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特開2024-5990アクチュエータ、ハプティクスデバイス、およびハプティクスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005990
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アクチュエータ、ハプティクスデバイス、およびハプティクスシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240110BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J19/00 A
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106510
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】原 將人
(72)【発明者】
【氏名】長屋 竜也
(72)【発明者】
【氏名】島田 卓
(72)【発明者】
【氏名】林下 歩樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 椎奈
【テーマコード(参考)】
3C707
5E555
【Fターム(参考)】
3C707LV22
5E555AA29
5E555BA08
5E555BB08
5E555BE17
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】伸縮部の突出状態から初期状態への変化を、伸縮部自体の張力(復元力)に依存することなく実現する。
【解決手段】第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の領域を仕切り、前記第1電極および前記第2電極に対する相対位置を変化可能な導電性を有する第1セパレータと、前記第1セパレータの変位に伴い、前記第1セパレータと前記第1電極との間の第1空間を移動することが可能な第1流体が移動することに起因して初期状態と突出状態とが切り替わる伸縮部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の領域を仕切り、前記第1電極および前記第2電極に対する相対位置を変化可能な導電性を有する第1セパレータと、
前記第1セパレータの変位に伴い、前記第1セパレータと前記第1電極との間の第1空間を移動することが可能な第1流体が移動することに起因して初期状態と突出状態とが切り替わる伸縮部とを備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1セパレータが前記第1電極に近づく動作に伴い、前記第2電極と前記第1セパレータとの間の第2空間に第2流体を引き込む請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第2空間は、外空間と連通している請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2電極は、前記伸縮部が突出する開口部を有している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第2電極を上側、前記第1電極を下側とした場合、前記第1セパレータの前記第2電極に対する固定位置は、前記第1セパレータの前記第1電極に対する固定位置よりも高い位置にある請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極は、前記第1セパレータよりも大きい剛性を有している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1セパレータは、可撓性部材と、前記可撓性部材の表面に位置する電極層とを備えている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1電極、前記第2電極および前記第1セパレータの電位を制御する制御部をさらに備え、
前記第1電極または前記第2電極は、複数の分割領域に分割されており、
前記制御部は、前記分割領域ごとに前記電位の制御を行う請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第1セパレータと前記伸縮部とは一連の部材である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極との間の距離を維持するスペーサをさらに備えている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記第2電極は、前記第1流体が入出流可能な開口部を備えており、
前記スペーサとして、前記開口部の縁部に配置されている第1スペーサを備えている請求項10に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記スペーサとして、前記第2電極の外縁部に位置した第2スペーサを備えている請求項10に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記第2スペーサは、前記第2電極と前記第1セパレータとの間に第2空間と外空間とを連通する連通路を有している請求項12に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記第1セパレータの端部は、前記スペーサと、前記第1電極または前記第2電極とによって挟持されている請求項10に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記第1電極、前記第1セパレータおよび前記第2電極を備えるユニットを複数、多層構造として備えている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項16】
前記第1電極の、前記第2電極が位置する側とは反対側に位置する第3電極と、
前記第1電極と前記第3電極との間の領域を仕切り、前記第1電極と前記第3電極との間に形成された電界により前記第1電極および前記第3電極に対する相対位置が変化する第2セパレータとをさらに備え、
前記第2セパレータと前記第1電極との間の第3空間は、前記伸縮部によって容積が規定される第4空間と連通しており、
前記第2セパレータの変位に伴い、前記第3空間を移動することが可能な第3流体が前記第4空間に流入する請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項17】
前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの電位を独立に制御する制御部をさらに備える請求項16に記載のアクチュエータ。
【請求項18】
前記制御部は、前記伸縮部を初期状態または突出状態にするときの、前記第1セパレータの変位方向と前記第2セパレータの変位方向とが異なるように前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの電位を制御する請求項17に記載のアクチュエータ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載のアクチュエータが少なくとも1つ搭載されたハプティクスデバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のハプティクスデバイスと、
前記ハプティクスデバイスに通信可能に接続された画像表示装置と、を備えるハプティクスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザに触覚を与えるアクチュエータなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、静電力によって電極間の距離を変化させることにより流体の流れを生み出し、当該流体の圧力により伸縮部を突出させることで、ユーザに触覚を与えるアクチュエータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公報第2021/0316446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伸縮部の突出状態から初期状態への変化を、伸縮部自体の張力(復元力)に依存することなく実現することができるアクチュエータが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るアクチュエータは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の領域を仕切り、前記第1電極および前記第2電極に対する相対位置を変化可能な導電性を有する第1セパレータと、前記第1セパレータの変位に伴い、前記第1セパレータと前記第1電極との間の第1空間を移動することが可能な第1流体が移動することに起因して初期状態と突出状態とが切り替わる伸縮部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、伸縮部の突出状態から初期状態への変化を、伸縮部自体の張力に依存することなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態1に係るハプティクスシステムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本開示の実施形態1に係るアクチュエータの上面図である。
図3図2のIII-III線の矢視断面図である。
図4図3に点線で囲んだ領域の拡大図である。
図5】第1電極の開口部付近を拡大した断面図である。
図6】第2電極および第1セパレータの図示を省略した上記アクチュエータの上面図である。
図7】第1セパレータが第1電極に引き付けられた様子を示す上記アクチュエータの断面図である。
図8】第1セパレータが第2電極に引き付けられた様子を示す上記アクチュエータの断面図である。
図9】本開示の実施形態2に係るハプティクスシステムの要部構成を示すブロック図である。
図10】本開示の実施形態2に係るアクチュエータの上面図である。
図11】本開示の実施形態2に係る第1電極の上面図である。
図12】本開示の実施形態3に係るハプティクスシステムの要部構成を示すブロック図である。
図13】本開示の実施形態3に係るアクチュエータの上面図である。
図14図13のXIV-XIV線の矢視断面図である。
図15】第1セパレータおよび第2セパレータが、それぞれが属するユニットが備える第1電極に引き付けられた様子を示すアクチュエータの断面図である。
図16】第1セパレータおよび第2セパレータが、それぞれが属するユニットが備える第2電極に引き付けられた様子を示すアクチュエータの断面図である。
図17】本開示の実施形態3に係るハプティクスシステムの要部構成を示すブロック図である。
図18】本開示の実施形態4に係るアクチュエータの上面図である。
図19図18のXIX-XIX線の矢視断面図である。
図20】本開示の実施形態4に係る第2セパレータの構成を示す断面拡大図である。第2セパレータ50の構成を示す断面拡大図である。
図21】第1セパレータおよび第2セパレータが第1電極に引き付けられた様子を示す上記アクチュエータの断面図である。
図22】第1セパレータが第2電極に引き付けられ、第2セパレータが第3電極に引き付けられた様子を示す上記アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるハプティクスシステム300Aの要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、ハプティクスシステム300Aは、装着型ハプティクスデバイス100Aと、画像表示装置200とを備えている。ハプティクスシステム300Aは、画像表示装置200が表示する画像に応じた疑似触覚を、装着型ハプティクスデバイス100Aが備えるアクチュエータ1Aにより与えるシステムである。装着型ハプティクスデバイス100Aは、ハプティクスデバイスの一例である。画像表示装置200は、VR(Virtual Reality)装置であってよいし、その他の画像表示装置であってよい。
