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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060131
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20240424BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240424BHJP
   C09D 5/28 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D7/63
C09D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167275
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 英治
(72)【発明者】
【氏名】林 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 寛
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG041
4J038DB001
4J038DD001
4J038DD231
4J038DG001
4J038DG262
4J038DG302
4J038GA03
4J038GA04
4J038GA05
4J038GA09
4J038GA11
4J038JB01
4J038JB36
4J038JC13
4J038KA03
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA04
4J038PA19
(57)【要約】
【課題】ちぢみ模様等の艶消し形状と、耐候性及び耐傷付き性の塗膜性能との関係性を明らかにし、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を形成可能な塗料組成物、該塗料組成物を用いたちぢみ模様塗膜の形成方法及び塗装金属板を提供すること。
【解決手段】水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)を含有する塗料組成物であって、該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗料組成物、該塗料組成物の塗膜の形成方法、塗装金属板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)を含有する塗料組成物であって、
該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
値PV(Pattern Value)は、塗膜面に光照射し、該照射光の正反射光が入射しない角度にて、光照射されている塗膜面をCCDカメラにて撮影して得られるグレースケールの8ビット階調の画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値から導出される値である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
値PVは下記式により算出される請求項2に記載の塗料組成物。
PV=(IPSL-0.25)×1000
(式中、IPSLは2次元パワースペクトル積分値)
【請求項4】
金属板及び前記金属板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装金属板であって、前記塗膜は、請求項1に記載の塗料組成物により形成され、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗装金属板。
【請求項5】
請求項1に記載の塗料組成物を、被塗物に塗装する塗装工程、及び塗装後の塗料組成物を170℃~270℃の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む、塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を形成可能な塗料組成物、該塗料組成物を用いたちぢみ模様塗膜の形成方法及び塗装金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター、雨戸、ドア、屋根及びサイディング等の建築部材、空調機の室外機等の電気機器類の外装材、並びに内装材等の各種の部材の塗装鋼板として、プレコート鋼板が広く用いられている。
【0003】
プレコート鋼板は、鋼板の表面に塗装を施し、塗膜を形成させた後、所望の製品へと加工される用途に使用される鋼板である。
【0004】
このため、プレコート鋼板に形成される塗膜には、柔軟性及び高い加工性が要求され、用途に応じさらに、耐候性、耐傷付性、耐食性等の塗膜性能も求められる。
【0005】
さらに、プレコート鋼板には上記製品の外観に対する顧客ニーズから、優れた意匠性が求められている。
【0006】
プレコート鋼板の艶消しの意匠性塗膜として、ちぢみ模様と呼ばれる微細な凹凸模様の表面形状を有する塗膜が知られている。
【0007】
このちぢみ模様は、目視で判別可能なおね(mm~cmサイズ)と目視判別がしにくいうね(nmサイズ)から構成されていることがわかっており、ちぢみ模様を形成する塗料の構成成分の材質の種類や量により多様に変化する。
【0008】
特許文献1には、均一な艶消し外観を有する意匠性に優れた塗膜を形成し、かつ耐候性に優れる塗料組成物として、少なくとも塗膜形成樹脂(A)及び架橋剤(B)を含む塗料組成物であり、該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.2μm以上であり、かつ展開面積比(Sdr)が800%以上であることを特徴とする塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-84372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の塗料組成物では、耐候性が改良された艶消し外観を有する塗膜は得られるが、艶消しを構成する表面形状(ちぢみ模様)と、耐候性及び耐傷付性等の塗膜性能との関係性の把握が不十分であり、得られる塗膜の艶消しの表面形状によっては、耐候性、耐傷付性等の塗膜性能が不十分となる場合があった。
【0011】
本発明の目的は、ちぢみ模様等の艶消し形状と、耐候性及び耐傷付き性の塗膜性能との関係性を明らかにし、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を形成可能な塗料組成物、該塗料組成物を用いたちぢみ模様塗膜の形成方法及び塗装金属板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはこれまで、塗料組成物と併せて、目視観察による官能評価結果との相関性が高い、艶消し(ちぢみ模様)塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法についても鋭意研究を行ってきており、目視観察による官能評価から艶消し塗膜の模様を「柄」(塗膜表面の数十から数百ミクロンの凹凸形状の集合体が表すランダムな陰影に対する知覚)として捉え、従来のRa、Rz、Sdr等のミクロな粗度とは異なる新たな指標(パラメータ値)、値PV(Pattern Value)を見出した。
【0013】
値PVは塗膜の画像をフーリエ変換し、得られた2次元パワースペクトル値から導出される値である。本パラメータ値、値PVにより、これまで官能的な目視評価で行なわれていた艶消し感(ちぢみ模様の柄)の定量評価が可能となった。
【0014】
また、艶消し感(ちぢみ模様の柄)の指標である値PVによる、耐候性、耐傷付性が良好となる範囲が存在することも明らかとなった。
