IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネブラム テクノロジーズ シーオー エルティ―ディーの特許一覧

特開2024-599生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法
<>
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図1
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図2
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図3
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図4
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図5
  • 特開-生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000599
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20231226BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/53 M
G01N33/483 C
G01N33/53 D
G01N21/64 F
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022099356
(22)【出願日】2022-06-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】522248250
【氏名又は名称】ネブラム テクノロジーズ シーオー エルティ―ディー
【氏名又は名称原語表記】Nebulum Technologies Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】TAIWAN,Zhubey City,Fuxing 3rd Rd.,Sec.2,No.168 6F
(74)【代理人】
【識別番号】100102015
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユアン―シャオ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043FA02
2G043KA09
2G045AA24
2G045AA26
2G045CA11
2G045CA25
2G045CA26
2G045CA30
2G045CB02
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FA16
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB07
2G045FB12
(57)【要約】
【課題】本発明は、生検試料および生物学的試料を調製および分析するための方法を提供すること目的とする。
【解決手段】本発明により、3次元高分解能画像化および顕微鏡検査による診断のための液体生検および他の液体サンプルを固化および調製するためのマトリックス支援方法および組成物が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の標的成分のために生物学的材料を含む液体サンプルを分析する方法であって:
(a)前記生物学的材料を含む液体サンプルから得られた試料へ固化剤を添加する工程、
(b)分散された生物学的材料を含む固化サンプルを作成する工程、
(c)前記分散された生物学的材料中の1つ以上の標的成分を同定するために、前記固化サンプルを画像化する工程、
を含む方法。
【請求項2】
さらに、(i)前記固化剤を添加する前に、工程(a)において前記液体サンプルから得られた試料を、前記1つまたは複数の標的成分についての1つまたは複数のプローブで標識する工程:および/または(ii)工程(b)からの前記固化サンプルを、1つまたは複数の標的成分についての1つまたは複数のプローブで標識する工程、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固化剤を添加する前に、工程(a)における前記液体サンプルから得られた試料を、前記1つまたは複数の標的成分についての1つまたは複数のプローブで標識する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化サンプルに屈折率整合材料を導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体サンプルが液体血液サンプルである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、前記液体血液試料から赤血球および血小板を除去することを含むプロセスによって、前記液体血液試料から得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、前記液体血液サンプルから単離された末梢血単核細胞(PBMC)細胞を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の標的成分が核酸、蛋白質、ウイルスまたは小胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標識工程が、工程(a)において前記液体サンプルから得られた前記試料を分子プローブと接触させる工程:および/または工程(b)から得られた前記固化サンプルを分子プローブと接触させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記分子プローブが抗体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分子プローブが蛍光色素である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記分子プローブが核酸プローブである請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の標的成分が細胞外標的を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の標的成分が細胞性または細胞内標的を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試料をサンプルホルダーに移すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルホルダー内の前記サンプルを振とうまたは振動させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固化サンプルが、画像化に適した固体またはゲルブロックである請求項1に記載の方法。
【請求項18】
画像化が蛍光顕微鏡によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
画像化が、光シート蛍光顕微鏡法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記試料に対する固定手順をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記固定手順が、前記試料または前記固化サンプルを固定液中でインキュベートすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固定液が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エポキシ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記画像化が、前記固化サンプル中の特定の細胞型の存在または非存在を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
希少循環細胞の存在について液体血液サンプルを分析する方法であって:
(a)液体血液サンプルから得られた単離された末梢血単核細胞(PBMC)を含む試料を、希少循環細胞のための1つ以上のプローブで標識する工程、
(b)末梢血単核細胞(PBMC)を含む標識検体へ固化剤を添加する工程、
(c)分散した末梢血単核細胞(PBMC)を含む固化サンプルを作成する工程、
(d)場合により、画像化に適した屈折率を有する光学的に透明化された固化サンプルを提供するために、固化サンプルに屈折率整合材料を導入する工程、および
(e)1つまたは複数のプローブの存在を決定し、それによって液体血液サンプル中の希少循環細胞の存在を決定するために、工程(c)からの固化サンプルまたは工程(d)からの場合によって透明化された固化サンプルを画像化する工程、
を含む方法。
【請求項25】
前記標識が、白血球のためのプローブを添加することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数のプローブが、癌特異的抗原または腫瘍特異的DNAもしくはRNA配列を認識する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数のプローブが、抗体または核酸プローブから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数のプローブが、EpCAM、HER2、CDX2、CK20、CK19、PD/PDL-1およびEGFR抗原または対応する核酸配列のうちの1つまたは複数の検出を与える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固化剤が、低融解アガロース、アガロースおよびヒドロゲル前駆体から選択される成分を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記固化サンプルに屈折率整合材料を導入することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
固化した試料を生成することが、室温を超える固化剤を試料に添加すること、および試料が固体ゲルになるように低下した温度を達成することを可能にすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
固化サンプルの作成が、ゲル化を誘導するために試薬をヒドロゲル前駆体に添加することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記光学的に透明化されたゲル化サンプルが、屈折率整合材料を含む溶液中に浸漬されたサンプルホルダーに導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
画像化が、光シート顕微鏡法を用いて行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記希少循環細胞が循環腫瘍細胞である請求項24に記載の方法。
【請求項36】
液体生検から得られ、かつ固化サンプル内に固定化されたた分散生物学的材料を含む、画像化に適した固化サンプル。
【請求項37】
前記液体生検中の1つまたは複数の標的成分のためのプローブをさらに含む、請求項36に記載の固化サンプル。
【請求項38】
前記液体生検は血液サンプルであり、前記生物学的材料は末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項36に記載の固化サンプル。
【請求項39】
希少循環細胞をさらに含む、請求項38に記載の凝固サンプル。
【請求項40】
前記希少循環細胞が、循環腫瘍細胞、循環上皮細胞、および循環内皮細胞から選択される、請求項39に記載の固化サンプル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡法を含む顕微鏡法によって、生物学的試料、特に液体生検、および他の液体サンプルを分析するためのマトリックス支援方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体生検は、典型的には末梢血、骨髄、脳脊髄液、尿、唾液、痰、涙、精液、または他の組織源などの体液から得られる。液体試料中のバイオマーカーまたは成分は、疾患スクリーニング、検出、病期分類、およびサーベイランスなどの様々な診断用途のために評価または測定することができる。
【0003】
液体生検におけるバイオマーカーは細胞成分および細胞外成分を含むことができ、その選択は、医学的状態または治療状態などの複数の因子に依存することができる。例えば、バイオマーカーは、固形腫瘍または転移に由来する循環腫瘍細胞(CTC)およびCTCクラスター、ならびに心血管および他の状態に関連する循環内皮細胞(CEC)などの、稀な循環細胞を区別する抗原または他の属性に対応することができる。例えば、Lim et al. 2019, NPJ Prec. Oncol. 3, 23; Rostami et al. 2019, J. Sci: Adv. Mat. Dev. 4, 1-18; Schmidt et al. 2015, Trends Cardiovasc. Med. 25, 578-587を参照。そのような細胞は、遺伝的異常および他の分子特性についてさらに処理することができる。バイオマーカーはまた、循環腫瘍由来因子、分泌タンパク質、放出された小胞およびエキソソーム、ならびに無細胞核酸などの細胞外成分を同定することができる。無細胞核酸は、癌モニタリングに適用される無細胞腫瘍DNA(ctDNA)、ならびに母体血液中に見出され非侵襲性出生前試験に適用される細胞リー胎児DNA(cffDNA)を含む。Campos et al. 2018, Cancer J. 24, 93-103; Sifakis et al. 2014, Mol. Med. Rep. 11, 30 2367-2372を参照。その後のゲノミクスおよびタンパク質プロセシングは、細胞外バイオマーカーのさらなる分析を可能にすることができる。
【0004】
典型的な生検方法は、いくつかのアプローチを包含することができる。例えば、Harouaka et al., 2014, Pharmacol. Ther. 141, 209-221を参照。1つの一般的なアプローチは、細胞標的および細胞外標的に結合した抗体の検出を可能にする、マイクロ流体工学およびマイクロチップに基づく方法などの免疫親和性に基づく。これらの方法は、浮遊細胞と抗体被覆表面との間の抗体抗原結合に依存し、したがって、膜タンパク質などの標的細胞表面上に存在する抗原に限定される。加えて、これらの方法の有効性は、抗体による効率的かつ特異的な認識を可能にするのに十分なレベルの細胞表面抗原に依存する(例えば、細胞表面上での低いEpCAM発現は、不十分な細胞対チップ表面結合をもたらし得る)。これらの方法は一般に、複雑な試料の効果的な分析を不可能にする低いセル流量をもつ。したがって、そのような方法の範囲、感度、特異性、およびスループット、ならびに他の免疫親和性に基づく方法(磁気ビーズに基づくものなど)は限定される。
【0005】
別の一般的なアプローチは細胞学であり、顕微鏡下で細胞を直接検査する。しかしながら、このアプローチは、細胞の光散乱性のため、一度に(例えば、スライドガラス上の単一層として)少数の細胞のみを検査することに限定され、したがって、このアプローチを使用して、2ccで血液でさえ存在し得る数百万の細胞中の稀な標的を検出することは、実用的ではなく、経済的に実現可能ではない。
【0006】
