IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060083
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】インダクター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240423BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240423BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F27/32 130
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041467
(22)【出願日】2024-03-15
(62)【分割の表示】P 2022100748の分割
【原出願日】2017-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0002463
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ボウム セオック
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ビョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ボン、カン ウク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュル、ヤン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジョウン グル
(57)【要約】
【課題】製造工程の限界を解消し、高いアスペクト比を有するコイルのアラインメントを改善したインダクター及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のインダクターは、支持部材、コイル、及び封止材を含む本体と、その本体の外部面上に配置される外部電極と、を含む。上記本体内の上記コイルは、複数のコイルパターンが連続するように構成されており、上記コイルパターンは第1コイル層及び第2コイル層を含み、上記封止材は、上記第1コイル層の間で上記支持部材に向かう方向に延びるように配置される。また、本発明のインダクターの製造方法は、上記インダクターを製造するためのものであって、特に、第2コイル層の下に配置される第1コイル層を形成する時に、先ず、支持部材の一面を全体的にコーティングするように配置した後、第2コイル層を形成してから上記第1コイル層の一部を除去する工程を適用する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体内部に配置された支持部材、及び前記支持部材により支持されるコイルと、
前記本体の外部面における前記支持部材の側面に接して配置される外部電極と、を含むインダクターであって、
前記コイルは複数のコイルパターンを含み、前記複数のコイルパターンのそれぞれは、第1コイル層と、前記第1コイル層上に配置される第2コイル層と、を含み、
前記本体は、磁性粒子が樹脂に充填された複合体を有し、
前記複合体は、前記第1コイル層の間で前記支持部材に向かう方向に延びるように配置され、
前記複数のコイルパターンの表面は、ペリレンを含む絶縁層によりコーティングされ、
互いに隣接する前記絶縁層の間において、前記支持部材上に前記絶縁層が形成されていない、
インダクター。
【請求項2】
本体と、前記本体内部に配置された支持部材、及び前記支持部材により支持されるコイルと、
前記本体の外部面における前記支持部材の側面に接して配置される外部電極と、を含むインダクターであって、
前記コイルは複数のコイルパターンを含み、前記複数のコイルパターンのそれぞれは、第1コイル層と、前記第1コイル層上に配置される第2コイル層と、を含み、
前記本体は、磁性粒子が樹脂に充填された複合体を有し、
前記複合体は、前記第1コイル層の間で前記支持部材に向かう方向に延びるように配置され、
前記複数のコイルパターンの表面は、ペリレンを含む絶縁層によりコーティングされ、
前記本体を前記本体の厚さ方向に見た場合における、最外周の前記コイルパターンと、前記最外周の前記コイルパターンの表面にコーティングされた前記絶縁層とが、前記外部電極に接する、
インダクター。
【請求項3】
本体と、前記本体内部に配置された支持部材、及び前記支持部材により支持されるコイルと、
前記本体の外部面における前記支持部材の側面に接して配置される外部電極と、を含むインダクターであって、
前記コイルは複数のコイルパターンを含み、前記複数のコイルパターンのそれぞれは、第1コイル層と、前記第1コイル層上に前記支持部材と離隔して配置される第2コイル層と、を含み、
前記支持部材の一方の面上に、一の前記第1コイル層と、一の前記第1コイル層上に前記支持部材と離隔して一の前記第2コイル層とが配置され、
前記支持部材の他方の面上に、他の前記第1コイル層と、他の前記第1コイル層上に前記支持部材と離隔して他の前記第2コイル層とが配置され、
