(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059875
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】光学フィルムの通紙方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240423BHJP
B65H 19/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B5/30
B65H19/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028086
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2018232355の分割
【原出願日】2018-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 洋明
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳史
(57)【要約】
【課題】光学フィルムに外観不良が生じ難い光学フィルムの通紙方法を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の搬送ローラR11a~R15を有する搬送設備と、複数の処理槽2とを備える光学フィルムF0の製造設備において、搬送設備のパスラインに光学フィルムF0を通紙する方法であって、光学フィルムF0の搬送方向上流側に位置する処理槽2(例えば、膨潤処理槽21)内の処理浴Lに光学フィルムF0を浸漬させた後に、光学フィルムF0の搬送方向下流側に位置する処理槽2(例えば、染色処理槽22)に設けられた搬送ローラR2、R12に光学フィルムF0を通紙する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ローラを有する搬送設備と、複数の処理槽とを備える光学フィルムの製造設備において、前記搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、
前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽内の処理浴に前記光学フィルムを浸漬させた後に、前記光学フィルムの搬送方向下流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに前記光学フィルムを通紙し、
前記製造設備は、前記複数の処理槽として、前記光学フィルムの搬送方向下流側から順に、前記光学フィルムに洗浄処理を施す洗浄処理槽と、前記光学フィルムに延伸処理を施す延伸処理槽と、前記光学フィルムに所定の処理を施す上流側処理槽と、を備え、
前記延伸処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記延伸処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させると共に、前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記洗浄処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で、前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴及び前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させずに前記延伸処理槽及び前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラに通紙した後、前記洗浄処理槽に設けられた昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させ、次に、前記延伸処理槽に設けられた昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴に浸漬させる、光学フィルムの通紙方法。
前記パスラインとは、前記搬送ローラの位置によって決まる前記光学フィルムの搬送経路を意味し、前記通紙とは、人が前記光学フィルムの先端部を手で引っ張って、前記搬送ローラに前記光学フィルムを掛けていき、前記光学フィルムを前記パスラインに沿わせる作業を意味する。
【請求項2】
前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で、前記搬送ローラに前記光学フィルムを通紙した後、前記昇降ローラを前記処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記処理浴に浸漬させる、請求項1に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項3】
前記上流側処理槽が、前記光学フィルムの搬送方向上流側から順に、前記光学フィルムに膨潤処理を施す膨潤処理槽、前記光学フィルムに染色処理を施す染色処理槽、前記光学フィルムに架橋処理を施す架橋処理槽である、請求項1又は2に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項4】
前記昇降ローラとして前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽の前記光学フィルムの搬送方向に複数の昇降ローラが設けられ、前記複数の昇降ローラを前記処理浴の液面よりも下方に下降させる際に、順に下降させる、請求項2又は3に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項5】
