(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060109
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】トイレットロールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A47K10/16 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048572
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2020175919の分割
【原出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
(57)【要約】
【課題】ミシン目の位置ずれやプライ剥がれの防止されたトイレットロールおよびその製造方法
【解決手段】
2プライのトイレットロールであって、巻長40m~100m、巻径100mm~134mm、シート1枚当たりの坪量11g/m
2~20.5g/m
2、巻密度1.02m/cm
2~1.48m/cm
2であり、トイレットペーパーは、紙面全域に対するシングルエンボスと、プライ剥離防止用の接合用エンボスと、が付されており、エンボス凹部がロール外側となるように巻き取られており、トイレットペーパーを幅方向に横切る破断用ミシン目がトイレットペーパーの長手方向に沿って一定間隔毎に形成されており、シングルエンボスの深さは115μm~143μmであるトイレットロール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールであって、
前記トイレットロールの巻長は、40m以上100m以下であり、
前記トイレットロールの巻径は、100mm以上134mm以下であり、
前記シート1枚当たりの坪量は、11g/m2以上20.5g/m2以下であり、
前記トイレットロールの巻密度は、1.02m/cm2以上1.48m/cm2以下であり、
前記トイレットペーパーは、紙面全域に対するシングルエンボスと、前記2枚のシートのプライ剥離を防止するための接合用エンボスと、が付されており、およびエンボス凹部がロール外側となるように巻き取られており、
前記トイレットペーパーは、前記トイレットペーパーを幅方向に横切る破断用ミシン目が前記トイレットペーパーの長手方向に沿って一定間隔毎に形成されており、
前記シングルエンボスおよび前記接合用エンボスのエンボス深さは、115μm以上143μm以下であることを特徴とするトイレットロール。
【請求項2】
前記トイレットロールの巻長は、40m以上60m以下であり、
前記シート1枚当たりの坪量は、13.0g/m2以上20.5g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記トイレットロールの巻長は、60m以上80m以下であり、
前記シート1枚当たりの坪量は、12.0g/m2以上18.5g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記トイレットロールの巻長は、80m以上100m以下であり、
前記シート1枚当たりの坪量は、11.0g/m2以上17.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項5】
前記シングルエンボスのエンボスパターンは、所定の領域を占めるように設定されたドットの集合体であり、その配列方向が前記トイレットペーパーの幅方向および長手方向に対して傾斜角度をなすように配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のトイレットロール。
【請求項6】
トイレットロールの製造方法であって、
2枚のシートが重ね合わされた積層シートにシングルエンボスを施す工程と、
前記シングルエンボスが施された前記積層シートに接合用エンボスを施す工程と、
前記接合用エンボスが施された前記積層シートに破断用ミシン目を形成する工程と、
前記破断用ミシン目が形成された前記積層シートを、前記シングルエンボスのエンボス凹部がロール外側となるように、ロール状に巻き取る工程と、
を含み、
前記シングルエンボスを施す工程において、前記積層シートの前記ロール外側となる面にエンボスロールを圧接させて、当該面にエンボス深さが115μm以上143μm以下となるエンボス凹部を形成し、
前記接合用エンボスを施す工程において、前記接合用エンボスを、前記接合用エンボスのエンボス深さが115μm以上143μm以下となるように形成することを特徴とするトイレットロールの製造方法。
【請求項7】
前記エンボスロールは、所定の領域を占めるように設定されたドットの集合体であるエンボスパターンを有し、前記エンボスパターンは、その配列方向が前記積層シートの幅方向および長手方向に対して傾斜角度をなすように設けられていることを特徴とする請求項6に記載のトイレットロールの製造方法。
【請求項8】
前記トイレットロールは、請求項1から5のいずれか一項に記載のトイレットロールであることを特徴とする請求項6または7に記載のトイレットロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールでは、1ロール当りの巻長を長くすることによる、トイレットロール製品の持ち運びや保管時の省スペース化が図られている。
【0003】
ロールの巻径を所定の寸法内に維持しつつ巻長を長くするためには、シートの坪量を低くすることが有効であるが、そうすると、概して、強度が低下し、また、嵩高さや使用感が低下する。特許文献1は、シートの表面を凹凸形状とすることでシートの柔らかさを向上させるとともに、ロールの巻密度等に着目することで、坪量を下げることなく1ロールあたりの巻長を長くした、シートおよびロールの柔らかさが確保されたトイレットロールを提案している。
【0004】
引用文献1には、シートの表面の凹凸形状として、深さが0.05mm~0.40mmのエンボスが好ましいこと、また、エンボスの種類として、2プライの各シートにエンボスを付してから重ね合わせるダブルエンボスでは紙厚が高くなりすぎ巻密度が低くなって巻長が確保できない場合があるため、特には、2プライのトイレットペーパーの一方の面からのみエンボス凸部を押し当ててエンボスを形成するシングルエンボスが好ましいことが開示されている。
【0005】
ところで、柔らかいトイレットペーパーには、概して、トイレットロールからのトイレットペーパーの切り離しを容易にするために、トイレットペーパーの幅方向に延びる破断用ミシン目が、トイレットペーパーの長手方向に一定間隔に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなシングルエンボスが付された2プライのトイレットペーパーに破断用ミシン目を設けた場合、巻長を長くしつつロールの巻径が所定の範囲内に収まるように巻きをきつくすると、2プライのトイレットペーパーを構成する2枚のシート間に長手方向のずれが生じやすい。このずれは、巻長が長くなるほど大きくなる。また、このずれは、シートの紙質が滑らかである場合に大きくなる。ずれの結果、2プライのトイレットペーパーのプライ間剥離が生じて、トイレットロールから2プライのトイレットペーパーを一体的に引き出すことが困難となったり、2プライを構成する2枚のシートのミシン目の位置ずれが生じて、トイレットペーパーをミシン目できれいに切り離すことができなくなったりする問題がある。
【0008】
