(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059879
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】硬骨魚類インバリアント鎖癌ワクチン
(51)【国際特許分類】
C07K 14/46 20060101AFI20240423BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240423BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20240423BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240423BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240423BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240423BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240423BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07K14/46 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/88 Z
A61K31/7088
A61K35/60
A61K35/76
A61K38/17
A61K48/00
A61K39/00 H
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K39/39
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028160
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2021518705の分割
【原出願日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】18201541.2
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518435943
【氏名又は名称】ノイスコム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】ニコシア,アルフレード
(72)【発明者】
【氏名】スカルセッリ,エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】ラーム,アルミン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増殖性疾患、好ましくは癌、ウイルス性疾患、真菌性疾患又は細菌性疾患の予防又は治療に使用される、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター若しくはベクターのコレクション、又は医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、1つ以上の抗原に任意に融合された硬骨魚類インバリアント鎖の断片、又は1つ以上の抗原若しくはその抗原性断片に融合された硬骨魚類インバリアント鎖を含むポリペプチド、かかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、かかるポリヌクレオチドを含むベクター、かかるポリヌクレオチドを含むベクターのコレクション、及びかかるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターの疾患、特に腫瘍性疾患を治療又は予防するための使用に関する。硬骨魚類インバリアント鎖ポリペプチド又はその断片は、非免疫原性抗原配列を免疫原性T細胞抗原に変換する「T細胞エンハンサー」として作用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硬骨魚類のインバリアント鎖(INV)の膜近位ドメイン(MPD)の16個~27個の連続するアミノ酸を含む又はそれからなる硬骨魚類のINVの断片であって、該断片はT細胞応答エンハンサー活性を有し、該MPDは、
(i)NQRX1DIKSLEEQX2SX3LX4X5X6X7TX8GRSX9X10(配列番号1)
(ここで、
X1はG又はNであり、X2はH又はNであり、X3はG又はNであり、X4はN又はQであり、X5はE又はAであり、X6はQ又はEであり、X7はL又はMであり、X8はK又はRであり、X9はA又はVであり、X10はS又はAであり、
該断片は、好ましくは、配列番号003と少なくとも60%同一である)、若しくは、
(ii)DQKQQIQZ1LQZ2Z3NQRZ4EKQZ5Z6Z7RZ8RZ9S(配列番号8)
(ここで、
Z1はG又はDであり、Z2はT又はAであり、Z3はT又はSであり、Z4はL又はMであり、Z5はM又はVであり、Z6はG又はSであり、Z7はQ又はLであり、Z8はP又はSであり、Z9はE又はVであり、
該断片は、好ましくは、配列番号10と少なくとも60%同一である)から選択されるアミノ酸配列を特徴とする、断片、及び任意に、1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
又は、
(b)配列番号2、配列番号5、配列番号9若しくは配列番号12から選択される全長硬骨魚類INV、若しくはT細胞応答エンハンサー活性を有するそのバリアントであって、該バリアントのMPDのアミノ酸配列が配列番号3若しくは配列番号10と少なくとも60%同一であるバリアント、及び1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
を含むポリペプチド。
【請求項2】
(a)請求項1の選択肢(a)(i)に記載のMPDのアミノ酸配列が、配列番号3及び配列番号6のいずれか1つである、
(b)請求項1の選択肢(a)(ii)に記載のMPDのアミノ酸配列が、配列番号10及び配列番号013のいずれか1つである、及び/又は、
(c)請求項1の選択肢(b)に記載の硬骨魚類インバリアント鎖のアミノ酸配列が、配列番号2及び配列番号9のいずれか1つである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記断片が、MPDの少なくとも16個~27個のN末端アミノ酸、及びMPDのすぐN末端の硬骨魚類のINVの膜貫通ドメイン(TMD)の1個~26個の連続アミノ酸からなり、該硬骨魚類のINVのTMDが、好ましくは、次のアミノ酸配列(配列番号15)
AB1KB2B3GB4TB5LB6CB7LB8B9B10QB11B12B13B14YB15B16B17
(ここで、
B1はV、L又はYであり、B2はV又はIであり、B3はV又はAであり、B4はL、I又はFであり、B5はV、T又はLであり、B6はA又はVであり、B7はV又はLであり、B8はV又はIであり、B9はM、S又はAであり、B10はS、A又はGであり、B11はA又はVであり、B12はM又はFであり、B13はI又はTであり、B14はI又はAであり、B15はF又はMであり、B16はL、M又はVであり、B17はV、F又はLである)
を特徴とする、請求項1(a)、又は請求項2(a)若しくは(b)のポリペプチド。
【請求項4】
前記抗原が、それぞれの場合において、癌特異的抗原、癌特異的ネオ抗原、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質又は真菌タンパク質からなる群から独立して選択され、好ましくは、
(i)前記ポリペプチドが、少なくとも5つの異なる抗原及び/又はその抗原性断片を含み、及び/又は、
(ii)前記1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片が、請求項1の選択肢(a)に記載のINVの断片、又は請求項1の選択肢(b)に記載の全長INVのC末端にある、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
DNA又はRNA、好ましくはDNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項7】
異なる請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする請求項5に記載のポリヌクレオチドを各々含む2つ以上の異なるベクターのコレクション。
【請求項8】
前記ベクターが、それぞれの場合において、プラスミド;コスミド;リポソーム粒子、ウイルスベクター又はウイルス様粒子;好ましくは、アルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、サル又はヒトのサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターからなる群から独立して選択され、該アデノウイルスベクターが、好ましくは大型類人猿アデノウイルスベクター、より好ましくはチンパンジー又はボノボ又はゴリラのアデノウイルスベクターである、請求項6に記載のベクター又は請求項7に記載のベクターのコレクション。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチド、又は請求項6~8のいずれか一項に記載のベクター/ベクターコレクションと、薬学的に許容可能な賦形剤と、任意に1つ以上のアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの免疫調節物質、又は該免疫調節物質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は該免疫調節物質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター若しくはリポソーム粒子を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の医薬組成物と、別々に包装された、少なくとも1つの免疫調節物質、又は該免疫調節物質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は該免疫調節物質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターとを備えるパーツのキット。