【0015】
本発明は従来技術に上記新たな知見を応用することにより完成されたものである。
【0016】
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0017】
1.水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)を含有する塗料組成物であって、
該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗料組成物。
【0018】
2.値PV(Pattern Value)は、塗膜面に光照射し、該照射光の正反射光が入射しない角度にて、光照射されている塗膜面をCCDカメラにて撮影して得られるグレースケールの8ビット階調の画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値から導出される値である上記項1に記載の塗料組成物。
【0019】
3.値PVは下記式により算出される上記項2に記載の塗料組成物。
【0020】
PV=(IPSL-0.25)×1000
(式中、IPSLは2次元パワースペクトル積分値)
4.金属板及び前記金属板の少なくとも一方の表面上に塗膜を有する塗装金属板であって、前記塗膜は、上記項1に記載の塗料組成物により形成され、
前記塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗装金属板。
【0021】
5.上記項1に記載の塗料組成物を、被塗物に塗装する塗装工程、及び塗装後の塗料組成物を170℃~270℃の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む、塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、艶消し塗膜面の艶消し感(ちぢみ模様)の、定量評価パラメータである、値PVを指標とすることにより、艶消し感(ちぢみ模様)だけでなく、耐候性、耐傷付性が良好となる範囲も明らかとなり、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を形成可能な塗料組成物、該塗料組成物を用いたちぢみ模様塗膜の形成方法及び塗装金属板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の塗料組成物について具体的に説明する。
【0024】
本発明は、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)を含有する塗料組成物であって、
該塗料組成物を硬化させた塗膜の表面における、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150であることを特徴とする塗料組成物、である。
【0025】
算術平均高さ(Ra)は、塗膜の表面の粗さを示すパラメータであり、塗膜の表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すものである。Raが小さい場合には、塗膜表面はより平坦な形状であり、艶消しの度合いが小さいことを意味する。
【0026】
Raの測定は、JIS B 0601-2001に準拠して測定し、例えば、表面粗さ測定機サーフコム130A(ACCRETECH(東京精密)社製)等により測定することができる。
【0027】
Raは、艶消し外観、耐候性の観点から、1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上、さらに特に好ましくは2.5μm以上である。Raの上限値は好ましくは13.0μm、より好ましくは11.5μm、さらにより好ましくは10.0μmである。
【0028】
ちぢみ模様において形成されるちぢみ形状として、例えば、倍率20倍程度の画像で観察される格子状の凸部分(「おね」という。肉眼でも確認可能)と倍率150倍程度の画像で観察される格子状(おね)内部の凸凹部分(「うね」という。肉眼では確認困難)が形成されるちぢみ形状がある(図1)。
【0029】
値PV(Pattern Value)は、ちぢみ模様で形成される「柄」と呼ばれる、上記形状の大小を定量的に数値化したパラメータである。
【0030】
値PVが大きいほど、上記「柄」の形状がより大きいことを表す。
【0031】
以下、値PVについて説明する。
【0032】
値PVの測定にあたっては、まず塗膜面に光照射する。この光は擬似(人工)太陽光が好ましく、この光源としては、例えばLEDライト、ハロゲンランプ、メタルハライドランプなどが適している。塗膜面への光照射角度は塗面の鉛直線に基いて、5~60度、好ましくは30~60度の範囲内が適しており、特に鉛直線に対して45度が好適である。また、光の照射領域の形状は特に限定されるものではないが、通常、円形であり、塗膜面上における照射面積は通常、該塗膜面の1~10,000mm の範囲内が適しているが、この範囲に制限されるものではない。照射光の照度は、通常、100~2,000ルクス(lux)の範囲内が好ましい。
【0033】
このように塗膜面に光照射し、それに基く反射光のうち、正反射光が入射しない角度で、光が照射されている塗膜面をCCD(Charge Couple Device)カメラで撮影する。この撮影角度は正反射光が入射しない角度であればよいが、塗膜面に対して鉛直方向が特に好ましい。また、CCDカメラの撮影方向と正反射光との角度は10~60度の範囲内にあることが好ましい。光照射された塗膜面におけるCCDカメラでの測定範囲は、均一に光が照射されている範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、照射部分の中央部を含み、測定面積が1~10,000mm、好ましくは500~5000mmの範囲内であることが適当である。
【0034】
値PVの測定にあたっては、CCDカメラで撮影された画像を画像解析し、艶消し感を定量的に評価する。
【0035】
値PVの測定の好適な方法について以下に説明する。
【0036】
値PVの測定の好適な方法において、CCDカメラで撮影された画像は、2次元画像であり、多数(通常10,000~10,000,000個)の区画(ピクセル、画素)に分割され、それぞれの区画における輝度を測定する。値PVの測定において、「輝度」とは、「CCDカメラによって撮影して得られた2次元画像の区画毎の濃淡値を示すデジタル階調であり、被写体の明るさに対応するデジタル量」を意味する。8ビット分解能のCCDカメラから出力される区画毎の輝度を意味するデジタル階調(グレースケールの8ビット階調)は0~255の値を示す。
【0037】
上記CCDカメラで撮影された2次元画像において、艶消し塗膜の反射光が強い部分に相当する区画は凹凸形状で凸の部分で形状が平であり、反射が強いので輝度が高く、そうでない部分に相当する区画では当然ながら輝度は低くなる。また凹凸形状の反射光が強い部分に相当する区画であっても、凹凸の高低差、形状、連続性などによって輝度が変化する。つまリ区画ごとに輝度を表示でき、それぞれの区画における輝度に基いてCCDカメラで撮影した2次元画像の輝度分布を三次元に表示することが可能である。この輝度の三次元分布図(図2)は、山及び谷に分けられ、山の高さと谷の深さの差が大きくなるほど艶消し感が顕著であることを示している。
【0038】
上記CCDカメラで撮影された画像の解析は、CCDカメラに接続された画像解析装置によって行うことができる。この画像解析装置に用いられる画像解析ソフトとしては、例えば三谷商事(株)の「WINROOF」(商品名)が好適である。
【0039】
値PVの測定においては、画像を解析して得られた区画毎の輝度を基礎にして、艶消し塗膜の艶消し感(柄)を定量的に評価する。
【0040】
