(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005995
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】透明導電性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/08 20060101AFI20240110BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C23C14/08 K
C23C14/56 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106517
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】鴉田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 寛行
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA45
4K029BA47
4K029BA50
4K029BA58
4K029BA60
4K029BB02
4K029CA06
4K029DC05
4K029DC09
4K029DC16
4K029GA01
4K029JA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、生産性に優れる透明導電層を形成できる透明導電性フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】透明導電性フィルム3の製造方法は、長尺の基材1を準備する第1工程と、真空雰囲気下で、基材1の厚み方向一方面に、透明導電層3を形成する第2工程と、真空雰囲気下で、透明導電層2を加熱する第3工程とを備える。第3工程は、第2工程で、前記基材を巻き取らず、連続して実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材を準備する第1工程と、
真空雰囲気下で、前記基材の厚み方向一方面に、透明導電層を形成する第2工程と、
真空雰囲気下で、前記透明導電層を加熱する第3工程とを備え、
前記第3工程は、前記第2工程で、前記基材を巻き取らず、連続して実施する、透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程が、ロールトゥロール方式で実施される、請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2工程が、クリプトンガスを含む希ガスの存在下で実施される、請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロールトゥロール方式により、基材フィルム上に透明導電層を積層して、導電性フィルムを製造する方法が知られている。
【0003】
このような方法として、例えば、ロールトゥロール方式により、長尺の透明フィルム基材を搬送しながら、真空雰囲気下、かつ、アルゴンガスの存在下で、非晶質の透明導電層をスパッタリングにより形成して、透明フィルム基材を巻き取り、その後、別工程にて、真空雰囲気下で、非晶質の透明導電層が形成された透明フィルム基材を加熱して、透明導電層を結晶化させ、透明導電性フィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、透明導電性フィルムの製造方法には、より一層、高い生産性が要求される。
【0006】
本発明は、生産性に優れる透明導電層を形成できる透明導電性フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、長尺の基材を準備する第1工程と、真空雰囲気下で、前記基材の厚み方向一方面に、透明導電層を形成する第2工程と、真空雰囲気下で、前記透明導電層を加熱する第3工程とを備え、前記第3工程は、前記第2工程で、前記基材を巻き取らず、連続して実施する、透明導電性フィルムの製造方法である。
【0008】
本発明[2]は、前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程が、ロールトゥロール方式で実施される、上記[1]に記載の透明導電性フィルムの製造方法を含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記第2工程が、クリプトンガスを含む希ガスの存在下で実施される、上記[1]に記載の透明導電性フィルムの製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の透明導電性フィルムの製造方法では、第2工程において、真空雰囲気下で、透明導電層を形成し、かつ、第3工程において、真空雰囲気下で、透明導電層を加熱し、透明導電層を結晶化させる。また、第3工程は、第2工程で、長尺の基材を巻き取らず、連続して実施する。これにより、透明導電層をより一層、高い生産性で形成することができる。また、第2工程で長尺の基材を巻き取らず、連続して第3工程を実施することより、第3工程における、透明導電層のクラックが抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の透明導電性フィルムの製造方法の一実施形態で用いられるフィルム製造装置の一実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の透明導電性フィルムの製造方法の一実施形態は、長尺の基材1を、長手方向に搬送しながら、長尺の基材1の厚み方向一方面に、透明導電層2を形成する。
【0013】
以下、この方法で用いられるフィルム製造装置の一実施形態について、
図1を参照して、説明する。
【0014】