【請求項12】
(i)免疫調節物質がMCMであり、
(a)腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバー、好ましくはCD27、CD40、OX40、GITR又はCD137のアゴニスト、及び/又は、
(b)PD-1、CD274、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、TIM-3若しくはVISTAのアンタゴニスト、又はB7-CD28スーパーファミリーメンバー、好ましくはCD28若しくはICOSのアンタゴニスト、又はそれらのリガンドのアンタゴニスト、
からなる群から選択され、及び/又は、
(ii)前記免疫調節物質がT細胞増殖因子、好ましくはIL-2、IL-12又はIL-15である、
請求項9若しくは10に記載の医薬組成物、又は請求項11に記載のパーツのキット。
【請求項13】
増殖性疾患、好ましくは癌、ウイルス性疾患、真菌性疾患又は細菌性疾患の予防又は治療に使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチド、請求項6~8のいずれか一項に記載のベクター若しくはベクターのコレクション、又は請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキット。
【請求項14】
前記癌が、唇、口腔、咽頭、消化器、呼吸器、胸腔内器官、骨、関節軟骨、皮膚、中皮組織、軟組織、乳房、女性生殖器、男性生殖器、尿路、脳及び中枢神経系の他の部分、甲状腺、内分泌腺、リンパ組織、並びに造血組織の悪性新生物からなる群から選択される、使用のための請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチド、請求項6~8のいずれか一項に記載のベクター若しくはベクターのコレクション、又は請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキット。
【請求項15】
少なくとも1つの免疫調節物質、又は該免疫調節物質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は該免疫調節物質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター若しくはリポソーム粒子を、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチド、請求項6~8のいずれか一項に記載のベクター若しくはベクターのコレクション、又は請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキットの投与前に、投与と同時に又は投与後に投与する、使用のための請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチド、請求項6~8のいずれか一項に記載のベクター若しくはベクターのコレクション、又は請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の抗原に任意に融合された硬骨魚類インバリアント鎖の断片、又は1つ以上の抗原若しくはその抗原性断片に融合された硬骨魚類インバリアント鎖を含むポリペプチド、かかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、かかるポリヌクレオチドを含むベクター、かかるポリヌクレオチドを含むベクターのコレクション、及びかかるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターの増殖性疾患、好ましくは癌、ウイルス性疾患、真菌性疾患又は細菌性疾患を治療又は予防するための使用に関する。硬骨魚類インバリアント鎖ポリペプチド又はその断片は、非免疫原性抗原配列を免疫原性T細胞抗原に変換する「T細胞エンハンサー」として作用する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、最適ではないT細胞免疫応答を誘発するか、又は全く誘発しない場合がある。T細胞免疫応答の誘導が不十分であるというこの現象は、完全に自己分子、例えば癌特異的抗原、又は部分的に自己、例えば癌特異的ネオ抗原のいずれかである抗原を標的とするワクチン接種の場合により頻繁に観察される。癌特異的ネオ抗原は、たいていは遺伝子のコード領域の点変異に由来し、これは非同義一塩基バリアントにつながり、結果として1個のアミノ酸の変化をもたらす。タンパク質配列における単一のアミノ酸変化が、強力な免疫応答を誘導することができる新規エピトープを生成することはめったにない。ほとんどの場合、この小さな変化は、新規エピトープを全く生成しないか、又は非常に弱いエピトープを生成する可能性がある。自己抗原に対する既存の中枢性免疫寛容のため、ワクチン接種による癌特異的抗原に対する強力な免疫応答の誘導は依然として困難な課題である。癌特異的抗原及びネオ抗原の免疫原性の欠如又は不十分さを克服するため、一部の遺伝子ワクチンの免疫原性の欠如/不十分さを救済するための幾つかの戦略が採用されてきた。インバリアント鎖(INV)は、遺伝子ワクチン接種と関連してCD8+T細胞の誘導を強化することが示されている。インバリアント鎖は主要組織適合複合体(MHC)クラスII分子のシャペロンタンパク質であり、それらの成熟及びアッセンブリに必要である。INVはまた、抗原ペプチドを提示する役割も果たしており、遺伝子ワクチン接種と関連して抗原に融合すると、T細胞の誘導を増加させることが実証されている。INVに融合した卵白アルブミンを発現するレンチウイルスベクターによる免疫能の改善が報告されている(非特許文献1)。その後、様々な報告が、ヒトアデノウイルス5及びINV融合抗原を発現するプラスミドDNAベクターによるCD8+T細胞応答の誘導の増強を実証した。
【0003】
癌ワクチン接種では、ワクチンにより誘導されたT細胞によって認識されない新規な癌特異的抗原の出現による腫瘍エスケープを回避することが重要である。癌の治癒における癌ワクチンの課題は、癌細胞がT細胞応答を「エスケープする」機会を減らすために、一度にできるだけ多くの癌細胞を認識して排除することができる免疫T細胞の多様な集団を誘導することである。したがって、ワクチンが非常に多くの癌特異的抗原をコードすることが望ましい。これは、癌特異的ネオ抗原に基づく最近記載された個別化ワクチンアプローチに特に関連している。成功の確率を最適化するために、できるだけ多くのネオ抗原をワクチンの標的にする必要があるが、ベクターの最大インサートサイズは制限されている。全長INV配列又はその大きな断片は、ワクチン抗原インサートの比較的大きな部分を占める。したがって、T細胞エンハンサーとしての短いポリペプチドの使用は、特にワクチンに幾つかの癌特異的抗原を使用する場合、抗癌ワクチン接種の関連では好ましい。
【0004】
アデノウイルス、特に大型類人猿由来アデノウイルス(GAd)ウイルスベクターに基づく遺伝子ワクチン接種プラットフォームは、T細胞応答の誘導に非常に強力であることが示され、大型類人猿由来アデノウイルスは、次々に連結された異なるタンパク質からの断片をコードするポリヌクレオチドで構成される人工遺伝子の形式で大きな抗原をコードするのに適している(非特許文献2)。予期せぬことに、癌特異的なネオ抗原との関連で使用された場合、T細胞を介した免疫応答は誘導されなかった。
【0005】
本発明者らは、免疫原性を回復することができる特定のINV配列を同定した。かかるINV配列は、癌特異的ネオ抗原の免疫原性の欠如又は不十分さを克服するのに適している。特に、非ヒト硬骨魚類INVの2つの短い断片が同定されたが、どちらも強力なT細胞エンハンサーとして作用する膜貫通ドメインを含んでいなかった。
【0006】
ヒトINV又は系統発生的に密接に関連する種のINVの使用は、ワクチン接種と関連して、この自己配列に対する免疫応答の望ましくない誘導をもたらす可能性がある。この場合、自己免疫反応は、INVが発現される正常組織に向けられる。本発明者らは、驚くべきことに、硬骨魚類のINVは、哺乳動物のINVとはかなり異なるものの、哺乳動物における抗原に対するT細胞応答を増加させることと、このT細胞応答増強効果は、硬骨魚類インバリアント鎖に融合した複数の抗原に対して発揮されることと、硬骨魚類INVの短い断片は、既にこの反応を誘発するのに十分であることとを見出した。そのため、本発明は、とりわけ、(i)健康な組織に対する望ましくないT細胞応答を誘発する可能性を減らした、哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の改善されたエンハンサー、(ii)複数の抗原に対するT細胞応答のエンハンサー、及び(iii)多数の抗原又はその抗原性断片を融合する能力を最大化するT細胞を誘発することができる短い断片を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Rowe et al 2006 Mol Ther 13(2)310-9
【非特許文献2】Borthwick, N., et al., MolTher, 2014. 22(2): p. 464-75
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様では、本発明は、
(a)硬骨魚類のインバリアント鎖(INV)の膜近位ドメイン(MPD)の16個~27個の連続するアミノ酸を含む又はそれからなる硬骨魚類のINVの断片であって、該断片はT細胞応答エンハンサー活性を有し、該MPDは、
(i)NQRX1DIKSLEEQX2SX3LX4X5X6X7TX8GRSX9X10(配列番号001)
(ここで、
X1はG又はNであり、X2はH又はNであり、X3はG又はNであり、X4はN又はQであり、X5はE又はAであり、X6はQ又はEであり、X7はL又はMであり、X8はK又はRであり、X9はA又はVであり、X10はS又はAであり、
該断片は、好ましくは、配列番号3と少なくとも60%同一である)、若しくは、
(ii)DQKQQIQZ1LQZ2Z3NQRZ4EKQZ5Z6Z7RZ8RZ9S(配列番号8)
(ここで、
Z1はG又はDであり、Z2はT又はAであり、Z3はT又はSであり、Z4はL又はMであり、Z5はM又はVであり、Z6はG又はSであり、Z7はQ又はLであり、Z8はP又はSであり、Z9はE又はVであり、
