(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059877
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】光学装置、測距装置、測距方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240423BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240423BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/89
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028118
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022138953の分割
【原出願日】2018-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加園 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(57)【要約】
【課題】
レーザ光の強度に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する物体の測距を精度良く行うことが可能な光学装置を提供する。
【解決手段】
光学装置は、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ照射光の各々の瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部と、を有し、受光部から所定の距離にある照射面において、複数の投光部の瞬間照射野によって形成される照射領域は、瞬間視野によって形成される視野領域を内包する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、
前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部と、
を有し、
前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域は、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記複数の投光部は、前記出射光を方向可変に偏向させる出射光偏向素子を各々が含み、かつ各々が前記出射光偏向素子で偏向させた前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記投光部は、前記光源と前記出射光偏向素子との間に前記出射光の一部を遮蔽する遮蔽部材を有することを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記複数の投光部のうちの少なくとも一組の投光部の各々の前記瞬間照射野は、前記瞬間視野上において前記受光部から所定の距離で互いに重なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項5】
前記複数の投光部は4つの投光部を含み、
前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部のうち2つの投光部から出射される前記照射光の前記瞬間照射野の各々が互いに重畳して1の照射領域を形成し、前記複数の投光部のうち前記2つの投光部と異なる2つの投光部から出射される前記照射光の前記瞬間照射野の各々が互いに重畳して他の照射領域を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項6】
前記複数の投光部のうち1の投光部の瞬間照射野の軸は、前記瞬間視野の軸と一致していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項7】
出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、
前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、
を有することを特徴とする測距装置。
【請求項8】
出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置によって実行される測距方法であって、
前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、
前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、
前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、
を含むことを特徴とする測距方法。
【請求項9】
出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置に、
前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、
前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、
前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、
をさせることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置に、
前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、
前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、
前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、
をさせるプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出射光の出射及び当該出射光の受光を行う光学装置、物体までの距離を計測する測距装置、測距方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学装置を含む測距装置は、例えば、レーザ光を対象領域内で走査して物体までの距離を計測する、すなわち測距する。このような測距装置としては、例えば、可動部が揺動する光走査部、可動部の光反射面に向かってパルス光を出射する光源部、パルス光の反射光を受光する受光部及び物体までの距離を計測する測距部を備える光測距装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光は物体に照射されると散乱する。このため、レーザ光が照射される物体が測距装置から遠くなるにつれて、測距装置が受光するレーザ光の光量は少なくなる。したがって、測距装置から遠方に位置する物体の測距を行うためには、レーザ光の出力を高くして出射することが望ましい。
【0005】
しかし、レーザ光は、パワー密度が高い場合には人体に有害となることがある。このため、安全基準によってレーザ光の出力が制限されている。従って、遠距離に位置する物体までの距離を測定する場合、安全基準を順守したレーザ光では、測距装置が受光するレーザ光の光量が少なくなることが課題の1つとして挙げられる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、レーザ光の強度に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する物体の測距を精度良く行うことが可能な光学装置を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の光学装置は、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部と、を有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域は、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包することを特徴とする。
【0008】
本願請求項7に記載の測距装置は、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本願請求項8に記載の測距方法は、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置によって実行される測距方法であって、前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本願請求項9に記載のプログラムは、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置に、前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、をさせることを特徴とする。
【0011】
本願請求項10に記載の記録媒体は、出射光を出射する光源を各々が含み、かつ各々が前記出射光を、瞬間照射野を有する照射光として出射する複数の投光部と、前記照射光が物体で反射した反射光を受光する受光素子を含み、かつ前記照射光の各々の前記瞬間照射野の立体角よりも瞬間視野の立体角が大きい受光部とを有し、前記受光部から所定の距離にある照射面において、前記複数の投光部の前記瞬間照射野によって形成される照射領域が、前記瞬間視野によって形成される視野領域を内包する光学装置と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する測距部と、を有する測距装置に、前記複数の投光部の各々から前記照射光を同時に出射する工程と、前記受光部で前記瞬間視野をもって前記反射光を受光する工程と、前記出射光及び前記反射光に基づいて前記物体までの距離を測距する工程と、をさせるプログラムが記録されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例1に係る測距装置の投光系の動作原理を説明する説明図である。
【
図3】実施例1に係る測距装置の受光系の動作原理を説明する説明図である。
【
図4】実施例1に係る測距装置の投光部及び受光部の配置例を示す斜視図である。
【
図5】実施例1に係る測距装置からの距離に応じた投光部の瞬間照射野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図6A】実施例1に係る測距装置から所定の距離における仮想面上の瞬間照射野の立体角を説明する概念図である。
【
図6B】実施例1に係る測距装置から所定の距離における仮想面上の瞬間視野の立体角を説明する概念図である。
【
図6C】実施例1に係る測距装置から所定の距離における仮想面上の瞬間照射野と瞬間視野を説明する概念図である。
【
図7】実施例1に係る測距装置の測距方法を示す処理フローである。
【
図8】実施例1に係る測距装置の投光部及び受光部の他の配置例を示す斜視図である。
【
図9】実施例1に係る測距装置の投光部の他の構成例を示す説明図である。
【
図10】実施例2に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】実施例3に係る測距装置の投光部及び受光部の配置例を示す斜視図である。
【
図12】実施例3に係る測距装置から所定の距離における仮想面上の瞬間照射野と瞬間視野を説明する概念図である。
【
図13】実施例3に係る測距装置の投光部及び受光部の他の配置例を示す斜視図である。
【
図14】実施例3に係る測距装置の投光部及び受光部の他の配置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
以下、本発明の光学装置を測距装置に用いた実施例を説明する。
【0014】
図1は、本実施例に係る測距装置100の機能ブロックを示している。
図1において、投光部10a,10bは、出射光を出射する発光装置である。投光部10a,10bは、互いに同一の構成を有する。投光部10a、10bの光源11は、例えば出射光としてパルス光を出射可能なレーザ素子である。
【0015】
