分と共に、XG19がCx43ヘミチャネル遮断剤として機能することが確認された。さらに、FITCとのカップリング後に保持されたXG19の機能性の特定は、このペプチドが、ペプチドの可視化が必要とされる場合があるin vitroまたはin vivoアッセイで、将来使用される可能性を有する。
【0419】
同様のアッセイで、臭化エチジウムの取込みを観察する以前の実験では、最大172μMのGap19はCx43ヘミチャネルの阻害に影響を有さず、濃度が344~688μMのGap19に増加した場合にのみ有効性が改善された(6)ことが示された。本発明者らは、5μMのXG19でも、この融合ペプチドの取込み効率の増加によって、このアッセイにおいて有効であり得ることを示した。
【0420】
(実施例5)
XG19はCx43ヘミチャネルに媒介されるATP放出を阻害する
損傷の間に、Cx43ヘミチャネルの開口により、ATPなどの小分子の細胞外環境への放出が可能となり、炎症性因子の生成を刺激するシグナルが提供され、したがって、炎症状態が永続化される(15、16)。ATP放出のin vitroでの測定値を使用して、Cx43ヘミチャネル開口を評価することができる(17)。Cx43ヘミチャネル開口を阻害することによってATP放出を阻害するXG19の能力を、ATP放出アッセイを使用して評価し、公知のCx43ヘミチャネル遮断剤であるPeptide 5(Pep5)および非特異的ヘミチャネルおよびギャップジャンクション遮断剤であるカルベノキソロン(CBX)と比較した。Peptide 5は、Cx43の細胞外ドメインを標的化する。
【0421】
低カルシウム溶液で処置したARPE-19細胞は、ルミネセンスとして測定した時間依存性のATP放出を生じた(図7)。二元配置ANOVAとダネットの多重比較検定を使用する事後比較による統計分析により、XG19による25分の処置によりATP放出が低減するが、低カルシウム対照と比較して有意ではなく、Pep5(***p<0.001)およびCBX(****p<0.0001)による処置で有意であったことを明らかにした。
【0422】
XG19(p<0.05)、Pep5およびCBX(****p<0.0001)との30分のインキュベーション後に、すべての処置は、低カルシウムと比較してATP放出を低減した。35と40分には、すべての処置は、低カルシウム対照と比較して、ATP放出を有意に低減した(****p<0.0001)。Pep5およびXG19処置群からのATP放出は、低カルシウム群よりも低いが、両方ともCBXよりも多かった。これは、おそらく、Pep5とXG19のCx43ヘミチャネルのみを遮断する特異的遮断の性質によるものであるが、CBXは、複数のタイプのチャネルを非特異的に遮断するため、より低いATP放出を生じる。Pep5は、複数のアッセイで、Cx43ヘミチャネルの機能を阻害し、細胞の生存を改善することが示されている(18、19、20)。したがって、このアッセイにおけるPep5の機能により、XG19がCx43ヘミチャネル遮断剤として有効になり、XG19のGap19構成成分が、LCLRVPに媒介される取込み後に生物学的に利用可能な形態であることがさらに確認された。さらに、1/20の濃度のPep5と比較してXG19で達成された同様の効果により、治療薬としてのXG19の可能性がさらに付加される。
【0423】
(実施例6)
XG19の機能は、取込み後24時間維持される
ヘミチャネルの機能を、XG19の取込みの1時間後および24時間後に、細胞からのATP放出を測定することによって評価した。これは、取込み後の延長した時点でのXG19の機能を観察するためであった。図8に見られるように、Cx43ヘミチャネルのXG19による阻害により、1時間と24時間の両方の時点で、未処置細胞と比較して、ATP放出が有意に低減した。統計分析を二元配置ANOVAとシダックの多重比較検定を使用する事後比較によって行った。有意性を各時点の未処置対照と比較した(p**<0.01、p***<0.001、p****<0.0001)。これにより、XG19は、取込みの24時間後に、生物学的に利用可能であり、機能的であることが示された。これにより、XG19は、細胞内で、最大24時間安定であり、損傷の間のATP放出の機能的遮断を示すことが示唆された。したがって、XG19は、取込み直後および24時間後の両方で機能的である。