本発明は、ロールの巻径が所定の寸法内でありつつ、1ロール当りの巻長が長く、トイレットペーパーの柔らかさが確保され、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止された、2プライのトイレットロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールであって、トイレットロールの巻長は、40m以上100m以下であり、トイレットロールの巻径は、100mm以上134mm以下であり、シート1枚当たりの坪量は、11g/m2以上20.5g/m2以下であり、トイレットロールの巻密度は、1.02m/cm2以上1.48m/cm2以下であり、トイレットペーパーは、紙面全域に対するシングルエンボスと、2枚のシートのプライ剥離を防止するための接合用エンボスと、が付されており、およびエンボス凹部がロール外側となるように巻き取られており、トイレットペーパーは、トイレットペーパーを幅方向に横切る破断用ミシン目がトイレットペーパーの長手方向に沿って一定間隔毎に形成されており、シングルエンボスおよび接合用エンボスのエンボス深さは、115μm以上143μm以下であるトイレットロールにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
[1] 2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールであって、
トイレットロールの巻長は、40m以上100m以下であり、
トイレットロールの巻径は、100mm以上134mm以下であり、
シート1枚当たりの坪量は、11g/m2以上20.5g/m2以下であり、
トイレットロールの巻密度は、1.02m/cm2以上1.48m/cm2以下であり、
トイレットペーパーは、紙面全域に対するシングルエンボスと、2枚のシートのプライ剥離を防止するための接合用エンボスと、が付されており、およびエンボス凹部がロール外側となるように巻き取られており、
トイレットペーパーは、トイレットペーパーを幅方向に横切る破断用ミシン目がトイレットペーパーの長手方向に沿って一定間隔毎に形成されており、
シングルエンボスおよび前記接合用エンボスのエンボス深さは、115μm以上143以下であることを特徴とするトイレットロール。
【0012】
[2] トイレットロールの巻長は、40m以上60m以下であり、
シート1枚当たりの坪量は、13.0g/m2以上20.5g/m2以下であることを特徴とする[1]に記載のトイレットロール。
【0013】
[3] トイレットロールの巻長は、60m以上80m以下であり、
シート1枚当たりの坪量は、12.0g/m2以上18.5g/m2以下であることを特徴とする[1]に記載のトイレットロール。
【0014】
[4] トイレットロールの巻長は、80m以上100m以下であり、
シート1枚当たりの坪量は、11.0g/m2以上17.0g/m2以下であることを特徴とする[1]に記載のトイレットロール。
【0015】
[5] シングルエンボスのエンボスパターンは、所定の領域を占めるように設定されたドットの集合体であり、その配列方向がトイレットペーパーの幅方向および長手方向に対して傾斜角度をなすように配列されていることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のトイレットロール。
【0016】
[6] トイレットロールの製造方法であって、
2枚のシートが重ね合わされた積層シートにシングルエンボスを施す工程と、
シングルエンボスが施された積層シートに接合用エンボスを施す工程と、
接合用エンボスが施された積層シートに破断用ミシン目を形成する工程と、
破断用ミシン目が形成された積層シートを、シングルエンボスのエンボス凹部がロール外側となるように、ロール状に巻き取る工程と、
を含み、
シングルエンボスを施す工程において、積層シートのロール外側となる面にエンボスロールを圧接させて、当該面にエンボス深さが115μm以上143μm以下となるエンボス凹部を形成し、
接合用エンボスを施す工程において、接合用エンボスを、前記接合用エンボスのエンボス深さが115μm以上143μm以下となるように形成することを特徴とするトイレットロールの製造方法。
【0017】
[7] エンボスロールは、所定の領域を占めるように設定されたドットの集合体であるエンボスパターンを有し、エンボスパターンは、その配列方向が積層シートの幅方向および長手方向に対して傾斜角度をなすように設けられていることを特徴とする[6]に記載のトイレットロールの製造方法。
【0018】
[8] トイレットロールは、[1]から[5]のいずれかに記載のトイレットロールであることを特徴とする[6]または[7]に記載のトイレットロールの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ロールの巻径が所定の寸法内でありつつ、1ロール当りの巻長が長く、トイレットペーパーの柔らかさが確保され、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止された、2プライのトイレットロールを提供することができる。
したがって、本発明によれば、トイレットロールの巻径が所定の寸法内でありつつ1ロール当りの巻長が長いため、持ち運びや保管時の省スペース化を図ることができ、トイレットペーパーの柔らかさが確保されているため、使用感に優れ、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止されているため、使用時に不便を感じることのない、トイレットロールを提供することができる。本発明によれば、特には、紙質に関わらず、例えばシートの滑らかさが高い場合であっても、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止されたトイレットロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るトイレットロールの構成を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトイレットペーパーの構成を説明する図である。
【
図3】エンボス深さの測定方法を説明する図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造に適用可能な製造設備の例を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るトイレットペーパーの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るトイレットロールおよびその製造方法を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態および図面は例示の目的で記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
(トイレットロール)
図1は、本発明の実施形態に係るトイレットロールの構成を説明する概略図である。
図1を参照して、本発明の実施形態に係るトイレットロール10は、2枚のシート11,12が重ね合わされたいわゆる2プライのトイレットペーパー13が、円筒状の巻芯である紙管14に、所定長だけロール状に巻き回されたものである。
【0023】
(シート)
トイレットペーパー13の構成要素となる2枚のシート11,12のそれぞれは、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって得られる。
【0024】
(パルプ成分)
パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプを挙げることができる。
木材を原料として製造される木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。
木材以外の植物・動物を原料として製造される非木材パルプとしては、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。
