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特開2024-59888単量体モノクローナル抗体を精製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059888
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】単量体モノクローナル抗体を精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20240423BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20240423BHJP
   C07K 16/06 20060101ALN20240423BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C07K1/18 ZNA
C07K1/22
C07K1/20
C07K16/24
C07K16/06
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028517
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020552186の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】62/649,976
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】タン・ジジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェク・エハンパラナタン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ユアンリ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ティ・レワンドウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンジアン・リ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単量体モノクローナル抗体および1つ以上の夾雑物を含む混合物から、単量体モノクローナル抗体を精製する方法を提供する。
【解決手段】以下の工程:a)混合物を、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)マトリクスに付して、該単量体モノクローナル抗体がCEXマトリックスに結合する工程;b)CEXマトリックスを、約7~約7.8pHの洗浄溶液と接触させる工程;およびc)単量体モノクローナル抗体を、CEXマトリックスから溶出液に溶出させることにより、単量体モノクローナル抗体を精製する工程を特徴とする方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体モノクローナル抗体および1以上の夾雑物を含む混合物から単量体モノクローナル抗体を精製する方法であって、
a)混合物を、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)マトリクスに付し、該単量体モノクローナル抗体をCEXマトリクスに結合させる工程;
b)CEXマトリックスを、約7~約7.8pHの洗浄溶液と接触させる工程;
c)単量体モノクローナル抗体をCEXマトリックスから溶出液に溶出させることにより、単量体モノクローナル抗体を精製する工程を特徴とする、方法。
【請求項2】
夾雑物が、モノクローナル抗体の凝集体、宿主細胞タンパク質、宿主細胞代謝物、宿主細胞構成タンパク質、核酸、エンドトキシン、ウイルス、生成物関連夾雑物、脂質、培地添加物および培地派生物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノクローナル抗体の凝集体が、二量体、多量体および中間凝集体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
混合物が、アフィニティークロマトグラフィーにより得られる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
溶出液が、第2のクロマトグラフィー工程に供されない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
溶出液が、第2のクロマトグラフィー工程に更に供される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2のクロマトグラフィーが、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびミックスモードクロマトグラフィーである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
洗浄溶液のpHが、約7.2~約7.6である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
洗浄緩衝液の塩濃度が、約20~40mMである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
洗浄緩衝液の塩濃度が、約24~30mMである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
中間凝集体が、工程(b)において除去される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
混合物が、回収された細胞培養液、細胞培養上清および順化細胞培養上清、細胞溶解物および清澄化バルクから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
細胞培養物が、哺乳動物の細胞培養物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
細胞培養物が、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞培養物である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
モノクローナル抗体が、抗IP10抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
抗IP10モノクローナル抗体が、配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を各々含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗IP10モノクローナル抗体が、配列番号:4および9の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を各々含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
抗IP10モノクローナル抗体が、配列番号:5および10の完全長重鎖アミノ酸配列および完全長軽鎖アミノ酸配列を各々含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
単量体モノクローナル抗体が、少なくとも90%の単量体純度に精製される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
単量体モノクローナル抗体が、少なくとも95%の単量体純度に精製される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
単量体モノクローナル抗体が、少なくとも99%の単量体純度に精製される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年3月29日提出の米国仮出願番号第62/649,976号を請求するものであり、これらの全てが本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タンパク質の大規模かつ経済的な精製は、バイオ医薬品産業にとってますます重要な問題となっている。治療用タンパク質は、一般的には、タンパク質をコードする遺伝子を含む組換えプラスミドから目的のタンパク質を発現するよう設計された原核生物または真核生物の細胞株を用いて産生される。細胞への供給成分、細胞副生成物およびタンパク質凝集体の混合物から目的のタンパク質を、適切な純度、例えば、ヒト治療薬として使用するのに充分な純度で単離することは、生物製剤製造業者にとって困難な課題となっている。
【0003】
従って、抗体のようなタンパク質系治療薬の大規模処理を迅速に行うために使用できる別のタンパク質精製方法が、当分野で必要とされている。
【0004】
(本発明の要約)
ある実施態様において、本発明は、目的のタンパク質および1以上の夾雑物を含む混合物から、目的の単量体タンパク質を精製する方法を提供する。
【0005】
ある特定の実施態様において、本発明は、単量体モノクローナル抗体(例えば、抗IP10モノクローナル抗体)を、単量体モノクローナル抗体および1以上の夾雑物の混合物から精製する方法を提供するものであって、当該方法は、下記の工程:a)混合物を、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)マトリクスに付し、該単量体モノクローナル抗体を、CEXマトリクスに結合させる工程;b)CEXマトリックスを約7~約7.8のpHの洗浄溶液と接触させる工程;c)単量体モノクローナル抗体をCEXマトリックスから溶出液中に溶出させることにより、単量体モノクローナル抗体を精製する工程を特徴とする。例示としては、夾雑物は、モノクローナル抗体の凝集体、宿主細胞タンパク質、宿主細胞代謝物、宿主細胞構成タンパク質、核酸、エンドトキシン、ウイルス、生成物関連夾雑物、脂質、培地添加物および培地派生物から選択される。例えば、抗IP10モノクローナル抗体の凝集体は、二量体、多量体および中間凝集体を含む。所望により、中間凝集体は、工程(b)において除かれる。
【0006】
ある態様において、混合物は、回収した細胞培養液、細胞培養上清および順化細胞培養上清、細胞溶解物および清澄化バルク(clarified bulk)から選択される。例えば、細胞培養物は、哺乳動物の細胞培養物(例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞培養物)である。
【0007】
ある態様において、本発明の方法の混合物は、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)により得られる。所望により、CEX工程からの溶出液は、第2のクロマトグラフィー工程に付さない。所望により、CEX工程からの溶出液は、第2のクロマトグラフィー工程、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびミックスモードクロマトグラフィーに更に付される。
【0008】
ある態様において、洗浄溶液のpHは、約7.2~約7.6(例えば、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6)である。所望により、洗浄緩衝液の塩濃度は、約20~40mM、例えば約24~30mMである。
【0009】
