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  • 特開-強化バイオポリマー 図1
  • 特開-強化バイオポリマー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060011
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】強化バイオポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20240423BHJP
   A61L 27/30 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240423BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20240423BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240423BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61L27/38 100
A61L27/30
A61L27/54
A61K35/30
A61K35/44
A61P27/02
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/32
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024035114
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2022535909の分割
【原出願日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】62/947,933
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラン ブイ.バラジ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナデッテ パーソンズ
(57)【要約】
【課題】良好なデバイスなどを提供すること。
【解決手段】本開示の様々な態様は、合成支持膜及びバイオポリマーを含む強化バイオポリマーを含むデバイス、方法及びシステムを対象とする。強化バイオポリマーは、少なくとも85%の測定光学的透明度、約100μm以下の厚さ及び少なくとも30KJ/mの靭性を有することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)合成支持膜及びii)バイオポリマーを含む、強化バイオポリマーであって、前記強化バイオポリマーは、
a)少なくとも85%の測定光学透明度を有し、
b)約100μm以下の厚さを有し、そして
c)少なくとも30KJ/mの靭性を有する、
強化バイオポリマー。
【請求項2】
前記バイオポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、エラスチン、トロンボスポンジン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、多糖類、アルギネート、キトサン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む、請求項1記載の強化バイオポリマー。
【請求項3】
前記バイオポリマーは、細胞増殖、細胞接着又は細胞増殖及び接着の両方を支持するように機能化されている、請求項1又は請求項2記載の強化バイオポリマー。
【請求項4】
前記バイオポリマーは、前記合成支持膜の遠位の表面上に細胞単層を支持するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項5】
前記バイオポリマーの層は前記支持膜の各側に存在し、前記支持膜は、前記バイオポリマーの2つの層の間のほぼ中央に配置されている、請求項1~4のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項6】
前記支持膜の片側のみの前記バイオポリマーの層は細胞単層を支持するように構成されている、請求項5記載の強化バイオポリマー。
【請求項7】
前記バイオポリマーは前記支持膜中に吸収されている、請求項1~6のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項8】
前記合成支持膜は生物学的に不活性である、請求項1~7のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項9】
前記合成支持膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び膨張ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項10】
前記合成支持膜は、結晶化度が少なくとも94%でありそして長手方向及び横断方向の両方のマトリックス引張強度が少なくとも約600MPaである、二軸配向ePTFE膜である、請求項1~9のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項11】
前記合成支持膜は、前記合成支持膜の厚さを横切る物質移動を維持するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項12】
前記合成支持膜は、約0.5μm~約10μmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項13】
前記強化バイオポリマーは、約0.5μm~約100μmの厚さを有する、請求項1~12のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載の強化バイオポリマーと、前記支持膜の遠位の前記バイオポリマーの表面上の細胞の単層とを含む、インプラント可能な細胞治療デバイス。
