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  • 特開-クリンチングスタッドボルト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005988
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】クリンチングスタッドボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20240110BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16B35/00 K
F16B35/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106508
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 聡
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 慎悟
(57)【要約】
【課題】取付対象板材に固定されたときの品質を向上できるクリンチングスタッドボルトを提供する。
【解決手段】頭部1と、頭部の座面から延出されたねじ軸部2と、座面11から螺進方向下手側に向けて膨出するように形成された回り止め部3と、ねじ軸部のうち、回り止め部に対して螺進方向下手側に隣り合う位置において、ねじ軸部の径方向内側に向けて環状に凹入された環状溝部21と、ねじ軸部のうち、環状溝部に対して螺進方向下手側に隣り合う位置において、ねじ軸部の径方向外側に向けて環状に突出する環状突部22とを備え、座面と環状突部との間に、取付対象板材が挟まれるように構成され、回り止め部に、前記螺進方向上手側に向けて凹入された凹入部32が形成されているとともに、当該回り止め部の外周縁に形成された立設部31Abは、テーパ状を成すクリンチングスタッドボルトによる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象板材に抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されるクリンチングスタッドボルトであって、
頭部と、
前記頭部の座面から延出されたねじ軸部と、
前記座面から前記螺進方向下手側に向けて膨出するように形成された回り止め部と、
前記ねじ軸部のうち、前記回り止め部に対して前記螺進方向下手側に隣り合う位置において、前記ねじ軸部の径方向内側に向けて環状に凹入された環状溝部と、
前記ねじ軸部のうち、前記環状溝部に対して前記螺進方向下手側に隣り合う位置において、前記ねじ軸部の径方向外側に向けて環状に突出する環状突部と、を備え、
前記座面と前記環状突部との間に、前記取付対象板材が挟まれるように構成され、
前記回り止め部に、前記螺進方向上手側に向けて凹入された凹入部が形成されているとともに、当該回り止め部の外周縁に形成された立設部は、テーパ状を成すことを特徴とするクリンチングスタッドボルト。
【請求項2】
前記凹入部は、前記ねじ軸部を取り囲むように分割成形されていることを特徴とする請求項1に記載のクリンチングスタッドボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付対象板材に抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されるクリンチングスタッドボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板材(取付対象板材)の取付孔に圧入されることにより、抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されるクリンチングスタッドボルト(クリンチスタッド)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このクリンチングスタッドボルトは、頭部と、頭部の座面から延出されたねじ軸部を備えている。金属板材に別部材を固定する際、この別部材の貫通孔にねじ軸部を挿入し、ねじ軸部の螺進方向とは反対方向にナットが移動するように螺合させて、ナットと金属板材との間に別部材を挟み込んで固定する。
【0003】