該断片は、好ましくは、配列番号10と少なくとも60%同一である)から選択されるアミノ酸配列を特徴とする、断片、及び任意に、1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
又は、
(b)配列番号2、配列番号5、配列番号9若しくは配列番号12から選択される全長硬骨魚類INV、若しくはT細胞応答エンハンサー活性を有するそのバリアントであって、該バリアントのMPDのアミノ酸配列が配列番号3若しくは配列番号10と少なくとも60%同一であるバリアント、及び1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
を含むポリペプチドに関する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、DNA又はRNA、好ましくはDNAである、本発明の第1の態様によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに更に関する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0011】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による異なるポリペプチドをコードする本発明の第2の態様によるポリヌクレオチドを各々含む2つ以上の異なるベクターのコレクションに関する。
【0012】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様のポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様のベクター/ベクターコレクションと、薬学的に許容可能な賦形剤と、任意に1つ以上のアジュバントとを含む医薬組成物に関する。
【0013】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様の医薬組成物と、別々に包装された、少なくとも1つの免疫調節物質、又は該免疫調節物質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は該免疫調節物質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターとを備えるパーツのキットに関する。
【0014】
第7の態様では、本発明は、増殖性疾患、好ましくは癌、ウイルス性疾患、真菌性疾患又は細菌性疾患の予防又は治療に使用される、第1の態様によるポリペプチド、第2の態様によるポリヌクレオチド、第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクション、又は第5若しくは第6の態様による医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキットに関する。
【0015】
以下で、本明細書に含まれる図面の内容を記載する。これに関連して、上記及び/又は下記の発明の詳細な説明も参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】GAd-penta(ペンタ)、並びにペンタ抗原のN末端に連結された、BP及びPO全長インバリアント鎖(BP_INV FL(配列番号9)及びPO_INV_FL(配列番号2))、又はその断片であるFRAG_A(BP_INVFRAG_A(配列番号10)及びPO_INVFRAG_A(配列番号3))及びFRAG_B(BP_INV FRAG_B(配列番号11)及びPO_INV FRAG_B(配列番号4))をコードするGAdベクターの免疫原性を示す図である。マウス(n=5又は6/群)を10
8 vpの各ベクターで免疫し、2週間後に脾臓に対するELISpotアッセイで免疫応答を測定した。ペンタトープにコードされるネオ抗原の配列に対応する5つの合成ペプチドのプールに対する平均応答(脾細胞100万個あたりのIFNγを産生するT細胞の数)を示す。示されている値は、マウス5匹又は6匹/群で実施された測定からの平均±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を下記に詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬は変更することができるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することを目的とするものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。他に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossaryof biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W,Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica ChimicaActa, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載のように、またAxel Kleemann及びJurgen Engelによる"PharmaceuticalSubstances: Syntheses, Patents, Applications", ThiemeMedical Publishing, 1999、the "Merck Index: AnEncyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals", Susan Budavari et al.編, CRC Press, 1996、及びメリーランド州ロックビルのthe United States Pharmcopeial(Pharmacopeial) Convention, Inc.によって出版されたthe United States Pharmacopeia-25/National Formulary-20, 2001に記載のように定義される。
【0019】
以降の本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、文脈により特に必要とされない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の別形は、示された特徴、整数若しくは工程又は複数の特徴、複数の整数若しくは複数の工程の群を包含することを意味するが、その他のあらゆる特徴、整数若しくは工程又は複数の整数若しくは複数の工程の群を除外することを意味しないと解釈される。以下の節で、本発明の種々の態様をより詳細に定義する。こうして定義される各々の態様は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意のその他の1つ以上の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいこと又は有利であることが示されるいずれかの特徴は、好ましいこと又は有利であることが示されるいずれかのその他の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
幾つかの文献が本明細書の文章全体を通して引用される。本明細書に引用される各々の文献(特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、使用説明書等の全てを含む)は、上記又は下記を問わず、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書中のいずれの記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるものではない。本明細書で引用される文献の幾つかは、「引用することにより本明細書の一部をなす」として特徴付けられる。そのような本明細書の一部をなす参考文献の定義又は教示と本明細書に列挙される定義又は教示との間に矛盾が生ずる場合に、本明細書の文章が優先される。
【0021】
下記で本発明の要素を記載する。これらの要素は特定の実施形態とともに挙げられているが、更なる実施形態を作成するのに、これらの要素をどのような方法及びどのような数でも組み合わせることができることを理解されたい。多様に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を例示的に記載された実施形態のみに限定するものとは解釈されない。本明細書は例示的に記載された実施形態と、あらゆる数の開示された及び/又は好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持及び包含するものであると理解されたい。さらに文脈上他に指定のない限り、本出願において記載された全ての要素のあらゆる並び替え(permutations)及び組み合わせが本出願の明細書により開示されていると見なされる。
【0022】
定義
本発明を実施するため、特段の指示がない限り、化学、生化学及び組換えDNA技術の従来法が用いられ、これらは、当該技術分野の文献で説明されている(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrooket al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。
【0023】
以下で、本明細書で頻繁に使用される用語の幾つかの定義を示す。これらの用語は、それらがそれぞれ使用される場合に、本明細書の残りの部分では、それぞれ定義される意味及び好ましい意味を有することとなる。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、数量を特定していない単数形(the singular forms "a", "an", and"the")は、文脈上他に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0025】
膜貫通ドメイン(TMD)という用語は、本発明では、インバリアント鎖配列(INV)のTMDを指すために使用され、全てのINVで保存されているGln(Q)残基のN末端の17残基で開始して、保存されたQのC末端の8残基で終了する、したがって合計26残基を含むアミノ酸セグメントとして定義される。