【請求項15】
前記細胞の単層は、角膜内皮細胞、角膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、内皮細胞、上皮細胞、周皮細胞及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる細胞を含む、請求項14記載のインプラント可能な細胞治療デバイス。
【請求項16】
対象の細胞層の疾患又は状態を治療する方法、又は対象の細胞層に影響を与える疾患又は状態を治療する方法であって、請求項14又は請求項15記載のインプラント可能な細胞治療デバイスを前記対象の細胞層の上に又はその近くにインプラント処置することを含む、方法。
【請求項17】
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、角膜内皮ジストロフィーであり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは角膜内皮細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは、角膜の後面にインプラント処置される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、網膜色素上皮の疾患又は状態、又は網膜色素上皮に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、網膜色素上皮細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、光受容体の疾患又は状態、又は光受容体に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、光受容細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月13日に出願された仮出願第62/947,933号の利益を主張し、あらゆる目的のためにその全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞移植は、組織を再生及び修復し、疾患及び障害を治療するための重要な可能性を保持している。目的の標的又はその近くに浮遊状態で移植された細胞は、標的組織に付着して統合する可能性がある。しかしながら、多くの要因が標的組織への取り込み速度に影響を与える可能性があり、細胞は目的の標的に効果的に付着しない可能性がある。バイオポリマー足場は、細胞を目的の標的に保持する手段を提供し、移植された細胞の標的組織への取り込み速度を高めることができる。
【0003】
ポリマー足場でのインビトロ細胞培養は、組織形成及び細胞移植のための方策を提供する。特定の細胞株はポリマー足場に播種される。ポリマー足場は、良好な生体適合性、制御可能な生分解性、適切な引張強度及び可撓性を提供すべきである。コラーゲンは、しばしばバイオポリマー足場として使用されてきたが、バイオポリマーに必要な引張強度を与えるためにコラーゲンの広範な架橋がしばしば要求され、その結果、可撓性が低下し、細胞培養及び移植の両方で操作が困難になる。さらに、そのようなバイオポリマー足場は、一般に、曇っており、眼へのインプラント処置には不適切である。
【発明の概要】
【0004】
要旨
1つの例(「例1」)によれば、本明細書で提供されるのは、i)合成支持膜及びii)バイオポリマーを含む、強化バイオポリマーであって、前記強化バイオポリマーは、a)少なくとも85%の測定光学透明度を有し、b)約100μm以下の厚さを有し、そしてc)少なくとも30KJ/mの靭性を有する、強化バイオポリマーである。
【0005】
別の例(「例2」)によれば、例1に加えて、前記バイオポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、エラスチン、トロンボスポンジン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、多糖類、アルギネート、キトサン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む。
【0006】
別の例(「例3」)によれば、例1又は2に加えて、前記バイオポリマーは、細胞増殖、細胞接着又は細胞増殖及び接着の両方を支持するように機能化されている。
【0007】
別の例(「例4」)によれば、例1~3のいずれか1つに加えて、前記バイオポリマーは、前記合成支持膜の遠位の表面上に細胞単層を支持するように構成されている。
【0008】
別の例(「例5」)によれば、例1~4のいずれか1つに加えて、前記バイオポリマーの層は支持膜の各側に存在し、前記支持膜は、前記バイオポリマーの2つの層の間のほぼ中央に配置されている。
【0009】
別の例(「例6」)によれば、例5に加えて、前記支持膜の片側のみの前記バイオポリマーの層は細胞単層を支持するように構成されている。
【0010】
別の例(「例7」)によれば、例1~6のいずれか1つに加えて、前記バイオポリマーは前記支持膜中に吸収されている。
【0011】
別の例(「例8」)によれば、例1~7のいずれか1つに加えて、前記合成支持膜は生物学的に不活性である。
【0012】
別の例(「例9」)によれば、例1~8のいずれか1つに加えて、前記合成支持膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び膨張(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
別の例(「例10」)によれば、例1~9のいずれか1つに加えて、前記合成支持膜は、結晶化度が少なくとも94%でありそして長手方向及び横断方向の両方のマトリックス引張強度が少なくとも約600MPaである、二軸配向ePTFE膜である。
【0014】
別の例(「例11」)によれば、例1~10のいずれか1つに加えて、前記合成支持膜は、前記合成支持膜の厚さを横切る物質移動を維持するように構成されている。
【0015】