前記複数の昇降ローラのうち、下降後の上下方向位置が互いに異なる昇降ローラが存在し、その下降後の位置が最も下になる昇降ローラを最初に下降させる、請求項4に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項6】
前記光学フィルムが、偏光フィルムの原反フィルムである、請求項1から5の何れか一項に記載の光学フィルムの通紙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムの原反フィルム等の光学フィルムを通紙する方法に関する。特に、本発明は、光学フィルムの外観不良が生じ難い光学フィルムの通紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置等に用いられている。光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム(偏光子)、偏光フィルムを含む偏光板、位相差フィルム、アンチグレアフィルム等が挙げられる。
光学フィルムは、通常、長尺帯状の原反フィルムを用いて製造される。通常、搬送ローラを有する搬送設備で原反フィルムを長手方向に搬送しながら、順次各種の処理を施すことで、製品としての長尺帯状の光学フィルムが製造される(例えば、特許文献1、2参照)。長尺帯状の光学フィルムは、用途に応じたサイズに切断され、画像表示装置等に用いられる。
以下、本明細書では、製品としての光学フィルムのみならず、原反フィルム及び中間製品のフィルムも含めて光学フィルムと称する。
【0003】
例えば、光学フィルムが偏光フィルムの原反フィルムの場合、原反フィルムを搬送設備で搬送しながら、複数の処理槽内の処理浴に原反フィルムを順に浸漬させることで、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色すると共に一軸延伸する処理が施されることになる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、光学フィルム製品の製造を開始する際には、上記の搬送ローラを有する搬送設備のパスライン(搬送ローラの位置によって決まる光学フィルムの搬送経路)に光学フィルムを通紙する作業を行う必要がある。通紙とは、人が光学フィルムの先端部を手で引っ張って、搬送ローラに光学フィルムを掛けていき、光学フィルムをパスラインに沿わせる作業である。
【0005】
例えば、光学フィルムが偏光フィルムの原反フィルムである場合、一の原反フィルムと次の原反フィルムとをスプライスして(一の原反フィルムの後端部と次の原反フィルムの先端部とを繋ぐこと)搬送することができない。偏光フィルムの原反フィルムは、処理浴中で延伸処理を施されるので、一般的なテープやレーザ溶接等でスプライスしても、スプライス部分が外れてしまうからである。したがい、繰出ローラに巻回された原反フィルムが無くなる度に、次の繰出ローラに巻回された原反フィルムを手で通紙している。
【0006】
従来、上記の処理槽において光学フィルムを通紙する場合、光学フィルムを処理槽内の処理浴に浸漬させずに、処理槽に設けられた搬送ローラに通紙し、通紙作業が完了した後に、光学フィルムを処理浴に浸漬させるのが一般的であった。具体的には、処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で処理浴に浸漬させずに光学フィルムを通紙し、通紙作業が完了した後に、昇降ローラを下降させて光学フィルムを処理浴に浸漬させるのが一般的であった。
上記従来の通紙方法では、光学フィルムの擦れや切れが生じる場合があった。特に、偏光フィルムの原反フィルムのような薄い光学フィルムほど、通紙作業中に擦れや切れが生じるおそれがあった。光学フィルムの先端部に擦れや切れが生じて傷になったとしても、通紙作業を行ったこの先端部を製品として使用しなければ、特に問題は生じない。
しかしながら、光学フィルムの擦れや切れに起因して、搬送ローラの表面(通常はゴム材料)に凹凸が生じたり、光学フィルムの形成材料や搬送ローラの表面のゴム材料からなる異物が発生することによって問題が生じる場合がある。具体的には、搬送ローラの表面にいったん凹凸が生じると交換するまで直らないため、通紙作業が完了した後の通常搬送時の光学フィルムに搬送ローラの表面の凹凸が転写されることで、光学フィルムに外観不良が生じる場合がある。また、発生した異物は、光学フィルムの搬送設備が設けられた雰囲気中や処理槽中に長時間漂うため、この異物が光学フィルムに付着することで、光学フィルムに外観不良が生じる場合がある。光学フィルムは、例えば、数10μm程度の寸法の凹凸や異物であっても、視認できた場合には外観不良となり、製品の歩留まり低下に通じるおそれがある。このため、通紙作業中に生じる光学フィルムの擦れや切れに起因した光学フィルムの外観不良をできる限り生じさせないことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-248590号公報
【特許文献2】特開2004-341515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、光学フィルムの外観不良が生じ難い光学フィルムの通紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、通紙作業中に擦れや切れが生じる原因の一つが光学フィルムの硬さにあることを知見した。具体的には、従来、通紙作業中には光学フィルムは処理槽の処理浴に浸漬させないために硬く、通紙作業中に搬送ローラとの摩擦によって、光学フィルムに擦れや切れが生じ易いことが分かった。