艶消し感の「柄」の定量的測定は、前記のようにして、光照射された艶消し塗膜面をCCDカメラで撮影して2次元画像を得て、この2次元画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから、低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値を得て、この2次元パワースペクトル積分値から塗膜の艶消し感の「柄」を定量的に評価する。
【0041】
2次元フーリエ変換後の空間周波数スペクトルの画像から低空間周波数成分を抽出して、積分及び直流成分での正規化を行なって得られる2次元パワースペクトル積分値を測定するにあたり、空間周波数スペクトルの画像から抽出する低空間周波数成分の抽出領域を、解像度を表す線密度が、下限値0本/mm~上限値が0.1~6.2本/mmの範囲のいずれかの数値である領域、好ましくは下限値0.03本/mm~上限値が1.55本/mmの領域とすることが、目視観察による「艶消し感」の官能評価結果との相関性を高いものとする観点から適している。
【0042】
2次元パワースペクトル積分値は次式によって求めることができる。
【0043】
【数1】
【0044】
(式中、νは空間周波数、θは角度、Pはパワースペクトル、0~Lは抽出した低空間周波数領域であり、Lは抽出した周波数の上限を意味する)
上記のようにして得られる2次元パワースペクトル積分値と目視観察による「艶消し感」の官能評価結果との相関性は高いものである。
【0045】
値PV(Pattern Value)は、上記2次元パワースペクトル積分値をIPSLとすると、次式により導出されるパラメータ値である。
【0046】
IPSLとは、Integration of Power Spectrum of Low frequency の略である。
【0047】
PV=(IPSL-0.25)×1000
2次元パワースペクトル積分値、IPSLが概ね0.25~0.4の値となるので、値PVはパラメータ値として、わかりやすい値の範囲(0(小)~150(大)の範囲)とするために設定したパラメータ値である。
【0048】
次に値PV測定のための装置について説明する。
【0049】
該装置は、例えば、後記図3に示すように、塗膜面に光を照射する光照射装置(1)、光照射された塗膜面を該照射光が入射しない角度にて撮影して画像を形成するCCDカメラ(2)、該CCDカメラに接続され該画像を解析する画像解析装置(3)を具備する艶消し感定量評価装置であることができる。
【0050】
画像解析装置(3)は、少なくとも画像解析時には、上記画像を8ビット階調のグレースケールに変換した画像から2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を求める手段、例えば画像解析ソフト及びコンピュータを有する。
【0051】
上記画像解析装置によって得られるデータを元に、上記式から算出することにより値PVを求めることができる。
【0052】
値PVは、上記画像解析装置を構成するコンピュータ等の手段によって得てもよく、得ることが好ましい。この艶消し感定量評価装置によって、上記値PVを求めることができる。
【0053】
光照射装置としては、擬似(人工)太陽光を照射できる装置であり、その光源として、例えばLED、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。画像解析装置の画像解析ソフトとしては、例えば、三谷商事(株)製の「WINROOF」(商品名)等を挙げることができる。画像解析ソフトに加えて、それ自体既知の計算ソフトも使用することができる。
【0054】
上記画像解析装置は、少なくとも画像解析時には、さらにCCDカメラによって撮影された上記光照射された塗膜面の画像を8ビット階調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得る手段を有することができる。該手段としては、例えば画像解析ソフト及びコンピュータを挙げることができる。
【0055】
値PVは良好な艶消し(ちぢみ模様)外観、耐候性及び耐傷付性の観点から、1.0~150の範囲内である。値PVの下限値は、好ましくは1.3、より好ましくは、1.5である。また、値PVの上限値は、好ましくは140、より好ましくは、130である。
【0056】
<水酸基含有樹脂(A)>
水酸基含有樹脂(A)は、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂であり、必要に応じてカルボキシル基を有していてもよい。
【0057】
水酸基含有樹脂(A)の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができるが、塗膜の加工性及び耐候性の観点から水酸基含有ポリエステル樹脂が好ましい。
【0058】
水酸基含有ポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、シリコン変性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0059】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、通常、多塩基酸成分(a1)及び多価アルコール成分(a2)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0060】
上記多塩基酸成分(a1)としては、ポリエステル樹脂の製造に際して多塩基酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。具体的には例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
【0061】
脂環族多塩基酸は、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4~6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。
【0062】
該脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等を挙げることができる。脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0063】
脂環族多塩基酸としては、特に、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。
【0064】
脂肪族多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。具体的には例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等を挙げることができる。脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0065】
脂肪族多塩基酸としては、炭素数4~18のアルキル鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4~18のアルキル鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0066】
芳香族多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物である。具体的には例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等を挙げることができる。芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0067】
アルコール成分(a2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を挙げることができる。