【0009】
装着型ハプティクスデバイス100Aは、例えば、VRなどの仮想空間での疑似触覚をユーザに提示するために用いられてよい。装着型ハプティクスデバイス100Aは、ユーザに触覚を提示するためのアクチュエータ1Aを搭載している。装着型ハプティクスデバイス100Aは、ハプティクスグローブまたはハプティクスウェアなどであってよい。装着型ハプティクスデバイス100Aは、アクチュエータ1Aが1つ搭載されていてもよいし、複数搭載されていてもよく、例えば、装着型ハプティクスデバイス100Aにマトリックス状に複数のアクチュエータ1Aが搭載されてもよい。
【0010】
<アクチュエータ1Aの構成>
図2は、本実施形態におけるアクチュエータ1Aの上面図である。図3は、図2のIII-III線の矢視断面図である。図3は、アクチュエータ1Aの初期状態を示している。以降の説明では、説明の便宜上、図2におけるX軸方向をアクチュエータ1Aの左右方向、Y軸方向をアクチュエータ1Aの前後方向、Z軸方向をアクチュエータ1Aの上下方向として説明する。また、図2における、+X軸方向を右方向、-X軸方向を左方向、+Z軸方向を上方向、-Z軸方向を下方向として説明する。上下方向において、第2電極12が位置する側を上側と称し、第1電極11が位置する側を下側と称する。上面とは、注目する部材の上側の面を意味し、下面とは、注目する部材の下側の面を意味する。
【0011】
アクチュエータ1Aは、図1図3に示すように、第1電極11と、第2電極12と、第1セパレータ20と、第1スペーサ31と、第2スペーサ32と、封止部33と、制御部40Aとを備えている。
【0012】
第1電極11は、電圧が印加可能となっている板状の電極である。第1電極11は、アクチュエータ1Aの下面を構成している。第1電極11は、後述する第1セパレータ20よりも大きい剛性を有している。図4は、図3に点線で囲んだ領域Dの拡大図である。第1電極11は、例えば、図4に示すように、絶縁層111と、絶縁層111上に配された導電層112とを有している。絶縁層111は、例えば、樹脂材料またはセラミック材料を用いて、従来の方法によって作製されてよい。樹脂材料は、例えば、ポリエチレンフタレート、エポキシ樹脂などであってよい。セラミック材料は、例えば、シリカ、アルミナなどであってよい。絶縁層111の厚みは、例えば、10μm~1000μmに設定することができる。
【0013】
導電層112は、絶縁層111の片面に導電性材料を成膜することにより作製されてよい。導電層112は、例えば、アルミニウム、銅などであってよい。導電性材料を用いた成膜方法としては、蒸着、スパッタなどの一般的な成膜方法を用いることができる。導電層112は、10nm~1000nmの厚みで成膜されてよい。
【0014】
第1電極11と後述する第1セパレータ20との間は導通しないように構成されている。換言すると、アクチュエータ1Aは、少なくとも導電層112と後述する第1セパレータ20とが当接する領域において、導電層112と後述する第1セパレータ20との間に絶縁構造を有している。当該絶縁構造として、第1電極11は、少なくとも第1セパレータ20と接する領域において、絶縁層を備えていてもよい。絶縁層は、第1電極11における第1セパレータ20側の面全域に形成されていてもよい。当該絶縁層は、例えば、導電層112上に積層される、10μm~100μmの厚みを有する絶縁性樹脂フィルムであってよい。当該絶縁性樹脂フィルムに用いられる樹脂は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)であってよい。第1電極11のセパレータ側には、外部回路との接続用配線を形成するために、電極パターンが形成されている。電極パターンは、フォトリソプロセスにより形成されてよい。
【0015】
絶縁層111が、樹脂材料またはセラミック材料で構成される場合、絶縁層111のヤング率は、例えば、1GPa以上1000GPa以下に設定されてよい。この場合、比較的に剛性の大きい絶縁層111の表面に導電層112が成膜されることで、第1電極11の剛性を大きくすることができる。
【0016】
第1電極11は、上記の構成に限られるものではなく、金属板によって構成されてもよい。
【0017】
第1電極11の形状は特に限定されるものではない。例えば、第1電極11は、アクチュエータ1Aを平面視したときの形状が矩形であってもよいし、円形状であってもよい。本実施形態における第1電極11は、アクチュエータ1Aを平面視したときに矩形となっている。
【0018】
第1電極11は、図3に示すように、上下方向に開口した開口部11aを中央部に有していてもよい。開口部11aは、ドリル、打ち抜き、レーザなどの穿孔プロセスにより形成されてよい。開口部11aの周辺部は、エッジ部での放電を回避するために、100μm~900μm程度、電極パターンが形成されていない領域を備えていてもよい。第1電極11は、開口部11aを有していなくてもよい。
【0019】
アクチュエータ1Aを平面視したときの開口部11aの形状は、特に限定されるものではなく、円形状であってもよく、矩形であってもよい。本実施形態における開口部11aは、円形状になっている。開口部11aが円形状である場合、開口部11aの大きさは、直径が1mm~9mmであってもよい。
【0020】
開口部11aの上側開口の大きさは、開口部11aの下側の開口の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。図5は、本実施形態における第1電極11の開口部11a付近を拡大した断面図である。本実施形態における開口部11aは、上側開口の大きさが、下側開口の大きさよりも小さくなっている。図5に示すように、開口部11aは、テーパー状になっていてもよい。開口部11aの形状は、後述する第2電極12の開口部12aと異なっていてもよい。すなわち、本開示のアクチュエータを構成する各電極の開口部の形状は、開口部ごとに異なっていてもよい。開口部の形状は、加工方法および/または加工時間を適宜設定することによって調整することができる。
【0021】
第2電極12は、第1電極11と対向して配置されている板状の電極である。第2電極12は、アクチュエータ1Aの上面を構成している。第2電極12は、電圧が印加可能となっている。第2電極12は、後述する第1セパレータ20よりも大きい剛性を有している。第2電極12は、第1電極11と同じ材質および構成を有していてもよい。第2電極12は、図4に示すように、絶縁層121と、絶縁層121上に配された導電層122とを有していてもよい。アクチュエータ1Aは、少なくとも導電層122と後述する第1セパレータ20とが当接する領域において、導電層122と後述する第1セパレータ20との間に絶縁構造を有している。例えば、第2電極12は、少なくとも第1セパレータ20と接する領域において、絶縁層を備えていてもよい。絶縁層は、第2電極12における第1セパレータ20側の面全域に形成されていてもよい。第2電極12は、アクチュエータ1Aを平面視したときの形状が第1電極11と同じ形状となっていてもよい。
【0022】
第2電極12は、上下方向に開口した開口部12aを中央部に有している。開口部12aの形状は、特に限定されるものではなく、円形状であってもよく、矩形であってもよい。本実施形態における開口部12aは、円形状になっている。開口部12aが円形状である場合、開口部12aの大きさは、直径が1mm~9mmであってもよい。開口部12aは、第1電極の開口部11aと同様のプロセスにより形成されてよい。開口部12aの周辺部は、エッジ部での放電を回避するために、100μm~900μm程度、電極パターンが形成されていない領域を備えていてもよい。
【0023】
本開示の一態様のアクチュエータ1Aでは、第1電極11における開口部11aの上側開口と下側開口の大きさが同程度であり、第2電極12における開口部12aの上側開口が下側開口よりも小さく設定されてよい。言い換えれば、第1電極11における開口部11aの上側開口の大きさと下側開口の大きさとの差が、第2電極12における開口部12aの上側開口の大きさと下側開口の大きさとの差よりも小さく設定されてよい。第2電極12の開口部12aの大きさを、第1電極11の開口部11aの大きさよりも小さくしてもよい。その結果、第2電極12の開口部12aから後述する第1流体F1が流出する際に流出圧力を大きくすることができる。
【0024】
第1セパレータ20は、第1電極11と第2電極12との間の領域を仕切ることができる。言い換えれば、第1セパレータ20は、後述する第1流体F1および第2流体が互いに交じり合わないように第1電極11と第2電極12との間に仕切りを形成することができる。第1セパレータ20は、第1電極11および/または第2電極12に印加される電圧の変化に応じて、第1電極11および第2電極12に対する相対位置が変化可能な部材である。言い換えれば、第1セパレータ20は、変形可能な部材である。第1セパレータ20は、例えば、膜状の部材である。第1セパレータ20は、アクチュエータ1Aを上下方向に沿って平面透視したときに、第1電極11および第2電極12と重複するように配されている。言い換えれば、第1セパレータ20は、上下方向において第1電極11と第2電極12とに挟まれるように位置している。第1セパレータ20は、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第1電極11と略同じ大きさとなるように構成されてよい。
【0025】
図4に示すように、第1セパレータ20は、可撓性部材21と2つの電極層22とを有していてもよい。可撓性部材21の厚みは、電極層22の厚みよりも小さくてもよい。可撓性部材21の厚みは、例えば10μm~100μm程度に設定することができる。電極層22の厚みは、例えば10nm~1000nm程度に設定することができる。第1セパレータ20が備える電極層22は、1層でもよい。前述したように、アクチュエータ1Aは、少なくとも第1電極11と第1セパレータ20とが当接する領域、および第2電極12と第1セパレータ20とが当接する領域において絶縁構造を有している。絶縁構造の一例として、第1セパレータ20は、少なくとも第1電極11と第1セパレータ20とが当接する領域、および第2電極12と第1セパレータ20とが当接する領域において絶縁層を備えていてもよい。絶縁層は、第1セパレータ20における第1電極11側の面、および第2電極12側の面全域に形成されていてもよい。あるいは、第1セパレータ20は、絶縁性を有する2つの可撓性部材が電極層を挟む構成を有していてもよい。絶縁層は、第1電極11および第2電極12と、第1セパレータ20のいずれかが備えていてもよいし、第1電極11および第2電極12と、第1セパレータ20の両方が備えていてもよい。
【0026】
可撓性部材21は、可撓性を有している。可撓性部材21は、例えば、シリコーン、ウレタン、アクリルなどのエラストマー材料を含んでいてもよい。可撓性部材21は、伸縮性を有していてもよい。
【0027】
電極層22は、可撓性部材21を上下方向から挟むように、可撓性部材21の上面側および下面側の表面に位置している。電極層22は、可撓性部材21の表面に、銀または銅などを含む導電性インクを印刷することにより形成されてよい。電極層22は、導電性を有しており、外部回路から電圧が印加可能となっている。電極層22は、第1セパレータ20のうち、第1電極11と第2電極12との間の領域にのみ設けられていてもよい。すなわち、第1セパレータ20のうち、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aに対応する領域には、電極層22が設けられていなくてもよい。
【0028】