【0010】
本発明は、上記の本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、複数の搬送ローラを有する搬送設備と、複数の処理槽とを備える光学フィルムの製造設備において、前記搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽内の処理浴に前記光学フィルムを浸漬させた後に、前記光学フィルムの搬送方向下流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに前記光学フィルムを通紙し、前記製造設備は、前記複数の処理槽として、前記光学フィルムの搬送方向下流側から順に、前記光学フィルムに洗浄処理を施す洗浄処理槽と、前記光学フィルムに延伸処理を施す延伸処理槽と、前記光学フィルムに所定の処理を施す上流側処理槽と、を備え、前記延伸処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記延伸処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させると共に、前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記洗浄処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で、前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴及び前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させずに前記延伸処理槽及び前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラに通紙した後、前記洗浄処理槽に設けられた昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させ、次に、前記延伸処理槽に設けられた昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴に浸漬させる、光学フィルムの通紙方法を提供する。前記パスラインとは、前記搬送ローラの位置によって決まる前記光学フィルムの搬送経路を意味し、前記通紙とは、人が前記光学フィルムの先端部を手で引っ張って、前記搬送ローラに前記光学フィルムを掛けていき、前記光学フィルムを前記パスラインに沿わせる作業を意味する。
【0011】
本発明によれば、光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽内の処理浴に光学フィルムを浸漬させた後に、光学フィルムの搬送方向下流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに光学フィルムを通紙することになる。すなわち、搬送方向下流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに光学フィルムを通紙する際には、この光学フィルムは搬送方向上流側に位置する処理槽内の処理浴に浸漬した後であるため、軟化しており、搬送方向下流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに通紙する際には光学フィルムに擦れや切れが生じ難くなる。この結果、光学フィルムに外観不良が生じ難くなる。
なお、本発明において、搬送方向上流側に位置する処理槽内の処理浴への光学フィルムの浸漬は、この搬送方向上流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラに光学フィルムを通紙した後に行っても良いし、光学フィルムを通紙しながら浸漬させてもよい。
【0012】
本発明によれば、前記製造設備は、前記複数の処理槽として、前記光学フィルムの搬送方向下流側から順に、前記光学フィルムに洗浄処理を施す洗浄処理槽と、前記光学フィルムに延伸処理を施す延伸処理槽と、前記光学フィルムに所定の処理を施す上流側処理槽と、を備える。
【0013】
上流側処理槽内の処理浴に浸漬した光学フィルムは、例えば、上流側処理槽が複数の処理槽からなる場合、通紙と浸漬を繰り返す(或いは、通紙しながら浸漬することを繰り返す)ことで、軟化し過ぎるおそれがある。一方、延伸処理槽は、処理浴が高温であるのが一般的である。このため、軟化し過ぎた光学フィルムが延伸処理槽の処理浴に浸漬することで、光学フィルムが切れたり溶けたりするおそれがある。
本発明によれば、例えば、上流側処理槽内の処理浴に浸漬し終わった光学フィルムの先端部を切り取った後、切り取った先端部に後続する光学フィルムを延伸処理槽及び洗浄処理槽に設けられた搬送ローラに通紙することができる。具体的には、上流側処理槽内の処理浴に浸漬し終わった光学フィルムの先端部を可搬型の巻取ローラで巻き取り、この先端部の後端を切断して、先端部を回収することが考えられる。上流側処理槽に設けられた搬送ローラへの通紙作業は完了しているため、光学フィルムの先端部を可搬型の巻取ローラで巻き取ることで、先端部に後続する光学フィルムは、上流側処理槽内の処理浴に浸漬することになる。このため、先端部に後続する光学フィルムは軟化し、延伸処理槽及び洗浄処理槽に設けられた搬送ローラに通紙する際に、光学フィルムに擦れや切れが生じ難くなる。また、切り取った光学フィルムの先端部が上流側処理槽内の処理浴に浸漬していた時間に比べて、先端部に後続する光学フィルムが上流側処理槽内の処理浴に浸漬する時間の方が短くなる(先端部は上流側処理槽に設けられた搬送ローラに通紙するのに要する時間分だけ浸漬時間が長くなる)ため、先端部に後続する光学フィルムの軟化が過度に進行することはなく、延伸処理槽の処理浴で切れたり溶けたりするおそれを抑制可能である。
