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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059859
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】金属固体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/37 20210101AFI20240423BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240423BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240423BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20240423BHJP
   B22F 12/70 20210101ALI20240423BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20240423BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20240423BHJP
   B22F 10/50 20210101ALI20240423BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240423BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240423BHJP
【FI】
B22F10/37
B22F10/28
B22F1/00 K
B22F1/00 M
B22F1/00 L
B22F1/00 N
B22F1/00 S
B22F12/41
B22F12/70
B22F1/05
B22F10/34
B22F10/50
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】51
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027790
(22)【出願日】2024-02-27
(62)【分割の表示】P 2023507127の分割
【原出願日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021041553
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521109109
【氏名又は名称】株式会社SUN METALON
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和彦
(72)【発明者】
【氏名】景山 宏治
(57)【要約】
【課題】容易に金属固体を製造可能である金属固体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属粉末の周囲の少なくとも一部を金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことと、周囲の少なくとも一部が高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射して金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を含む、金属固体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末の周囲の少なくとも一部を前記金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことと、
前記周囲の少なくとも一部が前記高融点材料で覆われた前記金属粉末にマイクロ波を照射して前記金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化することと、
を含む、金属固体の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉末の周囲の少なくとも一部を前記高融点材料で覆うことと、前記金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を繰り返す、請求項1に記載の金属固体の製造方法。
【請求項3】
積層された金属固体が形成される、請求項2に記載の金属固体の製造方法。
【請求項4】
前記高融点材料が、前記金属粉末より前記マイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項5】
前記高融点材料が、前記金属粉末が前記マイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯で前記マイクロ波を吸収する吸収材料を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項6】
前記高融点材料が、
前記金属粉末より前記マイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料と、
前記金属粉末が前記マイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯で前記マイクロ波を吸収する吸収材料と、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項7】
前記高融点材料が、1質量%から70質量%の前記吸収材料を含む、請求項6に記載の金属固体の製造方法。
【請求項8】
前記断熱材料が、酸化物を含む、請求項4、6及び7のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項9】
前記断熱材料が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項4、6、7、及び8のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項10】
前記吸収材料が、炭素材料を含む、請求項5、6、及び7のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項11】
前記吸収材料が、炭素、黒鉛、炭化ケイ素、炭素樹脂、及び金属炭化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5、6、7、及び10のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項12】
前記金属粉末が、金属を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項13】
前記金属粉末が、鉄、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項14】
前記金属粉末が、金属化合物を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項15】
前記金属粉末が、鉄、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項16】
前記金属粉末が、合金成分をさらに含む、請求項12から15のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項17】
前記合金成分が、ケイ素、マンガン、クロム、ニッケル、炭素、ホウ素、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、バナジウム、亜鉛及び硫黄からからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項16に記載の金属固体の製造方法。
【請求項18】
前記金属粉末の平均粒子径が200μm以下である、請求項1から17のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項19】
前記金属粉末が金属酸化物を含み、前記金属粉末にマイクロ波を照射することにおいて、前記金属粉末が還元される、請求項1から18のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項20】
前記金属粉末が金属酸化物を含み、前記金属粉末にマイクロ波を照射することにおいて、前記金属粉末が焼結される、請求項1から19のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項21】
前記高融点材料が型又は容器をなしている、請求項1から20のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項22】
