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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060096
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20240423BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240423BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/26
B29C45/38 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042799
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2020111526の分割
【原出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 創平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 茂
(57)【要約】
【課題】ガスケット材料の射出圧力の設定の自由度を高めることができ、かつゲート跡が残らないガスケットの製造方法を提供する。
【解決手段】ガスケットとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティ521と、前記ガスケットとなる部分の周囲に複数設けられ、かつキャビティ521にガスケット材料を注入するゲート522と、を有する金型を用いて、前記成形体が基体110上に設けられる一体成形品を成形する射出成形工程と、前記金型から前記一体成形品を取り出した後に、複数のゲート522によりそれぞれ形成されるゲート跡を有する部位を全て抜き打ちにより一括して切断する切断工程と、を含み、ゲートは、基体の周囲に複数設けられており、切断工程においては、成形体の一部のみを切断することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケット材料が透過しない基体上に、前記ガスケット材料を用いてガスケットを一体的に設けるガスケットの製造方法において、
前記ガスケットとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティと、前記ガスケットとなる部分の周囲に複数設けられ、かつ前記キャビティに前記ガスケット材料を注入するゲートと、を有する金型を用いて、前記成形体が前記基体上に設けられる一体成形品を成形する射出成形工程と、
前記金型から前記一体成形品を取り出した後に、複数の前記ゲートによりそれぞれ形成されるゲート跡を有する部位を全て抜き打ちにより一括して切断する切断工程と、
を有し、
前記ゲートは、前記基体の周囲に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体の一部のみを切断することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項2】
ガスケット材料が透過しない基体上に、前記ガスケット材料を用いてガスケットを一体的に設けるガスケットの製造方法において、
前記ガスケットとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティと、前記ガスケットとなる部分の周囲に複数設けられ、かつ前記キャビティに前記ガスケット材料を注入するゲートと、を有する金型を用いて、前記成形体が前記基体上に設けられる一体成形品を成形する射出成形工程と、
前記金型から前記一体成形品を取り出した後に、複数の前記ゲートによりそれぞれ形成されるゲート跡を有する部位を全て抜き打ちにより一括して切断する切断工程と、
を有し、
前記ゲートは、前記基体の外周に沿い、かつ前記基体と対向する位置に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体のうち前記ゲート跡を有する部位と前記基体の一部を同時に切断することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項3】
前記ゲートは、前記基体の周囲に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体の一部のみを切断することを特徴とする請求項2に記載のガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記金型には、前記キャビティが設けられる領域において、前記金型における前記基体の載置面と前記基体との間の隙間を覆う覆い部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法。
【請求項5】