別のアプローチ、フローサイトメトリーでは、毎秒数千個の細胞が1つまたは複数のレーザービームを1つずつ通過し、そこで、それらは、(例えば、細胞サイズおよび粒度に依存する)光散乱の異なるパターンおよび(どの蛍光プローブが細胞に結合されるかに依存する)蛍光発光を生じ得る。例えば、Flow cytometry: retrospective, fundamentals and recent instrumentation, Cytotechnology, 2012 Mar; 64(2): 109-130を参照。しかしながら、フローサイトメトリー法は、関心のある細胞がまれである場合、高い分解能および信頼性を提供しない。例えば、それらは、細胞の潜在的な形態学的または機能的特性を確認するために、細胞の直接目視検査を提供しない。さらに、ゲーティング問題は、蛍光信号強度と、検出器によって捕捉されたピクセル(分析されたサンプルのラベリング品質または形態学的詳細に関する情報を提供しない)とに基づいて生じ得る。例えば、小さなゲーティング変化または摂動でさえ、サイズが小さいかまたは微弱な蛍光シグナルを有するCTC細胞および他の稀な細胞(例えば、CEC)の排除をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらおよび他の制限を考慮すると、液体生検分析におけるさらなる改善が依然として必要とされている。
【0008】
本発明は、3次元ゲルまたは他の非液体形態で生検成分を標識し、分散させ、捕捉する方法および組成物を提供することによって、当技術分野におけるこれらおよび他の必要性に対処する。この形態で維持される場合、離散的で稀なバイオマーカーは、光シート蛍光顕微鏡法および他の方法などの迅速な画像化方法によって、高分解能および高感受性で検出することができる。より一般的には、これらの方法が、任意の(生物学的または非生物学的)サンプル中の成分に適用可能であり、その分解能は、液体中での分散、およびその後の非液体状態での捕捉および撮像によって改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開示は、本明細書にさらに記載されるように、液体生物試料を含む生物学的および非生物学的サンプル中の成分を調製および分析するためのマトリックス支援方法、たとえば、ゲル形成に基づくマトリックス支援方法を提供する。液体試料は、ヒトおよび動物を含む任意の供給源に由来し得る。実施形態では、それは末梢血、骨髄、脳脊髄液、および他の組織供給源から得られた液体生検に由来することができ、そのすべてをさらに処理することができる。実施形態において、それは、固体組織生検などの固体供給源を含む他の供給源から得られる材料の液体分散体に由来し得る。
【0010】
実施形態において、マトリックス支援方法は、生物学的材料を含む生物学的試料に固化剤(例えば、ゲル化剤)を添加すること;分散された生物学的材料を含む固化サンプル(例えば、ゲル化試料)を生成すること;および生物学的材料中の1つ以上の成分を同定するために固化試料を画像化することを含む。生物学的材料は、核酸、タンパク質、および小分子を含む任意の生体分子を含むことができ、これらは、実施形態では、医学的状態または疾患状態のバイオマーカーとしての役割をすることができる。例えば、生体分子は、血液中の稀な循環細胞、例えば、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、ならびに生物試料中に存在し得る他の細胞および細胞クラスターのバイオマーカーとして役立つことができる。実施形態では、試料中の生物学的材料は、例えば、大量の血液または他の試料源から細胞を濃縮することによって濃縮することができる。しかしながら、有利には、本開示の方法は、細胞の事前選択または事前スクリーニングを必要とせず、代わりに、本方法は、例えば、試料中の特異的細胞表面マーカーを同定する標識抗体を検出することによって、試料中の生物学的材料に結合した抗体または核酸プローブなどのバイオマーカー標識を検出することによって、非選択または非スクリーニング細胞のサンプルの不偏分析を可能にする。
【0011】
実施形態において、本明細書に開示されるにように、方法のいずれかにおいて、固化剤を添加する工程は、低融点アガロースまたはヒドロゲル前駆体などの液体ゲル溶液を試料に添加すること;ゲルなどの固体の形成を可能にする条件下で試料に直接薬剤を添加すること;ヒドロゲルを形成すること又は他の方法を含む。固化剤を添加する前に、本方法は本明細書に記載されるように、生物試料の成分を固定手順に供することを含むことができ、また、分子プローブを用いて、タンパク質または20核酸などの1つまたは複数の生体分子を標識することを含むこともできる。分子プローブとしては、本明細書に記載のものを含む、当技術分野で公知の抗体、色素、および核酸プローブが挙げられる。実施形態において、プローブは、循環腫瘍細胞およびクラスター、ならびに無細胞腫瘍または胎児由来DNA、ならびにDNAおよび染色体異常、増幅、欠失、および転座などの細胞核における遺伝的および構造的変化を同定するために使用することができる。
【0012】
実施形態において、固化剤を液体試料に添加するステップは、生物学的材料を含有するサンプル(例えば、生物学的材料を含むペレット)を、そのゲル化点を超えて上昇した温度を有する液体(溶融)ゲル溶液と混合することを含む。したがって、実施形態において、細胞ペレット、例えば、標識されPBS中で洗浄されたものは、ゲル溶液中に再懸濁され、冷却されてゲルになる。再懸濁ステップはまた、(例えば、PBST)処理後のペレットに関連した任意の微量液体を、ゲル溶液中で希釈および混合して画像化のための均一なサンプルをすることを可能にする。
【0013】
代替の実施形態では、固化剤を液体試料に添加するステップは、生物学的材料を含有するサンプル(例えば、生物学的材料を含むペレット)を、1つ以上のヒドロゲル前駆体を含む混合物または溶液と混合するステップと、固化(例えば、ゲル化)を誘導するように混合物の状態を変更するステップとを含む。ヒドロゲルの形成は当技術分野で公知であり、本開示による様々な方法によって達成することができる。例えば、第2の薬剤(例えば、Caイオンまたは架橋剤)を、当技術分野で公知の方法に従ってヒドロゲル前駆体のゲル化を誘導するのに十分な量で添加することができる。
【0014】
例えば、試料を遠心分離してペレットを得る工程、およびアルギン酸塩ヒドロゲル前駆体溶液に再懸濁する工程、および適当な量のCaCl液(例えば、0.2M)と混合してゲル化を開始する工程を含む、本明細書に記載のようにして、試料を処理することができる。この例示的な方法では、ゲルが短時間(例えば、約15分)内に形成され、その後、(必要な場合)屈折率整合のため、および画像化のために取り付けることができる。
【0015】
いずれの方法でも、分散された生物学的材料を含む固化サンプルを作成するステップは、固化剤を添加して固化を生じさせた後に、サンプルをサンプルホルダーに移すステップを含むことができる。他の実施形態では、サンプルは、固化剤が添加されるサンプルホルダー内で直接調製することができ、したがって、単一のチューブ内で予備ゲル化および固化ステップを一緒にできる。サンプルは、材料の分散を確実にするために、固化の前に、サンプルホルダー内で撹拌、振盪、振動、または他の方法で撹拌することができる。実施形態では、固化したサンプルは、所望の画像化システムに適合する形態である、ブロック、円筒形状、または任意の他の形状の、画像化に適した形状を有する。実施形態において、分散された生物学的材料を含む固化されたサンプルは、屈折率整合を達成するために、透明化(または平衡化)溶液に移される。他の実施形態では、屈折率整合は、例えば、使用される特定の固化剤の適切な光学特性のため必要ではない。例えば、分散された細胞のサンプルが透明なマトリックス中で調製される場合、次いで、個々に分散された細胞の表面上(または中)の標識された分子は屈折率整合材料(例えば、屈折率整合溶液)中でのプレインキュベーションなしで適切に画像化され得る。ある実施形態では、凝固は、生体試料を屈折率整合材料(例えば、屈折率整合溶液)と混合することを含み、それによって、屈折率整合材料による別個の処理の必要性を避けることがきる。
【0016】
固化サンプルを画像化するステップは、実施形態において、蛍光顕微鏡法、より具体的には蛍光光シート顕微鏡法を含む様々な顕微鏡技術によって、ブロックなどの適切に成形された固体サンプルを画像化することを含むことができる。実施形態において、画像化は、固化サンプル中の単一細胞同定を可能にし、より具体的には、例えば、循環腫瘍細胞または癌マーカーなどの1つまたは複数の癌細胞を検出することを含むことができる。固化サンプルのサイズは、用途、感度、およびアッセイされる生体分子に応じて変化し得る。実施形態では、画像化を使用して、細胞間相互作用、ならびに細胞の形態学的および構造的特徴、例えば、サイズ、形状、および核対細胞質比、ならびに細胞小器官の特徴を分析することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法は、例えば、液体および/または組織生検を顕微鏡的に分析することによって、疾患を評価、診断、またはモニタリングすること、疾患状態におけるサンプル(例えば、血液または組織試料)に対するそれらの効果について候補治療剤をスクリーニングすること、およびサンプル中のバイオマーカーのパネルの発現を評価することを含むが、これらに限定されない、多数の用途において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、液体生物学的サンプルを調製し、分析するための、本開示の一つの実施形態による、マトリックス支援プロトコルの模式図である。プロトコルにおける段階は、(1)細胞調製、(2)試料のゲル化および透明化、(3)試料のマウンティングおよび画像化、ならびに(4)試料の可視化および分析を含むことができる。
図2図2A~2Cは、実施例2に記載されるように、光シート顕微鏡画像化チャンバから得られた画像を示す。図2Cのスケールバー(20μm)。
図3図3A図3Cは実施例3に記載されるように、光シート顕微鏡画像化チャンバから得られた画像を示す。スケールバー:図3A(50μm);図3B(300μm);図3C(50μm)。
図4図4A~4Dは実施例4に記載されるように、光シート顕微鏡画像化チャンバから得られた画像を示す。図4Bのスケールバー(30μm)。
図5図5Aおよび5Bは、実施例5に記載の患者Aの3Dゲルデータを示す。図5Aのスケールバー(150μm)。
図6図6Aおよび6Bは実施例5に記載されるように、患者Bについての3Dゲルデータを示す。スケールバー:図6A(200μm);図6B(2μm)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本開示は、1つまたは複数のバイオマーカーの存在について、液体生検などの液体サンプルを分析するためのマトリックス支援方法および組成物を提供する。実施形態において、本発明の方法および組成物は、サンプル中の分散された材料を固化して、それらを三次元状態で捕捉および固定化するために使用される。続いて、材料中に存在し得る希少疾患マーカーなどの関心対象のバイオマーカーを高感度および高特異性で検出および決定することができる。本発明のマトリックス支援方法は、液体サンプルを、分散成分を有する固体サンプルに変換するための、溶融ゲル溶液またはヒドロゲル前駆体などの固化剤の使用を含む。
【0020】
実施形態では、本開示が、蛍光顕微鏡を含む顕微鏡によって液体生検および他の液体サンプルを分析するためのマトリックス支援方法および組成物を使用する、癌細胞マーカーなどの希少分子を含むバイオマーカーを検出するための三次元撮像アプローチを提供する。
【0021】
実施形態において、バイオマーカーは、循環腫瘍細胞および循環内皮細胞などの希少循環細胞の成分などの細胞成分を示す。例えば、バイオマーカーは、そのような腫瘍細胞を同定することができる細胞表面タンパク質、形態学的マーカー、または核酸配列を含み得る。実施形態において、バイオマーカーは、特定の疾患または健康状態を示す細胞外DNA、タンパク質、または小胞などの細胞外成分を示す。
【0022】
バイオマーカーは本明細書に記載されるように、公知の技術によって標識することができ、それらは、複雑なサンプルであっても、広範な画像化方法によって、より詳細には、光シート蛍光顕微鏡法および他の顕微鏡法を含む蛍光顕微鏡法によって検出される。
【0023】
用語と定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法、装置及び材料は、本発明の実施に使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されるが、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0024】
本明細書で使用するとき、「約」又は「およそ」という語は特定の値を含む一定の範囲の値を意味し、当業者は、特定の値と合理的に類似すると考える。実施形態において、「約」は、当該技術分野において一般的に許容される計測を用いて、標準偏差内であることを意味する。実施形態において、「約」は、特定の数値の+/-10%に及ぶ範囲を意味する。実施形態において、「約」は指定された数値を意味する。
【0025】
用語「約」が明示的に使用されるかどうかにかかわらず、本明細書に記載の全ての量は、実際の与えられた値、および当業者に基づいて合理的に推論されるのであろう値(そのような所与の値の実験および/または測定条件に起因する同等なおよび近似値を含む)である近似の値の両方を指すことを意味すると理解される。したがって、数値が「約」または「およそ」で始まる本開示の任意の実施形態について、本開示は、具体的な値が列挙される実施形態を含む。逆に、数値が「約」または「およそ」で始まらない本開示の任意の実施形態について、本開示は、数値が「約」または「およそ」で始まる実施形態を含む。
【0026】
特に明記しない限り、パーセンテージまたは重量(wt)パーセンテージとして提供される濃度は、重量/体積(w/v)濃度を指す。例えば、100mL溶液中の成分の2%または2重量%は、その成分の2グラムに相当する。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「ひとつの(a)」、「ひとつの(an)」、及び「その(the)」は、特に明記しない限り、単数及び複数の両方を意味すると理解されるべきである。したがって、「a」、「an」、および「the」(および、適切な場合、その文法的変形)は、1つまたは複数を指す。
【0028】
さらに、実施形態の項目、要素、または構成要素は、単数計として説明または特許請求され得るが、単数形への限定が明示的に述べられない限り、複数形はその範囲内であることが意図される。
【0029】
