IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東光薬品工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-皮膚外用クリーム剤 図1
  • 特開-皮膚外用クリーム剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060043
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】皮膚外用クリーム剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240423BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00
A61P31/10
A61P29/00
A61P23/02
A61K31/4402
A61K31/135
A61K31/165
A61K9/10
A61K31/137
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/18
A61K47/02
A61K31/4174
A61K31/4178
A61K31/496
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037933
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2021171588の分割
【原出願日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020175986
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391031247
【氏名又は名称】東光薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】古谷野 浩治
(57)【要約】
【課題】
加温条件下での乳化安定性が向上し、患部に塗布しやすい適度な粘性を有する皮膚外用クリーム剤を提供する。
【解決手段】
抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、前記抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、又はジフェンヒドラミン塩酸塩であり、前記クロタミトンが組成物全量当たり1~15wt%含有され、前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、又は、カルボキシビニルポリマー及びヒドロキシプロピルセルロースであって、前記クロタミトンの含有量の10%を越えて含有され、前記pH調整剤が、前記増粘剤の5wt%~100wt%含有されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、
前記抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、又はジフェンヒドラミン塩酸塩であり、
前記クロタミトンが組成物全量当たり1~15wt%含有され、
前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、又は、カルボキシビニルポリマー及びヒドロキシプロピルセルロースであって、前記クロタミトンの含有量の10%を越えて含有され、
前記pH調整剤が、前記増粘剤の5wt%~100wt%含有されていることを特徴とする皮膚外用クリーム剤。
【請求項2】
前記pH調整剤が、塩基からなる請求項1に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項3】
前記pH調整剤が、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択された1種又は2種以上である請求項2に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項4】
前記増粘剤が、組成物全量当たり0.05~5.0wt%、前記塩基からなるpH調整剤が、組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有されている請求項3に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項5】
前記抗真菌剤が、テルビナフィン、テルビナフィン塩酸塩である請求項4に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項6】
前記抗真菌剤が、ミコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ビホナゾール、オキシコナゾール、又はオキシコナゾール硝酸塩である請求項4に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項7】
前記抗真菌剤が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有されている請求項7に記載の皮膚外用クリーム剤。
【請求項8】
殺菌剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、モノテルペン類、及び尿素から選択される1種又は2種以上の成分が含有されている請求項1に記載の皮膚外用クリーム剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤を主薬とする皮膚外用クリーム剤に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌の生育を阻害する抗真菌剤を含有した皮膚外用クリーム剤は、真菌感染に起因する様々な疾患や症状を治療、予防、改善するために広く用いられている。中でも、抗真菌剤として知られるテルビナフィン塩酸塩を主薬とする皮膚外用クリーム剤は、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤などの有効成分と共に使用されている。この種の皮膚外用クリーム剤として、従来から市場では前記有効成分の数を増加することが求められており、最近では、7成分以上の配合製品が望まれている。
【0003】