【0424】
(実施例7)
XG19はギャップジャンクションの機能を阻害しない
ギャップジャンクションを介する細胞間情報伝達は、生理学的情報伝達にとって必須であり、ギャップジャンクション情報伝達の長期の遮断は細胞にとって有害であり得る(21)。ギャップジャンクションの機能は、ルシファーイエロー(LY)染料擦過/ロードアッセイにおいて評価することができる(22)。擦過されないまま残った細胞(図9、上段左パネル)はLY染料を取り込まなかったが、単層が擦過された場合には(図9、上段右パネル)、擦過部位の細胞はLY染料を細胞内に許容し、次いで、ギャップジャンクションの開口により隣接する細胞へと通過した。
【0425】
非特異的ヘミチャネルおよびギャップジャンクション遮断剤であるCBXで処置した細胞(図9、下段左パネル)は、擦過のすぐ隣の細胞中にLYを取り込んだが、しかしながら、染料は、ギャップジャンクションの遮断によっていずれの隣接する細胞にもさらに輸送されなかった。
【0426】
5μMのXG19で処置した細胞は、擦過部位で染料の取込みを生じ、未処置対照と同様に、ギャップジャンクションを介して隣接する細胞に移行した(図9、下段右パネル)。これにより、XG19はヘミチャネルを遮断するが、正常な生理学的細胞間情報伝達を維持するために必要なギャップジャンクションの機能を維持することが示唆された。以前の実験では、取込み後にギャップジャンクションの機能を維持するGap19の能力が示されていた(6)。ギャップジャンクションの機能を維持するXG19の能力により、LCLRPVは、XG19の取込み後にギャップジャンクションの機能のGap19による維持を妨害しないことが示される。
【0427】
(実施例8)
高血糖性および炎症性細胞はシンデカン4の発現を増加させる
シンデカン4の発現は、経時的に、正常および高血糖性および炎症性ARPE-19細胞において観察された(図10)。シンデカン4の発現は、正常培地中では、経時的に比較的変化しなかったが、一方、高血糖および炎症溶液に曝露した細胞は、1から3時間でシンデカン4の発現の増加を示し、6および24時間ではわずかに下降した。高血糖および炎症溶液中の細胞のシンデカン4の発現は、蛍光の増加によって示されるように、いずれの時点でも、正常培地中の細胞よりも多かった(図10のAF488パネルにおける白い領域)。シンデカン4の発現は、1、3、6または24時間にわたり培地または高血糖および炎症溶液に曝露した細胞において、各処置(n=3)に対する4つの領域のFITCの平均蛍光強度を測定することによって評価し、グラフにプロットした(図10の下段)。二元配置ANOVAとシダックの検定を使用する事後比較により、正常培地と比較して、3時間(****p<0.0001)、6時間(**p<0.01)および24時間(***p<0.001)における高血糖および炎症溶液中のシンデカン4の発現が有意に増加したことが明らかとなった(1時間では、有意に増加しなかった)。これにより、ARPE-19細胞は、高血糖および炎症に応答して、シンデカン4の発現を上方調節することが示された。シンデカン4は、細胞による取込みのためにXG19によって使用される標的リガンドであるため、高血糖性および炎症性細胞において増加したシンデカン4の発現により、罹患細胞に対して特異的なペプチドのより標的化された送達が可能となり得る。
【0428】
(実施例9)
XG19の取込みは、高血糖性および炎症性細胞において増加する