特許文献1に記載のクリンチングスタッドボルトは、座面からねじ軸部の螺進方向下手側に向けて膨出する非真円形状の回り止め部(文献では回り止め突起)と、ねじ軸部の径方向内側に向けて環状に凹入された環状溝部(文献では保持溝)と、環状溝部に対して螺進方向下手側に隣り合う位置において環状に突出する環状突部(文献では保持リング)と、を備えている。特許文献1に記載の技術は、金属板材の取付孔の周囲に、頭部に対向する側に突出した突出部を設けることにより、金属板材にクリンチングスタッドボルトを圧入する際、突出部が回り止め突起に押し潰されて、保持溝に多量の金属を押し込んで抜け荷重及び空転トルクを高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-141999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のクリンチングスタッドボルトは、回り止め突起により押し潰されて流動する金属が、頭部とは反対側に位置する取付孔の周囲から保持リングよりも径方向外側まではみ出してバリになり易い。また、回り止め突起により押し潰された金属が、回り止め突起の径方向外側まで流動して変形を及ぼし、金属板材に反りが発生し易い。その結果、金属板材に別部材を固定する際、バリにより別部材が傷付けられる、バリが異物となって周囲に飛散する、反った金属板材が周囲の部品に干渉する等の不都合が発生し、製品の品質が低下する。
【0006】
そこで、取付対象板材に固定されたときの品質を向上できるクリンチングスタッドボルトが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
取付対象板材に抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されるクリンチングスタッドボルトであって、頭部と、前記頭部の座面から延出されたねじ軸部と、前記座面から前記螺進方向下手側に向けて膨出するように形成された回り止め部と、前記ねじ軸部のうち、前記回り止め部に対して前記螺進方向下手側に隣り合う位置において、前記ねじ軸部の径方向内側に向けて環状に凹入された環状溝部と、前記ねじ軸部のうち、前記環状溝部に対して前記螺進方向下手側に隣り合う位置において、前記ねじ軸部の径方向外側に向けて環状に突出する環状突部と、を備え、前記座面と前記環状突部との間に、前記取付対象板材が挟まれるように構成され、前記回り止め部に、前記螺進方向上手側に向けて凹入された凹入部が形成されているとともに、当該回り止め部の外周縁に形成された立設部は、テーパ状を成すクリンチングスタッドボルトによる。
【0008】
なお、前記凹入部は、前記ねじ軸部を取り囲むように分割成形されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリンチングスタッドボルトによれば、回り止め部の立設部が、テーパ状に形成されているので、凹入部の容積が大きくなるとともに、回り止め部の高さを低く設定できるので、取付対象板材が薄い板のものに好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】クリンチングスタッドボルトの底面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】クリンチングスタッドボルトを取付対象板材に圧入する前の正面視断面図である。
図4】クリンチングスタッドボルトを取付対象板材に圧入した後の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るクリンチングスタッドボルトの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、取付対象板材としての金属板材に圧入されるクリンチングスタッドボルトを一例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0012】
図1図2に示すように、クリンチングスタッドボルトBは、円周方向に沿う一対の縁部分を丸めた扁平円柱状の頭部1と、頭部1の座面11から延出されたねじ軸部2とを備えている。ねじ軸部2の大部分に雄ねじ部2Aが形成されており、ねじ軸部2の螺進方向Xは、ねじ軸部2の延出方向と一致している。螺進方向Xとは、ねじ軸部2の雄ねじ部2Aを不図示の雌ねじに螺合した際、雌ねじに対してクリンチングスタッドボルトBが前進する方向を意味する。以下、ねじ軸部2の先端側を螺進方向下手側X1とし、ねじ軸部2の基端側(頭部1とねじ軸部2との接続側)を螺進方向上手側X2として説明する。
【0013】
図3図4に示すように、クリンチングスタッドボルトBは、金属板材Tに抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されることにより、ねじ軸部2の雄ねじ部2Aが金属板材Tから突出しており、治具Gを撤去することにより外部に露出する。クリンチングスタッドボルトBは、金属板材Tよりも剛性の高い低炭素鋼等の金属材料で形成されており、油圧プレスPによりクリンチングスタッドボルトBが金属板材Tに圧入され、金属板材Tが押し潰される。その結果、頭部1の座面11と、後述する環状突部22との間に、金属板材Tが挟まれる。