図3および図4に示すように、第1セパレータ20は、第1電極11および第2電極12に対向して配置されている。換言すれば、第1セパレータ20の電極層22が、第1電極11の導電層112および第2電極12の導電層122と、第1電極11および第2電極12の表面に形成された上記絶縁層を介して対向している。これにより、第1電極11の導電層112または第2電極12の導電層122と、第1セパレータ20の電極層22との間に電位差が生じたときに、第1セパレータ20が上記電位差によって生じる電界によって第1電極11または第2電極12に対して変位可能になっている。
【0029】
電極層22は、可撓性部材21の表面全体を覆うように設けられていてもよいし、可撓性部材21の表面の一部を多くように設けられていてもよい。例えば、電極層22は、アクチュエータ1Aを平面視したときに、アクチュエータ1Aの外側に向かうにつれて、可撓性部材21の表面を覆う面積が大きくなる、換言すれば、電極層22の密度が大きくなっていてもよい。この場合、第1電極11および第2電極12は、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第1セパレータ20において電極層22が設けられている領域と対向する領域にのみ導電層112を有していてもよい。
【0030】
本実施形態のアクチュエータ1Aでは、第1セパレータ20は、可撓性部材21の上面側および下面側の両方の面に電極層22が形成されていたが、本開示のアクチュエータはこれに限られない。本開示の一態様のアクチュエータでは、可撓性部材21の上面側または下面側の面に電極層22が形成される構成であってもよい。
【0031】
アクチュエータ1Aは、第2電極12の開口部12aを覆う伸縮部20aを有している。本実施形態では、上述した通り、第1セパレータ20は、アクチュエータ1Aを平面視したときに第2電極12の開口部12aに対応する領域が、伸縮性を有する可撓性部材21である。すなわち、伸縮部20aは、第1セパレータ20が備える伸縮性を有する可撓性部材21のうち、アクチュエータ1Aを平面視したときに第2電極12の開口部12aに対応する領域である。可撓性部材21を、伸縮性を有する伸縮部20aと、伸縮性の小さい、または伸縮性がほとんどない部分との組み合わせによって構成してもよい。
【0032】
本実施形態における第1セパレータ20は、可撓性部材21の表面のうち、第1電極11側表面におけるすべての領域、または第2電極12側表面におけるすべての領域において、電極層22を有しているが、本開示のアクチュエータはこれに限られない。本開示の一態様にアクチュエータでは、可撓性部材21の表面のうち、第1電極11側表面または第2電極12側表面の、一部の領域において、電極層22を有していてもよい。本実施形態の第1セパレータ20は、可撓性部材21の表面に配された電極層22を有しているが、本開示の一態様として、第1セパレータ20は、導電性材料を内部に有する可撓性部材21を有していてもよいし、可撓性部材21を有さずに電極層22のみを有していてもよい。第1セパレータ20が導電性材料を内部に有する可撓性部材21を備える態様である場合、第1セパレータ20は、例えば、導電性高分子フィルムなどであってもよい。
【0033】
本実施形態では、アクチュエータ1Aは、少なくとも1つの第1スペーサ31および少なくとも1つの第2スペーサ32を有する。少なくとも1つの第2スペーサ32は、少なくとも1つの第1スペーサ31よりも伸縮部20aから遠い位置にある。言い換えれば、少なくとも1つの第1スペーサ31は、少なくとも1つの第2スペーサ32よりも伸縮部20aに近い位置にある。
【0034】
少なくとも1つの第1スペーサ31および少なくとも1つの第2スペーサ32は、図3に示すように、第1電極11と第2電極12との間に配置されており、第1電極11と第2電極12との間の距離を略一定に維持する。第1電極11と第2電極12とは、平行に配置される必要はなく、第1セパレータ20が変位可能な空間を維持できればよい。第1スペーサ31および第2スペーサ32は、剛性を有している。これにより、第1電極11と第2電極12との間の距離を略一定に維持することができる。
【0035】
第1スペーサ31および第2スペーサ32は、例えば、シリコーン、アクリルなどの絶縁性の樹脂材料で形成することができる。また、例えば、第1電極11の絶縁層111または第2電極12の絶縁層121が上方または下方に突出する突出部を有しており、当該突出部を第1スペーサ31または第2スペーサ32としてもよい。
【0036】
第1電極11と第2電極12との距離を維持できれば、アクチュエータ1Aは、1つのスペーサを有していてもよい。一方で、アクチュエータ1Aは、3つ以上のスペーサを有していてもよい。すなわち、アクチュエータ1Aは、少なくとも1つのスペーサを有していればよい。
【0037】
図6は、第2電極12および第1セパレータ20の図示を省略したアクチュエータ1Aの上面図である。図6では、理解しやすいように、第2電極12の開口部12aが形成される領域を点線で示している。図6に示すように、本実施形態におけるアクチュエータ1Aでは、第2電極12の開口部12aの周囲であって、矩形状の第1電極11の2つの対角線に沿って4つの第1スペーサ31が設けられている。換言すれば、第1スペーサ31は、開口部12aの縁部に配置されている。複数の第1スペーサ31が、開口部12aの中央を始点とする放射状の仮想的な4つ以上の直線に沿って配置されていてもよい。この場合、複数の第1スペーサ31のそれぞれは、仮想的な直線に沿って延伸していてもよい。また、複数の第1スペーサ31は、開口部12aの周方向に周期的に配されていてもよい。また、複数の第1スペーサ31は、開口部12aの中央を中心にして点対称に配置されてもよい。アクチュエータ1Aは、アクチュエータ1Aを平面視したときに、開口部12aの周囲において第1スペーサ31が設置されていない領域は、第1スペーサ31が設置されている領域よりも大きくなっていてもよい。これにより、第1流体F1が後述する第1空間S1に流出入しやすくできる。第1スペーサ31が設けられている箇所および第1スペーサ31の数はこれに限られるものではない。
【0038】
図3に示すように、第1スペーサ31の上端部31aの少なくとも一部は、第1セパレータ20を介して第2電極12に当接している。言い換えれば、第1セパレータ20のうち、第2電極12の開口部12aの周囲の一部の領域は、第2電極12と第1スペーサ31の上端部31aとによって狭持されている。第1スペーサ31の下端部31bは、第1電極11に当接している。上記の構成により、第1スペーサ31は、第1電極11と第2電極12との間の距離を維持するスペーサとして機能するとともに、伸縮部20aの外縁形状の一部を画定する役割も有している。
【0039】
第2スペーサ32の上端部32aの少なくとも一部は、第2電極12に当接している。第2スペーサ32の下端部32bは、第1セパレータ20を介して第1電極11に当接している。言い換えれば、第1セパレータ20の端部(換言すれば、第1セパレータ20の外縁部)は、第1電極11と第2スペーサ32の下端部32bとによって狭持されている。上記の構成により、第2スペーサ32は、第1電極11と第2電極12との間の距離を維持するスペーサとして機能するとともに、第1セパレータ20の端部を第1電極11に対して固定する役割も有している。第1セパレータ20の端部は、第1電極11に対して固定されていればよく、第2スペーサ32によって固定されていなくてもよい。
【0040】
本開示の一態様のアクチュエータ1Aでは、第1セパレータ20のうち第2電極12の開口部12aの周囲の一部の領域が第1電極11と第1スペーサ31の下端部31bとによって狭持されるとともに、第1セパレータ20の外縁部が第2電極12と第2スペーサ32の上端部32aとによって狭持される構成であってもよい。
【0041】
第2スペーサ32は、アクチュエータ1Aの外周部に沿って設けられている。換言すれば、第2スペーサ32は、第2電極12の外縁部に位置している。第2スペーサ32は、第2電極12および第1セパレータ20の間の空間と外空間とを連通する連通路32cを備えている。図6に示すように、本実施形態におけるアクチュエータ1Aでは、アクチュエータ1Aを平面透視した場合、第2スペーサ32は、第1空間S1および第2空間S2を画定する囲繞形状をなしている。囲繞形状とは、例えば、矩形、円形、楕円形であるが、特に限定されない。図6に示す例では、第2スペーサ32は、矩形の囲繞形状をなしている。連通路32cは、当該矩形の各辺の中央に設けられている。連通路32cは、図6に示すように前記囲繞形状を分断するように設けられていてもよいし、第2スペーサ32の側面を左右方向に貫通する開口部として設けられていてもよい。本実施形態では、連通路32cは、第2スペーサ32がなす矩形のそれぞれの辺の中央に設けられている。この場合、アクチュエータ1Aを平面透視したときに、連通路32cと開口部12aの中心とを結ぶ直線上に第1スペーサ31が存在していない。連通路32cが設けられる箇所は、図6に示す箇所に限られるものではなく、第2電極12と第1スペーサ31との間の空間と外空間とを連通できるのであれば第2スペーサ32のいずれの箇所に設けられてよい。例えば、第2スペーサ32は、第2スペーサ32がなす矩形の角に設けられてもよい。また、第2スペーサ32の個数は、4つに限られず、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0042】
また、上記の構成となっていることにより、第2電極12を上側、第1電極11を下側とした場合、第1セパレータ20の第2電極12に対する固定位置は、第1セパレータ20の第1電極11に対する固定位置よりも高い位置となっている。
【0043】
第1セパレータ20は、第2電極12の開口部12aの周囲において第1スペーサ31の上端部31aによって第2電極12に押しつけられた状態となっており、外縁部が第2スペーサ32の下端部32bによって第1電極11に押しつけられた状態となっている。これにより、第1セパレータ20は、第1電極11および第2電極12との間の領域を仕切っている。以降の説明では、図3に示すように、第1セパレータ20と第1電極11との間の空間を第1空間S1とし、第1セパレータ20と第2電極12との間の空間を第2空間S2として説明する。また、アクチュエータ1Aを平面視したときに第2電極12の開口部12aが形成される領域であって、第1セパレータ20の伸縮部20aと後述する封止部33との間の空間を第5空間S5として説明する。第1空間S1は、アクチュエータ1Aの外縁部である第2スペーサ32から第2電極12の開口部12aに向かうにつれて上下方向の幅が大きくなっている。一方で、第2空間S2は、第2電極12の開口部12aに向かうにつれて上下方向の幅が小さくなっている。
【0044】
図6に示すように、アクチュエータ1Aは、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ31が設けられていない領域を有している。すなわち、アクチュエータ1Aでは、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に、第1空間S1と第5空間S5とを連通する流路が形成されている。そのため、第1空間S1と第5空間S5とは連通している。第1空間S1と第5空間S5とによって形成される空間には、当該空間を移動することが可能な第1流体F1が充填されている。第1流体F1は、第1空間S1と第5空間S5とによって形成される空間を移動可能な流体であれば特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性オイルなどの誘電性流体であってよい。
【0045】
封止部33は、第1電極11の開口部11aを塞ぐための部材である。封止部33は、厚みが10μm~1000μmの樹脂材料であってよい。封止部33は、伸縮部20aよりも大きい剛性を有している。これにより、封止部33は、伸縮部20aよりも変形しにくくなっている。開口部11aは、第1流体F1を第1空間S1および第5空間S5に注入するための開口部であり、第1流体F1の注入が完了した後に、封止部33によって塞がれる。第1電極11が開口部11aを有さない場合には、封止部33は設けられなくてもよい。