前記金型には、前記キャビティが設けられる領域において、前記金型における前記基体の載置面から前記基体が離れる方向に移動するのを規制するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法。
【請求項6】
前記キャビティは前記金型の型締め及び型開き方向に間隔を空けて複数設けられ、かつ、それぞれのキャビティに対応して個々に配される前記基体の周囲に、それぞれ前記ゲートが複数設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法。
【請求項7】
前記ゲートの内周面は円柱状であることを特徴とする請求項6に記載のガスケットの製造方法。
【請求項8】
前記キャビティのうち、前記ゲートから前記ガスケットとなる部分に至る前記ガスケット材料の通路の面積は、鉛直方向上方に配される前記キャビティよりも鉛直方向下方に配される前記キャビティの方が広くなるように構成されることを特徴とする請求項6または7に記載のガスケットの製造方法。
【請求項9】
前記ゲートは、前記キャビティの上方から前記ガスケット材料を注入する請求項1~8のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法。
【請求項10】
前記切断工程においては、前記基体の周囲に沿う切断線によって切断を行う請求項1~9のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上にガスケットを一体的に設けるガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を構成するセパレータに、ゴムなどの弾性体からなるガスケットを一体成形する技術が知られている。図12を参照して従来例に係るガスケットの製造方法について説明する。図12は従来例に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットの平面図である。
【0003】
セパレータ一体ガスケット700は、セパレータ710と、セパレータ710上に一体的に設けられるガスケット720とから構成される。このセパレータ一体ガスケット700は、セパレータ710をインサート部品として、インサート成形(射出成形)することによって得ることができる。成形品には、図中、楕円付近の一部を拡大した断面図に示すように、突起状のゲート跡Gや窪んだゲート跡Gが残ってしまう。ゲート跡Gが大きいと、製品としての品質に悪影響を及ぼしてしまうため、金型に設けるゲート面積の広さは制限されてしまう。そして、ゲート面積が小さいほど、キャビティに送り込まれるガスケット材料(ゴム材料など)の射出圧は小さくなってしまう。射出圧が小さいと、ガスケット材料が合流する部分に形成されるウエルドラインが大きくなり、場合によっては、ガスケット材料の充填不足となってしまい、不良品となってしまう。なお、図12に示すガスケット720においては、点線で囲んだ8か所のWの部分に目立ったウエルドラインが形成され易くなる。
【0004】
なお、セパレータ一体ガスケットに限らず、金属板に弾性体製のガスケットが一体的に設けられた金属ガスケットにおいても、同様の問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-174981号公報
【特許文献2】特開2008-146986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ガスケット材料の射出圧力の設定の自由度を高めることができ、かつゲート跡が残らないガスケットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
本発明のガスケットの製造方法は、
ガスケット材料が透過しない基体上に、前記ガスケット材料を用いてガスケットを一体的に設けるガスケットの製造方法において、
前記ガスケットとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティと、前記ガスケットとなる部分の周囲に複数設けられ、かつ前記キャビティに前記ガスケット材料を注入するゲートと、を有する金型を用いて、前記成形体が前記基体上に設けられる一体成形品を成形する射出成形工程と、
前記金型から前記一体成形品を取り出した後に、複数の前記ゲートによりそれぞれ形成されるゲート跡を有する部位を全て抜き打ちにより一括して切断する切断工程と、
を有し、
前記ゲートは、前記基体の周囲に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体の一部のみを切断することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、切断工程によって、ゲート跡を有する部位が全て切断されるため、ガスケットにはゲート跡が残らない。そして、ゲートは、成形体におけるガスケットとなる部分の周囲に複数設けられているため、ゲートの配置やゲート面積の設定自由度が高く、射出圧力の設定自由度を高めることができる。従って、ウエルドラインが目立つほど大きくなってしまうことを抑制でき、かつ、ガスケット材料の充填が不足してしまうことも抑制することができる。