前記金属粉末が圧粉体をなしている、請求項1から21のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項23】
前記金属粉末にマイクロ波を照射することの前に、前記金属粉末に圧力を加えることをさらに含む、請求項1から22のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項24】
前記圧力が1MPaから2000MPaである、請求項23に記載の金属固体の製造方法。
【請求項25】
前記金属粉末にマイクロ波を照射することの後に、前記金属粉末に圧力を加えることをさらに含む、請求項1から24のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項26】
前記圧力が1MPaから2000MPaである、請求項25に記載の金属固体の製造方法。
【請求項27】
前記金属粉末にマイクロ波を照射することが、不活性ガス雰囲気下で行われる、請求項1から26のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項28】
前記金属粉末にマイクロ波を照射することが、還元雰囲気下で行われる、請求項1から27のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項29】
前記金属粉末が金属酸化物を含み、前記金属粉末にマイクロ波を照射する前に、前記金属酸化物を還元することをさらに含む、請求項1から28のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項30】
金属粉末の周囲の少なくとも一部を前記金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことが、
前記高融点材料の層を形成することと、
前記高融点材料の層に凹部を形成することと、
前記凹部に前記金属粉末を入れることと、
を含む、請求項1から29のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項31】
前記高融点材料の層に前記凹部を形成することが、
前記高融点材料の層の一部を硬化することと、
前記高融点材料の層の未硬化部分を除去することと、
を含む、請求項30に記載の金属固体の製造方法。
【請求項32】
前記高融点材料の層の前記一部を硬化することが、前記高融点材料の層の前記一部に硬化性材料を含めることを含む、請求項31に記載の金属固体の製造方法。
【請求項33】
前記高融点材料の層の前記一部に硬化性材料を含侵させる、請求項32に記載の金属固体の製造方法。
【請求項34】
光照射により、前記高融点材料の層の前記一部を硬化する、請求項31から33のいずれか1項に記載の金属固体の製造方法。
【請求項35】
金属粉末と、前記金属粉末の周囲の少なくとも一部を覆う、前記金属粉末の融点より融点が高い高融点材料と、が配置されるためのステージと、
前記周囲の少なくとも一部が前記高融点材料で覆われた前記金属粉末にマイクロ波を照射して前記金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化するためのマイクロ波照射部と、
を備える、金属固体の製造装置。
【請求項36】
前記ステージ上に前記高融点材料を配置するための高融点材料配置部をさらに備える、請求項35に記載の金属固体の製造装置。
【請求項37】
前記高融点材料配置部が、前記ステージ上に前記高融点材料を塗布する、請求項36に記載の金属固体の製造装置。
【請求項38】
前記高融点材料配置部が、前記ステージ上に、前記高融点材料の層を積層する、請求項36又は37に記載の金属固体の製造装置。
【請求項39】
前記高融点材料の少なくとも一部に硬化性材料を添加するための硬化性材料添加部をさらに備える、請求項35から38のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項40】
前記高融点材料の少なくとも一部を硬化するための硬化装置をさらに備える、請求項35から39のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項41】
未硬化の前記高融点材料を除去するための未硬化材料除去部をさらに備える、請求項40に記載の金属固体の製造装置。
【請求項42】
前記ステージ上に前記金属粉末を配置するための金属粉末配置部をさらに備える、請求項35から41のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項43】
前記金属粉末配置部が、前記ステージ上に前記金属粉末を塗布する、請求項42に記載の金属固体の製造装置。
【請求項44】
前記金属粉末配置部が、前記高融点材料の凹部に前記金属粉末を配置する、請求項42又は43に記載の金属固体の製造装置。
【請求項45】
前記ステージ上に配置された前記金属粉末に圧力を加えるための加圧部をさらに備える、請求項35から44のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項46】
前記加圧部が、前記マイクロ波照射部が前記金属粉末にマイクロ波を照射する前に、前記金属粉末に圧力を加える、請求項45に記載の金属固体の製造装置。
【請求項47】
前記加圧部が、前記マイクロ波照射部が前記金属粉末にマイクロ波を照射した後に、前記金属粉末に圧力を加える、請求項45又は46に記載の金属固体の製造装置。
【請求項48】
前記金属粉末に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部をさらに備える、請求項35から47のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項49】
前記金属粉末に還元ガスを供給するための還元ガス供給部をさらに備える、請求項35から48のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【請求項50】
前記ステージ上に前記高融点材料を配置するための高融点材料配置部と、
前記ステージ上に前記金属粉末を配置するための金属粉末配置部と、
をさらに備え、
前記高融点材料配置部と前記金属粉末配置部が、前記ステージ上に、前記高融点材料で囲まれた前記金属粉末を配置し、前記マイクロ波照射部が前記金属粉末を焼結又は溶融固化することを繰り返す、
請求項35に記載の金属固体の製造装置。
【請求項51】
前記金属粉末が金属酸化物を含み、前記マイクロ波照射部が前記金属粉末にマイクロ波を照射する前に、前記金属酸化物を還元する還元装置をさらに備える、請求項35から50のいずれか1項に記載の金属固体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属固体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日用品、家電製品、及び工作機械等に用いられる金属固体部品は、鋳塊や金属鋼片などを加工して製造されている。鋳塊や金属鋼片を加工するプロセスは、様々な工程を含み、複雑である。また、鋳塊や金属鋼片を加工するプロセスは、様々な加工業者にまたがることもある。そのため、鋳塊や金属鋼片を加工するプロセスは、間に、物流による搬送が含まれることがある。したがって、鋳塊や金属鋼片を加工するプロセスは、コストが高い。また、鋳塊や金属鋼片を加工するプロセスにおいて、一つの工程が滞ると、下流の工程が全て滞ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-158790号公報
【特許文献2】特開2017-145151号公報
【特許文献3】特開2009-035776号公報
【特許文献4】特開2013-216943号公報
【特許文献5】特開2017-145151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、容易に金属固体を製造可能である金属固体の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、金属粉末の周囲の少なくとも一部を金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことと、周囲の少なくとも一部が高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射して金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を含む、金属固体の製造方法が提供される。
