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特開2024-60139到達時刻推定システム、到達時刻推定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060139
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】到達時刻推定システム、到達時刻推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240424BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20240424BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/005
G01C21/26 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167295
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 孔司
(72)【発明者】
【氏名】牛窪 裕一
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129BB05
2F129CC15
2F129CC28
2F129DD36
2F129DD40
2F129DD42
2F129EE84
2F129FF02
2F129FF07
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC12
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】複数のエリアが存在する空間において利用者のエリアごとの到達時刻を推定する技術が提供されることが望まれる。
【解決手段】空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する取得部と、前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部と、を備える、到達時刻推定システムが提供される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する取得部と、
前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部と、
を備える、到達時刻推定システム。
【請求項2】
前記到達時刻推定システムは、前記利用者が前記複数のエリアそれぞれに存在した時刻を含んだ時系列移動データに基づいて、前記移動時間推定データを生成する生成部を備える、
請求項1に記載の到達時刻推定システム。
【請求項3】
前記生成部は、前記時系列移動データに基づいて、前記二つのエリア間に対応する移動所要時間の代表値を前記二つのエリア間に対応する移動時間推定値として算出する、
請求項2に記載の到達時刻推定システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記二つのエリア間に対応する複数の移動所要時間が偶数存在する場合、前記複数の移動所要時間の二つの中央値のうちの最小値を、前記二つのエリア間に対応する前記代表値として算出する、
請求項3に記載の到達時刻推定システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記二つのエリア間に対応する複数の移動所要時間が奇数存在する場合、前記複数の移動所要時間の中央値を、前記二つのエリア間に対応する前記代表値として算出する、
請求項3に記載の到達時刻推定システム。
【請求項6】
前記到達時刻推定システムは、前記利用者が前記複数のエリアそれぞれに存在した時刻を含んだ時系列移動データに基づいて、あらかじめ用意された複数の候補データから、前記移動時間推定データを選択する選択部を備える、
請求項1に記載の到達時刻推定システム。
【請求項7】
前記選択部は、前記時系列移動データに基づいて移動時間データを生成し、前記移動時間データとの一致度が最も高い候補データを、前記移動時間推定データとして選択する、
請求項6に記載の到達時刻推定システム。
【請求項8】
前記選択部は、前記移動時間データと前記複数の候補データそれぞれとの間における前記二つのエリア間ごとのユークリッド距離の合計値を前記一致度として算出する、
請求項7に記載の到達時刻推定システム。
【請求項9】
前記到達時刻推定システムは、前記複数のエリアのうち前記到達時刻と現在時刻との関係が所定の関係を満たすエリアに対応する提示情報が前記利用者に提示されるように制御する提示制御部を備える、
請求項1に記載の到達時刻推定システム。
【請求項10】
前記推定部は、前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻と、前記利用者の所定の区間の移動時間とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定する、
請求項1に記載の到達時刻推定システム。
【請求項11】
前記推定部は、前記所定の区間の移動時間が所定の時間よりも小さい場合に、前記移動時間推定値が小さくなるように変更された後の前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定する、
請求項10に記載の到達時刻推定システム。
【請求項12】
前記推定部は、前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻と、前記空間の混雑度とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定する、
請求項1に記載の到達時刻推定システム。
【請求項13】
前記推定部は、前記混雑度が所定の度合いよりも大きい場合に、前記移動時間推定値が大きくなるように変更された後の前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定する、
請求項12に記載の到達時刻推定システム。
【請求項14】
空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得することと、
前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定することと、
を含む、コンピュータにより実行される到達時刻推定方法。
【請求項15】
コンピュータを、
空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する取得部と、
前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部と、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、到達時刻推定システム、到達時刻推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の位置に応じて人に対して情報提供を行う技術が知られている。このような情報提供を行う技術においては、ビーコンが利用されることがある。ビーコンは、信号を発信する装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、店舗内に固定されたビーコンから送信された信号が、利用者が携帯する情報端末によって検出されると、その信号が検出されたエリアに応じた情報を情報端末に表示させる技術が開示されている。また、特許文献2には、車両に設置されたビーコンから送信された信号が、利用者が携帯する情報端末によって検出されると、車両が近くにあることを情報端末に通知する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示されている技術は、物理的なエリアを形成し、そのエリアに利用者が存在することが検出された場合に、そのエリアに対応する情報を利用者に提示する技術である。
【0005】