【0010】
前記ゲートは、前記基体の周囲に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体の一部のみを切断する。
【0011】
前記金型には、前記キャビティが設けられる領域において、前記金型における前記基体の載置面と前記基体との間の隙間を覆う覆い部が設けられているとよい。
【0012】
これにより、基体のうちガスケットが設けられる面とは裏側にガスケット材料が回り込んでしまうことを抑制することができる。
【0013】
前記金型には、前記キャビティが設けられる領域において、前記金型における前記基体の載置面から前記基体が離れる方向に移動するのを規制するストッパが設けられているとよい。
【0014】
このような構成を採用した場合でも、基体のうちガスケットが設けられる面とは裏側にガスケット材料が回り込んでしまうことを抑制することができる。
【0015】
前記キャビティは前記金型の型締め及び型開き方向に間隔を空けて複数設けられ、かつ、それぞれのキャビティに対応して個々に配される前記基体の周囲に、それぞれ前記ゲートが複数設けられているとよい。
【0016】
このような構成を採用することで、一度の射出成形工程で複数の一体成形品を得ることができる。
【0017】
前記ゲートの内周面は円柱状であるとよい。
【0018】
これにより、射出圧力の低下を抑制することができる。
【0019】
前記キャビティのうち、前記ゲートから前記ガスケットとなる部分に至る前記ガスケット材料の通路の面積は、鉛直方向上方に配される前記キャビティよりも鉛直方向下方に配される前記キャビティの方が広くなるように構成されるとよい。
【0020】
こうすることで、鉛直方向下方に配されるキャビティ内においても、射出圧力の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明のガスケットの製造方法は、
ガスケット材料が透過しない基体上に、前記ガスケット材料を用いてガスケットを一体的に設けるガスケットの製造方法において、
前記ガスケットとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティと、前記ガスケットとなる部分の周囲に複数設けられ、かつ前記キャビティに前記ガスケット材料を注入す
るゲートと、を有する金型を用いて、前記成形体が前記基体上に設けられる一体成形品を成形する射出成形工程と、
前記金型から前記一体成形品を取り出した後に、複数の前記ゲートによりそれぞれ形成されるゲート跡を有する部位を全て抜き打ちにより一括して切断する切断工程と、
を有し、
前記ゲートは、前記基体の外周に沿い、かつ前記基体と対向する位置に複数設けられており、前記切断工程においては、前記成形体の一部と前記基体の一部を同時に切断することを特徴とする。
【0022】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、ガスケット材料の射出圧力の設定の自由度を高めることができ、かつゲート跡が残らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は燃料電池の単セルの断面図の一部である。
図2図2は本発明の実施例1に係るセパレータ一体ガスケットの平面図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る射出成形金型の断面図である。
図4図4は本発明の実施例1に係る中間製品の平面図である。
図5図5は本発明の変形例1に係る射出成形金型の一部を拡大した断面図である。
図6図6は本発明の変形例2の説明図である。
図7図7は本発明の実施例2に係る射出成形金型の断面図である。
図8図8は本発明の実施例3に係る射出成形金型の断面図である。
図9図9は本発明の実施例4に係るセパレータ一体ガスケットの平面図である。
図10図10は本発明の実施例4に係る射出成形金型の断面図である。
図11図11は本発明の実施例4に係る中間製品の平面図である。
図12図12は従来例に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の実施例においては、本発明のガスケットの製造方法により、燃料電池を構成するセパレータ一体ガスケットを製造する場合を例にして説明する。本実施例に係るガスケットの製造方法の説明に先立って、燃料電池について簡単に説明する。
【0026】
<燃料電池>
図1を参照して、燃料電池について説明する。図1は燃料電池の単セルの断面を簡略的に示す断面図の一部である。一般的に、燃料電池は、複数の単セルからなるセルスタックとして構成される。図1においては、単セル10の断面図を示している。単セル10は、一対のセパレータ一体ガスケット100と、これら一対のセパレータ一体ガスケット100の間に設けられるMEA(Membrane Electrode Assembly)200とを備えている。MEAは、電解質膜と、電解質膜の両面に備えられる一対のガス拡散層とを備えている。