【0014】
本発明によれば、前記延伸処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記延伸処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させると共に、前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記洗浄処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で、前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴及び前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させずに前記延伸処理槽及び前記洗浄処理槽に設けられた搬送ローラに通紙した後、前記洗浄処理槽に設けられた昇降ローラを前記洗浄処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させ、次に、前記延伸処理槽に設けられた昇降ローラを前記延伸処理槽内の処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記延伸処理槽内の処理浴に浸漬させる。
【0015】
本発明によれば、光学フィルムは、先に洗浄処理槽内の処理浴に浸漬し、次に延伸処理槽内の処理浴に浸漬することになる。このように、延伸処理槽内の処理浴よりも先に洗浄処理槽内の処理浴に浸漬させることで、順序が逆の場合に比べて、延伸処理槽の高温の処理浴に浸漬する時間が短くなり、光学フィルムが切れたり溶けたりするおそれをより一層抑制可能である。
【0016】
本発明において、前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽に設けられた搬送ローラのうち、前記処理槽内で昇降可能な搬送ローラである昇降ローラを前記処理槽内の処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で、前記搬送ローラに前記光学フィルムを通紙した後、前記昇降ローラを前記処理浴の液面よりも下方に下降させて前記光学フィルムを前記処理浴に浸漬させることが好ましい。
【0017】
上記の好ましい方法によれば、光学フィルムを確実に処理浴に浸漬させることが可能である。
ただし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、昇降ローラを処理浴の液面よりも上方に上昇させた状態で光学フィルムを通紙しながら、昇降ローラ間の光学フィルムを弛ませることで、処理浴に浸漬させる方法を採用することも可能である。
【0018】
本発明において、前記上流側処理槽が、前記光学フィルムの搬送方向上流側から順に、前記光学フィルムに膨潤処理を施す膨潤処理槽、前記光学フィルムに染色処理を施す染色処理槽、前記光学フィルムに架橋処理を施す架橋処理槽である場合を例示できる。
【0019】
上記の好ましい方法において、前記昇降ローラとして前記光学フィルムの搬送方向上流側に位置する処理槽の前記光学フィルムの搬送方向に複数の昇降ローラが設けられる場合、前記複数の昇降ローラを前記処理浴の液面よりも下方に下降させる際に、順に下降させることが好ましい。
【0020】
上記の好ましい方法によれば、全ての昇降ローラを同時に下降させる場合に比べて、先に下降した昇降ローラに押された光学フィルムの傾斜角(水平面と成す角度)が大きくなる。これにより、光学フィルムの下面に溜まった気泡が光学フィルムを伝って抜け易くなり、処理浴での光学フィルムに施す処理の気泡に起因する不具合が生じ難くなる。
【0021】
なお、前記複数の昇降ローラのうち、下降後の上下方向位置が互いに異なる昇降ローラが存在する場合、その下降後の位置が最も下になる昇降ローラを最初に下降させることが好ましい。下降後の位置が最も下になる昇降ローラを最初に下降させる方が、下降後の位置がこれよりも上になる昇降ローラを最初に下降させるよりも、光学フィルムの傾斜角が大きくなり、気泡がより一層抜け易くなるからである。
【0022】
本発明は、前記光学フィルムが、偏光フィルムの原反フィルム(中間製品のフィルムも含む)である場合に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光学フィルムを通紙する際に光学フィルムに擦れや切れが生じ難く、光学フィルムに外観不良が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通紙方法を適用する原反フィルムから製造される偏光板の製造設備の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す処理槽及び処理槽に設けられた搬送設備の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る通紙方法を用いて、
図2に示す膨潤処理槽に設けられた搬送ローラによって決まるパスラインに原反フィルムを通紙する手順及び原反フィルムを処理浴に浸漬する手順を示す説明図である。
【
図4】