このような技術において、利用者が存在するエリアが検出されてからエリアに対応する情報が利用者に提示されるまでには、ある程度の時間が必要である。そのため、一例として利用者が空間内を(例えば、歩行により)移動したとしても、エリアに対応する情報が利用者に提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻よりも遅くならないように、1つのビーコンに対応するエリアを広く設計する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6836254号公報
【特許文献2】特開2019-100712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、小売店の個々の売り場などのように、狭いエリアごとに異なる情報提示が行われる場合もあり得る。かかる場合には、利用者による移動が原因となり、エリアに対応する情報が利用者に提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻よりも遅くなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、複数のエリアが存在する空間において利用者のエリアごとの到達時刻を推定する技術が提供されることが望まれる。一例として、このように推定された到達時刻に応じた情報提示が行われることにより、エリアに対応する情報が利用者に提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻よりも遅くなってしまう可能性が低減され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する取得部と、前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部と、を備える、到達時刻推定システムが提供される。
【0010】
前記到達時刻推定システムは、前記利用者が前記複数のエリアそれぞれに存在した時刻を含んだ時系列移動データに基づいて、前記移動時間推定データを生成する生成部を備えてもよい。
【0011】
前記生成部は、前記時系列移動データに基づいて、前記二つのエリア間に対応する移動所要時間の代表値を前記二つのエリア間に対応する移動時間推定値として算出してもよい。
【0012】
前記生成部は、前記二つのエリア間に対応する複数の移動所要時間が偶数存在する場合、前記複数の移動所要時間の二つの中央値のうちの最小値を、前記二つのエリア間に対応する前記代表値として算出してもよい。
【0013】
前記生成部は、前記二つのエリア間に対応する複数の移動所要時間が奇数存在する場合、前記複数の移動所要時間の中央値を、前記二つのエリア間に対応する前記代表値として算出してもよい。
【0014】
前記到達時刻推定システムは、前記利用者が前記複数のエリアそれぞれに存在した時刻を含んだ時系列移動データに基づいて、あらかじめ用意された複数の候補データから、前記移動時間推定データを選択する選択部を備えてもよい。
【0015】
前記選択部は、前記時系列移動データに基づいて移動時間データを生成し、前記移動時間データとの一致度が最も高い候補データを、前記移動時間推定データとして選択してもよい。
【0016】
前記選択部は、前記移動時間データと前記複数の候補データそれぞれとの間における前記二つのエリア間ごとのユークリッド距離の合計値を前記一致度として算出してもよい。
【0017】
前記到達時刻推定システムは、前記複数のエリアのうち前記到達時刻と現在時刻との関係が所定の関係を満たすエリアに対応する提示情報が前記利用者に提示されるように制御する提示制御部を備えてもよい。
【0018】
前記推定部は、前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻と、前記利用者の所定の区間の移動時間とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定してもよい。
【0019】
前記推定部は、前記所定の区間の移動時間が所定の時間よりも小さい場合に、前記移動時間推定値が小さくなるように変更された後の前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定してもよい。
【0020】
前記推定部は、前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻と、前記空間の混雑度とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定してもよい。
【0021】
前記推定部は、前記混雑度が所定の度合いよりも大きい場合に、前記移動時間推定値が大きくなるように変更された後の前記移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記1または2以上の到達時刻を推定してもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得することと、前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定することと、を含む、コンピュータにより実行される到達時刻推定方法が提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、コンピュータを、空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、前記利用者が前記基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する取得部と、前記複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに前記二つのエリアの一方から他方に前記利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、前記基準エリアを示す情報と、前記基準時刻とに基づいて、前記利用者が前記複数のエリアのうち前記基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部と、として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、複数のエリアが存在する空間において利用者のエリアごとの到達時刻を推定する技術が提供されることが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る到達時刻推定システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の動作を説明するための図である。
図3】利用者の店舗内の移動の例を示す図である。
図4】時系列移動データの例を示す図である。
図5】移動時間推定データの例を示す図である。
図6】基準エリアから他のエリアへの移動時間推定値の例を示す図である。
図7】利用者の所定の区間の移動時間も考慮した到達時刻の推定について説明するための図である。
図8】店舗50の混雑度も考慮した到達時刻の推定について説明するための図である。
図9】本発明の実施形態に係る空間および空間に含まれる複数のエリアの変形例について説明するための図である。
図10】本発明の実施形態に係る到達時刻推定装置10の例としての情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0028】
<1.実施形態の詳細>
続いて、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0029】
[1-1.構成の説明]
本発明の実施形態に係る到達時刻推定システムの構成例について説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1は、到達時刻推定装置10と、情報端末20と、ビーコン端末30-1~30-N(Nは、2以上の整数)とを備える。到達時刻推定装置10および情報端末20は、ネットワークに接続されており、到達時刻推定装置10と情報端末20とは、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されている。
【0031】
(ビーコン端末30)