【0068】
脂環族ジオールは、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4~6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0069】
脂肪族ジオールは、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0070】
芳香族ジオールは、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0071】
前記脂環族ジオール、脂肪族ジオール及び芳香族ジオール以外のその他の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
【0072】
上記その他の多価アルコールのうち、高分子量化及び反応性向上の観点から、3価以上のアルコールを好適に使用することができる。上記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等のトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等を挙げることができる。これらのうち、特に、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0073】
また、上記多価アルコール(a2)以外のアルコール成分として、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等も必要に応じて使用することができる。
【0074】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記多塩基酸成分と多価アルコール成分とを窒素気流中、150~250℃で5~10時間反応させて、エステル化反応又はエステル交換反応を行なうことにより製造することができる。
【0075】
上記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分及びアルコール成分を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0076】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。触媒としては、ジブチル錫ジベンゾエート、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0077】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、ポリイソシアネート化合物、オルガノポリシロキサン化合物等で変性することができる。
【0078】
脂肪酸や油脂で変性することによってアルキド樹脂が得られる。ポリイソシアネート化合物で変性することによってウレタン変性ポリエステル樹脂が得られる。オルガノポリシロキサンで変性することによってシリコン変性ポリエステル樹脂が得られる。
【0079】
前記アルキド樹脂の製造に用いられる脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。油脂としては、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油等を挙げることができる。
【0080】
ウレタン変性ポリエステル樹脂の変性に用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビゥレット型付加物等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0081】
シリコン変性ポリエステル樹脂の変性に用いられるオルガノポリシロキサン化合物としては、例えば、下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン(i)、加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサン(ii)等を挙げることができる。
【0082】
Si(OH)(4-a-b)/2・・・式(1)
(式中、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素数1~8の1価炭化水素を示し、a及びbは、0.2≦a≦2、0.1≦b≦3、a+b<4の関係を満たす。
【0083】
は、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、ビニル基、3-グリシドキシプロピル基、3-メタクリロイルオキシプロピル基、3-アミノプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基等のアルキル基である。
【0084】
このようなオルガノポリシロキサン(i)は、例えばメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、もしくはこれらに対応するアルコキシシランの1種もしくは2種以上の混合物を公知の方法により大量の水で加水分解することによって得ることができる。
【0085】
なお、オルガノポリシロキサン(i)の市販品としては、KR-311、KR-282、KR-271(いずれも信越化学工業社製、商品名)を挙げることができる。
【0086】
オルガノポリシロキサン(ii)は、分子の末端又は側鎖に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンであって、分子中の加水分解性シリル基、例えばアルコキシシリル基が空気中の湿気や水分等と反応して加水分解されてシラノール基を形成する。オルガノポリシロキサン(ii)は、常温で加水分解縮合するものであれば、それ自体既知の化合物を制限なく使用することができる。オルガノポリシロキサン(ii)としては、一般に、重量平均分子量が200~28,000、特に300~18,000の範囲内にあるものが好適である。
【0087】
水酸基含有樹脂の重量平均分子量は、得られる塗膜の加工性、耐薬品性、仕上り外観の観点から、3,000~60,000が好ましく、特に5,000~40,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0088】
なお、本明細書において数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0089】
具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0090】
水酸基含有樹脂の水酸基価は、塗膜の加工性の観点から5~250mgKOH/g、特に10~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0091】
水酸基含有樹脂の酸価は、仕上り外観の観点から、30mgKOH/g以下、特に20mgKOH/g以下の範囲内であることが好ましい。
【0092】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)は、水酸基含有樹脂(A)と反応することにより、硬化塗膜の形成に寄与する成分である。
架橋剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂;ポリイソシアネート化合物;ブロックポリイソシアネート化合物(ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を活性水素含有化合物でブロックした化合物);フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0093】