図2に示す膨潤処理槽に設けられた昇降ローラの他の例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る通紙方法を用いた延伸処理槽及び洗浄処理槽における通紙及び浸漬の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの通紙方法について、光学フィルムが偏光フィルムの原反フィルムである場合を例に挙げて説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る通紙方法を適用する原反フィルムから製造される偏光板の製造設備の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
図1に示す製造設備を用いて偏光板Fを製造するにあたっては、まず、繰出ローラ1に巻回されたポリビニルアルコール系フィルム等の原反フィルムF0を繰り出し、処理槽2内の処理浴に浸漬して、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色すると共に一軸延伸する。次いで、オーブン3で乾燥させることで、偏光フィルムF1が得られる。なお、偏光フィルムF1の厚み(偏光子の厚み)は、特に限定されるものではないが、一般的に、1~80μm程度であり、1~20μmが好ましい。
【0027】
次いで、繰出ローラ5から繰り出された保護フィルムF2の片面にグラビアコータ6で紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤という)を塗工する。そして、貼り合わせローラ7によって、UV接着剤が塗工された保護フィルムF2を偏光フィルムF1の両面に貼り合わせる。次いで、紫外線照射装置8でUV接着剤を硬化させた後、オーブン9で乾燥させる。最後に、両面に保護フィルムF2が貼り合わせられた偏光フィルムF1の片面に、繰出ローラ10から繰り出された表面保護フィルムF3を貼り合わせローラ11によって貼り合わせることで、偏光板Fが得られる。得られた偏光板Fは、巻取ローラ12で巻き取られる。
【0028】
図2は、
図1に示す処理槽2及び処理槽2に設けられた搬送設備の概略構成例を示す模式図である。
図2は、通紙後の原反フィルムF0(中間製品のフィルムも含む)を通常搬送している状態を示している。
図2に示すように、本実施形態では、処理槽2として複数の処理槽が設けられている。
図2に示す複数の処理槽は、原反フィルムF0の搬送方向(
図2の右方向)上流側(
図2の左側)から順に、上流側処理槽、延伸処理槽24及び洗浄処理槽25である。上流側処理槽は、原反フィルムF0の搬送方向上流側から順に、膨潤処理槽21、染色処理槽22、架橋処理槽23である。
【0029】
膨潤処理槽21は、原反フィルムF0に膨潤処理を施す処理槽である。膨潤処理槽21内の処理浴Lとしては、例えば水が用いられる。膨潤処理槽21内の処理浴Lに原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0を洗浄することができると共に、原反フィルムF0を膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止する効果が期待できる。処理浴L中には、グリセリンやヨウ化カリウム等を適宜加えてもよい。処理浴Lの温度は、20~45℃であることが好ましく、25~40℃であることがより好ましい。偏光板Fの製造時の原反フィルムF0の処理浴Lへの浸漬時間は、2~180秒間であることが好ましく、10~150秒間であることがより好ましく、60~120秒間であることが特に好ましい。なお、この膨潤処理槽21内の処理浴L中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの延伸倍率は、膨潤による伸展も含めて1.1~3.5倍程度である。
【0030】
染色処理槽22は、膨潤処理を施された原反フィルムF0に染色処理を施す処理槽である。染色処理槽22内の処理浴Lとしては、例えばヨウ素等の二色性物質を溶媒に溶解した溶液が用いられる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。染色処理槽22内の処理浴Lに原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0に二色性物質が吸着する。処理浴Lの温度は、5~42℃であることが好ましく、10~35℃であることがより好ましい。偏光板Fの製造時の原反フィルムF0の処理浴Lへの浸漬時間は、1~20分であることが好ましく、2~10分であることがより好ましい。なお、この染色処理槽22内の処理浴L中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1~4.0倍程度である。
【0031】
架橋処理槽23は、染色処理を施された原反フィルムF0に架橋処理を施す処理槽である。架橋処理槽23内の処理浴Lとしては、例えばホウ酸等の架橋剤を溶媒に溶解した溶液が用いられる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。架橋処理槽23内の処理浴Lに原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0が架橋する。処理浴Lの温度は、通常、20~70℃である。偏光板Fの製造時の原反フィルムF0の処理浴Lへの浸漬時間は、通常、1秒~15分であり、5秒~10分であることが好ましい。なお、この架橋処理槽23内の処理浴L中で原反フィルムF0を延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1~4.0倍程度である。
【0032】