<フィルム製造装置>
図1において、紙面左右方向は、搬送方向である。紙面右側は、搬送方向下流側である。紙面左側は、搬送方向上流側である。なお、搬送方向は、隣り合うユニット間における搬送方向であって、各ユニット内での搬送方向ではない。紙厚方向は、幅方向である。紙面手前側は、幅方向一方側である。紙面奥側は、幅方向他方側である。紙面上下方向は、上下方向である。紙面上側は、上側である。紙面下側は、下側である。
【0015】
フィルム製造装置10は、長尺の透明導電性フィルム3を製造するための装置である。フィルム製造装置10は、
図1に示すように、送出ユニット5と、第1スパッタユニット6と、第2スパッタユニット7と、アニールユニット8と、巻取ユニット9とを備える。
【0016】
[送出ユニット]
送出ユニット5は、送出ロール11と、第1ガイドロール12と、送出チャンバー13とを備える。
【0017】
送出ロール11は、長尺の基材1を送出するための回転軸を有する円柱部材である。送出ロール11は、フィルム製造装置10の搬送方向最上流に配置されている。送出ロール11には、送出ロール11を回転させるためのモータ(図示せず)が接続されている。
【0018】
第1ガイドロール12は、送出ロール11から送出される長尺の基材1を第1スパッタユニット6にガイドする回転部材である。第1ガイドロール12は、送出ロール11の搬送方向下流側かつ第2ガイドロール14(後述)の搬送方向上流側に配置されている。
【0019】
送出チャンバー13は、送出ロール11および第1ガイドロール12を収容するケーシングである。送出チャンバー13には、内部を真空可能とする真空ユニットが設けられている。
【0020】
[第1スパッタユニット]
第1スパッタユニット6は、送出ユニット5から搬送される長尺の基材1に、スパッタリング法により透明導電層2を積層(形成)する。第1スパッタユニット6は、送出ユニット5の搬送方向下流側かつ第2スパッタユニット7の搬送方向上流側に、これらと隣接するように配置されている。第1スパッタユニット6は、第2ガイドロール14と、第3ガイドロール15と、第1成膜ロール16と、第1ターゲット17と、第4ガイドロール18と、第1チャンバー19とを備える。
【0021】
第2ガイドロール14は、送出ユニット5(第1ガイドロール12)から搬送される長尺の基材1を第3ガイドロール15にガイドする回転部材である。第2ガイドロール14は、第1ガイドロール12の搬送方向下流側かつ第3ガイドロール15の搬送方向上流側に配置されている。
【0022】
第3ガイドロール15は、第2ガイドロール14から搬送される長尺の基材1を第1成膜ロール16にガイドする回転部材である。第3ガイドロール15は、第2ガイドロール14の搬送方向下流側かつ第1成膜ロール16の搬送方向上流側に配置されている。
【0023】
第1成膜ロール16は、長尺の基材1に透明導電層2を積層(形成)するための回転軸を有する円柱部材である。第1成膜ロール16は、長尺の基材1を第1成膜ロール16の周面に沿って搬送する。第1成膜ロール16は、第3ガイドロール15の搬送方向下流側かつ第4ガイドロール18の搬送方向上流側に配置されている。
【0024】
第1ターゲット17は、透明導電層2を構成する原子を含む材料から形成されており、好ましくは、透明導電層2の材料から形成されている。第1ターゲット17は、第1成膜ロール16の付近に配置されている。具体的には、第1ターゲット17は、第1成膜ロール16の下側に、第1成膜ロール16と間隔を隔てて対向配置されている。
【0025】
第4ガイドロール18は、第1成膜ロール16から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を、第2スパッタユニット7にガイドする回転部材である。第4ガイドロール18は、第1成膜ロール16の搬送方向下流側かつ第5ガイドロール20(後述)の搬送方向上流側に配置されている。
【0026】
第1チャンバー19は、第2ガイドロール14、第3ガイドロール15、第1成膜ロール16、第1ターゲット17、および、第4ガイドロール18を収容するケーシングである。第1チャンバー19には、内部を真空可能とする真空ユニットが設けられている。
【0027】
[第2スパッタユニット]
第2スパッタユニット7は、第1スパッタユニット6から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)に、スパッタリング法により透明導電層2を積層(形成)する。第2スパッタユニット7は、第1スパッタユニット6の搬送方向下流側かつアニールユニット8の搬送方向上流側に、これらと隣接するように配置されている。第2スパッタユニット7は、第5ガイドロール20と、第6ガイドロール21と、第2成膜ロール22と、第2ターゲット50、第7ガイドロール23と、第2チャンバー24とを備える。
【0028】
第5ガイドロール20は、第1スパッタユニット6(第4ガイドロール18)から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を第6ガイドロール21にガイドする回転部材である。第5ガイドロール20は、第4ガイドロール18の搬送方向下流側かつ第6ガイドロール21の搬送方向上流側に配置されている。
【0029】
第6ガイドロール21は、第5ガイドロール20から搬送される長尺の基材1を第2成膜ロール22にガイドする回転部材である。第6ガイドロール21は、第5ガイドロール20の搬送方向下流側かつ第2成膜ロール22の搬送方向上流側に配置されている。
【0030】
第2成膜ロール22は、長尺の基材1に透明導電層2を積層(形成)するための回転軸を有する円柱部材である。第2成膜ロール22は、長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を第2成膜ロール22の周面に沿って搬送する。第2成膜ロール22は、第6ガイドロール21の搬送方向下流側かつ第7ガイドロール23の搬送方向上流側に配置されている。