古紙(抄紙されたパルプ)を原料として製造される古紙パルプとしては、例えば、牛乳パックのような液体を充填包装するための紙パックを原料とする、いわゆるミルクカートンパルプ、新聞や雑誌等を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらパルプ成分はトイレットペーパーの品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0026】
例えば、パルプ成分として、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。針葉樹パルプは、繊維が長く強度があり、抄造されるシートに強度を付与することができる。また、広葉樹パルプは、繊維が短く、しなやかであり、抄造されるシートに均一性、地合いのよさ、柔らかさなどを提供することができる。本発明の実施形態において、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0027】
針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する場合、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの配合割合(質量比)を示すL/N比は、例えば、10/90~90/10とすることが好ましく、20/80以上とすることがより好ましく、30/70以上とすることがさらに好ましく、また、80/20以下とすることがより好ましく、70/30以下とすることがさらに好ましい。
【0028】
(任意成分)
シートには、要求品質および操業の安定のために、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、サイズ剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および両性イオン界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の実施形態において、互いに重ね合わされる2枚のシート11,12の種類(材質、物性などの紙質)は、要求品質等に応じて、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0030】
(トイレットロールの巻長)
本発明の実施形態において、紙管14に巻き回されたトイレットペーパー13の長さであるトイレットロールの巻長は、40m以上100m以下である。巻長は、例えば、トイレットロール10からトイレットペーパー13を巻きほどきながらその長さを実測することによって求めることができる。
従来主流のトイレットペーパーの巻長は30m前後である。これに対し、トイレットロールの巻長が40m以上100m以下の範囲であると、1ロール当りのトイレットペーパー13の長さが長く、トイレットロールの持ち運びや保管時の省スペース化の効果が得られる。トイレットロールの巻長が100mを超えると、概して、トイレットロールの巻径が大きくなり、トイレットロール10は、一般的なトイレットロールホルダーに収まり難くなる。トイレットロールの巻長が40m未満であると、持ち運びや保管時の省スペース化の効果が小さい。
【0031】
(トイレットロールの巻径)
本発明の実施形態において、ロール状に巻き取られたトイレットペーパー13のロール径であるトイレットロールの巻径DRは、100mm以上134mm以下である。巻径DRは、例えば、ノギスなどを用いて測定することができる。
トイレットロールの巻径DRが100mm以上134mm以下の範囲であると、トイレットロール10は、一般的なトイレットロールホルダー内に収まり、その中で回転自在に支持され得る。トイレットロールの巻径DRが134mmよりも大きくなると、トイレットロール10は、一般的なトイレットロールホルダーに収まり難くなる。また、トイレットロールの巻径DRが100mmよりも小さいと、トイレットロールの巻長が制限され、巻長を長くすることによる持ち運びや保管時の省スペース化が困難になる。また、小さな巻径DRでトイレットロールの長い巻長を確保しようとすると、トイレットペーパー13の紙厚や嵩高さ、および構成シート11,12の坪量等が制限され、良好な使用感や、強度の確保等が困難になる。
【0032】
(トイレットロールの巻密度)
本発明の実施形態において、トイレットロールの巻密度は、0.65m/cm2以上2.05m/cm2以下である。トイレットロールの巻密度は、次式(I)によって計算される。
(巻密度)=(巻長×プライ数)÷(トイレットロールの断面積) (式I)
【0033】
トイレットロールの断面積は、
図1の(b)に示されるトイレットロール10の側面において、トイレットペーパー13により構成されている部分の面積に相当する。つまり、トイレットロールの断面積は、巻径DRを直径とする円の面積から、紙管14の外径であるコア径DCを直径とする円の面積を引いた面積となる。トイレットロールの断面積は、次式(II)によって計算される。
(断面積)=(トイレットロールの巻径DR÷2)
2×3.14-(コア径DC÷2)
2×3.14 (式II)
【0034】
例えば、トイレットロール10の巻長が50m、巻径DRが118mmであり、紙管14のコア径DCが38mmである場合、トイレットペーパー13は2プライであるので、巻密度は、(50m×2)÷{(118mm÷2)2×3.14-(38mm÷2)2×3.14}を計算して、1.02m/cm2となる。
【0035】
トイレットロールの巻密度が0.65m/cm2以上2.05m/cm2以下であると、上述の巻径と巻長とを満足した上でトイレットペーパーの柔らかさが確保されたトイレットロールを得ることができる。トイレットロールの巻密度が2.05m/cm2よりも大きいと、シートがきつく巻かれた状態となってトイレットペーパーの柔らかさの確保が困難になる。トイレットロールの巻き密度が0.65m/cm2以未満である場合、紙厚や嵩高さ等が低く良好な使用感や強度が得られないか、巻長が短いこととなる。
【0036】
(トイレットペーパー)
トイレットペーパー13は、いわゆる2プライのトイレットペーパーであり、2枚のシート11,12が重ね合わされた積層シートの形態を有する。
【0037】
(シート1枚当たりの坪量)
本発明の実施形態おいて、トイレットペーパー13を構成する2枚のシート11,12のシート1枚当たりの坪量は、11.0g/m2以上20.5g/m2以下である。シート1枚当たりの坪量は、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて、2プライのトイレットペーパー13の坪量を測定し、当該坪量をプライ数の2で割って求めることができる。すなわち、2プライのトイレットペーパー13を日本工業規格JIS P8111に規定する方法に従って調湿し、当該調湿した2プライのトイレットペーパー13を2枚のシート11,12を重ねたまま、所定の大きさ、例えば10cm×10cmの大きさに切り出し、当該切り出した2プライのトイレットペーパー13の重さを測定し、当該重さを2プライのトイレットペーパー13の切出面積の0.01m2で割って2プライのトイレットペーパー13の坪量を測定し、当該坪量をプライ数の2で割ってシート1枚当たりの坪量を求めることができる。
【0038】
シート1枚当たりの坪量が11.0g/m2未満であると、強度が低く、嵩高さや使用感が劣る。一方、シート1枚当たりの坪量が20.5g/m2を超えると、概して、紙厚が高くなり、トイレットロールの巻径が大きくなる。このとき、トイレットロールの巻径DRを上述の本発明の実施形態に係る巻径の範囲に収めようとすると、トイレットロールの巻長を確保することが困難となる。また、上述の本発明の実施形態に係る範囲の巻長を得ようとすると、紙厚を低減させる必要が生じ、嵩高さが低減されて固くなるなど、トイレットペーパーの風合いが損なわれる。
【0039】
(エンボス)