特に、有効成分の角質浸透性・貯留性を高めるクロタミトンを配合した皮膚外用クリーム剤は、抗真菌剤の角質浸透性・貯留性を高めることが可能となることから、7番目の有効成分として注目されている。クロタミトンは、有効成分の一つである抗真菌剤、特にテルビナフィン塩酸塩に対して高い溶解性を持ち、角質浸透性が良いことから、テルビナフィン塩酸塩の表皮角質層への浸透を促進し、さらに表皮角質層の構成成分との結合度を高めることが、期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6591100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医薬品は定められた期間、有効成分並びに性状の安定性を保つことが必要である。配合成分が製剤化された後、例えば、温度や湿度の変化、露光条件などで経時的に不安定となることは好ましくない。しかし、前記のように有効成分の角質浸透性・貯留性を高めるクロタミトンを配合した皮膚外用クリーム剤において、クロタミトン配合量が、例えば、1wt%以上とした場合、乳化安定性に懸念事項が生じる。特に、クリーム状に製剤化した場合に、40℃以上の加温条件下では時間経過により一部乳化の偏りが生じてしまう。
【0006】
また、クロタミトンを配合した皮膚外用クリーム剤においては、クロタミトンと他の有効成分の配合割合によっては、患部に塗布した場合にクリームとしての触感が低下し、使用者に違和感を与えることもある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解消するために提案されたものである。本発明の目的は、加温条件下での乳化安定性が向上し、患部に塗布しやすい適度な粘性を有する皮膚外用クリーム剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討したところ、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤及びクロタミトンとともに、特定の増粘剤を含有させることで、乳化安定性が向上すると共に、患部に塗布しやすい適度な粘性を有する皮膚外用クリーム剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の皮膚外用クリーム剤は下記のような構成を有する。
(1)抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、増粘剤及びpH調整剤を含み、サリチル酸を含まない、皮膚外用クリーム剤であって、
(2)前記抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、又はジフェンヒドラミン塩酸塩であり、
(3)前記クロタミトンが組成物全量当たり1~15wt%含有され、
前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、又は、カルボキシビニルポリマー及びヒドロキシプロピルセルロースであって、前記クロタミトンの含有量の10%を越えて含有され、
(4)前記pH調整剤が、前記増粘剤の5wt%~100wt%含有されている。
【0009】
本発明は、次のような態様も包含する。
(1)前記pH調整剤が、塩基からなる。
(2)前記pH調整剤が、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択された1種又は2種以上である。
(3)前記増粘剤が、組成物全量当たり0.05~5.0wt%、前記塩基からなるpH調整剤が、組成物全量当たり0.01~5.0wt%含有されている。
(4)前記抗真菌剤が、テルビナフィン、テルビナフィン塩酸塩である。
(5)前記抗真菌剤が、ミコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ビホナゾール、オキシコナゾール、又はオキシコナゾール硝酸塩である。
(6)前記抗真菌剤が、組成物全量当たり0.5~3.0wt%含有されている。
(7)殺菌剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、モノテルペン類、及び尿素から選択される1種又は2種以上の成分が含有されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加温条件下での乳化安定性が向上すると共に、患部に塗布しやすい適度な粘性を有する製剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例において、評価基準Aとした皮膚外用クリーム剤の経時的変化の一例を示す写真。
図2】本発明の比較例において、評価基準Dとした皮膚外用クリーム剤の経時的変化の一例を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の皮膚外用クリーム剤に配合する各主成分について説明する。なお、本明細書では各成分の分量についてはwt%を使用し、以下に単にwt%との記載がある場合でも組成物全量に対する分量を示す。
<抗真菌剤>
本発明に好ましい抗真菌剤としては、テルビナフィン、テルビナフィン塩酸塩等のアリルアミン系抗真菌剤、トルナフタート、リラナフタート等のチオカルバミン酸系抗真菌剤、ミコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、イソコナゾール、イソコナゾール硝酸塩、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ネチコナゾール、ネチコナゾール塩酸塩、スルコナゾール、スルコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、オキシコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、エコナゾール、エコナゾール硝酸塩等のイミダゾール系抗真菌剤、エフィナコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ホスラブコナゾール等のトリアゾール系抗真菌剤、アモロルフィン、アモロルフィン塩酸塩等のモルホリン系抗真菌剤が挙げられる。中でも、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、アリルアミン系抗真菌剤、イミダゾール系抗真菌剤が好ましく用いられ、その中でも、テルビナフィン、テルビナフィン塩酸塩、ミコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ビホナゾール、オキシコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩がより好ましく、テルビナフィン、テルビナフィン塩酸塩が特に好ましい。
その配合量は、組成物全量当り0.5~3.0wt%、好ましくは1.0~2.0wt%である。
【0013】
<殺菌剤>