【0027】
(実施例1)
図2図4を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットの製造方法について説明する。図2は本発明の実施例1に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットの平面図である。図3は本発明の実施例1に係る射出成形金型を簡略的に示す断面図である。図4は本発明の実施例1に係る中間製品の平面図である。なお、各部の特徴的な構成が分かり易くなるように、各図間における各構成の縮尺については適宜変更して示している。他の実施例についても同様である。
【0028】
<セパレータ一体ガスケット>
図2を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットについて説明する。セパレータ一体ガスケット100は、セパレータ本体である基体110と、基体110上に一体的に設けられるガスケット120とを備えている。基体110は、板状の部材により構成され、ガスケット材料(ガスケット120を成形する材料)が透過しない材料により構成されている。より具体的には、SUSやTiなどの金属、カーボン材料、PENなどの樹脂材料(樹脂フィルム)などを好適に採用し得る。また、ガスケット材料としては、EPDMやVMQなどのゴム材料を好適に採用することができる。
【0029】
基体110においては、その中央付近は流路が形成される流路形成領域111となっており、この流路形成領域111の周辺に複数のマニホルド112が設けられている。なお、図2においては、基体110を簡略的に示しており、流路の詳細は省略して示している。この流路は、燃料ガスや酸化剤ガスなどが流れる流路として用いられる。また、マニホルド112は、燃料ガス,酸化剤ガス、及び冷却液などを各セルに分配するために用いられる。
【0030】
そして、上記の燃料ガスなどが外部などに漏れてしまうことを防止するために、流路形成領域111の周囲、及びマニホルド112の周囲をそれぞれ囲むように、弾性体からなるガスケット120が基体110上に一体的に設けられている。ガスケット120は、流路形成領域111の周囲、及びマニホルド112の周囲をそれぞれ囲むガスケット本体部121と、ガスケット本体部121から枝分かれするように設けられる複数の枝分かれ部122とを備えている。なお、複数の枝分かれ部122は、製造工程上、形成される部位であり、製品の機能としては不要な部位である。
【0031】
<ガスケットの製造方法>
特に、図3及び図4を参照して、本実施例に係るガスケットの製造方法について説明する。本実施例に係る製造方法においては、射出成形工程と、射出成形工程後の切断工程とを有している。
【0032】
<<射出成形工程>>
図3においては、射出成形工程に用いられる射出成形金型について、金型内に配される基体110の中心を通るように切断した断面図を簡略的に示している。なお、図3中の基体110の断面図は、図2中のAA断面図に相当する。
【0033】
本実施例に係る射出成形金型500は、第1型510と、第1型510の鉛直方向上方に配される第2型520と、第2型520の鉛直方向上方に配される第3型530とを備えている。セパレータ一体ガスケット100は、基体110をインサート部品として、インサート成形により得られる。インサート部品である基体110は、第1型510の上面の載置面に載置される。
【0034】
第2型520には、ガスケット120となる部分を含む成形体を形成するためのキャビティ521と、キャビティ521にガスケット材料を注入するゲート522が設けられて
いる。ゲート522は、ガスケット120となる部分の周囲に複数設けられている。また、第2型520と第3型530との間に、ガスケット材料をゲート522に導くためのランナー523が設けられている。更に、第3型530には、ガスケット材料を金型内に供給するためのスプル531が設けられている。
【0035】
以上のように構成される射出成形金型500によれば、まず、基体110が第1型510の載置面に載置された状態で型締めがなされる。その後、不図示のノズルからスプル531にガスケット材料が供給されて、ランナー523及び複数のゲート522を介してキャビティ521にガスケット材料が充填される。そして、ガスケット材料が架橋され、中間製品である一体成形品が得られる。その後、冷却された後に型開きが行われる。なお、図3中上下方向に型が開かれる。
【0036】
そして、金型から中間製品である一体成形品100X(図4参照)が取り出される。この一体成形品100Xにおいては、複数のゲート522によりそれぞれ形成されるゲート跡Gを有している。
【0037】
<<切断工程>>