別の例(「例12」)によれば、例1~11のいずれか1つに加えて、前記合成支持膜は、約0.5μm~約10μmの厚さを有する。
【0016】
別の例(「例13」)によれば、例1~12のいずれか1つに加えて、前記強化バイオポリマーは、約0.5μm~約100μmの厚さを有する。
【0017】
別の例(「例14」)によれば、本明細書で提供されるのは、例1~13のいずれか1つの強化バイオポリマーと、前記支持膜の遠位の前記バイオポリマーの表面上の細胞の単層とを含む、インプラント可能な細胞治療デバイスである。
【0018】
別の例(「例15」)によれば、例14に加えて、前記細胞の単層は、角膜内皮細胞、角膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、内皮細胞、上皮細胞、周皮細胞及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる細胞を含む。
【0019】
別の例(「例16」)によれば、本明細書で提供されるのは、対象の細胞層の疾患又は状態を治療する方法、又は対象の細胞層に影響を与える疾患又は状態を治療する方法であり、この方法は、例14又は例15のインプラント可能な細胞治療デバイスを前記対象の細胞層の上に又はその近くにインプラント処置することを含む。
【0020】
別の例(「例17」)によれば、例16に加えて、前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、角膜内皮ジストロフィーであり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは角膜内皮細胞の単層を含み、前記細胞治療デバイスは、角膜の後面にインプラント処置される。
【0021】
別の例(「例18」)によれば、例16に加えて、前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、網膜色素上皮の疾患又は状態、又は網膜色素上皮に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、網膜色素上皮細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される。
【0022】
別の例(「例19」)によれば、例16に加えて、前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、光受容体の疾患又は状態、又は光受容体に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、光受容細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される。
【0023】
上述の例はまさに実施例であり、本開示によって他の方法で提供される本発明の概念のいずれかの範囲を制限又は他の方法で狭めるために読まれるべきではない。複数の例が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な例を示して説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に限定的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0025】
図1図1は、1つの実施形態による、強化バイオポリマーの断面図の図解である。
【0026】
図2図2は、1つの実施形態による、強化バイオポリマーの断面図の図解である。
【0027】
図3図3は、1つの実施形態による、強化バイオポリマーの断面図の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
定義及び用語
本開示は、限定的な方法で読まれることが意図されていない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の用語がそのような用語に帰する意味の関係で広く読まれるべきである。
【0029】
不正確さの用語に関して、「約」及び「ほぼ」という用語は、交換可能に、記載された測定値を含み、また、記載された測定値に合理的に近い測定値を含む測定値を指すために使用されうる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され、容易に確認されるように、合理的に少量だけ記載された測定値から逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的誤差、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた微調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調整及び/又は操作などに起因する可能性がある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合には、「約」及び「ほぼ」という用語は、記載された値の±10%を意味すると理解することができる。
【0030】
様々な実施形態の説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0031】
本開示の様々な態様は、強化バイオポリマーを対象とする。強化バイオポリマーは、その表面上の細胞を支持及び維持するように構成されうる。強化バイオポリマーは、例えば、強化バイオポリマーの表面上に細胞の単層を支持するように使用されうる。細胞は、例えば、幹細胞、上皮細胞、内皮細胞又は網膜色素上皮細胞であることができる。以下で詳細に論じられるように、強化バイオポリマーは、強化バイオポリマーを横切る物質移動を可能にし、高い光学的透明度を有し、曲げ及び/又は折り畳みを含む操作に耐えるのに十分な靭性を有する。
【0032】
本明細書に記載の強化バイオポリマーは、デバイスとして、又は、デバイスにおいて、方法において、及びシステムにおいて使用することができ、細胞の単層を標的部位にデリバリーするように構成されうる。特定の例において、そして以下でさらに詳細に議論されるように、強化バイオポリマーの機械的特性は、インプラント処置中に、そして一度インビボでインプラント処置されると、引き裂き又は切り裂きすることを回避するように設計されている。