殺菌剤として、抗真菌剤に対して、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、又はセチルピリジニウム塩化物を添加することができる。本発明の効果をより顕著に奏する観点から、含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.01~3wt%、より好ましくは0.05~1wt%、特に好ましくは0.3~1wt%である。
【0014】
<局所麻酔剤>
局所麻酔剤としては、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン、ブピバカイン、メピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、及びそれらの薬学的に許容される塩、及びアミノ安息香酸エチルからなる群より選択される1種又は2種以上が使用できる。リドカインである場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、リドカインの含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.25~2.5wt%であり、より好ましくは0.5~2wt%である。
【0015】
<抗ヒスタミン剤>
抗ヒスタミン剤としては、クロルフェニラミン、イソチペンジル、ケトチフェン、ベポタスチン、ジメンヒドリナート、シプロヘプタジン、ジフェニルピラリン、プロメタジン、イプロヘプチン、エメダスチン、クレマスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、ヒドロキシジン、メキタジン、ロラタジン、フェキソフェナジン、セチリジン、オキサトミド、テルフェナジン、エピナスチン、アステミゾール、エバスチン、ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン、又はこれらの化合物の塩が使用できる。
【0016】
抗ヒスタミン剤としての好ましい例は、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール、又はそれらの塩であり、より好ましい例は、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン又はそれらの塩であり、さらに好ましい例は、クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩である。これらの薬剤から1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。例えば、抗ヒスタミン剤が、ジフェンヒドラミン、及びそれらの塩である場合、本願発明の効果をより顕著に奏する観点から、ジフェンヒドラミン、及びそれらの塩の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.1~2wt%であり、より好ましくは0.5~1wt%である。
【0017】
<抗炎症剤>
抗炎症剤としては、非ステロイド性とステロイド性のいずれの抗炎症剤も使用可能であり、アラントイン、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ウフェナマート、ブフェキサマク、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、ジクロフェナク、ピロキシカム、ε-アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム、アズレン、ブロメライン、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、トラネキサム酸及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群より選択される1種又は2種以上が使用できる。グリチルレチン酸の誘導体としてはグリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリチルレチニル、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸ジナトリウム等が挙げられ、グリチルリチン酸の誘導体としてはグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等が挙げられる。
抗炎症剤が、グリチルレチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、アラントインである場合、本願発明の効果をより顕著に奏する観点から、含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.1~1wt%であり、より好ましくは0.2~0.8wt%、さらに好ましくは0.2~0.5wt%である。
【0018】
<角質浸透性・貯留性向上剤>
クロタミトンを配合することで、外用剤として製剤化した場合、抗真菌剤の角質浸透性・貯留性を高めることが可能となる。また、クロタミトンは、鎮痒剤としても機能する。
さらに、抗真菌剤を有効成分とする外用剤において、それら抗真菌剤に対して高い溶解性を持ち、角質浸透性のよいクロタミトン及びモノテルペン類を併用することにより抗真菌剤の表皮角質層への浸透を促進し、さらに表皮角質層の構成成分との結合、固定化を助ける。クロタミトンの含有量が組成物全量に対して15wt%を超えると、後述する性状評価において良好なものもあれば分離してしまうものもあるため、好ましくは0.1~15wt%以下であり、実用化の観点からより好ましくは0.1~10wt%、さらに好ましくは1~10wt%である。
<モノテルペン類>
本発明に用いるモノテルペン類は、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品において用いられるモノテルペン類であれば特に制限されないが、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、オイゲノール、シネオール、チモール、ビサボロール、α-ピネン、又はリモネンを例示することができる。好ましくはメントール又はカンフル、より好ましくはメントールである。これらのモノテルペン類は、天然品、合成品のいずれも利用することができ、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。なかでも、l-メントール又はdl-カンフルが好ましく、l-メントールがより好ましい。これらのモノテルペン類は、モノテルペン類を含有する精油として使用することもでき、例えば、ユーカリ油、ハッカ油、チョウジ油、ケイヒ油、ペパーミント油、ミント油、ティーツリー油、カモミール油、ローズマリー油、レモン油、オレンジ油、タイム油、セージ油、クローブ油等を例示することができる。好ましくはユーカリ油、ハッカ油又はティーツリー油であり、より好ましくはユーカリ油又はハッカ油等として、使用してもよい。これらのモノテルペン類は1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。モノテルペン類の含有量は、組成物全量に対して、通常0.001~20wt%、好ましくは0.001~10wt%、特に好ましくは0.01~5wt%の範囲で用いることができる。これらのモノテルペン類は、清涼化剤としても機能する。