ビーコン端末30は、信号を発信する無線局に該当し、「ビーコン」とも換言される。例えば、ビーコン端末30が発信する信号は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)規格に基づく信号であってよいが、ビーコン端末30が発信する信号の種類は特に限定されない。また、例えば、ビーコン端末30は、数秒ごとに1回、ビーコン端末30を中心として半径数mから数十mの範囲に信号を発信してよいが、ビーコン端末30が信号を発信する周期および信号が到達する範囲などは、かかる例に限定されない。
【0032】
ビーコン端末30は、空間内に存在する複数のエリアそれぞれに対応する位置に設置される。以下の説明では、小売店の売り場が複数集まる店舗が「空間」であり、小売店の売り場への来客が存在するエリアが空間内に存在する「エリア」である例を主に想定する。しかし、後にも説明するように、「空間」および空間内に存在する複数の「エリア」は、かかる例に限定されない。図1に示されるように、ビーコン端末30は、ビーコン端末30を識別するための情報(以下、「ビーコンID」とも言う。)を含んだ信号を発信する。
【0033】
(情報端末20)
情報端末20は、コンピュータにより実現され得る。情報端末20は、店舗内を移動する利用者によって携帯される。例えば、利用者は、店舗内に存在する小売店の売り場にて買い物をするために店舗内を歩行により移動する。以下の説明においては、情報端末20がスマートフォンである例を主に想定する。しかし、情報端末20は、スマートフォンに限定されない。例えば、情報端末20は、タブレット端末であってもよいし、携帯電話であってもよいし、他の端末であってもよい。
【0034】
情報端末20は、ビーコン端末30から発信された信号を受信すると、受信した信号からビーコンIDを取得する。また、情報端末20は、ビーコン端末30から受信した信号の強度を計測することにより信号強度を得る。情報端末20は、ビーコンIDと信号強度とビーコン端末30から発信された信号の受信時刻との組、および、情報端末20を識別するための情報(以下、「情報端末ID」とも言う。)を、ネットワークを介して到達時刻推定装置10に送信する。
【0035】
さらに、情報端末20は、到達時刻推定装置10から送信された提示情報を受信すると、到達時刻推定装置10により得られた提示タイミングに従って、提示情報を利用者に提示する。以下の説明においては、情報端末20が、ディスプレイを備えており、提示情報をディスプレイに表示させることにより、利用者に提示情報を提示する例を主に想定する。しかし、提示情報は、他の手法によって利用者に提示されてもよい。一例として、情報端末20は、スピーカーを備えており、提示情報をスピーカーから音声出力させることにより、利用者に提示情報を提示してもよい。
【0036】
なお、図1には、情報端末20が1台示されている。しかし、複数の利用者が店舗内に存在し、複数の利用者それぞれが情報端末20を携帯する場合などには、情報端末20は複数存在してもよい。
【0037】
(到達時刻推定装置10)
到達時刻推定装置10は、コンピュータによって実現され得る。到達時刻推定装置10は、情報端末20のサーバーとして機能し得る。到達時刻推定装置10は、図示しない制御部、図示しない記憶部および図示しない通信部などを備える。図示しない通信部は、ネットワークを介して情報端末20と通信を行う。また、図示しない制御部は、位置判定部110と、移動時間推定部120と、提示タイミング制御部130とを備える。
【0038】
図示しない制御部は、プロセッサによってプログラムが実行されることによって実現される。かかるプログラムは、記録媒体に記録され、記録媒体からプロセッサによって読み取られて実行され得る。あるいは、これらのブロックは、専用のハードウェアによって構成されてもよい。
【0039】
図示しない記憶部は、メモリによって構成され得る。例えば、メモリは、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどのメモリであってよい。
【0040】
(位置判定部110)
位置判定部110は、情報端末20から図示しない通信部によって受信されたビーコンIDおよび信号強度に基づいて、閾値よりも大きい信号強度に対応するビーコンIDを特定する。図示しない記憶部には、ビーコンIDとエリアを示す情報とが対応付けられた対応テーブルがあらかじめ記憶されている。このとき、位置判定部110は、特定したビーコンIDに対応するエリアを示す情報を対応テーブルから取得することにより、情報端末20を携帯する利用者が存在したエリアを判定する。
【0041】
位置判定部110は、利用者がエリアに存在した時刻も取得する。例えば、位置判定部110は、情報端末20からビーコンIDとともに受信された受信時刻を利用者がエリアに存在した時刻として取得する。位置判定部110は、利用者が存在したエリアを示す情報(以下、「存在エリア情報」とも言う。)と、利用者がエリアに存在した時刻(以下、「エリア存在時刻」とも言う。)との組を時系列移動データに追加する。
【0042】
例えば、位置判定部110は、存在エリア情報とエリア存在時刻との組を、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データに新たに追加するたびに、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データを移動時間推定部120に出力する。なお、位置判定部110は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データの全体を移動時間推定部120に出力してもよいし、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、移動時間推定部120への未出力分のみを移動時間推定部120に出力してもよい。
【0043】
(移動時間推定部120)
移動時間推定部120は、位置判定部110から出力された、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データに基づいて、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データを生成する生成部の例として機能する。移動時間推定データは、複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに二つのエリアの一方(以下、「始点」とも言う。)から他方(以下、「終点」とも言う。)に利用者が移動するために要する移動時間推定値を有する。
【0044】
例えば、位置判定部110から過去に出力された時系列移動データが図示しない記憶部に記憶されている場合も想定される。このとき、移動時間推定部120は、位置判定部110から過去に出力された時系列移動データと、位置判定部110から新たに出力された時系列移動データとの双方に基づいて、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データを生成してもよい。移動時間推定部120は、位置判定部110から新たに出力された時系列移動データを図示しない記憶部に記憶させる。
【0045】
移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データが図示しない記憶部に既に登録されている場合には、生成した移動時間推定データによって、図示しない記憶部に既に登録されている移動時間推定データを更新する。一方、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データが図示しない記憶部に登録されていない場合には、生成した移動時間推定データを、図示しない記憶部に登録する。
【0046】
なお、ここでは、移動時間推定データが、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに生成される場合を主に想定する。しかし、移動時間推定データは、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに生成されなくてもよい。例えば、移動時間推定データは、後にも説明するように、所定の期間ごとに生成されてもよい。
【0047】
また、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、最新のエリア存在時刻に対応するエリア(以下、「基準エリア」とも言う。)を示す情報を、利用者が現在存在するエリアを示す情報として得る。なお、基準エリアは、利用者の「現在位置」とも換言され得る。