【0006】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末の周囲の少なくとも一部を高融点材料で覆うことと、金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を繰り返してもよい。
【0007】
上記の金属固体の製造方法において、積層された金属固体が形成されてもよい。
【0008】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料が、金属粉末よりマイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料を含んでいてもよい。
【0009】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料が、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する吸収材料を含んでいてもよい。
【0010】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料が、金属粉末よりマイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料と、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する吸収材料と、を含んでいてもよい。
【0011】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料が、1質量%から70質量%の吸収材料を含んでいてもよい。
【0012】
上記の金属固体の製造方法において、断熱材料が、酸化物を含んでいてもよい。
【0013】
上記の金属固体の製造方法において、断熱材料が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0014】
上記の金属固体の製造方法において、吸収材料が、炭素材料を含んでいてもよい。
【0015】
上記の金属固体の製造方法において、吸収材料が、炭素、黒鉛、炭化ケイ素、炭素樹脂、及び金属炭化物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0016】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が、金属を含んでいてもよい。
【0017】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が、鉄、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0018】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が、金属化合物を含んでいてもよい。
【0019】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が、鉄、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでいてもよい。
【0020】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が、合金成分をさらに含んでいてもよい。
【0021】
上記の金属固体の製造方法において、合金成分が、ケイ素、マンガン、クロム、ニッケル、炭素、ホウ素、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、バナジウム、亜鉛及び硫黄からからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0022】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末の平均粒子径が200μm以下であってもよい。
【0023】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が金属酸化物を含み、金属粉末にマイクロ波を照射することにおいて、金属粉末が還元されてもよい。
【0024】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が金属酸化物を含み、金属粉末にマイクロ波を照射することにおいて、金属粉末が焼結されてもよい。
【0025】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料が型又は容器をなしていてもよい。
【0026】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が圧粉体をなしていてもよい。
【0027】
上記の金属固体の製造方法が、金属粉末にマイクロ波を照射することの前に、金属粉末に圧力を加えることをさらに含んでいてもよい。
【0028】
上記の金属固体の製造方法において、圧力が1MPaから2000MPaであってもよい。
【0029】
上記の金属固体の製造方法が、金属粉末にマイクロ波を照射することの後に、金属粉末に圧力を加えることをさらに含んでいてもよい。
【0030】
上記の金属固体の製造方法において、圧力が1MPaから2000MPaであってもよい。
【0031】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末にマイクロ波を照射することが、不活性ガス雰囲気下で行われてもよい。
【0032】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末にマイクロ波を照射することが、還元雰囲気下で行われてもよい。
【0033】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末が金属酸化物を含み、金属粉末にマイクロ波を照射する前に、金属酸化物を還元することをさらに含んでいてもよい。
【0034】
上記の金属固体の製造方法において、金属粉末の周囲の少なくとも一部を金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことが、高融点材料の層を形成することと、高融点材料の層に凹部を形成することと、凹部に金属粉末を入れることと、を含んでいてもよい。
【0035】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料の層に凹部を形成することが、高融点材料の層の一部を硬化することと、高融点材料の層の未硬化部分を除去することと、を含んでいてもよい。
【0036】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料の層の一部を硬化することが、高融点材料の層の一部に硬化性材料を含めることを含んでいてもよい。
【0037】
上記の金属固体の製造方法において、高融点材料の層の一部に硬化性材料を含侵させてもよい。
【0038】
上記の金属固体の製造方法において、光照射により、高融点材料の層の一部を硬化させてもよい。
【0039】
また、本発明の態様によれば、金属粉末と、金属粉末の周囲の少なくとも一部を覆う、金属粉末の融点より融点が高い高融点材料と、が配置されるためのステージと、周囲の少なくとも一部が高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射して金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化するためのマイクロ波照射部と、を備える、金属固体の製造装置が提供される。
【0040】
上記の金属固体の製造装置が、ステージ上に高融点材料を配置するための高融点材料配置部をさらに備えていてもよい。
【0041】
上記の金属固体の製造装置において、高融点材料配置部が、ステージ上に高融点材料を塗布してもよい。
【0042】
上記の金属固体の製造装置において、高融点材料配置部が、ステージ上に、高融点材料の層を積層してもよい。
【0043】
上記の金属固体の製造装置が、高融点材料の少なくとも一部に硬化性材料を添加するための硬化性材料添加部をさらに備えていてもよい。
【0044】
上記の金属固体の製造装置が、高融点材料の少なくとも一部を硬化するための硬化装置をさらに備えていてもよい。
【0045】
上記の金属固体の製造装置が、未硬化の高融点材料を除去するための未硬化材料除去部をさらに備えていてもよい。
【0046】
上記の金属固体の製造装置が、ステージ上に金属粉末を配置するための金属粉末配置部をさらに備えていてもよい。
【0047】
上記の金属固体の製造装置において、金属粉末配置部が、ステージ上に金属粉末を塗布してもよい。
【0048】
上記の金属固体の製造装置において、金属粉末配置部が、高融点材料の凹部に金属粉末を配置してもよい。
【0049】
