(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000601
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】建築物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20231226BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
E04G21/14
E04G3/24 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099358
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖和
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA05
2E174CA14
2E174DA07
2E174DA21
(57)【要約】
【課題】作業性の向上および工数の削減を実現する。
【解決手段】階段室に設置される鉄骨階段と、階段室を区画する鉄筋コンクリート造の躯体と、を有する鉄筋コンクリート造の建築物の施工方法は、階段室における所定階の部分に内部足場を設置する工程と、内部足場を利用して所定階の躯体を構築する工程と、所定階に設置された内部足場を取り外す工程と、所定階の鉄骨階段を設置する工程と、所定階の躯体上に所定階の上階の仮設の床面として機能する仮設ステージを設置する工程と、仮設ステージの上に内部足場を設置する工程と、内部足場を利用して上階の躯体を構築する工程と、上階に設置された内部足場を取り外す工程と、上階の鉄骨階段を設置する工程とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段室に設置される鉄骨階段と、前記階段室を区画する鉄筋コンクリート造の躯体と、を有する鉄筋コンクリート造の建築物の施工方法であって、
前記階段室における所定階の部分に、内部足場を設置する工程と、
前記内部足場を利用して、前記所定階の前記躯体を構築する工程と、
前記所定階に設置された前記内部足場を取り外す工程と、
前記所定階の前記鉄骨階段を設置する工程と、
前記所定階の前記躯体上に、前記所定階の上階の仮設の床面として機能する仮設ステージを設置する工程と、
前記仮設ステージの上に、前記内部足場を設置する工程と、
前記内部足場を利用して、前記上階の前記躯体を構築する工程と、
前記上階に設置された前記内部足場を取り外す工程と、
前記上階の前記鉄骨階段を設置する工程と、
を備える、建築物の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建築物の施工方法であって、
前記各工程は、最下階から開始され、最上階の前記鉄骨階段の設置が完了するまで繰り返し実行される、建築物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、建築物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
階段室に設置される鉄骨階段と、階段室を区画する鉄筋コンクリート造の躯体(壁体)と、を有する鉄筋コンクリート造の建築物の施工方法は、一般に、以下の通りである。すなわち、内部足場を最下階のスラブから最上階に向けてせり上げつつ躯体を打ち上げていき、最上階のスラブ用の型枠施工前に、内部足場を最下階のスラブまで解体する。その後、内部足場の解体により空いたスペースに、最下階から最上階までの鉄骨階段を設置する。
【0003】
また、特許文献1には、鉄骨階段を有する鉄筋コンクリート造の建築物の施工方法として、以下の方法が提案されている。すなわち、階段室の周囲壁を形成する型枠である鉄骨階段側型枠を鋼板で構成すると共に、この型枠用鋼板を支持部材として、半階分の高さに架渡される鉄骨階段を取付けることにより、鉄骨階段の周囲に型枠用鋼板をボックス状に張り巡らしてなる、上下が開口した筒体の階段部ユニットを構成する。そして、この階段部ユニットを複数段積み重ねることにより、階段室の鉄骨階段を周囲壁に先行して構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した一般的な施工方法では、最下階から最上階までの鉄骨階段を設置するまでは、内部足場における狭い昇降階段を利用して作業を行うこととなり、作業性が良好ではない。また、最下階から最上階まで内部足場を組み立て、かつ、解体する必要があり、工数削減の点で向上の余地がある上に、内部足場解体後、鉄骨階段設置前に深い縦穴が発生し、作業安全性の点で向上の余地がある。また、上述した特許文献1に記載の施工方法では、鉄骨階段の周囲に型枠用鋼板をボックス状に張り巡らしてなる階段部ユニットを作製して設置する必要があり、やはり作業性が良好ではない。