<角質軟化剤>
また、角質軟化剤を配合することにより、白癬菌による皮膚のかさかさやひび割れを改善するとともに、皮膚の角質を柔らかくし、抗真菌剤等の有効成分の浸透を助けることが可能となる。本発明に用いる角質軟化剤としては、尿素等が挙げられる。なお、サリチル酸は、皮膚への使用において刺激を与えることが報告されていることからも、それを含まないことが望ましい。角質軟化剤の含有量は、その有効性及び製剤の性状安定性の観点から、組成物全量に対して、通常0.1~20wt%、好ましくは0.5~10wt%、より好ましくは1~5wt%の範囲で用いることができる。
【0019】
<油性基剤など>
本発明のクリーム剤は、油性基剤、多価アルコール、ゲル化剤、水等を含むことができる。油性基剤としては、高級アルコール、高級脂肪酸及びその誘導体、流動パラフィン、
ワセリン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0020】
高級アルコールは、炭素数10~20個のアルコールであり、好ましくは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、コレステロール、フィトステロールが好ましい。
【0021】
高級脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、
ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸があげられる。油性基剤の含有量は、好ましくは組成物全量に対し20wt%以下であり、より好ましくは15wt%以下であり、さらに好ましくは10wt%以下であり、特に好ましくは7wt%以下である。
【0022】
多価アルコールとしては、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野において外用剤の成分として用いられるものであれば特に限定されない。多価アルコールは、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコールなどが例示される。本発明の効果をより顕著に奏する観点から好ましいものは、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールである。
【0023】
<有機酸>
有機酸として、例えば、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、
酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸等が挙げられる。有機酸は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。有機酸は、製剤として塗布しやすく、
表面にべたつきが生じない範囲で含有させることができる。
【0024】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレン(23)セチルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート60、ポリソルベート80等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸グリセリン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸ポリオキシル40等)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、リン脂質(例えば、レシチン等)、サーファクチン、サポニン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0025】
<増粘剤>
増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系高分子、; ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系高分子から選択された1種又は2種以上を用いることが好ましい。また、ヒアルロン酸・ヒアルロン酸誘導体・およびこれらの塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖系高分子; カラギーナン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天のような海藻類系高分子; キサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、デキストラン、スクレロチウムガム、ジェランガム等の微生物由来高分子; ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、コーンスターチ等のデンプン系高分子; コラーゲン等のアミノ酸系高分子; 及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのその他の水溶性高分子からなる群より選択される少なくとも1種も添加可能である。
【0026】
増粘剤の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、組成物全量当たり0.05~10.0wt%、好ましくは0.05~5.0wt%、より好ましくは0.05~3.0wt%、特に好ましくは、1.0~2.5wt%である。
【0027】
<キレート剤>
キレート剤としては、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA-2Naなど)、カリウム塩など)、エデト酸ナトリウム水和物フィチン酸、グルコン酸、ポリリン酸、メタリン酸などが挙げられる。
【0028】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン塩基、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩基、アンモニア、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基などが挙げられる。
【0029】