図1の(a)を参照して、本発明の実施形態において、トイレットペーパー13の紙面には、エンボス部13aおよび接合用エンボス部13bが付されている。エンボス部13aおよび接合用エンボス部13bは、エンボス加工によって施すことができる。
【0040】
(エンボス部)
詳細には、トイレットペーパー13には、その紙面全域に亘って、一方の面側がエンボス凹部となり他方の面側がエンボス凸部となる多数のエンボス部13aが、エンボスパターンPの反復によって連続的に形成されている。ここで、本明細書において、用語「紙面全域」とは紙面領域の厳密に100%を指すものではなく、紙面領域のほぼ100%であればよく、好ましくは紙面領域の90%以上を指すものであると解釈されるべきものである。
【0041】
図1の(1)に示される例では、エンボスパターンPは、エンボス部13aが同心円状に配列された、点対称形状をなすドットの集合体であり、二点鎖線で囲まれた一辺が約28.5mmのほぼ正方形の領域を占めるように設定されている。なお、本発明の実施形態に適用可能なエンボスパターンPの構成は、
図1の(1)に示される例に限定されるものではない。
【0042】
トイレットペーパー13は、トイレットロール10において、エンボス凹部がロール外側となし、エンボス凸部がロール内側となるように巻き取られている。このようにトイレットペーパー13の外面にエンボス凹部を設けることで、トイレットペーパー13の外面の触感が良くなり、しかもシートの柔らかさを向上させることができる。
【0043】
(エンボス加工)
エンボス加工とは、エンボス加工の対象となるシートの両面のうちの一方の表面にエンボス凸部を、他方の表面にエンボス凸部の裏側で構成されるエンボス凹部を形成する加工をいう。エンボス加工は公知の方法で行うことができる。例えば、エンボス加工は、ほぼ相補的な形状の雄(凸)エンボスロールと雌(凹)エンボスロールとが噛み合う「マッチした」エンボスロールにより行われてもよく、または、雄(凸)エンボスロールと雌(凹)エンボスロールの形状が同一でなく、両者が噛み合った際にシートにせん断力を与える、いわゆる「マッチしていない」エンボスロールにより行われてもよく、または、雄(凸)エンボススチールロールとプレーンラバーロールとにより、行われてもよい。
【0044】
(シングルエンボス)
一般に、2プライのトイレットペーパーに対するエンボス加工には、トイレットペーパーの構成要素である2枚のシートのそれぞれにエンボス加工を施してからそれらを重ね合わせるいわゆるダブルエンボスと、2枚のシートを重ね合わせてからその積層体の全体に対してエンボス加工を施すいわゆるシングルエンボスと、がある。本発明の実施形態に適用されるエンボス加工は、2プライであるトイレットペーパー13に対してその構成要素であるシート11,12を互いに重ね合わせてからエンボス加工を施す、シングルエンボスである。
【0045】
ダブルエンボスの場合、エンボスを付して紙厚が高くなった2枚のシートを重ね合わせることとなるため、トイレットペーパー全体としての紙厚が増してしまう。そのため、トイレットペーパーを所定の巻径のトイレットロールとなるように巻き取ろうとすると、巻長を長くすることが困難になる場合がある。また、紙厚を低くするために、エンボス深さを浅くすると、シートに十分な柔らかさを提供できなくなる場合がある。これに対して、シングルエンボスの場合、2枚のシートを重ね合わせてからエンボスを付すため、トイレットペーパー全体としての紙厚は、相対的に低く抑えられる。したがって、本発明の実施形態においては、シングルエンボスを採用することにより、紙厚を厚くすることなくシートに柔らかさを付与することを可能としている。
【0046】
(エンボス深さ)
図2の(a)を参照して、本発明の実施形態において、トイレットペーパー13のエンボス部13aのエンボス凹部の深さであるエンボス深さDは、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上0.6mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。
【0047】
エンボス深さDが大きくなるにつれて、エンボスの凹凸が顕著になる。エンボスの凹凸によってトイレットペーパー13の嵩が高くなり、トイレットペーパー全体としての紙厚Tが高くなる。ロールの巻長にもよるが、エンボス深さDの大きさが上記範囲を超えると、紙厚Tが高くなりすぎて、トイレットロール10の巻径DRが上記所定の範囲を超えてしまって、トイレットロール10をトイレットホルダーに対して回転可能に保持することが困難な場合がある。また、エンボス深さDが小さくてエンボスの凹凸が十分でないと、トイレットペーパー13に対して十分な柔らかさを付与し得ない場合がある。
【0048】
(エンボス深さの測定方法)
エンボス深さDの測定方法について説明する。エンボス深さDは、形状測定レーザマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求めることができる。形状測定レーザマイクロスコープは、点光源であるレーザ光源を、対物レンズを介して観察視野内のX-Y平面を複数に分割したピクセルにスキャンし、ピクセル毎の反射光を、受光素子で検出する。そして、対物レンズを高さ(Z軸)方向に駆動し、最も反射光量の高いZ軸位置を焦点として、高さ情報と反射光量とを検出する。このようにしてスキャンを繰り返すことにより、全体に焦点の合った光量超深度画像と高低画像(情報)とが得られる。レーザ光源は、ピンホール共焦点光学系であるので、測定精度が高い。
【0049】
形状測定レーザマイクロスコープとしては、例えば、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープVR-3100」を使用することができる。レーザマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、例えば、製品名「VR-H1A」を使用することができる。本実施形態において、測定は、測定倍率12倍、および視野面積24mm×18mmの条件で行う。なお、測定倍率および視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0050】
図2の(b)に示されるように、エンボス深さの測定は、エンボス凹部が設けられたトイレットペーパー13のシート11の側の面(トイレットロール10のロール外側となる面)に対して行う。まず、エンボス部13aの凹部の周縁において対向する2点間の直線距離が最長となる最長部aを求める。
【0051】
図3の(a)は、形状測定レーザマイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー13の表面の高さは、濃淡で表されている。
図3の(a)の濃色部位が、個々のエンボス部13aを示す。
図3の(a)から、1つのエンボス部13aの最長部aを見分けることができる。この最長部aを横切る線分A-Bを引くと、
図3の(b)に示すようにエンボス部13aの高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。このとき、X-Y平面画像の色の濃淡で、トイレットペーパー13のシート11側の面におけるエンボスの凸部(非エンボス部)と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A-Bを決めればよい。
【0052】
図3の(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットペーパー13の試料表面(シート11側の表面)の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであり、ノイズ(トイレットペーパーの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでいる。そのため、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0053】