【0026】
膜近位ドメイン(MPD)という用語は、本発明では、INVのTMDのすぐC末端にある27残基のセグメントを指すために使用される。
【0027】
「アジュバント」という用語は、本発明では、抗原に対する免疫応答を増強する物質として使用される。加えて、アジュバントはまた、抗原の製剤の安定化を助けることができる物質としても発展してきた。アジュバントは、標的抗原に対する免疫系の応答を刺激するためにワクチンに追加されるが、それら自体は免疫を提供しない。アジュバントは、抗原に対する経路指示(routing)及び適応免疫応答を改善するために必要である。アジュバントは、様々なメカニズムを通じてその効果を適用する。例えば、血液中に抗原を長く存在させることによる、及び/又は抗原提示細胞が抗原を吸収するのを助けることによる、及び/又はマクロファージ及びリンパ球を活性化することによる、及び/又はサイトカインの産生を支援することによるものである。alum等の幾つかのアジュバントは、注射部位で抗原を捕捉するデポーを生成することによって送達システムとして機能し、免疫系を刺激し続ける徐放を提供する。記載されている種類のアジュバントには、i)無機化合物:alum、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム、ii)鉱物油:パラフィンオイル、iii)細菌製品:ボルデテラ・パーツシス(Bordetellapertussis)死菌、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、トキソイド、iv)非バクテリア有機物:スクアレン、v)送達システム:洗浄剤(QuilA、vi)キラヤ(Quillaja)(キラヤ(Quillaia)を参照)、ダイズ、ポリガラ・セネガ(Polygala senega)の植物サポニン、vii)サイトカイン:IL-1、IL-2、IL-12、viii)組み合わせ:フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバントがある。
【0028】
「免疫調節物質」という用語は、本発明では、免疫系に影響を与える任意の薬物又は物質を指すために使用される。免疫調節物質は、i)弱い免疫系を強化する、ii)過剰な免疫系を制御することにより、免疫応答を正しいレベルに調整することができる。弱い免疫系を強化することができる免疫調節物質の特定のクラスは、
i)腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバー、好ましくはCD27、CD40、OX40、GITR又はCD137のような作動性活性化因子MCM、
ii)PD-1、CD274、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、TIM-3、VISTA若しくはB7-CD28のスーパーファミリーのメンバー、CD28若しくはICOS、又はそのリガンドのアンタゴニストのような拮抗性阻害性MCM、
からなる免疫学的チェックポイント分子のモジュレーター(MCM)である。
【0029】
弱い免疫系を強化することができる別のクラスの免疫調節物質は、T細胞増殖因子として作用しているサイトカインである。かかるサイトカインの好ましい例は、IL-2、IL-12、IL-15、又はIL-17である。
【0030】
「抗原」という用語は、本発明の文脈において、免疫応答の分子、例えば、抗体、T細胞受容体(TCR)等によって認識される任意の構造を指すために使用される。好ましい抗原は、特定の疾患に関連する細胞性又は外来性、例えばウイルス、細菌又は真菌のタンパク質である。抗原は、適応免疫系の非常に多様な抗原受容体(B細胞受容体又はT細胞受容体)によって認識され、体液性又は細胞性の免疫応答を誘発する可能性がある。かかる応答を誘発する抗原は、免疫原とも称される。細胞内のタンパク質の一部は、それらが外来性であるか細胞性であるかに関係なく、より小さなペプチドに処理され、主要組織適合複合体(MHC)によって提示される。
【0031】
「その抗原性断片」という用語は、免疫系の分子によってまだ認識される所与の抗原の一部を指す。抗原性断片は、少なくとも1つのエピトープ又は抗原決定基を含むであろう。好ましくは、本発明の抗原性断片は、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0032】
抗原決定基としても知られる「エピトープ」という用語は、本発明の文脈において、抗原のセグメント、好ましくは免疫系の分子、例えば、B細胞受容体、T細胞受容体又は抗体によって結合されるペプチドを指すために使用される。抗体又はB細胞が結合するエピトープは「B細胞エピトープ」と称され、T細胞が結合するエピトープは「T細胞エピトープ」と称される。この文脈において、「結合」という用語は、好ましくは、抗体又はT細胞受容体(TCR)とそれぞれのエピトープとの間の1×105M-1以上、好ましくは1×106 M-1、1×107 M-1、1×108M-1以上の結合定数による結合として定義される特異的結合に関する。当業者は、いかにして結合定数を決定するかをよく知っている(例えば、Caoili,S.E.(2012) Advances in Bioinformatics Vol. 2012を参照されたい)。好ましくは、エピトープへの抗体の特異的結合は、抗体のFab(抗原結合断片(Fragment, antigen binding))領域によって媒介され、B細胞の特異的結合は、B細胞受容体に含まれる抗体のFab領域によって媒介され、T細胞の特異的結合は、T細胞受容体の可変(V)領域によって媒介される。T細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面に提示され、そこで主要組織適合性(MHC)分子に結合する。それぞれMHCクラスI、クラスIIと呼ばれるMHC分子の少なくとも2つの異なるクラスがある。MHC-I経路を介して提示されるエピトープは細胞傷害性Tリンパ球(CD8+細胞)による応答を誘発し、MHC-II経路を介して提示されるエピトープはTヘルパー細胞(CD4+細胞)による応答を誘発する。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは、通常、長さが8アミノ酸~11アミノ酸のペプチドであり、MHCクラスII分子によって提示されるT細胞エピトープは、通常、長さが13アミノ酸~17アミノ酸のペプチドである。MHCクラスIII分子は、糖脂質として非ペプチドエピトープも提示する。したがって、「T細胞エピトープ」という用語は、好ましくは、MHCクラスI又はMHCクラスII分子のいずれかによって提示され得る8個~11個又は13個~17個のアミノ酸長のペプチドを指す。エピトープは通常、アミノ酸の化学的に活性な表面基群(surfacegroupings)からなり、糖側鎖を持っている場合と持っていない場合があり、通常、特定の3次元構造特性と並んで特定の電荷特性を持つ。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合が失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。
【0033】
「癌特異的抗原」という用語は、本発明の文脈において、癌細胞において特異的に発現されるか、又は健康な細胞よりも癌細胞においてより豊富であるタンパク質を指すために使用される。癌特異的抗原には、次の種類の抗原が含まれる:
(i)癌胎児性(典型的には、胎児組織及び癌性体細胞でのみ発現される)、又は、
(ii)オンコウイルス(腫瘍原性形質転換ウイルスによってコードされる)、又は、
(iii)過剰発現/蓄積(正常組織と新生物組織の両方によって発現され、新生物では発現レベルが非常に高い)、例えば、黒色腫のチロシナーゼ若しくは乳癌のHer-2受容体、又は、
(iv)癌-精巣(癌細胞、並びに精巣及び胎盤等の成人の生殖組織によってのみ発現される)、又は、
(v)系統限定(主に単一の癌組織型によって発現される)、又は、
(vi)癌特異的アイソフォーム(転写エクソン組成の変化)。
【0034】
「癌特異的ネオ抗原」という用語は、本発明の文脈において、正常/生殖系列細胞には存在しないが、形質転換された、特に癌性細胞で生じる抗原を指すために使用される。癌特異的ネオ抗原は、1個以上、例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上のネオエピトープを含み得る。本発明のポリペプチドに含まれる各癌特異的ネオ抗原の長さは、それらが正常/生殖細胞で発生するエピトープを含む可能性が低くなるように選択されることが好ましい。典型的には、これは、癌特異的ネオ抗原が、ネオエピトープを作製したアミノ酸変化(複数の場合もある)のC末端及び/又はN末端に12個以下のアミノ酸を含むことで確認することができる。
【0035】
癌特異的ネオ抗原は、好ましくは、DNAのレベルで発生する変異によって生成され、変異したタンパク質は、
a)非同義的SNV点変異によって引き起こされる1つ以上の単一のaa変化、及び/又は、
b)フレームシフトペプチドをもたらす挿入/欠失によって引き起こされる非野生型アミノ酸配列、及び/又は、
c)エクソン境界の変更若しくはイントロン保持を生成する変異によって引き起こされる非野生型アミノ酸配列、及び/又は、
d)遺伝子融合イベントによって生成された変異癌タンパク質、
を含む場合がある。
【0036】
ゲノム点変異非同義SNVによって引き起こされる1つ以上の単一アミノ酸変化の結果であるネオ抗原は、本発明の文脈において単一アミノ酸変異ペプチドと称される。
【0037】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、一本鎖及び二本鎖の両方のヌクレオチドポリマーを含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。上記修飾としては、ブロモウリジン及びイノシン誘導体等の塩基修飾、2',3'-ジデオキシリボース等のリボース修飾、及びホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート及びホスホロアミデート等のヌクレオチド間結合修飾が挙げられる。ポリヌクレオチドの例は、DNA及びRNAである。