特に、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを使用した場合には、乳化安定性及び適度な粘性の観点から、pH調整剤としてジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択された1種又は2種以上を使用することが好ましい。pH調整剤としてジイソプロパノールアミン又はトリエタノールアミンを用いた場合の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、組成物全量当たり0.01~5.0wt%、好ましくは0.01~3.0wt%、より好ましくは、前記各範囲内において増粘剤の含有量よりも少ない含有量である。また、pH調整剤として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いた場合の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、組成物全量当たり0.01~1.0wt%とすることが好ましく、より好ましくは、前記各範囲内において増粘剤の含有量よりも少ない含有量である。
【実施例0030】
以下に本発明の皮膚外用クリーム剤の効果を実施例及び比較例により説明する。なお、
本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0031】
(1)実施例1~実施例2及び比較例1~比較例2
以下の表1(pH数値以外は、組成物全体を基準としたwt%を表す。)に示す処方に従い、テルビナフィン塩酸塩又はケトコナゾール、リドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、l-メントール及びクロタミトンを含有する皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このうち、比較例1,比較例2は、pH調整剤として無機酸であるリン酸を使用し、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)は含有させないものである。
【0032】
このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、各製剤の性状を評価した。評価基準は、4段階評価とし、図1に示すように製剤全体に分離がなく安定性が良好かつ患部に塗布しやすい粘度を有するものをA、製剤に分離がなく安定性はあるがやや粘度が弱いものをB、製剤に分離がなく安定性はあるがやや粘度が強いものをC、図2に示すように製剤の大部分に分離があるもの又はそれに通じる物性変化があるものをDとした。性状評価において、製造直後及び加温後のいずれかに評価基準Dがあるものは、皮膚外用クリーム剤として不適格である。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示した結果からわかるように、実施例1,実施例2においては、製造直後の物性は添加前と同等であり、さらに加温後も分離せず安定していたことから、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)の添加効果は顕著に現れることが分かった。また、抗真菌剤として、テルビナフィン塩酸塩又はケトコナゾールを使用した場合、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。
【0035】
これに対し、比較例1,比較例2では、加温後分離が見られ、安定性の懸念が生じた。すなわち、本発明の効果は、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより顕著に表れることが分かる。
【0036】
(2)実施例3~実施例12及び比較例3~比較例8
以下の表2は、カルボキシビニルポリマー又はジイソプロパノールアミンの含有量を変化させた場合の実施例3~実施例12の効果を示す。すなわち、以下の表2に示す処方に従い、テルビナフィン塩酸塩、リドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、l-メントール及びクロタミトンを含有する皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。
このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示した結果からわかるように、実施例3~実施例12では、クロタミトンを組成物全量当たり5.0wt%含有した場合において、カルボキシビニルポリマーを組成物全量当たり1.0~5.0wt%、かつ、ジイソプロパノールアミンを組成物全量当たり0.1~5.0wt%としたため、性状評価において、製造直後及び加温後のいずれについても評価基準Dを含まないことが確認された。特に、実施例3から実施例7では、カルボキシビニルポリマーを組成物全量当たり1.0~2.5wt%、ジイソプロパノールアミンを組成物全量当たり0.1~3.0wt%としたものは、さらに好ましい結果が得られたことから、製造直後に患部に塗布しやすい適度な触感を保ちつつ、加温条件下での乳化安定性が向上していることが確認された。
【0039】
実施例8及び実施例10と比較例6とから分かるように、ジイソプロパノールアミンの含有量が組成物全量当たり3wt%と多くなった場合には、ジイソプロパノールアミンの含有量がカルボキシビニルポリマーの含有量よりも少ない場合に適度な触感と乳化安定性が向上していることが確認された。実施例4、実施例9及び実施例11から分かるように、ジイソプロパノールアミンの含有量がカルボキシビニルポリマーの含有量よりも多い場合であっても、カルボキシビニルポリマーの含有量が1.0~4.8wt%であれば、適度な触感と乳化安定性が向上する。実施例8~実施例12と比較例7及び比較例8から分かるように、カルボキシビニルポリマーの含有量が3.5~5.0wt%と多くなった場合には、ジイソプロパノールアミンを0.1wt%以下のように少量ではなく、1.0~5.0wt%加えないとD評価となる。また、実施例8~実施例12のように、カルボキシビニルポリマーとジイソプロパノールアミンの両方の含有量を多量にしても、C評価にとどまり、実施例3~7の方が好ましい結果となることが分かった。
【0040】
(3)テルビナフィン塩酸塩又はクロタミトンの含有量の変化