XG19の細胞による取込みが、高血糖性および炎症性細胞において変化するかどうかを観察するために、XG19を正常細胞および高血糖性細胞および炎症性細胞に適用し、細胞による取込みをGap19と比較した(図11)。XG19の取込みは、培地ならびに高血糖および炎症溶液中で観察された。Gap19の取込みは、いずれの条件でも検出不能であった(FITCパネルに白い領域が存在しない、図11)。高血糖および炎症溶液中のXG19の取込みは、高血糖および炎症溶液中のより強い蛍光によって示されるように、正常培地中よりも多かった(FITCパネルの白い領域、図11)。このことにより、XG19の取込みは高血糖性および炎症性細胞において増加することが示唆され、本発明者らの仮定は高血糖症および炎症に応答するAPRE-19細胞におけるシンデカン4の過剰発現によるものであった。さらに、高血糖性および炎症性細胞におけるGap19の取込みの増加は、ネイティブGap19の取込みがこれらの細胞において増加しなかったことから、LCLRPVに依存した。XG19は、疾患によって最も影響を及ぼされる細胞によってより容易に取り込まれる可能性を有し、したがって、改善された治療有効性をもたらすことができるため、高血糖性および炎症性細胞によるXG19の取込みの増加についての本発明者らの知見ならびにRPEおよび脈絡膜におけるシンデカン4の発現についての本発明者らの発見により、XG19は、AMDに対する候補治療薬となる。
【0429】
(実施例10)
低酸素細胞はシンデカン4の発現を増加させる
AMDでは、虚血部位の局在化により、網膜色素上皮細胞が低酸素となる。低酸素症により、シンデカン4などの細胞表面タンパク質の発現が変更され得る(23)。シンデカン4の発現は、経時的に、低酸素細胞と正常細胞において観察された(図12)。シンデカン4の発現は、正常培地中では、経時的に比較的変化しなかったが、一方、低酸素溶液に曝露した細胞は、1から3および3から6時間でシンデカン4の発現の増加を示し、24時間では、おそらく、低酸素溶液への過剰な曝露を原因とするある程度の細胞死によってわずかに下降し、したがって、細胞密度とシンデカン4の発現が低減した。低酸素溶液中の細胞のシンデカン4の発現は、蛍光の増加によって示されるように、いずれの時点でも、正常培地中の細胞よりも多かった(図12のAF488パネルにおける白い領域)。シンデカン4の発現は、1、3、6または24時間にわたり培地または低酸素溶液に曝露した細胞において、各処置(n=4)に対する4つの領域のFITCの平均蛍光強度を測定することによって評価し、グラフにプロットした(図12の下段)。二元配置ANOVAとシダックの検定を使用する事後比較により、正常培地と比較して、1時間(**p<0.01)、3時間(***p<0.001)、6時間(****p<0.0001)および24時間(p<0.05)における低酸素溶液中のシンデカン4の発現が有意に増加したことが明らかとなった。これにより、ARPE-19細胞は、低酸素症に応答して、シンデカン4の発現を上方調節することが示される。シンデカン4は、細胞による取込みのためにXG19によって使用される標的リガンドであるため、低酸素細胞において増加したシンデカン4の発現により、罹患細胞に対して特異的なペプチドのより標的化された送達が可能となり得る。
【0430】
(実施例11)
XG19の取込みは、低酸素細胞において増加する
XG19の細胞による取込みが低酸素条件において変化するかどうかを観察するために、XG19を正常細胞と低酸素細胞に適用し、細胞による取込みをGap19と比較した(図13)。XG19の取込みは、両方の培地および低酸素溶液中で観察されたが、Gap19の取込みはいずれの条件でも検出不能であった(FITCパネルに白い領域が存在しない、図13)。低酸素溶液中のXG19の取込みは、低酸素溶液中のより強い蛍光によって示されるように、正常培地中よりも多かった(FITCパネルの白い領域、図13)。このことにより、XG19の取込みは低酸素細胞において改善されることが示唆され、本発明者らの仮定は低酸素症に応答するAPRE-19細胞におけるシンデカン4の過剰発現によるものであり得る。さらに、低酸素細胞におけるGap19の取込みの増加は、ネイティブGap19の取込みが低酸素細胞において増加しなかったことから、LCLRPVに依存した。XG19は、疾患によって最も影響を及ぼされる細胞によってより容易に取り込まれる可能性を有し、したがって、改善された治療有効性をもたらすことができるため、低酸素細胞によるXG19の取込みの増加についての本発明者らの知見ならびにRPEおよび脈絡膜におけるシンデカン4の発現についての本発明者らの発見により、XG19は、AMDに対する候補治療薬となる。