【0006】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される建築物の施工方法は、階段室に設置される鉄骨階段と、前記階段室を区画する鉄筋コンクリート造の躯体と、を有する鉄筋コンクリート造の建築物の施工方法である。該建築物の施工方法は、前記階段室における所定階の部分に、内部足場を設置する工程と、前記内部足場を利用して、前記所定階の前記躯体を構築する工程と、前記所定階に設置された前記内部足場を取り外す工程と、前記所定階の前記鉄骨階段を設置する工程と、前記所定階の前記躯体上に、前記所定階の上階の仮設の床面として機能する仮設ステージを設置する工程と、前記仮設ステージの上に、前記内部足場を設置する工程と、前記内部足場を利用して、前記上階の前記躯体を構築する工程と、前記上階に設置された前記内部足場を取り外す工程と、前記上階の前記鉄骨階段を設置する工程と、を備える。
【0009】
本建築物の施工方法によれば、ある階の躯体を構築した直後に、当該階の鉄骨階段を設置するため、それ以降、この鉄骨階段を作業用の階段として利用することができ、作業性を向上させることができる。また、1階分の内部足場を組んで、クローラクレーン等で設置および取り外しを行うだけでよく、最下階から最上階まで内部足場を組み立て、かつ、解体する従来の施工方法と比較して、工数を削減することができる。また、階毎に、内部足場の取り外し後、すぐに、鉄骨階段を設置するため、吹き抜け養生を省略することができ、この点でも工数を削減することができる。このように、本建築物の施工方法によれば、作業性の向上および工数の削減を実現することができる。
【0010】
(2)上記建築物の施工方法において、前記各工程は、最下階から開始され、最上階の前記鉄骨階段の設置が完了するまで繰り返し実行される構成としてもよい。本建築物の施工方法によれば、最下階から最上階までの全体にわたって効果的に作業性の向上および工数の削減を実現することができる。
【0011】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、建築物の施工方法、鉄骨階段の設置方法、それらの方法により製造された建築物または鉄骨階段等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における建築物100の構成を示す説明図
【
図2】建築物100の施工方法を示すフローチャート
【
図3】建築物100の施工方法を模式的に示す説明図
【
図4】建築物100の施工方法を模式的に示す説明図
【
図5】建築物100の施工方法を模式的に示す説明図
【
図6】建築物100の施工方法を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.実施形態:
A-1.建築物100の構成:
図1は、本実施形態における建築物100の構成を示す説明図である。建築物100は、鉄筋コンクリート造の建築物である。なお、本実施形態では、建築物100は4階建て以上であるが、
図1では4階より上階の図示を省略している。建築物100は、鉄骨階段20と、躯体10と、スラブ30とを有する。
【0014】
鉄骨階段20は、建築物100における階段室S1に設置された鉄骨造の階段である。本実施形態では、鉄骨階段20は、中間踊り場を有する折り返し式の階段である。躯体10は、階段室S1を区画する鉄筋コンクリート造の立ち上がり躯体(壁体)である。躯体10には、階段室S1への出入りのための開口が設けられている。スラブ30は、各階の床を構成する鉄筋コンクリート造の躯体である。
【0015】
A-2.建築物100の施工方法:
図2は、建築物100の施工方法を示すフローチャートである。また、
図3から
図6は、建築物100の施工方法を模式的に示す説明図である。以下、建築物100における階段室S1付近の施工方法について説明する。なお、本実施形態の建築物100の施工方法では、工事が最下階(本実施形態では1階)から最上階に向けて、階毎に実行される。以下の説明では、施工中の階数を「施工階N」と表す。
【0016】
はじめに、最下階である1階の施工を開始する(施工階N=1、S110)。具体的には、階段室S1における1階部分に、内部足場202を設置する(S120)。本実施形態では、内部足場202は、1階の床上に設置される。また、内部足場202の高さは、階高より少し高い高さに設定される。そのため、1階部分に設置された内部足場202の上端部は、2階の床面の少し上方に位置する。内部足場202は、足場材を組み立てることにより作成することができる。内部足場202は、階段室S1内で組み立ててもよいし、他の場所で組み立てたものを階段室S1に搬送してもよい。
【0017】
次に、階段室S1の1階部分に設置された内部足場202を利用して、1階の躯体10を構築する躯体工事を実行する(S130)。躯体工事は、例えば、型枠組み立て、配筋、コンクリート打設等の工程を含む。
図3には、1階部分に内部足場202を設置し、この内部足場202を利用して、1階の躯体10を構築する躯体工事が完了した状態を示している。
【0018】
次に、1階の躯体10を構築するための型枠を解体し、階段受部材を取り付けた後、1階部分に設置された内部足場202を取り外す(S140)。内部足場202の取り外しは、例えばクローラクレーン等で内部足場202を吊り上げて、階段室S1以外の場所に搬送することにより行う。その後、階段室S1における1階部分に、1階部分用の鉄骨階段20を設置する(S150)。設置した鉄骨階段20は、階段受部材に固定する。鉄骨階段20の設置は、例えばクローラクレーン等で鉄骨階段20を吊り上げて、階段室S1内に搬送することにより行う。