以下の表3は、実施例1において、テルビナフィン塩酸塩又はクロタミトンの含有量を変化させた場合の実施例13~実施例20、実施例35及び実施例36の効果を示す。すなわち、実施例13~実施例15は、実施例1で1.0wt%であったテルビナフィン塩酸塩の量を0.5wt%、0.1wt%、2.0wt%に変更したものである。実施例16~実施例20、実施例35及び実施例36は、実施例1で5.0wt%であったクロタミトンの量を1.0wt%、2.0wt%、3.0wt%、8.0wt%、10.0wt%、12.5wt%、15.0wt%に変更したものである。他の成分であるリドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、l-メントール及びクロタミトンについては、前記実施例と同様として、皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0041】
【表3】
【0042】
表3から分かるように、実施例13~実施例20、実施例35及び実施例36の範囲内において、テルビナフィン塩酸塩又はクロタミトンの含有量を変化させた場合であっても、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)とpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)の添加効果は顕著に現れることが分かった。
【0043】
(4)クロタミトンの含有量を組成物全量当たり1.0wt%とした場合 以下の表4は、実施例3において、クロタミトンの含有量を組成物全量当たり1.0wt%とした場合の実施例21~実施例27の効果を示す。すなわち、実施例21~実施例27は、実施例3で5.0wt%であったクロタミトンの量を1.0wt%に変更した。
そして、実施例21~実施例24は、実施例3で1.0wt%であったカルボキシビニルポリマーの量を0.5wt%、0.3wt%、0.1wt%、0.05wt%に変更したものである。また、実施例25~実施例27は、実施例3で0.3wt%であったジイソプロパノールアミンの量を0.1wt%、0.05wt%、0.01wt%に変更したものである。他の成分であるリドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、l-メントールについては、前記実施例と同様として、皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0044】
【表4】
【0045】
表4に示した結果からわかるように、実施例21~実施例24では、製造直後の物性は製剤に分離がなく安定性があり、加温後も同様であったことから、クロタミトンの含有量を組成物全量当たり1.0wt%と少量にした場合には、カルボキシビニルポリマーの分量も0.05wt%まで少量にしても、本発明の効果が得られることが確認された。また、実施例25~実施例27では、製造直後の物性は良好であり、加温後も同様に良好な結果であったことから、クロタミトンの含有量を組成物全量当たり1.0wt%と少量にした場合には、ジイソプロパノールアミンの分量も0.01wt%まで少量にしても、本発明の効果が得られることが確認された。
【0046】
(5)他のpH調整剤の使用
以下の表5に示す実施例28~実施例34は、pH調整剤として、前記の実施例に示した有機塩基であるジイソプロパノールアミンに代えて、無機塩基である水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、有機塩基であるトリエタノールアミンを含有させたものである。すなわち、実施例28~31は、実施例5のジイソプロパノールアミンを水酸化ナトリウムに変え、その量を0.01wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%とした。
また、実施例32は、クロタミトンの量を1.0wt%に変え、水酸化ナトリウムの量を0.01wt%とした。実施例33は、実施例5のジイソプロパノールアミンを水酸化カリウムに変え、その量を0.1wt%とした。実施例34は、実施例5のジイソプロパノールアミンをトリエタノールアミンに変え、その量を0.5wt%とした。他の成分であるテルビナフィン塩酸塩、リドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール及びl-メントールについては、前記実施例と同様として、皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0047】
【表5】
【0048】
表5に示した結果からわかるように、実施例28~実施例34では、製造直後の物性は添加前と同等であり、さらに加温後も分離せず安定していたことから、pH調整剤が変わった場合においても、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)とpH調整剤(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)の添加効果は顕著に現れることが分かった。特に、実施例28及び実施例32によれば、クロタミトンの分量が5.0wt%、1.0wt%のいずれの場合でも、少量の水酸化ナトリウムを含有させることにより、良好な結果を得ることが分かった。以上のとおり、pH調整剤として、無機塩基である水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、有機塩基であるトリエタノールアミンを使用した場合であっても、カルボキシビニルポリマーと組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。
【0049】
(6)他の抗真菌剤及び抗ヒスタミン剤の使用とクロタミトンの含有量の変化
以下の表6に示す実施例37~実施例44及び比較例9、10は、抗真菌剤として、前記の実施例に示したテルビナフィン塩酸塩に代えて、ミコナゾール硝酸塩又はビホナゾールを含有させ、抗ヒスタミン剤であるジフェンヒドラミン塩酸塩に代えて、クロルフェニラミンマレイン酸塩を含有させたものである。すなわち、実施例37~40及び比較例10は、実施例16~実施例20のテルビナフィン塩酸塩をミコナゾール硝酸塩に変え、ジフェンヒドラミン塩酸塩をクロルフェニラミンマレイン酸塩に代え、クロタミトンの含有量を1wt%、5.0wt%、10.0wt%、12.5wt%、15.0wt%とした。
また、実施例41~44及び比較例10は、実施例16~実施例20のテルビナフィン塩酸塩をビホナゾールに変え、ジフェンヒドラミン塩酸塩をクロルフェニラミンマレイン酸塩に代え、クロタミトンの含有量を1wt%、5.0wt%、10.0wt%、12.5wt%、15.0wt%とした。他の成分であるリドカイン、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール及びl-メントールについては、前記実施例と同様として、皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0050】
【表6】
【0051】