ある態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含む。ある態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含む。例示としては、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3の配列ならびに各々配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む。例示としては、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:4および9の重鎖可変領域の配列および軽鎖可変領域の配列を含む。例示としては、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:5および10の完全長重鎖アミノ酸配列および完全長軽鎖アミノ酸配列を各々含む。
【0010】
ある特定の実施態様において、単量体抗IP10モノクローナル抗体は、少なくとも90%の単量体純度、所望により少なくとも95%の単量体純度または所望により少なくとも99%の単量体純度まで精製される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、抗IP10mAbCEX塩グラジエント(50mM アセテート中で0mM~300mM NaCl, pH5.5)を示す。
図2図2は、抗IP10mAbCEX:ロード条件(50mMアセテート, pH5.5)、溶出条件(50mMアセテート、100mM NaCl, pH5.5)を示す。高分子凝集体と二量体は正常に除去された。しかし、中間凝集体は、溶出プール中にも同レベルで残存しており、中間体種と単量体の共溶出を示唆していた。
図3図3は、MEPハイパーセルクロマトグラフィー後の抗IP10mAbSECプロファイルを示す。
図4図4は、prepSECカラムを使用して分画された中間体種(点線)および出発物質(実線)を示す。
図5】非還元条件(A)および還元条件(B)下での中間体種および単量体についてのキャピラリー電気泳動のオーバーレイを示す。
図6-1】図6は、WCX-10 HPLCカラムとHICブチルカラム上の中間体種、単量体および二量体を示す。A-WCX-10カラム、ランニング緩衝液条件pH6.0、左から右へピーク:単量体、中間体、二量体;B-WCX-10カラム、ランニング緩衝液条件pH7.0、左から右へのピーク:中間体、単量体、二量体;C-HICブチルカラム、左から右へのピーク:中間体、単量体、二量体。
図6-2】同上。
図7図7は、中間体種と単量体iCEプロファイルを示す(黒線-単量体;赤線-中間体種)。
図8図8は、ESI/MSクロマトグラムを示す。
図9図9は、ESI/MSクロマトグラムを示す。
図10図10は、緩衝液A(40mMリン酸塩、pH5.5)および緩衝液B(35mMリン酸塩、pH8.5)を使用したCEX pHグラジエントを示す。
図11図11は、pHグラジエント溶出を用いた種の割合と画分を示す。
図12図12は、pHグラジエントおよび塩グラジエントを用いた全ての累積種と全ての累積質量を各々示す。
図13図13は、様々な塩濃度(20、25、30および35mMリン酸塩)におけるpHグラジエント(pH5.5→8.5)を示す。
図14図14は、様々な塩濃度(20、25、30および35mMリン酸塩)におけるpHグラジエント(pH5.5→8.5)下での累積中間体種%および累積質量を示す。
図15-1】図15は、最適化されたCEXカラム条件の下における、ロード(重層)、洗浄、溶出およびストリップサンプルのサイズ排除クロマトグラムを示す。
図15-2】同上。
図16-1】図16は、カラムロード量、洗浄pH、洗浄塩および洗浄量を評価したCEX DOEの結果を示す。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図17図17は、等温線と分配係数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、目的の単量体タンパク質を、目的のタンパク質および1以上の夾雑物を含む混合物から精製する方法を提供する。
【0013】
ある特定の実施態様において、本発明は、単量体抗IP10モノクローナル抗体および1つ以上の夾雑物を含む混合物から単量体抗IP10モノクローナル抗体を精製する方法を提供するものであって、この方法は、以下の工程:a)混合物を、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)マトリクスに付し、該単量体抗IP10モノクローナル抗体を、CEXマトリクスに結合させる工程;b)CEXマトリックスを、約7~約7.8のpHの洗浄溶液と接触させる工程;c)単量体抗IP10モノクローナル抗体を、CEXマトリックスから溶出液中に溶出させることにより、単量体抗IP10モノクローナル抗体を精製する工程を特徴とする。例示としては、夾雑物は、抗IP10モノクローナル抗体の凝集体、宿主細胞タンパク質、宿主細胞代謝物、宿主細胞構成タンパク質、核酸、エンドトキシン、ウイルス、生成物関連夾雑物、脂質、培地添加物および培地派生物から選択される。例えば、抗IP10モノクローナル抗体の凝集体は、二量体、多量体および中間凝集体を含む。所望により、中間凝集体は、工程(b)において除去される。
【0014】
ある態様において、混合物は、回収した細胞培養液、細胞培養上清および順化細胞培養上清、細胞溶解物および清澄化バルクから選択される。例えば、細胞培養物は、哺乳動物の細胞培養物、例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞培養物である。
【0015】
ある態様において、本発明の方法の混合物は、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)により得られる。所望により、CEX工程からの溶出液は、第2のクロマトグラフィー工程に付さない。所望により、CEX工程からの溶出液は、第2のクロマトグラフィー工程、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびミックスモードクロマトグラフィーに更に付される。
【0016】
ある態様において、洗浄溶液のpHは、約7.2~約7.6(例えば、7.2、7.3、7.4、7.5および7.6)である。所望により、洗浄緩衝液の塩濃度は、約20mM~約40mM、例えば約24mM~約30mMである。
【0017】
ある態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:1、2および3各々の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含む。ある態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列を含む。例として、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。例示としては、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:4および9の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列各々を含む。例示としては、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:5および10の完全長重鎖アミノ酸配列および完全長軽鎖アミノ酸配列を各々含む。
【0018】
ある態様において、単量体抗IP10モノクローナル抗体は、少なくとも90%の単量体純度、所望により少なくとも95%の単量体純度または所望により少なくとも99%の単量体純度まで精製される。
【0019】
I.定義
本発明をより容易に理解し得るために、特定の用語を先ず定義する。本明細書に使用される場合、本明細書に明確に規定されている場合を除き、下記用語の各々は、以下に規定される意味を有するものとする。追加の定義は、本明細書の全体に記載されている。
【0020】
本明細書に使用される通り、用語「目的のタンパク質」という用語は、最も広い意味で、混合物中に存在する精製が望まれる任意のタンパク質(天然または組換え体のいずれか)を含むように使用される。そのような目的のタンパク質には、ホルモン、成長因子、サイトカイン、免疫グロブリン(例えば、抗体)および免疫グロブリン様ドメイン含有分子(例えば、アンキリンまたはフィブロネクチンドメイン含有分子)を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書に使用される通り、用語「細胞培養物」は、液体培地中の細胞を指す。所望により、細胞培養物は、バイオリアクター内に含まれる。細胞培養物中の細胞は、例えば、細菌、真菌、昆虫、哺乳動物または植物を含むあらゆる生物由来の細胞であり得る。特定の実施態様において、細胞培養物中の細胞は、目的のタンパク質(例えば、抗体)をコードする核酸を含む発現構築物によりトランスフェクトされた細胞を含む。好適な液体培地には、例えば、栄養培地および非栄養培地が含まれる。特定の実施態様では、細胞培養物は、例えば濾過または遠心分離による精製を行わない栄養培地中のチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞株を含む。
【0022】
本明細書に使用される通り、用語「清澄化バルク」という用語は、粒子状物質が実質的に除去された混合物を指す。清澄化バルクは、細胞培養物または細胞または細胞屑が、例えば、濾過または遠心分離によって実質的に除去された細胞溶解物を含む。
【0023】
本明細書に使用される通り、用語「バイオリアクター」は、当分野において認識された意味であり、細胞培養の増殖をコントロールするために設計されたチャンバーを指す。バイオリアクターは、細胞、例えば哺乳類細胞の培養に有用である限り、いかなるサイズであってもよい。一般的には、バイオリアクターは、少なくとも30mLであり、少なくとも1、10、100、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10000、120000リットル以上、またはいずれの中間容量であってもよい。バイオリアクターの内部条件(例えば、これに限定しないがpHおよび温度など)は、通常、培養期間中に制御される。適切なバイオリアクターは、培養条件下において培地中に懸濁された細胞培養物を保持するのに適しており、かつ細胞の増殖および生存性を促進するあらゆる材料であり、例えば、ガラス、プラスチックまたは金属が挙げられる;この材料は、目的のタンパク質の発現または安定性を妨害してはならない。当業者は、本発明を実施する際の使用に適したバイオリアクターを理解し、かつ選択することができるであろう。
【0024】
本明細書に使用される通り、用語「混合物」とは、目的のタンパク質(精製を要する)および1以上の夾雑物、すなわち不純物を含む。一実施態様では、混合物は、目的のタンパク質を発現する宿主細胞または生物(天然または組換えのいずれか)から生成される。そのような混合物は、例えば、細胞培養物、細胞溶解物および清澄化バルク(例えば、清澄化された細胞培養上清)を含む。
【0025】
本明細書に使用される通り、用語「分離」および「精製」は互換的に使用され、目的のタンパク質(例えば、抗体)を含む混合物から夾雑物を選択的に除去することを指す。
【0026】