【0038】
「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム、mRNA、cDNA若しくは合成を起源とするDNA若しくはRNA、又はそれらの幾つかの組み合わせであり、単離されたポリヌクレオチドが自然界に見出されるポリヌクレオチドの全部若しくは一部とは関連しないか、又はそれが自然界で連結していないポリヌクレオチドに連結する。
【0039】
「発現カセット」という用語は、本発明の文脈において、発現される少なくとも1つの核酸配列を含むポリヌクレオチド、例えば、転写及び/又は翻訳制御配列に作動可能に連結された本発明のインバリアント鎖又はその断片に融合された一連の癌特異的ネオ抗原をコードする核酸を指すために使用される。好ましくは、発現カセットは、プロモーター、開始部位及び/又はポリアデニル化部位等の、所与の遺伝子の効率的な発現のためのシス調節エレメントを含む。好ましくは、発現カセットは、患者の細胞におけるポリヌクレオチドの発現に必要な全て追加の要素を含む。そのため、典型的な発現カセットは、発現されるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター、並びに転写物の効率的なポリアデニル化、リボソーム結合部位及び翻訳終結に必要なシグナルを含む。カセットの追加のエレメントは、例えば、エンハンサーを含み得る。発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域も含むことが好ましい。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得られてもよく、又は異なる遺伝子から得られてもよい。
【0040】
本発明の文脈で使用される「作動可能に連結された」という用語は、エレメントの配置を指し、そのように説明された構成要素は、それらの通常の機能を実行するように構成される。ポリヌクレオチドは、別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結」される。例えば、プロモーターは、それが1つ以上の導入遺伝子の転写に影響を与える場合、1つ以上の導入遺伝子に作動可能に連結されている。さらに、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コード配列の発現に影響を与えることができる。制御エレメントは、それらがコード配列の発現を指示するように機能する限り、コード配列と隣接している必要はない。そのため、例えば、介在する未翻訳であるが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」と見なすことができる。
【0041】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は同じ意味で使用され、ポリヌクレオチド、或る種のエンベロープ、例えばウイルスコート若しくはリポソーム内のポリヌクレオチド、又は細胞、好ましくは哺乳動物細胞へと導入され得る若しくは本発明のポリヌクレオチドを導入することができるタンパク質と複合体化したポリヌクレオチドを指す。ベクターの例としては、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、リポソーム、ウイルス又は人工染色体が挙げられる。特に、ベクターは、プロモーター及び本発明のポリヌクレオチドを適切な宿主細胞に輸送するために使用される。発現ベクターは、宿主細胞における発現ベクターの自律的複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含み得る。宿主細胞に入ると、発現ベクターは、宿主染色体DNAとは独立して、又はそれと同時に複製することができ、ベクター及びその挿入されたDNAの幾つかのコピーを生成することができる。複製能力のない発現ベクターが使用される場合(安全上の理由からそうであることが多い)、ベクターは複製せずに、ポリヌクレオチドの発現を指示するに過ぎない場合がある。発現ベクターのタイプに応じて、発現ベクターは細胞から失われる場合があり、すなわち、ポリヌクレオチドによってコードされるネオ抗原を一時的にのみ発現するか、又は細胞内で安定である場合がある。発現ベクターは通常、発現カセット、すなわちポリヌクレオチドのmRNA分子への転写を可能にする必要なエレメントを含む。ポリヌクレオチドがRNAである場合、転写は必要ないため、RNA分子は翻訳制御エレメントのみを必要とする。
【0042】
「T細胞エンハンサーアミノ酸配列」という用語は、遺伝子ワクチン接種との関連で、抗原配列に融合されるとT細胞の誘導を増加させるポリペプチド配列を指す。
【0043】
本発明の文脈で使用される「調製物」及び「組成物」という用語は、担体及び/又は賦形剤を含む、活性化合物、例えば、本発明の大型類人猿アデノウイルスベクターの製剤を含むことを意図している。
【0044】
本発明の文脈で使用される「薬学的に許容可能な」は、連邦政府若しくは州政府の監督官庁により承認されていること、又は米国薬局方、若しくは動物における、より具体的にはヒトにおける使用のための他の一般的に認められた薬局方にリストされていることを意味する。
【0045】
「担体」という用語は、本明細書中で使用する場合、限定されるものではないが、治療的有効成分とともに投与される希釈剤、賦形剤、界面活性剤、安定剤、生理学的緩衝液又はビヒクル等の薬理学的に不活性な物質を指す。かかる薬学的担体は、液体又は固体であり得る。液体担体としては、限定されるものではないが、ラッカセイ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等の石油起源、動物起源、植物起源又は合成起源のものを含む、水及び油中の生理食塩溶液等の滅菌液が挙げられるが、これらに限定されない。生理食塩溶液、並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液も、特に注射溶液の場合、液体担体として用いることができる。生理食塩溶液は、医薬組成物を静脈内投与する場合、好ましい担体である。好適な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0046】
好適な薬学的「賦形剤」は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米粉、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含む。
【0047】
「界面活性剤」としては、限定されるものではないが、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、TritonX-100、並びにポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65及びポリソルベート80等のポリソルベート等のアニオン性、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0048】
「安定剤」としては、限定されるものではないが、マンニトール、スクロース、トレハロース、アルブミンと並んで、プロテアーゼ及び/又はヌクレアーゼのアンタゴニストが挙げられる。
【0049】
本発明の文脈で使用することができる「生理学的緩衝液」としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウム溶液、脱塩水と並んで、限定されるものではないが、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、トリスバッファー(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPESバッファー([4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)又はMOPSバッファー(3-モルホリノ-1-プロパンスルホン酸)等の適切な有機又は無機の緩衝液が挙げられる。それぞれの緩衝液の選択は、一般に、所望の緩衝液のモル濃度に依存する。リン酸バッファーは、例えば、注射液及び輸液に適している。
【0050】
「有効量」又は「治療有効量」は、意図された目的を達成するのに十分な治療剤の量である。所与の治療剤の有効量は、薬剤の性質、投与経路、治療剤を受ける動物のサイズ及び種、並びに投与の目的等の要因によって変化する。個々の場合の有効量は、当該技術分野で確立された方法に従って当業者によって経験的に決定され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」、「治療」又は「治療法」は、以下の1つ以上を達成することを意味する:(a)障害の重症度を軽減すること、(b)治療中の障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の発症を制限又は予防すること、(c)治療中の障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の悪化を抑制すること、(d)以前に障害(複数の場合もある)を持っていた個体の障害(複数の場合もある)の再発を制限又は予防すること、及び(e)以前に障害(複数の場合もある)の兆候を示していた個体の症状の再発を制限又は予防すること。
【0052】
実施形態
以下で本発明の種々の態様をより詳細に規定する。そのように規定する各態様は、反対の内容が明示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示した任意の特徴を、好ましい又は有利であるとして示した任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合わせることができる。
【0053】
本発明の第1の態様では、本発明は、
(a)硬骨魚類のインバリアント鎖(INV)の膜近位ドメイン(MPD)の16個~27個の連続するアミノ酸を含む又はそれからなる硬骨魚類のINVの断片であって、該断片はT細胞応答エンハンサー活性を有し、該MPDは、
(i)NQRX1DIKSLEEQX2SX3LX4X5X6X7TX8GRSX9X10(配列番号001)
(ここで、