架橋剤(B)は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0094】
架橋剤(B)としては、架橋反応性及び仕上り外観の観点から、アミノ樹脂を好適に使用することができる。
【0095】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等を挙げることができ、なかでもメラミン樹脂が好ましい。
【0096】
メラミン樹脂は、一般的に、メラミンとアルデヒドから合成される熱硬化性の樹脂であり、トリアジン核とトリアジン核1つあたり3つの反応性官能基-NXとを有している。メラミン樹脂としては、反応性官能基として-N(CHOR)〔Rは好ましくは炭素数1~8のアルキル基、以下同じ〕を含む完全アルキル化型;反応性官能基として-N(CHOR)(CHOH)を含むメチロール基型;反応性官能基として-N(CHOR)(H)を含むイミノ基型;反応性官能基として、-N(CHOR)(CHOH)と-N(CHOR)(H)とを含む、あるいは-N(CHOH)(H)を含むメチロール/イミノ基型の4種類を挙げることができる。
【0097】
上記メラミン樹脂のなかでも、艶消し塗膜形成の観点から、完全アルキル化型のメラミン樹脂を用いることが好ましい。
【0098】
完全アルキル化型のメラミン樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル混合型メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル混合型メラミン樹脂が好ましい。
【0099】
メラミン樹脂として市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、サイメル303、サイメル254、サイメル1170、サイメル235、サイメル238、サイメル1123、マイコート715(いずれもダイセル・オルネクス社製)、スミマールM-40S(住友化学社製)、スーパーベッカミンJ-820-60、スーパーベッカミンL-121-60、(いずれもDIC社製)、ユーバン20SE-60(三井化学社製)等を挙げることができる。
【0100】
上記メラミン樹脂は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0101】
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトカプロエート、3-イソシアナトメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。さらに、これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビュレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0102】
上記ポリイソシアネート化合物の中でも加工性及び耐候性に優れるちぢみ模様塗膜を得る観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物が好ましく、なかでも脂肪族ポリイソシアネート化合物のヌレート体、脂肪族ポリイソシアネート化合物のアダクト体、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物のビュレット体が好ましい。
【0103】
特に、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が好ましい。
【0104】
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を活性水素含有化合物でブロックした化合物である。
【0105】
上記活性水素含有化合物としてのブロック剤としては、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール等のピラゾール類;メチルエチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類; n-ブタノール、2-エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン類;等を挙げることができる。
【0106】
これらのブロック剤の中でも加工性及び耐候性に優れるちぢみ模様塗膜を得る観点から、ピラゾール類、オキシム類、フェノール類及びラクタム類、特に、オキシム類を好適に使用することができる。
【0107】
ブロックポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、バーノックD-500、バーノックD-550、バーノックDB-980K、(以上、DIC社製、商品名)、スミジュールN3300、デスモジュールN3600、デスモジュールN3790BA、デスモジュールN3900、デスモジュールXP2840等のヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体;デスモジュールN75MPA/X、デスモジュールN3200等のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体;デスモジュールHT等のヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(以上、住化バイエルウレタン社製品社製、商品名)、タケネートD-102、タケネートD-202、タケネートD-110NもしくはタケネートD-123N(以上、三井化学社製、商品名)、コロネートL、コロネートHL、コロネートEH、コロネート203、ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業社製、商品名)、デュラネートMF-K60B、SBN-70D、MF-B60B、17B-60P、TPA-B80E、E402-B80B(以上、旭化成ケミカルズ社製、商品名)等を挙げることができる。
【0108】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)との混合割合は、(A)成分及び(B)成分の固形分総量を基準にして、固形分量で、水酸基含有樹脂(A)が、50~95質量%、好ましくは60~90質量%、架橋剤(B)が5~50質量%、好ましくは10~40質量%であることが、加工性、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を得る観点から好ましい。
【0109】
<スルホン酸化合物(C)>
スルホン酸化合物(C)は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)との反応を促進する触媒として作用する。また、スルホン酸化合物(C)とアミン化合物(D)とは塩を形成し得る。スルホン酸(C)とアミン化合物(D)との塩は、塗料組成物より形成される塗膜の表面硬化と内部硬化との差を大きくし、塗膜全体の不均一硬化を促進する作用がある。
【0110】
スルホン酸化合物としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等を挙げることができる。これらは1種を単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0111】
良好な艶消し外観(ちぢみ模様)形成の観点から、上記のうち特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸を好適に使用することができる。
【0112】
スルホン酸化合物(C)の含有量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の固形分総量を基準にして、固形分量として、0.1~3.0質量%、特に0.2~2.5質量%、さらに特に0.3~2.0質量%の範囲内であることが、塗膜の良好な艶消し外観(ちぢみ模様)形成の観点から好ましい。