光偏向素子12は、制御信号に応じて光ビームを偏向させる装置である。言い換えれば、光偏向素子12は、パルス光を方向可変に偏向させることができる。光偏向素子12は、光反射面(図示せず)を含む出射光反射部材を有している。光偏向素子12には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー装置、ポリゴンミラー等を用いることができる。尚、光偏向素子12は、光反射面を持たない光偏向素子であってもよい。このような光偏向素子12としては、音響光学偏向器(AO偏向器)等が挙げられる。
【0016】
光偏向素子12は、当該光反射面にて光源11から出射されたパルス光を反射して、走査対象となる所定の領域(以下、走査対象領域とする)に向けて照射光を出射可能である。したがって、光偏向素子12は、出射光偏光素子として機能する。
【0017】
このように、投光部10a,10bは、各々が光偏向素子12で偏光された出射光を、瞬間照射野を有する照射光として走査対象領域に向けて出射する。照射光は、走査対象領域に存在する物体で反射される。当該物体で反射された照射光は、反射光として測距装置100に向かって進行する。
【0018】
受光部20は、反射光を受光して、電気信号である受光信号を生成する受光装置である。光偏向素子21は、制御信号に応じて光ビームを偏向させることができる装置である。言い換えれば、光偏向素子21は、照射光が物体で反射した反射光を方向可変に偏向させることができる。光偏向素子21は、光反射面(図示せず)を含む反射光反射部材を有する。光偏向素子21は、光偏向素子12と同様にMEMSミラー装置等を用いることができる。したがって、光偏向素子21は、反射光偏向素子として機能する。
【0019】
受光素子22は、光偏向素子21で偏向された反射光を受光して、電気信号である受光信号を生成する。受光素子22としては、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photodiode)等を採用することができる。
【0020】
制御部30は、投光部10a,10bの各々の光源11から出射するパルス光の制御並びに、受光部20の光偏向素子21及び投光部10a,10bの各々の光偏向素子12の光反射面の角度の制御を行う。制御部30は、中央処理装置、主記憶装置、補助記憶装置を少なくとも有するコンピュータである。
【0021】
光源制御部31は、投光部10a,10bの各々の光源11の発光制御を行う。具体的には、光源11がパルス発光をするように発光タイミングを規定したテーブル(図示せず)を参照して、その発光を制御する。
【0022】
ミラー制御部32は、投光部10a,10bの各々の光偏向素子12の光反射面の傾きの角度を制御する。具体的には、ミラー制御部32は、光偏向素子12の光反射面でパルス光を反射させ、反射させた照射光によって走査対象領域の走査がなされるように光偏向素子12の光反射面の傾きの角度を制御する。
【0023】
ミラー制御部32は、受光部20の光偏向素子21の光偏向素子21の光反射面の傾きの角度を制御する。具体的には、ミラー制御部32は、受光部20の光偏向素子21の光反射面の方向(傾きの角度)と投光部10a,10bの光偏向素子12の光反射面との方向(傾きの角度)が連動するように、光偏向素子21の光反射面の傾きを制御する。すなわち、受光部20の光偏向素子21の光反射面の方向と投光部10a,10bの光偏向素子12の光反射面との方向が連動することによって、反射光が受光素子22に向かって進行する。
【0024】
言い換えれば、光源制御部31及びミラー制御部32は、投光部10a,10bの各々からパルス光を同時に出射させる出射制御手段として機能する。また、ミラー制御部32は、受光部20に反射光を受光させる受光手段として機能する。
【0025】
測距部としての距離測定部33は、測距装置100から走査対象領域内にある物体までの距離を算出する。言い換えれば、距離測定部33は、パルス光及び反射光に基づいて物体までの距離を測距する測距手段として機能する。
【0026】
距離測定部33は、受光素子22によって生成された受光信号に基づいて測距装置100から走査対象領域内にある物体までの距離を算出する。例えば、距離測定部33は、タイムオブフライト法を用いて当該距離が算出される。尚、物体までの距離の算出は、タイムオブフライト法に限られず位相差法であってもよい。
【0027】
具体的には、距離測定部33は、光源11によって出射された1のパルス光の出射時刻と、当該1のパルス光が偏向された照射光が走査対象領域内の物体によって反射されて反射光として受光素子22で検出された受光時刻を取得する。そして、当該出射時刻と当該受光時刻の時刻差に基づいて、測距装置100と物体との距離を算出する。
【0028】
尚、光偏向素子12によって偏向された照射光の進行方向には、仮想の面である照射面(図示せず)が設けられている。尚、照射面は、実在するものではない。
【0029】
図2は、投光部10a、10bを含む投光系の動作を示す概念図である。
図2において、光源11から出射されたパルス光EL1は、光偏向素子12の光反射面MRに入射する。
【0030】
光偏向素子12は、光反射面MRに入射されたパルス光EL1を反射する。すなわち、光偏向素子12は、パルス光EL1を照射光EL2として走査対象領域Rに向けて偏向する。
【0031】
光偏向素子12の光反射面MRは、揺動自在に本体に固定されている。したがって、光偏向素子12は、光反射面MRを揺動させることにより、走査対象領域R内の所望の方向に照射光EL2の進行方向を偏向する。
【0032】
照射光EL2は、照射面VSにおいて所望の軌跡が描かれるように光偏向素子12によって偏向される。また、照射面VSで描かれる軌跡は、ラスタ走査軌跡、リサージュ走査軌跡等が望ましいがこれに限るものではない。
【0033】
図3は、受光部20の受光系の動作を示す概念図である。
図3において、照射光EL2は、走査対象領域R内に存在する物体OBで反射する。物体OBで反射した照射光EL2は、反射光RLとして受光部20に向かって進行する。反射光RLは、受光部20の光偏向素子21の光反射面MRで反射されると、受光素子22に入射する。
【0034】
受光素子22は、入射された反射光RLに基づいて受光信号を生成し、制御部30に生成した受光信号を供給する。制御部30の距離測定部33は、パルス光EL1を出射した時刻と反射光RLを受光した時刻に基づいて、物体OBまでの距離を計測する。