【0031】
第2ターゲット50は、透明導電層2を構成する原子を含む材料から形成されており、好ましくは、透明導電層2の材料から形成されている。第2ターゲット50は、第2成膜ロール22の付近に配置されている。具体的には、第2ターゲット50は、第2成膜ロール22の下側に、第2成膜ロール22と間隔を隔てて対向配置されている。
【0032】
第7ガイドロール23は、第2成膜ロール22から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を、アニールユニット8にガイドする回転部材である。第7ガイドロール23は、第2成膜ロール22の搬送方向下流側かつ第8ガイドロール25(後述)の搬送方向上流側に配置されている。
【0033】
第2チャンバー24は、第5ガイドロール20、第6ガイドロール21、第2成膜ロール22、第2ターゲット50、および、第7ガイドロール23を収容するケーシングである。第2チャンバー24には、内部を真空可能とする真空ユニットが設けられている。
【0034】
[アニールユニット]
アニールユニット8は、第2スパッタユニット7から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を加熱して、透明導電層2を結晶化させる。アニールユニット8は、第2スパッタユニット7の搬送方向下流側かつ巻取ユニット9の搬送方向上流側に、これらと隣接するように配置されている。
【0035】
アニールユニット8は、第8ガイドロール25と、第9ガイドロール26と、加熱ロール27と、第10ガイドロール28と、第3チャンバー29とを備える。
【0036】
第8ガイドロール25は、第2スパッタユニット7(第7ガイドロール23)から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を第9ガイドロール26にガイドする回転部材である。第8ガイドロール25は、第7ガイドロール23の搬送方向下流側かつ第9ガイドロール26の搬送方向上流側に配置されている。
【0037】
第9ガイドロール26は、第8ガイドロール25から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を加熱ロール27にガイドする回転部材である。第9ガイドロール26は、第8ガイドロール25の搬送方向下流側かつ加熱ロール27の搬送方向上流側に配置されている。
【0038】
加熱ロール27は、透明導電層2を加熱するための回転軸を有する円柱部材である。加熱ロール27は、長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を加熱ロール27の周面に沿って搬送する。加熱ロール27は、第9ガイドロール26の搬送方向下流側かつ第10ガイドロール28の搬送方向上流側に配置されている。
【0039】
第10ガイドロール28は、加熱ロール27から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を、巻取ユニット9にガイドする回転部材である。第9ガイドロール26は、加熱ロール27の搬送方向下流側かつ第11ガイドロール30(後述)の搬送方向上流側に配置されている。
【0040】
第3チャンバー29は、第8ガイドロール25、第9ガイドロール26、加熱ロール27、および、第10ガイドロール28を収容するケーシングである。第3チャンバー29には、内部を真空可能とする真空ユニットが設けられている。
[巻取ユニット]
巻取ユニット9は、第11ガイドロール30と、巻取ロール31と、巻取チャンバー32とを備える。巻取ユニット9は、アニールユニット8の搬送方向下流側に、アニールユニット8と隣接するように配置されている。
【0041】
第11ガイドロール30は、アニールユニット8から搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を巻取ロール31にガイドする回転部材である。第11ガイドロール30は、第10ガイドロール28の搬送方向下流側かつ巻取ロール31の搬送方向上流側に配置されている。
【0042】
巻取ロール31は、長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を巻き取るための回転軸を有する円柱部材である。巻取ロール31は、フィルム製造装置10の搬送方向最下流に配置されている。巻取ロール31には、巻取ロール31を回転させるためのモータ(図示せず)が接続されている。
【0043】
巻取チャンバー32は、第11ガイドロール30および巻取ロール31を収容するケーシングである。巻取チャンバー32には、内部を真空可能とする真空ユニットが設けられている。
【0044】
<透明導電性フィルムの製造方法>
次に、フィルム製造装置10を用いて透明導電性フィルム3を製造する方法の一実施形態を説明する。
【0045】
透明導電性フィルム3の製造方法は、長尺の基材1を、長手方向に搬送しながら、長尺の基材1の厚み方向一方面に、透明導電層2を形成する。
【0046】
詳しくは、透明導電性フィルム3の製造方法は、長尺の基材1を準備する第1工程と、真空雰囲気下で、長尺の基材1の厚み方向一方面に、透明導電層2を形成する第2工程と、真空雰囲気下で、透明導電層2を加熱する第3工程とを備える。また、第3工程は、第2工程で、長尺の基材1を巻き取らず、連続して実施する、
【0047】
また、この方法では、第1工程、第2工程および第3工程を、ロールトゥロール方式で実施する。
【0048】
第1工程、第2工程および前記第3工程が、ロールトゥロール方式で実施されれば、生産性に優れる。
【0049】
[第1工程]