延伸処理槽24は、架橋処理を施された原反フィルムF0に延伸処理を施す処理槽である。延伸処理槽24内の処理浴Lとしては、例えば、各種金属塩や、ヨウ素、ホウ素又は亜鉛の化合物を添加した溶液が用いられる。溶媒としては、水、エタノール又は各種有機溶媒が適宜使用される。延伸処理槽24内の処理浴Lに原反フィルムF0が浸漬した状態で、累積した総延伸倍率が2~7倍程度になるように原反フィルムF0が延伸される。処理浴Lの温度は、40~67℃であることが好ましく、50~62℃であることがより好ましい。
【0033】
洗浄処理槽25は、延伸処理を施された原反フィルムF0に洗浄処理を施す処理槽である。洗浄処理槽25内の処理浴Lとしては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウム等のヨウ化物を添加した水溶液が用いられる。洗浄処理槽25内の処理浴Lに原反フィルムF0が浸漬することで、原反フィルムF0が洗浄(水洗)される。処理浴Lの温度は、10~60℃であることが好ましく、15~40℃であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る通紙方法は、以上に説明した処理槽2に設けられた搬送設備に用いられる。
図2に示すように、処理槽2に設けられた搬送設備は、複数の搬送ローラR11a~R15を有する。
搬送ローラR11aは、膨潤処理槽21の入口に設けられたニップローラであり、上下方向に対向配置された一対のローラで構成されている。搬送ローラR11bは、膨潤処理槽21の出口(染色処理槽22の入口)に設けられたニップローラであり、水平方向(
図2の左右方向)に対向配置された一対のローラで構成されている。搬送ローラR12は、染色処理槽22の出口(架橋処理槽23の入口)に設けられたニップローラであり、水平方向に対向配置された一対のローラで構成されている。搬送ローラR13は、架橋処理槽23の出口(延伸処理槽24の入口)に設けられたニップローラであり、水平方向に対向配置された一対のローラで構成されている。搬送ローラR14は、延伸処理槽24の出口(洗浄処理槽25の入口)に設けられたニップローラであり、水平方向に対向配置された一対のローラで構成されている。搬送ローラR15は、洗浄処理槽25の出口に設けられたニップローラであり、水平方向に対向配置された一対のローラで構成されている。以下、上記の搬送ローラR11a~R15のことを、適宜、ニップローラR11a~R15と称する。なお、本実施形態では、ニップローラR11a~R15を構成する一対のローラのうち、一方のローラは、駆動ローラ(モータによって駆動されて回転し、摩擦力によって原反フィルムF0を長手方向に搬送するためのローラ)であり、他方のローラは、従動ローラ(自由に回転し、長手方向に搬送される原反フィルムF0を案内するためのローラ)である。
【0035】
搬送ローラR2は、各処理槽2(膨潤処理槽21~洗浄処理槽25)内で昇降可能(
図2の上下方向に移動可能)な昇降ローラである。以下、搬送ローラR2のことを、適宜、昇降ローラR2と称する。昇降ローラR2は、ジャッキ等の昇降手段(図示せず)によって昇降可能に構成されている。本実施形態では、各処理槽2の原反フィルムF0の搬送方向上流側及び下流側の位置に一対の昇降ローラR2が設けられている。
【0036】
図3は、本実施形態に係る通紙方法を用いて、
図2に示す膨潤処理槽21に設けられた搬送ローラR11a、R11bによって決まるパスラインに原反フィルムF0を通紙する手順及び原反フィルムF0を処理浴Lに浸漬する手順を示す説明図である。なお、パスラインは、通紙作業を行う際の各搬送ローラ(搬送ローラR11a、R11b)の位置によって決まる仮想線であり、通紙作業に用いる隣り合う2つの搬送ローラの共通接線を含んでいる。
まず、
図3(a)に示すように、ニップローラR11a、R11bを開く。具体的には、ニップローラR11aを構成する一方のローラ(例えば、従動ローラ)を矢符Aの方向に移動させる。同様に、ニップローラR11bを構成する一方のローラ(例えば、従動ローラ)を矢符Bの方向に移動させる。
また、膨潤処理槽21に設けられた昇降ローラR2を膨潤処理槽21内の処理浴Lの液面よりも上方に上昇させた状態にする。本実施形態では、昇降ローラR2をニップローラR11a、R11bよりも上方に上昇させているが、本発明はこれに限るものではなく、処理浴Lの液面よりも上方であれば、任意の位置に上昇させてよい。なお、昇降ローラR2をニップローラR11a、R11bよりも下方に上昇させる場合には、後述の手順において、搬送ローラR11a、R2、R11bによって決まるパスラインに原反フィルムF0を通紙することになる。
【0037】
次に、
図3(a)に示すように、人が原反フィルムF0の先端部(
図3(a)の右側の端部)を手で引っ張って、ニップローラR11aを構成する下側のローラ、ニップローラR11bを構成する左側のローラ及びニップローラR11bを構成する右側のローラの順に原反フィルムF0を掛けていき、これら3つのローラの位置によって決まるパスラインに原反フィルムF0を沿わせる。これにより、ニップローラR11bまでの通紙作業が完了する。この際、ニップローラR11aを構成する駆動ローラ(本実施形態では、下側のローラ)と、ニップローラR11bを構成する駆動ローラ(本実施形態では、右側のローラ)を駆動して回転させながら通紙することが好ましい。
【0038】
上記のようにして通紙作業が完了すれば、ニップローラR11aを閉じる。具体的には、ニップローラR11aを構成する一方のローラを
図3(b)に示す矢符Cの方向に移動させて、原反フィルムF0に接触させる。
【0039】
次に、昇降ローラR2を膨潤処理槽21内の処理浴Lの液面よりも下方に下降させて原反フィルムF0を処理浴Lに浸漬させる。本実施形態では、一対の昇降ローラR2を処理浴Lの液面よりも下方に下降させる際に、一対の昇降ローラR2のうち、
