(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006014
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106545
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】堀江 翼
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 周平
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB06
2C056EB39
2C056EC06
2C056EC28
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA51
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】駆動波形を増幅する増幅回路の大型化を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、増幅回路、増幅回路にて増幅された駆動波形によってノズルから液体を吐出させるエネルギー付与素子を備え、増幅回路は、駆動波形がプラス入力端子に入力される両電源コンパレータと、両電源コンパレータの出力電圧のレベルを変更するレベルシフタと、レベルが変更された出力電圧が入力される両電源ゲートドライバと、両電源ゲートドライバによって駆動される第1N型MOSFET及び第2N型MOSFETとを備え、第1N型MOSFETのドレインは正電源に接続され、第1N型MOSFETのソースは第2N型MOSFETのドレインに接続され、第2N型MOSFETのソースは負電源に接続され、両電源コンパレータのマイナス入力端子と、第1N型MOSFETのソース及び第2N型MOSFETのドレインとを接続する負帰還配線を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動波形を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路にて増幅された前記駆動波形によって駆動し、液体にエネルギーを付与してノズルから吐出させるエネルギー付与素子と
を備え、
前記増幅回路は、
前記駆動波形がプラス入力端子に入力される両電源コンパレータと、
前記両電源コンパレータの出力電圧のレベルを変更するレベルシフタと、
前記レベルシフタにてレベルが変更された出力電圧が入力される両電源ゲートドライバと、
前記両電源ゲートドライバによって駆動される第1N型MOSFETと、
前記両電源ゲートドライバによって駆動される第2N型MOSFETと、
を備え、
前記第1N型MOSFETのドレインは正電源に接続され、
前記第1N型MOSFETのソースは前記第2N型MOSFETのドレインに接続され、
前記第2N型MOSFETのソースは負電源に接続され、
前記両電源コンパレータのマイナス入力端子と、前記第1N型MOSFETのソース及び前記第2N型MOSFETのドレインとを接続する負帰還配線を備える
印刷装置。
【請求項2】
前記負帰還配線は、ローパスフィルタを介して前記第1N型MOSFETのソース及び前記第2N型MOSFETのドレインに接続される
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記増幅回路の出力電圧を検知する電圧検知部と、
制御部と
を備え、
前記両電源ゲートドライバは、前記両電源コンパレータの出力に応じた出力を行う有効状態と、前記両電源コンパレータの出力に応じた出力を行わない無効状態とを切り替え可能であり、
前記電圧検知部が、0ボルトを基準とした第1電圧を検知した場合、前記制御部は前記両電源ゲートドライバを無効状態にする
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記増幅回路の出力端子とグランドとを接続するスイッチを備え、
前記電圧検知部が、0ボルトを基準とした第1電圧を検知した場合、前記制御部は前記両電源ゲートドライバを無効状態とし、且つ、前記スイッチを閉じる
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
制御部を備え、
前記正電源は供給電圧を変更可能な電源であり、
前記増幅回路から出力されるべき目標電圧を示す信号が前記制御部に入力され、
前記目標電圧が0ボルトよりも高い電圧である場合、前記制御部は前記正電源の供給電圧を、前記目標電圧であって、前記両電源コンパレータのプラス端子に入力される電圧と前記増幅回路の増幅率との積よりも低い電圧に変更する
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記増幅回路の出力電圧を検知する電圧検知部と、
制御部と
を備え、
前記正電源は供給電圧を変更可能な電源であり、
前記電圧検知部が、0ボルト以外の電圧を基準とした第2電圧を検知した場合、前記制御部は前記正電源の供給電圧を、前記増幅回路から出力されるべき目標電圧であって、前記両電源コンパレータのプラス端子に入力される電圧と前記増幅回路の増幅率との積よりも低い電圧に変更する
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノズルから液体を吐出する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を駆動させてノズルから液体を吐出する印刷装置が提案されている。圧電素子は駆動回路によって駆動される。駆動回路はデジタルアンプを備える。デジタルアンプは、駆動波形信号と帰還信号とに基づいて誤差信号を出力する演算回路と、演算回路からの誤差信号をパルス変調して変調信号に変換する変調回路とを備える。変調回路は、誤差信号と三角波とを比較する。即ち前記デジタルアンプは他励式のデジタルアンプである。
【0003】
デジタルアンプはパルス波状のまま増幅しているため、誤差信号をアナログ波形のまま増幅する場合に比べて電力損失を抑制することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、他励式のデジタルアンプは演算回路及び変調回路等、多数の回路を必要とし、回路規模が大きくなりやすい。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、駆動波形を増幅する増幅回路の大型化を抑制することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る印刷装置は、駆動波形を増幅する増幅回路と、前記増幅回路にて増幅された前記駆動波形によって駆動し、液体にエネルギーを付与してノズルから吐出させるエネルギー付与素子とを備え、前記増幅回路は、前記駆動波形がプラス入力端子に入力される両電源コンパレータと、前記両電源コンパレータの出力電圧のレベルを変更するレベルシフタと、前記レベルシフタにてレベルが変更された出力電圧が入力される両電源ゲートドライバと、前記両電源ゲートドライバによって駆動される第1N型MOSFETと、前記両電源ゲートドライバによって駆動される第2N型MOSFETとを備え、前記第1N型MOSFETのドレインは正電源に接続され、前記第1N型MOSFETのソースは前記第2N型MOSFETのドレインに接続され、前記第2N型MOSFETのソースは負電源に接続され、前記両電源コンパレータのマイナス入力端子と、前記第1N型MOSFETのソース及び前記第2N型MOSFETのドレインとを接続する負帰還配線を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る印刷装置にあっては、増幅回路の構成が簡素化され、増幅回路の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る印刷装置を略示する平面図である。