【0048】
さらに、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、最新のエリア存在時刻を利用者が基準エリアに存在する時刻(以下、「基準時刻」とも言う。)として得る。なお、基準時刻は、「現在時刻」とも換言され得る。
【0049】
移動時間推定部120は、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを、提示タイミング制御部130に出力する。なお、移動時間推定部120は、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを、提示タイミング制御部130に出力してよい。
【0050】
(提示タイミング制御部130)
提示タイミング制御部130は、移動時間推定部120から出力された、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを取得する取得部の例として機能する。
【0051】
さらに、提示タイミング制御部130は、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとに基づいて、利用者が複数のエリアのうち基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する推定部の例として機能する。かかる構成により、利用者のエリアごとの到達時刻が推定され得る。
【0052】
提示タイミング制御部130は、複数のエリアのうち到達時刻と現在時刻との関係が所定の関係を満たすエリアに対応する提示情報が利用者に提示されるように、移動時間推定データに紐づけられた情報端末IDに対応する情報端末20を制御する提示制御部の例として機能する。かかる構成により、エリアに対応する情報が利用者に提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻よりも遅くなってしまう可能性が低減され得る。
【0053】
なお、本発明の実施形態においては、位置判定部110、移動時間推定部120および提示タイミング制御部130が、情報端末20と接続された一つのサーバーによって構成される例を主に想定する。しかし、後にも説明するように、これらの機能は、一つのサーバーによって構成されていなくてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の構成例について説明した。
【0055】
[1-2.動作の説明]
続いて、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の動作例について説明する。
【0056】
図2は、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の動作を説明するための図である。図2に示されるように、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の動作は、(S1)情報端末でのビーコン検出、(S2)情報端末の位置判定、(S3)移動時間推定データの生成、(S4)提示タイミングと提示情報の決定、(S5)タイミングの調整、(S6)情報端末への提示情報の出力、(S7)終了指示の確認の各ステップに分けられる。
【0057】
以下では、これらの各ステップについて順に説明する。
【0058】
(S1)情報端末でのビーコン検出
ビーコン端末30は、空間内に存在する複数のエリアそれぞれに対応する位置に設置されており、ビーコンIDを含んだ信号を定期的に発信する。利用者が、店舗内を歩行により移動し、小売店の売り場に対応するエリアに到達すると、情報端末20は、エリアに対応するビーコン端末30から送信された信号を受信する。
【0059】
情報端末20は、ビーコン端末30から発信された信号を受信すると、受信した信号からビーコンIDを取得する。また、情報端末20は、ビーコン端末30から受信した信号の強度を計測することにより信号強度を得る。情報端末20は、ビーコンIDと信号強度とビーコン端末30から発信された信号の受信時刻との組、および、情報端末20に対応する情報端末IDを、ネットワークを介して到達時刻推定装置10に送信する。
【0060】
情報端末でのビーコン検出(S1)が実行された後には、情報端末の位置判定(S2)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0061】
(S2)情報端末の位置判定
位置判定部110は、情報端末20から図示しない通信部によって受信された、ビーコンIDと信号強度とビーコン端末30から発信された信号の受信時刻との組、および、情報端末20に対応する情報端末IDを取得する。そして、位置判定部110は、信号強度と閾値とを比較し、閾値よりも大きい信号強度に対応するビーコンIDを特定する。なお、閾値よりも大きい信号強度がない場合には、情報端末でのビーコン検出(S1)に、到達時刻推定システム1の動作が移行されてよい。
【0062】
図示しない記憶部には、ビーコンIDとエリアを示す情報とが対応付けられた対応テーブルがあらかじめに記憶されている。このとき、位置判定部110は、特定したビーコンIDに対応するエリアを示す情報を対応テーブルから取得することにより、情報端末20を携帯する利用者が存在したエリアを判定する。
【0063】
位置判定部110は、利用者がエリアに存在した時刻も取得する。例えば、位置判定部110は、情報端末20からビーコンIDとともに受信された受信時刻を利用者がエリアに存在した時刻として取得する。位置判定部110は、利用者が存在したエリアを示す存在エリア情報と、利用者がエリアに存在した時刻であるエリア存在時刻との組を時系列移動データに追加する。
【0064】
例えば、位置判定部110は、存在エリア情報とエリア存在時刻との組を、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データに新たに追加するたびに、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データを移動時間推定部120に出力する。なお、位置判定部110は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データの全体を移動時間推定部120に出力してもよいし、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、移動時間推定部120への未出力分のみを移動時間推定部120に出力してもよい。
【0065】
図3は、利用者の店舗内の移動の例を示す図である。図3を参照すると、店舗50が存在する。店舗50内には、利用者が店舗50に対して出入りするための「出入口」および利用者が会計を済ませるための「レジ」が存在する他、小売店の各売り場が存在している。一例として、店舗50内には、「惣菜売り場」が存在している。なお、図の見やすさを考慮し、図に示される各売り場の名称からは、「売り場」の文字が省略されている。
【0066】
また、店舗50内には、ビーコン端末30-1~30-8が設置されている。例えば、ビーコン端末30-1は、「出入口」に対応して配置されている。より具体的に、ビーコン端末30-1は、「出入口」を通過している利用者が、ビーコン端末30-1が発信する信号の到達する範囲であるエリア70-1内に存在するように配置されている。したがって、エリア70-1は、ビーコン端末30-1に対応し、エリア70-1およびビーコン端末30-1それぞれは、「出入口」に対応する。
【0067】
また、ビーコン端末30-2は、「惣菜売り場」に対応して配置されている。より具体的に、ビーコン端末30-1は、「惣菜売り場」に来店した利用者が、ビーコン端末30-2が発信する信号の到達する範囲であるエリア70-2内に存在するように配置されている。したがって、エリア70-2は、ビーコン端末30-2に対応し、エリア70-2およびビーコン端末30-2それぞれは、「惣菜売り場」に対応する。
【0068】
同様に、ビーコン端末30-3は、「肉売り場」に対応して配置され、エリア70-3は、ビーコン端末30-3に対応し、エリア70-3およびビーコン端末30-3それぞれは、「肉売り場」に対応する。
【0069】