【0113】
<アミン化合物(D)>
アミン化合物(D)は、スルホン酸化合物(C)の中和に寄与し、また、少なくともその一部は本発明の塗料組成物中のスルホン酸化合物(C)との塩を形成して存在し得る。さらに、より過剰量のアミン化合物(D)は、塗膜の不均一硬化を促進し、良好な艶消し外観(ちぢみ模様)形成にも寄与する。
【0114】
アミン化合物(D)としては、例えば、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、ジアミルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ピペリジン、2-ピペコリン、3-ピペコリン、4-ピペコリン、2,4-,2,6-,3,5-ルペチジン、3-ピペリジンメタノール等の第2級アミン;トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリアリルアミン、N-メチルジアリルアミン、N-メチルモルホリン、N,N,N´,N´-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、N-メチルピペリジン、ピリジン、4-エチルピリジン等の第3級アミン;N-メチルピペラジン等の第2級及び第3級アミノ基を有するアミン等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0115】
アミン化合物(D)において、沸点、種類及び添加量が、塗膜の良好な艶消し外観(均一なちぢみ模様)を得るためには重要である。
【0116】
アミン化合物(D)の沸点は、30~250℃、特に70~200℃、さらに特に75~160℃の範囲内であることが好ましい。
【0117】
アミン化合物(D)としては特に、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びジ-n-ブチルアミンが好ましい。
【0118】
アミン化合物(D)の添加量は、スルホン酸化合物(C)との比率で、モル比で、アミン化合物(D)/スルホン酸化合物(C)=1.5~30、特に3~25、さらに特に5~20の範囲内であることが好ましい。
【0119】
スルホン酸化合物(C)とアミン化合物(D)とは、予め混合させておいてもよく、これらの混合物を配合してもよい。また、アミン化合物(特に2級アミン又は3級アミン)でスルホン酸をブロックしたブロック化スルホン酸化合物も使用することができ、さらにアミン化合物(D)と併用することができる。
【0120】
ブロック化スルホン酸化合物の市販品としては、例えば、ネイキュア5225(キングインダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸含有量は25%)、ネイキュア2500(キングインダストリイズ社製、パラトルエンスルホン酸のアミン中和溶液、パラトルエンスルホン酸含有量は25%)等を挙げることができる。
【0121】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)の他に、骨材、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料、遮熱顔料等の顔料;消泡剤、表面調整剤、紫外線吸収剤(トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等)、光安定剤、ワックス等の塗料用添加剤;有機シリケート等の汚染防止剤;錫化合物、チタン化合物等の金属触媒;水及び有機溶剤等の溶媒;等の従来から塗料組成物に使用されている公知の原材料を必要に応じて使用することができる。
【0122】
骨材としては、例えば、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、アクリロニトリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、尿素樹脂粒子等の有機樹脂粒子;ガラスビーズ、セラミック繊維及びシリカ粒子等を挙げることができる。これらは1種を単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0123】
骨材の量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の固形分総量を基準にして、0.5~30質量%、特に2~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0124】
骨材を含むことにより、本発明の塗料組成物より得られる塗膜において、均一な艶消し塗膜を安定的に発現させることができる。
【0125】
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、コールダスト等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、微粒化チタン等を挙げることができる。
【0126】
光輝性顔料としては、例えば、アルミ箔、ブロンズ箔、スズ箔、金箔、銀箔、チタン金属箔、ステンレススチール箔、ニッケル・銅等の合金箔、箔状フタロシアニンブルー等の箔顔料を挙げることができる。
【0127】
体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、マイカ、ガラス繊維等を挙げることができる。
【0128】
上記顔料は1種を単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0129】
顔料の量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の固形分総量を基準にして、3~150質量%、特に5~100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0130】
ワックスとしては、塗料用として当業者に知られているワックスが使用でき、例えば、マイクロクリスタリン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、カルナウバ及びそれらの変性物等を挙げることができる。
【0131】
上記ワックスは1種を単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0132】
ワックスの量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の固形分総量を基準にして、0.5~15質量%、特に1~7質量%の範囲内であることが好ましい。
【0133】
ワックスを含むことにより、本発明の塗料組成物より得られる塗膜において、良好な耐傷付性を安定的に発現させることができる。
【0134】
溶媒としては、例えば、水;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ソルフィット(クラレ社製)等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系有機溶剤;並びに、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、スワゾール1500(芳香族炭化水素系溶剤、ENEOS社製)等を挙げることができる。上記溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0135】
本発明の塗料組成物は、水系塗料であってもよく、有機溶剤系の塗料であってもよい。
【0136】
<塗料組成物の製造方法>