上記の金属固体の製造装置が、ステージ上に配置された金属粉末に圧力を加えるための加圧部をさらに備えていてもよい。
【0050】
上記の金属固体の製造装置において、加圧部が、マイクロ波照射部が金属粉末にマイクロ波を照射する前に、金属粉末に圧力を加えてもよい。
【0051】
上記の金属固体の製造装置において、加圧部が、マイクロ波照射部が金属粉末にマイクロ波を照射した後に、金属粉末に圧力を加えてもよい。
【0052】
上記の金属固体の製造装置が、金属粉末に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部をさらに備えていてもよい。
【0053】
上記の金属固体の製造装置が、金属粉末に還元ガスを供給するための還元ガス供給部をさらに備えていてもよい。
【0054】
上記の金属固体の製造装置が、ステージ上に高融点材料を配置するための高融点材料配置部と、ステージ上に金属粉末を配置するための金属粉末配置部と、をさらに備え、(1)高融点材料配置部と金属粉末配置部が、ステージ上に、高融点材料で囲まれた金属粉末を配置し、(2)マイクロ波照射部が金属粉末を焼結又は溶融固化してもよい。当該金属固体の製造装置が、(1)と(2)の組み合わせを繰り返してもよい。
【0055】
上記の金属固体の製造装置において、金属粉末が金属酸化物を含み、マイクロ波照射部が金属粉末にマイクロ波を照射する前に、金属酸化物を還元する還元装置をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、容易に金属固体を製造可能である金属固体の製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、実施形態に係る金属固体の製造装置の模式的斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図3図3は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図4図4は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図5図5は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図6図6は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図7図7は、実施形態に係る金属固体の製造方法の模式的工程図である。
図8図8は、実施形態に係る金属固体の製造装置の模式的斜視図である。
図9図9は、実施形態に係る金属固体の製造装置の模式的斜視図である。
図10図10は、実施形態に係る金属固体の製造装置の模式的斜視図である。
図11図11は、実施例1で得られた金属固体の写真である。
図12図12は、実施例2で得られた金属固体の写真である。
図13図13は、実施例3で得られた金属固体の写真である。
図14図14は、実施例4で得られた金属固体の写真である。
図15図15は、実施例5に係る樹脂型の写真である。
図16図16は、実施例5に係る金属金型から樹脂型を取り出す際の写真である。
図17図17は、実施例5で得られた金属固体の写真である。
図18図18は、実施例6で得られた金属固体の写真である。
図19図19は、実施例7で得られた金属固体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0059】
実施形態に係る金属固体の製造方法は、金属粉末の周囲の少なくとも一部を金属粉末の融点より融点が高い高融点材料で覆うことと、周囲の少なくとも一部が高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射して金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を含む。マイクロ波は、例えば周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波である。金属粉末の高融点材料で覆われている部分において、金属粉末と高融点材料が密着していることが好ましい。
【0060】
金属粉末の材料は、金属単体を含んでいてもよいし、合金等の金属化合物を含んでいてもよい。金属の例としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、セリウム(Ce)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ナトリウム(Na)、ビスマス(Bi)、及びガリウム(Ga)が挙げられる。鉄(Fe)の焼結温度は例えば1200℃である。鉄(Fe)の融点は1538℃である。ニッケル(Ni)の焼結温度は例えば1200℃である。ニッケル(Ni)の融点は1495℃である。銅(Cu)の焼結温度は例えば800℃である。銅(Cu)の融点は1085℃である。金(Au)の焼結温度は例えば800℃である。金(Au)の融点は1064℃である。銀(Ag)の焼結温度は例えば750℃である。銀(Ag)の融点は962℃である。アルミニウム(Al)の焼結温度は例えば500℃である。アルミニウム(Al)の融点は660℃である。コバルト(Co)の焼結温度は例えば1100℃である。コバルト(Co)の融点は1455℃である。
【0061】
金属粉末の材料は、1種類の金属を含んでいてもよいし、複数種類の金属を含んでいてもよい。金属化合物の例としては、複数の金属元素からなる合金、金属元素と非金属元素からなる合金、金属の酸化物、金属の水酸化物、金属の塩化物、金属の炭化物、金属のホウ化物、及び金属の硫化物が挙げられるが、特に限定されない。金属粉末は、合金成分として、例えば、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、ホウ素(B)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、金(Au)、カリウム(K)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、及び硫黄(S)等を含んでいてもよい。金属粉末の材料は、周囲の高融点材料よりもマイクロ波の吸収特性に優れることが好ましい。これにより、金属粉末が周囲の高融点材料よりもマイクロ波で加熱されやすくなる。
【0062】
金属粉末の平均粒子径は、例えば200μm以下、190μm以下、あるいは180μm以下である。金属粉末の平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法により測定された、体積基準における累積粒度分布におけるメディアン径D50を指す。好ましくは、金属粉末の粒度分布は、D10/D50>0.5かつD50/D90>0.5である。金属粉末の平均粒子径が200μm以下であると、金属粉末がマイクロ波を吸収しやすい傾向にある。
【0063】
高融点材料は、金属粉末よりマイクロ波の透過性が高く、金属粉末よりマイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料を含んでいてもよい。断熱材料は、金属粉末の融点より高い融点を有する。断熱材料は、マイクロ波を吸収する程度が低いことにより、マイクロ波を照射されても発熱の程度が低く、断熱効果を発揮する。また、断熱材料は、金属粉末より融点が高いため、マイクロ波を照射されても、形状が安定する。そのため、マイクロ波を照射された金属粉末が、焼結又は溶融している間も、断熱材料を含む高融点材料は、形状が安定し得る。断熱材料は、金属粉末周囲を覆う粉末として提供されてもよい。あるいは、断熱材料は、固体として提供されてもよい。固体の断熱材量は、金属粉末周囲を覆う形状を有していてもよい。断熱材料を含む固体は、板状であってもよいし、シート状であってもよい。
【0064】
断熱材料は、金属の酸化物を含んでいてもよいし、半金属の酸化物を含んでいてもよい。金属及び半金属の酸化物の例としては、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、及び酸化チタン(TiO2)が挙げられるが、特に限定されない。例えば、酸化アルミニウム(Al23)の融点は2072℃である。酸化ケイ素(SiO2)の融点は1710℃である。酸化マグネシウム(MgO)の融点は2852℃である。断熱材料は、これらの化合物であってもよい。
【0065】
高融点材料は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する吸収材料を含んでいてもよい。吸収材料は、金属粉末の融点より高い融点を有する。吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯の少なくも一部は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より低い。金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯は、例えば、300℃以上1200℃以下、450℃以上1100℃以下、あるいは600℃以上800℃以下である。吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯は、例えば、100℃以上1000℃以下、250℃以上900℃以下、あるいは400℃以上600℃以下である。