本実施例においては、一体成形品100Xに対して、ゲート跡Gを有する部位が全て切断される。なお、これらゲート跡Gを有する複数の部位については、打ち抜きにより一括して切断させることができる。図中、一点鎖線Cは切断面の位置を示している。図から分かるように、本実施例においては、成形体の一部のみが切断される。打ち抜き(切断)を行うための装置については、適宜公知技術を採用すればよいので、その説明は省略する。なお、一体成形品100Xにおいて、基体110に一体的に設けられる成形体は、ガスケット120となる部分と、切断されて排除される複数のゲート跡Gを有する部分とからなると言うことができる。以上の工程を経ることで、図2に示すセパレータ一体ガスケット100が得られる。なお、図3に示すキャビティ521のうち、太線521Xに示す領域が、ガスケット120のうちのガスケット本体部121を成形する部分であり、太線521Yに示す領域が、ガスケット120のうちの枝分かれ部122を成形する部分である。そして、太線521Zに示す領域が、成形体のうち切断工程により切断されて除去される部分である。
【0038】
<本実施例に係るガスケットの製造方法の優れた点>
本実施例に係るガスケットの製造方法によれば、切断工程によって、ゲート跡Gを有する部位が全て切断されるため、ガスケット120にはゲート跡Gが残らない。そして、ゲート522は、成形体におけるガスケット120となる部分の周囲に複数設けられているため、ゲート522の配置やゲート面積の設定自由度が高く、射出圧力の設定自由度を高めることができる。従って、ウエルドラインが目立つほど大きくなってしまうことを抑制でき、かつ、ガスケット材料の充填が不足してしまうことも抑制することができる。また、金型内において基板110の上部にゲート522を設ける必要がなくなるため、基板110上に一体的に成形されるガスケット120を小型化することも可能となり、設計自由度を高めることができる。また、本実施例の場合には、基体110よりも外側にゲート522が配されているため、ゲート522からの射出圧が基体110に直接作用することがない。従って、基体110の変形などを抑制することができる。
【0039】
<変形例>
上記の射出成形金型500の構成においては、ゲート522からのガスケット材料の射出圧力によっては、第1型510における載置面と基体110との間にガスケット材料が入り込んでしまう虞もある。この場合、基体110におけるガスケット120が設けられる面の反対側の面に成形体の一部が形成されてしまう。そのため、当該部分を除去するなどの後処理が必要となってしまう。そこで、第1型510の載置面と基体110との間に
ガスケット材料が配置込んでしまうことを抑制可能とする金型の構造について、以下に示す。
【0040】
<<変形例1>>
図5は本発明の変形例1に係る射出成形金型の一部を拡大した断面図である。なお、図5(a)~(d)は、図3中のVで示す部分の拡大図に相当する。これらの変形例においては、キャビティ521が設けられる領域において、第1型510における基体110の載置面と基体110との間の隙間を覆う覆い部511,512,513,514が、第1型510に設けられている。覆い部の形状については、特に、限定されるものではない。図5(a)に示す覆い部511は、鉛直方向上方に真っ直ぐに、基体110の高さの半分位まで伸びる場合の構成を示している。図5(b)に示す覆い部512は、鉛直方向上方に真っ直ぐに、基体110の高さ位まで伸びる場合の構成を示している。図5(c)に示す覆い部513、及び、図5(d)に示す覆い部514は、基体110に近づくにつれて高くなる傾斜面を有している。覆い部513の高さは基体110の高さの半分位であり、覆い部514の高さは基体110の高さ位である。
【0041】
以上のような構成を採用することで、第1型510における基体110の載置面と基体110との間の隙間が覆われるため、基体110のうちガスケット120が設けられる面とは裏側にガスケット材料が回り込んでしまうことを抑制することができる。また、本実施例においては、覆い部511,512の場合には、その上部に、基体110に近づくにつれて徐々に高くなるような傾斜面(R面)が設けられている。また、覆い部513,514の場合には、第1型510の平面部分から基体110に近づくにつれて徐々に高くなる傾斜面が設けられている。これらの構成を採用することで、ガスケット材料の流れを、基体110の上部に向けるように制御することができる。従って、より確実に、第1型510における基体110の載置面と基体110との間の隙間にガスケット材料が流れ込んでしまうことを抑制することができる。
【0042】
<<変形例2>>
図6は本発明の変形例2の説明図であり、同図(a)は変形例2に係る射出成形金型を簡略的に示す断面図であり、同図(b)は変形例2に係る中間製品の平面図である。なお、図6(a)においては、射出成形工程に用いられる射出成形金型について、金型内に配される基体110の中心を通るように切断した断面図を簡略的に示しており、同図(a)中の基体110の断面図は、同図(b)中のAA断面図に相当する。