【0014】
図1図2に示すように、頭部1の座面11には螺進方向下手側X1に向けて膨出する回り止め部3がねじ軸部2の周囲に等間隔に6カ所形成されている。また、クリンチングスタッドボルトBは、ねじ軸部2の径方向内側に向けて円環状に凹入された環状溝部21と、ねじ軸部2の径方向外側に向けて円環状に突出する環状突部22とを備えている。環状溝部21は、ねじ軸部2のうち、回り止め部3に対して螺進方向下手側X1に隣り合う位置となっており、環状突部22は、ねじ軸部2のうち、環状溝部21に対して螺進方向下手側X1に隣り合う位置となっている。つまり、回り止め部3、環状溝部21及び環状突部22が、螺進方向Xに沿って順に配置されている。
【0015】
環状溝部21の溝幅は、環状突部22の形状や金属板材Tの延性等に応じて設定されており、本実施形態では金属板材Tの板厚と同等に設定されている。環状溝部21と環状突部22とはR形状で連続しており、環状突部22と雄ねじ部2Aとはテーパー形状で連続している。本実施形態における環状溝部21は、ねじ軸部2に形成された雄ねじ部2Aの外径よりも小さい外径を有しており、環状突部22は、ねじ軸部2に形成された雄ねじ部2Aの外径よりも大きい外径を有している。また、本実施形態における環状突部22の直径は、金属板材Tの貫通孔Taの直径よりも小さく設定されている。
【0016】
図2に示すように、回り止め部3には、螺進方向上手側X2に向けて凹入された凹入部32が形成されている。この凹入部32により、回り止め部3の外側縁部31には、螺進方向下手側X1に対して僅かに傾斜した方向に向かって突出する凸状部31Aが形成されている。凹入部32及び環状溝部21に金属板材Tの金属が入り込むことにより、クリンチングスタッドボルトBが金属板材Tに対して抜け止め状態かつ回り止め状態となる。金属板材Tの金属を収容する凹入部32及び環状溝部21の容積は、凸状部31Aが押し潰して塑性変形することにより流動する金属板材Tの体積と延性等に応じて設定されている。凹入部32及び凸状部31Aは、断面形状が傾斜した傾斜部30を有しており、この傾斜部30が凹入部32と凸状部31Aとを接続する部位となっている。また、凸状部31Aは、ねじ軸部2とは反対側に、断面形状が傾斜部30よりも急勾配の傾斜状に成形された立設部31Abを有している。
【0017】
凹入部32は、ねじ軸部2に近いほど深くなるように傾斜した傾斜部30を有しており、傾斜部30の内端から座面11と同等の高さで平行に延びる断面直線状の直線状部32Aを有している。
【0018】
続いて、図3及び図4を用いて、本実施形態に係るクリンチングスタッドボルトBを金属板材Tに圧入したときの作用効果を説明する。金属板材Tは、鋼板等の金属製の薄板であり、環状突部22の直径よりも大きく、かつ、回り止め部3の外径よりも小さい貫通孔Taが予め形成されており、油圧プレスPの押圧力に耐え得る治具Gに支持されている。
【0019】
図3に示すように、金属板材Tに圧入する前のクリンチングスタッドボルトBは、回り止め部3の最突出端31Aaを貫通孔Taの周囲に当接させると共に、頭部1に油圧プレスPを当接させている。このとき、環状突部22が貫通孔Taの内部に収容されており、ねじ軸部2の雄ねじ部2Aが治具G側に突出している。
【0020】
次いで、図4に示すように、油圧プレスPにより頭部1を押圧すると、回り止め部3の凸状部31Aが金属板材Tに喰い込みながらクリンチングスタッドボルトBが下方(螺進方向下手側X1)に移動し、座面11が金属板材Tに当接するまで圧入される。このとき、凸状部31Aの体積に相当する押し潰された金属板材Tの金属が、傾斜部30に沿って径方向内側に円滑に流動し、凹入部32及び環状溝部21に収容される。その結果、金属板材Tに固定されたときのクリンチングスタッドボルトBは、全体的に美観に優れたものとなる。また、クリンチングスタッドボルトBは、回り止め部3の立設部31Abが、傾斜状に形成されているので、凹入部32の容積が大きくなるとともに、回り止め部3の高さを低く設定できるので、取付対象板材Tが薄い板のものに好適となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、取付対象板材に抜け止め状態かつ回り止め状態で固定されるクリンチングスタッドボルトに利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 :頭部
2 :ねじ軸部
3 :回り止め部
11 :座面
21 :環状溝部
22 :環状突部
30 :傾斜部
31 :外側縁部
31A :凸状部
31Ab :立設部
32 :凹入部
32A :直線状部
B :クリンチングスタッドボルト
T :金属板材(取付対象板材)
X :螺進方向
X1 :螺進方向下手側
X2 :螺進方向上手側
図1
図2
図3
図4