【0066】
吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯の少なくも一部は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯と重なっていることが好ましい。吸収材料は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収するため、金属粉末より早く発熱する。そのため、吸収材料は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯に達するまでに、金属粉末を加熱することが可能である。したがって、高融点材料が吸収材料を含むと、金属粉末の温度がマイクロ波を吸収する温度帯に達するのが速くなり、金属粉末の加熱時間を短縮することが可能である。また、吸収材料は、金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収するため、高融点材料が必要以上に加熱されることを抑制することが可能である。そのため、マイクロ波を照射された金属粉末が、焼結又は溶融している間も、吸収材料を含む高融点材料は、形状が安定し得る。ここで、吸収材料は、金属粉末周囲を覆う粉末として提供されてもよい。あるいは、吸収材料は、固体として提供されてもよい。固体の吸収材料は、金属粉末周囲を覆う形状を有していてもよい。上述したように、断熱材料が固体として提供される場合、固体の断熱材料で覆われた金属粉末の周囲に吸収材料を配置してもよい。吸収材料が固体として提供される場合、固体の吸収材料で覆われた金属粉末の周囲に断熱材量を配置してもよい。吸収材料と断熱材料の両方が固体であってもよい。
【0067】
吸収材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料の例としては、カーボンブラック、非晶質カーボン、黒鉛、炭化ケイ素、炭素樹脂、及び金属炭化物が挙げられるが、特に限定されない。吸収材料は、焼結又は溶融固化対象の金属粉末がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する金属粉末、金属窒化物、金属酸化物、及び金属硼化物等を含んでいてもよい。吸収材料は、これらの化合物であってもよい。吸収材料は、揮発成分を含まないことが好ましい。吸収材料が揮発成分を含まないことにより、マイクロ波が揮発成分に吸収されることを回避することが可能である。
【0068】
高融点材料は、金属粉末を還元する還元材料を含んでいてもよい。還元材料は、金属粉末の融点より高い融点を有する。還元材料の例としては、炭素、及び炭化ケイ素が挙げられる。吸収材料として使用される炭素材料が、還元材料としても機能し得る。
【0069】
高融点材料は、断熱材料のみからなっていてもよいし、吸収材料のみからなっていてもよいし、還元材料のみからなっていてもよいし、これらの組み合わせを含んでいてもよい。また、断熱材料、吸収材料、及び還元材料は、それぞれ、性質及び機能が重複する場合がある。例えば、炭素材料は、吸収材料としても機能するし、還元材料としても機能する。
【0070】
高融点材料が、断熱材料及び吸収材料を含む場合、断熱材料と吸収材料の質量割合は、1:1か、断熱材料の質量割合が吸収材料の質量割合より大きいことが好ましい。例えば、高融点材料における吸収材料の質量割合は、1質量%以上、2質量%以上、あるいは5質量%以上であり、70質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、あるいは10質量%以下である。高融点材料における吸収材料の質量割合を70質量%以下、あるいは50質量%以下にすることにより、高融点材料におけるマイクロ波の透過性を確保すること、及び金属粉末の焼結又は溶融固化の速度を適切にすることが可能となる。
【0071】
マイクロ波を照射される金属粉末が圧粉体である場合、高融点材料は、固体粉末等であって、流動性を有していてもよい。所望の3次元形状に圧粉体に金属粉末を成形したのち、圧粉体の少なくとも一部を高融点材料で覆い、その後、高融点材料で覆われた圧粉体にマイクロ波を照射することにより、圧粉体が焼結し、冶金により、所望の形状の金属固体が製造される。あるいは、高融点材料で覆われた圧粉体にマイクロ波を照射し、その後、冷却することにより、圧粉体が溶融固化し、所望の形状の金属固体が製造される。圧粉体は周囲の全体を高融点材料で覆われてもよい。圧粉体を覆う高融点材料の厚み、体積等は、マイクロ波の透過性に基づいて、適当に設定することが可能である。
【0072】
金属粉末を圧粉体に成形する際には、金属粉末に、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下の圧力を加えてもよい。加圧することにより、製造される金属固体が緻密になる傾向にある。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。
【0073】
マイクロ波を照射される金属粉末が流動性を有する場合、高融点材料が型又は容器等の固体をなしていてもよい。例えば、マイクロ波を照射される金属粉末全体が粉末であってもよいし、金属粉末の一部が圧粉体であってもよい。高融点材料がなす、所望の3次元形状に対応する型又は容器の凹部に金属粉末を入れて、金属粉末の少なくとも一部を高融点材料がなす型又は容器で覆い、その後、高融点材料がなす型又は容器で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射することにより、金属粉末が焼結し、所望の形状の金属固体が製造される。あるいは、高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射し、その後、冷却することにより、圧粉体が溶融固化し、所望の形状の金属固体が製造される。金属粉末は周囲の全体を高融点材料がなす型又は容器で覆われてもよい。圧粉体を覆う高融点材料がなす型又は容器の厚み、体積等は、マイクロ波の透過性に基づいて、適当に設定することが可能である。高融点材料がなす型又は容器に入れられる金属粉末は、位置により、組成を変えてもよい。例えば、位置により、金属粉体をなす金属の種類や、金属粉体の合金成分を変更してもよい。
【0074】
高融点材料がなす型又は容器に金属粉末を入れた後、マイクロ波を照射する前に、金属粉末に、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下の圧力を加えてもよい。加圧することにより、製造される金属固体が緻密になる傾向にある。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。
【0075】
高融点材料を型又は容器等の固体にする際には、高融点材料に光硬化性樹脂等の硬化性材料を分散させ、高融点材料と光硬化性樹脂の混合物に光を照射して、高融点材料と光硬化性樹脂の混合物を硬化してもよい。光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、高融点材料と光硬化性樹脂の混合物に紫外線を照射する。光の照射時間は、例えば、1時間以上、2時間以上、あるいは3時間以上である。高融点材料と光硬化性樹脂の混合物における光硬化性樹脂の質量割合は、例えば、1%以上、2%以上、あるいは3%以上であり、10%以下、9%以下、あるいは8%以下である。高融点材料と光硬化性樹脂の混合物における光硬化性樹脂の質量割合を1%以上10%以下にすることにより、硬度を確保し、かつ、マイクロ波の透過性を確保することが可能となり得る。硬化性材料は、熱硬化性であってもよい。この場合、高融点材料と熱硬化性材料の混合物を加熱して、高融点材料と熱硬化性材料の混合物を硬化してもよい。
【0076】
マイクロ波を照射される金属粉末と高融点材料の両方が粉末である場合、金属粉末と高融点材料を積層し、その後、積層された金属粉末と高融点材料にマイクロ波を照射してもよい。金属粉末と高融点材料を積層した後、マイクロ波を照射する前に、積層された金属粉末と高融点材料に、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下の圧力を加えてもよい。加圧することにより、製造される金属固体が緻密になる傾向にある。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。