X1はG又はNであり、X2はH又はNであり、X3はG又はNであり、X4はN又はQであり、X5はE又はAであり、X6はQ又はEであり、X7はL又はMであり、X8はK又はRであり、X9はA又はVであり、X10はS又はAであり、
該断片は、好ましくは、配列番号3(POのMPD)と少なくとも60%同一である)、若しくは、
(ii)DQKQQIQZ1LQZ2Z3NQRZ4EKQZ5Z6Z7RZ8RZ9S(配列番号8)
(ここで、
Z1はG又はDであり、Z2はT又はAであり、Z3はT又はSであり、Z4はL又はMであり、Z5はM又はVであり、Z6はG又はSであり、Z7はQ又はLであり、Z8はP又はSであり、Z9はE又はVであり、
該断片は、好ましくは、配列番号10(BPのMPD)と少なくとも60%同一である)から選択されるアミノ酸配列を特徴とする、断片、及び任意に、1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
又は、
(b)配列番号2、配列番号5、配列番号9若しくは配列番号12から選択される全長硬骨魚類INV、若しくはT細胞応答エンハンサー活性を有するそのバリアントであって、該バリアントのMPDのアミノ酸配列が配列番号3(POのMPD)若しくは配列番号10(BPのMPD)と少なくとも60%同一であるバリアント、及び1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片、
を含む、ポリペプチドに関する。
【0054】
一般に、INVの断片は、そのT細胞抗原刺激効果を保持しながら、可能な限り短いことが望ましい。好ましくは、断片は、INVのMPD、好ましくは配列番号3(POのMPD)又は配列番号10(BPのMPD)によるMDPの16個~27個、17個~26個、18個~25個、19個~24個、20個~23個又は21個若しくは22個の連続アミノ酸を含み、より好ましくはそれからなる。
【0055】
本発明の第1の態様の選択肢(i)に記載の好ましい最小断片は、アミノ酸配列:DIKSLEEQX2SX3LX4X5X6X7(配列番号28)であり、X2~X7については上に示す意味を持つ。
【0056】
本発明の第1の態様の選択肢(i)に記載のより好ましい最小断片は、アミノ酸配列DIKSLEEQHSGLNEQL(配列番号4)又はDIKSLEEQNSNLQAEM(配列番号7)であり、最も好ましい最小断片は、アミノ酸配列DIKSLEEQHSGLNEQL(配列番号4)である。
【0057】
本発明の第1の態様の選択肢(ii)に記載の好ましい最小断片は、アミノ酸配列:QIQZ1LQZ2Z3NQRZ4EKQZ5(配列番号29)であり、Z1~Z5については上に示す意味を持つ。
【0058】
本発明の第1の態様の選択肢(ii)に記載のより好ましい最小断片は、アミノ酸配列QIQGLQTSNQRLEKQM(配列番号11)又はQIQDLQATNQRMEKQV(配列番号14)であり、最も好ましい最小断片は、アミノ酸配列QIQGLQTSNQRLEKQM(配列番号11)である。
【0059】
INVの断片は、MPDのN末端及び/又はC末端に追加の配列を含むことができるが、かかる配列は断片に含まれないことが好ましく、したがって、断片はMPDのそれぞれの一続きのアミノ酸からなることが好ましい。
【0060】
INVの断片がMPDのN末端及び/又はC末端に追加の配列を含む場合、断片がMPD全体、すなわち27個のアミノ酸を含むことが好ましい。断片は、TMDを含まないが、INVの追加のC末端アミノ酸を含むことが好ましい。好ましくは、これらのC末端アミノ酸は、MPDに直接連続している。
【0061】
MPDの配列は、好ましくは、配列番号003によるパラリクティス・オリベイシャス(Paralichthysolivaceus;ヒラメ)(PO)又は配列番号010によるボレオフタルムス・ペクチニロストリス(Boleophthalmus pectinirostris;ムツゴロウ)(BP)のMPD配列に基づく。好ましくは、断片は、MPDの16個~27個のアミノ酸を含むか、又はそれからなり、ここで、MPDは、配列番号3又は配列番号010に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%同一である。
【0062】
断片は、INVの追加のN末端及び/又はC末端アミノ酸配列を含み得る。したがって、INVの断片の全長は、16個~80個、17個~72個、18個~55個、19個~50個、20個~45個、21個~40個、22個~35個、23個~30個の連続するアミノ酸であることが好ましい。
【0063】
本発明の第1の態様のポリペプチドの好ましい実施形態では、ポリペプチドは、硬骨魚類のインバリアント鎖(INV)の膜近位ドメイン(MPD)の16個~27個の連続するアミノ酸を含むか、又はそれらからなる硬骨魚類のINVの断片を含み、該断片はT細胞応答エンハンサー活性を有し、MPDはアミノ酸配列DIKSLEEQX2SX3LX4X5X6X7(配列番号28)を特徴とし(ここで、X2はH又はNであり、X3はG又はNであり、X4はN又はQであり、X5はE又はAであり、X6はQ又はEであり、X7はL又はMである)、該断片は好ましくは、配列番号003と少なくとも60%同一であり、任意に、該ポリペプチドは1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片を含んでいる。
【0064】
本発明の第1の態様のポリペプチドの好ましい実施形態では、ポリペプチドは、硬骨魚類のインバリアント鎖(INV)の膜近位ドメイン(MPD)の16個~27個の連続するアミノ酸を含むか、又はそれらからなる硬骨魚類のINVの断片を含み、該断片はT細胞応答エンハンサー活性を有し、MPDはアミノ酸配列QIQZ1LQZ2Z3NQRZ4EKQZ5(配列番号29)を特徴とし(ここで、Z1はG又はDであり、Z2はT又はAであり、Z3はT又はSであり、Z4はL又はMであり、Z5はM又はVである)、該断片は好ましくは、配列番号10と少なくとも60%同一であり、任意に、該ポリペプチドは1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片を含んでいる。
【0065】
本発明の第1の態様のポリペプチドの好ましい実施形態では、
(a)請求項1の選択肢(a)(i)に記載のMPDのアミノ酸配列が、配列番号3(MPD PO)及び配列番号6(MPD Z1)のいずれか1つである、
(b)請求項1の選択肢(a)(ii)に記載のMPDのアミノ酸配列が、配列番号10(MPD BP)及び配列番号13(MPD Z2)のいずれか1つである、及び/又は、
(c)請求項1の選択肢(b)に記載の硬骨魚類インバリアント鎖のアミノ酸配列が、配列番号2及び配列番号9のいずれか1つである。
【0066】
断片がINVのMPDの16個~27個のアミノ酸からなる場合、好ましい断片は、配列番号3、配列番号6、配列番号10及び配列番号13によるINVのMPDの16個~27個、17個~26個、18個~25個、19個~24個、20個~23個、21個又は22個の連続アミノ酸の長さを有する。
【0067】
上に概説される各場合において、断片又はバリアントはT細胞応答エンハンサー活性を有する。T細胞応答エンハンサー活性は、当該技術分野で知られているように、又は以下の実験に示されているように測定することができる。T細胞応答エンハンサー活性は、同じ抗原又は一連の抗原に結合した場合、配列番号004によるINV断片のT細胞応答エンハンサー活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%であることが好ましい。
【0068】
本発明の第1の態様のポリペプチドの好ましい実施形態では、断片が、MPDの少なくとも16個~27個のN末端アミノ酸、及びMPDのすぐN末端の硬骨魚類のINVの膜貫通ドメイン(TMD)の1個~26個の連続アミノ酸からなり、該硬骨魚類のINVのTMDが、好ましくは、次のアミノ酸配列(配列番号15)
AB1KB2B3GB4TB5LB6CB7LB8B9B10QB11B12B13B14YB15B16B17
(ここで、
B1はV、L又はYであり、B2はV又はIであり、B3はV又はAであり、B4はL、I又はFであり、B5はV、T又はLであり、B6はA又はVであり、B7はV又はLであり、B8はV又はIであり、B9はM、S又はAであり、B10はS、A又はGであり、B11はA又はVであり、B12はM又はFであり、B13はI又はTであり、B14はI又はAであり、B15はF又はMであり、B16はL、M又はVであり、B17はV、F又はLである)
を特徴とする。
【0069】
断片がINVの追加のN末端及び/又はC末端アミノ酸配列を含む場合、INVの断片の全長は、28個~72個、30個~65個又は35個~46個の連続するアミノ酸であることが好ましい。
【0070】
驚くべきことに、本発明者らによって、2つ以上の抗原、好ましくはネオ抗原に対する強いT細胞応答が、本発明の第1の態様の選択肢(a)のINV断片又は本発明の第1の態様の選択肢(b)のINVの2つ以上の抗原及び/又はその抗原性断片への融合によって誘導され得ることが見出された。これにより、複数の抗原に対するT細胞応答の同時誘導が可能になる。そのため、本発明の第1の態様の選択肢(a)及び本発明の第1の態様の選択肢(b)の両方に関して、ポリペプチドは複数の抗原及び/又はその抗原性断片を含むことが好ましい。例えば、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる抗原及び/又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる抗原及び/又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる抗原及び/又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも100の異なる抗原及び/又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる抗原及び/又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる抗原及び/又はその抗原性断片を含むことが好ましい。
【0071】
1つのポリペプチド内に種々の抗原の最大数を収容するため、ポリペプチドが抗原の抗原性断片を含むことが特に好ましい。
【0072】