前記本体は、磁性粒子が樹脂に充填された複合体を有し、
前記複合体は、前記第1コイル層の間で前記支持部材に向かう方向に延びるように配置され、
前記本体は、前記支持部材と前記コイルとを封止する前記複合体である封止材を含み、
前記支持部材の、前記側面と異なる他の側面は、前記封止材に接する、
インダクター。
【請求項4】
前記複数のコイルパターンの表面は絶縁層によりコーティングされる、請求項3に記載のインダクター。
【請求項5】
前記絶縁層は、その下に配置されるコイルパターンの外表面の形状に応じて構成される、請求項1、2および4のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項6】
前記絶縁層はペリレンを含む、請求項4に記載のインダクター。
【請求項7】
互いに隣接する前記絶縁層の間の空間内に前記本体が充填されている、請求項1、2および4から6のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項8】
前記第1コイル層の上面の幅は、前記第2コイル層の下面の幅と同一である、請求項1から7のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項9】
前記コイルのアスペクト比は2以上20以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項10】
互いに隣接する前記第1コイル層間の平均距離は、互いに隣接する第2コイル層間の平均距離と同一である、請求項1から9のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項11】
前記第1コイル層と前記第2コイル層は互いに異なる材料で構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項12】
前記第1コイル層は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びモリブデン(Mo)のうちの一つ以上を含み、
前記第2コイル層は銅(Cu)を含む、
請求項11に記載のインダクター。
【請求項13】
前記支持部材はビアホールを含み、前記ビアホールが電気伝導性を有する材料で充填されて貫通ビアが形成され、前記貫通ビアは、前記貫通ビア上に配置される前記第1コイル層の下面と不連続的に配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載のインダクター。
【請求項14】
前記貫通ビアの材料は、前記第1コイル層の材料と異なる、請求項13に記載のインダクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクター及びその製造方法に関するもので、特に小型及び高容量の要求特性に有利な薄膜型パワーインダクター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IT技術の発展に伴い、装置の小型化及び薄膜化が加速化しており、これに伴って、小型薄型素子に対する市場の要求が増加している。
【0003】
このような技術傾向に対応すべく、下記の特許文献1では、ビアホールを有する基板と、上記基板の両面に配置され、上記基板のビアホールを介して電気的に連結されるコイルと、を含むパワーインダクターを提供することで、均一で、且つアスペクト比の高いコイルを有するインダクターを提供するために努力していた。しかし、製造工程の限界により、均一で且つアスペクト比の高いコイルを形成するには、依然として限界がある状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第1999-0066108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、上記限界を解消し、高いアスペクト比を有するコイルのアラインメント(Alignment)を改善したインダクター及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例によるインダクターは、支持部材、上記支持部材により支持されるコイル、及び上記支持部材とコイルを封止する封止材を含む本体と、上記本体の外部面に配置される外部電極と、を含む。上記コイルは複数のコイルパターンを含み、それぞれのコイルパターンは、第1コイル層と、上記第1コイル層上に配置される第2コイル層と、を含む。上記封止材は、磁性粉末を含み、互いに隣接するコイルパターンの間の空間内に充填されており、上記封止材は、上記第1コイル層の間で上記支持部材に向かう方向に延びるように配置される。
【0007】