【0077】
金属粉体を焼結又は溶融固化した後、形成された金属固体に圧力を加えてもよい。この場合、金属固体が熱を有し、雰囲気温度まで冷却される前であって、雰囲気温度より温度が高い状態で圧力を加えることが好ましい。加えられる圧力は、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下である。加圧することにより、製造される金属固体が緻密になる傾向にある。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。
【0078】
金属粉体が金属酸化物を含む場合、還元材料を含む高融点材料で覆われた金属粉体にマイクロ波を照射することにより、金属酸化物は還元される。金属粉体を焼結温度以上であって、融点の付近まで加熱すると、ち密な焼結体が得られやすい。したがって、金属粉体を、マイクロ波によって、1400℃以上、あるいは1500℃以上まで加熱してもよい。金属粉体を溶融固化する場合は、金属粉末を、融点以上まで加熱すればよい。なお、金属粉体にマイクロ波を照射する前に、当該金属の酸化物粉体を予め還元してもよい。例えば、金属酸化物粉体と炭素粉体を混合し、金属酸化物粉体と炭素粉体の混合物を加熱することにより、金属酸化物粉体を還元することが可能である。還元された金属粉体は、例えば、磁石によって、炭素粉体から分離することが可能である。
【0079】
金属粉末を加熱することは、不活性ガス雰囲気下で行われてもよい。不活性ガスの例としては、アルゴン(Ar)、及びヘリウム(He)が挙げられる。また、金属粉末を加熱することは、中性ガス雰囲気下で行われてもよい。中性ガスの例としては、窒素(N2)、乾燥水素(H2)、及びアンモニア(NH3)が挙げられる。また、金属粉末を加熱することは、還元雰囲気下で行われてもよい。還元雰囲気を供する還元性ガスとしては、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素ガス(CH4、C38、C410など)が挙げられる。高融点材料が型又は容器をなしている場合、高融点材料がなす型又は容器の内部に、不活性ガス、中性ガス、あるいは還元性ガスを供給してもよい。
【0080】
上記の金属粉末の周囲の少なくとも一部を高融点材料で覆うことと、金属粉末を焼結又は溶融固化することと、を繰り返し、積層された金属固体を形成してもよい。また、上記の方法で得られた金属固体を、研磨してもよい。また、上記の方法で得らえた金属固体を、例えばコアにして、周囲に金属粉体を配置し、さらに金属粉体の周囲に高融点材料を配置して、マイクロ波を照射することを繰り返してもよい。これにより、金属固体をスケールアップすることが可能である。また、マイクロ波を照射する毎に、金属粉体及び高融点材料のそれぞれの組成を変更してもよい。例えば、マイクロ波を照射する毎に、金属粉体の合金成分を変更してもよい。
【0081】
実施形態に係る金属固体の製造装置は、図1に示すように、金属粉末と、金属粉末の周囲の少なくとも一部を覆う、金属粉末の融点より融点が高い高融点材料と、が配置されるステージ10と、周囲の少なくとも一部が高融点材料で覆われた金属粉末にマイクロ波を照射して金属粉末を加熱し、当該金属粉末を焼結又は溶融固化するためのマイクロ波照射部20と、を備える。実施形態に係る金属固体の製造装置は、例えば、上述した実施形態に係る金属固体の製造方法を実施可能である。
【0082】
ステージ10は、金属粉末と、高融点材料と、を配置可能であれば、特に限定されない。ステージ10は、互いに垂直な3軸方向に移動可能であってもよい。例えば、ステージ10は、重力方向及び水平方向に移動可能であってもよい。
【0083】
実施形態に係る金属固体の製造装置は、ステージ10上に高融点材料を配置する高融点材料配置部31をさらに備えていてもよい。高融点材料配置部31は、ステージ10上に高融点材料を塗布してもよい。高融点材料配置部31は、ステージ10上に高融点材料の層を形成してよい。高融点材料配置部31は、互いに垂直な3軸方向に移動可能であってもよい。例えば、高融点材料配置部31は、重力方向及び水平方向に移動可能であってもよい。例えば、図2(a)から図2(c)に示すように、高融点材料配置部31は、ステージ10上を移動しながら粉体の高融点材料をステージ10上に塗布し、高融点材料の層101をステージ10上に形成してもよい。
【0084】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、高融点材料の少なくとも一部に硬化性材料を添加する硬化性材料添加部32をさらに備えていてもよい。硬化性材料添加部32は、高融点材料の硬化させる部分に、硬化性材料を添加し、高融点材料の硬化させない部分には、硬化性材料を添加しない。硬化性材料は、例えば液体であり、硬化性材料添加部32は、高融点材料の硬化させる部分に、硬化性材料を含侵させてもよい。硬化性材料添加部32は、互いに垂直な3軸方向に移動可能であってもよい。例えば、硬化性材料添加部32は、重力方向及び水平方向に移動可能であってもよい。例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、硬化性材料添加部32は、ステージ10上の高融点材料の層101上を移動しながら、高融点材料の層101に硬化性材料をパターニングしながら塗布し、高融点材料の層101の硬化させない部分102に硬化性材料を添加せず、高融点材料の層101の硬化させる部分に硬化性材料を添加してもよい。硬化性材料添加部32は、例えばインクジェットノズルを備え、バインダージェッティング方式で、硬化性材料を高融点材料に添加してもよい。
【0085】
高融点材料配置部31と、硬化性材料添加部32と、は、一体化していてもよい。
【0086】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、高融点材料の少なくとも一部を硬化する硬化装置40をさらに備えていてもよい。高融点材料が光硬化性材料を含む場合、硬化装置40は光源である。高融点材料が熱硬化性材料を含む場合、硬化装置40は熱源である。硬化装置40は、互いに垂直な3軸方向に移動可能であってもよい。例えば、硬化装置40は、重力方向及び水平方向に移動可能であってもよい。図3(c)に示すように、硬化装置40は、硬化性材料の硬化に必要なエネルギーを高融点材料の層101に照射して、高融点材料の層101の少なくとも一部を硬化する。硬化装置40は、高融点材料の層101の全面に一括してエネルギーを照射してもよいし、高融点材料の層101をスキャンしながらエネルギーを照射してもよい。
【0087】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、未硬化の高融点材料を除去する未硬化材料除去部50をさらに備えていてもよい。例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、未硬化材料除去部50は、高融点材料の層101の未硬化で粉体の部分102に風圧を加えて、未硬化で粉体の部分102を高融点材料の層101から除去し、高融点材料の層101に凹部103を形成させてもよい。
【0088】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、ステージ10上に金属粉末を配置する金属粉末配置部33をさらに備えていてもよい。金属粉末配置部33としては、リコータが使用可能である。金属粉末配置部33は、ステージ10上に金属粉末を塗布してもよい。金属粉末配置部33は、互いに垂直な3軸方向に移動可能であってもよい。例えば、金属粉末配置部33は、重力方向及び水平方向に移動可能であってもよい。例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、金属粉末配置部33は、ステージ10上の高融点材料の層101の凹部103に金属粉末200を配置してもよい。ステージ10上の高融点材料の層101の凹部103が形成されていない部分の表面に配置された金属粉末は、ローラーやブラシ等で除去してもよい。
【0089】
高融点材料配置部31と、金属粉末配置部33と、は、一体化していてもよい。硬化性材料添加部32と、金属粉末配置部33と、は、一体化していてもよい。高融点材料配置部31と、硬化性材料添加部32と、金属粉末配置部33と、は、一体化していてもよい。
【0090】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、ステージ10上に配置された金属粉末に圧力を加える加圧部60をさらに備えていてもよい。図5(c)に示すように、加圧部60は、マイクロ波を照射される前の金属粉末200に圧力を加える。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。ローラー加圧の場合、加圧部60の加圧先端がローラー式で、ローラーをステージ10に加圧させた状態で、ステージ10をスライドさせるような、加圧手法を選択してもよい。