抗原は、それぞれの治療用途に応じて選択される。増殖性疾患に対する治療的又は予防的ワクチン接種が望まれる場合、抗原は、癌特異的抗原又は癌特異的ネオ抗原から選択される。特に癌ワクチン接種に関連して上で述べたように、第1の態様のポリペプチドは2つ以上の異なる抗原を含むことが好ましい。ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも100の異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる癌特異的抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。或いは、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは、少なくとも100の異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる癌特異的ネオ抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。或いは、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは、少なくとも100の異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる癌特異的抗原又はネオ抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。
【0073】
或いは、抗原は、ウイルスタンパク質若しくはその抗原性断片、細菌タンパク質若しくはその抗原性断片、又は真菌タンパク質若しくはその抗原性断片である。
【0074】
一般に、ウイルス性、細菌性又は真菌性の感染症に対する予防的又は治療的ワクチン接種は、有効となるのに増殖性疾患の治療法におけるワクチン接種ほど多くの異なる抗原を必要としない。それにもかかわらず、特にコートタンパク質において、大きなエピトープ多様性を有する、例えばHIVのような幾つかのウイルスが存在する。幅広い免疫応答を誘発するために、複数の抗原を含めることができる。そのため、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なるウイルス抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なるウイルス抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なるウイルス抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも100の異なるウイルス抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なるウイルス抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なるウイルス抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。抗原を、同じウイルスの異なる株から、及び/又は異なるウイルス種から選択することができる。後者の場合、ワクチンは様々な異なるウイルス種に対する免疫化を可能にする。
【0075】
或いは、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる細菌抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる細菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる細菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも100の異なる細菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる細菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる細菌抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。
【0076】
或いは、ポリペプチドは、少なくとも5つの異なる真菌抗原又はその抗原性断片、より好ましくは少なくとも20の異なる真菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも50の異なる真菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも100の異なる真菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも200の異なる真菌抗原又はその抗原性断片、更により好ましくは少なくとも300の異なる真菌抗原又はその抗原性断片を含むことが好ましい。
【0077】
上記の実施形態の全てにおいて、抗原はT細胞抗原であることが好ましい。T細胞抗原は、MHCによって提示され、T細胞応答を誘発する抗原である。
【0078】
好ましくは、抗原若しくは抗原のそれぞれ、又はその抗原性断片は、8個~100個のアミノ酸、より好ましくは8個~50個、より好ましくは8個~30個のアミノ酸の長さを有する。
【0079】
本発明の第1の態様のポリペプチドの好ましい実施形態では、1つ以上の抗原及び/又は1つ以上のその抗原性断片は、本発明の第1の態様の選択肢(a)に記載のINVの断片、又は本発明の第1の態様の選択肢(b)に記載の全長INVのC末端に位置する。本発明の第1の態様の選択肢(a)又は(b)によれば、抗原及び/又はその抗原性断片は、INVのすぐC末端にあることが特に好ましい。
【0080】
本発明のポリペプチドは、ワクチン接種される患者の細胞内で産生されることが好ましい。細胞内発現はMHC提示、ひいてはT細胞応答の刺激の前提条件である。そのため、第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAである。RNAは、コードされたポリペプチドの翻訳を直接誘発するために使用されることが好ましい。第1の態様のポリペプチドをコードするDNAは、典型的には、本発明のポリペプチドをコードするmRNAの転写を指示する発現カセットに挿入される。しかしながら、ポリヌクレオチドがベクターに含まれ、ベクターがRNAウイルスである場合、ポリヌクレオチドはRNAであってもよい。直接適用に好ましいRNAは自己増幅RNA(SAM)である。最も好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。
【0081】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、発現制御配列に作動可能に連結されている。
【0082】
患者に送達される異なる抗原又はその抗原性断片の数が非常に多く、INV及び全ての抗原又はその抗原性断片の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが選択されたベクターに収容することができない場合、2つ以上のベクターが使用される。したがって、第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による異なるポリペプチドをコードする本発明の第2の態様によるポリヌクレオチドを各々含む2つ以上の異なるベクターのコレクションに関する。
【0083】
第3の態様のベクター又は第4の態様のベクターのコレクションにおいて、ベクターが、それぞれの場合において、プラスミド;コスミド;リポソーム粒子、ウイルスベクター又はウイルス様粒子;好ましくは、アルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、サル又はヒトのサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターからなる群から独立して選択される。コレクションの各メンバーが異なる抗原又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、したがって通常同時に投与されるベクターのコレクションは、同じベクタータイプ、例えばアデノウイルス由来ベクターを使用することが好ましい。
【0084】
最も好ましいベクターは、アデノウイルスベクター、特にヒト又は非ヒト大型類人猿に由来するアデノウイルスベクターである。アデノウイルスが由来する好ましい大型類人猿は、チンパンジー(パン(Pan))、ゴリラ(ゴリラ(Gorilla))及びオランウータン(ポンゴ(Pongo))、好ましくはボノボ(パン・パニスカス(Panpaniscus))及びナミチンパンジー(パン・トログロダイテス(Pan troglodytes))である。通常、天然の非ヒト大型類人猿アデノウイルスは、それぞれの大型類人猿の糞便サンプルから単離される。最も好ましいベクターは、hAd5、hAd11、hAd26、hAd35、hAd49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd55、ChAd63、ChAd73、ChAd82、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPanAd3のベクターに基づく非複製アデノウイルスベクター、又は複製能力のあるAd4及びAd7のベクターである。ヒトアデノウイルスであるhAd4、hAd5、hAd7、hAd11、hAd26、hAd35及びhAd49は当該技術分野でよく知られている。天然のChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63及びChAd82に基づくベクターは、国際公開第2005/071093号に詳述されている。天然のPanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147に基づくベクターは、国際公開第2010/086189号に詳述されている。
【0085】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様のポリヌクレオチド、又は本発明の第3の態様のベクター若しくは本発明の第4の態様のベクターのコレクションと、薬学的に許容可能な賦形剤と、任意に1つ以上のアジュバントとを含む医薬組成物に関する。
【0086】