本発明の他の例によるインダクターの製造方法は、ビアホールを含む支持部材を準備する段階と、上記支持部材の少なくとも一面上及び上記ビアホール内に導電性金属層を形成する段階と、上記支持部材の上記一面上の導電性金属層を剥離する段階と、上記支持部材の上記一面上に第1金属層を形成する段階と、上記第1金属層上に絶縁材を配置する段階と、上記絶縁材が複数の隔壁パターンを有するようにパターニングする段階と、上記隔壁パターンの間の空間内に第2金属層を形成する段階と、上記絶縁材、及びその下に配置される第1金属層の少なくとも一部を同時に除去する段階と、上記第2金属層、及びその下に配置される第1金属層の露出表面を全て囲むように絶縁層をコーティングする段階と、上記第1及び第2金属層を封止するように封止材を充填する段階と、上記封止材の外部上に外部電極を形成する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の様々な効果の一効果として、高いアスペクト比を有するコイルを構成する際に、コイルのアラインメントを改善することで、高容量化及び小型化されたインダクターの生産を増加させることができることである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一例によるインダクターの概略的な斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿って切断した概略的な断面図である。
図3a】比較例として、通常の薄膜インダクターの製造方法を概略的に示す工程図である。
図3b】比較例として、通常の薄膜インダクターの製造方法を概略的に示す工程図である。
図3c】比較例として、通常の薄膜インダクターの製造方法を概略的に示す工程図である。
図3d】比較例として、通常の薄膜インダクターの製造方法を概略的に示す工程図である。
図4a】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4b】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4c】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4d】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4e】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4f】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4g】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4h】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
図4i】本発明の他の例によるインダクターの製造方法の一例を概略的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0011】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0012】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0013】
以下では、本発明の一例によるインダクター及びその製造方法を説明するが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0014】
インダクター
図1は本発明の一例によるインダクターの概略的な斜視図であり、図2図1のI-I'線に沿って切断した概略的な断面図である。
【0015】
図1及び図2を参照すると、本発明の一例によるインダクター100は、本体1と、上記本体の外部面上に配置される第1及び第2外部電極21、22と、を含む。
【0016】
先ず、第1及び第2外部電極21、22について説明する。上記第1及び第2外部電極は、電気伝導性に優れた金属を含み、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、または銀(Ag)などの単独またはこれらの合金などを含むことができる。第1及び第2外部電極を形成する方式や具体的な形状は制限されず、例えば、ディッピング(dipping)法によりアルファベットのC字状に構成することができる。
【0017】
次に、上記本体1はインダクターの外観を成すものであって、厚さ(T)方向に互いに対向する上面及び下面、長さ(L)方向に互いに対向する第1面及び第2面、幅(W)方向に互いに対向する第3面及び第4面を含み、実質的に六面体であることができるが、これに限定されるものではない。ここで、厚さ方向に延びる長さを「厚さ」または「高さ」と称する。
【0018】
上記本体1は、支持部材11、上記支持部材により支持されるコイル12、及び上記支持部材と上記コイルを封止する封止材13を含む。
【0019】
先ず、上記封止材13は磁性粒子を含み、上記磁性粒子は、例えば、鉄(Fe)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される一つ以上であってもよく、フェライトであってもよい。また、上記封止材は、磁性粒子が樹脂に充填された磁性粒子-樹脂の複合体で構成されることができる。
【0020】