ビーコン端末30-4は、「魚売り場」に対応して配置され、エリア70-4は、ビーコン端末30-4に対応し、エリア70-4およびビーコン端末30-4それぞれは、「魚売り場」に対応する。
【0070】
ビーコン端末30-5は、「野菜売り場」に対応して配置され、エリア70-5は、ビーコン端末30-5に対応し、エリア70-5およびビーコン端末30-5それぞれは、「野菜売り場」に対応する。
【0071】
ビーコン端末30-6は、「日用雑貨売り場」に対応して配置され、エリア70-6は、ビーコン端末30-6に対応し、エリア70-6およびビーコン端末30-6それぞれは、「日用雑貨売り場」に対応する。
【0072】
ビーコン端末30-7は、「健康食品売り場」に対応して配置され、エリア70-7は、ビーコン端末30-7に対応し、エリア70-7およびビーコン端末30-7それぞれは、「健康食品売り場」に対応する。
【0073】
ビーコン端末30-8は、「レジ」に対応して配置されている。より具体的に、ビーコン端末30-8は、会計を済ませるために「レジ」に到達した利用者が、ビーコン端末30-8が発信する信号の到達する範囲であるエリア70-8内に存在するように配置されている。したがって、エリア70-8は、ビーコン端末30-8に対応し、エリア70-8およびビーコン端末30-8それぞれは、「レジ」に対応する。
【0074】
図3に示された破線矢印は、店舗50における利用者の一日の移動による軌跡を表している。図3には、利用者が一日のうちに、店舗50内に「出入口」から入り、「惣菜売り場」「肉売り場」「魚売り場」「野菜売り場」「日用雑貨売り場」「健康食品売り場」「レジ」の順に移動し、「出入口」から店舗50外に出る例が示されている。なお、図3に示された例では、各売り場に対応してビーコン端末30が一つずつ配置されているが、各売り場に対応して配置されるビーコン端末30の数は、複数であってもよい。
【0075】
図4は、時系列移動データの例を示す図である。図4を参照すると、時系列移動データ41が示されている。時系列移動データ41は、利用者がエリアに存在した時刻である「エリア存在時刻」と利用者が存在したエリアを示す情報である「存在エリア情報」とが対応付けられて構成されている。例えば、エリア存在時刻「11:00:00」は、11時00分00秒を表している。「エリア存在時刻」の隣の括弧内の値は、各エリア存在時刻を利用者が一日の最初にエリア「出入口」に存在した「11:00:00」からの経過時間(秒)に表現し直した値である。
【0076】
時系列移動データ41は、図3に示された破線矢印のように利用者が移動した場合に位置判定部110から出力される時系列移動データである。具体的に、時系列移動データ41には、利用者が「11:00:00」に「出入口」から店舗50内に入り、「11:17:00」に「出入口」から店舗50外に出るまでに、位置判定部110によって得られた、「エリア存在時刻」と「存在エリア情報」との組が含まれている。
【0077】
情報端末の位置判定(S2)が実行された後には、移動時間推定データの生成(S3)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0078】
(S3)移動時間推定データの生成
移動時間推定部120は、位置判定部110から出力された、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データに基づいて、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データを生成する。移動時間推定データは、複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに二つのエリアの一方である「始点」から他方である「終点」に利用者が移動するために要する移動時間推定値を有する。「始点」は、複数のエリアの任意のエリアであり、「終点」は、他の任意のエリアであるとも換言され得る。利用者は、「始点」から「終点」まで他のエリアを経由せずに移動してもよいし、他のエリアを経由して移動してもよい。
【0079】
例えば、位置判定部110から過去に出力された時系列移動データが図示しない記憶部に記憶されている場合も想定される。このとき、移動時間推定部120は、位置判定部110から過去に出力された時系列移動データと、位置判定部110から新たに出力された時系列移動データとの双方に基づいて、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データを生成してもよい。移動時間推定部120は、位置判定部110から新たに出力された時系列移動データを図示しない記憶部に記憶させる。
【0080】
移動時間推定部120は、終点に対応するエリア存在時刻から始点に対応するエリア存在時刻を減算することによって、始点と終点との組(すなわち、二つのエリア間)に対応する移動所要時間を1または複数算出する。そして、移動時間推定部120は、算出した1または複数の移動所要時間に基づいて移動時間推定値を算出する。
【0081】
単純な例としては、始点と終点との組一つに対して一つの移動所要時間しか存在しない場合が想定され得る。かかる場合には、移動時間推定部120は、時系列移動データに基づいて、始点と終点との組に対応する一つの移動所要時間をその組に対応する移動時間推定値として算出すればよい。
【0082】
一方、始点と終点との組一つに対して複数の移動所要時間が存在する場合もあり得る。かかる場合としては、現在から過去に遡って所定の期間分(例えば、1カ月間分など)の時系列移動データが移動時間推定データの生成に用いられる場合などが想定され得る。このような例では、移動時間推定部120は、時系列移動データに基づいて、始点と終点との組ごとに移動所要時間の代表値をその組に対応する移動時間推定値として算出してもよい。
【0083】
一例として、始点と終点との組に対応する移動所要時間が奇数存在する場合が想定され得る。かかる場合には、移動時間推定部120は、始点と終点との組に対応する複数の移動所要時間の中央値を、始点と終点との組に対応する代表値として算出すればよい。このように複数の移動所要時間の中央値が代表値として算出されることにより、外れ値に左右されない代表値が移動時間推定値として用いられ得る。
【0084】
他の一例として、始点と終点との組に対応する移動所要時間が偶数存在する場合も想定され得る。かかる場合には、移動時間推定部120は、始点と終点との組に対応する複数の移動所要時間の二つの中央値のうちの最小値を、始点と終点との組に対応する代表値として算出すればよい。このように複数の移動所要時間の二つの中央値のうちの最小値が代表値として算出されることにより、外れ値に左右されない代表値かつ利用者への情報提示が遅くなってしまう可能性を低減し得る代表値が移動時間推定値として用いられ得る。
【0085】
図5は、移動時間推定データの例を示す図である。図5を参照すると、移動時間推定データ42が示されている。移動時間推定データ42は、図4に示された時系列移動データ41に基づいて生成された移動時間推定データの例である。
【0086】
図5に示されるように、移動時間推定データ42は、複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに二つのエリアの一方である「始点」から他方である「終点」に利用者が移動するために要する移動時間推定値を有する。図5に示された例では、移動時間推定データ42が、始点と終点との組に対応する移動時間推定値(秒)を有している。移動時間推定データ42における空欄は、始点から終点への利用者の移動が発生しなかったことを示す。
【0087】
図5には、ここでは、動作の説明を簡便にするために、利用者が店舗50内に初めて入った日のデータが移動時間推定データ42として用いられる場合を想定する。しかし、現在から過去に遡って所定の期間分(例えば、1カ月間分など)の移動時間推定データが用いられてもよく、そのような移動時間推定データが用いられる場合には、移動時間推定データのデータ量はさらに大きくなることが想定され得る。
【0088】
例えば、図4に示された時系列移動データ41において、始点「魚売り場」から終点「肉売り場」までの利用者の移動は二回であり、始点「魚売り場」から終点「肉売り場」までの利用者の移動所要時間は、「430」秒および「20」秒である。したがって、図5に示された移動時間推定データ42は、始点「魚売り場」と終点「肉売り場」との組に対応する移動時間推定値として、「430」秒および「20」秒の最小値である「20」秒を有している。