用語「含む」および「包含する」は、本明細書において、それらのオープンで非限定的な意味で使用される。本明細書で使用される他の用語および語句、ならびにその変形は、別段の明示的な記載がない限り、限定ではなく、オープンエンドであると解釈されるべきである。前述の例として、用語「例」は、その網羅的または限定的なリストではなく、議論中の項目の例示的な事例を提供するために使用される。「従来の」、「通常の」、「既知の」および同様の意味の用語などの目的は、記載された項目を所与の時間または所与の時間の時点で利用可能な項目に限定すると解釈されるべきではなく、代わりに、現在または将来の任意の時点で利用可能または既知であり得る従来の、または通常の技術を包含すると解釈されるべきである。同様に、本明細書が当業者に明らかであるかまたは知られている技術に言及する場合、そのような技術は、現在または将来の任意の時点で、当業者に明らかであるかまたは知られている技術を包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「固化サンプル」は非液体形態、例えば固体またはゲル形態のサンプルを指し、固体またはゲル材料は、3次元サンプル中に分散状態の生物学的材料を捕捉する、すなわち固定化するための支持マトリックスを提供する。続いて、サンプル中の分散した材料を、3次元で効率的に同定し画像化することができる。本明細書で使用される場合、用語「固化剤」はゲルを形成することができるゲル化剤、並びに、例えば、高密度で、分散された生物学的材料を支持するのに望ましいエポキシ及び他の剤を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的サンプル」および「生物学的試料」(および文脈に依存して、「サンプル」または「試料」)は、核酸またはタンパク質などの生体分子を含むか、または含むと考えられる任意の生物学的材料を指す。本明細書で提供される組成物および方法で操作することができるサンプルは、インビボまたはインビトロ供給源から得ることができ、したがって、げっ歯類モデルなどの対象から解剖された細胞、組織、ウイルス、および器官などの試料、ならびにインビトロで増殖させた細胞、組織、およびミニ器官などの試料を含む。例示的な生物学的試料には、これに限定されるものではないが、肝臓、脾臓、腎臓、肺、腸、胸腺、結腸、扁桃、精巣、皮膚、脳、心臓、筋肉、および膵臓の組織および器官を含む固形組織および器官が含まれる。実施形態において、サンプルは、マウス、ラット、および他の動物を含む動物から得られた全器官である。実施形態では、生物試料がげっ歯類、より具体的にはマウスなどからの脳組織または脳全体である。他の生物学的サンプルとしては、細胞、ウイルス、および他の微生物が挙げられる。実施形態において、生物学的サンプルは、ヒト、動物、または植物に由来する。実施形態では、サンプルは、ヒト、イヌまたはネコなどのコンパニオン動物、ウシ、ヒツジおよびブタなどの農業用動物、ラットまたはマウスなどのげっ歯類、動物園動物、たとえばサルなどの霊長類に由来する。
【0032】
例示的な生物学的サンプルとしては、生検に由来する材料、骨髄サンプル、器官サンプル、皮膚断片、生体、および臨床的または法医学的状況から得られる材料が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態では、生物学的サンプルは組織サンプルであり、好ましくは臓器サンプルである。サンプルは、疾患もしくは他の病態に罹患しているか、またはそれらが疑われるか(正常もしくは罹患している)、または正常もしくは健康であると考えられる動物またはヒト対象から得ることができる。器官および組織サンプルなどの試料は、本明細書に記載の方法を使用して収集および処理されることができ、処理の直後に顕微鏡分析に供され得るか、または保存され、将来の時間、例えば、長期間保存した後に、顕微鏡分析に供され得る。実施形態において、本明細書に記載の方法は、生細胞を分析するために使用することができ、他の実施形態において、本明細書に記載の方法は、固定細胞を分析するために使用することができる。
【0033】
特定の実施形態では、生物学的サンプルは、末梢血、骨髄、脳脊髄液、尿、唾液、痰、涙、精液、または他の組織源などの体液から得られる液体生検である。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「生体分子」は、「分子」と変更可能であり、生物学的サンプルまたは試料中に存在する分子を指す。一態様では、生体分子は内因性生体分子である。別の態様では、生体分子は外因性生体分子である。外因性生体分子の非限定的な例としては、人工的に移植された生体分子、例えば、ウイルスまたはプラスミドによって移入または発現された生体分子が挙げられる。生体分子は、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、ステロイド、代謝産物、および細胞、組織、または器官内の他の細胞下構造物または成分が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の非限定的な例としては、酵素、膜タンパク質、転写因子、シナプスタンパク質、および神経マーカーが挙げられる。
いくつかの非限定的な実施形態では、生体分子は、高分子のサブユニット、受容体、受容体サブユニット、膜タンパク質、中間フィラメントタンパク質、膜ポンプ、転写因子、およびそれらの組み合わせから選択される。他の非限定的な実施形態では、生体分子は、Olig2(希突起膠細胞転写因子)、NeuN(神経核抗原)、NKCC2(Na+K+Cl Cotransporter 2)である。他の非限定的な実施形態では、生体分子はRNAを含む。さらに他の非限定的な実施形態では、生体分子はDNA分子を含む。実施形態において、生体分子は、構造上に存在し、構造物の例としては、鞭毛、繊毛、シナプス、シナプス棘、細胞外マトリックス(ECM)、細胞壁、細胞エンベロープ、膜、細胞質、ゴルジネットワーク、ミトコンドリア、小胞体(ER)(例えば、粗面ERまたは滑面ER)、核、中心小体、リボソーム、ポリリボソーム、リソソーム、リポソーム、細胞骨格成分、小胞、顆粒、ペルオキシソーム、液胞、プロトプラスト、トノプラスト、原形質連絡色素体、葉緑体、仮足、脳の血管関連構造、脳の高密度星状細胞ネットワーク、またはそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態において、生体分子は、癌細胞の表面上に発現されるタンパク質などの細胞マーカーである。
【0035】
実施形態では、「生体分子」は、液体生検サンプル中にあり、癌などの疾患状態、または代謝障害などの医学的状態についてのスクリーニング、検出、病期分類、またはサーベイリング(モニタリング)などの診断用途のために評価または測定される。実施形態において、生体分子は、非侵襲的出生前スクリーニングまたは診断試験において評価または測定される。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「標識」は、本開示のサンプル内の特定の標的部分の存在または非存在のシグナルベースの指標を提供することができる、現在知られているか、または将来発見される任意の技術および試薬を指す。標識剤の非限定的な例としては、小分子、色素、抗体、酵素、ナノ粒子、核酸プローブ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの非限定的な実施形態では、標識剤は、標識、例えば、発色性標識、蛍光標識、放射性核種結合標識、またはそれらの組合せを含む。
【0037】
本開示の一態様は、1つまたは複数の標的成分のための生物学的材料を含む液体サンプルを分析する方法を提供する。1つの例示的な実施形態では、本発明の方法は、生物学的材料を含む液体サンプルから得られた試料に固化剤を添加することと、分散した生物学的材料を含む固化サンプルを作成することと、および分散された生物学的材料中の1つ以上の標的成分を同定するために、固化されたサンプルを画像化することを含む。
【0038】
実施形態では、本開示による液体サンプルを分析する方法は、固化剤を添加する前に、液体サンプルから得られた試料を、1つまたは複数の標的成分についての1つまたは複数のプローブで標識すること、および/または固化したサンプルを1つ以上の標的成分のための1つ以上のプローブで標識することをさらに含む。例示的な一実施形態では、本発明の方法は、固化剤を添加する前に、液体サンプルから得られた試料を、1つまたは複数の標的成分についての1つまたは複数のプローブで標識することを含む。実施形態では、本発明の方法は、固化した試料に屈折率整合材料を導入することをさらに含む。
【0039】
実施形態では、液体試料は液体血液サンプルである。例えば、液体血液サンプルから得られた試料は、それを処理して液体血液サンプルから赤血球および血小板を除去することができ、および/または、それは、液体血液サンプルから単離された末梢血単核細胞(PBMC)細胞を含む試料でありうる。あるいは、他の用途では、赤血球または液体サンプルの他の成分を単離することができる。あるいは、試料は、他の生物学的液体および血液以外の哺乳動物(例えば、ヒトまたはラット)から得られた液体から得ることができる。
【0040】
ある実施形態では、1つまたは複数の標的成分は、核酸、タンパク質、ウイルス、または小胞を含む。ある実施形態では、1つ以上の標的成分は細胞外標的を含む。ある実施形態では、1つまたは複数の標的成分は細胞または細胞内標的を含む。
【0041】
実施形態では、上記実施形態のいずれかに記載されるように、標識することは液体サンプルから得られた試料を分子プローブと接触させること、および/またはステップ(b)からの固化試料を分子プローブと接触させることを含む。分子プローブは、別々に、例えば、抗体、蛍光色素または核酸プローブであってもよい。
【0042】
実施形態では、本開示による液体サンプルを分析する方法は、試料をサンプルホルダーに移すことをさらに含む。本発明の方法は、例示的な実施形態では、サンプルホルダー内のサンプルを振盪または振動させることをさらに含むことができる。例示的な実施形態では、固化サンプルは、画像化に適した固体またはゲルブロックである。
【0043】
実施形態では、本開示による液体サンプルを分析する方法は、(凝固前に実施される場合は)試料を、または固化サンプルを固定液中でインキュベートすることなどによって、試料に固定手順を実行することをさらに含む。例示的な実施形態では、固定液は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エポキシ、またはそれらの任意の2つ以上の混合物を含む。
【0044】
上記の実施形態のいずれかに記載されているように、イメージングは、例えば、当業者に公知の顕微鏡法およびカメラ技術を使用して行うことができる。例えば、実施形態では、イメージングは、光シート蛍光顕微鏡法などの蛍光顕微鏡法によって実行される。例示的な実施形態では、イメージングは、固化サンプル中の特定の細胞型の存在または非存在を特定する。
【0045】
本開示の1つの例示的な実施形態は、これに限定されないが、例えば循環腫瘍細胞などの希少な循環細胞の存在について液体血液サンプルを分析する方法を提供する。ひとつの実施形態では、本発明の方法は、液体血液サンプルから得られた単離された末梢血液単核細胞(PBMC)含む試料を希少循環細胞のための1つまたは複数のプローブを用いて標識すること、末梢血単核細胞(PBMC)を含む標識試料に固化剤を添加すること、分散した末梢血単核細胞(PBMC)を含む固化サンプルを作成すること、任意選択で、屈折率整合材料を固化サンプルに導入して、イメージングに適した屈折率を有する光学的に透明な固化サンプルを提供すること、および固化サンプルまたは光学的に透明化された固化サンプルをイメージングして、1つまたは複数のプローブの存在を決定し、それによって、液体血液サンプル中の希少循環細胞の存在を決定することを含む。標識は、例えば、対照としての役割を果たすことができる白血球のためのプローブを添加することをさらに含むことができる。
【0046】
実施形態において、1つ以上のプローブは、癌特異的抗原または腫瘍特異的DNAもしくはRNA配列を認識する。例えば、1つまたは複数のプローブは、抗体または核酸プローブから選択することができる。1つの態様において、1つまたは複数のプローブは、EpCAM、HER2、CDX2、CK20、CK19、PD/PDL-1およびEGFR抗原または対応する核酸配列の1つまたは複数の検出を提供する。
【0047】
実施形態では、上記実施形態のいずれかによる液体サンプルを分析する方法は、固化サンプルに屈折率整合材料を導入することをさらに含む。特定の実施形態では、光学的に透明化されたゲル化サンプルが屈折率整合材料を含む溶液中に浸漬されるサンプルホルダーに入れられる。
【0048】
一つの実施形態において、固化剤は、低融点アガロース、アガロースおよびヒドロゲル前駆体から選択される成分を含む。例示的な実施形態では、固化サンプルを作成するステップは、室温より高い温度で、サンプルに固化剤を添加すること、およびサンプルを固体ゲルになる低い温度にすることを含む。他の実施形態では、固化サンプルを作成するステップは、ゲル化を誘導するためにヒドロゲル前駆体に薬剤を添加することを含む。
【0049】
一つの実施形態では、本開示は、液体生検(例えば、血液試料)から得られ固化試サンプル内に固定化された分散生物材料を含む、画像化に適した固化サンプルを提供する。固化サンプルは、液体生検における1つ以上の標的成分のためのプローブをさらに含むことができる。生物学的材料は、末梢血単核細胞(PBMC)および循環腫瘍細胞、循環上皮細胞、および循環内皮細胞などの希少循環細胞を含む。
【0050】
低融点(LM)アガロースは、市販されており、標準的なアガロース中に存在する鎖内水素結合の数を減少させ、それによって比較的低い融点およびゲル化温度をもたらす、ヒドロキシエチル化などの当技術分野で公知の化学的誘導体化プロセスの結果物である。LMアガロースは一般に、(i)標準的なアガロースと比較して比較的低い融解およびゲル化温度、および(ii)標準的なアガロースゲルと比較してより高い透明度(ゲル透明度)を含むいくつかの特性を有する。
【0051】
特定の例示的な実施形態では、LMアガロースは、ゲル化温度≦30℃(例えば、26℃~30℃)、および/または融解温度≦65℃(両方とも1.5wt%濃度で)、および/またはゲル強度(1wt%濃度で)≧200g/cmを有する分子生物学等級LMアガロースであり、通常の融解アガロースよりも大きいふるい分け特性およびより高い透明度をもつゲルを作ることができる。本開示による使用に適した市販のLMアガロースの例としては、SeaPrep(商標)アガロース(Lonzaカタログ番号50302)、SeaPlaque(商標)アガロース(Lonzaカタログ番号50104)およびUltraPure(商標)低融点アガロース(ThermoFisher Scientificカタログ番号16500500)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
実施形態では、標識剤は、組織内の特定の標的部分に結合することができる小分子を含む。小分子色素の例としては、DAPI、ヨウ化プロピジウム、レクチン、ファロイジン、および組織内の標的部分に結合することができる任意の他の小分子が挙げられる。実施形態では、小分子は、DAPI、ヨウ化プロピジウム、またはアクリジンオレンジによって生成される蛍光シグナルなどのシグナルを本質的に生成する。実施形態において、小分子は、インジケーターにコンジュゲートされて、シグナル、例えば、レクチン色素の場合、蛍光シグナル生成インジケーター、または非蛍光シグナル生成インジケーター、例えば、比色インジケーター(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)または3,3’-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB))を生成する。実施形態において、染色剤は、本明細書にさらに記載される抗体を含む。実施形態において、染色は、修飾核酸鎖標的化検出活性を含む。他の実施形態では、染色は、組織内の核酸の所定の配列にハイブリダイズできるヌクレオチドベースのプローブを含む染色のようなインサイチュハイブリダイゼーションを含む。実施形態では、ヌクレオチドベースのプローブは、ヌクレオチドベースのプローブのシグナル生成および検出を可能にするための標識(例えば、上記で提供される標識のうちの1つまたは複数)を含む。さらなる実施形態では、ヌクレオチドベースのプローブは、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)のような蛍光標識を含む。
【0053】