次に、上記支持部材11について説明する。上記支持部材は、コイルをより薄型に、且つより容易に形成するためのものである。上記支持部材は、絶縁樹脂からなる絶縁基材であることができる。この際、絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂、またはこれらにガラス繊維または無機フィラーなどの補強材が含浸された樹脂、例えば、プリプレグ(preprag)、ABF(Ajinomoto Build-up Film)、FR-4、BT(Bismaleimide Triazine)樹脂、PID(Photo Imageable Dielectric)樹脂などが用いられることができる。支持部材にガラス繊維が含まれる場合、より優れた剛性を有することができる。
【0021】
上記支持部材の中央部には貫通孔Hが形成されることができ、上記貫通孔が磁性特性を有する材料で充填されて、コア部が形成されることができる。
【0022】
また、上記支持部材は、上記支持部材の上面から下面まで貫通する貫通ビア11aを含むことができる。上記貫通ビア11aは、支持部材内にビアホールを加工した後、上記ビアホール内に伝導性物質を充填することで形成することができる。
【0023】
一方、上記支持部材の上面及び下面上にはコイル12が支持され、上記コイルは複数のコイルパターン121を含む。上記コイルパターン121は、第1コイル層121aと、上記第1コイル層上に配置される第2コイル層121bと、を含む。
【0024】
上記第1コイル層121aは、第2コイル層を基準として、シード層(seed layer)の機能を担う層である。通常、シード層は、その上に配置されるめっき層により全体の外部表面が覆われる構造を有する。但し、本発明のインダクターのコイルパターンの第1コイル層は、その上面のみが、その上に配置される第2コイル層によって全体的に覆われ、その側面の少なくとも一部は、その上に配置される第2コイル層によって覆われず、磁性特性を有する封止材13によって覆われる。封止材内の磁性粒子とコイルパターンとの絶縁のために、コイルパターンに絶縁層がさらにコーティングされ得ることは言うまでもない。第1コイル層の上面が第2コイル層の下面と当接するように構成され、第1コイル層の側面は第2コイル層によって覆われないため、第1コイル層の上面の幅は第2コイル層の下面の幅と実質的に同一である。
【0025】
また、図2を参照すると、互いに隣接した第1コイル層間の平均距離は、互いに隣接した第2コイル層間の平均距離と実質的に同一である。これは、第1及び第2コイル層からなるコイルパターンのアスペクト比を十分に増加させることができることを意味する。通常、支持部材と接するように配置されるシード層間の平均距離が、その上に配置されるめっき層間の平均距離より大きいが、この場合、めっき層間の距離を均一且つ一定水準以上に維持させることが非常に難しい。そのため、めっき層を厚さ方向に成長させるのに限界があり、アスペクト比を十分に増加させることができない。
【0026】
従来技術と異なって、第1コイル層間の平均距離が第2コイル層間の平均距離と実質的に同一であるため、コイルパターンのアスペクト比を均一且つ安定して増加させることができる。具体的に、上記コイルのアスペクト比は2以上20以下であることができる。上記アスペクト比が2より小さい場合には、コイルの電気的特性などを改善する効果が大きくなく、20より大きい場合には、コイルパターンの形成工程でコイルパターンの崩れや支持部材の反りが発生するなど、工程上の難しさが存在し得る。
【0027】
一方、上記第1コイル層及び上記第2コイル層は、互いに同一の材料で構成されてもよいが、互いに異なる材料で構成されることがより好ましい。上記第1及び第2コイル層に適用可能な材料としては、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、及びアルミニウム(Al)のうちの一つ以上を含むことができる。特に、第1コイル層はチタン(Ti)またはニッケル(Ni)を含み、その上に配置される第2コイル層は銅(Cu)を含むことが好ましい。これは、電気伝導性、経済性、工程容易性の全てを考慮した上で適用可能な一実施形態である。そのため、第1コイル層、及び上記第1コイル層の少なくとも一部と接触される貫通ビアは、互いに異なる材料で構成されることができ、同様に、第1コイル層はチタン(Ti)またはニッケル(Ni)を含み、貫通ビアは銅(Cu)を含むことができる。この場合、第1コイル層と貫通ビアとの間には境界面が存在し、互いに不連続的に配置される。参考として、通常のインダクターの構造では、貫通ビア、及びその貫通ビアと連結されるシード層が同時に形成され、その構成要素間の区別が不可能であって、互いに連続的に構成されるが、本発明のインダクターでは、貫通ビア、及びその上に第1コイル層が互いに異なる工程により形成されるため、その構成要素間の区別が可能であって、互いに不連続的に構成される。
【0028】