【0431】
(実施例12)
XG19は、低酸素損傷の間の細胞生存率を維持する
低酸素細胞における細胞生存率は、HAIR溶液を未処置細胞とXG19で処置した細胞に適用することによって評価し、MTTアッセイにおいて正常培地中の細胞と比較した。これは、低酸素症の間に生じる細胞生存率の低減を、XG19が予防できるかどうかを観察するためであった。図14に見られるように、低酸素細胞の生存率は、正常培地中の細胞と比較して有意に低減し、これは、低酸素細胞が損傷と死滅を経験していることを示唆した。正常培地中の未処置細胞と比較して、XG19で処置した細胞に有意な差は見られなかった。これにより、XG19で処置した細胞が、低酸素症に媒介される損傷の間の細胞死を予防したことが示された。一元配置ANOVAをダネットの事後検定を用いて行い、有意性を正常培地対照中の未処置細胞との差として表した(***p<0.001)。したがって、XG19は細胞生存を増加させ、低酸素症の間の損傷の作用を予防した。
【0432】
(実施例13)
XG19は、低酸素症の間のCx43ヘミチャネルに媒介されるATP放出を阻害する
HAIR溶液を未処置またはXG19で処置した細胞に適用することによって低酸素症を誘導し、ATP放出を測定した。図15に見られるように、XG19で処置した細胞は、HAIR溶液中の未処置細胞と比較してATP放出が有意に低減した。一元配置ANOVAをダネットの事後検定を用いて行い、有意性をHAIR溶液中の未処置細胞との差として表した(***p<0.001、****p<0.0001)。これにより、低酸素症により、Cx43ヘミチャネルを介したATP放出が生じることが示された。XG19は、この低酸素損傷の間にヘミチャネル開口を阻害することができ、したがって、ATP放出の低減をもたらす。したがって、XG19は、低酸素損傷の間のATP放出を低減することができ、これにより、損傷の間の細胞の生存が促進される。
【0433】
(実施例14)
XG19は、レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)のマウスモデルにおける病変面積を低減する
レーザーにより誘導された病変は、方法において以前に記載されたように、0日目に、C57BL6マウスにおいて作出された。眼底の画像を1日目と7日目に得て、病変の面積測定を、ImageJソフトウェアを使用して行った。図16に見られるように、1日目の生理食塩水(n=8の眼)、低用量XG19(n=8の眼)または高用量XG19(n=7の眼)群の間に病変面積の差は観察されなかった。7日目には、1日目と比較して、生理食塩水群の病変面積に変化はなかったが、両方のXG19処置群は、1日目と比較して7日目の方が小さかった。さらに、高用量XG19で処置したマウスは、最も小さい病変の面積測定値をもたらしたが、生理食塩水で処置したマウスは、最も大きい病変の面積測定値をもたらした。これらの結果により、XG19が病変面積の低減に用量依存的効果を有し、したがって、損傷の広がりを低減することが示唆される。
【0434】
(実施例15)
XG19で処置したマウスは、レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)のマウスモデルにおいて有意に小さい病変体積をもたらす
OCTによって、実施例14に記載したCNVモデルに由来するマウスにおいて網膜層を可視化した。7日目に得たOCT画像を使用して、ImageJソフトウェアを使用して、CNV病変のエリプソイド体積を測定した。図17に見られるように、生理食塩水で処置したマウス(n=8の眼)は、最も大きな体積測定値を生じたが、低用量XG19(n=8の眼)または高用量XG19(n=7の眼)で処置したマウスは、ダネットの事後検定を用いて実行した一元配置ANOVAと生理食塩水群との差として表した有意性によって決定した場合、有意に小さい体積測定値を生じた(**p<0.01、平均+SD)。これにより、XG19処置は、生理食塩水処置と比較して、CNV病変体積を有意に低減することができることが示された。さらに、低用量XG19群と高用量XG19群の間に有意差はなく、有効治療濃度は低用量のXG19用量で達成され得ることが示唆された。エリプソイド体積測定値は、CNV病変を評価する脈絡膜フラットマウントの古典的ex vivo技法と同等であることが示された(35)。脈絡膜フラットマウントを使用する以前の文献は、CNV病変の成長は、血管成長、網膜下液の蓄積および組織のアポトーシスによることを示している(35~38)。したがって、本発明者らの結果で見られるCNV体積の低減は、RPE脈絡膜複合体の組織治癒と正常化を示した。