【0046】
図1に示す制御部40Aは、第1電極11、第2電極12、および、第1セパレータ20が有する電極層22の電位を制御する。本実施形態における以降の説明では、第1電極の電位を第1電位、第2電極12の電位を第2電位、第1セパレータ20の電極層22の電位、換言すれば第1セパレータ20の電位を第3電位として説明する。
【0047】
制御部40Aは、図1に示すように、画像表示装置200と無線または有線通信により通信可能となっており、画像表示装置200から指示を受信する。制御部40Aは、画像表示装置200からの指示に基づいて、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御してもよい。画像表示装置200は、例えば、VR装置、その他の画像表示制御装置であってよい。画像表示装置200は、表示する画像に応じた制御信号を制御部40Aに送信してもよい。
【0048】
<アクチュエータ1Aの組立方法>
次に、アクチュエータ1Aの組立方法について説明する。まず、第1電極11の開口部11aの周囲に所定の間隔を空けて各第1スペーサ31を第1電極11に接合する。接合は、接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを使用できる。
【0049】
次に、第1セパレータ20を第1電極11の、第1スペーサ31を接合した側の面である上面に配置する。このとき、第1セパレータ20の外周部を、接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを用いて、第1電極11に接合する。また、第1スペーサ31の上端部31aを接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを用いて、第1セパレータ20と接合する。
【0050】
次に、第1セパレータ20の外周部に第2スペーサ32の下端部32bを接合する。接合は、接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを使用できる。
【0051】
次に、第2スペーサ32を第1セパレータ20に接合させた側に、第2電極12を積層する。このとき、第2スペーサ32の上端部32aと第2電極12とを接合する。接合は、接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを使用できる。
【0052】
次に、第1電極11に形成された開口部11aから第1流体F1をアクチュエータ1Aの内部に充填させる。第1流体F1の充填は、第1電極11側を上面にした状態で第1流体F1を滴下させることにより行ってよい。また、第1流体F1の充填は、アクチュエータ1Aの内部を真空状態にした状態で開口部11aを第1流体F1に浸漬し、大気開放することにより行ってもよい。第1流体F1を充填する際には、第2電極12と第1セパレータ20の電極層22との間に100V~1000Vの電圧を印加することにより、静電力によって第1セパレータ20を第2電極12に吸着させて行ってもよい。
【0053】
第1流体F1を充填した後、封止部33を第1電極11に接合することにより、第1電極11の開口部11aを封止部33によって封止する。接合は、接着剤、ヒートシール、プラズマ接合などの接合プロセスを使用できる。これにより、第1空間S1と第5空間S5とによって形成される空間に第1流体F1が充填された状態となる。
【0054】
<アクチュエータ1Aの動作例>
次に、アクチュエータ1Aの動作例について説明する。初期状態では、第1電極11の第1電位、第2電極12の第2電位、および、第1セパレータ20の第3電位は全て同じ電位となっているものとする。ここでは、例として、初期状態における第1電位、第2電位、および、第3電位が0Vであるとして説明する。
【0055】
制御部40Aは、画像表示装置200から触覚をユーザに提示するよう指示を受けると、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられるように、第1電極11と第2電極12との間に電位差を生じさせる。具体的には、制御部40Aは、第1電位が第2電位および第3電位よりも大きくなるように、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御する。例として、制御部40Aは、第2電位および第3電位を0Vのままとし、第1電位が正の電位(例えば、300~500V)となるように制御してもよい。その他の例として、制御部40Aは、第2電位および第3電位が負の電位(例えば、-500~-300V)となり、第1電位が0Vのままとなるように制御してもよい。
【0056】
上記のように、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御することにより、第1電極11と第1セパレータ20との間に、第1電極11から第1セパレータ20に向かう電界が形成される。ここで、上記のように、第1セパレータ20は、2つの電極層22によって挟持された可撓性部材21を備えている。そのため、第1セパレータ20は、第1電極11と第1セパレータ20との間に形成された電界により、第1電極11と第2電極12とに挟まれた領域において、第1電極11に引き付けられるように変位する。
【0057】
図7は、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Aの断面図である。図7に示すように、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられると、第1セパレータ20と第1電極11との間の空間である第1空間S1の容積が小さくなる。その結果、第1空間S1に充填されていた第1流体F1が第5空間S5に押し出され、第5空間S5には、図3に示す初期状態における容積よりも大きい容積の第1流体F1が充填され、第5空間S5の内部の圧力が大きくなる。これにより、伸縮性を有する第1セパレータ20の伸縮部20aが、第2電極12の開口部12aから外空間に向けて膨張し、アクチュエータ1Aの一部が開口部12aから突出した突出状態となる。開口部12aから突出した伸縮部20aは、装着型ハプティクスデバイス100Aを装着したユーザの皮膚に接触することにより、ユーザに対して触覚を与える。
【0058】
本実施形態の一態様のアクチュエータ1Aでは、第1電極11と第1セパレータ20との間に電位差を生じさせたときに第1空間S1に充填されていた第1流体F1を第5空間S5にスムーズに押し出すために、第1セパレータ20が第1セパレータ20の外側から内側にかけて順に第1電極11に引き付けられるように構成されていてもよい。例えば、アクチュエータ1Aは、互いに離れている、第1電極11に対して電圧を印加するための第1配線と、第2電極12に対して電圧を印加するための第2配線とを有し、第1配線が第1電極11の外縁部に接続されていてもよい。これにより、第1電極11と第1セパレータ20との間に外側から内側にかけて順に電位差が生じるように電圧を印加できるため、第1セパレータ20が外側から内側にかけて順に第1電極11に引き付けられるようにすることができる。本実施形態の一態様のアクチュエータ1Aでは、第1流体F1を第5空間S5にスムーズに押し出すために、第1電極11は、外縁部周辺の電極密度が高くなるように構成されていてもよい。
【0059】
また、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられると、第1セパレータ20と第2電極12との間の空間である第2空間S2の容積が大きくなる。ここで、上述のように、第2スペーサ32は、第2空間S2と外空間とを連通する連通路32cを備えている。そのため、第2空間S2の容積が大きくなると、連通路32cから第2流体としての空気が第2空間S2に引き込まれる。
【0060】
次に、アクチュエータ1Aにおける、図7に示す突出状態から伸縮部20aを突出していない状態に変化させる動作について説明する。
【0061】
制御部40Aは、画像表示装置200からユーザに対する触覚の提示を停止するよう指示を受けると、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられるように、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御する。具体的には、制御部40Aは、第2電位が第1電位および第3電位よりも大きくなるように、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御する。例として、制御部40Aは、第1電位および第3電位が0Vとなり、第2電位が正の電位(例えば、300~500V)となるように制御してもよい。その他の例として、制御部40Aは、第1電位および第3電位が負の電位(例えば、-300~-500V)となり、第2電位が0Vとなるように制御してもよい。
【0062】
上記のように、第1電位、第2電位、および、第3電位を制御することにより、第2電極12と第1セパレータ20との間に、第2電極12から第1セパレータ20に向かう電界が形成される。これにより、第1セパレータ20は、第1電極11と第2電極12とに挟まれた領域において、第2電極12に引き付けられるように変位する。
【0063】
図8は、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Aの断面図である。図8に示すように、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられると、第1セパレータ20と第1電極11との間の空間である第1空間S1の容積が大きくなる。その結果、第5空間S5に充填されていた第1流体F1が第1空間S1に引き込まれる。これにより、第5空間S5内の圧力が低下する。その結果、伸縮部20aが収縮し、開口部12aから突出していない非突出状態(初期状態)となる。
【0064】
本実施形態の一態様のアクチュエータ1Aでは、第2電極12と第1セパレータ20との間に電位差を生じさせたときに第5空間S5に充填されていた第1流体F1を第1空間S1に引き込むスムーズに引き込むために、第1セパレータ20が第1セパレータ20の内側から外側にかけて順に第2電極12に引き付けられるように構成されていてもよい。例えば、アクチュエータ1Aは、互いに離れている、第1電極11に対して電圧を印加するための第1配線と、第2電極12に対して電圧を印加するための第2配線とを有し、第2配線が第2電極12の中央部に接続されていてもよい。これにより、第2電極12と第1セパレータ20との間に電位差が生じるように電圧を印加したときに、第1セパレータ20が内側から外側にかけて順に第2電極12に引き付けられるようにすることができる。本実施形態の一態様のアクチュエータ1Aでは、第1流体F1を第1空間S1にスムーズに引き込むために、第2電極12は、開口部12aの周辺の電極密度が高くなるように構成されていてもよい。
【0065】
また、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられると、第1セパレータ20と第2電極12との間の空間である第2空間S2の容積が小さくなる。このとき、第2空間S2に充填されていた空気の一部が連通路32cから外空間に押し出される。
【0066】
以上のように、本実施形態のアクチュエータ1Aは、第1電極11と、第2電極12と、第1電極11と第2電極12との間の領域を仕切り、第1電極11および第2電極12に対する相対位置が変化する第1セパレータ20と備えている。そして、アクチュエータ1Aでは、第1セパレータ20の変位に伴い、第1空間S1を移動することが可能な第1流体F1が移動することに起因して、第1セパレータ20の伸縮部20aの初期状態と突出状態とが切り替わる。