【0091】
例えば図6に示すように、マイクロ波照射部20は、ステージ10上の高融点材料の層101の凹部103に配置された金属粉末200に、マイクロ波を照射する。マイクロ波照射部20は、金属粉末200の全面に一括してマイクロ波を照射してもよいし、金属粉末200をスキャンしながらマイクロ波を照射してもよい。実施形態に係る金属固体の製造装置は、金属粉末に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部をさらに備えていてもよい。不活性ガス供給部は、金属粉末200が少なくともマイクロ波に照射されている間、金属粉末200の周囲に不活性ガスを供給する。実施形態に係る金属固体の製造装置は、金属粉末に還元ガスを供給する還元ガス供給部をさらに備えていてもよい。還元ガス供給部は、金属粉末200が少なくともマイクロ波に照射されている間、金属粉末200の周囲に還元ガスを供給する。実施形態に係る金属固体の製造装置は、金属粉末に還元ガスを供給する中性ガス供給部をさらに備えていてもよい。中性ガス供給部は、金属粉末200が少なくともマイクロ波に照射されている間、金属粉末200の周囲に中性ガスを供給する。不活性ガス供給部と、還元ガス供給部と、は、一体化していてもよい。不活性ガス供給部と、中性ガス供給部と、は、一体化していてもよい。還元ガス供給部と、中性ガス供給部と、は、一体化していてもよい。
【0092】
図1に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、ステージ10上に配置された金属粉末の温度を計測する温度計71を備えていてもよい。温度計71としては、放射温度計が利用可能である。放射温度計は、金属粉末の材料の放射率に基づき、金属粉末の温度を計測する。温度計71は、高融点材料の温度も計測してもよい。温度計71で計測される金属粉末の温度に基づいて、マイクロ波照射部20が照射するマイクロ波を制御してもよい。また、実施形態に係る金属固体の製造装置は、マイクロ波照射部20が照射するマイクロ波を検出するマイクロ波検出器72を備えていてもよい。マイクロ波検出器72で検出されるマイクロ波の特性に基づいて、マイクロ波照射部20が照射するマイクロ波を制御してもよい。
【0093】
図1に示す加圧部60は、金属粉末200がマイクロ波に照射された後、金属粉末200に圧力を加えてもよい。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。ローラー加圧の場合、加圧部60の加圧先端がローラー式で、ローラーをステージ10に加圧させた状態で、ステージ10をスライドさせるような、加圧手法を選択してもよい。
【0094】
図6に示すステージ10上の高融点材料の層101の凹部103に配置され、マイクロ波を照射された金属粉末200は、その後、冷却され、焼結又は溶融固化し、金属固体となる。なお、高融点材料の層101の凹部103のエッジの部分の近傍の金属粉末200は、加熱されやすい傾向にある。そのため、凹部103のエッジの部分の近傍においては、高融点材料に含まれる吸収材料の質量割合を、他の部分より低くしてもよい。
【0095】
実施形態に係る金属固体の製造装置のステージ10及びマイクロ波照射部20等は、筐体に収納されていてもよい。
【0096】
実施形態に係る金属固体の製造装置は、焼結又は溶融固化した金属固体と、金属固体を囲む高融点材料の層101の上に、金属粉体を囲む高融点材料の層101を形成し、金属粉体を焼結又は溶融固化することを繰り返してもよい。これにより、1回のマイクロ波の照射で形成される金属固体の厚みが薄くても、金属固体が積層され、厚みのある金属固体を製造することが可能である。金属粉体を囲む高融点材料の層101を形成する毎に、高融点材料の層101に形成される凹部の形状を変えることで、複雑な三次元形状を有する金属固体を製造することが可能である。
【0097】
すなわち、図7に示すように、ステージ10上に1層目の高融点材料の層101Aを形成し、高融点材料の層101Aの凹部に、金属粉体200Aを配置する。次に、金属粉体200Aにマイクロ波を照射し、金属粉体200Aを1層目の金属固体201Aにする。次に、1層目の高融点材料の層101Aの上に2層目の高融点材料の層101Bを形成し、高融点材料の層101Bの凹部に、金属粉体200Bを配置する。ここで、高融点材料の層101Bの凹部からは、1層目の金属固体201Aが露出しており、金属粉体200Bは、1層目の金属固体201Aの表面と接触する。次に、金属粉体200Bにマイクロ波を照射し、金属粉体200Bを2層目の金属固体201Bにする。この際、2層目の金属固体201Bは、1層目の金属固体201Aに固着する。以後、同様の工程を繰り返すことにより、金属固体が積層される。
【0098】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1に示す加圧部60は、配置された金属粉末200の全面に加圧してもよい。あるいは、図8に示すように、配置された金属粉末200の表面積より小さい接触面積を有する加圧部60が、移動しながら金属粉末200に連続的に加圧してもよい。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラー加圧などが挙げられる。ローラー加圧の場合、図9に示すように、加圧部60がローラーを備え、ローラーをステージ10に加圧させた状態で、ローラーをステージ10上で移動させる、あるいはステージ10をスライドさせるような、加圧手法を選択してもよい。また、例えば、図10に示すように、実施形態に係る金属固体の製造装置は、金属粉体がマイクロ波を照射される前に金属粉体を還元する還元装置80を備えていてもよい。還元装置80は、例えば加熱装置であり、金属粉体を加熱して、金属粉体を還元する。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【実施例0099】
(実施例1)
高融点材料の層を形成した。高融点材料は93質量%の酸化アルミニウム(Al23)の粉体と7質量%の炭素(C)の粉体からなっていた。高融点材料の層の表面の凹部が設けられる部分を円形のアルミ板で覆い、高融点材料の層の表面に硬化性材料を噴射し、高融点材料の層のアルミ板で覆われていない部分に、硬化性材料を浸透させた。硬化性材料は、50質量%のUV硬化性樹脂(AMZLAB GmbH製 Standard Photopolymer Resin)と50質量%のエタノールを含んでいた。その後、高融点材料の層にUV光を照射し、高融点材料の層に浸透した硬化性樹脂を硬化させた。アルミ板で覆われ、硬化されなかった高融点材料は、エアシャワーにより除去した。これにより、高融点材料の層に、円柱状の凹部が形成された。円柱状の凹部の底面の直径は7.0mm、深さは4.0mmであった。
【0100】
高融点材料の層に設けられた凹部に、金属粉末(平均粒子径45μm)を充填した。金属粉末は、100%の鉄(Fe)からなっていた。プレス機を用いて、金属粉末と、金属粉末を取り囲む高融点材料に、250MPaの圧力をかけた。空気雰囲気下で、高融点材料と金属粉末に、700Wのマイクロ波を180秒照射し、金属粉末を1350℃(推定値)まで加熱した。金属粉末が焼結して得られた金属固体の写真を図11に示す。得られた金属固体は、円柱状であり、底面の直径は7.0mm、高さは4.0mmであった。得られた金属固体の密度は4.5g/cm2であり、相対密度(=密度/真密度)は58%であった。
【0101】
(実施例2)
高融点材料の第1層を形成した。高融点材料は93質量%の酸化アルミニウム(Al23)の粉体と7質量%の炭素(C)の粉体からなっていた。高融点材料の第1層の表面の凹部が設けられる部分を円形のアルミ板で覆い、高融点材料の第1層の表面に硬化性材料を噴射し、高融点材料の第1層のアルミ板で覆われていない部分に、硬化性材料を浸透させた。硬化性材料は、50質量%のUV硬化性樹脂(AMZLAB GmbH製 Standard Photopolymer Resin)と50質量%のエタノールを含んでいた。その後、高融点材料の第1層にUV光を照射し、高融点材料の第1層に浸透した硬化性樹脂を硬化させた。アルミ板で覆われ、硬化されなかった高融点材料は、エアシャワーにより除去した。これにより、高融点材料の第1層に、円柱状の凹部が形成された。円柱状の凹部の底面の直径は7.0mm、深さは4.2mmであった。
【0102】
高融点材料の第1層に設けられた凹部に、金属粉末を充填した。金属粉末は、100%の鉄(Fe)からなっていた。プレス機を用いて、金属粉末と、金属粉末を取り囲む高融点材料に、250MPaの圧力をかけた。空気雰囲気下で、高融点材料と金属粉末に、700Wのマイクロ波を180秒照射し、金属粉末を1350℃(推定値)まで加熱し、円柱状の金属固体を得た。