図3(b)に示すように一方の昇降ローラR2を先に矢符Dの方向に下降させた後、
図3(c)に示すように他方の昇降ローラR2を矢符Eの方向に下降させる。
【0040】
最後に、ニップローラR11bを閉じる。具体的には、ニップローラR11bを構成する一方のローラを
図3(c)に示す矢符Fの方向に移動させて、原反フィルムF0に接触させる。
【0041】
以上のようにして、原反フィルムF0を膨潤処理槽21内の処理浴Lに浸漬させた後、原反フィルムF0の先端部を搬送ローラR11bと染色処理槽22に設けられた搬送ローラR12とによって決まるパスラインに通紙し、通紙後に染色処理槽22内の処理浴Lに浸漬させる。染色処理槽22における原反フィルムF0の通紙及び浸漬の手順は、上記の膨潤処理槽21の場合と同様である。つまり、先に昇降ローラR2を下降させて原反フィルムF0を処理浴Lに浸漬させ、その後に搬送ローラR12を閉じる。本実施形態では、架橋処理槽23まで、膨潤処理槽21と同様の通紙及び浸漬の手順を実行する。
【0042】
以上に説明した本実施形態に係る通紙方法によれば、原反フィルムF0の搬送方向上流側に位置する処理槽2内の処理浴Lに原反フィルムF0を浸漬させた後に、原反フィルムF0の搬送方向下流側に位置する処理槽2に設けられた搬送ローラに原反フィルムF0を通紙することになる。すなわち、搬送方向下流側に位置する処理槽2(例えば、染色処理槽22)に設けられた搬送ローラに原反フィルムF0を通紙する際には、この原反フィルムF0は搬送方向上流側に位置する処理槽2(例えば、膨潤処理槽21)内の処理浴Lに浸漬した後であるため、軟化しており、搬送方向下流側に位置する処理槽2に設けられた搬送ローラに通紙する際には原反フィルムF0に擦れや切れが生じ難くなる。この結果、原反フィルムF0に外観不良が生じ難くなる。
【0043】
また、本実施形態に係る通紙方法によれば、一対の昇降ローラR2のうち、一方の昇降ローラR2を先に下降させることになる。このため、一対の昇降ローラR2を同時に下降させる場合に比べて、この一方の昇降ローラR2のみが下降した状態(
図3(b)参照)では、一対の昇降ローラR2に押された原反フィルムF0の傾斜角(水平面と成す角度)が大きくなる。これにより、原反フィルムF0の下面に溜まった気泡Bが原反フィルムF0を伝って他方の昇降ローラR2(
図3(b)に示す例では左側の昇降ローラR2)側に抜け易くなり、処理槽2での原反フィルムF0に施す処理の気泡Bに起因する不具合が生じ難くなる。
【0044】
図4は、膨潤処理槽21に設けられた昇降ローラR2の他の例を示す図である。
図3に示す一対の昇降ローラR2は、下降後の上下方向位置が互いに同一である(
図3(c)参照)。これに対し、
図4に示す一対の昇降ローラR2は、下降後の上下方向位置が互いに異なる。
図4(a)に示す例では、原反フィルムF0の搬送方向下流側(
図4(a)の右側)の昇降ローラR2の下降後の位置が、原反フィルムF0の搬送方向上流側(
図4(a)の左側)の昇降ローラR2の下降後の位置よりも下になっている。
図4(b)に示す例では、搬送方向上流側の昇降ローラR2の下降後の位置が、搬送方向下流側の昇降ローラR2の下降後の位置よりも下になっている。
図4に示すように、一対の昇降ローラR2の下降後の上下方向位置が互いに異なる場合、その下降後の位置が他方の昇降ローラR2の下降後の位置よりも下になる一方の昇降ローラR2を先に下降させることが好ましい。
図4(a)に示す例では、搬送方向下流側の昇降ローラR2を先に下降させることが好ましく、
図4(b)に示す例では、搬送方向上流側の昇降ローラR2を先に下降させることが好ましいことになる。下降後の位置が下になる一方の昇降ローラR2を先に下降させる方が、下降後の位置が上になる他方の昇降ローラR2を先に下降させるよりも、原反フィルムF0の傾斜角が大きくなり、気泡Bがより一層抜け易くなるからである。
【0045】
なお、本実施形態では、各処理槽2の原反フィルムF0の搬送方向上流側及び下流側の位置に一対の昇降ローラR2が設けられている例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、各処理槽2に原反フィルムF0の搬送方向に3つ以上の昇降ローラR2が設けられている場合にも適用可能である。
3つ以上の昇降ローラR2が設けられている場合には、全ての昇降ローラR2を同時に下降させるのではなく、順に下降させることが好ましい。また、3つ以上の昇降ローラR2が設けられている場合であって、下降後の上下方向位置が互いに異なる昇降ローラR2が存在する場合には、下降後の位置が最も下になる昇降ローラR2を最初に下降させることが好ましい。
上記の各処理槽2に設けられた昇降ローラR2の数が3つ以上でも良いことや、昇降ローラR2を下降させる好ましい順序については、上流側処理槽(膨潤処理槽21、染色処理槽22及び架橋処理槽23)に限らず、延伸処理槽24及び洗浄処理槽25においても同様である。
【0046】
以下、本実施形態に係る通紙方法を用いた延伸処理槽24及び洗浄処理槽25での通紙及び浸漬の手順について説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る通紙方法を用いた延伸処理槽24及び洗浄処理槽25における通紙及び浸漬の手順を示す説明図である。
図5(a)は、前述の手順によって、上流側処理槽(膨潤処理槽21、染色処理槽22及び架橋処理槽23)での通紙及び浸漬が完了した状態を示す。具体的には、膨潤処理槽21、染色処理槽22及び架橋処理槽23に設けられた搬送ローラR11a~R13までの原反フィルムF0の通紙作業と、膨潤処理槽21、染色処理槽22及び架橋処理槽23内の処理浴Lへの原反フィルムF0の浸漬が完了した状態を示す。