【0435】
(実施例16)
シンデカン4およびGFAPの発現は、レーザーにより誘導された脈絡膜血管新生(CNV)のマウスモデルのXG19で処置したマウスにおいて低減する
実施例14および15に記載したCNVモデルに由来するマウスを、8日目に処分し、眼を眼球除去し、切片化し、シンデカン4とGFAPの発現に対して標識した。生理食塩水を注射したマウスは、XG19を注射したマウスと比較して、シンデカン4およびGFAPの発現の上昇を示した(図18)。本発明者らのin vitroでのデータでは、炎症および低酸素症の間にシンデカン4の増加が示されたが(実施例8および10)、ex vivoのDR組織も罹患組織においてシンデカン4の増加を示した(実施例18)。GFAPの発現は、病変部位で、炎症および虚血により、CNVマウスモデルにおいて上昇することが示された(38)。これにより、XG19がマウスの網膜において炎症および虚血を低減し、したがって、XG19がこのCNVのマウスモデルにおいて治癒を促進することが示された。
【0436】
(実施例17)
ヒトの網膜切片におけるシンデカン4の発現
XG19は、細胞の取込みを促進する細胞表面タンパク質であるシンデカン4に高い親和性を有する。ヒトドナーの網膜組織を切片化し、シンデカン4の発現に対して標識した(図19)。抗体対照として使用した未標識切片は、これらの細胞に存在する自己蛍光色素によりRPE層にある程度のバックグラウンド蛍光を示した(AF488パネル、図19)。これは、シンデカン4に対して標識した切片でも見られたが(シンデカン4標識した切片のAF488パネルの白い領域、図10);しかしながら、標識は、RPEの全体を覆ってより顕著であり、真のシンデカン4標識を示唆した。さらに、シンデカン4標識は、脈絡膜、特に、血管周辺の内皮細胞においても観察された(シンデカン4標識した切片のAF488パネルの白い領域、図19)。RPEおよび脈絡膜は、AMDにおいて最も影響を及ぼされ、したがって、XG19に対する好ましい標的部位である。これらの組織におけるシンデカン4の発現の発見は、XG19が、治療有効性を潜在的に改善し、いかなる潜在的副作用も低減しながら、これらの細胞に対して特異的に標的化されることを意味する。
【0437】
(実施例18)
シンデカン4およびGFAPの発現は、ヒトの糖尿病性網膜症組織において増加する
糖尿病性網膜症を有する患者(DR)および有さない患者(正常)に由来するヒトドナーの組織切片をシンデカン4、GFAPに対して標識し、細胞核をDAPIで染色した。黄斑領域と傍黄斑領域(それぞれ、図20および21)の両方から切片を得た。傍黄斑切片と黄斑切片の両方において、正常組織と比較してDR組織にシンデカン4の標識の増加が存在した。血管と、血管成長による調節不全を示した組織の部分にも標識の増加が存在した。DRにおける血管成長はほとんど調節されず、漏出性血管の形成をもたらし、組織を虚血および低酸素にする。これらの部位に見られるシンデカン4の発現の増加は、この領域の低酸素症を示す。GFAPの発現も、DR組織において、黄斑領域と傍黄斑領域の両方で増加した。DR組織におけるGFAPおよびシンデカン4の発現の組合せによって、この組織が炎症を経験しており、損傷していることが示唆される。ILMは薬物送達の障壁として作用し得ることが多いため、シンデカン4標識は、目的であるILMでも見られる(図20)。この部位で活性化したミュラー細胞は、ILMから外側の網膜に薬物分子を輸送することによって薬物送達を改善する可能性を有することが提案されている(32)。ILMでの取込みによって、薬物送達に対する利点がもたらされるであろう。したがって、この組織におけるシンデカン4の上方調節は、この領域における炎症を低減するためにXG19によって標的化され得る。