本発明の塗料組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダー、ペイントシェーカー又はディスパー等の混合機、分散機、混練機等を選択して使用し、各成分を混合することにより、製造することができる。
【0137】
<被塗物>
本発明の塗料組成物の塗装の対象となる被塗物は、例えば、溶融法又は電解法等により製造される亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、冷延鋼板等の金属板を挙げることができる。
【0138】
また、これら鋼板又はめっき鋼板以外に、アルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)等の金属板も被塗物とすることができる。
【0139】
上記金属板は、表面処理されていることが好ましい。具体的には、上記金属板は、アルカリ脱脂処理、湯洗処理、水洗処理等の前処理が施された後に、化成処理が施されていることが好ましい。化成処理は公知の方法で行ってよく、具体的にはクロメート処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理等の非クロメート処理等が含まれる。上記表面処理としては、使用する鋼板に応じて適宜選択することができるが、重金属を含まない処理が好ましい。
【0140】
<塗装金属板>
本発明の塗装金属板は、金属板、及び、該金属板の少なくとも一方の表面に本発明の塗料組成物から形成された塗膜を有する。上記塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、スルホン酸化合物(C)及びアミン化合物(D)を含有する。上記塗膜の表面において、算術平均高さ(Ra)が1.0μm以上であり、かつ値PV(Pattern Value)が1.0~150である。
【0141】
上記塗膜の膜厚は、1μm~40μm、特に15μm~30μm、さらに特に18μm~25μmの範囲内であることが好ましい。
【0142】
塗装金属板は、一方の表面に本発明の塗料組成物から形成された塗膜を有し、他方の表面に、既知の塗料組成物から形成される塗膜を有していてもよい。
【0143】
例えば、他方の表面には、エポキシ樹脂を含む塗料組成物等、公知の塗料組成物から形成された塗膜を有してもよい。
【0144】
塗装金属板は、金属板と、本発明の塗料組成物から形成した塗膜との間に、下塗り塗膜(プライマー塗膜)を有してもよい。
【0145】
上記下塗り塗料(プライマー塗料)は従来公知のものであってよい。
【0146】
プライマー塗料は、被塗物の種類、金属表面処理の種類によって適宜選択されるが、特にエポキシ樹脂系プライマー塗料、ポリエステル樹脂系プライマー塗料及びそれらの変性プライマー塗料が好適であり、加工性が特に要求される場合は、ポリエステル系プライマー塗料が好適である。環境保護の観点から、クロム系防錆成分を含有しないクロムフリープライマー塗料を使用することが好ましい。
【0147】
プライマー塗料は、ロールコート塗装、スプレー塗装等の公知の塗装方法によって、通常、乾燥膜厚1~30μm、好ましくは2~20μmとなるように塗装し、さらに素材到達最高温度が140~270℃、好ましくは190~240℃の温度で、5秒間~120秒間、好ましくは10~60秒間加熱することにより、硬化プライマー塗膜を形成することができる。
【0148】
上記プライマー塗膜は一層であってもよいし、第1のプライマー塗膜の上に第2のプライマー塗膜(中塗塗膜)が形成された二層であってもよい。プライマー塗膜を二層とする場合、第1のプライマー塗膜に防食機能を持たせ、第2のプライマー塗膜(中塗塗膜)に、加工性や耐チッピング性を持たせる等、二層のプライマー塗膜に異なる機能を付与することも可能である。
【0149】
下塗り塗膜を有することで、本発明の塗料組成物から形成された塗膜の密着性、耐食性を向上させることができる。
【0150】
下塗り塗膜の膜厚は、1μm~20μm、特に3μm~7μmの範囲内であることが好ましい。
【0151】
<塗膜の製造方法>
本発明の塗膜の製造方法は、被塗物に本発明の塗料組成物を塗装する工程、及び前記塗料組成物を170℃~270℃の範囲の温度で乾燥及び/又は硬化させることを含む。
【0152】
被塗物の表面に塗装下地処理としてリン酸塩処理、クロメート処理等の化成処理を施し、その上に塗料組成物を塗装することが好ましい。このように化成処理を施した金属板上に、本発明の塗料組成物を塗装することにより、塗膜の金属板に対する密着性及び耐食性を向上させることができる。
【0153】
また、化成処理を施した金属板に下塗り塗膜(プライマー塗膜)を形成し、その上に塗装することもできる。
【0154】
本発明の塗料組成物からなる塗膜は、塗料組成物を金属板等の被塗物に塗布した後、被塗物を加熱する焼付処理を行なうことによって形成することができる。
【0155】
塗料組成物の塗装は、特に制限はなく、被塗物に、バーコーター、ロールコーター、ロールカーテンコーター、カーテンフローコーター、ダイコーター又はスプレーガンを用いて行うことができる。
【0156】
また、塗装後、被塗物を加熱する焼付処理方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の加熱手段により塗膜を焼付、樹脂を架橋させることにより硬化塗膜を得ることができる。焼付温度(鋼板等の被塗物が達する最高温度)は、通常180℃~250℃、好ましくは200℃~235℃の範囲内であり、焼付時間は、通常5秒~100秒、好ましくは25秒~60秒の範囲内である。
【0157】
本発明の塗料組成物を用いて得られる塗膜の膜厚(乾燥膜厚)は、通常1μm~40μmの範囲内であり、例えば、上塗り塗膜である場合は、好ましくは15μm~30μm、より好ましくは18μm~25μmの範囲内である。
【実施例0158】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中「部」及び「%」は、特にことわりのない限り質量基準である。
【0159】
塗料組成物の製造
実施例1
ポリエステル樹脂1(注1)85部(固形分)、サイメル303(注4)15部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.5部、ジイソプロピルアミン1.5部、UVA1130(注7)2部、ポリエチレンディスパージョン1.5部、DYNEON TF9205(注8)2部、タフチック AR650M(注9)5部、GASIL HP560(注11)7部、及びカーボンMA-100(注12)10部を混合し、有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500=40/60(質量比)の混合溶剤)を加えて希釈して、粘度80秒(フォードカップ#4、25℃)の塗料組成物No.1を得た。
【0160】
実施例2~16及び比較例1~6
表1に示す配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、各塗料組成物No.2~22を得た。なお、塗料組成物No.17~22は比較例用である。また、表1において、アミン化合物を除く成分の量は固形分量である。
【0161】
また、表中の各注は以下のとおりである。
【0162】
(注1)ポリエステル樹脂1
酸成分;イソフタル酸/無水フタル酸/アジピン酸、アルコール成分;1,3ーブチレングリコール/ネオペンチルグリコール/グリセリンで、DBRが0.91の組成比で合成されたポリエステル樹脂、重量平均分子量約8000、水酸基価100mgKOH/g、酸価2.9mgKOH/g。
【0163】
(注2)ポリエステル樹脂2
酸成分;テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸、アルコール成分;エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/グリセリンで、DBRが0.98の組成比で合成されたポリエステル樹脂、重量平均分子量約19000、水酸基価20mgKOH/g、酸価8.1mgKOH/g。