本実施形態では、
図5(a)に示す上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬し終わった原反フィルムF0の先端部(原反フィルムF0のうち、膨潤処理槽21に設けられた搬送ローラR11aから架橋処理槽23に設けられた搬送ローラR13に至るまでの部分全体又はその一部)を切り取る。具体的には、上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬し終わった原反フィルムF0の先端部を手で又は可搬型の巻取ローラ(図示せず)で巻き取り、この先端部の後端を切断して、先端部を回収する。
【0048】
次に、
図5(b)に示すように、切り取った先端部に後続する原反フィルムF0を延伸処理槽24及び洗浄処理槽25に設けられた搬送ローラR14、R15に通紙する。具体的には、延伸処理槽24に設けられた昇降ローラR2を延伸処理槽24内の処理浴Lの液面よりも上方に上昇させると共に、洗浄処理槽25に設けられた昇降ローラR2を洗浄処理槽25内の処理浴Lの液面よりも上方に上昇させた状態で、原反フィルムF0を延伸処理槽24内の処理浴L及び洗浄処理槽25内の処理浴Lに浸漬させずに延伸処理槽24及び洗浄処理槽25に設けられた搬送ローラR14、R15に通紙する。
【0049】
次に、
図5(c)に示すように、洗浄処理槽25に設けられた昇降ローラR2を洗浄処理槽25内の処理浴Lの液面よりも下方に下降させて原反フィルムF0を洗浄処理槽25内の処理浴Lに浸漬させる。この後、
図5(d)に示すように、ニップローラR15を閉じる。
【0050】
最後に、
図5(d)に示すように、延伸処理槽24に設けられた昇降ローラR2を延伸処理槽24内の処理浴Lの液面よりも下方に下降させて原反フィルムF0を延伸処理槽24内の処理浴Lに浸漬させる。この後、ニップローラR14を閉じる。延伸処理槽24は、他の処理槽2と比べて処理浴Lが高温であるのが一般的であるため、原反フィルムF0を処理浴Lに浸漬させると切れたり溶けたりするおそれがある。このため、ニップローラR13、R15を閉じた状態(原反フィルムF0を張った状態)で浸漬させることが好ましい。
以上の手順を実行した後、引き続いて、搬送方向下流側に存在する搬送ローラ(図示せず)に対する通紙作業を行うことになる。
【0051】
上流側処理槽(膨潤処理槽21、染色処理槽22及び架橋処理槽23)内の処理浴Lに浸漬した原反フィルムF0は、通紙と浸漬を繰り返すことで、軟化し過ぎるおそれがある。一方、前述のように、延伸処理槽24は、他の処理槽2と比べて処理浴Lが高温であるのが一般的である。このため、軟化し過ぎた光学フィルムが延伸処理槽24の処理浴Lに浸漬することで、原反フィルムF0が切れたり溶けたりするおそれがある。
本実施形態に係る通紙方法によれば、上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬し終わった原反フィルムF0の先端部を切り取った後、切り取った先端部に後続する原反フィルムF0を延伸処理槽24及び洗浄処理槽25に設けられた搬送ローラR14、R15に通紙することになる。上流側処理槽に設けられた搬送ローラへの通紙作業(搬送ローラR13までの通紙作業)は完了しているため、原反フィルムF0の先端部を手で又は可搬型の巻取ローラで巻き取ることで、先端部に後続する原反フィルムF0は、上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬することになる。このため、先端部に後続する原反フィルムF0は軟化し、延伸処理槽24及び洗浄処理槽25に設けられた搬送ローラR14、R15に通紙する際に、原反フィルムF0に擦れや切れが生じ難くなる。また、切り取った原反フィルムF0の先端部が上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬していた時間に比べて、先端部に後続する原反フィルムF0が上流側処理槽内の処理浴Lに浸漬する時間の方が短くなる(先端部は上流側処理槽に設けられた搬送ローラに通紙するのに要する時間分だけ浸漬時間が長くなる)ため、先端部に後続する原反フィルムF0の軟化が過度に進行することはなく、延伸処理槽24の処理浴Lで切れたり溶けたりするおそれを抑制可能である。
【0052】
また、本実施形態に係る通紙方法によれば、原反フィルムF0は、先に洗浄処理槽25内の処理浴Lに浸漬し、次に延伸処理槽24内の処理浴Lに浸漬することになる。このように、延伸処理槽24内の処理浴Lよりも先に洗浄処理槽25内の処理浴Lに浸漬させることで、順序が逆の場合に比べて、延伸処理槽24の高温の処理浴Lに浸漬する時間が短くなり、原反フィルムF0が切れたり溶けたりするおそれをより一層抑制可能である。
【0053】
以上に説明した本実施形態では、光学フィルムが偏光フィルムF1の原反フィルムF0である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限るものではなく、その他の各種光学フィルムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
2・・・処理槽
21・・・膨潤処理槽
22・・・染色処理槽
23・・・架橋処理槽
24・・・延伸処理槽
25・・・洗浄処理槽
F0・・・光学フィルム(原反フィルム)
F1・・・偏光フィルム
L・・・処理浴
R11a、R11b、R12、R13、R14、R15・・・搬送ローラ(ニップローラ)
R2・・・搬送ローラ(昇降ローラ)