【0033】
図1は、1つの実施形態による例示的な強化バイオポリマー100の図解である。特定の実施形態において、強化バイオポリマー100は、合成支持膜102及びバイオポリマー104を含む複合構造を有する。図示のように、バイオポリマー104の層は、合成支持膜102の各側に存在し、合成支持膜102はバイオポリマー104の2つの層の間にほぼ中央に配置されている。
【0034】
図2は、別の実施形態による例示的な強化バイオポリマー200の図解である。強化バイオポリマー200は、合成支持膜102、バイオポリマーの第一の層104及びバイオポリマーの第二の層106を含み、バイオポリマーの第一の層104及びバイオポリマーの第二の層106は、異なるバイオポリマー又は同じバイオポリマーの異なる製剤である。図示のように、合成支持膜102は、バイオポリマーの第一の層104とバイオポリマーの第二の層106との間のほぼ中央に配置されている。
【0035】
合成支持膜102は、図1の強化バイオポリマー100のそれぞれ及び図2の強化バイオポリマーにおいて、バイオポリマーの2つの層の間のほぼ中央に配置されているが、合成支持膜102はそのように配置される必要がないことが理解される。幾つかの実施形態において、例えば、合成支持膜102の第一の側に存在するバイオポリマー層は、合成支持膜102の第二の側に存在するバイオポリマー層よりも厚い厚さを有することができる。例えば、合成支持膜102の第一の側のバイオポリマーの厚さ/合成支持膜102の第二の側のバイオポリマーの厚さは、約1:1(すなわち、合成支持膜102は、ほぼ中央に配置される)、約2:1、約3:1、約3:2、約4:1、約4:3、約5:1、約5:2、約5:3、約5:4、約6:1、約6:5、約7:1、約7:2、約7:3、約7:4、約7:5、約7:6、約8:1、約8:3、約8:5、約8:7、約9:1、約9:2、約9:4、約9:5、約9:7、約10:1、約10:3、約10:7又は約10:9の比率として表すことができる。他の比率も考えられる。
【0036】
図3は、別の実施形態による例示的な強化バイオポリマー300の図解である。強化バイオポリマー300は、合成支持膜102と、合成支持膜102の第一の側にのみ存在するバイオポリマー104の層とを含む。バイオポリマー104は、合成支持膜102に吸収されうるので、公称量のバイオポリマー104は、合成支持膜102の第二の側に広がることができる。
【0037】
特定の実施形態において、合成支持膜102は生物学的に不活性である。合成支持膜102は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び膨張ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含むことができる。幾つかの実施形態において、合成支持膜102は、ePTFEを含む。
【0038】
幾つかの実施形態のePTFE合成支持膜は、二軸配向されており、高い固有強度を有し、Goreの米国特許第3,953,566号明細書に記載されている一般的な方法に従って調製することができ、その全体を参照により本明細書に組み込む。二軸配向のePTFE合成支持膜は、結晶性が高く(すなわち、結晶化度が少なくとも94%)、長手方向及び横断方向の両方で少なくとも600MPaのマトリックス引張強度を有する。ePTFE合成支持膜は、複数のスタックされたePTFE層を含むことができ、各層は、100mg/m未満の面密度を有する。
【0039】
幾つかの例において、ePTFE合成支持膜は、Goreの米国特許第7,306,729号明細書に記載されている方法に従って調製され、その全体を参照により本明細書に組み込む。他の例において、ePTFE合成支持膜は、米国公開番号第2012/0065649号明細書に記載されている方法に従って調製され、その全体を参照により本明細書に組み込む。他の例において、ePTFE合成支持膜は、Goreの米国特許第5,814,405号明細書に記載されている方法に従って調製され、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0040】
幾つかの実施形態において、合成支持膜は、強化バイオポリマーに含まれるときに、合成支持膜を横切る物質移動を可能にするように構成されている。合成支持膜を横切る物質移動を可能にすることにより、栄養素は膜を横切って拡散してバイオポリマーの表面上の細胞に到達し、細胞廃棄物副産物は細胞から離れて膜を横切って拡散することができる。合成支持膜の物質移動係数は所望の用途に適合させ、合成支持膜を横切る物質移動ポテンシャルを増加又は減少させることができる。物質移動係数は、膜の細孔サイズ及び/又は膜の層状化を調整することによって制御できる。
【0041】
強化バイオポリマーの合成支持膜は、約0.5μm~約10μmの厚さを有することができる。特定の実施形態において、合成支持膜は、約0.5μm、約1μm、約1.5μm、約2μm、約2.5μm、約3μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、約5μm、約5.5μm、約6μm、約6.5μm、約7μm、約7.5μ、約8μm、約8.5μm、約9μm、約9.5μm又は約10μmの厚さを有する。以下で詳細に記載されるように、特定の例において、湿潤プロセスにより、合成支持膜が「崩壊」し、膜の厚さが減少することができる。上記の厚さは、湿潤後の複合強化バイオポリマーに見られる「崩潰した」合成支持膜を指す。
【0042】