【0438】
(実施例19)
シンデカン4の発現は、急性膵炎および敗血症のラットモデルにおいて増加する
急性膵炎(AP)および敗血症のラットモデルに由来する肺組織をシンデカン4に対して標識し、擬似動物と比較した。両方の疾患モデルは、全体的な炎症を生じる。敗血症およびAP組織(それぞれ、図22および23)は、擬似動物と比較して、シンデカン4の発現の上昇を有した。細気管支および肺胞においてシンデカン4の発現の増加が存在し、疾患が気道に影響を及ぼすことが示唆された。APは、肺の合併症および低酸素症の原因であることが公知であるが(27)、重度の敗血症は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの二次的な合併症をもたらし得る(28)。これらの組織におけるシンデカン4の上方調節によって、これらの疾患状態の間の優先的な取込みに対する標的がもたらされる。したがって、本発明の構築物を使用して、敗血症およびAPの間の二次的な呼吸器合併症に対処する治療薬を送達することができる。
【0439】
(実施例20)
シンデカン4の発現は、慢性副鼻腔炎の組織で上昇する
慢性副鼻腔炎(CRS)は、副鼻腔に影響を及ぼす炎症状態である。炎症、アレルギー、または腫脹によって引き起こされる副鼻腔の遮断によって、この組織において、条件を低酸素にし、悪化をもたらし得る(26)。本発明者らは、これらの条件下の眼組織におけるシンデカン4の上昇を観察し、したがって、正常な副鼻腔とCRSのヒト組織の切片を、シンデカン4の発現に対して標識した。図24に見られるように、正常な副鼻腔組織は、腺の付近でわずかに上昇する適度のシンデカン4標識を示した。CRS組織におけるシンデカン4標識は、腺付近で標識の上昇を示し、組織全体にわたって広範に分布した。シンデカン4の発現を、3つの正常な組織と3つのCRS組織(n=3)から画像化した領域の平均蛍光強度を測定することによって定量した。これにより、CRS組織が、正常な副鼻腔組織と比較して、シンデカン4の発現の上昇を有することが示された。これにより、眼の外部の炎症した組織または低酸素組織もシンデカン4の発現の上昇を有することが示され、これらが、本発明の構築物を使用する薬物送達に対する潜在的な標的であることが確認された。
【0440】
(実施例21)
マウスの神経膠腫モデルにおけるシンデカン4の発現
神経膠腫(腫瘍)のマウスモデルに由来する切片を、シンデカン4、GFAPに対して標識し、細胞核をDAPIで染色した(図25および図25A)。図25では、マウスの脳組織が、多数の活性化星状細胞による上昇した量のGFAPを発現し、この領域における炎症を示した。脳組織が腫瘍に接触し、腫瘍がGFAPを発現しないとはっきりと確認することができる場所に上昇の増加が存在する(図25)。これは、腫瘍が、脳組織のこの領域に完全に浸潤し、この領域のあらゆる星状細胞を死滅させ、したがって、GFAP発現が欠如したためである。また、脳組織における腫瘍の伸長から生じる別個の細胞群を囲んで、GFAPの上昇の増加が存在する。シンデカン4のパネルでは、この別個の細胞群は、腫瘍と脳組織の境界面および腫瘍の本体内にみられるものと同様のシンデカン4の発現の上昇を有する。このことは、脳組織においてシンデカン4の上昇を有する別個の細胞群は、腫瘍の伸長であることを示唆する。これらの細胞の周囲のGFAPの上昇は、浸潤する腫瘍細胞が脳組織を損傷し、炎症を引き起こすことを示唆する。腫瘍の端および腫瘍の浸潤部位で上昇したシンデカン4の発現によって、腫瘍は、本発明の構築物の取込みに対する理想的な標的となる。
【0441】