【0035】
図4は、本実施例に係る測距装置100の投光部10a,10b及び受光部20の配置例を示している。
図4に示すように、投光部10a,10bは、基板40上において受光部20を挟み込むように列状に配置されている。
【0036】
また、投光部10a,10bは、受光部20までの距離が等しく配置されている。具体的には、受光部20から投光部10aまでの距離LH1は、受光部20から投光部10bまでの距離LH2に等しい。
【0037】
図5は、投光部10,10bの瞬間照射野(iFOI)(Instantaneous Field of Illumination)及び受光部20の瞬間視野(iFOV)(Instantaneous Field of View)の態様を示している。尚、図中の破線矢印は、照射光EL2の進行方向を示している。
【0038】
具体的には、
図5は、投光部10a,10bの瞬間照射野(iFOI)及び受光部20の瞬間視野(iFOV)の図中の破線矢印で示した照射光EL2の進行方向に対して垂直な方向の断面を測距装置100からの距離に応じて示している。
【0039】
ここで、瞬間照射野(iFOI)とは、注目する瞬間に出射光ELが照射される領域である。例えば、瞬間照射野(iFOI)とは、投光部10a,10bの投光レンズ(図示しない)により光源形状(図示しない)が投影される各々の角度範囲、もしくは各々の和の角度範囲であり、瞬間視野(iFOV)とは、受光部20の受光レンズにより受光部20の受光面が見込む角度範囲である。
【0040】
図中の二点鎖線は、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))を示している。また、図中の一点鎖線は、受光部20の瞬間視野(iFOV)を示している。
【0041】
投光部10a,10bは、安全基準を満たす出力で各々が照射光EL2を出射する。安全基準は、測距装置100から所定の距離における光の強度に基づいて定められている。安全基準は、例えば、測距装置100から100mmにおける光の強度に基づいて定められている。また、投光部10a及び投光部10bが出射する出射光ELの瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))は瞬間視野(iFOV)よりも小さい。
【0042】
測距装置100からの距離に応じて、瞬間視野(iFOV)内における瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))の各々の位置関係は変化する。具体的には、測距装置100からの距離が遠くなるにつれて、瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))は互いに近づき、測距装置100からの所定の距離において互いに接する。
【0043】
距離L1~L4は、測距装置100からの距離である。例えば、距離L1~L4は、受光部20からの距離である。また、距離L1~L4は、投光部10a又は投光部10bからの距離であってもよい。
【0044】
距離L1は、安全基準で定められている測距装置100からの距離である。距離L1の位置において、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))は、受光部20の瞬間視野(iFOV)の外側に配されている。
【0045】
従って、距離L1の位置における投光部10a、10bが出射する照射光EL2の強度は、安全基準を満たしている。尚、距離L1の位置において、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))のうち、いずれか一方、又はその両方が、受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されていてもよい。この場合、距離L1の位置における安全基準を満たすように適宜、照射光EL2の出力を調整するとよい。
【0046】
距離L2は、測距装置100からの距離であり、距離L1よりも長い。距離L2は、例えば、測距装置100から50mである。距離L2の位置において、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))の一部は、受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されている。したがって、距離L2の位置において物体OBが存在する場合、受光部20は、物体OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLを得ることができる。このため、測距装置100は、距離L2よりも遠い距離に存在する物体OBの測距を行うことができる。
【0047】
距離L3は、測距装置100からの距離であり、距離L2よりも長い。距離L3は、例えば、測距装置100から100mである。距離L3の位置において、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))の一部は、受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されている。
【0048】
また、距離L3において受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されている投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))の領域の割合は、距離L2よりも多い。
【0049】
したがって、距離L3の位置に物体OBが存在する場合、受光部20は、物体OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得ることができる。このため、測距装置100は、瞬間視野(iFOV)内に配される瞬間照射野(iFOI)の密度が、距離L2に物体OBが存在する場合よりも高い状態で測距を行うことができる。
【0050】
距離L4は、測距装置100からの距離であり、距離L3よりも長い。距離L4は、例えば、測距装置100から200mである。
【0051】