第1工程では、長尺の基材1を準備する。
【0050】
長尺の基材1としては、例えば、長尺の高分子フィルムが挙げられる。高分子フィルムの材料としては、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリレートが挙げられる。基材1の材料としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0051】
長尺の基材1の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上、また、例えば、500μm以下である。
【0052】
長尺の基材1の厚みが、上記下限以上であれば、搬送性およびハンドリングに優れる。
【0053】
長尺の基材1の厚みが、上記上限以下であれば、生産性に優れる。
【0054】
また、長尺の基材1の短手方向長さ(幅方向長さ)は、例えば、100mm以上、好ましくは、200mm以上、また、例えば、5000mm以下、好ましくは、2000mm以下である。
【0055】
また、長尺の基材1の厚み方向一方面および/または厚み方向他方面には、予め、機能層を配置することができる。長尺の基材1の厚み方向一方面に機能層を配置する場合には、例えば、透明導電性フィルム3は、長尺の基材1と、機能層と、透明導電層2とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。また、長尺の基材1の厚み方向他方面に機能層を配置する場合には、透明導電性フィルム3は、機能層と、長尺の基材1と、透明導電層2とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0056】
長尺の基材1の厚み方向一方面に配置する機能層としては、例えば、ハードコート層、光学調整層などが挙げられる。長尺の基材1の厚み方向他方面に配置する機能層としては、例えば、アンチブロッキング層が挙げられる。
【0057】
ハードコート層は、ハードコート組成物から形成される。
【0058】
ハードコート組成物は、樹脂、および、必要により、粒子を含有する。
【0059】
樹脂としては、例えば、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)などが挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、および、加熱により硬化する熱硬化性樹脂が挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。そのような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(メタクリロイル基および/またはアクリロイル基)が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、および、エポキシアクリレートが挙げられる。樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0060】
粒子としては、例えば、無機粒子、および、有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、金属酸化物粒子および炭酸塩粒子が挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、および、酸化錫が挙げられる。炭酸塩粒子としては、例えば、炭酸カルシウムが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂粒子が挙げられる。粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
そして、ハードコート組成物は、樹脂および必要により配合される粒子を混合することにより得られる。
【0062】
また、ハードコート組成物には、必要により、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を配合することができる。
【0063】
ハードコート層を形成するには、ハードコート組成物の希釈液を長尺の基材1の厚み方向一方面に塗布し、乾燥後、紫外線照射により、ハードコート組成物を硬化させる。
【0064】
これにより、ハードコート層を形成する。
【0065】
ハードコート層の厚みは、耐擦傷性の観点から、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、3μm以下である。
【0066】
なお、ハードコート層の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、断面観察により測定することができる。
【0067】
このような場合には、得られる透明導電性フィルム3は、長尺の基材1と、ハードコート層と、透明導電層2とを順に備える。
【0068】
光学調整層は、透明導電層2のパターン視認を抑制したり、透明導電性フィルム3内の界面での反射を抑制しつつ、透明導電性フィルム3に優れた透明性を確保するために、透明導電性フィルム3の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。
【0069】
光学調整層は、例えば、光学調整組成物から形成される。光学調整組成物は、上記した樹脂および上記した粒子を含有する。樹脂としては、ハードコート組成物で挙げた樹脂が挙げられる。粒子としては、ハードコート組成物で挙げた粒子が挙げられる。
【0070】
そして、光学調整組成物は、樹脂および粒子を混合することにより得られる。
【0071】
光学調整組成物は、さらに、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を含有することができる。
【0072】