【0089】
移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データが図示しない記憶部に既に登録されている場合には、生成した移動時間推定データによって、図示しない記憶部に既に登録されている移動時間推定データを更新する。一方、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データが図示しない記憶部に登録されていない場合には、生成した移動時間推定データを、図示しない記憶部に登録する。
【0090】
なお、ここでは、移動時間推定データが、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに生成される場合を主に想定する。しかし、移動時間推定データは、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに生成されなくてもよい。例えば、移動時間推定データは、所定の期間(例えば、1日、1週間または1カ月など)ごとに生成されてもよい。
【0091】
また、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、最新のエリア存在時刻に対応するエリアである基準エリアを示す情報を、利用者が現在存在するエリアを示す情報として得る。さらに、移動時間推定部120は、情報端末IDに紐づけられた時系列移動データのうち、最新のエリア存在時刻を利用者が基準エリアに存在する時刻である基準時刻として得る。
【0092】
移動時間推定部120は、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを、提示タイミング制御部130に出力する。なお、移動時間推定部120は、位置判定部110から時系列移動データが出力されるたびに、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを、提示タイミング制御部130に出力してよい。
【0093】
移動時間推定データの生成(S3)が実行された後には、提示タイミングと提示情報の決定(S4)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0094】
(S4)提示タイミングと提示情報の決定
提示タイミング制御部130は、移動時間推定部120から出力された、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとを取得する。
【0095】
さらに、提示タイミング制御部130は、基準時刻と、基準エリアを示す情報と、情報端末IDに紐づけられた移動時間推定データとに基づいて、利用者が複数のエリアのうち基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する。かかる構成により、利用者のエリアごとの到達時刻が推定され得る。
【0096】
例えば、基準エリアが「惣菜売り場」であり、移動先エリア「肉売り場」であるとし、移動先エリア「肉売り場」への利用者の到達時刻を推定することを考える。このとき、提示タイミング制御部130は、移動時間推定データ42のうち、始点「惣菜売り場」と終点「肉売り場」とに対応する移動時間推定値「210」秒を基準時刻に加算することにより、移動先エリア「肉売り場」への利用者の到達時刻を推定し得る。
【0097】
図6は、基準エリアから他のエリアへの移動時間推定値の例を示す図である。図6に示された例では、エリア「惣菜売り場」が基準エリアであり、エリア「惣菜売り場」から他のエリアまでの移動時間推定値の例が具体的な数値として示されている。一例として、基準エリア「惣菜売り場」から他のエリアの例としての「肉売り場」までの移動時間推定値として、「210s」が示されている。ただし、sは、単位である秒を示している。
【0098】
さらに、提示タイミング制御部130は、提示情報を利用者に提示するか否かをエリアごとに決定するとともに、提示情報を利用者に提示するエリアについては利用者に提示する提示情報を決定し、提示情報を利用者に提示する予定時刻を決定する。
【0099】
例えば、提示情報は、エリアに対応付けてあらかじめ図示しない記憶部に記憶されていてよい。このとき、提示タイミング制御部130は、エリアに対応付けられた提示情報がない場合には、そのエリアに対応する提示情報は利用者に提示しないと決定してもよい。一方、提示タイミング制御部130は、エリアに対応付けられた提示情報がある場合には、そのエリアに対応する提示情報を利用者に提示すると決定し、その提示情報を利用者に提示する提示情報として決定してもよい。
【0100】
提示タイミング制御部130は、エリアへの利用者の到達時刻の推定結果と所定の関係を満たす時刻を、そのエリアに対応する提示情報を利用者に提示する予定時刻として決定する。ここで、所定の関係を満たす時刻は、到達時刻の推定結果と一致する時刻であってもよい。あるいは、所定の関係を満たす時刻は、到達時刻の推定結果よりも所定の時間前の時刻であってもよい。これによって、利用者はエリアに到達する前にエリアに対応する提示情報の提示を受けることが可能となる。
【0101】
エリアに対応する提示情報の内容は特に限定されない。一例として、エリアに対応する提示情報は、そのエリアにおける特売に関する情報などであってもよい。
【0102】
提示タイミングと提示情報の決定(S4)が実行された後には、タイミングの調整(S5)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0103】
(S5)タイミングの調整
提示タイミング制御部130は、現在時刻がエリアに対応する予定時刻となったときに、そのエリアに対応する提示情報が利用者に提示されるように、移動時間推定データに紐づけられた情報端末IDに対応する情報端末20を制御する。かかる構成により、利用者に情報が提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻に対して遅くなってしまう可能性が低減され得る。
【0104】
例えば、提示タイミング制御部130は、エリアとエリアに対応する予定時刻とを、到達時刻推定装置10が備える図示しない記憶部に登録しておく。
【0105】
なお、提示タイミング制御部130は、エリアとエリアに対応する予定時刻とを図示しない記憶部に登録するに際して、過去に登録した予定時刻が残っている場合には、その過去に登録した予定時刻を削除してもよい。これにより、利用者の実際の移動にマッチする予定時刻が情報提示のタイミングとして使われるようにするとともに、利用者の実際の移動にマッチしない予定時刻が情報提示のタイミングとして使われてしまうことが防止され得る。
【0106】
タイミングの調整(S5)が実行された後には、情報端末への提示情報の出力(S6)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0107】
(S6)情報端末への提示情報の出力
提示タイミング制御部130は、現在時刻がエリアに対応する予定時刻となったときに、そのエリアに対応する提示情報を、移動時間推定データに紐づけられた情報端末IDに対応する情報端末20に出力する。これによって、情報端末20においては、エリアに対応する提示情報が利用者に提示され得る。
【0108】
なお、タイミングの調整(S5)においては、提示タイミング制御部130が、エリアとエリアに対応する予定時刻とを、到達時刻推定装置10が備える図示しない記憶部に登録しておく例について説明した。しかし、提示タイミング制御部130は、エリアとエリアに対応する予定時刻とを、情報端末20に出力し、情報端末20の図示しない記憶部に登録しておいてもよい。このとき、情報端末20は、現在時刻がエリアに対応する予定時刻となったときに、そのエリアに対応する提示情報を利用者に提示してもよい。
【0109】
情報端末への提示情報の出力(S6)が実行された後には、終了指示の確認(S7)に、到達時刻推定システム1の動作が移行される。
【0110】
(S7)終了指示の確認