【0043】
この変形例に係る射出成形金型500においても、上記実施例1と同様に、第1型510と、第2型520と、第3型530とを備えている。第1型510と第3型530の構成については、上記実施例1と同様である。本変形例においては、第2型520にストッパ524が設けられている点のみが、上記実施例1と異なっている。すなわち、本変形例に係る射出成形金型500においては、キャビティ521が設けられる領域において、第1型510における基体110の載置面から基体110が離れる方向に移動するのを規制するストッパ524が設けられている。
【0044】
以上のような構成を採用することで、第1型510における基体110の載置面と基体110との間に隙間が生じることを抑制でき、基体110のうちガスケット120が設けられる面とは裏側にガスケット材料が回り込んでしまうことを抑制することができる。以上のように構成される射出成形金型500により得られる一体成形品100Y(図6(b)参照)においては、それぞれの枝分かれ部122に、ストッパ524により形成される貫通孔Sが各々設けられる。このような複数の貫通孔Sが設けられる点以外の構成は、上記実施例1における一体成形品100Xと同様である。その後、一点鎖線Cに沿って切断されることについても、上記実施例1の場合と同様である。実施例1で説明した通り、複
数の枝分かれ部122は、製品の機能としては不要な部位であるので、貫通孔Sが設けられていても、特に問題はない。
【0045】
なお、上記変形例1に示す覆い部511,512,513,514に関する構成と、本変形例2に示すストッパ524に関する構成を併用することもできる。これにより、基体110のうちガスケット120が設けられる面とは裏側にガスケット材料が回り込んでしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0046】
(実施例2)
図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、一度の射出成形工程で、複数の一体成形品を成形可能とする射出成形金型の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0047】
図7は本発明の実施例2に係る射出成形金型を簡略的に示す断面図である。本実施例に係る射出成形金型500Aは、第1型510と、第1型510の鉛直方向上方に配される複数の第2型520と、最も上方の第2型520の鉛直方向上方に配される第3型530とを備えている。各型の基本的な構成については、上記実施例1の場合と同様である。
【0048】
このように、本実施例に係る射出成形金型500Aにおいては、キャビティ521が金型の型締め及び型開き方向(図中、上下方向)に間隔を空けて複数設けられている。また、それぞれのキャビティ521に対応して個々に配される基体110の周囲に、それぞれゲート522が複数設けられている。なお、本実施例においては、基体110の載置面について、最も下方の載置面については、上記実施例1の場合と同様に、第1型510の上面に設けられる。しかしながら、それ以外の載置面は、第2型520の上面に設けられる。
【0049】
本実施例に係る射出成形金型500Aを採用することで、一度の射出成形工程で、複数の一体成形品(中間製品)を成形することができる。本実施例に係る射出成形金型500Aにより成形される一体成形品(図4に示す一体成形品100X)の構成は上記実施例1の場合と同様である。また、切断工程が行われることについても、上記実施例1の場合と同様である。従って、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施例においても、上記変形例1に示すように、覆い部511,512,513,514を設ける構成を採用することができる。ただし、この場合、本実施例の場合には、第1型510だけでなく、第1型520の上面にも、覆い部511,512,513,514を設ける必要がある。更に、本実施例においても、上記変形例2に示すように、第2型520にストッパ524を設ける構成を採用することができる。勿論、覆い部511,512,513,514に関する構成と、ストッパ524に関する構成を併用することもできる。
【0051】
(実施例3)
図8には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、一度の射出成形工程で、複数の一体成形品を成形可能とする射出成形金型の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0052】
図8は本発明の実施例3に係る射出成形金型を簡略的に示す断面図である。本実施例に係る射出成形金型500Bは、第1型510と、第1型510の鉛直方向上方に配される複数の第2型520Bと、最も上方の第2型520Bの鉛直方向上方に配される第3型5