特定の実施形態において、バイオポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、エラスチン、トロンボスポンジン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、多糖類、アルギネート、キトサン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む。特定の実施形態において、バイオポリマーはコラーゲンを含む。これらの構成要素の多くは、様々な形式で又は様々なタイプとして存在することができる。例えば、コラーゲンの多くの様々なタイプ(例えば、タイプI、II、IIIなど)及びゼラチン(例えば、タイプA、タイプB)がある。さらに、これらの構成要素は様々な供給源に由来することができる。任意の供給源に由来する任意のタイプ又は形態が、本明細書に記載のバイオポリマーに含まれうることが考えられる。
【0043】
幾つかの実施形態において、バイオポリマーはまた、例えば、コーティング又は吸収助剤、粘度調整剤、密度調整剤又はバイオポリマー架橋剤などの1つ以上の添加剤を含む。
【0044】
合成支持膜の片側に存在する単一のバイオポリマー層は、約0μm~約95μmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態において、バイオポリマーは、合成支持膜の片側で合成支持膜中に完全に吸収され、したがって、バイオポリマー層は、約0μmの厚さを有する。
【0045】
特定の例において、強化バイオポリマーのバイオポリマーは架橋されている。バイオポリマーを架橋すると、その引張強度及び熱安定性を高めることができる。コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチンなどの本明細書で考えられるバイオポリマー要素を架橋するための方法は、当該技術分野で知られている。架橋は、引張強度を増加させる一方で、バイオポリマーの「粘着性」を低下させ、インビボで細胞を保持しそして組織に付着することができる能力を低下させるという悪影響をもたらす可能性がある。本明細書に開示される強化バイオポリマーの利点は、合成支持膜のために、バイオポリマーはその引張強度を高めるために架橋される必要がないことであり、強化バイオポリマーの強度及び靭性は、合成支持膜によって提供される。バイオポリマーは依然として架橋されていてもよいが、合成支持膜が存在しない場合に必要となるほど広範に架橋される必要はない。これにより、バイオポリマーはその粘着性を保持し、インビボで細胞を保持する能力及び/又は組織に付着する能力を保持することができる。バイオポリマーの架橋は、例えば、バイオポリマーの熱安定性を高めて、液化することなくインビボにインプラント処置できるようにするために行うことができる。所望の熱安定性を達成するために必要な架橋の程度又はレベルは、一般に、引張強度の有意な増加を達成するために要求されるものよりも低い。それぞれ図1及び2に示される強化バイオポリマー100及び200のように、強化バイオポリマーが合成支持膜の両側にバイオポリマー層を含む場合に、2つのバイオポリマー層の表面は、同様に架橋されるか、又は示差的に架橋されて、各表面に区別される表面特性(例えば、異なるレベルの細胞接着性又は生体組織への粘着性)を提供することができる。
【0046】
特定の実施形態において、バイオポリマー層の表面は、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び接着の両方を支持するように構成されている。特定の実施形態において、細胞の層は、バイオポリマー層の表面上に直接成長する。他の実施形態において、細胞の懸濁液がバイオポリマー層の表面上に播種され、細胞はバイオポリマー層の表面に付着することを可能にする。特定の例において、バイオポリマー層の表面上で成長した細胞、又はバイオポリマー層の表面に付着した細胞は、細胞単層(すなわち、1つの細胞の厚さの細胞の層)を形成する。
【0047】
強化バイオポリマーが、それぞれ図1及び2に示される強化バイオポリマー100及び200のように、合成支持膜の両側にバイオポリマー層を含む場合に、いずれかのバイオポリマー層の合成支持膜の遠位の表面は、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び細胞接着の両方を支持するように構成されうる。特定の例において、一方のバイオポリマー層の合成支持膜の遠位の表面は、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び細胞接着の両方を支持するように構成されることができ、他方のバイオポリマー層の合成支持体の遠位の表面は、生体組織への接着を促進し又は接着を防ぎ、タンパク質及び/又は細胞の表面への結合を妨げるように構成されうる。
【0048】
強化バイオポリマーが、図3に示される強化バイオポリマー300のように、合成支持膜の片側にのみバイオポリマー層を含む場合に、単一のバイオポリマー層の合成支持膜の遠位の表面は、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び細胞接着の両方を支持するように構成されうる。特定の例において、1つのバイオポリマー層の合成支持体の遠位の表面は、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び細胞接着の両方を支持するように構成されることができ、単一のバイオポリマー層の反対側の合成支持膜の表面は生体組織への接着を促進するように、又は接着を防ぎそしてタンパク質及び/又は細胞の表面への結合を妨げるように構成されうる。
【0049】
バイオポリマーは、所望の細胞型の増殖を支持するように選ばれることができる。幾つかの実施形態において、角膜内皮細胞、角膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、内皮細胞、上皮細胞、周皮細胞又はそれらの組み合わせを、強化バイオポリマーの表面上に増殖させることが望ましいことがある。特定の例において、これらの細胞は、強化バイオポリマーの表面上に細胞の単層を形成する。これら及び他の細胞型の増殖を支持するのに適したバイオポリマー基材は当該技術分野で知られている。
【0050】