実施形態において、生物学的サンプル、例えば、細胞、組織、器官、生物、または器官サブ構造は、内因性シグナル、例えば、内因性蛍光分子を提供する。内因性蛍光分子の例は、蛍光タンパク質レポーター(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP))を含む。他の実施形態において、サンプルは、トランスジェニックモデルに由来し、蛍光分子は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターによって発現される。さらに他の局面において、生物は、組換えウイルスに感染されるか、または蛍光タンパク質をコードするプラスミドで形質転換される。例示的な蛍光タンパク質レポーター は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、EGFP(強化GFP)、BFP(青色蛍光タンパク質)、CFP(シアン)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、wtGFP(白色GFP)、YFP(黄色蛍光タンパク質)、dsRed、mCherry、mVenus、mCitrine、tdTomato、ルシフェラーゼ、mTurquoise2などを含む。
【0054】
上述のように、液体試料は、抗体などの分子プローブで標識することができる。実施形態では、抗体は、ビオチン標識、蛍光標識(フルオロフォア)、酵素標識(例えば、HRPまたはDAB)、補酵素標識、化学発光標識、または放射性同位体標識などのシグナルを直接的または間接的に生成する標識を含む一次抗体である。他の局面において、一次抗体は、(例えば、シグナルを提供するために、標識されたストレプトアビジンまたは酵素/補酵素基質などのさらなる試薬を用いて、または用いずに)単一の染色として適用される。実施形態において、一次抗体は標識を含まず、代わりに、標識にコンジュゲートされた二次抗体によって検出される。
【0055】
一次または二次抗体に結合させることができるフルオロフォアの例としては、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 680、またはAlexa Fluor 750が挙げられる。他の例示的なフルオロフォアとしては、BODIPY FL、クマリン、Cy3、Cy5、フルオレセイン(FITC)、オレゴングリーン、パシフィックブルー、パシフィックグリーン、パシフィックオレンジ、テトラメチルローダミン(TRITC)、テキサスレッド、APC-eFluor 780、eFluor 450、eFluor 506、eFluor 660、PE-eFluor 610、PerCP-eFluor 710、Super Bright 436、Super Bright 645、Super Bright 702、Super Bright 780、Super Bright 600、Qdot 525、Qdot 565、Qdot 605、Qdot 655、Qdot 705、Qdot 800、R-フィコエリスリン(R-PE)、およびアロフィコシアニン(APC)が挙げられる。
【0056】
固化サンプルは、任意の顕微鏡ベースの用途によってイメージングすることができ、従って、開示されている主題は、特定に実施形態であるが、しかし、そこで用いられている特定のイメージング技術に限定する訳ではない。顕微鏡ベースの用途の例としては、免疫蛍光法、共焦点顕微鏡法、二光子顕微鏡法、超解像顕微鏡法、光学シート顕微鏡法、ならびにx線顕微鏡法などが挙げられるが、これらに限定されない。「検出可能な試薬」または「検出可能な標識」という用語は、バイオマーカーの直接的または間接的検出のために使用され得る分子を指す。多種の検出可能な薬剤が当技術分野で公知であり、当業者によって容易に同定および使用することができる。適切な検出可能な薬剤は、蛍光色素(例えば、 フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシネート(TRITC)、Cy3、Cy5、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)488)、蛍光タンパク質マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリンなど)、酵素(例えば、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属などを含むが、これに限定されない。
【0057】
「免疫蛍光マーカー」という用語は、蛍光色素を細胞内または細胞上の特定の分子に向けさせる抗体またはその機能的断片である検出可能な試薬を指す。免疫蛍光マーカーは、蛍光顕微鏡を用いて、所望のサンプルの免疫染色を生成する方法において使用することができる。免疫蛍光マーカーは、本明細書に記載の免疫細胞化学(ICC)法または免疫組織化学(IHC)法でもまた用いることができる。例えば、本開示の文脈において、免疫蛍光マーカーは、本明細書に記載されるように、稀な循環細胞(例えば、CTCまたはCTC模倣体)を検出するために使用され得る。
【0058】
「抗体」という用語は、天然であるか、または完全にもしくは部分的に合成的に産生されるかにかかわらず、任意の免疫グロブリンまたはその誘導体を指す。特異的結合能を維持する全ての抗体誘導体もまた、本明細書に開示される方法において使用され得る。本開示の抗体は、バイオマーカーに特異的に結合することができる。例えば、抗体は単一のバイオマーカー(例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4))に特異的に結合し得る。さらに、抗体は汎特異的であり得る。例えば、本開示の汎特異的抗体は、バイオマーカーファミリーの1つ以上のメンバー(例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン1、2、3、4、5、6、7および8を含む、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンファミリーの1つ以上のメンバー)に特異的に結合することができる。抗体は免疫グロブリン結合ドメインと相同または大部分が相同である結合ドメインを有することができ、天然源に由来するか、または部分的にもしくは全体的に合成的に産生され得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は一本鎖抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab、Fab、F(ab)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFdフラグメントを含むが、これらに限定されない抗体フラグメントであり得る。それらのより小さいサイズのために、抗体断片は、特定の適用において、完全な抗体を超える利点を提供することができる。あるいはまたはさらに、抗体は、例えば、ジスルフィド結合によって互いに連結される複数の鎖、およびそのような分子から得られる任意の機能的断片を含むことができ、そのような断片は、親抗体分子の特異的結合特性を保持する。当業者は、抗体は、例えば、ヒト化、部分ヒト化、キメラ、キメラヒト化などを含む様々な形態のいずれかで提供され得ることを理解するであろう。抗体は、任意の適切な当技術分野で公知の方法を用いて調製することができる。例えば、抗体は、インタクトな抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生され得るか、または部分抗体配列決定をコードする遺伝子から組換え的に産生され得る。
【0059】
「バイオマーカー」という用語は、生物学的分子または生物学的分子の断片を指し、その変化および/または検出は、希少循環細胞(例えば、CTC、CTC模倣体、またはCEC)または他の標的成分の特定の物理的条件または状態と相関し得る。用語「マーカー」および「バイオマーカー」は、本開示全体を通して互換的に使用される。そのようなバイオマーカーには、ヌクレオチド、核酸、ヌクレオシド、アミノ酸、糖、脂肪酸、ステロイド、代謝産物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、抗体、生物学的高分子の代替としての役割を果たす関心領域、およびそれらの組み合わせ(例えば、糖タンパク質、リボ核タンパク質、リポタンパク質)を含む生物学的分子が含まれるが、これらに限定されない。この用語はまた、生物学的分子の部分または断片、例えば、タンパク質またはポリペプチドのペプチド断片も包含する。本開示の文脈において、例えば、循環黒色腫細胞(CMC)などのCTCの例示的なバイオマーカーには、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、プレメラノソームタンパク質(Pmel17)およびS100カルシウム結合タンパク質A1(S100A1)が含まれる。
【0060】
方法
実施形態において、本開示は、生物学的または非生物学的成分を含み得る液体サンプル中の物質を分析することを提供する。したがって、本方法は、液体生検および生物学的成分を含む他のサンプルを分析するために使用することができる。生物学的成分は、細胞材料、ならびに小胞および無細胞DNA、分泌タンパク質、および他の無細胞生体分子などの細胞外材料を含むことができる。
【0061】
実施形態では、本方法は、液体サンプルを固化し、それによって、顕微鏡適用(または他のイメージング方法)によってその後にイメージ化することができる形態で分散材料を捕捉(固定化)するステップを含む。結果として得られる走査画像は、固体サンプル中に3次元で固定化され空間的に分離された成分の検出を可能にし、高解像度および高感度を可能にする。次いで、蛍光標識抗体で標識されたものなどの選択的に標識された成分を、関心対象の標識標的を検出するために、蛍光顕微鏡法などによって感度よく迅速に同定することができる。
【0062】
したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、事実上、液体生検の3Dスキャンまたは画像を提供する。まれなバイオマーカーは、例えば、結果として得られた走査サンプル中の離散信号として表れうる、循環腫瘍細胞(および無傷の循環腫瘍細胞クラスター)などのまれな循環細胞、または無細胞核酸を含むが、これらに限定されない。これは、そのようなバイオマーカーが間接的に検出されるマイクロ流体ベースの用途、または標準スライド上で重複する細胞の小サンプルを検査することに基づく従来の細胞学的方法などの他の方法とは対照的である。
【0063】
本開示の実施形態では、本発明の方法は、分析される成分にいかなる形態学的または細胞サイズのカットオフも課さないという追加の利点を提供する。例えば、特定の濃縮方法に基づく既存のCTC検出技術は、稀なバイオマーカーを誤って見逃してしまう可能性がある。加えて、既存のCTC検出方法の基礎をなす複数の処理ステップは、検出方法の感度および精度をさらに低下させ得る細胞バイオマーカーの変化を誘導し得る。対照的に、本明細書に記載の方法の実施形態は、分析される生物学的材料に関するいかなる特定の選択基準も必要としない。代わりに、それらは、形状および形態にかかわらず、細胞および細胞外物質の複雑なアレイの捕捉を可能とし、3次元凝固サンプル中で捕捉し、保存し、空間的に分離することを可能にする。
【0064】
例示的な実施形態では、本開示の方法は、固化サンプルのマトリクス中の空間的分散(分離)のために、固化サンプル中の個々の細胞の離散的分離および同定を可能にする。さらに、本開示の方法は、同定された細胞自体の具体的な詳細(例えば、細胞の形態学的詳細)およびサンプル内の他の細胞に対する同定された細胞の空間的関係の分析を可能にする。例えば、例示的な実施形態では、本開示の方法は、細胞のクラスターの分析を可能にし、クラスター内の1つ細胞を、興味対象の特定の細胞をすることができる。対象となる特定の細胞の形態は例えば、対象における疾患状態の臨床的進行を確認するために、その非結合状態対クラスターにおける細胞の形態で比較することもできる。他の例示的な実施形態では、細胞の断片(例えば、白血球中の細胞断片)、または細胞によって分泌される生体分子を、本明細書に開示される方法に従って分析することができる。
【0065】
マトリックス支援法
本開示は、一部には、循環腫瘍細胞または無細胞腫瘍DNAなどの稀なバイオマーカーを含み得る生検サンプルなどの液体サンプルを処理および分析するためのマトリックス支援方法を提供する。
【0066】
例示的な実施形態では、方法におけるステップは、3D空間構成におけるサンプルの分散成分の画像を作成するために使用される。実施形態では、本方法は、光シート顕微鏡法または他の顕微鏡技術などによる迅速な画像化を可能にする形態で分散された生物学的材料を含む液体サンプルを固化することを含む。実施形態では、本方法は、(a)生物学的材料を含む液体試料に固化剤を添加する工程、(b)生物学的材料を含む固化サンプルを作成する工程、(c)前記固化サンプルを画像化して前記分散された生物学的材料中の1つ以上の成分を同定する工程、を含む。
【0067】
実施形態では、液体サンプルは生物学的材料を含み、複数の処理ステップを経るが、これには、以下に詳細に説明する図1に示される工程に示されるものが含まれ得るが、これに限定されない。
【0068】
ステップ1:細胞調製
実施形態において、本方法は、生物学的試料を用いて液体サンプルを調製または調達することを含むが、生物学的試料は、分散され、続いて固体形態で捕捉され得、それによって高分解能検出が可能になる。
【0069】
血液サンプルとして図1に示されているが、液体サンプルは、複数の供給源、例えば、骨髄、脳脊髄液、尿、唾液、痰、涙、精液、または他の流体供給源に由来し得る。例示的な開示はCTC細胞に言及するが、液体生検試サンプル中に存在し得る他のバイオマーカーにも同様に適用することができることにさらに留意されたい。
【0070】
実施形態では、液体サンプル中の材料が、液体生検などで得られるような処理された血液サンプルから得られる。処理は、1つまたは複数のステップを含むことができる。例えば、処理は、赤血球の除去およびPBMC細胞の単離(収集)を含むことができる。より具体的には、血液サンプルを遠心分離に供して、赤血球(赤血球細胞)および血小板を除去することができる。処理はまた、密度勾配遠心分離などの周知の分離技術によって、血液サンプルを異なる成分に分画することを含んでもよい。例えば、そのような分離技術は、赤血球(RBC)除去および末梢血単核(PBMC)収集または単離を含むことができる。
【0071】
図1に示されるように、例示的な実施形態では、血液サンプルがEDTAまたはヘパリンを含む真空採血管などの、抗凝固剤を含む管または容器内に提供され得る。血液サンプルは、Lymphoprep(商標)またはFicollPaque(商標)などの細胞分離培地で処理し、遠心分離し、上清を除去することができる。あるいは、PBMC単離管を用いることができる(例えば、Stemcell(商標)Technologiesから入手可能なSepMate(商標)管)。血液サンプルは、所望であれば、当業者に知られているプロトコルに基づいて、市販されているまたは合成した塩化アンモニウム溶液(Stemcell(商標) Technologies社から入手可能な塩化アンモニウム溶液など)の適用などの公知の技術に従って赤血球溶解に供することもでき、それは、遠心分離の前または後に実施することができる。他の実施形態では、微量の赤血球がサンプルの画像化および分析に影響を及ぼさないので、赤血球溶解は使用されない。
【0072】
例示的な実施形態において、ペレット(例えば、単離されたPBMCを含有するペレット)は、例えば、遠心分離から得られ、以下に記載されるようにさらに処理される。ある例示的な実施形態では、ペレットの量は少なくとも5μl、または少なくとも10μl、または少なくとも15μlであり得る。他の例示的な実施形態では、より少ない量のペレットが処理される。いずれにしても、ペレット全体はゲルに封入され、それは、当技術分野で公知のマイクロ流体プロセスで用いられる典型的な処理量よりも桁違いに大きいサイズを有する。