30とを備えている。第1型510と第3型530の基本的な構成については、上記実施例1の場合と同様である。
【0053】
本実施例に係る射出成形金型500Bにおいても、上記実施例2の場合と同様に、キャビティ521Bが金型の型締め及び型開き方向(図中、上下方向)に間隔を空けて複数設けられている。また、それぞれのキャビティ521Bに対応して個々に配される基体110の周囲に、それぞれゲート522Bが複数設けられている。なお、本実施例においては、基体110の載置面について、最も下方の載置面については、上記実施例1の場合と同様に、第1型510の上面に設けられる。しかしながら、それ以外の載置面は、第2型520Bの上面に設けられる。
【0054】
ここで、上記実施例1,2におけるゲート522の内周面は、上方から下方に向けて縮径するテーパ面により構成されている。このような構成を採用した場合、本実施例のように、上下方向にキャビティ521Bが複数設けられていると、下方のキャビティ521Bにおいては、キャビティ521Bに供給されるガスケット材料の射出圧力が小さくなってしまったり、材料が供給されるまでの時間が長くなってしまったりすることがある。そこで、本実施例においては、ゲート522Bの内周面を円柱状としている。これにより、射出圧力の低下を抑制することができ、かつ、ガスケット材料を供給するのに必要な時間を短くすることができる。
【0055】
また、本実施例においては、キャビティ521Bのうち、ゲート522Bからガスケット120となる部分に至るガスケット材料の通路の面積が、鉛直方向上方に配されるキャビティ521Bよりも鉛直方向下方に配されるキャビティ521Bの方が広くなっている。図8において、当該通路の高さを上から順に、それぞれH1,H2,H3,H4,H5とすると、H1<H2<H3<H4<H5を満たすように構成されている。こうすることで、鉛直方向下方に配されるキャビティ521B内においても、射出圧力の低下を抑制することができ、かつ、ガスケット材料を供給するのに必要な時間を短くすることができる。なお、図中、一点鎖線Cは、切断工程の際の切断面に相当する位置を示している。図示のように、通路の面積を変えている部位は、製造される製品(セパレータ一体ガスケット100)には含まれておらず、成形位置によって、製品の形状が異なってしまうことはない。
【0056】
本実施例においては、ゲート522Bの内周面を円柱状とする構成と、ゲート522Bからガスケット120となる部分に至るガスケット材料の通路の面積を工夫する構成の双方を採用することで、効果的に射出圧力の低下を抑制することができる。ただし、いずれか一方の構成のみを採用することもできる。
【0057】
本実施例においても、上記実施例2の場合と同様に、一度の射出成形工程で、複数の一体成形品(中間製品)を成形することができる。本実施例に係る射出成形金型500Bにより成形される一体成形品(図4に示す一体成形品100X)の構成は上記実施例1の場合と同様である。ただし、成形体のうち、その後、切断により除去される部分の厚みについては、金型内の位置によって異なっている。また、切断工程が行われることについても、上記実施例1の場合と同様である。従って、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、本実施例においても、上記変形例1に示すように、覆い部511,512,513,514を設ける構成を採用することができる。ただし、この場合、本実施例の場合には、第1型510だけでなく、第1型520の上面にも、覆い部511,512,513,514を設ける必要がある。更に、本実施例においても、上記変形例2に示すように、第2型520にストッパ524を設ける構成を採用することができる。勿論、覆い部51
1,512,513,514に関する構成と、ストッパ524に関する構成を併用することもできる。
【0059】
特に、第2型520にストッパ524を設ける構成を採用すると、キャビティ521B内において、ストッパ524を設けた分だけ、ガスケット材料が流れる通路面積が狭くなる。これにより、射出圧力が低下してしまい易いので、本実施例の構成を採用すると効果的である。
【0060】
(実施例4)
図9図11には、本発明の実施例4が示されている。上記各実施例においては、切断工程において、成形体の一部のみを切断する場合を示したが、本実施例においては、切断工程において、成形体の一部と基体の一部を同時に切断する場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0061】
図9は本発明の実施例4に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットの平面図である。図10は本発明の実施例4に係る射出成形金型を簡略的に示す断面図である。図11は本発明の実施例4に係る中間製品の平面図である。
【0062】
<セパレータ一体ガスケット>