幾つかの実施形態において、細胞増殖、細胞接着、又は細胞増殖及び細胞接着の両方を支持するように構成されたバイオポリマー層の表面は機能化されている。表面は、例えば、バイオポリマー層の表面における細胞接着分子、抗原、エピトープ及び/又は幹細胞分化因子を含むことによって機能化されうる。そのような機能化因子は細胞特異的であり、特定の細胞型に従って選択することができることが認識されるであろう。
【0051】
特定の例において、バイオポリマー層は、インビボでインプラント処置されたときに炎症反応を最小化又は回避するように構成されている。
【0052】
強化バイオポリマーの厚さは、約0.5μm~約150μmであることができる。幾つかの実施形態において、強化バイオポリマーは、約10μm~約50μmの厚さを有することができる。他の実施形態において、強化バイオポリマーは、約20μm~約30μmの厚さを有することができる。特定の実施形態において、強化バイオポリマーは、約20μmの厚さを有することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の強化バイオポリマーは、少なくとも約30KJ/mの靭性を有する。合成支持膜の靭性はバイオポリマー層の靭性よりも数桁大きいため、たとえ架橋されていても、合成支持膜の靭性は強化バイオポリマーの靭性に近似している。強化バイオポリマーの靭性へのバイオポリマーの寄与は無視することができる。
【0054】
本明細書に記載の強化バイオポリマーの合成支持膜-バイオポリマー複合構造は、細胞培養手順及びインビボインプラント処置の両方の間の取り扱い及び操作に耐えるのに十分な引張強度及び靭性を有するバイオポリマーをもたらす。操作及びインプラント処置に耐えるのに十分な引張強度を達成するために広範な架橋を必要とするバイオポリマーのみから構成される基材とは異なり、記載の強化バイオポリマーは、バイオポリマー層をさらに操作する(例えば、架橋する)必要性を最小限に抑えながら、可撓性及び強靭である。
【0055】
特定の実施形態において、本明細書に記載の強化バイオポリマーは、少なくとも約85%の測定光学透明度を有する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の強化バイオポリマーは、少なくとも約90%の測定光学透明度を有する。光学透明度は、完全に水和した状態のバイオポリマーを使用して空気中で測定される。空気中で測定されるときに、サンプルとその環境との間の外部界面でのフレネル反射は、本開示に従って使用されるときの強化バイオポリマーの光学透明度と比較して透過値を低下させる。使用中の強化バイオポリマーの光学透明度は、空気中での測定値よりも高いことが理解される。
【0056】
光学的に透明な強化バイオポリマーは、例えば、眼の光学系に悪影響を与えることなく細胞を眼にデリバリーするための基材又はビヒクルとして使用することができる。例えば、強化バイオポリマーのバイオポリマー層の表面上で増殖した角膜内皮細胞の単層を角膜の後面にインプラント処置して、角膜に健康な内皮細胞の層を提供することができる(すなわち、内皮角膜移植)。別の例において、網膜色素上皮細胞は、強化バイオポリマーの表面上に形成された単層として網膜に直接導入することができる。これらの例の両方で、強化バイオポリマーは、良好な透明性及び最小限の散乱で、眼の正常な光学機能を可能にする。
【0057】
ePTFEの透明性は、主に、材料のバルクに存在する残留散乱の量によって支配される。高い正(鮮明な画像形成)透過を得るために、透過と反射の両方で拡散(散乱)成分を最小限に抑えなければならない。これは通常、構造を薄くするか、又は、屈折率がほぼ一致する物質(ePTFEの場合は約1.37)をePTFEの微細構造に組み込むことによって行われる。幾つかの実施形態において、ePTFE合成支持膜は、Goreの米国特許第7,306,729号明細書に記載されている方法に従って調製され、その全体を参照により本明細書に組み込む。この膜ファミリーの一部のメンバーは、通常に膜を通過する可視光の量を減らす高い多孔性を有しながら高い透明度を備えている。特定の膜は、少なくとも50%の光透過率又は光学透明度及び少なくとも50%の多孔度を有することができ、一方、85%以上の光透過率値は、75%を超える多孔度の膜で得られる。
【0058】
合成支持膜内に閉じ込められた空気の量及び吸収された物質の水和指数は、支持膜の光学的透明性における重要な決定要因であり、強化バイオポリマーの光学的透明性に寄与する。幾つかの実施形態において、合成支持膜にバイオポリマーが吸収される前に起こる湿潤プロセス中に、すべて又は実質的にすべての空気は合成支持膜から排出される。幾つかの例において、湿潤プロセスにより、膜自体が「崩潰」する。例えば、湿潤前に約5μmの厚さを有するePTFE膜は、約1μmの厚さに崩壊することができる。次に、湿潤した合成支持膜を調製し、所望のバイオポリマーを吸収して、空気を含まない又は空気を実質的に含まない強化バイオポリマーを生成する。幾つかの例において、強化バイオポリマーがバイオポリマーで吸収されたものであり、空気を含まない又は空気を実質的に含まない場合に、「完全に吸収された」と考えられる。
【0059】
特定の実施形態において、バイオポリマーは、合成支持膜の屈折率と同じ又は実質的に同様の屈折率を有する。
【0060】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、インプラント可能な細胞治療デバイスである。インプラント可能な細胞治療デバイスは、強化バイオポリマー、及び、合成支持膜の遠位にあるバイオポリマーの表面上の細胞の単層を含む。細胞の単層としては、限定するわけではないが、角膜内皮細胞、角膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、内皮細胞、上皮細胞、周皮細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態において、幹細胞は多能性幹細胞である。他の実施形態において、幹細胞は多能性幹細胞である。
【0061】