【0073】
実施形態において、液体サンプル中の分散された材料は、他の組織源に由来することができる。例えば、それらは、血液以外の体液、例えば、骨髄、脳脊髄液、尿、唾液、痰、涙、精液、または他の体液源から得られた生検に由来し得る。あるいは、液体サンプル中の分散された材料は、腫瘍から得られた組織サンプル、または関心のある構造もしくは器官に由来する他の固体サンプルなどの、固体生検からの材料の液体分散を反映し得る。実施形態において、分散された材料は、非組織源から由来することができる。実施形態において、試料中の生物学的材料は、大量の試料を濃縮することによって濃縮され得、それは、例えば、より大量の血液、例えば、2ml、4ml、8ml、もしくはそれ以上、または他の試料源から、細胞を収集およびペレット化することであり得る。
【0074】
実施形態において、試料中の生物学的材料は、例えば、大量の血液(たとえば、0.5ccまたは1ccまたはそれ以上)または他の組織源から細胞ペレットを遠心分離および収集するで、比較的大量のサンプルから濃縮することによって濃縮することができる。
【0075】
液体サンプル中に分散させる前に、材料は、追加の処理ステップを受けることができる。実施形態では、生体材料は、本明細書でさらに論じるように、液体サンプル中に分散させる前に固定ステップを受けることができる。あるいは、固定は、生物学的材料が液体サンプル中に収集された後に行われてもよい。固定はまた、細胞が標識された後に行ってもよい。本明細書の開示による使用を見出すことができる特定の固定剤は、特に限定されず、当業者に公知のものを含む。例示的な実施形態では、固定剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エポキシ、または前述のうちの1つ以上の架橋生成物のうちの1つ以上を含む溶液である。
【0076】
CTCなどのまれな標的の場合、大量の液体生検サンプルを連続的に収集し、単一のチューブに収集することができる。例えば、2ml以上の血液を収集し、処理し、細胞ペレットをプールし、液体サンプル緩衝液、例えばPBS中に再懸濁することができる。
【0077】
実施形態において、生物学的材料は、循環腫瘍細胞(CTC)、循環腫瘍細胞断片、循環腫瘍細胞模倣体、循環上皮細胞(CEC)、および類似の稀な循環細胞を含む。
【0078】
実施形態において、本発明の方法は、目的の1つ以上の標的を標識すること、および3次元架橋網目構造を含む固体形態で分散標識物質を捕捉することを可能にする固化剤を添加することをさらに含む。言い換えれば、固化剤は、試料成分の3D可視化を支持するための固体マトリックスを提供する。
【0079】
標識は、免疫学的および分子的手段を含む、生体分子を同定するための当技術分野で公知の任意の方法を含むことができる。例えば、タンパク質は、細胞表面上、細胞内、または細胞外にあるかどうかにかかわらず、関心対象の標的となる蛋白質は、例えば蛍光コンジュゲート抗体で直接、または例えば免疫組織化学もしくは一次抗体およびコンジュゲート二次抗体で間接的に検出される抗体(または関連する免疫学的試薬)で標識することができる。標識化(例えば、化学的および免疫標識化)は1つの工程で行うことができ、または代替の実施形態では、標識化は多工程プロセスである。
【0080】
例えば、異なる宿主種からの複数の抗体を、同時に、またはほぼ同時に、または異なる時期に導入することができる。例示的な実施形態では、一次抗体は、蛍光色素または酵素、例えば、フルオロフォアまたは対応する二次抗体などのタグとコンジュゲートする(または予め標識する)ことができ、一工程で混合物に導入することができる。ある実施形態では、標識工程は一般に後洗浄を必要とし、したがってさらなる遠心分離および上清除去工程は細胞損失または細胞損傷をもたらし、潜在的にシグナル感受性を低下させる可能性があるので、一段階標識は多段階標識よりも好ましい。同様に、DNAまたはRNAなどの生体分子標的は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などのために直接または間接的に検出される核酸プローブで標識することができる。必要に応じて、ビオチンストレプトアビジン結合およびポリメラーゼ鎖反応に基づく系などの利用可能な技術によって、シグナルをさらに増幅することができる。実施形態では、プローブは、無細胞腫瘍または胎児由来DNAなどの他の疾患バイオマーカーを同定することができ、またはDNAおよび染色体異常、増幅、欠失、および転座などの細胞核における遺伝的および構造的変化を可視化することができる。
【0081】
サンプルはまた、例えば、(核成分に結合する)DAPIおよびPIならびに(膜成分に結合する)DiDまたはDiLなどの蛍光色素を含む、細胞成分を対象とする様々な色素を用いて、当技術分野で公知の他の方法によって標識することもできる。
【0082】
標識はまた、目的の標的(生体分子)への免疫学的または分子試薬の効率的かつ特異的な結合を可能にするために、当技術分野において適切であり公知であるように、細胞透過化または固定などの他の工程を含んでもよい。ある実施形態では、標識はサンプルのゲル化および透明化の前に適用される。ある実施形態では、標識は好ましくは、例えば、生物学的材料が液体(例えば、血液)サンプル中に分散されている場合は、サンプルからペレットを得るかまたは成分を分離する前に適用される。
【0083】
標識は、細胞をゲル状態に固定した後に行うこともできる。例えば、液体サンプルから収集された細胞(例えば、血液から得られたPBMC)をPFA溶液に導入し、標識前にゲルを直接形成することができる。次いで、ゲルサンプルは、受動的に、または他の能動免疫標識アプローチ、例えば、電気泳動または圧力に基づくアプローチを伴う方法によって、プローブで標識することができる。したがって、実施形態では、固化後、処理されたゲルサンプルを免疫標識することができる(すなわち、初めて標識するか、またはさらなる標識を適用する)。ゲル化後の標識化のこのアプローチはより長い処理時間を要し得るが、標的細胞数の保存も増強し得る。固化後に標識化が起こる実施形態では、固定手段は、ゲル形成後の固化サンプルに対して実施することができる、次いで標識できる。
【0084】
他の実施形態では、脱脂は固化(例えば、ゲル化)細胞サンプル上で実施することができ、そこでは画像化のために試料の透明性を高める必要性または要望がある。実施形態において、固化したサンプルはヒドロゲル前駆体またはエポキシでさらに架橋し、CLARITYアプローチに従って脱脂することができる。例えば、”Advances in CLARITY-based tissue clearing and imaging,” Exp Ther. Med. 2008;16(3):1567-1576参照。しかしながら、固化したサンプル中に分散されるサンプル中の細胞の少ない積層のために、ほとんどの実施形態によれば、脱脂工程は一般に必要とされないことに留意されたい。以下に説明するように、ある実施形態では、屈折率整合ステップさえ必要とされない。
【0085】
ステップ2:サンプルの固化および透明化
ある実施形態では、サンプルを固化させることは、生物学的材料がゲル形態などの固体形態で捕捉されることを可能にする固化剤(例えば、ゲル化剤)であって、その後の目的の標識生体分子の画像化および検出に適合する固化剤を導入することを含む。固化剤としては、これに限定されるものではないが、アガロース(低融点アガロースを含む)溶液、ポリアクリルアミド前駆体、天然ゴム、デンプン、ペクチン、寒天、およびゼラチンなどの当技術分野で公知の試薬を挙げることができる。実施形態において、そのような試薬は、多糖またはタンパク質に基づく。例えば、Kar et al. 2019, Current developments in excipient science: in Fundamentals of Drug Delivery, 29-83を参照。あるいは、ある実施形態では、固化剤は、剛性の物理的ゲルを提供するために、必要に応じて適切な粘度を与えるように改変された屈折率整合溶液自体からなるか、または本質的にそれからなることができる。
【0086】
実施形態において、固化剤は、天然または合成ポリマー(例えば、キサンタンガム、Pemulen(商標)、Carbopol(商標)、Velvesil(商標)plus、または他のポリアクリル酸誘導体)から作製されるものなどの粘度調整剤であるか、またはそれを含む。
【0087】
実施形態において、固化剤は固体の三次元マトリックスまたは網目構造を有する物理的ゲルを生じる多糖類(例えば、寒天/アガロース、ジェランガム)の混合物を含む。
【0088】
実施形態では、固化剤は、合成化学ゲルを生成する化学モノマーと架橋剤との混合物を含み、すなわち、化学的に架橋されたポリマーネットワークを有する。
【0089】
固化(例えば、ゲル化)は、例示的な実施形態では、生物学的材料を、そのゲル化点を超える温度、例えば37°Cで添加した低融点のアガロース溶液などの液体形態であるゲル化材料中に分散または再懸濁することを含むことができる。
【0090】
予備ゲル化段階の間、この例示的な実施形態によれば、サンプルは流体または溶融状態のままであり、材料は、第3段階の画像形成ホルダーに移すまで分散状態に維持することができる。例えば、固化剤を標識試料(例えば、図1に示されるような標識PBMCペレット)に導入し、混合物を、例えばピペットまたはボルテックスミキサーで混合することができる。したがって、ある実施形態におけるゲル化剤は、所望であれば、ゲル化剤(およびサンプル)を加熱して流体または溶融状態にすることができるという点で、可逆的ゲル化剤である。
【0091】
ある実施形態では、予備ゲル化は、低融点アガロースを含む溶液中に生物学的材料を分散または再懸濁することを含む。実施形態において、低融点アガロースの最終濃度は、0.3%超または0.5%超である。実施形態において、低融点アガロースの最終濃度は、1.0%未満、または1.6%未満、または2%未満、または10%未満である。実施形態において、低融点アガロースの最終濃度は、0.1%~10%、または0.3%~1.6%、または0.5%~1.5%(例えば、約1%)である。
【0092】
従って、ある実施形態では、予備ゲル化は、アガロース(すなわち、通常の融点のアガロース)を含む溶液中に生物学的材料を分散または再懸濁することを含む。実施形態において、アガロースの最終濃度は、0.3%超または0.5%超である。実施形態において、アガロースの最終濃度は、1.0%未満、または1.6%未満、または2%未満、または10%未満である。実施形態において、アガロースの最終濃度は、0.1%~10%、または0.3%~1.6%、または0.5%~1.5%(例えば、約1%)である。
【0093】
ある例示的な実施形態では、予備ゲル化は、低融点アガロースと通常のアガロースとの混合物を含む溶液中に生物学的材料を分散または再懸濁することを含む。ある例示的な実施形態では、ゲル化剤溶液(アガロースまたは低融点アガロース溶液などであるが、これらに限定されない)は、最終的な固化ゲルの所望の屈折率を提供するために、後述する十分な量のRI適合材料と組み合わされる。ある例示的な実施形態では、予備ゲル化材料は、ゲル化溶液を構成するために、RI適合溶液に直接溶解される。
【0094】
実施形態において、生物学的サンプルを混合物中に分散または再懸濁し、ゲルを形成することにより、一般に、サンプル中の成分を、透明性などの十分な特性を有する空間分布で安定化させて、その後の画像化を可能にする。ある実施形態では、ある屈折率を有する(例えば、1.3~1.6もしくは1.33~1.5の間の屈折率を有する、または水とほぼ同等のRIを有する)屈折率整合材料を、ゲル化または予備ゲル化混合物に導入することができるが、他の実施形態では他の屈折率を有するRI整合材料を使用することができる。当技術分野で知られているように、屈折率整合材料(RI適合またはRIMともよぶ)は、組織/細胞内に浸透して組織/細胞の透明性を達成することができ、CUBIC-R+、RapidClear、RIMS、またはScaleViewを含むが、これらに限定されない。Neuropathol Appl Neurobiol, 2016 Oct;42(6):573-87を参照。
【0095】
ある実施形態では、屈折率整合材料は必要とされない。例えば、小さなサンプルでは、レーザー光が固化したサンプルを透過し、標識された細胞または他の標的成分を励起することができる。すなわち、固化したサンプルの屈折率差は、レーザーが光の屈折を引き起こすのに深く透過する必要がないときには問題とならない。例えば、より大きなパワーを有する2光子レーザーを用いると、レーザーは、曲げられることなく、より深く浸透することができる。そのようなシステムは、フルオロフォアの可能性のある光損傷によってのみ制限され、この問題はそのような損傷を回避するために、屈折率整合材料、例えば屈折率整合溶液の添加を必ずしも必要としない。
【0096】
実施形態において、予備ゲル化は1つ以上のヒドロゲル前駆体、例えば、重合性エチレン性不飽和基を含有する水溶性基からなる群から選択されるモノマーを含む、重合性材料、モノマーまたはオリゴマーを含むゲル化材料中に、生物学的材料を分散または再懸濁することを含む。モノマーまたはオリゴマーは、1つ以上の置換または非置換メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルアルコール、ビニルアミン、アリルアミン、アリルアルコールを含むことができる。前駆体はまた、例えば、WO2019023214およびWO/2020/013833に記載されている、当技術分野で公知の重合開始剤、架橋剤、および他の成分を含む。
【0097】
実施形態では、本発明の方法は、液体または溶融状態にある間に、予備ゲル化混合物をホルダー内のサンプルウェルに移すことを含む。実施形態では、ホルダー内のウェルが画像化に適した固体サンプルの形成を可能にする。例えば、固体サンプルは、蛍光顕微鏡法による画像化のためにカスタマイズされたブロックまたは他の形態の形状であり得る。あるいは、ある実施形態では、予備ゲル化工程は、管-サンプルホルダーの組合せ中で実施することができ、したがって、同じ管中で固化(例えば、ゲル化)が起こることを可能にし、液体溶液を別個のサンプルホルダーにその後移す必要性を排除できる。
【0098】
アガロース混合物の場合は、固化またはゲル化が、予備ゲル化混合物をゲル化点未満の温度、例えば、4℃に移すことによって達成することができる。他の実施形態では例えば、ヒドロゲル形成のために、移し替えサンプルは重合剤の付加などのさらなる処理に供される。
【0099】
固化後、サンプルは、画像化の前に追加のステップによって処理することができる。例えば、サンプルは、第ステップ3(RI適合)における撮像に適切に適合するように(例えば、透明化)、屈折率材料中で平衡化することができる。あるいは、ある実施形態では、RI適合材料が固化剤と同時に添加される。さらに別の実施形態では、RI適合材料は固化剤と共に添加し、次いで、第2ラウンドのRI適合材料を固化試料に添加して、サンプルの最終的な所望の透明性を提供する。
【0100】
RI適合材料は当技術分野で公知であり、固化ゲルサンプルの所望の透明性を提供するのに適切な量で使用することができる。ある実施形態では、RI適合材料は、約1.39~約1.65、または約1.49~約1.55(例えば、約1.52)のRIを有する。例えば、これに限定されないが、RI適合材料はNeuropathology and Applied Neurobiology, November 2015, ”Bring CLARITY to the human brain: Visualization of Lewy pathology in three dimensions,” Liu et al., availabl at https://www.researchgate.net/figure/Comparison-of-different-refractive-index-matching-solutions- Abbreviations-BABB_tbl3_283493188>の表3に記載のものであり得る。