上記第1及び第2コイル層からなるコイルパターンの表面は絶縁層14によりコーティングされており、上記絶縁層14は、その下に配置されるコイルパターンの外表面の形状に応じて構成される。上記絶縁層がコイルパターンの外表面の形状に応じて構成されるということは、絶縁層が均一且つ薄く構成されることを意味する。上記絶縁層14としては、高分子の均一な絶縁膜を構成できる材料であれば制限されずに用いることができ、例えば、ポリ(パラ-キシリレン)(poly(p-xylylene))、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ(phenoxy)樹脂、ポリスルホン(polysulfone)樹脂、及びポリカーボネート(polycarbonate)樹脂、またはペリレン(perylene)系化合物の樹脂を含むことができる。特に、ペリレン系化合物を含む場合、化学気相蒸着方式を活用して均一且つ安定した絶縁層を実現することができるため好ましい。
【0029】
次に、上述の上記インダクターを製造する製造方法の一実施形態を説明し、上記インダクターの構造及びその構造から導出され得る技術上の効果をより詳細に説明する。
【0030】
インダクターの製造方法
本発明のインダクターの製造方法を説明する前に、図3aから図3dを参照して、通常の薄膜インダクターを製造する従来の製造方法を説明する。
【0031】
先ず、図3aは、ビアホール51が形成された支持部材5を準備し、上記支持部材の上面の少なくとも一部に銅シード層61を形成することを示す。この場合、上記銅シード層61は、上記支持部材のビアホールの内部まで連続的に延びるように構成されていることが分かる。
【0032】
図3bは、上記銅シード層61上に銅めっき層62をさらに形成することを示す。アスペクト比を増加させるために、上記銅めっき層は異方性めっきにより構成することが一般的であるが、その銅めっき層の断面形状が均一ではなく、全体的に略キノコ状を有するように形成されるという問題がある。
【0033】
次に、図3cは、上記銅シード層と銅めっき層で構成されたコイル6の表面を絶縁するように絶縁層7を形成した後、磁性特性を有する封止材8で上記コイル及び支持部材を封止することを示す。
【0034】
図3dは、封止材で封止された支持部材及びコイルに対して仕上げ工程を行った後、外部電極91、92を形成することを示す。
【0035】
このように、通常の技術により薄膜インダクターを構成する場合、コイルが均一に成長しないため、コイルのアスペクト比の増加に限界がある状況である。
【0036】
次に説明する本発明の他の例によるインダクターの製造方法は、上記の問題点を解消することができる製造方法を提案するものであり、コイルのアスペクト比を2以上20以下の水準に著しく増加させることができるようにしたものである。さらに、特にコイルのアスペクト比の改善に決定的な役割を果たすコイルめっき層を形成する工程において、そのコイルめっき層の下に配置されるコイルシード層の位置と、コイルめっき層を形成する位置とのアラインメントが一致しないことによって発生し得る問題も予め防止することができるようにしたものである。上記アラインメントについての説明は、後述の図4eを参照して詳細に説明する。
【0037】
図4a~図4iは本発明の他の例によるインダクターの製造方法を説明するための図である。この際、説明の便宜のために、図3aから図3dの構成要素と対応する構成要素には、同一の図面符号を用いる。
【0038】
図4aを参照すると、ビアホール51が形成された支持部材5を準備した後、上記ビアホールが充填されて構成される貫通ビア52を形成するための銅シード層を形成する。上記銅シード層とは、支持部材の上面と上記ビアホール内に形成された導電性金属層を意味する。この場合、上記導電性金属層の材料が銅にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0039】
図4bを参照すると、図4aで形成した銅シード層のうち貫通ビアを除き、上記支持部材の上面上に配置された導電性金属層を剥離させる。次いで、上記導電性金属層が剥離された位置に第1金属層61を形成する。上記第1金属層を形成する方法は制限されず、均一且つ薄膜の金属層を形成することができる方法であればよい。例えば、スパッタリング(sputtering)、化学銅めっき、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition、CVD)などを用いることができる。上記第1めっき層の厚さは、当業者が設計変更により適宜構成することができ、例えば、50nm以上1μm以下であることができるが、特に限定されない。上記第1金属層の材料は特に限定されず、電気伝導性を有する材料であればよく、後述の第1金属層の一部を除去する段階を考慮すると、残留される第1金属層を最小化するために、チタン(Ti)またはニッケル(Ni)を主成分として含むことが好ましい。
【0040】
次に、図4cは、上記第1金属層上に絶縁材Rを配置することを示す。この際、絶縁材はエポキシ系化合物を含み、例えば、パーマネント(permanent)タイプの感光性絶縁物質として、ビスフェノール系エポキシ樹脂を主成分とする感光性物質を含むことができる。また、上記絶縁材は、複数の絶縁シートがラミネートされた構造を有することができることは言うまでもない。
【0041】