光学調整層を形成するには、光学調整組成物の希釈液を長尺の基材1の厚み方向一方面に塗布し、乾燥後、紫外線照射により、光学調整組成物を硬化させる。
【0073】
これにより、光学調整層を形成する。
【0074】
光学調整層の厚みは、耐擦傷性の観点から、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、100nm以下である。光学調整層の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、断面観察により測定することができる。
【0075】
このような場合には、得られる透明導電性フィルム3は、長尺の基材1と、光学調整層と、透明導電層2とを順に備える。
【0076】
アンチブロッキング層は、透明導電性フィルム3を厚み方向に積層した場合などに、互いに接触する複数の透明導電性フィルム3のそれぞれの表面に耐ブロッキング性を付与する。
【0077】
アンチブロッキング層の材料は、例えば、アンチブロッキング組成物である。
【0078】
アンチブロッキング組成物としては、例えば、特開2016-179686号公報に記載の混合物が挙げられる。
【0079】
アンチブロッキング層を形成するには、アンチブロッキング組成物の希釈液を長尺の基材1の厚み方向他方面に塗布し、乾燥後、紫外線照射により、アンチブロッキング組成物を硬化させる。
【0080】
これにより、アンチブロッキング層を形成する。
【0081】
アンチブロッキング層の厚みは、例えば、0.1μm以上であり、また、例えば、10μm以下である。
【0082】
このような場合には、得られる透明導電性フィルム3は、アンチブロッキング層と、長尺の基材1と、透明導電層2とを順に備える。
【0083】
長尺の基材1には、1層または2層以上の機能層を配置することができ、好ましくは、長尺の基材1には、予め、ハードコート層を配置する。
【0084】
そして、長尺の基材1を送出ロール11に配置する。すなわち、長尺の基材1がロール状に巻回されたロール体を、送出ロール11に装着する。
【0085】
これにより、長尺の基材1を準備する。
【0086】
[第2工程]
第2工程では、真空雰囲気下で、長尺の基材1の厚み方向一方面に、透明導電層2を形成する。
【0087】
第2工程では、まず、長尺の基材1を長手方向に搬送する。
【0088】
長尺の基材1を長手方向に搬送するには、送出ロール11および巻取ロール31をモータにより回転駆動させて、長尺の基材1を送出ロール11から送り出し、第1ガイドロール12、第2ガイドロール14、第3ガイドロール15、第1成膜ロール16、第4ガイドロール18、第5ガイドロール20、第6ガイドロール21、第2成膜ロール22、第7ガイドロール23、第8ガイドロール25、第9ガイドロール26、加熱ロール27、第10ガイドロール28、および、第11ガイドロール30で順に搬送して、巻取ロール31により巻き取る。
【0089】
これにより、長尺の基材1が、ロールトゥロール方式にて、送出ロール11から巻取ロール31まで搬送方向に搬送される。
【0090】
搬送速度は、例えば、0.5m/分以上、好ましくは、1.4m/分以上、より好ましくは、2.0m/分以上であり、また、例えば、50m/分以下、好ましくは、20m/分以下、より好ましくは、15m/分以下である。
【0091】
次いで、長尺の基材1を長手方向に搬送しながら、真空雰囲気下で、長尺の基材1の厚み方向一方面に、透明導電層2を形成する。具体的には、透明導電層2の形成は、第1スパッタユニット6および第2スパッタユニット7で実施される。すなわち、この方法では、第1スパッタユニット6で、透明導電層2の一部を形成し、第2スパッタユニット7で、透明導電層2の残部を形成する。
【0092】
具体的には、長尺の基材1は、第1成膜ロール16の表面に周方向に沿って接触しながら搬送される。そして、搬送される長尺の基材1に対して、真空雰囲気下で、スパッタリングを実施する。すなわち、第1スパッタユニット6を作動させて、長尺の基材1の下面(一方面)に透明導電層2を形成する。
【0093】
具体的には、真空下の第1チャンバー19の内部に、希ガス(スパッタリングガス)を供給するとともに、電圧を印加して、ガスを第1ターゲット17に衝突させる。その結果、第1成膜ロール16の側方および下方において、搬送方向上流側から搬送されてくる長尺の基材1の下面(一方面)に、第1ターゲット17からはじき出された第1ターゲット材料が付着され、透明導電層2が形成される。
【0094】
つまり、この方法では、透明導電層2は、長尺の基材1を第1成膜ロール16の周面に沿って搬送しながら、スパッタリングによって形成される。
【0095】
次いで、長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)は、第2成膜ロール22の表面に周方向に沿って接触しながら搬送される。そして、搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)に対して、真空雰囲気下で、スパッタリングを実施する。すなわち、第2スパッタユニット7を作動させて、長尺の基材1の下面(一方面)に透明導電層2を形成する。
【0096】
具体的には、真空下の第2チャンバー24の内部に、希ガス(スパッタリングガス)を供給するとともに、電圧を印加して、ガスを第2ターゲット50に衝突させる。その結果、第2成膜ロール22の側方および下方において、搬送方向上流側から搬送されてくる長尺の基材1の下面(一方面)に、第2ターゲット50からはじき出された第2ターゲット材料が付着され、透明導電層2が形成される。
【0097】
つまり、この方法では、透明導電層2は、長尺の基材1を第2成膜ロール22の周面に沿って搬送しながら、スパッタリングによって形成される。
【0098】