【0101】
ステップ3-サンプルのマウンティングと画像化
このステップは、例示的な実施形態では、イメージホルダー上へのサンプルのマウンティングと蛍光顕微鏡法などの適切な画像化手段によって固体試料を画像化することを伴う。
【0102】
実施形態では、本発明の方法は、画像化の前に、図1に示されるような3Dプリントされたサンプルホルダーなどのイメージホルダー上に試料をマウンティングすることと、例えば、水チャンバまたはRI適合溶液中でサンプルを画像化することとを含むことができる。サンプルホルダーは、特定のサンプル調製に従ってカスタマイズすることができる。実施形態では、それは基部および2つの側壁を備えてもよい。実施形態では、粘性媒体中で調製されたサンプルのために使用されるようなホルダーは、サンプル中の分散成分の空間的構成を取り囲み、保存する4つの壁を有し得る。実施形態において、画像化は、標準的な落射蛍光顕微鏡を用いてサンプルキュベット中で実施することができる。3Dゲルサンプルは、マウンティングゲル(例えば、アガロース、ポリ-L-リジン、スーパーグルー)の助けを借りてサンプルホルダーにマウントすることができる。例えば、Asanoら、Expansion Microscopy: Protocols for Imaging Proteins and RNA in Cells and Tissue, Current Protocols in cell biology (2018)、特に34~36頁の「Sample mounting」参照。
【0103】
蛍光顕微鏡法のアプローチは、図1に示すように、従来の共焦点顕微鏡法、共鳴走査共焦点顕微鏡法、スピンディスク顕微鏡法、および光シート顕微鏡法が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ゲルサンプルは、図1に示されるように、検出レンズおよび照明レンズを使用する光シート蛍光顕微鏡法(LSFM)などの光シート顕微鏡法によって迅速に画像化される。ある実施形態では、図1に示すように、ガウスビームを使用することができ、あるいは非回折ベッセルビームなどの特殊なビームプロファイルを使用することができる。このような画像化により、3Dサンプルブロック中の物質を走査し、標識されたバイオマーカーの個々の存在について評価することができる。当技術分野で知られているように、プロセッサは顕微鏡と通信し、そこから出力を受け取り、連続的に画像化された隣接する物体領域を組み合わせることができる(すなわち、「ステッチング」)。例えば、米国特許第10,746,981, 10,876,870および米国特許出願公開第2016/0041099号および国際特許出願公開第2017/031249号に開示されている技術および装置を参照。これらは、本発明の開示の主題に従って使用することができる。
【0104】
他の検出光源および対応する顕微鏡用途も使用することができる。例えば、光学顕微鏡を用いて、例えば、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)または免疫組織化学(IHC)により染色された細胞を含む可視色素染色細胞を評価できる。さらに、X線顕微鏡法を用いて、適切な金属タグで標識された液体成分を検出することができる。市販のスマートフォン(例えば、iPhone(登録商標)またはAndroid(登録商標)ベーススマートフォン)に含まれる高解像度カメラまたは関連する光検出システムによって取得された画像を含む、他の撮像技術も使用することができる
【0105】
ステップ4-可視化と分析
本発明の方法はまた、疾患を評価、診断、またはモニタリングするために使用することができる。例えば、液体生検(例えば、上記のように処理された全血)を顕微鏡分析して、その中の希少細胞の存在を検出することができる。例えば、本開示の方法は、例えば、結腸直腸腺癌細胞、白血病細胞、癌の種類、それらの癌が発症した程度、癌が治療的介入に応答するかどうかなどについて、検出することができる。
【0106】
実施形態では、本明細書に開示される方法は、本開示の実施形態に従って、炎症性、代謝性、胃腸、内分泌、免疫性、筋骨格、心血管、心肺、泌尿生殖器、肝臓、呼吸器、ウイルス、および神経疾患および障害などの他の疾患および障害に関連する細胞バイオマーカーを検出するために使用され得る。
【0107】
特定の細胞または細胞外成分(例えば、循環腫瘍由来因子、分泌タンパク質、放出された小胞およびエキソソーム、ならびに無細胞核酸および他のバイオマーカー)などのバイオマーカーの存在を検出することに加えて、本明細書に開示の方法は、細胞細胞相互作用、細胞体積、核細胞質比および他の現象を確認するために使用することができる。実施形態では、画像化を使用して、細胞形態および構造を分析することができ、それにはそれらの天然または健康な状態と比較した、細胞形態および構造の変化の分析が含まれる。例えば、画像化方法は、細胞の外観、例えば、そのサイズ、形状、または他の外部特性を分析するために使用することができる。さらに、画像化方法は、核、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、または他の細胞小器官などの内部細胞成分の形態および構造を分析するために使用することができる。
【0108】
別の例として、生検は、腎臓、心臓、胃、肝臓、膵臓、腸、脳などからの罹患組織のサンプルの液体分散によって調製され、組織の状態、疾患が発症した程度、組織が成功する可能性などを決定することができる。本明細書における方法は、たとえば、膜または細胞成分を標的とする色素の使用を通じて、疾患状態を示し得る細胞集団における形態学的変化を評価するために使用され得る。
【0109】
本方法は、他の用途にも使用することができる。1つの適用では、液体生物学的サンプルを使用して、組織または疾患に対するそれらの効果について候補治療剤をスクリーニングすることができる。例えば、候補薬剤と接触させた対象、例えばマウス、ラット、イヌ、霊長類、ヒトなどから得られた液体サンプルは本明細書に開示される方法によって調製することができ、1つまたは複数の細胞または組織パラメータ、すなわち測定することができる細胞内成分の属性または特徴について顕微鏡的に分析することができる。
【0110】
別の用途では、本発明の方法はまた、組織から材料を分散させることによって調製された液体サンプル中の遺伝学的にコードされたマーカーの分布を可視化するために使用することができる。そのようなマーカーには、例えば、染色体異常(逆位、重複、転座)、遺伝的ヘテロ接合性の喪失、疾患状態または健康状態に対する素因を示す遺伝マーカーの存在が含まれ得る。そのような検出は例えば、個人化医療、父性の研究、または他の適用などにおいて、疾患を診断およびモニタリングする際に有用であり得る。
【0111】
CTC検出
ある例示的な実施形態において、本明細書に開示される方法は診断のための免疫学的または分子的手段によってCTCを検出するために、およびそれらの臨床的重要性に対処するために使用される。CTCは、数百万の他の循環細胞と共に血液または他の流体中を循環する稀な細胞である。本発明の方法は、そのような希少細胞を、複雑な液体サンプルまたは液体生検の固化3D形態で捕捉する。サンプルは、引き続き、例えば光シート蛍光顕微鏡法によって画像化されるとき、任意のCTCは、サンプルブロック中の個々のシグナルとして検出され得る。有利には、本発明の方法は、その生物学的不均一性を低下させることなく、そのようなCTC検出を可能にする。それらはまた、形態を破壊するかまたは感受性を妨害し得る、マイクロ流体工学または従来の細胞学による処理に必要とされるものよりも少ない干渉を含み得る。
【0112】
実施例
本明細書の開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
これらの実施例は単なる例示であると理解され、それらは、1つ以上の実施形態の範囲を限定するものと、そして、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0113】
実施例1-患者血液サンプル中のCTCのマトリックス支援検出
背景
CTCは、例えば造血コンパートメントに属する何百万もの他の循環細胞と共に血液または他の流体中を循環し、自発的に接着しない稀な細胞である。これらの貧弱な接着特性は、CTCを単離および固定化するための固体支持体の使用など、CTCを検出するための当該技術分野における既存の方法を困難にしている。本明細書に開示されている方法は、そのような希少細胞が存在する場合、それらの生物学的不均一性を制限することなく液体サンプルの複雑な3D表現を検出することを可能にし、そして、形態を破壊し得る介入を低減できる。さらに、抗接着分子(または他の結合タンパク質)でコーティングされた修飾された支持体およびマトリックスに基づく方法は、CTC形態を変化させる生物学的応答を誘発し得、不正確な分析をもたらす。免疫固定化は、コーティングされた抗体と細胞膜タンパク質との間の強い親和性に依存する。標的表面タンパク質の低い発現または低い抗体親和性は、標的細胞の低い捕捉率をもたらし得る。同様に、顕微鏡スライドなどの支持体への、細胞の細胞遠心分離、その後の固定およびそれに続く標識は、細胞を破壊するかまたはそれらの形態を破壊し、診断評価を妨害し得る。対照的に、顕微鏡スライドアプローチは画像化を可能にするために単層様式で細胞をコーティングすることを必要とし、これは、画像化および分析される処理量または細胞の数を大幅に減少する。
【0114】
マイクロ流体、ナノ構造、およびチャネルに依存する検出方法は、同様の制限を受ける可能性がある。例えば、WO2012016136;WO2013049636を参照。そのような方法は液体サンプル中の細胞成分に流動ストレスを誘発し、それらの形態および他の特徴を損なうことがある。より一般的には、そのような方法は典型的には、表面膜タンパク質のサイズまたは発現に基づいて細胞の均質な集団を選択しており、臨床または生物学的サンプルの診断分析に適した生物学的不均一性を制限することになる。
【0115】
したがって、長い操作、相互作用外部刺激、および長期処理を最小限に抑えることができる生検方法を明らかにすることが望ましい。そのような改善は、液体生検における細胞、および他の成分の自然状態および不均一性の両方を改善するのに役立ち得る、そしてそれによって、可能性のある転移プロセスの早期診断など、診断用途のためのより正確なツールを提供する。
【0116】
末梢血中のCTCは、腫瘍の拡大とみなすことができる。腫瘍は典型的には不均一であり、これは、突然変異を介して、腫瘍がその中でいくつかの異なる細胞型を発症し得ることを意味する。各細胞型はそれ自体の特徴を有することができ、それは、軽度から進行性までに及ぶことができる。CTCは、腫瘍から血流中に放出されるまれな癌細胞であり、癌転移において重要な役割を有すると考えられている。例えば、Harouaka et al., 2014, Pharmacol. Ther. 141, 209-221参照。
【0117】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0113423号には、腫瘍における膜タンパク質またはDNA/RNA情報などの分子特性が治療結果の指標となり得る方法が記載されている。この参考文献は、固体組織または固体細胞ペレットなどのサンプルをヒドロゲルモノマーの溶液中に固定または包埋すること、モノマーを架橋すること、架橋されたサンプルを透明化すること、透明化されたサンプルを1つまたは複数の検出可能なマーカーで染色すること、およびCOLMまたは同様の画像化プロセスを使用して染色されたサンプルを画像化することを含む。
【0118】
対照的に、本明細書の開示は、ある実施形態において、3次元固化サンプル中に分散および捕捉された個々の細胞(例えば、液体生物学的サンプル由来の個々の細胞)を分析する方法を提供する。細胞の濃縮または選択は不要であり、全ての細胞を、標識し、サンプルを画像化することによって視覚的にスクリーニングすることができる。
【0119】
ある実施形態では、脱脂(例えば、SDSベースの脱脂)または他のサンプル透明化方法の一般的な必要性もなく、本明細書に開示の方法のある実施形態はそのような脱脂または他のサンプル透明化ステップを含まないことによって定義される。例えば、Jensen and Berg, 2017, J. Chem. Neuroanat. 86, 19-34.参照。したがって、例えば、米国特許出願公開第2019/0113423号およびCLARITYまたは他の透明化プロトコルを含む方法と比較して、より多くの細胞情報が保存される。本明細書の開示によれば、各個々の細胞または細胞クラスターは、3次元アレイで互いに分離して可視化および分析することができ、これにより、細胞サイズ、形態、バイオマーカー分布、核細胞質比などの包括的な細胞情報を提供することができる。
【0120】
複数のタイプの腫瘍、例えば肺癌、肝臓癌、および結腸癌、ならびに液体生検においてCTCとして検出することができる他の癌を、本明細書の開示に従って同定することができる。例えば、EpCAMマーカーを用いた液体生検(例えば、血液サンプル)からのCTCの検出時に、得られた情報は、例えば、1cc、2cc、3cc、4cc、またはそれ以上の血液中の癌細胞の数(または種類)などの情報を提供することによって、患者が癌(またはリスク、予後、および治療応答に関する他の特性)を有するかどうかを示すことができる。EpCAMは、癌浸潤の主な原因である上皮間葉転換(EMT)を経た浸潤癌細胞を示す上皮マーカーである。癌浸潤は通常、血管増殖を刺激する腫瘍細胞の小集団からのEMTから始まり、細胞が血流に侵入するための経路をCTCとして提供する。
【0121】
血流中に存在する異なる組織に由来するいくつかの異なる癌細胞が存在し得、それらを同定するために異なるバイオマーカーを使用し得る。例えば、これに限定されるものではないが、HER2(乳房)、CDX2(結腸)、CK20(結腸直腸、移行細胞癌およびメルケル細胞癌)、CK19(乳房)、PD/PDL1(NSCLC、黒色腫および腎細胞を含むいくつかの癌)およびEGFR(肺)などの複数の癌マーカーを用いて、CTCを同定することができる。血液サンプル中の異なるCTC細胞サブタイプの同定は、癌の起源についての情報を提供することができる。次に、この情報は、病理学的検査のための病変の位置および組織生検を識別するために、MRIによる高分解能分析など、より詳細な追跡研究を導くことができる。
【0122】
血液中の細胞不均一性は、白血球などの健康な細胞にも適用することができる。本明細書の開示によれば、細胞形態(例えば、CTCの核は白血球の核よりも大きくなり得る)および分子マーカー(例えば、EpCAMCTC+/WBC& CD45 CTC-/WBC+)などのパラメータを適用することでCTCと白血球との差を知ることができる。
【0123】