【0103】
高融点材料の第1層の上に、高融点材料の第2層を形成した。高融点材料は93質量%の酸化アルミニウム(Al23)と7質量%の炭素(C)からなっていた。高融点材料の第2層の表面の凹部が設けられる部分であって、高融点材料の第1層で取り囲まれている金属固体の真上を円形のアルミ板で覆い、高融点材料の第2層の表面に硬化性材料を噴射し、高融点材料の第2層のアルミ板で覆われていない部分に、硬化性材料を浸透させた。硬化性材料は、50質量%のUV硬化性樹脂(AMZLAB GmbH製 Standard Photopolymer Resin)と50質量%のエタノールを含んでいた。その後、高融点材料の第2層にUV光を照射し、高融点材料の第2層に浸透した硬化性樹脂を硬化させた。アルミ板で覆われ、硬化されなかった高融点材料は、エアシャワーにより除去した。これにより、高融点材料の第2層に、円柱状の凹部が形成された。円柱状の凹部の底面の直径は7.0mm、深さは2.4mmであった。高融点材料の第2層に設けられた凹部から、高融点材料の第1層で取り囲まれている金属固体の上面が露出した。
【0104】
高融点材料の第2層に設けられた凹部に、金属粉末を充填した。金属粉末は、100%の鉄(Fe)からなっていた。プレス機を用いて、金属粉末と、金属粉末を取り囲む高融点材料に、250MPaの圧力をかけた。空気雰囲気下で、高融点材料と金属粉末に、700Wのマイクロ波を180秒照射し、金属粉末を1350℃(推定値)まで加熱し、円柱状の金属固体を得た。この際、高融点材料の第1層で取り囲まれている金属固体と、高融点材料の第2層で取り囲まれている金属固体と、は、結合した。
【0105】
金属粉末が焼結して得られた金属固体の写真を図12に示す。得られた金属固体は、円柱状であり、底面の直径は7.0mm、高さは6.6mmであった。得られた金属固体の密度は4.1g/cm2であり、相対密度は52%であった。
【0106】
(実施例3)
高融点材料の層を形成した。高融点材料は93質量%の酸化アルミニウム(Al23)の粉体と7質量%の炭素(C)の粉体からなっていた。高融点材料の層の表面の凹部が設けられる部分を三角形のアルミ板で覆い、高融点材料の層の表面に硬化性材料を噴射し、高融点材料の層のアルミ板で覆われていない部分に、硬化性材料を浸透させた。硬化性材料は、50質量%のUV硬化性樹脂(AMZLAB GmbH製 Standard Photopolymer Resin)と50質量%のエタノールを含んでいた。その後、高融点材料の層にUV光を照射し、高融点材料の層に浸透した硬化性樹脂を硬化させた。アルミ板で覆われ、硬化されなかった高融点材料は、エアシャワーにより除去した。これにより、高融点材料の層に、三角柱状の凹部が形成された。三角柱状の凹部の底面の底辺の長さは8.0mm、深さは1.4mmであった。
【0107】
高融点材料の層に設けられた凹部に、金属粉末を充填した。金属粉末は、100%の鉄(Fe)からなっていた。プレス機を用いて、金属粉末と、金属粉末を取り囲む高融点材料に、250MPaの圧力をかけた。空気雰囲気下で、高融点材料と金属粉末に、500Wのマイクロ波を70秒照射し、金属粉末を1250℃(推定値)まで加熱した。金属粉末が焼結して得られた金属固体の写真を図13に示す。得られた金属固体は、三角柱状であり、底面の底辺の長さは8.0mm、高さは1.4mmであった。得られた金属固体の密度は4.5g/cm2であり、相対密度は58%であった。
【0108】
(実施例4)
高融点材料の層を形成した。高融点材料は93質量%の酸化アルミニウム(Al23)の粉体と7質量%の炭素(C)の粉体からなっていた。高融点材料の層の表面の凹部が設けられる部分を四角形のアルミ板で覆い、高融点材料の層の表面に硬化性材料を噴射し、高融点材料の層のアルミ板で覆われていない部分に、硬化性材料を浸透させた。硬化性材料は、50質量%のUV硬化性樹脂(AMZLAB GmbH製 Standard Photopolymer Resin)と50質量%のエタノールを含んでいた。その後、高融点材料の層にUV光を照射し、高融点材料の層に浸透した硬化性樹脂を硬化させた。アルミ板で覆われ、硬化されなかった高融点材料は、エアシャワーにより除去した。これにより、高融点材料の層に、四角柱状の凹部が形成された。四角柱状の凹部の底面の1辺の長さは7.2mm、深さは1.9mmであった。
【0109】
高融点材料の層に設けられた凹部に、金属粉末を充填した。金属粉末は、100%の鉄(Fe)からなっていた。プレス機を用いて、金属粉末と、金属粉末を取り囲む高融点材料に、250MPaの圧力をかけた。空気雰囲気下で、高融点材料と金属粉末に、500Wのマイクロ波を70秒照射し、金属粉末を1250℃(推定値)まで加熱した。金属粉末が焼結して得られた金属固体の写真を図14に示す。得られた金属固体は、四角柱状であり、底面の1辺の長さは7.2mm、高さは1.9mmであった。得られた金属固体の密度は4.5g/cm2であり、相対密度は58%であった。
【0110】
(実施例5)
金属粉末(SUS316L、粒径100μm以下)を用意した。樹脂型の材料としてPolyCast(登録商標、polymaker)を用意した。PolyCastの材質はポリビニルブチラル(>80%)であり、融点は135℃から210℃であり、分解点は>280℃であり、発火点は380℃である。PolyCastを用い、図15に示す外径φ10の樹脂型を3Dプリンター(polymaker)で成型した。
【0111】
図15に示したそれぞれ外径φ10の2つの樹脂型を内径φ10の金属金型へ挿入し、2つの樹脂型の間に金属粉末を充填した。次に、金属金型内部に250MPaの圧力を加えた。その後、金属金型から図16に示す金属粉末が充填された樹脂型を取り出し、150℃の炉内で、金属粉末が充填された樹脂型を30分加熱した。これにより、樹脂型が溶融し、樹脂型の構造に対応する金属圧粉体が成型された。
【0112】
93質量%の酸化アルミニウム(Al23)の粉体と7質量%の炭素(C)の粉体からなる高融点材料を用意した。金属圧粉体を高融点材料で覆った。空気雰囲気下で、高融点材料と金属圧粉体に、400Wのマイクロ波を40分照射し、金属圧粉体を1250℃(推定値)まで加熱した。金属圧粉体が焼結して得られた金属固体の写真を図17に示す。
【0113】
(実施例6)
炭素鋼(S50C)からなる金属粉体を用意し、500MPaの圧力により、角柱状の第1の金属圧粉体を成型した。酸化アルミニウム(Al23)の粉体と炭素(C)の粉体からなる高融点材料を用意した。第1の金属圧粉体を高融点材料で覆った。空気雰囲気下で、高融点材料と金属圧粉体に、200Wのマイクロ波を40分照射し、金属圧粉体を400℃(推定値)まで加熱し、第1の金属固体を得た。
【0114】
アルミニウム合金(A6061)からなる金属粉体を用意し、500MPaの圧力により、角柱状の第2の金属圧粉体を成型した。第1の金属固体上に第2の金属圧粉体を配置し、第1の金属固体と第2の金属圧粉体を高融点材料で覆った。空気雰囲気下で、5MPaの圧力をかけながら、高融点材料と金属圧粉体に、200Wのマイクロ波を照射し、圧力が低下した時点でマイクロ波の照射を停止した。これにより、第1の金属固体上で第2の金属圧粉体が焼結した第2の金属固体が得られた。第2の金属固体の写真を図18に示す。第2の金属固体において、第1の金属圧粉体であった部分と、第2の金属圧粉体であった部分と、の境界面は、欠陥なく接合していることが確認された。
【0115】
第2の金属固体において、アルミニウム合金(A6061)からなる部分は、表面が炭化され、炭化アルミニウム(Al43)になっていた。
【0116】
(実施例7)
高融点材料が、酸化アルミニウム(Al23)の粉体と炭化ケイ素(SiC)の粉体からなる点以外は、実施例6と同様に、第2の金属固体を作製した。第2の金属固体の写真を図19に示す。第2の金属固体において、第1の金属圧粉体であった部分と、第2の金属圧粉体であった部分と、の境界面は、欠陥なく接合していることが確認された。第2の金属固体において、アルミニウム合金(A6061)からなる部分は、表面が炭化されていなかった。したがって、高融点材料に炭化ケイ素を含ませることにより、作製される金属固体表面が炭化されないことが示された。
【符号の説明】
【0117】
10・・・ステージ、20・・・マイクロ波照射部、31・・・高融点材料配置部、32・・・硬化性材料添加部、33・・・金属粉末配置部、40・・・硬化装置、50・・・未硬化材料除去部、60・・・加圧部、101・・・層、102・・・部分、103・・・凹部、200・・・金属粉末
図1
図2
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