【0067】
ここで、特許文献1に記載のような従来の技術では、突出状態から初期状態に伸縮部を切り替える際に、伸縮部の張力(復元力)に依存していた。そのため、突出状態から初期状態への切り替えを高速に行いたい場合には、伸縮部の張力を大きくために電極に高い電圧を印加する必要があった。そのため、人体への装着安全性が十分とは言えなかった。
【0068】
これに対して、本実施形態のアクチュエータ1Aは、上記の構成を有することにより、第1電極11および第2電極12の電圧を変化させて第1セパレータ20を変位させることにより、伸縮部20aの初期状態と突出状態とを切り替えることができる。これにより、伸縮部20aの突出状態から初期状態への変化を、伸縮部20a自体の張力に依存することなく実現することができる。そのため、突出状態から初期状態への切り替えを高速に行いたい場合にも、第1電極11および第2電極12に対して大きな電圧を印加する必要がなく、ユーザに対して安全に触覚を与えることができる。さらに、ユーザに与える触覚の制御の自在性が高いため、よりリアルな触覚をユーザに与えることができる。
【0069】
本実施形態のアクチュエータ1Aでは、第1電極11および第2電極12は、第1セパレータ20よりも大きい剛性を有している。そのため、第1スペーサ31および第2スペーサ32によって第1電極11と第2電極12との間の距離の制御を容易に行うことができる。
【0070】
ここで、第2スペーサ32に連通路32cが形成されていない場合、第2空間S2は密閉空間となる。この場合、第1セパレータ20を変位させるためには、第2空間S2の容積を変化させる、換言すれば、第2空間S2に充填された空気を圧縮または膨張させる必要が生じるため、第1セパレータ20が変位しにくい。これに対して、本実施形態のアクチュエータ1Aでは、第2スペーサ32に連通路32cが形成されており、連通路32cによって第2空間S2が外空間と連通している。これにより、第1セパレータ20が変位する際に、第2空間内の圧力の変化を小さくすることができる。その結果、第1セパレータ20が変位しやすくなっている。
【0071】
本実施形態のアクチュエータ1Aでは、第1セパレータ20の伸縮部20aが、アクチュエータ1Aから突出する構成であったが、本開示のアクチュエータはこれに限られない。本開示の一態様のアクチュエータでは、アクチュエータから突出する伸縮性を有する伸縮部を第1セパレータ20とは別に備えている構成であってもよい。この場合、第1セパレータ20は、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aが形成されている領域以外の領域に配置されていればよい。また、この場合、伸縮部は、第2電極12の下面に配置されていてもよく、第2電極12の上面に配置されてもよい。ただし、本実施形態のアクチュエータ1Aのように、第1セパレータ20が伸縮部20aを備える構成、すなわち、第1セパレータ20と伸縮部20aが一連の部材となっていることにより、アクチュエータ1Aの構成を簡素化することができる。
【0072】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図9は、本実施形態におけるハプティクスシステム300Bの要部構成を示すブロック図である。図10は、本実施形態におけるアクチュエータ1Bの上面図であり、第2電極12Aの上面を示している。図11は、第1電極11Aの上面図である。
【0074】
図9に示すように、ハプティクスシステム300Bは、装着型ハプティクスデバイス100Bと、画像表示装置200とを備えている。装着型ハプティクスデバイス100Bは、アクチュエータ1Aに代えてアクチュエータ1Bを備える点以外の構成が、実施形態1における装着型ハプティクスデバイス100Aと同じであってよい。
【0075】
図9図11に示すように、アクチュエータ1Bは、実施形態1におけるアクチュエータ1Aの第1電極11、第2電極12および制御部40Aに代えて、第1電極11A、第2電極12Aおよび制御部40Bを備えている。
【0076】
第1電極11Aは、図11に示すように、4つの分割領域A1~A4に分割されている。分割領域A1~A4は、矩形状の第1電極11Aを2つの対角線によって分割して形成された領域である。ただし、第1電極11Aを分割する方法はこれに限られるものではない。また、本実施形態のアクチュエータ1Bでは、第1電極11Aが4つの分割領域A1~A4に分割されているが、その他の数に分割されていてもよい。4つの分割領域A1~A4は、電気的に互いに独立しており、互いに異なる電圧が印加可能になっている。
【0077】
第1電極11Aは、4つの分割領域A1~A4に分割されている以外は、実施形態1における第1電極11と同じ構造となっている。
【0078】
第2電極12Aは、図10に示すように、4つの分割領域B1~B4に分割されている。分割領域B1~B4は、それぞれ、第1電極11Aの分割領域A1~A4に対応するように分割されている。例えば、分割領域B1は、アクチュエータ1Bを平面視したときに、分割領域A1と重なるように分割されている。4つの分割領域B1~B4は、電気的に互いに独立しており、互いに異なる電圧が印加可能になっている。
【0079】
制御部40Bは、画像表示装置200からの指示に基づいて、第1電極11の分割領域A1~A4、第2電極12の分割領域B1~B4、および、第1セパレータ20が有する電極層22の電位を制御する。
【0080】
<アクチュエータ1Bの動作例>
次に、アクチュエータ1Bの動作例について説明する。初期状態では、第1電極11の分割領域A1~A4、第2電極12の分割領域B1~B4、および、第1セパレータ20が有する電極層22の電位は全て同じ電位となっているものとする。ここでは、例として、初期状態における第1電極11の分割領域A1~A4、第2電極12の分割領域B1~B4、および、第1セパレータ20が有する電極層22の電位が0Vであるとして説明する。
【0081】
本動作例では、制御部40Bが画像表示装置200から、図10に示す左側から右側に向けて伸縮部20aの突出状態における頂部Pを移動させる指示を受けたものとして説明する。この場合、制御部40Bは、まず、第1セパレータ20が第1電極11の分割領域B2~B4に引き付けられるように、第1電極11Aの電位、第2電極12Aの電位、および、第1セパレータ20の電位を制御する。具体的には、制御部40Bは、分割領域A2と分割領域B2との間、分割領域A3と分割領域B3との間、および、分割領域A4と分割領域B4との間において、第1電極11Aの電位が第2電極12Aの電位よりも大きくなり、かつ、第1セパレータ20の電位と第2電極12Aの電位とが同じになるように、各電位を制御する。これにより、分割領域A2~A4と分割領域B2~B4とのそれぞれの間において、第1電極11から第1セパレータ20に向かう電界が形成される。これにより、分割領域A2~A4と分割領域B2~B4とのそれぞれの間において、第1セパレータ20が、第1電極11に引き付けられるように変位する。これにより、分割領域A2~A4と分割領域B2~B4とのそれぞれの間において、第1セパレータ20と第1電極11Aとの間の第1空間S1の容積が小さくなる。その結果、容積が小さくなった第1空間S1から第1流体F1が第5空間S5に押し出される。これにより、第5空間S5の内部の圧力が大きくなり、第1セパレータ20の伸縮部20aが第2電極12の開口部12aから外空間に向けて膨張し、アクチュエータ1Bの一部が開口部12aから突出した突出状態となる。この場合、分割領域A1と分割領域B1との間の第1空間S1内の第1流体F1が第5空間S5には押し出されておらず、分割領域A2~A4と分割領域B2~B4とのそれぞれの間の第1空間S1内の第1流体F1が第5空間S5に押し出された状態となる。そのため、アクチュエータ1Bを平面視したときに、開口部12aから突出した伸縮部20aの頂部Pの位置は、開口部12aの中心点から分割領域B1側(図10に示す左側)に偏った位置となる。
【0082】
次に、制御部40Bは、第1セパレータ20が第1電極11の分割領域B1、B2およびB4に引き付けられるように、第1電極11Aの電位、第2電極12Aの電位、および、第1セパレータ20の電位を制御する。具体的には、制御部40Bは、分割領域A1と分割領域B1との間、分割領域A2と分割領域B2との間、および、分割領域A4と分割領域B4との間において、第1電極11Aの電位が第2電極12Aの電位よりも大きくなり、かつ、第1セパレータ20の電位と第2電極12Aの電位とが同じになるように、各電位を制御する。また、制御部40Bは、分割領域A3と分割領域B3との間において、第1電極11Aの電位、第2電極12A、および、第1セパレータ20の電位が同電位となるように制御する。これにより、分割領域A1、A2およびA4と分割領域B1、B2およびB4とのそれぞれの間において、第1電極11Aから第1セパレータ20に向かう電界が形成される。そのため、分割領域A1、A2およびA4と分割領域B1、B2およびB4とのそれぞれの間において、第1セパレータ20が、第1電極11に引き付けられるように変位する。これにより、分割領域A1、A2およびA4と分割領域B1、B2およびB4とのそれぞれの間において、第1セパレータ20と第1電極11Aとの間の第1空間S1の容積が小さくなる。その結果、容積が小さくなった第1空間S1から第1流体F1が第5空間S5に押し出される。これにより、第5空間S5の内部の圧力が大きくなり、第1セパレータ20の伸縮部20aが第2電極12の開口部12aから外空間に向けて膨張し、アクチュエータ1Bの一部が開口部12aから突出した突出状態となる。この場合、分割領域A3と分割領域B3との間の第1空間S1内の第1流体F1が第5空間S5には押し出されておらず、分割領域A1、A2およびA4と分割領域B1、B2およびB4とのそれぞれの間の第1空間S1内の第1流体F1が第5空間S5に押し出された状態となる。そのため、アクチュエータ1Bを平面視したときに、開口部12aから突出した伸縮部20aの頂部Pの位置は、開口部12aの中心点から分割領域B3側(図10に示す右側)に偏った位置となる。以上のように、制御部40Bが第1電極11の分割領域A1~A4の電位、および第2電極12の分割領域B1~B4の電位を制御することにより、図10に示す左側から右側に向けて触覚をユーザに提示することができる。
【0083】
本動作例では、図10に示す左側から右側に向けて触覚をユーザに提示する例について説明したが、第1セパレータ20を第1電極11に引き付ける領域を変えることにより、開口部12aから突出する伸縮部20aの頂部Pの位置を適宜変更できる。
【0084】
以上のように、本実施形態におけるアクチュエータ1Bでは、第1電極11Aおよび第2電極12Aが複数の分割領域に分割されており、制御部40Bは、分割領域毎に電位の制御を行う。これにより、二次元的な方向を示すようにユーザに対して触覚を与えることができる。
【0085】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0086】
図12は、本実施形態におけるハプティクスシステム300Cの要部構成を示すブロック図である。図13は、本実施形態におけるアクチュエータ1Cの上面図である。図14は、図13のXIV-XIV線の矢視断面図である。図14は、アクチュエータ1Cの初期状態を示している。
【0087】
図12に示すように、ハプティクスシステム300Cは、装着型ハプティクスデバイス100Cと、画像表示装置200とを備えている。装着型ハプティクスデバイス100Cは、アクチュエータ1Aに代えてアクチュエータ1Cを備える点以外の構成が、実施形態1における装着型ハプティクスデバイス100Aと同じであってよい。
【0088】
<アクチュエータ1Cの構成>
アクチュエータ1Cは、実施形態1におけるアクチュエータ1Aを2つ積層させた基本構造を有している。アクチュエータ1Cは、図12および図14に示すように、第1ユニットU1と、第2ユニットU2と、制御部40Cとを備えており、第1ユニットU1が第2ユニットU2の上面に積層された構造となっている。