そこで、
図3の(c)に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから「輪郭曲線」Wを計算し、この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2を求め、次いで、変曲点P1,P2で挟まれる最小値を求め、この最小値を深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。
このようにして、エンボス深さDを、次式(III)により求める。
エンボス深さD=最大値Max-最小値Min (式III)
また、変曲点P1,P2のX-Y平面上の距離(長さ)を、最長部aの長さと規定する。
【0054】
図3の(c)に示される「輪郭曲線」は、
図3の(b)に示される断面曲線から、波長λc:800μm(ただし、λcは、JIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)よりも短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。なお、λcを、隣接するエンボス部13a同士のP1の間隔(以下、エンボスピッチとも称する)以下に設定すると、ピークをノイズと認識してしまう可能性がある。そのため、λcをエンボスピッチ未満とする。例えば、エンボスピッチが800μm以下の場合、例えばλc:250μmに設定する。隣接するエンボス部13a同士のP1の間隔とは、
図3の(c)の左または右に繋がる次のエンボス部13aについて同様にP1,P2を求め、隣接するエンボス同士でP1、P2、P1がこの順に並ぶときの2つのP1の間隔である。
【0055】
同様にして、
図2の(b)を参照して、最長部aに垂直な方向における、エンボス部13aのエンボス凹部の周縁において対向する2点間の直線距離が最長となる、最長部bについても、エンボス深さDを測定する。最長部aおよび最長部bの各エンボス深さDのうち、大きい方の値を、その1つのエンボス部13aのエンボス深さDとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパー13のシート11の側の表面の任意の10個のエンボス部13aについて行い、その平均値を、最終的なエンボス深さDとして採用する。
【0056】
エンボス深さDを測定する際には、トイレットロール10におけるロール外巻側のトイレットペーパー13の端部(トイレットロール10においてトイレットペーパー13を使用し始める位置)から、トイレットロール10の巻長の10%に当たる部分で測定する。例えば、巻長が50mの場合、端部から50mの10%である端部から5mの部分で、エンボス深さDを測定する。なお、巻長の10%の部分がミシン目15に当たる場合は、ミシン目15よりもロール外巻側の部分で測定する。これは、エンボス深さDが、トイレットロール10におけるトイレットペーパー13の巻き始めと巻き終わりとで、エンボスの潰れ度合いにより変わるためである。これにより、測定値の変動要因としての測定位置の影響を低減させることができる。
【0057】
(接合用エンボス)
図1の(1)を参照して、本発明の実施形態において、トイレットペーパー13には、構成シート11,12を互いに接合するための接合用エンボス部13bが設けられている。接合用エンボス部13bは、トイレットペーパー13の各層を構成するシート11,12のプライ剥離を抑制するために、紙面の一部領域にのみ設けられて、シート11およびシート12を一体的に接合する接合領域を画成する。
【0058】
接合用エンボス部13bは、例えば、
図1の(a)に示されるように、トイレットペーパー13の幅方向(CD方向)における両側縁部に、その長手方向(MD方向)に沿って延在するように形成されていてもよい。このように形成された接合用エンボス部13bのパターンは、特にエッジエンボスとも称される。
【0059】
エッジエンボスは、トイレットペーパーの幅方向における中央部にかからないように設けられる。これにより、エッジエンボスがトイレットペーパーの紙面の中央部の風合いを低下させることが防止される。エッジエンボスは、例えばトイレットペーパーの幅方向の各縁から10~50mmの範囲に設けられていてもよい。
【0060】
エッジエンボスにおいて、多数の接合用エンボス部13bの群は、長手方向に連続的に設けられていてもいい。また、エッジエンボスにおいて、多数の接合用エンボス部13bの群は、長手方向に間欠的に設けられていてもよい。
【0061】
接合用エンボス部13bは、好ましくは、トイレットペーパー13の表裏両面から厚さ方向外側に突出しないように形成される。このようにすることで、トイレットペーパーの表裏両面において、接合用エンボス部13bの表面は、トイレットペーパーの表面と同一レベルであるか、それ未満の高さ(深さ)を有する凹部となるので、トイレットペーパーの表面の滑らかな触感を悪化させない。
【0062】
(接合用エンボス部のエンボス深さ)
接合用エンボス部13bのエンボス深さは、上述のエンボス部13aのエンボス深さの測定方法と同様の方法により測定することができる。本発明の実施形態において、トイレットペーパー13の接合用エンボス部13bのエンボス凹部の深さである接合用エンボス深さは、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上0.6mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。
【0063】
(破断用ミシン目)
図1の(a)を参照して、本発明の実施形態において、トイレットペーパー13には、トイレットロール10から引き出されたトイレットペーパー13のトイレットロールからの切り離しを容易にするために、トイレットペーパーの幅方向に延びる破断用ミシン目15が、トイレットペーパー13の長手方向において一定の間隔で形成されている。この長手方向における一定の間隔は、トイレを使用する際に必要とされる紙量や使いやすさを考慮して、例えば100~300mmとされるが、これに限定されず、任意に設定することができる。
【0064】
破断用ミシン目15は、意図していないときにトイレットペーパー13が破断しないように、また、トイレットペーパー13に剪断力を加えた際にトイレットペーパーが容易に破断するように、ミシン目の数、寸法、幅方向における分布状況等が決定される。破断用ミシン目15は、破断の容易さの観点から、トイレットペーパー13の厚さ方向を貫通し、およびトイレットペーパー13の幅方向における両側縁部に跨るように延在させることが好ましい。
破断用ミシン目は、知られている任意のミシン目加工装置により設けることができる。
【0065】
(本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法および製造設備の例)
図4を参照しつつ、本発明の実施形態に係るトイレットロールを製造するために適用可能な方法および設備の例について説明する。トイレットロール10は、例えば、以下のようにして製造され得る。
【0066】
(原反ロールの製造)
シート11,12を構成要素とするトイレットペーパー13を製造するための原反ロール11R,12Rを製造する。詳細には、不図示の抄紙機を用い、抄紙用スラリー(紙料)から、幅広(トイレットロールの幅の数倍から二十数倍程度の幅)で長尺なシート11L,12Lを抄造しつつ巻き取って、シート11L,12Lが巻き取られた原反ロール11R,12Rを製造する。抄紙機としては、例えば、ツインワイヤフォーマ方式、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機を用いることができる。
【0067】