図4には、階段室S1における1階部分に設置された内部足場202を取り外し、これにより空いた1階部分のスペースに鉄骨階段20(20a)を設置した状態を示している。これ以降、1階部分の鉄骨階段20(20a)を作業用の階段として利用することができる。
【0019】
その後、建築物100の施工方法は、さらに上階の工事が必要であるか否かにより分岐する(S160)。さらに上階の工事が必要である場合には(S160:YES)、施工階Nを1つ繰り上げる(N=N+1、S170)。例えば、1階部分の鉄骨階段20の設置後は、施工階Nは2階に設定される。
【0020】
2階の施工の際には、下階(1階)の躯体10上に、2階の仮設の床面として機能する仮設ステージ204を設置する(S180)。仮設ステージ204は、例えばペコビーム上に、根太材を介して、または、直接的に、足場板を敷くことにより作成することができる。その後はS120に戻り、階段室S1における2階部分に、内部足場202を設置する(S120)。2階以上の部分では、内部足場202は、上述した仮設ステージ204の上に設置される。その後、設置された内部足場202を利用して、2階の躯体10を構築する躯体工事を実行する(S130)。
図5には、階段室S1における2階の仮設の床面として機能する仮設ステージ204を設置し、仮設ステージ204上に内部足場202を設置し、2階部分に設置された内部足場202を利用して、2階の躯体10を構築する躯体工事が完了した状態を示している。
【0021】
以降は、上記と同様に、2階の躯体10を構築するための型枠を解体し、階段受部材を取り付けた後、2階部分に設置された内部足場202を取り外す(S140)。このとき、2階以上の工事では、仮設ステージ204も取り外す。そして、階段室S1における2階部分に、2階部分の鉄骨階段20を設置する(S150)。
図6には、階段室S1における2階部分に設置された内部足場202を取り外し、これにより空いた2階部分のスペースに鉄骨階段20(20b)を設置した状態を示している。これ以降、1階および2階部分の鉄骨階段20(20a、20b)を作業用の階段として利用することができる。
【0022】
このような工程が繰り返し実行され、最上階の鉄骨階段20の設置(S150)まで完了すると、さらに上階の工事が必要ない状態となる(S160:NO)。このときには、最上階のスラブの設置等の所定の残工程を実行した後、建築物100の施工は完了する。
【0023】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の建築物100の施工方法は、階段室S1における所定階の部分に内部足場202を設置する工程と、内部足場202を利用して該所定階の躯体10を構築する工程と、該所定階に設置された内部足場202を取り外す工程と、該所定階の鉄骨階段20を設置する工程と、該所定階の躯体10上に、該所定階の上階の仮設の床面として機能する仮設ステージ204を設置する工程と、仮設ステージ204の上に内部足場202を設置する工程と、内部足場202を利用して該上階の躯体10を構築する工程と、該上階に設置された内部足場202を取り外す工程と、該上階の鉄骨階段20を設置する工程とを備える。
【0024】
このように、本実施形態の建築物100の施工方法では、ある階の躯体10を構築した直後に、当該階の鉄骨階段20を設置するため、それ以降、この鉄骨階段20を作業用の階段として利用することができ、作業性を向上させることができる。また、1階分の内部足場202を組んで、クローラクレーン等で設置および取り外しを行うだけでよく、最下階から最上階まで内部足場を組み立て、かつ、解体する従来の施工方法と比較して、工数を削減することができる。また、階毎に、内部足場202の取り外し後、すぐに、鉄骨階段20を設置するため、吹き抜け養生を省略することができ、この点でも工数を削減することができる。このように、本実施形態の建築物100の施工方法によれば、作業性の向上および工数の削減を実現することができる。
【0025】
また、本実施形態の建築物100の施工方法では、上記各工程が、最下階から開始され、最上階の鉄骨階段20の設置が完了するまで繰り返し実行される。そのため、最下階から最上階までの全体にわたって効果的に作業性の向上および工数の削減を実現することができる。
【0026】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0027】
上記実施形態における建築物100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、建築物100は4階建て以上であるが、建築物100が3階建て以下であってもよい。
【0028】
上記実施形態では、鉄骨階段20は中間踊り場を有する折り返し式の階段であるが、鉄骨階段20が中間踊り場を有さない直線状の階段であってもよい。
【0029】
上記実施形態における建築物100の施工方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、建築物100の全階にわたって上述した各工程が繰り返し実行されるが、建築物100の一部の階(ただし、連続した複数の階)において上述した各工程が繰り返し実行されるとしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10:躯体 20:鉄骨階段 30:スラブ 100:建築物 202:内部足場 204:仮設ステージ S1:階段室