【0089】
本実施形態における第1ユニットU1は、実施形態1におけるアクチュエータ1Aと同じ構造である。アクチュエータ1Cは、第2ユニットU2の第1電極71の上面に第1ユニットU1の第2電極12が当接するように構成されている。
【0090】
第2ユニットU2は、第1電極71と、第2電極72と、第2セパレータ80と、第1スペーサ91と、第2スペーサ92と、封止部93とを備える。
【0091】
第1電極71および第2電極72は、実施形態1における第1電極11と同じ構成であってよい。第1電極71は、第2ユニットU2の下面を構成している。第1電極71は、上下方向に開口した開口部71aを中央部に有していてもよい。
【0092】
第2電極72は、第2ユニットU2の下面を構成している。第2電極72は、上下方向に開口した開口部72aを中央部に有していてもよい。
【0093】
第2セパレータ80は、第1電極71と第2電極72との間の領域を仕切ることができる。第2セパレータ80は、伸縮部20aを備えていない点を除いて、実施形態1における第1セパレータ20と同じ材質および構成を有していてもよい。本実施形態における第2セパレータ80は、可撓性部材21と、可撓性部材21を挟持する2つの電極層22を有している。
【0094】
本実施形態における第2ユニットU2は、少なくとも1つの第1スペーサ91および少なくとも1つの第2スペーサ92を有する。少なくとも1つの第1スペーサ91および少なくとも1つの第2スペーサ92は、図14に示すように、第1電極71と第2電極72との間に配置されており、第1電極71と第2電極72との間の距離を略一定に維持する。第1スペーサ91および第2スペーサ92は、第1スペーサ31と同じ材質および構成を有していてもよい。第2ユニットU2において第1スペーサ91および第2スペーサ92が配置される位置は、第1ユニットU1において第1スペーサ31および第2スペーサ32が配置される位置と同じであってもよいし、異なる位置であってもよい。本実施形態におけるアクチュエータ1Cでは、第1スペーサ91および第2スペーサ92は、第2ユニットにおいて、第1ユニットU1において第1スペーサ31および第2スペーサ32が配置される位置と同じに配置されている。
【0095】
第2セパレータ80は、第2電極72の開口部72aの周囲において第1スペーサ91によって第2電極72に押しつけられた状態となっており、外縁部が第2スペーサ92によって第1電極71に押しつけられた状態となっている。これにより、第2セパレータ80は、第1電極71および第2電極72との間の領域を仕切っている。本実施形態における以降の説明では、図14に示すように、第2セパレータ80と第1電極71との間の空間を第3空間S3とし、第2セパレータ80と第2電極72との間の空間を第4空間S4として説明する。また、アクチュエータ1Cを平面視したときに第2電極12の開口部12aが形成される領域であって、第1セパレータ20の伸縮部20aと後述する封止部93との間の空間を第5空間S5として説明する。
【0096】
図6を参照して、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ31が設けられていない領域が存在していることを上述した。当該構成と同じように、第2ユニットU2も、アクチュエータ1Cを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ91が設けられていない領域を有している。そのため、第3空間S3と第5空間S5とは連通している。また、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ31が設けられていない領域があることにより、第1空間S1と第5空間S5とは連通している。したがって、第1空間S1、第3空間S3および第5空間S5とは連通している。第1空間S1、第3空間S3および第5空間S5によって規定される空間には、当該空間を移動することが可能な第1流体F1が充填されている。
【0097】
制御部40Cは、図12に示すように、画像表示装置200からの指示に基づいて、第1ユニットU1の第1電極11、第2電極12、および電極層22の電位、ならびに、第2ユニットU2の第1電極71、第2電極72、および電極層22の電位を制御する。
【0098】
封止部93は、第2ユニットU2の第1電極71の開口部71aを塞ぐための部材である。封止部93は、厚みが10μm~1000μmの樹脂材料であってよい。封止部93は、伸縮部20aよりも大きい剛性を有している。これにより、封止部93は、伸縮部20aよりも変形しにくくなっている。開口部71aは、第1流体F1を第1空間S1、第3空間S3および第5空間S5に注入するための開口部であり、第1流体F1の注入が完了した後に、封止部93によって塞がれる。第1電極71が開口部71aを有さない場合には、封止部93は設けられなくてもよい。
【0099】
<アクチュエータ1Cの動作例>
次に、アクチュエータ1Cの動作例について説明する。初期状態では、第1ユニットU1の第1電極11、第2電極12、および電極層22の電位、ならびに、第2ユニットU2の第1電極71、第2電極72、および電極層22の電位は、0Vであるとして説明する。
【0100】
制御部40Cは、画像表示装置200から触覚をユーザに提示するよう指示を受けると、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられるとともに、第2セパレータ80が第1電極71に引き付けられるように各電位を制御する。例えば、制御部40Cは、第1電極11の電位が第2電極12の電位および第1セパレータ20の電極層22の電位よりも大きくなるとともに、第1電極71の電位が第2電極72の電位および第2セパレータ80の電極層22の電位よりも大きくなるように、各電位を制御してもよい。これにより、第1電極11と第1セパレータ20との間に第1電極11から第1セパレータ20に向かう電界が形成されるとともに、第1電極71と第2セパレータ80との間に第1電極71から第2セパレータ80に向かう電界が形成される。その結果、第1セパレータ20が第1電極11に引き付けられるとともに、第2セパレータ80が第1電極71に引き付けられる。
【0101】
図15は、第1セパレータ20および第2セパレータ80が第1電極11および第1電極71にそれぞれ引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Cの断面図である。図15に示すように、第1セパレータ20および第2セパレータ80が第1電極11および第1電極71にそれぞれ引き付けられると、第1空間S1および第3空間S3の容積が小さくなる。その結果、第1空間S1および第3空間S3に充填されていた第1流体F1が第5空間S5に押し出される。これにより、第5空間S5には、図14に示す初期状態における容積よりも大きい容積の第1流体F1が充填され、第5空間S5の内部の圧力が大きくなる。これにより、伸縮部20aが、第2電極12の開口部12aから外空間に向けて膨張し、アクチュエータ1Cの一部が開口部12aから突出した突出状態となる。開口部12aから突出した伸縮部20aは、アクチュエータ1Cを備えたウェアラブル装置を装着したユーザの皮膚に接触することにより、ユーザに対して触覚を与える。
【0102】
次に、アクチュエータ1Cにおける、図15に示す突出状態から、伸縮部20aを突出していない状態に変化させる動作について説明する。
【0103】
制御部40Cは、画像表示装置200からユーザに対する触覚の提示を停止するよう指示を受けると、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられるとともに、第2セパレータ80が第2電極72に引き付けられるように各電位を制御する。例えば、制御部40Cは、第2電極12の電位が第1電極11の電位および第1セパレータ20の電極層22の電位よりも大きくなるとともに、第2電極72の電位が第1電極71の電位および第2セパレータ80の電極層22の電位よりも大きくなるように、各電位を制御してもよい。これにより、第2電極12と第1セパレータ20との間に第2電極12から第1セパレータ20に向かう電界が形成されるとともに、第2電極72と第2セパレータ80との間に第2電極72から第2セパレータ80に向かう電界が形成される。その結果、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられるとともに、第2セパレータ80が第2電極72に引き付けられる。
【0104】
図16は、第1セパレータ20および第2セパレータ80が第2電極12および第2電極72にそれぞれ引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Cの断面図である。図16に示すように、第1セパレータ20および第2セパレータ80が第2電極12および第2電極72にそれぞれ引き付けられると、第1空間S1および第3空間S3の容積が大きくなる。その結果、第5空間S5に充填されていた第1流体F1が第1空間S1および第3空間S3に引き込まれる。これにより、第5空間S5内の圧力が低下する。その結果、伸縮部20aが収縮し、伸縮部20aが開口部12aから突出していない初期状態となる。
【0105】
以上のように、本実施形態におけるアクチュエータ1Cは、第1電極11、第1セパレータ20および第2電極12を備える第1ユニットU1と、第1電極71、第2セパレータ80および第2電極72を備える第2ユニットU2とを含む多層構造になっている。換言すれば、アクチュエータ1Cは、2つの電極と当該2つの電極との間に配置されるセパレータとを備えるユニットを複数、多層構造として備えている。第1電極11および第2電極12によって構成される層は、第1スペーサ31および第2スペーサ32によって第1電極11と第2電極12との間が維持されている。第1電極71および第2電極72によって構成される層は、第1スペーサ91および第2スペーサ92によって第1電極71と第2電極72との間が維持されている。これにより、各層の間の距離を維持することが容易となる。その結果、各層の間の距離を小さくすることができるので、第1セパレータ20および第2セパレータ80を変位させるための電圧を低くすることができる。これにより、ユーザに対して安全に触覚を与えることができる。
【0106】
アクチュエータ1Cは、多層構造となっており、伸縮部20aを突出状態にする際に、第1空間S1および第3空間S3から第1流体F1を第5空間S5に供給する。そのため、伸縮部20aを突出状態にするために必要となる第5空間S5の圧力を高くしやすくなっている。これにより、第1セパレータ20および第2セパレータ80を変位させるために印加する電圧を低くすることができる。
【0107】
アクチュエータ1Cでは、第1電極11および第2電極12が第1セパレータ20よりも大きい剛性を有しており、第1電極71および第2電極72が第2セパレータ80よりも大きい剛性を有している。これにより、各層の間の距離を維持することが容易となるため、多層構造を容易に形成することができる。
【0108】
〔実施形態4〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0109】
図17は、本実施形態におけるハプティクスシステム300Dの要部構成を示すブロック図である。図18は、本実施形態におけるアクチュエータ1Dの上面図である。図19は、図18のXIX-XIX線の矢視断面図である。図19は、アクチュエータ1Dの初期状態を示している。
【0110】
図17に示すように、ハプティクスシステム300Dは、装着型ハプティクスデバイス100Dと、画像表示装置200とを備えている。装着型ハプティクスデバイス100Dは、アクチュエータ1Aに代えてアクチュエータ1Dを備える点以外の構成が、実施形態1における装着型ハプティクスデバイス100Aと同じであってよい。