本明細書に使用される通り、用語「夾雑物」は、混合物内の任意の望ましくない成分または化合物を網羅する最も広い意味で使用される。細胞培養物、細胞溶解物または清澄化バルク(例えば、清澄化細胞培養上清)において、夾雑物とは、例えば、細胞培養培地中に存在する宿主細胞核酸(例えば、DNA)および宿主細胞タンパク質を含む。宿主細胞の夾雑物タンパク質には、宿主細胞によって天然または組換え的に産生されるタンパク質、目的のタンパク質に関連したタンパク質またはそれに由来するタンパク質(例えば、タンパク質分解断片)およびその他の処理工程に関連した夾雑物が挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の実施態様では、夾雑沈殿物は、遠心分離、無菌濾過、デプス濾過およびタンジェンシャルフロー濾過などの当業者に認識された手段を用いて細胞培養物から分離される。
【0027】
本明細書に使用される通り、用語「遠心分離」とは、遠心分離機を用いた異種混合物を沈降させるために遠心力を用いる工程であり、工業および研究室において使用される。この工程は、2つの非混和性液体を分離するために使用される。例えば、本発明の方法では、遠心分離は、混合物から、例えば、これに限定しないが、細胞培養上清または清澄化細胞培養上清または捕捉カラムで捕捉された溶出プールを含む混合物から沈殿した夾雑物を除去するために使用できる。
【0028】
本明細書に使用される通り、用語「無菌濾過」とは、微生物または微小粒子を効果的に除去するために、通常、孔径0.2mのフィルターであるメンブレンフィルターを使用する濾過方法である。例えば、本発明の方法において、無菌濾過は、これに限定しないが、細胞培養上清または清澄化細胞培養上清または捕捉カラムで捕捉された溶出プールを含む混合物から沈殿した夾雑物を除去するために使用できる。
【0029】
本明細書に使用される通り、用語「デプス濾過」は、デプスフィルターを使用する濾過方法であり、このデプスフィルターは、通常、フィルターマトリクス内の細孔サイズの範囲に基づき粒子を保持するように設計されていることを特徴とする。デプスフィルターの容量は、通常、マトリックスの深さ、例えば10インチまたは20インチの深さによって、すなわち固形物に対する保持容量が規定される。例えば、本発明の方法において、デプス濾過は、これに限定しないが、細胞培養または清澄化された細胞培養上清または捕捉カラムで捕捉された溶出プールを含む混合物から夾雑沈殿物を除去するために使用できる。
【0030】
本明細書に使用される通り、用語「タンジェンシャルフロー濾過」は、サンプル混合物が膜の上面を水平に循環する一方で、印加された圧力によって特定の溶質および低分子が膜を通過するような濾過プロセスを指す。例えば、本発明の方法において、タンジェンシャルフロー濾過は、これに限定しないが、細胞培養または清澄化細胞培養上清または捕捉カラムで捕捉された溶出プールを含む混合物から夾雑沈殿物を除去するために使用できる。
【0031】
本明細書に使用される通り、用語「クロマトグラフィー」は、混合物中の目的の溶質、例えば目的のタンパク質を、吸着剤を通した混合物のパーコレーションによって混合物中のその他の溶質から分離する工程を意味し、この工程は、特定の緩衝条件の下で、溶質の特性(例えば、pI、疎水性、サイズおよび構造など)により、強度を変えて、溶質を吸着するか、または保持する。本発明の方法において、クロマトグラフィーは、沈殿物が混合物(例えば、これに限定しないが、細胞培養上清または清澄化細胞培養上清または捕捉カラムで捕捉された溶出プールを含む)から除去された後に、夾雑物を除去するために使用することができる。
【0032】
本明細書に使用される通り、用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」は、目的のイオン化可能な溶質(例えば、混合物中の目的のタンパク質)が、pHおよび導電性について適切な条件下で、固相イオン交換材に結合された(例えば、共有結合によって)逆電荷のリガンドと相互作用し、目的の溶質が、混合物中の溶質不純物または夾雑物よりも多少荷電した化合物と非特異的に相互作用するようなクロマトグラフィーの工程を意味する。混合物中の夾雑溶質は、イオン交換材のカラムから洗浄されるか、または樹脂に結合されるか、樹脂から目的の溶質よりも速く、または遅れて除去され得る。「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的には、陽イオン交換、陰イオン交換およびミックスモードクロマトグラフィーを含む。
【0033】
本明細書に使用される通り、用語「イオン交換材」は、負に帯電している固相(すなわち、陽イオン交換樹脂または膜)または正に帯電している固相(すなわち、陰イオン交換樹脂または膜)を指す。一実施態様では、電荷は、1つ以上の荷電リガンド(または吸着剤)を固相に結合させることによって、例えば共有結合によって提供することができる。あるいは、または更に、電荷は、固相に関する固有の特性であり得る(例えば、全体的に負の電荷を有するシリカの場合)。
【0034】
本明細書に使用される通り、用語「陽イオン交換樹脂」とは、負に帯電している固相を意味し、また固相上を通過または固相を通過する水溶液中の陽イオンを交換するための遊離陽イオンを有する固相を意味する。陽イオン交換樹脂を形成するのに適した固相に結合した負に荷電したリガンドであれば、いずれも使用することができ、例えば、後述するカルボキシレート、スルホネート等が挙げられる。市販されている陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホネート系の基を有するもの:例えば、MonoS、MiniS、Source 15Sおよび30S、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、SP Sepharose High Performance(GE Healthcareから);Toyopearl SP-650SおよびSP-650M(東ソーから);Macro-Prep High S(BioRadから);Ceramic HyperD S、Trisacryl MおよびLS SPおよびSpherodex LS SP(Pall Technologiesから)、スルホエチル系の基を有するもの:例えば、Fractogel SE(EMDから);Poros S-10およびS-20(Applied Biosystemsから)、スルホプロピル系の基を有するもの:例えば、TSK Gel SP 5PWおよびSP-5PW-HR(東ソーから);Poros HS-20およびHS-50(Applied Biosystemsから)、スルホイソブチル系の基を有するもの(例えば、Fractogel EMD SO3-)(EMDから)、スルホキシエチル系の基を有するもの:例えば、SE52、SE53およびExpress-Ion S(Whatmanから)、カルボキシメチル系の基を有するもの:例えば、CM Sepharose Fast Flow(GE Healthcareから);Hydrocell CM(Biochrom Labs Inc.から);Macro-Prep CM(BioRadから);Ceramic HyperD CM、Trisacryl M CM、Trisacryl LS CM(Pall Technologiesから);Matrx Cellufine C500およびC200(Milliporeから);CM52、CM32、CM23およびExpress-Ion C(Whatmanから);Toyopearl CM-650S、CM-650MおよびCM-650C(東ソーから)、スルホン酸およびカルボン酸系の基を有するもの:例えば、BAKERBOND Carboxy-Sulfon(J.T. Bakerから)、カルボン酸系の基を有するもの:例えば、WP CBX(J.T Bakerから);DOWEX MAC-3(Dow Liquid Separationsから);Amberlite弱陽イオン交換体、DOWEX弱陽イオン交換体およびDiaion弱陽イオン交換体(Sigma-Aldrichから);およびFractogel EMD COO-(EMDから)、スルホン酸系の基を有するもの:例えば、Hydrocell SP(Biochrom Labs Inc.から);DOWEX Fine Mesh Strong Acid Cation Resin(Dow Liquid Separationsから);UNOsphere S、WP Sulfonic(J. T. Bakerから);Sartobind S Membrane(Sartoriusから);Amberlite Strong Cation Exchangers;DOWEX Strong CationおよびDiaion Strong Cation Exchanger(Sigma-Aldrichから)、ならびにオルトリン酸系の基を有するもの:例えば、P11(Whatmanから)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本明細書に使用される通り、用語「陰イオン交換樹脂」は、正に荷電している固相、つまり1または複数の正に荷電したリガンドが結合している固相を指す。陰イオン交換樹脂を形成するのに適した固相に結合した正に荷電したリガンド(例えば、第四級アミノ基など)であれば、いずれも使用することができる。市販の陰イオン交換樹脂には、例えば、DEAEセルロース、Poros PI 20、PI 50、HQ 10、HQ 20、HQ50およびD50(Applied Biosystemsから);Sartobind Q(Sartoriusから);MonoQ、MiniQ、Source 15Qおよび30Q、Q、DEAEおよびANX Sepharose Fast Flow、Q Sepharose high Performance、QAE SEPHADEX(登録商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標登録)(GE Healthcareから);WP PEI、WP DEAM、WP QUAT(J.T. Bakerから);Hydrocell DEAEおよびHydrocell QA(Biochrom Labs Inc.から);UNOsphere Q、Macro-Prep DEAEおよびMacro-Prep High Q(Bioradから);Ceramic HyperD Q、Ceramic HyperD DEAE、Trisacryl MおよびLS DEAE、Spherodex LS DEAE、QMA Spherosil LS、QMA Spherosil MおよびMustang Q(Pall Technologiesから);DOWEX Fine Mesh Strong Base TypeIおよびTypeIIの陰イオン樹脂およびDOWEX MONOSPHER E 77、弱塩基陰イオン(Dow Liquid Separationsから);Intercept Q Membrane、Matrex Cellufine A200、A500、Q500およびQ800(Milliporeから);Fractogel EMD TMAE、Fractogel EMD DEAEおよびFractogel EMD DMAE(EMDから);Amberlite 弱陰イオン交換体および強陰イオン交換体I型およびII型、DOWEX弱陰イオン交換体および強陰イオン交換体I型およびII型、Diaion弱陰イオン交換体および強陰イオン交換体I型およびII型、Duolite(Sigma-Aldrichから);TSKゲルQおよびDEAE5PWおよび5PW-HR、Toyoperal SuperQ-650S、650Mおよび650C、QAE-550Cおよび650S、DEAE-650Mおよび650C(東ソーから);QA52、DE23、DE32、DE51、DE52、DE53、Expless-Ion DおよびExpless-Ion Q (Whatmanから);ならびにSartobind Q(Sartorius corporation, New York, USA)が挙げられる。