別の態様において、疾患又は状態を治療する方法は提供される。幾つかの例において、疾患又は状態は対象の細胞層に影響を及ぼす。疾患又は状態は、例えば、角膜内皮ジストロフィー、網膜色素上皮に影響を与える疾患又は状態、又は光受容体に影響を与える疾患又は状態であることができる。この方法は、一般に、本明細書に記載のインプラント可能な細胞治療デバイスを患部又はさもなければ患部領域に外科的にインプラント処置することを含み、ここで、インプラント可能な細胞治療デバイスは、疾患又は状態を治療又はさもなければ改善するように選ばれた細胞の単層を含む。例えば、角膜内皮ジストロフィーは、角膜後面に角膜内皮細胞の単層を含む細胞治療デバイスを外科的にインプラント処置することによって治療することができる。幾つかの実施形態において、インプラント処置手順は、最初に、罹患した又は機能しない角膜内皮の一部又はすべてを除去することを含む。網膜色素上皮の疾患又は状態、又は網膜色素上皮に影響を与える疾患又は状態は、網膜に網膜色素上皮細胞の単層を含む細胞治療デバイスを外科的にインプラント処置することによって治療することができる。光受容体の疾患又は状態又は光受容体に影響を与える疾患又は状態は、網膜に光受容細胞の単層を含む細胞治療デバイスを外科的にインプラント処置することによって治療することができる。
【0062】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に説明するが、当該技術分野の当業者によって適切であると決定された他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0063】
試験方法
厚さ測定
合成支持膜の厚さは、キーエンスLS-7010を使用する非接触測定を介して測定される。
【0064】
強化バイオポリマーの厚さ及びバイオポリマー層の厚さ(水和状態及び脱水状態の両方で)は、レーザ走査型共焦点顕微鏡(LSCM)断面によって決定される。強化バイオポリマーは、合成支持膜からバイオポリマー層をオフセットするために(例えば、ローダミンで)染色することができる。合成支持膜の厚さは、単独であるか、又は、強化バイオポリマーに組み込まれている場合であるかにかかわらず、LSCMによって決定できる。LSCMは、複合材料の厚さ(及びその層)が完全に水和した状態で測定されるときに使用される。部分的に水和又は乾燥した状態の強化バイオポリマーの厚さは、有意に薄い(例えば、約200%~500%)。
【0065】
引張強度及び靭性
強化バイオポリマーの引張特性に近似する合成支持膜の引張特性は、ASTM D412-ドッグボーンFに従って決定される。ピーク引張荷重、引張荷重及び靭性(すなわち、ピーク引張荷重までの曲線下面積))は、それぞれ標準試験データから計算できる。
【0066】
光学的透明度
試料(膜、フィルムなど)のスペクトル透過率及びヘイズは、島津UV-2700分光光度計を使用して空気中で測定される。機器には積分球が含まれており、測定範囲は185~900nmである。ヘイズ及び透過率の両方の測定は、ASTM規格D1003-13に記載されており、それに応じて実装されている。
【実施例0067】

タイプAゼラチンを用いて10%ゼラチン溶液を調製した。3ミル(厚さ76.2μm)のePTFE膜をテーブル上に置き、固定した。次に、膜を親水的に処理し、乾燥させた。乾燥した親水的に処理された膜をフープに取り付けた。過剰のゼラチン溶液をピペットで膜上に移し、RDS15メイヤーバーを使用してドローダウン手順を実行して、膜上にゼラチンの層を形成した。この手順では、ゼラチン溶液のライン(過剰)を膜の上端に横切って配置し、メイヤーバーでドローダウンした。膜を動かさないように注意した。膜はすぐにゼラチンで湿潤した。次に、形成された強化バイオポリマー複合材料を乾燥させた。複合材料は、剥がしやすいように、場合により再湿潤させた。ゼラチン層の厚さは、様々なドローダウンバーを使用して制御できる。ゼラチン層を有する膜を乾燥させ、親水的に処理した。次に、乾燥して処理した膜を。
【0068】
ゼラチン層のゼラチンを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-N-ヒドロキシスクシンイミド(EDC-NHS)架橋手順を使用して架橋した(例えば、Kuijpersら(2000), Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition、11(3):225-243)。EDC/NHSの濃度を、5%~「100%」の架橋を生成するように変更した(立体障害を考慮して最大に官能基架橋された)。強化バイオポリマーのゼラチン質量を測定し、ゼラチンの量を使用して、カルボン酸残基を活性化するために必要なEDCの量を計算した。NHS(モル比NHS/EDC=0.2)を含む2.5%w/vのEDC溶液を調製した。MESバッファー(0.05M、pH5.3)を使用してePTFE-ゼラチン複合材料を浸漬し、ゼラチンの濃度を1g/50mlにした。この体積から必要量のEDC/NHS溶液を差し引き、必要量のEDC/NHS溶液を加えた。次の式は、計算を示す。
【数1】
上式中、xは望ましいカルボン酸残基の活性化の程度である。ゼラチン100gあたり79mmLのCOOは、平均78~80ミリモルに基づいて、ゼラチンタイプAにのみ当てはまることに注意されたい。
【数2】
【0069】
強化バイオポリマーを、冷蔵庫で16時間インキュベートし、その後に、クエンチング溶液中で2時間クエンチングした。強化バイオポリマーを、溶液の置換及び攪拌を含めて、脱イオン水で4時間洗浄し、反応副産物の除去を確実にした。
【0070】
次に、強化バイオポリマーを、24ウェルプレートに配置されたPTFEリングに取り付けた。細胞培養物をサンプルに播種するまで、強化バイオポリマーを水和状態に維持した。
【0071】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態の両方に関して上記で記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態の両方に関して上記で記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