【0111】
アクチュエータ1Dは、実施形態1におけるアクチュエータ1Aを2つ、下面同士を対向させて積層させた基本構造を有している。具体的には、アクチュエータ1Dは、図17図19に示すように、アクチュエータ1Aの構成に加えて、第3電極13と、第2セパレータ50と、第1スペーサ61と、第2スペーサ62とを備えている。アクチュエータ1Dは、実施形態1におけるアクチュエータ1Aにおける封止部33および制御部40Aに代えて、封止部63および制御部40Dを備えている。アクチュエータ1Aと共通する構成についての説明は省略する。
【0112】
第3電極13は、電圧が印加可能となっている板状の電極である。第3電極13は、第1電極11の、第2電極12が位置する側とは反対側に位置しており、第1電極11と対向して配置されている。第3電極13は、アクチュエータ1Dの下面を構成している。第3電極13は、後述する第2セパレータ50よりも大きい剛性を有している。第3電極13は、第1電極11と同じ材質および構成を有していてもよい。第3電極13は、アクチュエータ1Dを平面視したときの形状が第1電極11と同じ形状となっていてもよい。
【0113】
第3電極13は、上下方向に開口した開口部13aを中央部に有している。開口部13aの形状は、特に限定されるものではなく、円形状であってもよく、矩形であってもよい。本実施形態における開口部13aは、円形状になっている。開口部13aが円形状である場合、開口部13aの大きさは、直径が1mm~9mmであってもよい。開口部13aは、第1電極の開口部11aと同様のプロセスにより形成されてよい。開口部13aの周辺部は、エッジ部での放電を回避するために、100μm~900μm程度、電極パターンが形成されていない領域を備えていてもよい。
【0114】
第2セパレータ50は、第1電極11と第3電極13との間の領域に配置されている。第2セパレータ50は、アクチュエータ1Dを平面視したときに、第1電極11と略同じ大きさとなるように構成されてよい。第2セパレータ50は、アクチュエータ1Dを平面視したときに、第2電極12の開口部12aが形成されている領域以外の領域に配置されてよい。
【0115】
図20は、第2セパレータ50の構成を示す断面拡大図である。図20に示すように、第2セパレータ50は、可撓性部材51と2つの電極層52とを有している。
【0116】
可撓性部材51は、可撓性および導電性を有している。可撓性部材51は、実施形態1において説明した可撓性部材21と同じ構造であってよい。
【0117】
電極層52は、可撓性部材51を上下方向から挟むように、可撓性部材51の上面側および下面側の表面に位置している。電極層52は、実施形態1において説明した電極層22と同じ構造であってよい。
【0118】
第1スペーサ61および第2スペーサ62は、図19に示すように、第1電極11と第3電極13との間に配置されており、第1電極11と第3電極13との間の距離を略一定に維持する。第1電極11と第3電極13とは、平行に配置される必要はなく、第2セパレータ50が変位可能な空間を維持できればよい。第1スペーサ61および第2スペーサ62は、剛性を有している。第1スペーサ61および第2スペーサ62は、シリコーン、アクリルなどの絶縁性の樹脂材料で構成されてよい。第1スペーサ61および第2スペーサ62は、アクチュエータ1Dを平面視したときに第1スペーサ31および第2スペーサ32とそれぞれ同じ位置に設けられてもよい。
【0119】
図19に示すように、第1スペーサ61の上端部61aは、第1電極11に当接している。第1スペーサ61の下端部61bは、第2セパレータ50を介して第3電極13に当接している。すなわち、第2セパレータ50のうち、第3電極13の開口部13aの周囲の一部の領域は、第3電極13と第1スペーサ61によって挟持されている。第1スペーサ61は、第1電極11と第3電極13との間の距離を維持するスペーサとして機能する。
【0120】
第2スペーサ62の上端部62aは、第2セパレータ50を介して第1電極11に当接している。すなわち、第2セパレータ50の端部、すなわち第2セパレータ50の外縁部は、第1電極11と第2スペーサ62によって挟持されている。第2スペーサ62の下端部62bは、第3電極13に当接している。上記の構成により、第2スペーサ32は、第1電極11と第3電極13との間の距離を維持するスペーサとして機能する。第2スペーサ62は、アクチュエータ1Dを平面透視した状態において囲繞形状を形成している。囲繞形状をなす第2スペーサ62には、連通路32cを設けた技術的思想と同じ技術的思想に基づいて、少なくとも1つの図示しない連通路が設けられている。
【0121】
上記の構成となっていることにより、第2セパレータ50は、第1電極11および第3電極13との間の領域を仕切っている。本実施形態における以降の説明では、図19に示すように、第2セパレータ50と第1電極11との間の空間を第3空間S3として説明する。また、アクチュエータ1Dを平面視したときに第2電極12の開口部12aが形成される領域であって、第1セパレータ20の伸縮部20aと後述する封止部63との間の空間を第4空間S4として説明する。第4空間S4は、伸縮部20aによって容積が規定される空間である。
【0122】
図6を参照して、アクチュエータ1Aを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ31が設けられていない領域が存在していることを上述した。当該構成と同じように、アクチュエータ1Dも、アクチュエータ1Dを平面視したときに、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ61が設けられていない領域を有している。そのため、第3空間S3と第4空間S4とは連通している。また、第2電極12の開口部12aの周囲に第1スペーサ31が設けられていない領域があることにより、第1空間S1と第4空間S4とは連通している。したがって、第1空間S1、第3空間S3および第4空間S4とは連通している。第1空間S1、第3空間S3および第4空間S4によって規定される空間には、当該空間を移動することが可能な第3流体F3が充填されている。第3流体F3は、第1空間S1、第3空間S3および第4空間S4によって形成される空間を移動可能な流体であれば特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性オイルなどの誘電性流体であってよい。
【0123】
封止部63は、第3電極13の開口部13aを塞ぐための部材である。封止部63は、厚みが10μm~1000μmの樹脂材料であってよい。
【0124】
制御部40Dは、第1電極11、第2電極12、第3電極13、第1セパレータ20が有する電極層22および、第2セパレータ50が有する電極層52の電位を独立に制御する。
【0125】
制御部40Dは、図17に示すように、画像表示装置200と通信可能となっており、画像表示装置200から指示を受信する。制御部40Dは、画像表示装置200からの指示に基づいて、第1電極11、第2電極12、第3電極13、電極層22、および、電極層52の電位を独立に制御してもよい。
【0126】
<アクチュエータ1Dの組立方法>
次に、アクチュエータ1Dの組立方法について説明する。まず、第3電極13の外周部に第2スペーサ62に下端部62bを接合する。
【0127】
次に、第3電極13の、第2スペーサ62を接合した側の面に第2セパレータ50を配置する。このとき、第2セパレータ50の外周部を第2スペーサ62の上端部62aに接合するとともに、第3電極13の開口部13aの周囲において第2セパレータ50を第3電極13に接合する。
【0128】
次に、第3電極13の開口部13aの周囲に所定の間隔を空けて各第1スペーサ61の下端部61bを第2セパレータ50に接合する。次に、第1スペーサ61を接合させた側に、第1電極11を積層する。このとき、第1スペーサ61の上端部61aと第1電極11とを接合する。
【0129】
次に、第1電極の第3電極13が位置する側とは反対側において、第1電極11の開口部11aの周囲に所定の間隔を空けて各第1スペーサ31を第1電極11に接合する。
【0130】
次に、第1セパレータ20を第1電極11の、第1スペーサ31を接合した側の面に配置する。このとき、第1セパレータ20の外周部を第1電極11に接合する。また、第1スペーサ31の上端部31aを第1セパレータ20に接合する。次に、第1セパレータ20の外周部に第2スペーサ32の下端部32bを接合する。
【0131】
次に、第2スペーサ32を第1セパレータ20に接合させた側に、第2電極12を積層する。このとき、第2スペーサ32の上端部32aと第2電極12とを接合する。
【0132】
次に、第3電極13に形成された開口部13aから第3流体F3をアクチュエータ1Dの内部に充填させる。第3流体F3を充填した後、封止部63を第3電極13に接合することにより、第3電極13の開口部13aを封止部63によって封止する。これにより、第1空間S1、第3空間S3および第4空間S4によって形成される空間に第3流体F3が充填された状態となる。
【0133】
<アクチュエータ1Dの動作例>
次に、アクチュエータ1Dの動作例について説明する。初期状態では、第1電極11、第2電極12、第3電極13、電極層22、および電極層52は全て同じ電位となっている。ここでは、例として、初期状態において、第1電極11、第2電極12、第3電極13、電極層22、および電極層52の電位が0Vであるとして説明する。
【0134】
制御部40Dは、画像表示装置200から触覚をユーザに提示するよう指示を受けると、第1セパレータ20および第2セパレータ50が第1電極11に引き付けられるように、第1電極11と第2電極12との間、および、第1電極11と第3電極13との間に電位差を生じさせる。具体的には、制御部40Dは、第1電極11の電位が第2電極12、第3電極13、電極層22、および電極層52の電位よりも大きくなるように制御する。例として、制御部40Dは、第2電極12、第3電極13、電極層22、および電極層52の電位を0Vのままとし、第2電位が正の電位となるように制御してもよい。
【0135】
上記のように、各電位を制御することにより、第1電極11と第1セパレータ20との間に第1電極11から第1セパレータ20に向かう電界が形成されるとともに、第1電極11と第2セパレータ50との間に第1電極11から第2セパレータ50に向かう電界が形成される。これにより、第1セパレータ20は、第1電極11と第1セパレータ20との間に形成された電界により、第1電極11に引き付けられるように変位する。また、第2セパレータ50は、第1電極11と第2セパレータ50との間に形成された電界により、第1電極11に引き付けられるように変位する。
【0136】
図21は、第1セパレータ20および第2セパレータ50が第1電極11に引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Dの断面図である。図21に示すように、第1セパレータ20および第2セパレータ50が第1電極11に引き付けられると、第1空間S1および第3空間S3の容積が小さくなる。その結果、第1空間S1および第3空間S3に充填されていた第3流体F3が第4空間S4に押し出され、第4空間S4には、図19に示す初期状態における容積よりも大きい容積の第3流体F3が充填され、第4空間S4の内部の圧力が大きくなる。これにより、伸縮性を有する第1セパレータ20の伸縮部20aが、第2電極12の開口部12aから外空間に向けて膨張し、アクチュエータ1Dの一部が開口部12aから突出した突出状態となる。開口部12aから突出した伸縮部20aは、ユーザに接触することにより、ユーザに対して触覚を与える。
【0137】
次に、アクチュエータ1Dにおける、図21に示す突出状態から伸縮部20aを突出していない状態に変化させる動作について説明する。
【0138】