距離L4の位置において、投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))は、受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されている。
【0052】
すなわち、距離L4において受光部20の瞬間視野(iFOV)の内側に配されている投光部10aの瞬間照射野(iFOI(a))及び投光部10bの瞬間照射野(iFOI(b))の領域の割合は、距離L3よりも多い。
【0053】
従って、距離L4の位置に物体OBが存在する場合、受光部20は、物体OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得られる。このため、測距装置100は、瞬間視野(iFOV)内に配される瞬間照射野(iFOI)の密度が、距離L3に物体OBが存在する場合よりも高い状態で測距を行うことができる。
【0054】
図6Aは、
図5の距離L4における照射面VSでの瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))を示している。
図6Aにおいて、光源11から所定の距離(r)の位置に照射面VSが配されている。照射面VS上に投光部10a,10bの光源11の瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))が示されている。
【0055】
照射面VS上における瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))は、矩形状に示されている。尚、照射面VS上における瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))は、矩形状に限られず、例えば、円状や楕円状になるように光源11を構成してもよい。
【0056】
ここで、立体角は、空間上の同一の点から出る半直線が動いてつくる錐面によって区切られた部分のことをいう。立体角は、当該点を中心とする半径が1の球から当該錐面が切り取った面積の大きさで表すことができる。
【0057】
本実施例において空間上の同一の点を光源11とした場合、光源11が瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))を見込む立体角は、照射面VS上における瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))で表される。尚、瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))の中心CIと光源11とを結ぶ線を軸AX1とする。
【0058】
図6Bは、
図5の距離L4における照射面VSでの瞬間視野(iFOV)を示している。
図6Bにおいて、受光素子22から所定の距離(r)の位置に照射面VSが配されている。すなわち、
図6Aの光源11から照射面VSまでの距離と、受光素子22から照射面VSまでの距離は等しい。
【0059】
照射面VS上に受光部20の瞬間視野(iFOV)が示されている。照射面VS上における瞬間視野(iFOV)は、矩形状に示されている。尚、照射面VS上における瞬間視野(iFOV)は、矩形状に限られず、例えば、円状や楕円状になるように受光部20の受光素子22を構成してもよい。
【0060】
また、照射面VS上の瞬間視野(iFOV)の内側には、
図6Aで示した瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))が示されている。照射面VS上における、瞬間視野(iFOV)は、瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))よりも大きい。
【0061】
本実施例において空間上の同一の点を受光素子22とした場合、受光素子22が瞬間視野(iFOV)を見込む立体角は、照射面VS上における瞬間視野(iFOV)で表される。
【0062】
従って、光源11が瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))見込む立体角は、受光素子22が瞬間視野(iFOV)を見込む立体角よりも小さい。言い換えれば、受光素子22が瞬間視野(iFOV)を見込む立体角は、光源11が瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))を見込む立体角よりも大きい。尚、瞬間視野(iFOV)の中心CVと受光素子22とを結ぶ線を軸AX2とする。
【0063】
図6Cは、距離L4に位置する照射面VSにおける瞬間照射野(iFOI(a)、iFOI(b))及び瞬間視野(iFOV)を示している。尚、照射面VS上における瞬間照射野(iFOI(a)、iFOI(b))及び瞬間視野(iFOV)は、矩形状に示されている。
【0064】
図6Cに示すように、距離L4に位置する照射面VSにおいて、照射領域RIは、投光部10a,10bの各々の瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))によって形成されている。照射領域RIは、投光部10a,10bの各々によって照らされている領域である。
【0065】
照射領域RIは、例えば、距離L4に位置する照射面VSにおいて、照射光EL2が照射される領域のうち、当該領域の中心における照射光EL2の明るさの半分を少なくとも有する領域である。
【0066】
視野領域RVは、距離L4に位置する照射面VSにおいて、受光部20の瞬間視野(iFOV)によって形成されている。照射領域RIは、距離L4に位置する照射面VSにおいて、視野領域RVの全体を含んでいる。
【0067】
尚、照射領域RIが瞬間視野RVの全体を含んでいる走査対象領域R上の位置、すなわち、測距装置100からの距離は、適宜調整することができる。例えば、当該測距装置100からの距離は、距離L2や距離L3のように、距離L4よりも測距装置100に近い距離であってもよいし、距離L4よりも測距装置100に遠い距離であってもよい。
【0068】
図7は、測距装置100の測距方法を示す処理フローである。