到達時刻推定装置10は、外部から到達時刻推定システム1に対する終了指示があったか否かを確認する。到達時刻推定装置10は、外部から到達時刻推定システム1に対する終了指示がなかった場合には、S1に動作を移行させる。一方、到達時刻推定装置10は、外部から到達時刻推定システム1に対する終了指示があった場合には、動作を終了する。
【0111】
以上、本発明の実施形態に係る到達時刻推定システム1の動作例について説明した。
【0112】
[1-3.効果の説明]
以上のように、本発明の実施形態によれば、提示タイミング制御部130を備える到達時刻推定システム1が提供され得る。提示タイミング制御部130は、空間内に存在する複数のエリアのうち利用者が存在するエリアである基準エリアを示す情報を取得するとともに、利用者が基準エリアに存在する時刻を基準時刻として取得する。
【0113】
さらに、提示タイミング制御部130は、複数のエリアに含まれる二つのエリア間ごとに二つのエリアの一方から他方に利用者が移動するために要する移動時間推定値を保持する移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻とに基づいて、利用者が複数のエリアのうち基準エリア以外の1または2以上のエリアそれぞれに到達する時刻を1または2以上の到達時刻として推定する。
【0114】
かかる構成によれば、複数のエリアが存在する空間において利用者のエリアごとの到達時刻が推定され得る。一例として、このように推定された到達時刻に応じた情報提示が行われることにより、エリアに対応する情報が利用者に提示される時刻が、利用者がエリアに存在する時刻よりも遅くなってしまう可能性が低減され得る。
【0115】
以上、本発明の実施形態の詳細について説明した。
【0116】
<2.変形例>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0117】
[2-1.移動時間推定データに関する変形例]
例えば、上記では、移動時間推定部120が、時系列移動データに基づいて、移動時間推定データを生成する生成部の例として機能する場合について説明した。しかし、各々が移動時間推定データの候補となる複数の候補データがあらかじめ用意されていてもよい。このとき、移動時間推定部120は、時系列移動データに基づいて、複数の候補データから、移動時間推定データを選択する選択部の例として機能してもよい。
【0118】
一例として、移動時間推定部120は、時系列移動データに基づいて移動時間データを生成してもよい。移動時間データは、移動時間推定データ42(図5)と同様のデータであってよい。そして、移動時間推定部120は、生成した移動時間データとの一致度が最も高い候補データを、移動時間推定データとして選択してもよい。かかる構成によれば、あらゆる利用者に共通の候補テーブルが用意されれば、利用者ごとに異なる移動時間推定データを記憶する必要がなくなるという効果が享受され得る。
【0119】
ここで、移動時間データと候補データとの一致度はどのように算出されてもよい。一例として、移動時間推定部120は、移動時間データと複数の候補データそれぞれとの間における二つのエリア間ごとのユークリッド距離の合計値を一致度として算出してもよい。あるいは、店舗50における売り場の空間的な配置、利用者の特性などにより、利用者の多くが類似した移動の癖を持つ場合には、あらかじめ一つに固定された移動時間推定データが用意されていてもよい。
【0120】
[2-2.到達時刻の推定に関する変形例]
上記では、移動時間推定データに基づいて利用者のエリアへの到達時刻が推定される例について説明した。しかし、利用者のエリアへの到達時刻の推定には、利用者の移動速度も考慮されてよい。すなわち、提示タイミング制御部130は、移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻と、利用者の所定の区間の移動時間とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。図7を参照しながら、利用者の所定の区間の移動時間も考慮した到達時刻の推定について説明する。
【0121】
図7は、利用者の所定の区間の移動時間も考慮した到達時刻の推定について説明するための図である。図7を参照すると、利用者が急いでいるため、エリア「出入口」からエリア「惣菜売り場」まで5秒で移動したことが示されている。この例のように利用者が急いでいる場合には、利用者の移動時間が小さくなることが考えられる。
【0122】
そこで、提示タイミング制御部130は、利用者の所定の区間の移動時間が所定の時間よりも小さい場合に、移動時間推定データが有する移動時間推定値を小さくしてもよい。そして、提示タイミング制御部130は、小さくなるように変更された後の移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。これによって、利用者の実際の移動に従った到達時刻の推定が実現され得る。
【0123】
一例として、提示タイミング制御部130は、利用者の所定の区間の移動時間が所定の時間よりも小さい場合に、時系列移動データ41に基づいて生成される移動時間推定値(図6)に対して所定の係数(ただし、係数は、0<係数<1を満たす)を乗算することにより、移動時間推定値を小さくしてもよい。図7に示された例では、係数が1/2である。なお、利用者の所定の区間の移動時間は、二つのエリア間のエリア存在時刻同士の差分によって算出され得る。
【0124】
一方、提示タイミング制御部130は、利用者の所定の区間の移動時間が所定の時間よりも大きい場合に、移動時間推定データが有する移動時間推定値を大きくしてもよい。そして、提示タイミング制御部130は、大きくなるように変更された後の移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。これによって、利用者の実際の移動に従った到達時刻の推定が実現され得る。
【0125】
一例として、提示タイミング制御部130は、利用者の所定の区間の移動時間が所定の時間よりも大きい場合に、時系列移動データ41に基づいて生成される移動時間推定値(図6)に対して所定の係数(ただし、係数は、1<係数を満たす)を乗算することにより、移動時間推定値を大きくしてもよい。
【0126】
あるいは、利用者のエリアへの到達時刻の推定には、店舗50の混雑度が考慮されてよい。すなわち、提示タイミング制御部130は、移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻と、店舗50の混雑度とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。図8を参照しながら、店舗50の混雑度も考慮した到達時刻の推定について説明する。
【0127】
図8は、店舗50の混雑度も考慮した到達時刻の推定について説明するための図である。図8を参照すると、店舗50内に顧客の群れ81、82、カートを引く顧客83、買い物かごを持つ顧客84などが示されており、店舗50内が混雑している。この例のように店舗50内が混雑している場合には、利用者の移動時間が大きくなることが考えられる。
【0128】
そこで、提示タイミング制御部130は、店舗50の混雑度が所定の度合いよりも大きい場合に、移動時間推定データが有する移動時間推定値を大きくしてもよい。そして、提示タイミング制御部130は、大きくなるように変更された後の移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。これによって、利用者の実際の移動に従った到達時刻の推定が実現され得る。
【0129】
一例として、提示タイミング制御部130は、店舗50の混雑度が所定の度合いよりも大きい場合に、時系列移動データ41に基づいて生成される移動時間推定値(図6)に対して所定の係数(ただし、係数は、1<係数を満たす)を乗算することにより、移動時間推定値を大きくしてもよい。図8に示された例では、係数が3である。
【0130】
一方、提示タイミング制御部130は、店舗50の混雑度が所定の度合いよりも小さい場合に、移動時間推定データが有する移動時間推定値を小さくしてもよい。そして、提示タイミング制御部130は、小さくなるように変更された後の移動時間推定データと、基準エリアを示す情報と、基準時刻とに基づいて、1または2以上の到達時刻を推定してもよい。これによって、利用者の実際の移動に従った到達時刻の推定が実現され得る。
【0131】