抄紙機は、クレープ加工を行うクレーピング部を備えていてもよい。クレーピング部では、原反ロール製造工程において、抄造されるシート(ウェブ)を乾燥させる間に、必要に応じて、シートに対し、クレーピングドクターによってクレープと呼ばれる非常に細かい波状の皺を付与することができる。クレープにより、シートに柔らかさ、嵩高さ(バルク感)、吸収性、美観(クレープの形状)、良好な手触り感などを付与することができる。
【0068】
また、抄紙機は、カレンダー部を備えていてもよい。カレンダー部では、乾燥されたシートに対して、必要に応じて、カレンダーロール対により上下からシートを挟み込み押圧するカレンダー処理を施すことができる。これによって、シート11L,12Lは圧縮されて、紙厚の調整および均一化、ならびに表面の平滑化などがなされる。カレンダー部は抄紙機とは別に設けられていてもよく、カレンダー処理は、原反ロール製造工程以降の任意の製造工程において行われてもよい。カレンダー処理は、複数段階に分けて行われてもよい。
【0069】
(トイレットロールの製造)
原反ロール11R,12Rを用いて、トイレットロールを製造する。
図4は、本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造に適用可能な製造設備の例を示す模式図である。以下に示す方法および
図4に示す製造設備は、例示目的であって本発明を限定するものではない。
原反ロール11Rおよび原反ロール12Rは、原反ロールスタンド20に対して回転可能に取り付けられ、原紙シート繰出装置(不図示)によって回転駆動されつつシート11Lおよびシート12Lを繰り出す。
原反ロール11Rおよび原反ロール12Rから繰り出されたシート11Lおよびシート12Lは、重合ローラ30に巻き掛けられ互いに重ね合わされて、原反ロールスタンド20の下流側に配されたエンボス加工部21に搬送される。このエンボス加工部21の下流側には、さらにミシン目形成部22および巻取部23が順に配されている。
【0070】
エンボス加工部21は、端的には、シート11L,12Lに対してエンボス加工を施すユニットである。
エンボス加工部21は、エンボスロールユニット21Aと、接合用エンボスロールユニット21Bと、を備えている。エンボスロールユニット21Aで、トイレットペーパー13Lの紙面全域に亘るシングルエンボスを施し、接合用エンボスロールユニット21Bで、トイレットペーパー13Lの幅方向における両側縁部にエッジエンボスを施す。
【0071】
エンボスロールユニット21Aは、エンボスロール24と、エンボスロールとの対向方向に沿って移動可能に配されたバックアップロール25と、を備え、これらの間に、重ね合わされたシート11L、12Lが挿通される。
【0072】
エンボスロール24は、回転自在であり、エンボスロール24の外周面には、
図1に示されるエンボス部13aのエンボスパターンPに対応した凹凸部が形成されている。本例において、エンボスロール24の少なくとも凹凸部分は金属にて形成されているが、バックアップロール25の表面部分は、弾性変形可能な硬質合成ゴムなどの硬質なゴム状弾性体にて形成されている。
【0073】
バックアップロール25がエンボスロール24の外周面に所定圧で押し当てられた結果、これらの間を通過するシート11L,12Lに共通するエンボス加工(シングルエンボス)が施される。このとき、バックアップロール25がエンボスロール24の外周面に押し当てられる際の所定圧を変動させることで、形成されるシングルエンボスのエンボス深さを制御することができる。
【0074】
次いで、エンボス加工部21におけるエンボスロールユニット21Aの下流側に、互いに対向する接合用エンボスホイール26と受けロール27とを有する接合用エンボスロールユニット21Bを配し、それらの間にシート11Lとシート12Lとの積層体(トイレットペーパー13L)を挿通し押圧することで、剥離防止のための接合用エンボス部が形成される。
【0075】
エンボス加工部21において、互いに積層されたシート11Lとシート12Lにより形成された幅広のトイレットペーパー13Lは、その下流に配されたミシン目形成部22に送出される。
【0076】
ミシン目形成部22は、トイレットペーパー13Lを幅方向に横切る破断用ミシン目を、トイレットペーパー13Lの長手方向(MD方向)に沿って、一定間隔毎に形成するようにしている。破断用ミシン目の形成には、知られている任意のミシン目形成手段を用いることができる。
【0077】
本例では、ミシン目加工装置は、駆動回転される回転刃ホルダー28hであって、この回転刃ホルダーの回転軸線と平行な方向に沿って一直線状をなす刃先が不連続となった櫛歯状カッター28cが取り付けられた回転刃ホルダー28hと、この回転刃ホルダー28hと対向して固定状態に保持される固定刃ホルダー29hであって、刃先が回転刃ホルダー28hの回転軸線と平行な方向に沿って一直線状に連続する直線状カッター29cが取り付けられた固定刃ホルダー29hと、を備えている。
【0078】
ミシン目加工装置は、長尺のトイレットペーパー13Lを、これら回転刃ホルダー28hの櫛歯状カッター28cと固定刃ホルダー29hの直線状カッター29cとの間を通過させる。これによりトイレットペーパー13Lの幅方向に沿って櫛歯状カッター28cの刃先に対応した破断用ミシン目が、トイレットペーパー13Lの幅方向両側端縁に跨がって形成される。
【0079】
より詳細には、トイレットペーパー13Lは、固定刃ホルダー29hに取り付けられた直線状カッター29cの刃先を横切るように通過し、このトイレットペーパー13Lの通過速度に応じた周速で回転刃ホルダー28hの櫛歯状カッター28cが回転する。櫛歯状カッター28cが直線状カッター29cを通過する際にミシン目がトイレットペーパー13Lに形成される。櫛歯状カッター28cと直線状カッター29cとで形成されるミシン目は、トイレットペーパー13Lの幅方向両側端縁に跨がって延在し、かつトイレットペーパー13Lをその幅方向に沿って切り離すための破断用ミシン目となる。
【0080】
ミシン目形成部22において、破断用ミシン目が形成された幅広のトイレットペーパー13Lは、その下流側に配された巻取部23に送出される。
巻取部23では、ミシン目形成部22から送出されるトイレットペーパー13Lの先端部を、巻芯である幅広の(すなわち軸方向に長尺の)紙管14Lに接着剤(ピックアップ糊)を介して巻き付ける。
【0081】
トイレットペーパー13Lを紙管14Lに所定長さだけ巻き取って、幅広の(すなわちCD方向の寸法が大きい)トイレットロール10Lとなるロール(ログ)を形成し、トイレットペーパー13Lの巻き終わりの終端を、カッターロール31により切断する。ログの巻き終わりの終端部を、ログの表面(ロール外周面)に接着剤(テールシール糊)によって糊付けして巻きほぐれないようにして、幅広トイレットロール10Lを形成する。
幅広トイレットロール10Lは、次いで、不図示の切断部により、製品スペック等に応じた所定幅に切断されて個々のトイレットロール10となる。
なお、上述の製造方法および製造装置は1つの例であって、本発明に係る製造方法および適用可能な製造装置を限定するものではない。
【0082】
例えば、上述の例では、
図4の製造装置に2本の原反ロール11R,12Rを搭載し、
図4の装置内でシート11L,12Lの積層が行われた。しかしながら、ワインダーやプライ機などの別の装置であらかじめシート11L,12Lを積層させて2プライの原反ロールとし、この1本の2プライの原反ロールを
図4の製造装置に搭載して、トイレットロールの製造を行ってもよい。
また、巻取部23で、トイレットロール10Lの代わりに、それよりも巻長の大きいロールを形成し、これを二次原反ロールとして、ワインダーのような巻取機能を有する別の装置に搭載して、所定長のログを形成する過程を経て、トイレットロールを製造してもよい。
【0083】
<本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法>