図4dは、上記絶縁材が複数の隔壁パターンを有するようにパターニングする段階を示す。パターニングする方法は、印刷法、フォトリソグラフィ法など、限定されないが、例えば、絶縁材上に選択的露光及び現像を行うことで、所望の隔壁パターンを形成することができる。この際、隔壁パターンのアスペクト比は略100の水準に非常に高く構成されることができる。これは、隔壁パターンの幅に比べて厚さが著しく高いということを意味し、後述するコイルの微細線幅化を可能とする。
【0042】
図4eは、図4dで形成した隔壁パターンの間に第2めっき層62を形成する段階を示す。この際、第2めっき層に対して第1めっき層がシード層の役割を果たすため、第1めっき層と第2めっき層とのアラインメントが重要な問題となる。本発明のインダクターの製造方法による場合、第1めっき層が支持部材の上面上に連続的に配置されているため、隔壁パターンの開口部や第2めっき層の形成位置に制約が大きくない。その結果、第1及び第2めっき層で構成されるコイルパターン6の間の微細線幅化が容易になる。図4eにおいて、第2めっき層の上面がその側面に接する隔壁パターンの上面より高く位置する場合には、隣接する第2めっき層間のショートを防止するために研磨工程が要求され得る。上記研磨工程としては、機械的研磨や化学的研磨が適用可能であり、当業者が設計要件に応じて適宜設計変更することができる。一方、第2めっき層の上面がその側面に接する隔壁パターンの上面より低く位置し、アンダープレーティング(underplating)された場合には、上記研磨工程は省略され得る。
【0043】
図4fは、絶縁材と、その絶縁材の下に配置される第1めっき層とを同時に除去することを示す。この際、第1めっき層のうち、第2めっき層の下に配置される第1めっき層は除去されない。上記絶縁材及び第1めっき層を除去する方法としては、例えば、レーザートリミング(Laser Trimming)を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
次に、図4gは、図4fの絶縁材、及びその絶縁材の下に配置される第1めっき層を除去した後に残った残留物を洗浄することを示す。第2めっき層、及びその下に配置される第1めっき層で構成されるコイルパターンは、絶縁材の隔壁パターンの開口部と対応する形状を有する。そのため、第1及び第2めっき層の断面は、厚さ方向に沿って変更されずに実質的に同一の断面を構成する。これにより、コイルパターンのアスペクト比を大きく改善し、インダクターの全体的なサイズも小型化する。
【0045】
図4hは、第1及び第2めっき層で構成されたコイルパターン6の外部表面を高分子樹脂7でコーティングする段階を示し、例えば、CVDまたはスパッタリングを適用することができるが、具体的に限定されない。上記高分子樹脂は、一例として、ペリレン樹脂であって、互いに隣接するコイルパターン間のショートを防止する役割を果たす。
【0046】
図4iは、仕上げ工程として、磁性特性を有する封止材8で上記コイル及び支持部材を封止し、封止材で封止された支持部材及びコイルに対してダイシング工程を行った後、外部電極91、92を形成することを示す。
【0047】
上記の説明を除き、上述の本発明の一例によるインダクターの特徴と重複される説明はここで省略する。
【0048】
上述のインダクター及びインダクターの製造方法を用いる場合、コイルのアスペクト比を著しく増加させるとともに、コイルパターン間の微細線幅化を実現してチップサイズを小型化することができる。特に、均一なコイルパターンを構成するために要求される隔壁パターンを有する絶縁材の開口部と、その開口部の間にコイルパターンを充填するために要求されるシード層とのアラインメントの感受性を著しく低めることで、アラインメントずれの問題を完全に解消することができる。これにより、インダクターの製造収率を増加させ、製造収率の増加によるコスト競争力の確保も期待することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【0050】
一方、本発明で用いられた「一例」または「他の一例」という表現は、互いに同一の実施例を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかしながら、上記提示された一例は、他の一例の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一例で説明された事項が他の一例で説明されていなくても、他の一例でその事項と反対であるか矛盾する説明がない限り、他の一例に関連する説明であると理解されることができる。
【0051】
なお、本発明で用いられた用語は、一例を説明するために説明されたものであるだけで、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は文脈上明確に異なる意味でない限り、複数を含む。
【符号の説明】
【0052】
100 インダクター
1 本体
11 支持部材
12 コイル
13 封止材
21、22 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
図4i