図7に示すように、制御部30は、投光部10a,10bの各々から照射光EL2を同時に出射させる(ステップS01)。言い換えれば、測距装置100は、投光部10a,10bの各々から照射光EL2を同時に出射する。具体的には、制御部30は、投光部10a,10bの各々の光源11からパルス光EL1を出射させる。制御部30は、投光部10a,10bの各々の光偏向素子12によってパルス光EL1を偏向させる。この結果、投光部10a,10bの各々から照射光EL2が同時に出射される。
【0069】
次いで、制御部30は、照射光EL2が物体OBで反射した反射光RLを受光部20に受光させる(ステップS02)。言い換えれば、測距装置100は、受光部20で瞬間視野(iFOV)をもって反射光RLを受光する。具体的には、制御部30は、反射光RLを受光部20の光偏向素子21によって偏向させ、偏向された反射光RLを受光素子22において受光させる。
【0070】
制御部30は、パルス光EL1及び反射光RLに基づいて物体OBまでの距離を測距する(ステップS03)。言い換えれば、測距装置100は、パルス光EL1及び反射光RLに基づいて物体OBまでの距離を測距する。
【0071】
具体的には、制御部30は、光源11によって出射された1のパルス光の出射時刻と、当該1のパルス光が反射光RLとして受光素子22で検出された受光時刻と、を取得する。制御部30は、当該出射時刻と当該受光時刻の時刻差に基づいて、測距装置100と物体OBとの距離を算出する。
【0072】
以上のように、受光部20、投光部10a、10bから出射される各々の出射光ELの強度は、距離L1の位置において安全基準を満たしている。
【0073】
また、測距装置100からの距離が距離L1よりも遠い距離L2以降においては、投光部10a,10bの瞬間照射野(iFOI(a)、iFOI(b))が瞬間視野(iFOV)内に配されている。また、測距装置100からの距離が遠くなるにつれて、瞬間視野(iFOV)内に配される瞬間照射野(iFOI(a)、iFOI(b))の領域の割合が高くなる。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する物体OBの測距を精度よく行うことが可能となる。
【0074】
尚、本願発明の測距装置100が行っている情報処理は、上記実施例において測距装置100が行っている情報処理を実行させるプログラムによって実行することができる。なお、本願発明の情報処理方法を実行させるプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、好適に使用することができる。例えば、本願発明の測距装置100が、本願発明のプログラムを記録媒体から読み取り、本願発明のプログラムを実行することができる。
【0075】
また、投光部10a,10bの配置は、本実施例の配置例に限られず、例えば、
図8に示すように、投光部10a,10bは、基板40上において
図4に示した投光部10a,10bの配列方向に対して垂直な方向に列状に基板40上に配置してもよい。
【0076】
このように投光部10a,10bを配置した場合、
図4において説明したように、投光部10a,10bは、受光部20までの距離が等しく配置するとよい。具体的には、受光部20から投光部10aまでの距離LV1は、受光部20から投光部10bまでの距離LV2と等しくするとよい。
【0077】
さらに、瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))の調整は、光源11から出射された照射光EL2を遮蔽することにより行うとよい。
図9は、投光部10a,10bに遮蔽部材SCを設けた構成例を示している。
図9に示すように、遮蔽部材SCは、光源11と光偏向素子12との間に設けられている。遮蔽部材SCは、パルス光EL1の一部を遮蔽する。従って、パルス光EL1は、その一部が遮蔽部材SCで遮蔽されて光偏向素子12の光反射面MRに入射する。
【0078】
遮蔽部材SCによって瞬間照射野(iFOI(a),iFOI(b))を調整することにより、照射光EL2を出射する光源11の出力の設定が容易になる。例えば、光源11から出射されたパルス光EL1のうち半分をカットする場合、パルス光EL1の半分を遮蔽部材SCで遮蔽することによりこれを実現することができる。従って、光源11に供給される電流を制御する構成を必要とすることなく、簡易な構成でパルス光を出射する光源11のパワーの設定が容易になる。
実施例1においては、受光部20は、受光部としての機能を有するように構成した。しかし、受光部は、受光部としての機能のみならず投光部としての機能を有するように構成してもよい。尚、実施例1に係る測距装置100と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
光偏向素子52は、制御信号に応じて光ビームを偏向させる装置である。言い換えれば、光偏向素子52は、パルス光EL1の方向及び反射光RLの方向を可変に偏向させることができる。光偏向素子52は、光反射面(図示せず)を含む出射光反射部材を有している。
光偏向素子52は、光偏向素子12と同様にMEMSミラー装置等を用いることができる。光偏向素子52は、当該光反射面にてパルス光を反射して、走査対象領域Rに向けて照射光EL2を出射可能であると共に、受光素子53に向けて反射光を偏向可能である。したがって、光偏向素子52は、出射光偏光素子及び反射光偏光素子として機能する。
受光素子53は、光偏向素子52で偏向された反射光RLを受光して、電気信号である受光信号を生成する。受光素子53としては、例えば、アバランシェフォトダイオード等を採用することができる。
このように、投受光部50は、投光部の機能と受光部の機能を有している。従って、投受光部50の瞬間照射野(iFOI)の軸AX1は、瞬間視野(iFOV)の軸AX2と一致している。
以上のように、本実施例の測距装置100によれば、実施例1の測距装置100と同様に、レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する物体OBの測距を精度よく行うことが可能となる。また、投受光部50の瞬間照射野(iFOI)の軸AX1は、瞬間視野(iFOV)の軸AX2と一致していることにより、例えば、測距装置100からの距離が距離L2よりも短い距離に物体OBが存在している場合でも、当該物体OBの測距を精度よく行うことが可能となる。