制御部40Dは、画像表示装置200からユーザに対する触覚の提示を停止するよう指示を受けると、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられるとともに第2セパレータ50が第3電極13に引き付けられるように第1電極11、第2電極12、第3電極13、電極層22、および電極層52の電位を制御する。具体的には、制御部40Dは、第2電極12および第3電極13の電位が、第1電極11、電極層22、および電極層52の電位よりも大きくなるように制御する。例として、制御部40Dは、第1電極11、電極層22、および電極層52の電位が0Vとなり、第2電極12および第3電極13の電位が正の電位となるように制御してもよい。
【0139】
上記のように制御することにより、第2電極12と第1セパレータ20との間に第2電極12から第1セパレータ20に向かう電界が形成されるとともに、第3電極13と第2セパレータ50との間に第3電極13から第2セパレータ50に向かう電界が形成される。これにより、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられるように変位するとともに、第2セパレータ50が第3電極13に引き付けられるように変位する。
【0140】
図22は、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられ、第2セパレータ50が第3電極13に引き付けられた様子を示すアクチュエータ1Dの断面図である。図22に示すように、第1セパレータ20が第2電極12に引き付けられると、第1セパレータ20と第1電極11との間の空間である第1空間S1の容積が大きくなる。同時に、第2セパレータ50が第3電極13に引き付けられると、第2セパレータ50と第1電極11との間の空間である第3空間S3の容積が大きくなる。その結果、第4空間S4に充填されていた第3流体F3が第1空間S1および第3空間S3に引き込まれる。これにより、第4空間S4内の圧力が低下する。その結果、伸縮部20aが収縮し、伸縮部20aが開口部12aから突出していない初期状態となる。
【0141】
このように、アクチュエータ1Dでは、制御部40Dは、伸縮部20aを初期状態または突出状態にするときの、第1セパレータ20の変位方向と第2セパレータ50の変位方向とが異なるように第1セパレータ20および第2セパレータ50の電位を制御してもよい。
【0142】
以上のように、本実施形態におけるアクチュエータ1Dは、第1電極11、第1セパレータ20および第2電極12を備えるユニットと、第1電極11、第2セパレータ50および第3電極13を備えるユニットとを含む多層構造になっている。換言すれば、アクチュエータ1Dは、2つの電極と当該2つの電極との間に配置されるセパレータとを備えるユニットを複数、多層構造として備えている。第1電極11および第2電極12によって構成される層は、第1スペーサ31および第2スペーサ32によって第1電極11と第2電極12との間が維持されている。第1電極11および第3電極13によって構成される層は、第1スペーサ61および第2スペーサ62によって第1電極11と第3電極13との間が維持されている。これにより、各層の間の距離を維持することが容易となる。その結果、各層の間の距離を小さくすることができるので、第1セパレータ20および第2セパレータ50を変位させるための電圧を低くすることができる。これにより、ユーザに対して安全に触覚を与えることができる。
【0143】
アクチュエータ1Dは、多層構造となっているため、伸縮部20aを突出状態にする際に、第1空間S1および第3空間S3から第3流体F3を第4空間S4に供給する。そのため、伸縮部20aを突出状態にするために必要となる第4空間S4の圧力を高くしやすくなっている。これにより、第1セパレータ20および第2セパレータ50を変位させるための電圧を低くすることができる。
【0144】
アクチュエータ1Dでは、第1電極11、第2電極12および第3電極13が第1セパレータ20および第2セパレータ50よりも大きい剛性を有している。これにより、各層の間の距離を維持することが容易となるため、多層構造を容易に形成することができる。
【0145】
また、本実施形態におけるアクチュエータ1Dのように多層構造になっている構成においても、実施形態2において説明したように、第1電極11、第2電極12および第3電極13が複数の分割領域にされており、制御部40Dが、分割領域毎に各電極の電位の制御を行う構成であってもよい。
【0146】
本開示の一態様のアクチュエータ1Dでは、第2電極12の開口部12aの開口面積が、第1電極11の開口部11aの開口面積よりも小さくなっていてもよい。これにより、伸縮部20aが外部に向けて突出する突出量を大きくすることができるとともに、伸縮部20aを突出状態から非突出状態にする際に伸縮部20aを収縮させやすくすることができる。
【0147】
本開示の一態様のアクチュエータ1Dでは、第3電極13の開口部13aの開口面積が、第1電極11の開口部11aの開口面積よりも小さくなっていてもよい。これにより、封止部63に対する負荷を低減できるとともに、第1流体F1を良好に上方へ移動させることができる。
【0148】
本開示の一態様のアクチュエータ1Dでは、第3電極13の開口部13aの開口面積が、第2電極12の開口部12aの開口面積よりも小さくなっていてもよい。これにより、封止部63に対する負荷を低減できるとともに、第1流体F1を良好に上方へ移動させることができる。
【0149】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0150】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係るアクチュエータは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の領域を仕切り、前記第1電極および前記第2電極に対する相対位置を変化可能な導電性を有する第1セパレータと、前記第1セパレータの変位に伴い、前記第1セパレータと前記第1電極との間の第1空間を移動することが可能な第1流体が移動することに起因して初期状態と突出状態とが切り替わる伸縮部とを備える。
【0151】
本開示の態様2に係るアクチュエータは、上記の態様1において、前記第1セパレータが前記第1電極に近づく動作に伴い、前記第2電極と前記第1セパレータとの間の第2空間に第2流体を引き込む構成であってよい。
【0152】
本開示の態様3に係るアクチュエータは、上記の態様2において、前記第2空間は、外空間と連通していてもよい。
【0153】
本開示の態様4に係るアクチュエータは、上記の態様1から3のいずれかにおいて、前記第2電極は、前記伸縮部が突出する開口部を有していてもよい。
【0154】
本開示の態様5に係るアクチュエータは、上記の態様4において、前記第2電極を上側、前記第1電極を下側とした場合、前記第1セパレータの前記第2電極に対する固定位置は、前記第1セパレータの前記第1電極に対する固定位置よりも高い位置にあってもよい。
【0155】
本開示の態様6に係るアクチュエータは、上記の態様1から5のいずれかにおいて、前記第1電極および前記第2電極は、前記第1セパレータよりも大きい剛性を有していてもよい。
【0156】
本開示の態様7に係るアクチュエータは、上記の態様1から6のいずれかにおいて、前記第1セパレータは、可撓性部材と、前記可撓性部材の表面に位置する電極層とを備えていてもよい。
【0157】
本開示の態様8に係るアクチュエータは、上記の態様1から7のいずれかにおいて、前記第1電極、前記第2電極および前記第1セパレータの電位を制御する制御部をさらに備え、前記第1電極または前記第2電極は、複数の分割領域に分割されており、前記制御部は、前記分割領域ごとに前記電位の制御を行う構成であってもよい。
【0158】
本開示の態様9に係るアクチュエータは、上記の態様1から8のいずれかにおいて、前記第1セパレータと前記伸縮部とは一連の部材であってもよい。
【0159】
本開示の態様10に係るアクチュエータは、上記の態様1から9のいずれかにおいて、前記第1電極と前記第2電極との間の距離を維持するスペーサをさらに備えていてもよい。
【0160】
本開示の態様11に係るアクチュエータは、上記の態様10において、前記第2電極は、前記第1流体が入出流可能な開口部を備えており、前記スペーサとして、前記開口部の縁部に配置されている第1スペーサを備えていてもよい。
【0161】
本開示の態様12に係るアクチュエータは、上記の態様10または11において、前記スペーサとして、前記第2電極の外縁部に位置した第2スペーサを備えていてもよい。
【0162】
本開示の態様13に係るアクチュエータは、上記の態様12において、前記第2スペーサは、前記第2電極と前記第1セパレータとの間に第2空間と外空間とを連通する連通路を有していてもよい。
【0163】
本開示の態様14に係るアクチュエータは、上記の態様10において、前記第1セパレータの端部は、前記スペーサと、前記第1電極または前記第2電極とによって挟持されていてもよい。
【0164】
本開示の態様15に係るアクチュエータは、上記の態様1から14のいずれかにおいて、前記第1電極、前記第1セパレータおよび前記第2電極を備えるユニットを複数、多層構造として備えていてもよい。
【0165】
本開示の態様16に係るアクチュエータは、上記の態様1から15のいずれかにおいて、前記第1電極の、前記第2電極が位置する側とは反対側に位置する第3電極と、前記第1電極と前記第3電極との間の領域を仕切り、前記第1電極と前記第3電極との間に形成された電界により前記第1電極および前記第3電極に対する相対位置が変化する第2セパレータとをさらに備え、前記第2セパレータと前記第1電極との間の第3空間は、前記伸縮部によって容積が規定される第4空間と連通しており、前記第2セパレータの変位に伴い、前記第3空間を移動することが可能な第3流体が前記第4空間に流入する構成であってもよい。
【0166】
本開示の態様17に係るアクチュエータは、上記の態様16において、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの電位を独立に制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0167】
本開示の態様18に係るアクチュエータは、上記の態様17において、前記制御部は、前記伸縮部を初期状態または突出状態にするときの、前記第1セパレータの変位方向と前記第2セパレータの変位方向とが異なるように前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの電位を制御する構成であってもよい。
【0168】
本開示の態様19に係るハプティクスデバイスは、上記の態様1から18のいずれかのアクチュエータが少なくとも1つ搭載されている。
【0169】
本開示の態様20に係るハプティクスシステムは、上記の態様19のハプティクスデバイスと、前記ハプティクスデバイスに通信可能に接続された画像表示装置と、を備える。
【符号の説明】
【0170】
1A、1B、1C、1D アクチュエータ
11、11A、71 第1電極
12、12A、72 第2電極
12a 開口部
13 第3電極
20 第1セパレータ
20a 伸縮部
21、51 可撓性部材
22、52 電極層
31、61、91 第1スペーサ
32、62、92 第2スペーサ
32c 連通路
40A、40B、40C、40D 制御部
50、80 第2セパレータ
A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4 分割領域
S1 第1空間
S2 第2空間
S3 第3空間
S4 第4空間
100A、100B、100C、100D 装着型ハプティクスデバイス(ハプティクスデバイス)
200 画像表示装置
300A、300B、300C、300D ハプティクスシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22