【0164】
(注3)ポリエステル樹脂3
酸成分;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、アルコール成分;ネオペンチルグリコール/2-ブチルー2-エチルー1,3-プロパンジオール/トリメチロールプロパンで、DBRが0.98の組成比で合成されたポリエステル樹脂をヤシ油脂肪酸で変性したアルキド樹脂、重量平均分子量約30000、水酸基価75mgKOH/g、酸価6.0mgKOH/g。
【0165】
(注4)サイメル303:日本サイテックインダストリーズ株式会社製、商品名、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂
(注5)サイメル325:日本サイテックインダストリーズ株式会社製、商品名、イミノ基型メチル化メラミン樹脂
(注6)スーパーベッカミンL-121-60:DIC社製、商品名、ブチル化メラミン樹脂
(注7)UVA1130:紫外線吸収剤、商品名、B.A.S.F.社製
(注8)DYNEON TF9205:3M DYNEON社製、商品名、ポリテトラフルオロエチレン
(注9)タフチック AR650M:東洋紡社製、商品名、ポリメタクリル酸メチル系共重合物微粒子
(注10)タフチック A-20:東洋紡社製、商品名、ポリアクリロニトリル系微粒子
(注11)GASIL HP560:PQ Corporation社製、商品名、二酸化ケイ素、合成非晶質シリカ
(注12)カーボン MA-100:三菱ケミカル社製、商品名、カーボンブラック
試験板の作成
アルミニウム-亜鉛合金亜鉛メッキ鋼板(GL材、板厚0.35mm)上に、乾燥膜厚4μmのプライマー塗膜(KPカラー8635プライマー、関西ペイント社製、商品名、ポリエステル樹脂系プライマー)を形成した。
【0166】
次いで、上記プライマー塗膜上に、上記実施例及び比較例で得た各塗料組成物No.1~22を乾燥膜厚22μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となる条件で40秒間焼き付けて、各試験板を得た。各試験板を用いて、後記の試験条件に従って試験した結果を併せて表1に示す。なお、評価基準のS、A、B、Cにおいて、S及びAが実用レベルである。
【0167】
60°G:JIS K5600-4-7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて各塗面の光沢度(60°光沢値)を測定した値である。
【0168】
ちぢみ模様 柄目視評価
柄大きさ:試験板の外観を肉眼で観察し、下記基準により評価した。
【0169】
小:目視では判別が困難なnmサイズのちぢみ柄(うね)のみが形成
中:目視で判別可能なmm単位のおねと、うねが形成
大:目視で判別可能なcm単位のおねと、うねが形成
×:塗面にちぢみ柄が発生しない
柄均一性:試験板の外観を肉眼で観察し、下記基準により評価した。
【0170】
S:塗面に凹凸感があり、緻密で均一なちぢみ模様が発生する。
【0171】
A:塗面に凹凸感のあるちぢみ模様が発生するが、ちぢみ模様の緻密さ又は均一さが、上記Sの試験板に比べてわずかに劣る。
【0172】
B:塗面にちぢみ模様が発生するが、ちぢみ模様の緻密さ又は均一さが、上記Aの試験板に比べて劣る。
【0173】
C:塗面にちぢみ模様が発生しない。
【0174】
Ra:JIS B 0601-2001に準拠して、表面粗さ測定機サーフコム130A(ACCRETECH(東京精密)社製)を使用して、評価長さ12.5mm、測定速度0.3mm/sの条件で測定した試験板のRaの値である。
【0175】
PV:測定装置として、図3に示すように、光源としてLEDライト、光照射された塗膜面の画像を取り込むCCDカメラ、画像解析装置を有し、画像解析装置は、画像解析ソフトである「WINROOF」(三谷商事(株)製)と制御、管理を行うパーソナルコンピュータを有するものを使用した。
【0176】
測定条件はLEDライトからの照射光とCCDカメラへの入射光との角度を45度とし、CCDカメラはテストパネルの塗膜面に対して鉛直とした。照度はテストパネルの塗膜面で500ルクス(lux)となるようにした。
【0177】
CCDカメラの明るさの条件はテストパネルJを撮影した時の画像のグレーレベルが66になるように設定した。
【0178】
光照射されたテストパネルの塗膜面をCCDカメラで撮影して得た画像を8ビット階調のグレースケールに変換し、画像解析装置にて解析を行った。画像解析にあたり、黒色の艶消し塗膜のパネルの平均輝度を66とした。また、画像解析する画像の測定面は33mm×33mmの大きさとし、これを2048×2048個の区画(ピクセル)に分解して柄に相当する値PVを得るためのデータ処理を行った。
【0179】
各試験板について、光照射された塗膜面をCCDカメラで撮影した画像を8ビット階調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得た。この空間周波数スペクトルから解像度を表す線密度が0~31.03本/mmとなる領域の低空間周波数成分(0~1.55本/mm)のパワーを積分し、ついで直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得た。上記領域の2次元パワースペクトル積分値は、2次元パワースペクトル積分値を得るための前記式
【0180】
【数2】
【0181】
において、0~Lを、解像度を表す線密度が0~1.55本/mmとなる周波数領域として計算することによって各試験板の値PVを得た。
【0182】
促進耐候性:各試験板に、JIS K 5600 7.7に規定の塗膜の長期耐久性 促進耐候性(キセノンランプ法)試験のA法に基き、繰り返しサイクル条件(湿潤18分間-乾燥102分間)で、キセノンウェザメーターで3,000時間連続照射を行った。その後、各試験板において、下記の内容に基づいて塗面状態の評価を行った。
【0183】
S:塗面に、フクレ、ワレ、曇り、チョーキングなどの塗面異常が認められない。
【0184】
A:塗面に、フクレ、ワレ、チョーキングなどの塗面異常が認められないが、塗面に曇りが認められる
B:塗面に、フクレ、ワレ、チョーキングなどの塗面異常のいずれかが認められる
C:塗面に、フクレ、ワレ、チョーキングなどの塗面異常のいずれかが著しく認められる
耐傷付性:以下に記載の回転スクラッチ試験により評価した。
【0185】
各試験板につき5cm×5cmの正方形に切断した試験板を2枚作成し、塗装面同士を合わせて試験機(簡易テストプレス 形式THP-IU(三喜製作所製)加圧面に装着し、油圧ポンプ圧力を20kgf/cmに加圧し、荷重をかけ、試料を水平方向にこすり合わせて2回転させる。その後、試料を取り外し塗面状態を以下の基準で目視評価を行った。
【0186】
S:塗面全体の一部に僅かなてかりが認められる
A:塗面全体に僅かなてかりが認められる
B:塗面全体に濃いてかりが認められる
C:塗面の削れが認められる
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0190】
ちぢみ模様等の艶消し形状と、耐候性及び耐傷付性の塗膜性能との関係性を明らかにし、耐候性及び耐傷付性に優れるちぢみ模様塗膜を形成可能な塗料組成物、該塗料組成物を用いたちぢみ模様塗膜の形成方法及び塗装金属板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1】縮み模様(柄)の観察画像の一例である。
図2】2次元画像の輝度分布の3次元分布図の一例である。
図3】値PV(Pattern Value)の測定装置の一例を示す図である。
図1
図2
図3