一例として、提示タイミング制御部130は、店舗50内の混雑度が所定の度合いよりも小さい場合に、時系列移動データ41に基づいて生成される移動時間推定値(図6)に対して所定の係数(ただし、係数は、0<係数<1を満たす)を乗算することにより、移動時間推定値を小さくしてもよい。なお、店舗50内の混雑度は、どのようにして取得されてもよい。一例として、店舗50内の現在の混雑のレベルであってもよいし、店舗50への現在の来店人数であってもよい。店舗50内の混雑度は、Webページ(店舗のホームページなど)から取得されてもよい。
【0132】
[2-3.空間およびエリアに関する変形例]
上記では、小売店の売り場が複数集まる店舗が「空間」であり、小売店の売り場への来客が存在するエリアが空間内に存在する「エリア」である例について説明した。しかし、本発明の実施形態に係る空間および空間に含まれる複数のエリアは、かかる例に限定されない。図9を参照しながら、本発明の実施形態に係る空間および空間に含まれる複数のエリアの変形例について説明する。
【0133】
図9は、本発明の実施形態に係る空間および空間に含まれる複数のエリアの変形例について説明するための図である。図9を参照すると、変形例に係る空間は、店舗62を含んでいる。店舗62における各売り場の配置は、上記において説明した店舗50(図3)における各売り場の配置と同様である。しかし、店舗62には、複数の「出入口」が存在している。
【0134】
また、ビーコン端末30-11~30-26が設置されている。上記において説明した店舗50(図3)では、各売り場に対応してビーコン端末30が一つずつ配置されていたが、図9に示されるように、一つの売り場またはレジに対応して配置されるビーコン端末30の数が複数である場合があってもよい。さらに、図9を参照すると、上記において説明した店舗50(図3)と異なり、変形例に係る店舗62には、駐車場61が併設されている。「駐車場入口」に対応してビーコン端末30-11が配置されている。
【0135】
図9に示された変形例に係る空間に対して、上記した実施形態が適用された場合には、利用者が車両を運転して来店したり、様々な出入口から進入したりする場合であっても、売り場の小さなエリアごとの到達時刻を精度良く推定することが可能である。また、これにより、利用者が所定の売り場を通り過ぎる前に、タイミングよく当該売り場に関連する提示情報を提示することが可能である。
【0136】
さらに、本発明の実施形態に係る空間は、利用者が歩行により移動する空間であってよく、小売店の店舗のみならず、オフィスビル、工場、駅、遊歩道、公園、街などであってもよい。すなわち、本発明の実施形態は、これらの空間における健康行動または環境配慮行動をタイムリーに支援する用途にも適用され得る。また、利用者は車両などにより移動していてもよい。このとき、エリアは観光地などであってもよい。また、利用者が車両の運転者である場合などには、利用者への情報提示は、音声提示などにより実現されてもよい。
【0137】
[2-4.利用者が存在するエリアの判定に関する変形例]
上記では、ビーコン端末30から送信される信号を用いて情報端末20を携帯する利用者が存在するエリアを判定する例について説明した。しかし、情報端末20を携帯する利用者が存在するエリアの判定は、かかる例に限定されない。一例として、空間にAR(Augmented Reality)マーカーが配置されている場合、情報端末20による撮像画像から認識されるARマーカーの位置および姿勢に基づいて、情報端末20を携帯する利用者が存在するエリアが判定されてもよい。
【0138】
[2-5.提示情報に関する変形例]
上記では、小売店の売り場への来客が存在するエリアが空間内に存在する「エリア」である例について説明した。このような例では、店舗に入っている売り場の数が多い場合などには、同時に多くの提示情報が利用者に提示されてしまう可能性もあり得る。そこで、利用者に提示される提示情報は、適宜間引かれてもよい。一例として、利用者が提示を受けたい情報のカテゴリ(例えば、日用雑貨など)を指定できるようにし、そのカテゴリに合った情報のみが利用者に提示されてもよい。
【0139】
一方、同じカテゴリに属する複数の情報であれば、同時に提示を受けたいと利用者が要求することもあり得る。例えば、同じカテゴリ「日用雑貨」の特売に関する情報であれば、同時に提示を受けてどの売り場で「日用雑貨」を購入するのが得かを判断したいと利用者が考える場合もあり得る。そこで、同じカテゴリに属するエリアに対応する提示情報が複数存在する場合には、複数の提示情報の提示タイミングのうち、最速の提示タイミングに合わせて、複数の提示情報が同時に利用者に提示されてもよい。
【0140】
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。
【0141】
<3.ハードウェア構成例>
続いて、本発明の実施形態に係る到達時刻推定装置10の例としての情報処理装置のハードウェア構成例について説明する。図10は、本発明の実施形態に係る到達時刻推定装置10の例としての情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。なお、情報端末20のハードウェア構成も、図10に示された情報処理装置900のハードウェア構成と同様に実現されてよい。
【0142】
図10に示すように、情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ホストバス904と、ブリッジ905と、外部バス906と、インタフェース907と、入力装置908と、出力装置909と、ストレージ装置910と、通信装置911と、を備える。
【0143】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバス等から構成されるホストバス904により相互に接続されている。
【0144】
ホストバス904は、ブリッジ905を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス等の外部バス906に接続されている。なお、必ずしもホストバス904、ブリッジ905および外部バス906を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0145】
入力装置908は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバー等、利用者が情報を入力するための入力手段と、利用者による入力に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等から構成されている。情報処理装置900を操作する利用者は、この入力装置908を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0146】
出力装置909は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、ランプ等の表示装置およびスピーカー等の音声出力装置を含む。
【0147】
ストレージ装置910は、データ格納用の装置である。ストレージ装置910は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。ストレージ装置910は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置910は、ハードディスクを駆動し、CPU901が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0148】
通信装置911は、例えば、ネットワークに接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置911は、無線通信または有線通信のどちらに対応してもよい。
【0149】
以上、本発明の実施形態に係る情報処理装置900のハードウェア構成例について説明した。
【符号の説明】
【0150】
1 到達時刻推定システム
10 到達時刻推定装置
110 位置判定部
120 移動時間推定部
130 提示タイミング制御部
20 情報端末
30 ビーコン端末
41 時系列移動データ
42 移動時間推定データ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10