表6に示した結果からわかるように、実施例37~実施例40においては、製造直後の物性は添加前とほぼ同等であり、さらに加温後も分離せず安定していた。よって、抗真菌剤として、ミコナゾール硝酸塩を用いた場合において、クロタミトンの添加量が変化したときでも、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。また、実施例41~実施例44においては、製造直後の物性はあまり良好な結果でないものも含まれるものの、加温後はほぼ分離せず安定していた。よって、抗真菌剤として、ビホナゾールを用いてクロタミトンの添加量を適宜調整し、さらに増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。
【0052】
これに対し、比較例9及び比較例10では、製造直後及び加温後において分離が見られ、安定性の懸念が生じた。すなわち、クロタミトンの含有量が組成物全量に対して15wt%を超えると、性状評価において良好なものもあれば分離してしまうものもあるため、クロタミトンの含有量は、組成物全量に対して好ましくは0.1~15wt%以下であり、実用化の観点からより好ましくは0.1~10wt%が良いことが確認された。
【0053】
(7)他の抗真菌剤の使用とカルボキシビニルポリマーの添加の有無及び配合量
以下の表7に示す実施例45~実施例52及び比較例11~比較例15は、抗真菌剤として、前記の実施例に示したテルビナフィン塩酸塩に代えて、ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ラノコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩又はクロトリマゾールを含有させ、抗ヒスタミン剤としてジフェンヒドラミン塩酸塩又はクロルフェニラミンマレイン酸塩を含有させ、カルボキシビニルポリマーの添加の有無及び配合量を変化させたものである。すなわち、実施例45は、実施例2のケトコナゾールの添加量を2.0wt%とした。比較例11及び実施例46、実施例47は、実施例1のテルビナフィン塩酸塩をミコナゾール硝酸塩に変えた。また、比較例11及び実施例46は、ジフェンヒドラミン塩酸塩を添加し、実施例47は、クロルフェニラミンマレイン酸塩を添加した。実施例47は、カルボキシビニルポリマーを3.5wt%、ジイソプロパノールアミンを3.0wt%とした。なお、比較例11は、pH調整剤として無機酸であるリン酸を使用し、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)は含有させないものである。
【0054】
比較例12及び実施例48、実施例49は、実施例1のテルビナフィン塩酸塩をビホナゾールに変えた。また、比較例12及び実施例48は、ジフェンヒドラミン塩酸塩を添加し、実施例49は、クロルフェニラミンマレイン酸塩を添加した。実施例49は、カルボキシビニルポリマーを3.5wt%、ジイソプロパノールアミンを3.0wt%とした。
なお、比較例12は、pH調整剤として無機酸であるリン酸を使用し、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)は含有させないものである。
【0055】
比較例13及び実施例50は、実施例1のテルビナフィン塩酸塩をラノコナゾールに変え、ジフェンヒドラミン塩酸塩を添加した。比較例14及び実施例51は、実施例1のテルビナフィン塩酸塩をオキシコナゾール硝酸塩に変え、ジフェンヒドラミン塩酸塩を添加した。比較例15及び実施例52は、実施例1のテルビナフィン塩酸塩をクロトリマゾールに変え、ジフェンヒドラミン塩酸塩を添加した。
なお、比較例13~比較例15は、pH調整剤として無機酸であるリン酸を使用し、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)は含有させないものである。
【0056】
他の成分であるリドカイン、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール及びl-メントールについては、前記実施例と同様として、皮膚外用クリーム剤を常法により製造した。このようにして得られた製剤を、製造直後及び50℃の加温状態で2週間保存した後、実施例1~実施例2と同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0057】
【表7】
【0058】
表7に示した結果からわかるように、実施例45~実施例52においては、製造直後の物性は添加前と同等であり、さらに加温後も分離せず安定していたことから、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)の添加効果は顕著に現れることが分かった。また、抗真菌剤として、ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ラノコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩又はクロトリマゾールを使用した場合、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。
【0059】
これに対し、比較例11~比較例15では、加温後分離が見られ、安定性の懸念が生じた。すなわち、本発明の効果は、増粘剤(カルボキシビニルポリマー)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより顕著に表れることが分かる。
【0060】
(8)増粘剤としてセルロース系高分子を含む場合
以下の表8に示す実施例53~実施例57は、増粘剤として、前記の実施例に示したアクリル酸系高分子であるカルボキシビニルポリマーに加えて、セルロース系高分子であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H)を添加した。具体的には、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、増粘剤、pH調整剤、その他の成分及び配合量を、以下の表8に示すとおりとし、前記の実施例と同様に製造し、同様の評価基準を用いて各製剤の性状を評価した。
【0061】
【表8】
【0062】
表8の結果から、実施例53~実施例57においては、製造直後の物性は添加前と同等であり、さらに加温後も分離せず安定していた。よって、増粘剤として、アクリル酸系高分子に加えて、セルロース系高分子を含む場合において、増粘剤(カルボキシビニルポリマー及びヒドロキシプロピルセルロース)と有機塩基からなるpH調整剤(ジイソプロパノールアミン)を組み合わせることにより、本発明の効果が得られることが確認された。
図1
図2