また、上記したように、第2工程は、希ガス(スパッタリングガス)の存在下で実施する。
【0099】
希ガスとしては、例えば、アルゴンガス、クリプトンガス、および、キセノンガス、好ましくは、クリプトンガス、および、キセノンガス、より好ましくは、クリプトンガスが挙げられる。つまり、より好ましくは、製造コストと生産性の観点から、第2工程は、クリプトンガスを含む希ガスの存在下で実施する。
【0100】
また、スパッタリング法によって、透明導電層2を形成する場合には、希ガス(スパッタリングガス)が透明導電層2に取り込まれる。つまり、透明導電層2は、希ガス原子(好ましくは、クリプトン原子)を含む。
【0101】
透明導電層2において、希ガス原子(クリプトン原子)の含有量は、例えば、0.5原子%以下であり、好ましくは、0.2原子%以下、より好ましくは、0.1原子%以下、さらに好ましくは、0.1原子%未満である。
【0102】
上記含有量の下限は、蛍光X線分析装置により、希ガス原子の存在を確認できたときに対応する割合であり、少なくとも、0.0001原子%以上である。
【0103】
また、スパッタリングガスとして、上記希ガスととも、反応性ガス(例えば、酸素ガス)を併用することもできる。
【0104】
希ガスおよび反応性ガスの総量に対する反応性ガスの流量は、例えば、0.1流量%以上、好ましくは、0.5流量%以上、また、例えば、5.0流量%以下、好ましくは、4.0流量%以下である。
【0105】
また、印加される電圧(成膜電圧)は、例えば、0.5W/mm以上、好ましくは、1.0W/mm以上、また、例えば、10W/mm以下、好ましくは、7.0W/mm以下である。
【0106】
第1ターゲット17および第2ターゲット50の材料、すなわち、透明導電層2の材料は、例えば、インジウムスズ複合酸化物、アンチモンスズ複合酸化物などの金属酸化物、例えば、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム、窒化ガリウムおよびこれらの複合窒化物などの金属窒化物、例えば、金、銀、銅、ニッケルおよびこれらの合金などの金属などが挙げられ、好ましくは、インジウムスズ複合酸化物が挙げられる。また、第1ターゲット17の材料および第2ターゲット50の材料は、同一または互いに相異なり、好ましくは、同一である。
【0107】
つまり、好ましくは、透明導電層2は、インジウムスズ複合酸化物を主成分として含む。
【0108】
透明導電層2は、インジウムスズ複合酸化物を主成分として含むと、透明導電層2の比抵抗を低くできる。
【0109】
透明導電層2の材料としてインジウムスズ複合酸化物を用いる場合、酸化スズの含有割合は、酸化スズおよび酸化インジウムの合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、2質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0110】
酸化スズの含有割合が上記した下限以上であれば、低抵抗化が促進される。酸化スズの含有割合が上記した上限以下であれば、透明導電層2は、強度に優れる。
【0111】
また、第1ターゲット17および第2ターゲット50からはじき出されたターゲット材料は、例えば、100℃以上、200℃以下に加熱されているため、この方法では、第1成膜ロール16および第2成膜ロール22によって、透明導電層2の過剰な加熱を抑制でき、透明導電層2の結晶化を抑制する。
【0112】
詳しくは、第1成膜ロール16および第2成膜ロール22の温度は、例えば、-20℃以上、好ましくは、-10℃以上、また、例えば、80℃以下、好ましくは、30℃以下、より好ましくは、20℃以下、より好ましくは、0℃以下である。また、第1成膜ロール16の温度および第2成膜ロール22の温度は、同一または互いに相異なり、好ましくは、同一である。
【0113】
第1成膜ロール16および第2成膜ロール22の温度が、上記下限以上または上記上限以下であれば、透明導電層2の過剰な加熱を抑制でき、透明導電層2の結晶化を抑制できる(非晶質の透明導電層2を得ることができる。)。
【0114】
[第3工程]
第3工程では、真空雰囲気下で、透明導電層2を加熱する。具体的には、透明導電層2の加熱は、アニールユニット8で実施される。
【0115】
より具体的には、長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)は、加熱ロール27の表面に周方向に沿って接触しながら搬送される。そして、搬送される長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)に対して、真空雰囲気下で、透明導電層2を加熱する。つまり、アニールユニット8を作動させて、透明導電層2を結晶化させる。
【0116】
加熱ロール27の温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、150℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。
【0117】
加熱ロール27における加熱時間(長尺の基材1に対する加熱ロール27の接触時間)は、例えば、0.25秒以上、好ましくは、10秒以上、また、例えば、1分以下、好ましくは、0.75分以下である。
【0118】
これにより、長尺の基材1と、透明導電層2とを厚み方向に順に備えた透明導電性フィルム3が製造される。
【0119】
その後、加熱ロール27の下側で作製された透明導電性フィルム3は、第10ガイドロール28および第11ガイドロール30により、搬送方向下流側の巻取ロール31に向かって搬送される。
【0120】
得られた透明導電性フィルム3において、透明導電層2は、結晶質である。透明導電層2が、結晶質であれば、後述する比抵抗を小さくできる。
【0121】