このように、本発明の実施形態に係るトイレットロールの製造方法は、概して、
(a)2枚のシートが重ね合わされてなる積層シートにシングルエンボスを施す工程、
(b)シングルエンボスが施された積層シートに接合用エンボスを施す工程、
(c)接合用エンボスが施された積層シートに破断用ミシン目を形成する工程、
(d)破断用ミシン目が形成された積層シートを、シングルエンボスのエンボス凹部がロール外側となるように、ロール状に巻き取る工程、
を含む。
【0084】
本発明の実施形態に係る製造方法は、上記工程(a)の前に、
(x)2枚のシートのそれぞれを抄造する工程、
(y)2枚のシートを重ね合わせて積層シートを形成する工程、
を含んでいてもよい。
【0085】
本発明の実施形態に係る製造方法は、上記工程(d)の後に、
(z)形成された幅広トイレットロールを製品幅に裁断する工程、
を含んでいてもよい。
【0086】
また、本発明の実施形態に係る製造方法は、本発明の作用効果を奏し得る限り、必要に応じてこれら以外の工程を含んでいてもよく省略してもよい。
【0087】
本発明の実施形態に係る製造方法は、シングルエンボスを施す工程において、エンボスロールを積層シート(トイレットペーパー)に圧接させるエンボス圧力条件を変更することで、エンボス凹部のエンボス深さを制御し得る。
【0088】
(作用効果)
本実施形態に係るトイレットロールは、2枚のシートが重ね合わされた2プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールであって、
トイレットロールの巻長は、40m以上100m以下であり、
トイレットロールの巻径は、100mm以上134mm以下であり、
シート1枚当たりの坪量は、11g/m2以上20.5g/m2以下であり、
トイレットロールの巻密度は、0.65m/cm2以上2.05m/cm2以下であり、
トイレットペーパーは、紙面全域に対するシングルエンボスと、2枚のシートのプライ剥離を防止するための接合用エンボスと、が付されており、およびエンボス凹部がロール外側となるように巻き取られており、
トイレットペーパーは、トイレットペーパーを幅方向に横切る破断用ミシン目がトイレットペーパーの長手方向に沿って一定間隔毎に形成されており、
シングルエンボスおよび接合用エンボスのエンボス深さは、0.8mm以下である。
【0089】
かかる構成を有する本発明の実施形態によると、ロールの巻径が所定の寸法内でありつつ、1ロール当りの巻長が長く、トイレットペーパーの柔らかさが確保され、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止された、2プライのトイレットロールを提供することができる。
【0090】
したがって、本発明によれば、トイレットロールの巻径が所定の寸法内でありつつ1ロール当りの巻長が長いため、持ち運びや保管時の省スペース化を図ることができ、またトイレットペーパーの柔らかさが確保されているため、使用感に優れ、しかもミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止されているため、使用時に不便を感じることのない、トイレットロールを提供することができる。本発明によれば、特には、紙質に関わらず、例えばシートの滑らかさが高い場合であっても、ミシン目の位置ずれやプライ剥がれが防止されたトイレットロールを提供することができる。
【0091】
(第2の実施形態)
図5を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0092】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るトイレットロールのトイレットペーパーの構成例を説明する正面図である。本例において、トイレットペーパー13のエンボス部13aのエンボスパターンPは、エンボス部13aが同心円状に配列された、点対称形状をなすドットの集合体であり、二点鎖線で囲まれた一辺が約28.5mmのほぼ正方形の領域を占めるように設定されている。また、エンボスパターンPは、その配列方向がトイレットペーパー13の幅方向および長手方向に対して傾斜角度をなすように設けられている。本例において、幅方向および長手方向に対するエンボスパターンPの配列方向の傾斜角度は7.5度である。なお、本発明においては、傾斜角度は0度でなければよく、7.5度に限定されない。
【0093】
このように、本発明の第2の実施形態は、トイレットペーパー13の紙面全域に連続的に反復されるエンボスパターンPが、トイレットペーパー13の幅方向(CD方向であって、図中、左右方向)および長手方向(MD方向であって、図中、上下方向)のそれぞれに対して配列方向が傾斜するように配列されていることを特徴とする。
【0094】
(作用効果)
トイレットペーパーの紙面全域に反復形成されるエンボスパターンがトイレットペーパーの幅方向および/または長手方向に沿って配列されている場合、トイレットペーパーが巻き取られたトイレットロールにおいて、エンボス部がロールの外周面から見て同じ位置に現れるようにロールの半径方向に積み重なりやすい。エンボス部が積み重なると、積み重なった部分がロール外周に膨出する現象が生じる。膨出部分の影響により、ロールの巻径を小さく制御することが困難となり、その結果、巻長さを長くすることに制限が生じる。また、トイレットロールを手に持ったときの触感がロール外周にわたって一様ではなくなり、ロールの柔らかさが低下する。
【0095】
これに対して、本発明の実施形態では、トイレットペーパー13の紙面におけるエンボスパターンPは、トイレットペーパー13の幅方向および長手方向に対して傾斜するように配列されている。この構成によれば、トイレットペーパー13が巻き取られたトイレットロール10において、エンボス部13aの積み重なりの位置が、ロールの外周面において分散される。これにより、積み重なった部分がロール外周に膨出する現象の発生が抑制される。したがって、本実施形態によれば、同一の巻長を有する本実施形態以外のトイレットロールと比べた場合に、ロールの巻径の低減効果が高くなる。また、本実施形態によれば、同一の巻径を有する、本実施形態以外のトイレットロールと比べた場合に、ロールの巻長を長くすることができる。また、本実施形態によれば、トイレットロール10の外周面における巻き固さのばらつきが少なくなり、柔らかいロールが得られる。
【0096】
なお、本実施形態に適用可能なエンボスパターンPの構成は、
図5に示される例に限定されるものではない。例えば、エンボスパターンPは、トイレットペーパー13の紙面において、正三角形の領域を占めるように設定され、エンボスパターンPを稠密状態で配列させるようにしてもよい。また、エンボスパターンPは、エンボス部13aを一定間隔で螺旋状に配列させたものや、あるいは任意の曲線に沿ってエンボス部13aを回転対象形状に配列させたものであってもよい。
【0097】
<本発明の実施形態の好ましい態様>
以上に説明した本発明の第1および第2の実施形態は、ロールの巻長を40m以上100m以下とするトイレットロールに、広く適用可能である。トイレットロールのロールの巻長に応じた、好ましい態様を以下により詳細に示す。
【0098】
(1) トイレットロールの巻長が40m以上60m以下である場合
(a)シート1枚当たりの坪量は、13.0g/m2以上20.5g/m2以下であり、好ましくは、13.5g/m2以上19.5g/m2以下であり、より好ましくは、14.5g/m2以上17.5g/m2以下である。
(b)トイレットロールの巻密度は、0.65m/cm2以上1.70m/cm2以下であり、好ましくは、0.75m/cm2以上1.55m/cm2以下であり、より好ましくは、0.80m/cm2以上1.40m/cm2以下である。
【0099】
(2) トイレットロールの巻長が60m以上80m以下である場合