【0036】
本明細書に使用される通り、用語「ミックスモードイオン交換樹脂」または「ミックスモード」とは、陽イオン性、陰イオン性および/または疎水性の基で共有結合的に修飾された固相を指す。ミックスモードイオン交換樹脂の例としては、BAKERBOND ABX(登録商標)(J. T. Baker;Phillipsburg, NJ)、セラミックハイドロキシアパタイトタイプIおよびIIおよびフッ化物ハイドロキシアパタイト(BioRad;Hercules, CA)およびMEPおよびMBI HyperCel(Pall Corporation;East Hills, NY)が挙げられる。
【0037】
本明細書に使用される通り、用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂」とは、フェニル、オクチルまたはブチルの化学物質で共有結合的に修飾された固相を指す。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、疎水性の特性を利用して、タンパク質を互いに分離する分離技術である。このタイプのクロマトグラフィーでは、フェニル、オクチルまたはブチルなどの疎水性基が固定カラムに結合されている。表面に疎水性アミノ酸側鎖を有するカラムを通過するタンパク質は、カラム上の疎水性基と相互作用して、結合することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー用樹脂の例としては、以下のものが挙げられる:(1) Butyl FF、Butyl HP、Octyl FF、Phenyl FF、Phenyl HP、Phenyl FF (high sub)、Phenyl FF (low sub)、Capto Phenyl ImpRes、Capto Phenyl (high sub)、Capto Octyl、Capto ButylImpRes、Capto Butyl (GE Healthcare, Uppsala, Sweden);(2) Toyopearl Super Butyl-550C、Toyopearl Hexyl-650C、Butyl-650C、Phenyl-650C、Butyl 600 M、Phenyl-600M、PPG-600M、Butyl-650M、Phenyl-650M、Ether-650M、Butyl-650S、Phenyl-650S、Ether-650S、TSKgel Pheny-5PW、TSKgel Ether-5PW (Tosoh Bioscience, Tokyo, Japan);(3) Macro-Prep-butyl、Macro-Prep-methyl (Bio-Rad);および(4) Sartobind Phenyl (Sartorius corporation, New York, USA)。
【0038】
II.目的のタンパク質
ある態様において、本発明の方法は、あらゆる目的のタンパク質、例えば、商業的、実験的またはその他の応用において有用な医薬的、診断的、農業的および/または他の様々な特性いずれかを有するタンパク質を精製するために使用することができる。さらに、目的のタンパク質は、タンパク質治療薬であり得る。特定の実施態様においては、本発明の方法を用いて精製されるタンパク質は、処理または修飾されてもよい。例えば、本発明に従って目的のタンパク質は、グリコシル化されていてもよい。
【0039】
従って、本発明は、任意の治療用タンパク質、例えば、医薬的または商業的に関連する酵素、受容体、受容体融合タンパク質、抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、抗体の抗原結合断片、Fc融合タンパク質、サイトカイン、ホルモン、調節因子、成長因子、凝固/凝固因子または抗原結合剤などを産生する細胞を培養するために使用できる。上記のタンパク質は、自然界における単なる例示であり、限定することを意図するものではない。当業者は、その他のタンパク質が本発明に従って製造できることは認識しており、そのようなタンパク質を製造するために本明細書に開示された方法を使用することができることも認識するであろう。
【0040】
本発明の一つの特定の実施態様において、本発明の方法を用いて精製されたタンパク質は、抗体である。「抗体」なる用語は、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異抗体(例えば、二重特異的抗体)、抗体フラグメント、免疫アドヘシンおよび抗体-免疫アドヘシンキメラを包含するような広義で使用される。
【0041】
「抗体フラグメント」とは、全長抗体の少なくとも一部、通常、その抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')およびFvフラグメント;単鎖抗体分子;ジアボディ;直鎖抗体;および人工抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0042】
用語「モノクローナル抗体」は、慣用的な意味で、抗体集団を構成する個々の抗体が、微量に存在する可能性のある自然発生的な突然変異を除いて同一であるような、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体を指すために使用される。モノクローナル抗体は、非常に特異性が高く、単一の抗原部位に対して特異的に作用する。これは、抗原の異なる決定基(エピトープ)に対して結合する様々な抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは異なり、モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に結合される。抗体を記述する際の「モノクローナル」という用語は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の性質を示しており、任意の特定の方法により抗体生産を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、Kohler, et al.,(Nature 256:495 (1975))によって最初に記載された従来のハイブリドーマ技術を使用して作製することができ、または組換えDNA法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。モノクローナル抗体は、例えば、Clackson, et al., Nature 352:624-628 (1991);Marks, et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991);および米国特許第5,223,409号;5,403,484号;5,571,698号;5,427,908号;5,580,717号;5,969,108号;6,172,197号;5,885,793号;6,521,404号;6,544,731号;6,555,313号;6,582,915号;および6,593,081号)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0043】
本明細書に記載のモノクローナル抗体は、所望の生物学的活性を提示する限り、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種から得られる抗体または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体および「ヒト化」抗体を含んでおり、一方で、該鎖の残りの部分が、別の種から得られる抗体または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である抗体ならびにその断片を含む(米国特許第4,816,567号;およびMorrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化された」形体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。殆どの場合、ヒト化抗体とは、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には存在しない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改善させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、また通常は2つの可変ドメインを実質的に全て含んでおり、この可変ドメインは、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応しており、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、所望により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。さらなる詳細については、Jones, et al.,, Nature 321:522-525(1986);Riechmann, et al.,、Nature 332:323-329(1988);およびPresta, Curr. Op.Structure. Biol. 2:593-596(1992)を参照されたい。
【0044】
キメラ抗体またはヒト化抗体は、上記のように製造されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて製造され得る。重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のマウスハイブリドーマから得られ、標準的な分子生物学的技術を用いて、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように遺伝子工学的に設計され得る。例えば、キメラ抗体を作製するために、当該分野で知られている方法を用いて、マウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ヒト化抗体を作製するために、当該分野で知られている方法を用いて、マウスCDR領域をヒトフレームワークに挿入することができる(例えば、Winterの米国特許第5,225,539号およびQueen, et al.,の米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0045】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、「ヒト」抗体も含み、これらは、例えば、ヒト患者の血液またはトランスジェニック動物を用いて組換え的に作成されたものを含む様々な供給源から単離され得る。そのようなトランスジェニック動物の例としては、ヒト重鎖トランスジーンおよびヒト軽鎖の導入染色体を有するKM-マウス(登録商標)(Medarex, Inc., Princeton, NJ.)