透明導電層2が、結晶質であるかは、後述する実施例において、抵抗値の変化率が、25%以下である場合には、透明導電層2が、結晶質であると判断できる。
【0122】
透明導電層2の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、40nm以上、さらに好ましくは、70nm以上、とりわけ好ましくは、90nm以上、また、例えば、300nm以下、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、170nm以下、さらに好ましくは、130nm以下である。
【0123】
なお、透明導電層2の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、透明導電性フィルム3の断面を観察することにより測定することができる。
【0124】
透明導電層2の比抵抗は、例えば、4.5×10-4Ω・cm以下、好ましくは、3.0×10-4Ω・cm以下、より好ましくは、2.5×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは、2.2×10-4Ω・cm以下、とりわけ好ましくは、2.0×10-4Ω・cm以下である。
【0125】
なお、比抵抗は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定した表面抵抗値と透明導電層2の厚みとを乗ずることにより算出できる。
【0126】
透明導電層2の表面抵抗値は、例えば、300Ω/□以下.好ましくは、120Ω/□以下、より好ましくは、50Ω/□以下である。
【0127】
透明導電層2の表面抵抗値の下限は、特に限定されない。例えば、透明導電層2の表面抵抗値は、通常、0Ω/□超過、また、1Ω/□以上である。
【0128】
なお、表面抵抗値は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定することができる。
【0129】
<作用効果>
明導電性フィルム3の製造方法では、第2工程において、長尺の基材1を巻き取らず、第3工程において、真空雰囲気下で、第2工程と連続して長尺の基材1を搬送し、透明導電層2を加熱し、透明導電層2を結晶化させる。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0130】
また、成膜工程において、長尺の基材1を巻き取り、その後、別工程にて投入するまでに、保管により、透明導電層2の一部で結晶化が進行してしまう場合がある。その場合、その後の真空雰囲気下での加熱によって、クラックが発生することがある。しかし、この方法により得られる透明導電性フィルム3では、成膜工程(第2工程)と加熱工程(第3工程)を連続して、保管時間を設けずに、真空雰囲気下で実施することができるため、上記のクラックの発生を抑制することができる。
【0131】
<変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例を適宜組み合わせることができる。
【0132】
一実施形態では、第1ターゲット17および第2ターゲット50は、1つであるが、複数配置することもできる。
【0133】
一実施形態では、第3工程において、加熱ロール27によって、透明導電層2を加熱するが、加熱ロール27とともに、別の加熱ロール(図示せず)を用いることもできる。
【0134】
また、第3工程では、加熱ロール(加熱ロール27)を用いて、透明導電層2を加熱するが、加熱ロールとともに、または、加熱ロールに代えて、加熱ヒータ(図示せず)を用いることもできる。好ましくは、透明導電層2に熱を均一に与え、結晶化を促進する観点から、加熱ロールを用いて、透明導電層2を加熱する。
【0135】
一実施形態では、第2工程は、第1スパッタユニット6および第2スパッタユニット7で実施され、第3工程は、アニールユニット8で実施されるが、第2工程を、第1スパッタユニット6で実施し、第3工程を、第2スパッタユニット7およびアニールユニット8で実施してもよい。
【0136】
このような場合には、第2スパッタユニット7で、透明導電層2の一部を結晶化させ、アニールユニット8で透明導電層2の残部を結晶化させる。
【0137】
また、第3工程が、第2スパッタユニット7で実施される場合において、その条件(具体的には、第2成膜ロール22の温度および第2成膜ロール22における加熱時間)は、第3工程におけるアニールユニット8の条件(具体的には、加熱ロール27の温度および加熱ロール27における加熱時間)と同じである。
【0138】
また、第2成膜ロール22および加熱ロール27における合計の加熱時間は、例えば、0.5秒以上、好ましくは、20秒以上、また、例えば、5分以下、好ましくは、2分未満、より好ましくは、1.8分以下、さらに好ましくは、1.5分以下である。
【0139】
透明導電層2に取り込まれる希ガス(スパッタリングガス)は、複数種類あってもよい。
【0140】
第2工程において、第1スパッタユニット6および第2スパッタユニット7で用いられる希ガス(スパッタリングガス)は、同一または互いに相異なる。
【実施例0141】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0142】
1.透明導電性フィルムの製造
<実施例1>
透明導電性フィルムの製造には、
図1に示すフィルム製造装置10を用いた。
[第1工程]
長尺の基材1としてのPETフィルム(厚さ50μm,三菱ケミカル社製)の厚み方向一方面に、光学調整層を形成し、厚み方向他方面にハードコート層を形成した。これにより、長尺の基材1を準備した。
【0143】
[第2工程]
次いで、送出ロール11および巻取ロール31をモータにより回転駆動させて、長尺の基材1を長手方向に搬送した。このとき、搬送速度は、5.0m/分とした。