図25Aでは、腫瘍半球において、血管が、隣接する半球と比較して、シンデカン4およびGFAPの標識の上昇を示すことが分かる。隣接する半球における血管は、血管に沿って見られる正常な伸長した細胞核を有するが、腫瘍半球における血管は、極めて接近して多くの細胞核を含有し、これは、血管の調節されない増殖を示唆した。このことは、腫瘍半球における血管が十分に形成されなかったことを示唆した。腫瘍半球では、血管および周囲組織は、GFAPおよびシンデカン4の標識の上昇を示し、これは、この領域における高い炎症を示した。このことはまた、シンデカン4が、とりわけ、損傷の間に血液脳関門(BBB)に存在し、したがって、本発明の構築物がこれらの部位でより容易に取り込まれるために、この構築物によって脳損傷に対する治療薬を送達することができたことを示した。
【0442】
(実施例22)
低酸素A341腫瘍はシンデカン4を発現する
マウスの脇腹で皮下成長したヒトA431腫瘍を、切除し、切片化し、シンデカン4に対して標識し、細胞核をDAPIで染色した。この腫瘍モデルによって低酸素腫瘍が得られる。図26に見られるように、シンデカン4の発現は、腫瘍組織全体にわたり見られた。別個の細胞クラスターに現れた腫瘍の中央の領域に、シンデカン4の上昇した領域が存在した。これが、腫瘍低酸素症モデルであることを考慮すると、これらの部位のシンデカン4の発現が、腫瘍組織の低酸素領域を示す可能性が高い。
【0443】
(実施例23)
低酸素SKOV3腫瘍はシンデカン4を発現する
異種移植片を形成するために、ヌードマウスの脇腹で皮下成長したヒトSKOV3腫瘍を、切除し、切片化し、シンデカン4に対して標識し、細胞核をDAPIで染色した。SKOV3は、腫瘍薬開発のモデルで頻繁に使用されるヒト卵巣癌細胞株である。この腫瘍モデルによって低酸素腫瘍が得られる。図27に見られるように、シンデカン4の発現は、腫瘍組織全体にわたり、低レベルで見られた。別個の細胞クラスターまたはクラスターのすぐ周辺の領域のいずれかに現れた腫瘍において、シンデカン4の上昇した領域が存在した。これらの腫瘍が低酸素であることが公知であることを考慮すると、これらの部位のシンデカン4の発現が、これらの腫瘍における低酸素症の増加した領域を示す可能性が高い。
【0444】
本発明は、読み手が、過度な実験を行うことなく本発明を実施することができるように、ある特定の好ましい実施形態に言及して、本明細書に記載されている。しかしながら、当業者は、構成成分およびパラメーターの多くは、ある程度まで変更もしくは修正することができるかまたは本発明の範囲を逸脱することなく公知の均等物に置き換えることができることを容易に認識するであろう。このような修正および均等物は、個々に示されるかのように本明細書に組み込まれることが認識されるべきである。本発明はまた、この明細書において言及されるかまたは示されるステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを個々にまたは集合的に、ならびに前記ステップまたは特徴の任意の2つまたはそれより多くのありとあらゆる組合せを含む。
【0445】
さらに、この文書についての読み手の理解を高めるために、タイトル、見出しなどが与えられ、これらは、本発明の範囲の限定として読まれるべきではない。
【0446】
上記および下記で引用されるすべての出願、特許および刊行物の開示全体は、あるとすれば、参照により本明細書に組み込まれる。
【0447】
この明細書における任意の先行技術への言及は、先行技術が共通の一般的常識の一部を形成するという認識またはいずれの形態の示唆でもなく、そのように解釈されるべきでもない。
【0448】
この明細書全体を通して、文脈が別段に要求しなければ、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などの語は、排他的な意味、すなわち、「含むがこれらに限定されない(including,but not limited to)」の意味とは反対に、包括的な意味で解釈されるべきである。
【化3】
【化4】
【化5】
図1
図2
図3
図4
図4A
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図6
図7-1】
図7-2】
図8
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【配列表】
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【外国語明細書】