(WO 02/43478を参照されたい)およびゼノマウス(Xenomouse)(登録商標)(Abgenix, Inc., Fremont CA;例えば、Kucherlapatiらの米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号および同第6,162,963号に記載されている)およびHuMAb-マウス(登録商標)(Medarex, Inc.;Taylor, L., et al.,(1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen, J., et al.,(1993) International Immunology 5: 647-656;Tuaillon, et al.,(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724;Choi, et al.,(1993) Nature Genetics 4:117-123;Chen, J.et al.,(1993) EMBO J. 12:821-830;Tuaillon, et al.,(1994) J. Immunol. 152:2912-2920;Taylor, L., et al.,(1994) International Immunology 6: 579-591;およびFishwild, D., et al.,(1996) Nature Biotechnology 14: 845-851, 米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および同第5,770,429号;同第5,545,807号;およびPCT国際公開番号WO 92/03918、WO 93/12227、WO 94/25585、WO 97/13852、WO 98/24884およびWO 99/45962、WO 01/14424(Korman, et al.,))が挙げられる。本発明のヒトモノクローナル抗体は、SCIDマウスを用いても製造でき、免疫化する場合にヒト抗体応答が起こり得るようにヒト免疫細胞が再構築されたものである。そのようなマウスは、例えば、Wilson, et al.,の米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号に記載されている。
【0046】
ある特定の実施態様において、本発明は、抗IP10モノクローナル抗体を精製する方法を提供する。好ましくは、そのような方法は、抗体の凝集体(例えば、二量体、多量体、中間凝集体)から単量体抗体を精製するために使用される。
【0047】
ある態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、抗IP10モノクローナル抗体は、各々配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含む。例として、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:1、2および3の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3の配列ならびに配列番号:6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む。例として、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:4および9の重鎖可変領域配列ならびに軽鎖可変領域配列を含む。例として、抗IP10モノクローナル抗体は、配列番号:5および10各々の完全長重鎖アミノ酸配列および完全長軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0048】
【表1】
【0049】
III.目的のタンパク質を含む混合物
本発明の方法は、目的のタンパク質を含む任意の混合物に適用することができる。一実施態様では、混合物は、精製されるべきタンパク質を発現する生存細胞から(例えば、天然または遺伝子工学的に)得られるか、または生存細胞により産生される。所望により、細胞培養中の細胞は、目的のタンパク質をコードする核酸を含む発現構築物でトランスフェクトされた細胞を含む。タンパク質を産生するために細胞を遺伝子工学的に操作する方法は、当分野ではよく知られている。例えば、Ausabel et al. (1990), Current Protocols in Molecular Biology (Wiley, New York)および米国特許第5,534,615号および同第4,816,567号を参照されたい;これら各々は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような方法は、生存宿主細胞にタンパク質をコード化し、かつ発現させることが出来る核酸を導入することを含む。これらの宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞であるか、または好ましくは培養で増殖した動物細胞であってもよい。細菌宿主細胞としては、大腸菌細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な大腸菌株の例としては、以下のもの:HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539ならびに外来DNAを切断できない任意の大腸菌株が挙げられる。使用できる真菌宿主細胞としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastorisおよびAspergillus細胞などが挙げられるが、これらに限定するものではない。使用できる昆虫細胞としては、例えば、Bombyx mori、Mamestra drassicae、Spodoptera frugiperda、Trichoplusia ni、Drosophilia melanogasterなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
多くの哺乳類細胞株は、目的のタンパク質を発現させるのに適した宿主細胞である。哺乳類宿主細胞株としては、例えば、COS、PER.C6、TM4、VERO076、DXB11、MDCK、BRL-3A、W138、Hep G2、MMT、MRC 5、FS4、CHO、293T、A431、3T3、CV-1、C3H10T1/2、Colo205、293、HeLa、L細胞、BHK、HL-60、FRhL-2、U937、HaK、Jurkat細胞、Rat2、BaF3、32D、FDCP-1、PC12、M1x、ネズミ性骨髄腫(例えば、SP2/0およびNS0)およびC2C12細胞ならびに形質転換された霊長類の細胞株、ハイブリドーマ、正常二倍体細胞および初代組織および初代外植片のインビトロ培養から得られる細胞株が挙げられる。新規の動物細胞株は、当業者には既知の方法(例えば、形質転換、ウイルス感染および/または選択)を用いて確立することができる。目的のタンパク質を発現することができる任意の真核細胞を、開示された細胞培養方法において使用することができる。様々な細胞株が、アメリカンタイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)などの商業的な供給源から入手可能である。本発明の一実施態様では、細胞培養、例えば大規模な細胞培養は、ハイブリドーマ細胞を用いる。抗体産生ハイブリドーマ細胞の構築は、当技術分野で周知である。本発明の一実施態様では、細胞培養、例えば大規模細胞培養は、抗体のような目的のタンパク質を産生するCHO細胞を用いる(例えば、WO 94/11026を参照されたい)。様々なタイプのCHO細胞が、当分野では既知であり、例えば、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DXB11、CHO/dhfrおよびCHO-Sが挙げられる。
【0051】
ある実施態様において、本発明は、細胞培養物から目的のタンパク質を精製する前に、増殖している細胞培養物に関する特定条件をモニタリングすることを意図している。細胞培養条件のモニタリングにより、細胞培養物が適切なレベルで目的のタンパク質を産生しているかどうかを決定することができる。例えば、特定の細胞培養条件をモニターするために、培養物の少量のアリコートを、分析のために定期的に取り出す。モニタリングされる細胞培養条件には、温度、pH、細胞密度、細胞生存率、積算生細胞密度、乳酸塩レベル、アンモニウムレベル、浸透圧および発現されたタンパク質の力価が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような条件/基準を測定するための多くの技術は、当業者には十分知られている。例えば、細胞密度は、血球計算盤、自動細胞計数装置(例えば、Coulter counter, Beckman Coulter Inc., Fullerton, Calif.)または細胞密度検査(例えば、CEDEX.RTM., Innovatis, Malvern, Pa.)を使用して測定してもよい。生細胞密度は、培養サンプルをトリパンブルーで染色することによって決定することができる。乳酸およびアンモニウムレベルは、例えば、細胞培養培地中の重要な栄養素、代謝物およびガスに関するリアルタイムのオンライン測定を行うBioProfile 400 Chemistry Analyzer (Nova Biomedical, Waltham, Mass.)を使用して測定することができる。細胞培養物の浸透圧は、例えば、氷点浸透圧計で測定することができる。HPLCは、例えば、乳酸塩、アンモニウムまたは発現タンパク質のレベルを決定するために使用することができる。本発明の一実施態様では、発現タンパク質のレベルは、例えば、プロテインA HPLCを使用して決定することができる。あるいは、発現タンパク質のレベルは、SDS-PAGEゲルのクマシー染色、ウェスタンブロッティング、ブラッドフォードアッセイ、ローリーアッセイ、ビウレット反応およびUV吸光度などの標準技術によって決定することができる。所望により、本発明は、発現タンパク質の翻訳後修飾、例えばリン酸化およびグリコシル化などのモニタリングを含んでもよい。
【0052】
特定の実施態様において、本発明の方法は、高濃度の目的タンパク質(例えば、抗体)を含む混合物(例えば、細胞培養物、細胞溶解物または清澄化バルク)から、夾雑物質を効果的に除去することを含む。例えば、目的のタンパク質の濃度は、約0.5~約50mg/ml(例えば、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50mg/ml)の範囲であってよい。
【0053】
混合物の調製は、初めはタンパク質の発現様式に依存する。いくつかの細胞系は、細胞から周囲の増殖培地にタンパク質(例えば、抗体)を直接分泌するが、他の系は抗体を細胞内に保持する。細胞内で産生されたタンパク質については、機械的せん断、浸透圧ショック、酵素処理などの様々な方法のいずれかを用いて細胞を破砕することができる。破砕により、細胞の内容物全てがホモジネートに放出され、また遠心分離またはろ過により除去することができる細胞内断片もまた生成される。同様の課題は、程度は少ないが、細胞の自然死によるタンパク質の直接分泌およびタンパク質生産中の細胞内宿主細胞タンパク質の放出がおこる。
【0054】
一実施態様では、細胞または細胞破片は、例えば、清澄化バルクを調製するために、混合物から除去される。本発明の方法は、細胞または細胞破片を除去するために適切ないずれの方法も採用することができる。タンパク質が細胞内で産生される場合、第1工程として、宿主細胞または破砕断片のいずれかである粒子状破片を、例えば、本明細書に記載された方法に従って精製を行う混合物を調製するために、遠心分離または濾過工程によって除去することができる(すなわち、目的のタンパク質がその混合物から精製される)。タンパク質が培地中に分泌される場合、目的のタンパク質が精製される混合物を調製するために、例えば、遠心分離、タンジェンシャルフロー濾過またはデプス濾過により、組換え宿主細胞を細胞培養培地から分離してもよい。