本発明者らは、少なくとも1つの免疫調節物質、例えば、チェックポイント分子のモジュレーター(MCM)の投与が、抗原又はその断片に対するT細胞応答の強度を更に改善することを見出した。そのため、第5の態様の好ましい実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの免疫調節物質、例えばMCM、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードするポリヌクレオチドを含むベクター若しくはリポソーム粒子を含む。
【0087】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様の医薬組成物と、別々に包装された少なくとも1つの免疫調節物質、例えばMCM、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードするポリヌクレオチドを含むベクターとを備えたパーツのキットに関する。
【0088】
第5の態様又は第6の態様の好ましい実施形態では、免疫調節物質はMCMであり、以下からなる群から選択される:
(a)腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバー、好ましくはCD27(例えば、バルリルマブ(Varlilumab))、CD40(例えば、CP-870,893)、OX40(例えば、INCAGN01949又はMEDI0562)、GITR(例えば、MEDI1873)又はCD137(例えば、ウトミルマブ(Utomilumab))のアゴニスト、
(b)PD-1(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)、CD274(例えば、アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)、A2AR(例えば、プレラデナント)、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ又はAGEN1884)、IDO、KIR、LAG3、TIM-3(例えば、CA-327又はRMT3-23)若しくはVISTA(例えば、CA-170)のアンタゴニスト、又はB7-CD28スーパーファミリーメンバー、好ましくはCD28若しくはICOSのアンタゴニスト、又はそれらのリガンドのアンタゴニスト。
【0089】
他の好ましい免疫調節物質は、T細胞増殖因子として作用するサイトカイン、特にIL-2、IL-12又はIL-15である。
【0090】
第7の態様では、本発明は、増殖性疾患、好ましくは癌、ウイルス性疾患、真菌性疾患又は細菌性疾患の予防又は治療に使用される、本発明の第1の態様によるポリペプチド、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクション、又は本発明の第5の態様による医薬組成物、又は本発明の第6の態様による、かかる医薬組成物を備えるキットに関する。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様によるポリペプチド、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクション、又は本発明の第5の態様による医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキットにおいて、癌が、唇、口腔、咽頭、消化器、呼吸器、胸腔内器官、骨、関節軟骨、皮膚、中皮組織、軟組織、乳房、女性生殖器、男性生殖器、尿路、脳及び中枢神経系の他の部分、甲状腺、内分泌腺、リンパ組織、並びに造血組織の悪性新生物からなる群から選択される。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様によるポリペプチド、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクション、又は本発明の第5の態様による医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキットにおいて、少なくとも1つの免疫調節物質、例えばMCM、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、又は免疫調節物質、例えばMCMをコードするポリヌクレオチドを含むベクター若しくはリポソーム粒子は、本発明の第1の態様によるポリペプチド、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクション、又は本発明の第5の態様による医薬組成物若しくはかかる医薬組成物を備えるキットの投与前に、投与と同時に又は投与後に投与される。
【0093】
本発明の第7の態様の好ましい実施形態では、チェックポイント分子のモジュレーターの投与はワクチンの投与の開始前に開始されるか、又はチェックポイント阻害剤の投与はワクチンの投与の開始後に開始されるか、又はチェックポイント阻害剤の投与はワクチンの投与開始と同時に開始される。
【0094】
本発明の第7の態様の好ましい実施形態では、ワクチン接種レジメンは、2つの異なるウイルスベクターによる異種プライムブーストである。好ましい組み合わせは、プライミング用の大型類人猿由来のアデノウイルスベクターと、存在を増強する(boosting)ためのポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターである。好ましくは、これらは、少なくとも1週間、好ましくは6週間の間隔で順次投与される。
【0095】
第8の態様では、本発明は、医薬品として使用される、本発明の第1の態様によるポリペプチド、本発明の第2の態様によるポリヌクレオチド、又は本発明の第3若しくは第4の態様によるベクター若しくはベクターのコレクションに関する。
【実施例0096】
硬骨魚類インバリアント鎖及びその断片は非免疫原性癌抗原を免疫原性抗原に変える
CT26マウス腫瘍細胞株に由来する5つの癌ネオ抗原(表1、配列番号16~配列番号20)をコードする大型類人猿アデノベクターの免疫原性をBalBC近交系マウスで評価した。頭尾結合した5つのみの癌ネオ抗原(ペンタ)に加えて、開始Met及びC末端HAタグをコードするベクターGAd-penta(配列番号21)は、全長硬骨魚類インバリアント鎖配列(BP_INV FL(配列番号9)又はPO_INV FL(配列番号2))又はその断片(断片BP_FRAG_A(配列番号10)若しくはBP_FRAG_B(配列番号11)、又はPO_FRAG_A(配列番号3)若しくはPO_FRAG_B(配列番号4))がペンタ抗原のN末端に付加(配列番号22~配列番号27)されない限り、免疫原性ではないことがわかった。マウスを、10
8個のウイルス粒子(vp)の用量でGAdの単回の筋肉内免疫化によって免疫した。脾細胞を免疫化の2週間後に収集し、5種のネオ抗原のアミノ酸配列に対応する合成ペプチドの存在下でT細胞を刺激することによりIFN-γELISpotによって試験した。陰性対照培養は、培養培地単独(ただし、ペプチドの調製に使用される溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む)で刺激された細胞を含んでいた。免疫応答(脾細胞100万個あたりのIFN-γを産生するT細胞の数)を
図1に示す。(i)少なくとも20個の特異的スポット/脾細胞100万個が検出された場合、(ii)陽性ウェルで見られたスポットの数が、モック(mock)対照ウェル(DMSO)で検出された数の3倍を超えた場合、応答を陽性と見なした。
図1に示すように、BP_INVFL若しくはPO_INV FL、又はそれらの断片であるFRAG_A若しくはFRAG_Bのペンタ抗原のN末端への結合により、非免疫原性ワクチンコンストラクトGad-Pentaが高度に免疫原性のコンストラクトに変換され、ワクチン接種された動物の100%が陽性の免疫反応を示した。
【0097】
表1:ペンタ抗原:ペンタ抗原の組成。CT26ネオ抗原は、示されている順序でアッセンブルしたペンタ抗原に存在する。変異したアミノ酸は、各ネオ抗原について太字で下線が引かれている。
【表1】
【0098】
材料及び方法
マウスの免疫化
6週齢の雌性BalBCマウスを、Envigo laboratoriesから購入した。マウスは全て、片側に108vp用量のウイルスベクター50 μl(総量100 μl)を注射することにより、筋肉内(大腿四頭筋)にワクチン接種を行った。
【0099】
IFNγ ELISpot
IFNγ産生T細胞を、ワクチン接種の2週間後にELISPOTアッセイによって評価した。MSIP S4510プレート(Millipore)を10μg/mlの抗マウスIFNγ(オランダ国ユトレヒトのU-CyTech)により4℃で一晩コーティングした。洗浄及びブロッキング後、マウス脾細胞を、2つの異なる密度(1ウェルあたり2.5×10
5細胞及び5×10
5細胞)で、二連でプレーティングし、各ペプチドの最終濃度2μg/mlで抗原ワクチン配列に対応する25merの合成ペプチドのプールを用いて一晩刺激した(
図1)。ペプチド希釈剤DMSO(イタリア国ミラノのSigma-Aldrich)及びConA(イタリア国ミラノSigma-Aldrich)をそれぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。プレートを、ビオチン化抗マウスIFNγ抗体(オランダ国ユトレヒトのU-CyTech)、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ複合体(conjugated)(ニュージャージー州のBDBiosciences)、最後にBCIP/NBT 1ステップ溶液(イリノイ州ロックフォードのThermo Fisher Scientific)とのその後のインキュベーションによって発色させた。プレートを取得し、CTL自動プレートリーダーで分析した。以下の全ての条件が満たされた場合にELISpotの応答を陽性と見なした:Con-Aで刺激されたウェルにIFNγ産生が存在すること;少なくとも20個の特異的スポット/脾細胞100万個;陽性ウェルで見られたスポットの数がモック対照ウェル(DMSO)で検出される数の3倍であること;及び細胞希釈に伴う反応の低下。ELISpotデータを、脾細胞100万個あたりのIFNγスポット形成細胞(SFC)として表した。