【0144】
次いで、長尺の基材1を長手方向に搬送しながら、真空雰囲気下で、スパッタリング(反応性スパッタリング法)を実施した。すなわち、第1スパッタユニット6および第2スパッタユニット7を作動させて、長尺の基材1に透明導電層2を形成した。
【0145】
スパッタリング条件は以下の通りである。
スパッタリング電源:DC電源
成膜出力:1.05W/mm
ターゲット上の水平磁場強度:90mT
スパッタリングガス:成膜室内の水分圧が0.9×10-4Pa以下に至るまで真空排気した後、クリプトンガス(希ガス)および酸素ガス(反応性ガス)を供給
クリプトンガスおよび酸素ガスの総量に対する酸素ガスの流量:約3.1流量%
圧力:0.2Pa
[ターゲット]
酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度10質量%のインジウムスズ複合酸化物)
[第1成膜ロール16および第2成膜ロール22]
温度:30℃
【0146】
[第3工程]
長尺の基材1(透明導電層2が積層(形成)された長尺の基材1)を長手方向に搬送しながら、真空雰囲気下で、透明導電層2を加熱した。すなわち、アニールユニット8を作動させて透明導電層2を加熱し、結晶化させた。
【0147】
加熱条件は以下の通りである。
[加熱ロール27]
温度:160℃、加熱時間:36秒
【0148】
以上により、透明導電性フィルム3を得た。なお、透明導電層2の厚みは、146nmであった。
【0149】
<実施例2>
実施例1と同様の手順で、透明導電性フィルム3を得た。但し、第2工程を、第1スパッタユニット6で実施し、第3工程を、第2スパッタユニット7およびアニールユニット8で実施した。
【0150】
また、透明導電層2の厚みを、102nmに変更し、搬送速度を3.5m/分に変更した。また、第2成膜ロール22の温度および加熱時間は、加熱ロール27と同じにした。
【0151】
<実施例3>
実施例2と同様の手順で、透明導電性フィルム3を得た。
【0152】
但し、透明導電層2の厚みを、51nmに変更し、搬送速度を5.7m/分に変更した。
【0153】
<実施例4>
実施例2と同様の手順で、透明導電性フィルム3を得た。
【0154】
但し、透明導電層2の厚みを、22nmに変更し、搬送速度を9.4m/分に変更した。
【0155】
また、ターゲットとして、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度10質量%のインジウムスズ複合酸化物)と、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度3.3質量%のインジウムスズ複合酸化物)とを併用した。
【0156】
また、クリプトンガスおよび酸素ガスの総量に対する酸素ガスの流量を、約3.5流量%に変更した。
【0157】
<実施例5>
実施例1と同様の手順で、透明導電性フィルム3を得た。
【0158】
但し、スパッタリングガスにおける希ガスを、アルゴンガスに変更した。
【0159】
<比較例1>
実施例1と同様の手順で、透明導電性フィルム3を得た。但し、アニールユニット8は作動せずに、第2工程の後に、非晶質の状態で長尺の基材を巻取ロール31に巻き取った。その後、再度、送出ロール11をセットし、搬送し、第1スパッタユニット6および第2スパッタユニット7は作動させずに、アニールユニット8のみを作動させて透明導電層2を加熱し、結晶化させた(第3工程)。
【0160】
2.評価
<透明導電層の厚さ>
各実施例、および、各比較例における透明導電層の厚さを、FE-TEM観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、各実施例、および、各比較例における各透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(商品名「FB2200」、Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける透明導電層の厚さを、FE-TEM観察によって測定した。FE-TEM観察では、FE-TEM装置(商品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。その結果を表1に示す。
【0161】
<第3工程後の耐クラック評価>
各実施例および各比較例について、製造直後のロール体から透明導電性フィルム1を繰り出し、50cm×5cmのサイズに切り出した。その後、透明導電性フィルム1を10枚に切り分けた。各透明導電性フィルム1のサイズは、5cm×5cmである。10枚のうち透明導電性フィルム1のうち、何枚の透明導電性フィルム1においてクラックが観察されたかをカウントした。クラックは、顕微鏡で観察した。
【0162】
そして、耐クラック性を、下記のとおりに、評価した。
〇:10枚中、6枚以上の透明導電性フィルムの透明導電層2においてクラックが確認されなかった。
×:10枚中、6枚以上の透明導電性フィルムの透明導電層2においてクラックが確認された。
【0163】
<透明導電層の結晶性>
各実施例、および、各比較例における透明導電層の抵抗値(加熱前抵抗値と称する。)を測定した。次いで、透明導電性フィルムを140℃の熱風オーブンで1時間加熱した。その後、透明導電層の抵抗値(加熱後抵抗値と称する。)を測定した。次いで、下記式(1)に基づき、抵抗値の変化率を求めた。
抵抗値の変化率=(加熱前抵抗値-加熱後抵抗値)/加熱前抵抗値×100 (1)
また、透明導電層の結晶性について、以下の基準に基づき、評価した。
〇 抵抗値の変化率が、25%以下
× 抵抗値の変化率が、25%を超過
加熱前抵抗値、加熱後抵抗値、抵抗値の変化率および透明導電層の結晶性の評価について、表1に示す。なお、表1中において。「‐」は、抵抗値が測定できなかったことを示す。
【0164】