【0055】
別の実施態様では、細胞培養物または細胞溶解物は、最初に宿主細胞を除去せずに直接使用される。実際、本発明の方法は、分泌タンパク質と宿主細胞の懸濁液を含む混合物を使用するのに十分好適である。
【0056】
本開示は、以下の実施例により更に例示されるが、これらはさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての図および全ての参照文献、特許および公開特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0057】
実施例1
4つの軽鎖を含有するモノクローナル抗体凝集体の特徴分析および除去
(導入部)
タンパク質の凝集は、効力および薬物動態に影響を与えるため、重要な品質特性である[1-4]。タンパク質開発において、分子への悪影響を最小限に抑えて、効果的なコントロールストラテジーを実施するための広範な努力にもかかわらず、望ましくない高分子体や凝集体の形成を完全には回避できない[5,6]。従って、アップストリームである細胞培養およびダウンストリームである精製工程の全体を通して、凝集体のレベルを厳密にモニタリングする必要がある。
【0058】
捕捉工程としてプロテインA(ProA)および最終精製工程(polishing step)としてイオン(陰イオンまたは陽イオン)交換クロマトグラム(IEX)を含むプラットフォームアプローチは、mAb精製に広く利用されてきた[7-9]。最初のProAは、清澄化された収集物中に存在する不純物の大部分を除去するためのものである。IEXは、生成不純物、例えば、凝集体および処理不純物、例えば宿主細胞タンパク質(HCP)および残留宿主細胞DNAなどを除去するためのものである。殆どの場合、単量体に比べて表面電荷が増加するため、塩のグラジエント工程を用いる陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)結合・溶出モードを用いて生成物の凝集体を除去できる[10-12]。IEX以外にも、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびミックスモードクロマトグラフィーも、凝集体を除去するためのクロマトグラフィーの最終精製工程において、一般的に利用されている[20, 29-33]。しかし、全ての凝集体の種類が、同じような挙動をとることはない。一般的に、より大きな凝集体は、比較的高い疎水性を有し、より多くの表面電荷を提示し得るため、IEXまたはHICにより除去され易い可能性がある。近年、二量体と単量体の間の中間体種である凝集体の研究報告が増えてきた[13-15]。Gomez[13,14]は、3つの軽鎖(3LC)種を発見し、3つの軽鎖種の形成に影響を与えるアップストリームの要因を調べた。さらに、中間体種は、従来のプラットフォームアプローチを用いて除去することは困難であることが判明した。Wollacott[15]は、中間体種を特徴分析して、この種を効率的に除去するために疎水性の相互作用クロマトグラフィー(HIC)プロセスを開発した。しかし、溶出量が多いという欠点を克服するためには、溶出緩衝液に12%のエタノールが必要であった。Chen[17]は、異なるミックスモード樹脂を評価し、高レベルの凝集体を効果的に除去するために、プロテインA-MEP-CHTを使用した新しいプラットフォームを設計した。Gao[18]は、ミックスモード樹脂を用いた効果的な凝集体の除去には、疎水性相互作用と静電相互作用の組み合わせが重要であることを見出した。しかし、これらの樹脂の処理方法および製造に関する理解は限られていた。
【0059】
本明細書は、SE-HPLCを用いて中間体種を報告する。さらなる特徴付けにより、200kDaの中間体種が、4本の軽鎖を含むことが明らかとなり、2本は完全mAbからの軽鎖であり、2本はLC二量体からの軽鎖であった。殆どの凝集体とは異なり、4LC中間体種は、単量体の種よりも疎水性が低く、静電性が低いことが判り、これはCEXおよびHIC結合/溶出モードを使用して凝集体を除去する際に大きな課題となる。我々の初期の工程開発では、中間体種はCEX結合溶出モードでは除去されなかった。幾つかの試みが、様々な種類の樹脂を使用して行われてきたが、成功することは稀であった。しかし、近年の96ウェルフィルタープレートでのバッチ結合を用いたクロマトグラフィー条件に関するハイスループットスクリーニング(HTS)により、タンパク質精製開発の効率が大幅に向上している。Kelley[19]は、処理工程の開発を加速させるためにタンパク質の分配係数を評価することによりハイスループットスクリーニング(HTS)システムを使用して、樹脂-タンパク質相互作用の特性電荷を推定した。こうして、出願人は、HTSシステムを用いて、Poros XS樹脂上で、合計56種類の様々なpHと塩の組み合わせについて吸着等温線を測定した。異なる種の分配係数を計算することにより、中間体種を効果的に除去するための最適条件を決定した。次いで、出願人は、最適条件をPoros XS CEXカラムに適用し、さらに最終精製工程を開発した。
【0060】
さらに、中間体種の等電点(pI)は、単量体よりも約0.4pHが低いことが判った。pHグラジエントは電荷の違いに基づく分離に広く用いられており[21-28]、中間体種と単量体を分離するためにpHグラジエントを用いる同じ原理を適用できる。従って、本研究では、タンパク質の表面電荷を変化させるために緩衝液のpHを調整し、それによって、これらの種と単量体との間の選択性に影響を与えた。結合溶出モードでは、高pHの洗浄緩衝液を用いて中間体種を除去し、高塩の緩衝液を用いて他の凝集体種を除去するように実施条件を最適化した。中間体種が研究の中心であったため、洗浄緩衝液のpH、洗浄緩衝液の塩濃度、洗浄緩衝液量を含む洗浄緩衝液条件をさらに確認するためにDOE実験を設計した。別のケースではロード量も凝集体クリアランスに影響を与えることが示されているため、本試験に取り入れた。その結果、出願人は、99%以上の単量体純度にて、80%以上の工程収率を示す中間体種を除去するための確実かつ効果的な手応えの有る精製方法を開発した。
【0061】
材料および方法
材料
1.抗IP10モノクローナル抗体を、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞系により発現させた。細胞培養物を、Zeta Plus(登録商標)デプスフィルター(10SP05A / 90ZB05A, 3M, USA)、その後0.2μM滅菌フィルターカプセル(Sartorius, USA)を用いて2段階で回収した。
【0062】
2.樹脂
捕捉工程プロテインA樹脂は、MabselectプロテインAアフィニティー樹脂(GE Healthcare)(Piscataway, NJ, USA)である。CEX樹脂は、Poros XS[Life Technologies(Carlsbad, CA, USA)]である。この試験に使用した別の樹脂は、Capto Phenyl、Tosoh Butyl、Phenyl Sepherose、Capto MMC、Capto Adhere ImPres、MEP HyperCel、FractoGel MED SO3 (Merck KGaA, Darmstadt, Germany)であった。
【0063】
3.クロマトグラフィー精製工程
全ての化学試薬は、特段の記載がない限り、Sigma(St. Louis, MO, USA)およびJ.T. Baker(Mallinkrodt Baker, Phillipsburg, NJ, USA)から入手したものを使用した。クロマトグラフィーの分離は、ユニコーン7.0ソフトウェアでコントロールされたGEヘルスケア(Piscataway, NJ, USA)のAEKTA Avantシステムで行った。
【0064】
全てのクロマトグラフィー試験では、4分間一律の滞留時間を使用した。カラムは、製造元の推奨に従ってベッド高10~20cmに充填し、HETPとピーク非対称性係数に基づいて評価した。詳細な操作条件は、結果の章または図の簡単な説明に示した。製品純度を、分析SEC-HPLCで評価した。
【0065】
分取SEC
中間体の高分子量体種を分離するために、抗IP10 mAbからのプロテインA溶出物を、Tosoh Bioscience(King of Prussia, PA, USA)の分取SECカラム(21.5 mm x 30 cm)上に注入した。注入量は0.5mLで、1回の実施あたり合計7~8mgのタンパク質量をロードした。ランニング緩衝液は、0.1M リン酸カリウムおよび0.15M 塩化ナトリウム(pH6.8)である。分画物を回収し、溶出プロファイルに従ってプールした。
【0066】
ハイスループットスクリーニングシステム
液体および樹脂の取り扱いには、Tecan Genesis 150 (Tecan US, Research Triangle Park, NC)を使用した。0.45mmのPVDF膜を有する96ウェルフィルタープレート(Innovative Microplate, Billerica, MA, p/n F20022)を、樹脂、タンパク質および溶液の混合物をインキュベートするために使用した。フィルタープレートを、1200gで遠心分離し、上清を樹脂から単離した。濾液は、フィルタープレートの下に積み重ねられたコレクションプレート中で捕捉された。次いで、収集プレートのサンプルを、96ウェル形式のUV-vis分光光度計で分析した。サンプルを、凝集についてSE-HPLCで分析した。全ての試験は室温で行った。
【0067】
分析アッセイ
1.サイズ排除HPLC(SEC)
各大きさが相違する画分の単量体、高分子量(HMW)および低分子量(LMW)の種に関する定量分析には、サイズ排除HPLC(SEC)を使用した。0.1Mリン酸カリウムおよび0.15M塩化ナトリウム(pH6.8)を移動相として用い、1.0mL/分の流速にて、Tosoh Bioscience G3000 SWXLカラム(部品番号:08541, King of Prussia, PA)を使用して、サンプルを分析した。280nmでのUV吸収によりピークを検出した。結果を、単量体種、HMW種、LMW種の面積比として報告した。
【0068】
2.チップベースのCE(Caliper)
mAb HMW種は、Caliper LabChip(登録商標) GXII装置(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて、非還元条件および還元条件の両方で分析した。若干変更を加えた通常のマイクロチップベースの電気泳動が、別の箇所で詳細に記載されている。要すれば、2mg/mLの抗体2μLを、14μLのサンプル緩衝液と混合した。サンプル緩衝液は、700μLのPerkinElmer HT Protein Expressサンプル緩衝液を、24.5μLのBME(還元アッセイ用)または35μLの0.5Mヨードアセトアミド(IAM、非還元アッセイ用)のいずれかと混合して調製された。サンプルを90℃で5分間インキュベートした。室温まで冷却した後、70μLの水を各サンプルに添加した後、装置にロードした。チップは、製造元の指示に従って調製した。サンプルは、PerkinElmerによるビルトイン・スクリプトを使用して分析した。
【0069】
3.疎水性相互作用HPLC(HIC)