(態様)
(態様1)
i)合成支持膜及びii)バイオポリマーを含む、強化バイオポリマーであって、前記強化バイオポリマーは、
a)少なくとも85%の測定光学透明度を有し、
b)約100μm以下の厚さを有し、そして
c)少なくとも30KJ/m の靭性を有する、
強化バイオポリマー。
(態様2)
前記バイオポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、エラスチン、トロンボスポンジン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、多糖類、アルギネート、キトサン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む、態様1記載の強化バイオポリマー。
(態様3)
前記バイオポリマーは、細胞増殖、細胞接着又は細胞増殖及び接着の両方を支持するように機能化されている、態様1又は態様2記載の強化バイオポリマー。
(態様4)
前記バイオポリマーは、前記合成支持膜の遠位の表面上に細胞単層を支持するように構成されている、態様1~3のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様5)
前記バイオポリマーの層は前記支持膜の各側に存在し、前記支持膜は、前記バイオポリマーの2つの層の間のほぼ中央に配置されている、態様1~4のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様6)
前記支持膜の片側のみの前記バイオポリマーの層は細胞単層を支持するように構成されている、態様5記載の強化バイオポリマー。
(態様7)
前記バイオポリマーは前記支持膜中に吸収されている、態様1~6のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様8)
前記合成支持膜は生物学的に不活性である、態様1~7のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様9)
前記合成支持膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び膨張ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む、態様1~8のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様10)
前記合成支持膜は、結晶化度が少なくとも94%でありそして長手方向及び横断方向の両方のマトリックス引張強度が少なくとも約600MPaである、二軸配向ePTFE膜である、態様1~9のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様11)
前記合成支持膜は、前記合成支持膜の厚さを横切る物質移動を維持するように構成されている、態様1~10のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様12)
前記合成支持膜は、約0.5μm~約10μmの厚さを有する、態様1~11のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様13)
前記強化バイオポリマーは、約0.5μm~約100μmの厚さを有する、態様1~12のいずれか1項記載の強化バイオポリマー。
(態様14)
態様1~13のいずれか1項記載の強化バイオポリマーと、前記支持膜の遠位の前記バイオポリマーの表面上の細胞の単層とを含む、インプラント可能な細胞治療デバイス。
(態様15)
前記細胞の単層は、角膜内皮細胞、角膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、内皮細胞、上皮細胞、周皮細胞及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる細胞を含む、態様14記載のインプラント可能な細胞治療デバイス。
(態様16)
対象の細胞層の疾患又は状態を治療する方法、又は対象の細胞層に影響を与える疾患又は状態を治療する方法であって、態様14又は態様15記載のインプラント可能な細胞治療デバイスを前記対象の細胞層の上に又はその近くにインプラント処置することを含む、方法。
(態様17)
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、角膜内皮ジストロフィーであり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは角膜内皮細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは、角膜の後面にインプラント処置される、態様16記載の方法。
(態様18)
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、網膜色素上皮の疾患又は状態、又は網膜色素上皮に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、網膜色素上皮細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される、態様16記載の方法。
(態様19)
前記細胞層の疾患又は状態、又は前記細胞層に影響を与える疾患又は状態は、光受容体の疾患又は状態、又は光受容体に影響を与える疾患又は状態であり、前記インプラント可能な細胞治療デバイスは、光受容細胞の単層を含み、そして前記細胞治療デバイスは網膜にインプラント処置される、態様16記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)合成支持膜及びii)バイオポリマーを含む、強化バイオポリマーであって、前記強化バイオポリマーは、
a)少なくとも85%の測定光学透明度を有し、
b)約100μm以下の厚さを有し、そして
c)少なくとも30KJ/mの靭性を有する、
強化バイオポリマー。
【外国語明細書】