さらに、CTCは原発腫瘍から血流中に逃れているため、一般に侵襲性が高い。そのような侵襲性細胞は、転移する能力、ならびに突然変異の可能性が高いため、癌を治療および治癒することを困難にし得、これは化学療法および他の治療的介入に対する耐性の機会を増加させ得る。これは、適切な治療計画を決定するために、そのような侵襲性細胞の分子特性を同定する際の重要性および価値を裏付ける。例えば、血中に存在するCTCが高レベルのPDL-1を示す場合、免疫療法は、より有効なアプローチである可能性が高い。PDL-1レベルは例えば、PDL-1抗体プローブを用いて決定して、サンプル中の全てのCTCにわたるPDL-1+CTCの数を定量することができる。腫瘍発生はほとんど常に不均一であり、つまり、1つの腫瘍部位が全ての腫瘍集団を表すわけではなく、CTCが全ての腫瘍部位に由来し得るため、この測定は例えば、PD-1/PDL-1阻害性処置の有効性を予測するのに役立ち得る。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6627043/)。本明細書の開示の方法によって提供されるように、CTCは血中では稀であるので、このような予測計測はCTCが効率的に捕捉され分析される場合、最も正確である。
【0124】
本明細書の開示による別の例は、CTC数および細胞型の決定、ならびにこの決定に基づいて治療を施すこと(例えば、現在の治療過程を継続するか、または異なるもしくは追加の治療過程を開始するかを決定すること)を含む。化学療法または細胞療法を受けているがん患者の場合、CTC数は治療有効性を示すことができる。ステージIIIの結腸癌患者では、1ccの血液中のCTC数は、進行した症例では数万から、それほど進行していない症例では数百に及ぶことがある。一部の進行したステージIIIの症例では、3カ月の化学療法または他の治療的介入後に、CTC数は5000に低下することがあり、12カ月後にはゼロに近づくことさえある。しかしながら、場合によっては、CTC数が化学療法の6ヶ月後に約2000までしか減少せず、その6ヶ月後に数万にまで再び上昇することがある。これは、治療的介入に対する癌細胞の薬剤耐性を示す。例えば、化学療法は全ての薬物感受性CTCを死滅させたかもしれないが、耐性であった他のサブタイプは影響を受けないであろう。
【0125】
本主題の開示に従って、CTC検出および同定のための血液検査を定期的に(例えば、毎週または毎月)実施することによって、医師および医療専門家は化学療法に対する腫瘍の耐性を迅速に検証し、それに応じて治療計画を修正することができる。したがって、ここでの検査は、固化状態でサンプル中の分散成分を捕捉することによって生検サンプルを3次元で可視化するために、製剤および方法を記載することによって上記の制限に対処する。このアプローチは、個々の成分を分離することによって分析の感度を高めること、光シート蛍光顕微鏡法などの迅速な画像化技術の使用を可能にすること、および細胞マーカーなどのサンプル成分の形態および完全性を妨害する可能性がある処理工程の数を減らすことによって分析の特異性を高めること、によって分析の感度を高めるなど、の多数の利点を有する。
【0126】
材料及び方法
サンプルの採取と固定:
血液試料(例えば、2cc、8ccまたは10cc)を対象から採取し、標準的な方法、例えば、室温で5分間1000rpmでの遠心分離を使用する密度勾配遠心分離によって赤血球を除去する。例えば、Farahinia et al. 2020, Circulating Tumor Cell Separation of Blood Cells and Sorting in novel Microfluidic approach: a review. 10.20944 /preprints202010.0622.v1;およびLowesら、2014年、Circulating tumor cells as a 25 real-time liquid biopsy: isolation and detection systems, molecular characterization, and clinical applications; in Pathobiology of human disease: a dynamic encyclopedia of disease mechanisms (eds, McManus and Mitchell)参照。
【0127】
上清を除去し、別のチューブに移し、再度遠心分離して、CTCおよび他の生物学的成分を含む残りの細胞を収集する。ペレットは、任意に、4%パラホルムアルデヒド溶液などの固定液に再懸濁し、数分間振盪し、遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、再び遠心分離した。ペレットをブロッキング緩衝液中に再懸濁し、数分間振盪し、再び遠心分離する。
【0128】
バイオマーカー標識:
固定され洗浄されたペレットは、ブロッキングおよび透過処理緩衝液中に再懸濁され、振盪機上に数分間置き、遠心分離し、予め混合した標識溶液中に30~60分間再懸濁する。最終的な画像化品質に直接影響を及ぼし得る抗体の結合親和性に応じて、必要に応じて、ペレットを再懸濁し、より長い時間(例えば、10時間または20時間まで)標識混合物中でインキュベートすることができる。
【0129】
目的のタンパク質バイオマーカーは、直接的に、例えば、蛍光コンジュゲート抗体で、または間接的に、例えば、免疫組織化学または一次抗体およびコンジュゲート二次抗体で検出される抗体(または関連フラグメントもしくは誘導体)で標識することができる。同様に、目的の核酸は、直接的または間接的に検出される分子プローブで標識することができる。必要に応じて、ビオチンストレプトアビジン結合およびポリメラーゼ連鎖反応に基づく系などの利用可能な技術によって、シグナルをさらに増幅することができる。場合により、サンプルを遠心分離し、ペレットを1回以上洗浄することができる。
【0130】
この実施例では、PBSTブロッキング緩衝液200μLの標識溶液を、核染色のためにヨウ化プロピジウム(PI)(1:2000)、癌細胞検出のためにEpCAM抗体(0.1mg/mlを超える抗体濃度で1:250)、免疫細胞検出のためにCD45抗体(1:250抗体濃度)、および一次抗体宿主に適合する二次抗体(1次抗体に対し2倍量)と混合する。Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.(https://www.jacksonimmuno.com/catalog/31)からのFabを用いた。
【0131】
あるいは、以下のようにして逐次標識を行うことができる:60分以上の一次抗体とのインキュベートと洗浄から開始し、次いで二次抗体および洗浄し、次いでPBS溶液中のPIで5分間染色し、次いで洗浄する。他の標的については、表面タンパク質を抗体で標識するか、またはプローブでDNA/RNA標的を標識することができる。二次抗体または蛍光分子の直接コンジュゲートによる連続的な標識も使用することができる。ビオチン化抗体はまた、当技術分野で公知のように、例えば、ストレプトアビジンに対する結合親和性に基づいて、ブーストされたシグナルと共に使用され得る。標識抗体または任意のプローブまたは化学染料の添加後、場合により、ペレットは4% PFA中に室温で10分間再懸濁することができ、全ての標識物質を細胞上に固定し、固化工程中にそれらが洗い流されないようにする。
【0132】
固化:
標識反応に続いて、サンプルを任意に1回以上洗浄し、次いで、固化剤(例えば、ゲル化剤)を含有する溶液に再懸濁する。固化剤は、たとえば、固化(例えば、ゲル化)可能な低融点アガロース(LMP)溶液、またはゲル化を誘導するために充分な量の架橋剤およびイオン含有成分(例えば、Ca2イオンを含む成分)を加えて重合させてことができるヒドロゲル前駆物質をあげることができる。例えば、導入される架橋剤の量は、ゲルタイプの固体が所望されるか、またはより高い密度の固化サンプルを提供するために増加されるかに応じて調節することができる。
【0133】
実施形態において、固化剤を含有する溶液は、その後の画像化を促進するために、RI適合溶液中に液体アガロース、例えば、1.2%または2.4%または10%を含有する。あるいは、固化剤(例えば、ゲル化剤)は、より低い温度でおよび/またはより高いイオン濃度で架橋および/または固体(例えば、ゲル様)する、または、より高い温度および/またはより低いイオン濃度で溶融する溶媒とともに溶液中に存在する。
【0134】
この実施例では、分散された材料を含有するゲル溶液を、ブロック形状(または他の所望の形状)を有するサンプルウェルを含むホルダーなどに、所望の画像化ホルダーに25~37℃にて移し、そして、ホルダーを振盪または振動させて、各ウェル中の材料の分散を確実にすることができる。サンプル溶液を含むホルダーは、ウェル中でのゲル化が起こるようにより低温に移される。例えば、4℃で約15~30分間、LMPアガロース中に分散されたサンプルをインキュベートする。
【0135】
当初の液体血液サンプルは、稀であり極めて低いレベルで存在するCTCを不明瞭にする何百万もの非癌性細胞を有していることに留意されたい。ゲル化は、画像化(後述)のために3D空間内に細胞を分散および分離することを可能にする。1つの重要な点は、数百万個の細胞が大量(例えば、10ccの血中)から20μlのゲルブロック(2.71mm)に凝縮され、次いで、許容可能な画像化期間内に撮像されることが可能になることである。代わりの実施形態では、容量は、迅速な高解像度画像化(例えば、20xまたは40xまで)を可能にするために、さらに減少され得る。ある実施形態では、細胞ペレットが可能な限り最小の容量を与えるように減少される。比較的小さな容量が使用されるこのような状況では、高密度の脂質二重層(細胞膜)に起因して、細胞間の近接距離のためゲル透明化に注意が必要な場合があるが、例えば、最適化されたRI整合溶液または2光子顕微鏡などのより高い出力のレーザーを用いて解決することができる。
【0136】
画像化:
ゲルブロック(分散した内容物を有する)が形成されると、ゲルブロックは、屈折率(RI)整合溶液中に約30分間浸漬することによって透明化され、画像化のために透明になる。次いで、RI適合ゲルサンプルを画像化して、ゲルブロック中で個々に離散的に分離されない、多くのバイオマーカーの存在を検出することができる。
【0137】
そのような画像化は、光シート顕微鏡法などの効率的な蛍光イメージング法を含む顕微鏡法によって行うことができる。蛍光標識されたバイオマーカーの場合、例えば、サンプルは、非回折ベッセルビームを使用する光シート蛍光顕微鏡法(LSFM)によって迅速に画像化することができる。例えば、光シート顕微鏡を使用することにより、数百または数千の細胞を単一視野(FOV)から撮像することが可能になる。例えば、撮像zステップを1ミクロンに設定することによって、15ミクロンの平均細胞直径を有する各細胞は、上から下に約10~15倍で撮像される。フローサイトメトリーによるサマリープロット上の間接ゲーティングとは異なり、画像化されたサンプルから得られたLFSMデータは、個々の細胞について、抗体標識の妥当性、強度、分布などを視覚的に検査することができことが明らかである。
【0138】
ここでの方法の適用は、CTCなどの稀なバイオマーカーを固体アレイで迅速に検出でき、標識されたバイオマーカーの空間的識別を可能にする。サンプルの不均一性を減少させるまたはそれらの特性を変化させ得る処理工程の必要性を減少させることによって、本発明の方法はまたより高感度で正確な診断アプローチを提供する。
【0139】
さらに、本明細書に記載される方法は、PBMCがRBC除去の直後に固定されることを可能にし、それらの元の状態におけるそれらの分布および会合の捕捉を可能にする。有利には、これは、細胞細胞相互作用、細胞クラスター(例えば、循環腫瘍微小塞栓(CTM: Circulating Tumor microemboli))、および疾患状態を示し得るか、または他の予後または診断用途を提供し得る他の特性などのサンプル特性の直接可視化を可能にする。
【0140】
実施例2-血液サンプルの3Dマトリックスベースの画像化
細胞調製:
EDTAコートした管中のヒトから採取した抗凝固血を15mlの試験管に移し、細胞分離液(例えばFicoll(登録商標))を加え、混合液に対し、密度勾配遠心分離(1200RPM)を5分間行った。遠心分離後、バフィーコート(白血球および血小板を含有する画分)を、分離媒体を収集することなしに2ml試験管に移した。得られた混合物を再び500gで5分間遠心分離し、チューブの底部に細胞ペレットを形成させた。上清を、細胞ペレットを乱すことなく注意深く除去した。
【0141】
標識:
次いで、ペレットを200μlの標識溶液(1:1000 PI、PBS-4% PFA中)に再懸濁して、細胞核を標識した。標識溶液を添加し、4℃で20分間置いた。次いで、混合物を500gで5分間遠心分離し、上清を注意深く回収し、廃棄した。次いで、PBS中の4% PFA溶液1mlを添加して、化学染料を4℃で20分間固定し、混合物を500gで5分間再度遠心分離し、上清を再度廃棄した。
【0142】
固化:
一方、約0.5wt%のLMアガロースを含む固化溶液混合物を調製した。固化溶液をマイクロ波中でそのゲル化点を超えて融解するまで加熱し、次いで室温で冷却し、そこで再びゲル化点に達するまで液体状態で提供した。ピペットで、20μlの冷却された固化溶液をペレットにゆっくりと加えてペレットを再懸濁した。固化溶液は気泡の形成を避けるためにゆっくりと加えた。混合物を4℃にし、ゲル形成を可能にする期間(約30分未満)維持する。
【0143】
マウンティング及びRI適合:
サンプルがゲル化したら、ゲルの側面をポッキングすることによってピペットでゲルを管から注意深く取り出し、20μl容量のゲルを得た。次いで、室温にてゲルをサンプルホルダー(この場合、直径2mmの3Dゲルロッド(3Dプリントプラスチック表面にマウントした保持形状に予め作製された、固化溶液と同じ組成物)上にマウントし、4℃で10分間冷却してゲル化させた。ホルダー上のサンプルゲルをRI適合溶液に5~30分間浸漬して、画像化のために準備した。
【0144】
画像化:
サンプルを光シートイメージングチャンバーに移し、画像化した(10X対物レンズ)。20μlのゲルサンプルについて、それは約3分で、解像度10X、4μmのz-stepにて単一チャンネルを画像化するために、おおよそ3分間を要したが、画像化時間は、ゲル容積を減少させること(細胞密度を増加させること)、画像化解像度を減少させること(より低い拡大目的またはより高いzステップ)、またはzステップのような顕微鏡設定を最適化すること、および当業者に知られた他の手段によって減少させることができる。
【0145】
図2A図2Cは、光シート画像化チャンバから得られた画像を示す。
【0146】
染色された白血球の核は青緑色で示される。図2Aにおいて、画像は、上から見た20μlのゲルサンプル全体を表す。図2Aは、25×4μm画像の100μmスタック縮小画像である。図2Bにおいて、画像は、側面図からの20μlのゲルサンプル全体を表す。図2Cにおいて、画像は個々の白血球をより詳細に捕捉するために拡大され、左下隅の小さな水平線は20μmのスケールに等しい。
【0147】
実施例3-細胞の適合性
ATCCから得られたCACO2細胞株からの細胞、および同様にATCCから得られたHL60細胞株からの細胞を、以下の簡単な記載のようにして回収し処理した。CACO2細胞は培養し、トリプシン処理により回収した。HL60は浮遊細胞株であり、トリプシン処理を必要としない。CACO2およびHL60細胞をそれぞれ回収し、PBSで洗浄し、遠心分離して細胞ペレットを回収した。
【0148】
免疫標識-癌細胞株CACO2
CACO2細胞をトリパンブルーで染色し、細胞カウンターを用いて計数した。適切な数の細胞を100μlのPBSに再懸濁した。EpCAM(Dako)抗体を1:100の比で細胞溶液に添加し、二次抗体を1:2の一次抗体対二次抗体のモル比で添加した。
【0149】
混合物を室温で30分間振盪した。混合液を500gで5分間遠心分離し、上清を注意深く除去した。細胞ペレットをPBS中に再懸濁して洗浄し、500gで5分間再度遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、細胞を再懸濁し、1mlのPI溶液:4% PFA(1:1000)中で、4℃で20分間インキュベートして、結合した抗体を固定し、細胞核を標識した。混合液を再び500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。