HPLCベースのHIC法(TSKgel Butyl-NPR, 4.6 mm x 10 cm, Tosh Bioscience)を用いて、各凝集体の種の相対疎水性を測定した。移動相A(0.1M リン酸カリウム、0.15M 塩化ナトリウム(pH6.8)、硫酸アンモニウム2M)と移動相B[0.1Mリン酸カリウム、0.15M塩化ナトリウム(pH6.8)]を用いて、流量0.5mL/minの線形グラジエント法を用いた。分画された凝集体種を、総ロード量約30μgにてHICカラムに注入した。
【0070】
4.陽イオン交換HPLC
弱陽イオン性の交換カラム(WCX-10, 2.5 mm x 30 cm, Dionex)を使用して、各画分の凝集体に関する全体的な相対正味電荷を測定した。移動相A(20mM酢酸塩, pH5.5)および移動相B(20mM酢酸塩, 1.0M塩化ナトリウム, pH5.5)を、0.25mL/分の流量での直線的なグラジエントを使用した。ピークは、280nmのUV検出器を用いて検出した。
【0071】
5.画像化キャピラリー電気泳動(iCE)
全てのmAbsサンプルを、2.5g/Lに希釈した。希釈したタンパク質サンプル(20μL)を、1.0%メチルセルロース(MC)溶液(70μL)、Pharmalyte 3-10(8μL)、8M尿素(50μL)、pIマーカー4.22および9.46(各1μL)ならびに水(50μL)を含む調製済Ampholyte溶液(180μL)と混合した。サンプルを、十分に混合して、iCIEF装置に注入した。
【0072】
サンプルを、1500Vで予め泳動させた後、3000Vで電気泳動した。分離キャピラリー内でのiCIEF工程を、CCDカメラを用いて記録し、30秒ごとにUV光の吸収画像を取得した。ピークのpI値は、iCE CFRソフトウェア4.1(ProteinSimple, San Jose, CA USA)を使用して、pIマーカーとの2点校正を用いて計算する。各ピークのピーク%定量分析は、Empower3(Waters, Milford, MA)で行った。
【0073】
6.SEC-MALS
抗体種およびプロテインAとの複合体を、Waters HPLC 2695 AllianceでTSKgel G 3000SWxl(TOSOH Bioscience)のタンデムカラムを用いてSECで分析した。移動相は、100mMリン酸カリウム、150mM NaCl(pH6.8)緩衝液であり、0.5ml/分の流量で用いた。UV、光散乱および屈折率のシグナルを、2489 UV/Vis検出器(Wyatt)、miniDAWN TREOS(Wyatt)およびOptilab T-rEX(Wyatt)により各々モニターした。データは、ASTRA 6.1(Wyatt)で処理した。
【0074】
6.ネイティブ・ナノESI/MS
7.HCPについてのELISA
宿主細胞タンパク質を、ハイブリドーマ細胞系NS/0(Cygnus Technologies, NC, USA)に特異的な市販のマイクロタイター・プレートELISA法を用いて検出した。サンプルを、キットに付属のサンプル希釈緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS), pH7.0)で希釈し、メーカーの標準アッセイプロトコールに従って分析した。プレート分光光度計(Tecan Safire II, Ser. No. 501000005, Tecan AG, Mananorf, Switzerland)を用いて、標準品とサンプルの比色反応を450nm/630nmの二重波長(試験/参照)で測定した。
【0075】
結果
1.最初のCEX実施
最初の開発研究は、捕捉工程としてのプロテインAクロマトグラフィーおよび最終精製工程としての陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を含むプラットフォーム工程を使用して行った。mAbプロテインA溶出プールは、3.5~3.7の範囲の低pH下でウイルスを不活化した後、pH5.5に中和した。中和されたプロテインA溶出プールの典型的なSECクロマトグラムを、図2(実線)に示したが、全体の凝集体は5%であった。2つの凝集体は、HMW1およびHMW2と命名された。プロテインAのプールを、25gのタンパク質/L(樹脂)の量でCEXカラム(1cm×20cm)にロードした。
【0076】
先ず、300mMまでの塩濃度を用いて、pH5.5にて100mAU上昇と100mAU下降の間のUVを示す画分をSEC分析のために収集した。HMW1は溶出バッファーの塩濃度の上昇に伴って増加したが、先の画分において最大のHMW2であったHMW2は驚く程低下した(図1)。HMW2は、HMW1および単量体種に比べてCEXカラム上での結合が弱いことが明らかになった。このような変則的な生物物理学的特性は、高い単量体純度を達成するためのCEX至適化に対する課題となる。溶出のためにこの工程グラジエントを適用することにより、HMW1は完全に除去されたが、HMW2は溶出プール中で文字通り変化していないことが明らかとなった(図2)。これらの所見から、HMW2はHMW1と比較して表面電荷に関して固有の生物物理学的特性を有している可能性が示唆された。このような変則的な生物物理学的特性は、高い単量体純度を達成するためのCEX最適化に大きな課題となる。従って、これらの凝集体、特にHMW2の特性評価は、凝集体の挙動、例えば表面電荷および疎水性を理解する上で必須であり、凝集体をより効果的に除去するための工程の開発に役立つと考えられる。一方で、別の樹脂の使用についても検討した。
【0077】
2.別の樹脂を用いた試験
CEXの実施条件を単に最適化するだけでは高純度の単量体を得ることは出来ないと考えられた。そこで、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂および陰イオンと陽イオンのミックスモードクロマトグラフィー(MMC)樹脂などの異なるタイプの樹脂を用いて別のアプローチを模索した。しかし、HICを用いた場合、タンパク質の疎水性が非常に高い理由からか、収量は非常に低かった。エタノールなどの有機溶媒を用いない限り、低塩または無塩条件下でもタンパク質はHICカラム上で強固に結合しており(データ示さず)、タンパク質の安定性および品質にとっては理想的な選択肢ではなかった。Capto MMCは、中間体種をある程度除去することにより、ある程度の有望な結果を提供したが、二量体種は除去されなかった[図3]。様々な樹脂を用いたHMW除去能を、表1にまとめた。
【表2】
【0078】
3.凝集体の分画および特性評価
全ての凝集体を効果的に除去する工程を開発するためには、これらの凝集体種についての深い理解が必要である。この目的のために、凝集体画分を、東ソーの分取SECカラムを用いて、二量体、中間体および単量体を高純度にて収集した。その後、凝集体を、SEC-MLAS、キャピラリー電気泳動、画像化キャピラリー電気泳動(iCE)およびLC/MSを用いて、主要な組成およびその生物物理的特性を決定するよう特徴付けを行った。また、相対表面電荷および疎水性については、CEX HPLCおよびHIC HPLCを含む分析ツールも使用した。全ての特性評価結果を、表2にまとめた。
【0079】
分取
分画物を回収し、純度を評価するためにSEC上に再度注入した。精製した中間体種(>純度95%)のSECクロマトグラムを、図4に示したように出発物質と重ねた。
【0080】
組成物分析
中間体種の組成をチップベースのキャピラリー電気泳動とSEC-MALSを用いて分析した。組成を確認するために、Fabricatorの消化を組合せたLC/MSを使用した。
【0081】
中間体種および単量体の電気泳動図(RおよびNR)を、図xx-xxyに示した。還元条件に基づいて、HCに対するLCの比率は~1.6と計算され、HCよりも全体的に高いレベルのLCが存在することが示された。一方で、非還元条件下において中間体種では、分子量30kDaと54kDaの2つのピークが示された。従って、30kDaピークおよび54kDaピークは、単体LCおよび共有結合したLC-LCとして各々示される。中間体種は、2つの主な複合体:1)軽鎖に非共有結合した単量体の複合体;2)軽鎖二量体に非共有結合した単量体の複合体から構成された。CE-NRの結果から、単量体/LLが優勢な中間体種であることが判った。組成の割り当ては、SEC-MLASによる~200kDaの分子量の測定値と十分一致した。
【0082】
組成物を、図8に示すようにFabricator消化したLC/MS分析を使用してさらに確認された。
【0083】
生物物理学的特性
更に、全体の表面電荷については画像化キャピラリー電気泳動、全体の表面電荷については分析CEX、全体の表面疎水性については分析HICを用いて、中間体種の生物物理学的特性を調べた。興味深いことに、中間体種は単量体よりも疎水性が低いだけでなく、表面電荷の含有量も少ないことが判った。このような変則的な生物物理学的挙動は、それら固有の組成と関連があり得る。
/単量体中のHC%)である。
【数1】

LC対HCの正規化された比=(サンプル中のLC%/単量体中のLC%)/(サンプル中のHC%/単量体中のHC%)
方程式:中間体種についてのLC/HCの計算
【表3】
【0084】
分析CEXおよびHIC HPLC
抗IP10 mAbの凝集体(二量体および中間体)および単量体を、分析用CEX HPLCおよび分析用HIC HPLCに各々注入した。CEXでは、二量体、中間体、単量体の分離能を評価するために、2つの実施条件(pH5.5およびpH7)を適用した。pH5.5では、二量体は単量体から非常に良好に分離されたが、中間体種は単量体と共に同時に溶出され、このことはCEX精製を用いた場合と全く同一であった。しかし、実施条件をpH7に調整した場合、中間体種は、より早く溶出され、単量体から分離された。従って、高pH洗浄を使用して中間体種を除去し、B/Eを使用して単量体種を溶出させ、より強く結合した二量体をカラムに保持することを特徴とするストラテジーを実施できる。
【0085】
中間体種の更なる理解
中間体種は、iCEおよびLC/MSによりさらに特徴分析を行った。
図7に示す通りに、中間体種は主要pI値が8.7であり、これは単量体よりも約0.4低い値であった。
【0086】
iCEプロファイル
中間体種と単量体(黒線-単量体;赤線-中間体種)に対するiCEプロファイルを、図7に示した。
【0087】
ESI/質量スペクトル
中間体種の組成を、さらに確認するために、図8および図9に示すように、FABRICATOR消化とネイティブ・ナノESI/MSを組合せたLC/MS分析を行った。FabRICATOR消化と組合せたネイティブESI/MSは、非共有結合相互作用を阻害しなかった。非共有結合したLC-FabおよびLL-Fabが検出され、LCおよびLLの二量体がFab領域に結合していることが確認された。
【0088】
処理工程の至適化
1.pHグラジエント
中間体種は単量体よりも低いpI値を示すため、処理緩衝液のpHを操作することによって中間体種を除去することが可能である。従って、図10に示すように、30mMリン酸緩衝液を用いて、pH5.5~pH8.5までの範囲のpHグラジエントを、同じCEXカラム上のmAb プロテインAプールに適用した。画分を回収し、SEC分析に供した。線形pHグラジエント溶出のSECからの種の分布を図11に示した。最初は、比較的低いpH条件の下では、より多くのLMWと中間体種が早く溶出され、その後単量体種が溶出した。溶出pHが上昇すると、より多くの二量体種や高分子種がカラムから溶出し始めた。この結果は、単量体から中間体種を分離するためにpHを使用できるという分析CEX HPLCからの知見を実証するものであった。さらに、図12のプロットは、高純度の単量体プールを得るために、オペレーショオンウィンドウを最適化できることを示唆している。そのため、ロード量、洗浄pH、洗浄塩濃度および洗浄量を評価するためにDOE試験を行った。
