(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059847
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】冷却用組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C09K5/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027279
(22)【出願日】2024-02-27
(62)【分割の表示】P 2019224687の分割
【原出願日】2019-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】399040313
【氏名又は名称】谷川油化興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和参
(72)【発明者】
【氏名】原田 仁
(57)【要約】
【課題】 装置設計上の制約を低減することが可能な、作動時の粘度が低く、単位体積当たりの熱容量が大きく防錆性にも優れる冷却材。
【解決手段】 冷却用組成物は、炭素数1-3のアルコール15~84重量部と、水84~15重量部と、リン酸またはその塩及び水酸化カリウムを含む防錆剤0.5~5重量部を三成分の割合として含む。炭素数1-3のアルコールとして、メタノールを用いることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1-3のアルコール15~84重量部と、水84~15重量部と、リン酸又はその塩及び水酸化カリウムを含む防錆剤0.5~5重量部を三成分の割合として含む冷却用組成物。
【請求項2】
炭素数1-3のアルコールがメタノールである請求項1に記載の冷却用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物を組み合わせた、優れた効能を有する冷却用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
作動に際して発熱する種々の装置の性能が向上するにつれて装置の大きさに対する発熱量が増加しており冷却能力の向上が望まれている。冷却能力を向上するには冷却装置の形状を最適化すると同時に優れた性能の冷却材を用いる必要があり、水にエチレングリコールなどのアルコール類、フォルムアミド類を混合したもの(特許文献1)を用いることが提案されており、また、そのような組成において装置の防触性を高めることが試みられている(特許文献2)。また、水と低級アルコールの混合物には組成と熱容量などの物性に特有の関係があることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許2767145号公報
【特許文献2】日本特許5993432号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】材料 1984年 第33巻 第365号 107頁から113頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置設計上の制約を低減することが可能な優れた冷却材に要求される性能としては、作動時の粘度が低く、単位体積当たりの熱容量が大きく防錆性にも優れることが考えられるが、従来そのようなものは製品化されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記問題を解決する方法について鋭意検討し、特定の化合物を組み合わせた組成物を用いることで上記問題が解決できることを見出し本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、炭素数1-3のアルコール15~84重量部と、水84~15重量部と、リン酸又はその塩及び水酸化カリウムを含む防錆剤0.5~5重量部を三成分の割合として含む冷却用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷却用組成物は、装置の腐食等のリスクが小さく、運転条件下で粘性が低く、しかも熱容量が大きいと言う特性を示し過酷な条件をクリアでき極めて工業的価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においては、炭素数1-3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましく用いられ、特にメタノールが好ましく利用できその一部を他のアルコールで代替しても良い。
【0010】
本発明において、本願発明の組成物の特性である作動時の粘度が低く、単位体積当たりの熱容量が大きいことを阻害しない限り、水、炭素数1-3のアルコールの他に+αの成分としてグリコールおよびそのエーテル、ホルムアミドおよびそのN-アルキル置換体などを添加して保存安定性など他の特性を改善することは、なんら問題はない。
【0011】
本発明においては、防錆剤として、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸またはその塩、モリブデン酸またはその塩、水酸化カリウム、トリアゾール系化合物から構成されるものが好ましく利用され、それぞれ、アルコールと水の総和の1/10000から2/100程度添加され、上記化合物の総計は、0.3/100~3/100程度である。
【0012】
本発明においては、上記、炭素数1-3のアルコール、水、防錆剤に加え、発明の効果を阻害しない範囲でシリコン系の消泡剤の少量などを併用することも可能である。
【0013】
本発明において、硝酸塩としては、硝酸のアルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アミン塩、アンモニウム塩などが例示できる。
【0014】
本発明において、亜硝酸塩としては、亜硝酸のアルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アミン塩、アンモニウム塩などが例示できる。
【0015】
本発明において、リン酸、またはその塩としては、正リン酸、ピロリン酸、トリメタンリン酸、テトラリン酸などあるいは、それらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などが例示される。
【0016】
本発明において、モリブデン酸又はその塩としては、80%モリブデン酸として市販されているものなどの他に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などが例示される。
【0017】
本発明において、トリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4-フェニル-1、2,3-トリアゾール、2-ナフトトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾールなどが例示される。
【0018】
本発明において水酸化カリウムとしては、純度の比較的高いものであれば特に制限はないが市販の48%水酸化カリウム水溶液などが好ましく利用できる。
【0019】
本発明においてシリコン系消泡剤としては、市販のものがそのまま好ましく利用できるが、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサンコポリマー、α-、ω-ジヒドロキシジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の他に、アミン変性、アルキル変性、ポリエーテル変性、高級脂肪酸変性、カルボキシル変性、アルコール変性など種々の変性シリコン、共重合系シリコンなどが例示される。
【0020】
本発明において、炭素数1-3のアルコールと水の好ましい比率は、冷却用組成物の用途によって好ましい範囲が異なるが、比較的低温に晒される用途で運転時の組成物の粘度を低くしたい場合はアルコール濃度を高く、また、比較的高温で、熱容量を大きくしたい場合にはアルコール濃度を低くすることが好ましいことがある。
【実施例0021】
[実施例1]
メタノール36部、イオン交換水63部、硝酸ナトリウム0.05部、亜硝酸ナトリウム0.1部、モリブデン酸ナトリウム0.07部、トリルトリアゾール0.05部、リン酸0.31部、苛性カリ0.33部、シリコンオイルKS-537を0.002部からなる冷却用組成物を製造し評価したところ、粘度、体積当たりの熱容量、防錆性は表のとおり優れたものであった。
【0022】
ここで防錆性は、JIS K2234に準じてアルミニウム鋳物AC2A-F、鋳鉄FC200を試験片として用いて60℃で336時間保持した後の試験片の重量変化を測定し、アルミニウム鋳物では0.1mg/cm2以下をA、0.5mg/cm2以上をC、中間をBと評価した。同様に鋳鉄では0.2mg/cm2以下をA,1.0mg/cm2以上をC、中間をBと評価した。また、動粘度は、JIS K2283(2000)に準じ40℃、-20℃でウベローデ粘度計を用い測定した。結果の詳細は表に示した。
【0023】
[実施例2]
メタノールと水の組成を変えた他は実施例1と同様の組成の冷却用組成物を評価した。同様に粘度、熱容量ともに良好であった。詳細は表に示した。
【0024】
[比較例1、2]
実施例1、2と同様のメタノールと水の組成で、苛性カリを用いない冷却用組成物を作り評価した。防錆性が劣る結果であった。詳細は表に示した。
【0025】
[実施例3]
防錆剤を強化した冷却用組成物を製造し評価したところ、粘度、熱容量に影響はなく良好な性能であった。詳細は表に示した。
【0026】
[実施例4]
メタノールの一部をエチレングリコールに変更したところ低温での粘度が増加した。低温での使用は不利であるが、熱容量、防錆性に問題はなく比較的高温での使用に問題はない。詳細は表に示した。
【0027】
[比較例3]
メタノールを使用しないと低温で凍結してしまう。詳細は表に示した。
【0028】
[比較例4、5]
水の使用量が少ないと熱容量が小さくなり好ましくない。詳細は表に示した。
【0029】