【0150】
免疫標識-白血球細胞株HL60
HL60細胞をトリパンブルーで染色し、細胞カウンターを用いて計数した。適切な数の細胞を100μlのPBS中に収集した。CD45(Dako)抗体を1:100の比で細胞溶液に添加し、二次抗体を1:2の一次抗体対二次抗体のモル比で添加した。
【0151】
混合液を室温で30分間振盪した。混合液を500gで5分間遠心分離し、上清を注意深く除去し、1mlのPBSを加えて洗浄し、混合液を500gで5分間再度遠心分離し、上清を再度注意深く回収し、廃棄した。次いで、細胞を再懸濁し、1mlのPI溶液:4% PFA(1:1000)中で、4℃で20分間インキュベートして、結合抗体を固定し、細胞核を4℃で20分間標識した。混合液を500gで5分間再度遠心分離し、上清を再度注意深く回収し、廃棄した。
【0152】
固化:
一方、約1wt%のLMアガロースを含む固化溶液を調製した。固化溶液をマイクロ波で加熱して融解させ、次いで室温まで冷却させた。そこでは、最終的にゲル状態で提供される。ピペットを用いて、20μlの冷却した固化溶液をペレットにゆっくりと添加してペレットを再懸濁した。固化溶液は、気泡形成を回避するためにゆっくりと添加した。混合物を4℃にし、ゲル形成を可能にする期間(約20分未満)維持する。
【0153】
画像化:
免疫標識されたCACO2およびHL60細胞を有するゲルの両方を、前述のように10x対物レンズを備えた光シート顕微鏡で画像化した。
【0154】
図3Aは、光シート顕微鏡法によって捕捉されたCD45/PI染色HL60細胞を示す。図3Aは、左下隅のスケールバーによって示されるようにデジタル的に拡大された図である。白いバーは50μmに対応する。黄色は核を標識するPI染色を示し、緑色は、CD45免疫標識を示す。図3B~3Cは、光シート顕微鏡によって捕捉されたEpCAM/PI染色されたCACO2細胞を示す。画像は、10倍の対物レンズで撮影した。図3Bは、ゲル体積全体を示している。図3Cは、スケールバーによって示されるようにデジタル的に拡大された図である。すなわち、図3Bではスケールバーは300μmを表し、図3Cではスケールバーは50μmを表す。
【0155】
実施例4-血液試料中のCACO2細胞の多重標識
血液サンプル中の癌細胞のスパイキング
癌細胞数計測
がん患者におけるCTC検出をシミュレートするための検討を実施した。検討は、3D液体生検法の希少細胞検出効率および細胞調製プロセスかでの細胞損失率を評価するためにデザインされた。
【0156】
細胞調製:
CACO2細胞のサンプルをトリプシン処理し、計数し、適切な量で新たに採取した末梢血サンプル中に播種して、癌細胞を添加した血液サンプルを作製した。末梢血単核細胞(PBMC)を、赤血球溶解アプローチを通して収集した。EDTAコーティング管中のヒトから採取した抗凝固血液を15ml管に移した。血液1c.c.に対し、塩化アンモニア溶液8c.c.を添加して赤血球を溶解した。溶解プロセスを氷上で15分間実施し、遠心分離し、上清を除去し、添加された癌細胞を含む収集されたPBMC細胞ペレットを100μLのPBSに再懸濁し、次のプロセスに備えた。
【0157】
EpCAM(Dako)およびCD45(Dako)抗体を細胞溶液に1:100で添加し、適合する二次抗体を1:2の一次抗体対二次抗体のモル比で添加して、ステップ1の標識プロセスを行った。細胞サンプルを室温で1時間インキュベートして、抗体を結合させた。次に、サンプルを500gで5分間遠心分離してペレットを回収した。ペレットを1mlのPBSで洗浄し、再度遠心分離し、上清を除去した。次に、PI:4% PFA(1:1000)をペレットに添加して標識抗体を固定し、30分間核を染色した。次に、細胞を再度遠心分離してペレットを回収した。
【0158】
細胞ペレットを、先に記載したように、固化溶液中に混合した。次いで、混合したPBMCおよびCACO2細胞をサンプル中で同定し、サンプル中の複数の抗体標的標識を用いて複数の細胞型を検出する能力を確認した。図4AはPBMC中のCACO2の多重標識の全3Dゲルデータを示し、ここで、EpCAMマーカーは赤紫色で示され、PIは青で示される。図4Bは、CACO2-EpCAM(マゼンタ)、白血球-CD45(緑色)およびPI(青色)の拡大スタック画像を示す。図4Cおよび4Dは確認のための、EpCAM(赤紫色シグナル)を伴うおよび伴わない、同定されたCTCの画像を示す。
【0159】
スタックされたまたは分離されたこれらの図において、3D画像において、癌細胞検出のためのEpCAM標識は実行可能なアプローチである。CACO2は、高いEpCAM発現を示すがCD45発現はなく、PBMC(白血球)は、可変のCD45発現を示すがEpCAM発現は示さない。
【0160】
細胞計数:
トリプシン処理したCACO2を計数し、2ccの血液に播種し、染色し、以下の表に記載するように標識し、3組のゲル(a、b、およびc)を調製した。
【0161】
【表1】
【0162】
実施例1、2、および3に記載されるように、3次元ゲルを形成し、光シート顕微鏡法によって画像化した。各画像は、細胞検出のため、全ての免疫標識されたシグナルについてノイズを除去し特徴を強化した。陽性EpCAMおよびPIシグナルをもちかつ陰性CD45である細胞は、陽性として計数し、陰性EpCAMシグナルおよび陽性PIシグナルをもつ細胞は陰性として計数し、陰性PIシグナルをもつシグナルはヌルとして計数した。細胞または核円形度、細胞/核体積、および核細胞質比(N:C比)などの他のパラメータは、MATLABベースまたはPythonベースの細胞検出アルゴリズムを使用して陽性癌細胞について定量化することができる。
【0163】
図4Aは、2000個の添加されたCACO2細胞を有するゲルサンプルの3つの反復セットの3d画像からの出力を示す。
【0164】
検出された結果をより良好に視覚化するために、3D撮像データは、すべての2D画像が互いに積み重ねられて単一平面撮像データを生成する最大投影方式で示した。EpCAM(color)標識CACO2細胞は、データセット上にデジタル的にズームインすることによって、視覚的に容易にスポットすることができる。EpCAM陽性細胞を、陰性CD45シグナルおよび陽性PIシグナルについてスクリーニングする。細胞検出アルゴリズムはこれらのパラメータを用いて全ての細胞をスクリーニングし、図4Bに示されるように、分離され、組み合わされた信号を用いて、識別されたCTC画像を出力する。これらの画像はサンプルごとに単一のファイルに記憶され、検出された全ての細胞画像は人間の目または信号検出アルゴリズムによってさらに確認される。
【0165】
以下の表は、a、b、およびcの3セットのゲルからの最終細胞数を示す。検出された結果は、播種した(添加)細胞数の妥当な近似値内であった。
【0166】
【表2】
【0167】
全ゲル中の全細胞数は、全PI陽性シグナルを用いて定量することができる。全陽性癌細胞数を全PIシグナル数で割ると、比が出力される。この比に100万を乗じると、PBMCの100万個中の癌細胞数が得られる。
【0168】
実施例5-癌患者におけるCTC検出
大腸癌患者の血液中のCTCの存在を検出するためにIRB検討を実施した。本検討は、3D液体生検法の希少細胞検出効率を評価するためにデザインされた。登録された患者は、健常被験者および疾患被験者を含んでいた。以下の実施例では、肝臓または肺への転移を有するステージII~ステージIVの結腸癌を有する患者を示す。
【0169】
血液サンプルの調製:
EDTAコーティング管中のヒトから採取した抗凝固血液を15ml管に移した。末梢血単核細胞(PBMC)を、赤血球溶解アプローチを通して収集した。血液2c.c.に対し、塩化アンモニア溶液16c.c.を添加して赤血球を溶解した。溶解プロセスを氷上で15分間行い、遠心分離し、上清を除去した。添加した癌細胞を含む収集したPBMC細胞ペレットを100μLのPBS中に再懸濁し、次のプロセスに備えた。
【0170】
患者A
EpCAM(Dako)およびCD45(Dako)抗体を細胞溶液に1:100で添加し、適合する二次抗体を1:2の一次抗体対二次抗体のモル比で添加して、ステップ1標識プロセスを行った。細胞サンプルを室温で1時間インキュベートして、抗体を結合させた。次に、サンプルを500gで5分間遠心分離してペレットを回収した。ペレットを1mlのPBSで洗浄し、再度遠心分離し、上清を除去した。次に、1:1000 PI:4%含有PFAをペレットに添加して、標識抗体を固定し、30分間核を染色した。次に、細胞を再度遠心分離してペレットを回収した。
【0171】
細胞ペレットを固化溶液(1% LMアガロース)中で混合し、上記のように画像化した。図5Aは、0.42μm×0.42μm×1μmの解像度を有する3Dゲルデータ(単一スタックブロック)を示し、EpCAMマーカーが赤紫色で示され、CD45マーカーが緑で示され、PIが青で示される。図5Bは、EpCAM陽性、CD45陰性、およびPI陽性細胞標的の拡大画像を示す。上記のパラメータを用いてCTC陽性をスクリーニングすると、約16万のPBMCにおいて195のCTCを検出することができた。これは500万のPBMC当たり1,218の1CTCに相当する。
【0172】
患者B
CK20(Ventana)およびEpCAM(Dako)抗体を細胞溶液に1:100で添加し、適合する二次抗体を1:2の一次抗体対二次抗体のモル比で添加して、ステップ1標識プロセスを行った。標識された細胞ペレットの収集、ゲル化、および画像化は患者Aについて上述したように実施した。図6Aは、0.42μm×0.42μm×1μmの解像度を有する3Dゲルデータ(1200μmスタックからの600μmスタック)の2つの連続積層を示し、ここで、CK20マーカーは黄色で示され、EpCAMマーカーは赤紫色で示され、PIは青色で示される。図6Bは、CK20陽性、EpCAM陽性、およびPI陽性細胞標的のズームイン単一細胞画像を示す。上記のパラメータを用いて陽性CTCをスクリーニングすると、約46,200個のPBMC中に12個のCTCが検出できた。これは、100万個のPBMC当たり259個のCTCに相当する。
【0173】
組織サンプルなどの複雑なサンプル中の細胞を見る他の方法とは対照的に、本発明の方法は3D画像化のための組織透明性を達成するために、脂質を除去するかまたは他の細胞情報を破壊する透明化工程(クリアリングステップ)を必要としない。代わりに、ここでの方法は、3次元空間内に分散された細胞サンプルのゲル化と屈折率マッチングを組み合わせることにより、完全な細胞選別および液体サンプル内の完全な細胞情報の3D可視化を達成する。それは、単純な抗体タグ付けを用いて、液体生検サンプル中の希少細胞または任意の細胞をスクリーニングするための新規なアプローチである。
【0174】
本明細書に記載の実施例および実施形態は本発明の範囲を限定しないことは当業者によって理解されるであろう。実施例を含む本明細書は単なる例示であると意図され、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲または目的から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変更を行うことができることが当業者には明らかであろう。
さらに、本明細書の開示における特定の詳細は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の十分な理解を与えるために提供されるが、特定の実施形態はこれらの詳細なしに実施され得ることを当業者は理解するのは明らかであろう。
【0175】
さらに、特定の例では、周知の方法、手順、または他の具体的な詳細は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の態様を不必要に不明瞭にすることを避けるために記載されていない。
【0176】
番号を付与した実施形態
本開示は、以下の実施形態をさらに対象とする。
1.生体サンプルを分析する方法であって、生物学的材料を含む試料への固化剤の添加する工程;分散された生物学的材料を含む固化サンプルの作成する工程;分散された生物学的材料中の1つ以上の成分を同定するために固化されたサンプルを画像化する工程を含む方法。
2.前記試料が液体血液サンプルから得られる、実施形態1に記載の方法。
3.前記試料が、液体血液サンプルから赤血球および血小板を除去することを含むプロセスによって液体血液サンプルから得られる、実施形態2に記載の方法。
4.固化剤を添加する前に試料中の生体分子標的を標識することをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。

5.前記生体分子標的が、核酸、タンパク質、または小胞である、実施形態4に記載の方法。
6.標識が、試料を分子プローブと接触させることを含む、実施形態4または5に記載の方法。
7.前記分子プローブが抗体である実施形態6に記載の方法。

8.前記分子プローブが蛍光色素である実施形態6に記載の方法。
9.前記分子プローブが核酸プローブである実施形態6に記載の方法。
10.前記生体分子標的が細胞外分子標的である実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.前記生体分子標的が細胞内分子標的である実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
12.固化剤を添加した後、試料をサンプルホルダーに移すことをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
13.前記サンプルをサンプルホルダー内で振盪することをさらに含む、実施形態12に記載の方法。
14.前記サンプルをサンプルホルダー内で振動させることをさらに含む、実施形態12に記載の方法。
15.前記固化サンプルが、画像化に適した固体ブロックである前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
16.画像化の前に、分散された生物学的材料を含む固化サンプルを溶液に移して、画像化のためのサンプルの所望の透明性を確実にする、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
17.前記溶液が屈折率整合溶液である実施形態16に記載の方法。
18.ステップ(c)が、固化サンプル中の1つ以上の癌細胞または癌マーカーを検出するステップをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
19.画像化が蛍光顕微鏡で実行される、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
20.画像化が、光シート蛍光顕微鏡法によって実行される、実施形態19に記載の方法。
21.前記固化剤がゲル化剤であり、前記固化サンプルがゲルサンプルである前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
22.ステップ(a)の前に、生物学的試料が固定手順に供される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
23.前記固定手順が、生物試料を固定液中でインキュベートすることを含む、実施形態22に記載の方法。
24.前記固定液がグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドを含む、実施形態23に記載の方法。
25.ステップ(c)が、固化サンプル中の単一細胞の同定を可能にする、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】