【0089】
塩グラジエントおよびpHグラジエントの間でのHMW分離に対する選択性を、さらに比較するために、各画分の凝集体%(C/C0)の合計累積含有量を、タンパク質収率に対してプロットした。中間体種は、単量体よりも早く溶出し、二量体は遅く溶出することが判っていたので、中間体種にはより急激なグラジエントを示すプロット、二量体には、より緩やかなグラジエントを示すプロットが最も理想的なシナリオであって、この場合に、中間体種は効果的に洗浄され、二量体はカラム上に保持される。
【0090】
塩グラジエントおよびpHグラジエントの比較をプロットして、図12に示した。塩グラジエントと比較して、pHグラジエントは明らかに中間体、二量体および単量体との間に優れた分離を提供した。10%のタンパク質収率では、pHグラジエントは60%以上の中間体種のクリアランスを提供するのに対し、塩グラジエントでは僅か20%強であった。一方、pHグラジエントについては>70%LMWが除去されるのに対して、塩グラジエントについては20%除去された。二量体および高分子凝集体は、pHまたは塩濃度が一定のレベルに達するまでカラム上で強固に結合していた。しかし、中間体種と単量体の分離と同様、pHグラジエントでは二量体と単量体の分離は良好であった。全体的に、CEXのpH条件を最適化することは、全体の凝集体およびLMW除去を最大化し、かつ生成物の収率の損失を最小化する上でより良好な戦略であると考えられる。
【0091】
2.洗浄緩衝液についてのpHおよび塩の組合せ
中間体種と単量体の分離は、pH操作による影響を受けていたが、実施条件の導電率もまた、生成物の収量ならびに分解能において重要な役割を果たしている可能性がある。その為、様々な導電率でのpHグラジエントに関する一連の試験を行い、図13および14に示した通りに中間体種のプロファイルを、各条件に対する全体量についての概略を説明する。
【0092】
3.段階的グラジエント(step gradient)において高pHの洗浄を用いるPoros XS
中間体および単量体間の優れた分解能は、pHグラジエントを利用することで達成された。しかし、製造上の観点より、段階的グラジエントが好まれる。工程パラメーターを評価して、凝集体の除去および生成物の収率を考慮して、pHのグラジエント工程を評価するために最適な条件(25mMリン酸塩、pH7.4)を選択した。CEXクロマトグラムと各SECプロファイル(A-ロード、B-CEX高pH洗浄、C-CEX溶出、D-CEXストリップ)を図15に示した。
【0093】
4.CEX DOE試験
様々な緩衝液のpHと塩濃度を変えてカラムを検討した結果、最適な条件が得られた。その結果、洗浄pHは7.2~7.6、洗浄塩(NaCl)は24~30mMの範囲で3~7CVの範囲が最適であることが判った。また、ロード量(タンパク質20~30 mg/mL樹脂)も試験ファクターとして含めた。
【0094】
CEX工程の特徴付けのためにDOE試験デザインを使用した。この試験は、良好な生成物の品質と強固な処理工程に対する設計スペースとオペレーション範囲を規定するために重要であった。この試験では、凝集体のクリアランスおよび製品歩留まりの観点から洗浄工程に着目した。材料は、最適化されていないプロテインA条件から得た一般的なプロテインAのプールであった。二量体と中間体の両方がプロテインA中に存在し、それぞれが2.5%以上であった。この試験では、5mLのPoros XS樹脂を使用したOmnifitカラムを使用した。この試験において、JMP10.0を使用して、18回の実施を含むカスタムデザインを作成した。試験では、ロード量(20、25、30mg/mL樹脂)、洗浄pH(7.2、7.4、7.6)、洗浄塩[NaCl](24mM、27mM、30mM)、洗浄量(3CV、5CV、7CV)の4つのファクターを3段階に分けて設定した。溶出サンプルを、SECによる中間体種および単量体、A280分光光度計による回収、ELISAによるHCP試験およびqPCRによるDNAについての試験を行った。SECおよび単量体回収データについての等高線図(contour plots)を図16に示す。
【0095】
単量体%、中間体%、回収データを、JMP10でモデル化した。残存HCPとDNAは、全工程条件下において、Poros XSから回収されたmAbについて、アッセイの検出限界に近いか、それ以下であったので、即ち全ての例において許容可能であったため、これらの結果をモデルに含めなかった。3つ全ての反応を、まとめてモデル化した場合に、統計的に有意で良好なモデルが得られた(p<0.05)。処理モデルの結果から、洗浄pHが、%中間体、%単量体、%回収率に最も大きな影響を与えることが判った。
【0096】
収率は、主に洗浄pHと洗浄塩濃度の影響を受けた。ロードおよび洗浄CVは、収率に大きな影響を及ぼさないことが判った。
また、中間体種と洗浄pHの間に強い相関関係が見られた。
【0097】
考察
結果から、中間体種は単量体よりも酸性が高いことが判ったため、塩を添加する代わりに、pHを変えて表面電荷を改変する事を検討した。中間体種を効果的に除去するために、高pH洗浄を用いたCEX最終精製工程を開発した。我々は、工程の不純物(HCP、DNA、残留浸出プロテインA)と凝集体をコントロールするために、プロテインA(ProA)→CEX→AEXを含めたプラットフォーム精製を実施することに成功し、>99%以上の単量体純度かつ>80%以上の収率を有するCEX溶出プールを達成した。
【0098】
我々は、中間体種が、2つの主要な複合体:軽鎖または軽鎖二量体のいずれかと非共有結合している単量体、から構成されていることを同定した。第3の軽鎖を含むmAbが報告され、特徴付けられているが、そのような高い割合で軽鎖二量体を含むmAbは報告されていない。興味深いことに、両方の複合体は、SEC上で1つの中間ピークとして示されていたにも拘らず、高pH洗浄緩衝液の方が、軽鎖二量体を含む複合体を除去するのにより効果的であったため、それらは僅かに表面電荷が異なると考えられた。ここで問題となるのは、1)中間体種が単量体よりも表面電荷が低いこと、2)軽鎖二量体と単量体の複合体が、1つの軽鎖を含むものよりも電荷が少ないことをいかに説明するかという点である。この答えのために、異なるpH環境下での中間体種の静電学的性質を調べた。APBS(Adaptive Poisson-Boltzmann Solver)を用いて、pH5.5と7.4の環境下において、2つの中間体種と単量体の全体的な表面電荷を決定した。
【0099】
中間体種の固有の生物物理学的特性は、単量体と比較して、その稀な疎水性にも反映された。各種の疎水性を評価するために、結合溶出モード下において、HPLC疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用した。興味深いことに、中間体種は単量体よりも早く溶出したので、中間体種は単量体よりも疎水性が低いことが示唆された。中間体種の疎水性が低い理由は、mAb単量体とLCまたはLLとの結合により、特定の疎水性パッチが内部に埋もれている可能性が考えられる。同様に通常とは異なり、我々のProAクロマトグラフィー工程の開発中に、単量体種と比較して、アフィニティーProAカラム上でより早く中間体種が溶出することを見出した(データ示さず)。このような現象は、1)ProAの相互作用は、疎水性相互作用が主であり、水素結合および2つの塩橋からなること;2)mAbとLC/LLの結合部位が単量体のFab領域であることが判ったが、FabアームとFcの間には重要な構造的結合があり、Fabの含有量が様々な受容体へのFc結合に影響を与えること;3)余分なLCがmAbのFabと結合していたが、立体障害の可能性により、中間体種とプロテインA樹脂間の結合が弱くなり得ることを説明し得るものであろう。
【0100】
結論
ヒトモノクローナル抗体(mAb)のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー分析では、二量体種と単量体種の間に新しい凝集体の存在が示された。しかし、「中間体」と呼ばれるこの種の広範な特性評価により、この中間体種は、サイズおよび生物物理的属性の点で異なる種類であることが明らかになった。中間体は、主に分子量200kDaの2つの余分な軽鎖と結合したmAbを含む複合体であることが決定された。共有結合した軽鎖二量体は、単量体のFab部分と非共有結合していることが判明した。
【0101】
殆どの場合、凝集体は、その単量体種と比較して、疎水性が強く、高い正電荷を有していることが判明した。CEX上での単純な結合および溶出は、溶出プール中のHMWクリアランス<1%を達成するのに容易に実施することができる。しかし、この抗IP10mAbの中間凝集体は、単量体種よりも疎水性が低いだけでなく、単量体種よりも僅かに表面電荷が少ないことが判明し、これはダウンストリームである精製工程に大きな課題を示した。HICは、以下の課題:a)疎水性が非常に高いため、HIC結合/溶出または完全な溶出モードの実施が困難である点;b)中間凝集体の疎水性が低いために、カラムへの結合が弱く、HICのフロースルーが不適となる点があるため、mAb精製において望ましい最終精製工程ではない。従って、より効果的に凝集体を除去するためには、適切な最終精製ストラテジーが必要である。
【0102】
このmAbの中間凝集体の除去には、HICクロマトグラフィーおよびCEXクロマトグラフィーいずれも適していないと思われた。しかし、CEX洗浄緩衝液のpHを操作することで、約200kDaのMWを持つ中間体の種が単量体よりも電荷が低くなり、CEXカラム上での結合が単量体よりも弱くなり、2つの種を分離できることが判った。洗浄ストラテジーに着目して、溶出緩衝液を最適化することにより、効果的な洗浄にて中間凝集体を除去し、かつ全てのその他の凝集体種を除去することができるPoros XS樹脂を用いる最終精製工程を開発した。このmAbについては、プロテインAとCEXを含む2つのカラム工程で十分な不純物の除去とHMWの除去が可能であった。このような高pH洗浄ストラテジーは、凝集体が単量体よりも低いpI値を示す状況にも適用可能であると考えられる。
【0103】
さらに、このmAbの中間体種は、プロテインAカラムへの結合がより弱いことが判ったので(データは示さず)、効果的な洗浄やピークカットストラテジーを行うことで、一定レベルの中間体種を除去するために、捕捉工程を使用できる可能性がある。さらに、メルカプト-エチル-ピリジン(MEP)疎水性電荷誘導樹脂を用いて、凝集体、特に中間凝集体を除去することを評価した。その試験は、別の論文で発表する予定である。


【0104】
等価物
当業者であれば、本明細書に記載された本発明の特定の実施態様の多くの等価物は、単に常法のみを使用して認識または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の請求項に含まれることが意図される。
【0105】
参考文献による組み込み
本明細書に引用された全ての特許、出願中の特許出願およびその他の出版物は、その全体を参照することにより、本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
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【配列表】
2024059888000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。