(a)シート1枚当たりの坪量は、12.0g/m2以上18.5g/m2以下であり、好ましくは、13.0g/m2以上17.5g/m2以下であり、より好ましくは、14.5g/m2以上16.5g/m2以下である。
(b)トイレットロールの巻密度は、0.85m/cm2以上1.90m/cm2以下であり、好ましくは、0.95m/cm2以上1.70m/cm2以下であり、より好ましくは、1.00m/cm2以上1.55m/cm2以下である。
【0100】
(3) トイレットロールの巻長が80m以上100m以下である場合
(a)シート1枚当たりの坪量は、11.0g/m2以上17.0g/m2以下であり、好ましくは、12.0g/m2以上16.0g/m2以下であり、より好ましくは、13.0g/m2以上15.5g/m2以下である。
(b)トイレットロールの巻密度は、1.05m/cm2以上2.05m/cm2以下であり、好ましくは、1.20m/cm2以上1.95m/cm2以下であり、より好ましくは、1.30m/cm2以上1.80m/cm2以下である。
【0101】
本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【実施例0102】
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP):広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)が30質量%:70質量%のパルプ組成を有する同一の抄紙用スラリー(紙料)を用いて抄紙を行い、抄造されたシートがそれぞれ巻き取られた複数の原反ロールを得た。そのうち2本の原反ロールを用いて
図4に示される製造設備および製造方法に従ってトイレットロールを製造し、表1に示される実施例1から3の2プライのトイレットロールを得た。
ここで、シングルエンボスのエンボスパターンおよびその配列としては、
図5に示されるパターンを用いた。
実施例1から3のトイレットロールについて、以下の測定および評価を行った。なお、測定は、日本工業規格JIS P8111に準じた環境下(温度23±1°、湿度50±2%RH)で試料を調湿して行った。
【0103】
<測定>
〔紙管のコア径[mm]〕
製造されたトイレットロールの紙管の外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0104】
〔トイレットロールの巻径[mm]〕
製造されたトイレットロールのロール外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0105】
〔トイレットロールの巻長[m]〕
製造されたトイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどきつつ、トイレットペーパーの終端部から始端部までの紙管への巻き回しの長さを測定した。測定は0.5m刻みで行い端数は切り捨てた。
【0106】
〔巻き密度[m/cm2]〕
下式(I)および(II)に従って求めた。
(巻密度)=(巻長×プライ数)÷(トイレットロールの断面積) (式I)
(断面積)=(トイレットロールの巻径DR÷2)2×3.14-(コア径DC÷2)2×3.14 (式II)
【0107】
〔坪量(シート1枚当たり)[g/m2]〕
トイレットロールからトイレットペーパーを引き出し、日本工業規格JIS P8124に準じて、2プライのトイレットペーパーの坪量を測定し、プライ数の2で割って、シート1枚当たりの坪量を求めた。具体的には、2プライのトイレットペーパーを日本工業規格JIS P8111に規定する方法に従って調湿し、当該調湿した2プライのトイレットペーパーを2枚のシートを重ねたまま10cm×10cmの大きさに切り出し、当該切り出した2プライのトイレットペーパーの重さを測定し、当該重さを2プライのトイレットペーパーの切出面積の0.01m2で割って2プライのトイレットペーパーの坪量を測定し、当該坪量をプライ数の2で割ってシート1枚当たりの坪量を求めた。
【0108】
〔シングルエンボスのエンボス深さ[μm]〕
形状測定レーザマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して計算する上述の方法に従い、シングルエンボスのエンボス深さ(μm)を測定した。トイレットロールにおけるロール外巻側のトイレットペーパーの端部(トイレットロール10においてトイレットペーパー13を使用し始める位置)からトイレットロールの巻長の10%に当たる部分で、測定を行った。
【0109】
〔接合エンボス(エッジエンボス)のエンボス深さ[μm]〕
形状測定レーザマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して計算する上述の方法に従い、接合エンボス(エッジエンボス)のエンボス深さ(μm)を測定した。トイレットロールにおけるロール外巻側のトイレットペーパーの端部(トイレットロール10においてトイレットペーパー13を使用し始める位置)からトイレットロールの巻長の10%に当たる部分で、測定を行った。
【0110】
<評価>
以下の項目について官能評価を行い、結果を記号で示した(◎:優、〇:良、△:可、×:不可)。
【0111】
〔トイレットペーパーの柔らかさ〕
トイレットロールから引き出したトイレットペーパーで皮膚を撫でたときの触感が柔らかいほど、トイレットペーパーの柔らかさが高く、良好であるものとした。詳細には、皮膚を撫でたときに痛いと感じるものを不可(×)、痛くはないが固いと感じるものを可(△)、柔らかいと感じるものを良(〇)、極めて柔らかいと感じるものを優(◎)とした。
【0112】
〔プライ剥がれ、ミシン目の位置ずれ〕
トイレットロールをホルダーで回転可能に保持し、トイレットロールからトイレットペーパーを50cmずつ引き出しては、ロール外側のシートのミシン目位置で、トイレットペーパーを破断することを繰り返し、2プライの2枚のシート間のプライ剥がれの有無、およびミシン目の位置ずれの有無を確認した。
【0113】
2枚のシート間でプライ剥がれが見られなかったものを優(◎)、プライ剥がれが少し見られたが使用には問題がない程度だったものを良(〇)、プライ剥がれが生じ使用はできたが不便を感じたものを可(△)、プライ剥がれが激しく2枚のシートがバラバラとなって一体的に取り扱うことが困難であったものを不可(×)とした。
【0114】
2枚のシート間でミシン目の位置ずれが見られなかったものを優(◎)、ミシン目の位置ずれが少し見られたがミシン目位置でトイレットペーパーをきれいに破断することができたものを良(〇)、ミシン目の位置ずれが見られたがゆっくりと少しずつ剪断力をかければ何とか2枚のシートをミシン目位置で破断することができたものを可(△)、ミシン目位置が大きくずれ、ミシン目位置でキレイに破断することができなかったものを不可(×)とした。
表1に、試験結果を示した。
【0115】
【0116】
表1に示されるように、それぞれロールの巻長が50m、60m、90mである実施例1から3は、いずれも、巻径が100mm以上134mm以下であった。すなわち、実施例1から3の巻径は、一般的なトイレットロールホルダーに回転自在に収容可能な大きさであるとともに、実施例1から3の巻径は、従来主流の巻長である30mよりも長く、ロールの持ち運びや保管時の省スペース化が図られていた。
【0117】
また、実施例1から3は、巻長が長いほど巻密度が高くなるものであるところ、紙面全域に亘って施されたシングルエンボスのエンボス深さが0.8mm以下と低く設定されていた。これにより、シート1枚当たりの坪量をあまり低減させることなく、トイレットペーパーの柔らかさを確保しつつ、ロールの巻径を小さく制御することができた。
【0118】
また、実施例1から3には、それぞれエッジエンボスが付されており、プライ剥がれおよびミシン目の位置ずれの現象が防止されていた。