図9を参照して、本発明の実施例4に係るガスケットの製造方法により得られるセパレータ一体ガスケットについて説明する。セパレータ一体ガスケット100Aは、上記各実施例の場合と同様に、セパレータ本体である基体110Aと、基体110A上に一体的に設けられるガスケット120Aとを備えている。基体110Aの基本的な構成及び材料については、上記各実施例の場合と同様である。ガスケット材料についても、上記各実施例の場合と同様である。上記の各実施例においては、ガスケット120における複数の枝分かれ部122が基体110の外側に少し飛び出ていた。これに対して、本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Aの場合には、複数の枝分かれ部122Aの先端面が基体110の側面と同一面である点が異なっている。
【0063】
<ガスケットの製造方法>
特に、図10及び図11を参照して、本実施例に係るガスケットの製造方法について説明する。本実施例に係る製造方法においても、射出成形工程と、射出成形工程後の切断工程とを有している。
【0064】
<<射出成形工程>>
図10においては、射出成形工程に用いられる射出成形金型について、金型内に配される基体110の中心を通るように切断した断面図を簡略的に示している。なお、図10中の基体110の断面図は、図9中のAA断面図に相当する。
【0065】
本実施例に係る射出成形金型500Cは、第1型510と、第1型510の鉛直方向上方に配される第2型520Cと、第2型520Cの鉛直方向上方に配される第3型530とを備えている。第1型510と第3型530の構成については、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明は省略する。なお、本実施例においても、インサート部品である基体110は、第1型510の上面の載置面に載置される。
【0066】
本実施例においても、第2型520Cには、ガスケット120Aとなる部分を含む成形体を形成するためのキャビティ521Cと、キャビティ521Cにガスケット材料を注入するゲート522Cが設けられている。本実施例においては、上記各実施例の場合とは異なり、ゲート522Cは、基体110Aの外周に沿い、かつ基体110Aと対向する位置
に複数設けられている。第2型520Aと第3型530との間に、ガスケット材料をゲート522Cに導くためのランナー523が設けられている点については、上記各実施例の場合と同様である。射出成形の手順(型締めから型開きまでの手順)については、上記実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0067】
そして、射出成形工程後に、金型から中間製品である一体成形品100AX(図11参照)が取り出される。この一体成形品100AXにおいては、複数のゲート522Cによりそれぞれ形成されるゲート跡Gを有している。
【0068】
<<切断工程>>
本実施例においては、一体成形品100AXに対して、ゲート跡Gを有する部位が全て切断される。なお、これらゲート跡Gを有する複数の部位については、打ち抜きにより一括して切断させることができる。図中、一点鎖線Cは切断面の位置を示している。図から分かるように、本実施例においては、成形体の一部と基体110Aの一部が同時に切断される。打ち抜き(切断)を行うための装置については、適宜公知技術を採用すればよいので、その説明は省略する。なお、一体成形品100AXにおいて、基体110Aに一体的に設けられる成形体は、ガスケット120Aとなる部分と、切断されて排除される複数のゲート跡Gを有する部分とからなると言うことができる。以上の工程を経ることで、図9に示すセパレータ一体ガスケット100Aが得られる。
【0069】
以上のような製造方法により、本実施例においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(その他)
上記各実施例においては、セパレータ一体ガスケットの製造方法について説明した。しかしながら、本発明のガスケットの製造方法は、金属ガスケットなど、基体(金属ガスケットの場合には金属板)に設けられたビード上に弾性体製のガスケットを形成する各種技術に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 単セル
100,100A セパレータ一体ガスケット
100X,100Y,100AX 一体成形品
110,110A 基体
111 流路形成領域
112 マニホルド
120,120A ガスケット
121 ガスケット本体部
122,122A 枝分かれ部
500,500A,500B,500C 射出成形金型
511,512,513,514 覆い部
521,521B,521C キャビティ
522,522B,522C ゲート
523 ランナー
524 ストッパ
531 スプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12