【
図2】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
【
図5】時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
【
図6】時分割多重信号と、同期信号との関係を説明する説明図である。
【
図7】第nスイッチの開閉によってアクチュエータに入力される駆動波形の模式図である。
【
図9】ゲートドライバ回路、NMOS回路及びブートストラップ回路の構成を略示する回路図である。
【
図10】実施の形態2に係る印刷装置のアンプ、制御回路及び検知回路の構成を略示する回路図である。
【
図11】第1処理を実行しない場合におけるアンプの出力電圧を示すグラフである。
【
図12】第1処理を実行する場合におけるアンプの出力電圧を示すグラフである。
【
図13】実施の形態3に係る印刷装置のアンプ、制御回路及び検知回路の構成を略示する回路図である。
【
図14】実施の形態4に係る印刷装置のアンプ及び制御回路の構成を略示する回路図である。
【
図15】第2処理及び第3処理を実行しない場合におけるアンプの出力電圧を示すグラフである。
【
図16】第2処理及び第3処理を実行する場合におけるアンプの出力電圧を示すグラフである。
【
図17】実施の形態5に係る印刷装置のアンプ、制御回路及び検知回路の構成を略示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は、印刷装置を略示する平面図である。以下の説明では、
図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また
図1の表側が上側に対応し、裏側が下側に対応し、上下も使用する。
【0011】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、四つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ(図示略)等を備える。
【0012】
プラテン2の上側には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動される。より具体的には、キャリッジ6は、四つのインクジェットヘッド8を支持した状態で、走査方向において、左方から右方へとある位置から他の位置へ前記ヘッドを移動させる第1移動と、走査方向において、右方か
ら左方へと他の位置からある位置へ前記ヘッドを移動させる第2移動とを行う。
【0013】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下側に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよい。
【0014】
サブタンク7及び四つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、一又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0015】
サブタンク7の内部には、四つのインク室(図示略)が形成されている。四つのインク室には、四つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0016】
四つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下側において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、複数のノズル80(
図2参照)が形成されている。一つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、一つのインク室に接続されている。すなわち、四つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、四つのインク室にそれぞれ接続されている。
【0017】
インクジェットヘッド8には、インク供給口と、インク排出口とが設けられている。インク供給口及びインク排出口は、チューブ等を介してインク室に接続されている。インク供給口及びインク室の間には、循環ポンプが介装されている。
【0018】
循環ポンプによってインク室から送出されたインクは、インク供給口を通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口を通って、インク室に戻る。インクは、インク室及びインクジェットヘッド8の間を循環する。四つのインクジェットヘッド8は、キャリッジ6と共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0019】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流側(後側)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流側(前側)に配置されている。二つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。二つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU又はロジック回路(例えばFPGA)を有する制御回路51(
図3参照)、不揮発性メモリ及びRAM等のメモリ55、ネットワークインターフェース56等を備える。ネットワークインターフェース56は外部装置100から印刷ジョブ及び駆動波形データを受信し、メモリ55は受信した印刷ジョブ及び駆動波形データを記憶する。制御装置50は、印刷ジョブに基づいて、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。制御回路51は制御部に対応し、ネットワークインターフェース56は受信部に対応する。
【0020】
図2は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、複数の圧力室81を備える。圧力室81の上側には振動板82が形成されている。振動板82の上側には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83と振動板82との間に第1共通電極84が形成されている。
【0021】
圧電体83の内部に第2共通電極86が設けられている。第2共通電極86は各圧力室81の上側且つ第1共通電極84よりも上側に配置されている。第2共通電極86は、第1共通電極84と対向しない位置に配置されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と、第1共通電極84及び第2共通電極86とは圧電体83を挟んで上下に対向する。振動板82、圧電体83、第1共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成する。
【0022】
各圧力室81の下部にノズルプレート87が設けられている。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81の下側に配置されている。
【0023】
第1共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続され、第2共通電極86は、VCOM端子に接続される。VCOM電圧はCOM電圧よりも高い。個別電極85は、スイッチ群54(
図3参照)に接続される。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81からインクが吐出される。
【0024】
個別電極85は第1電極に対応し、第2共通電極86は第2電極に対応し、第1共通電極84は第3電極に対応する。また圧電体83における個別電極85と第2共通電極86との間の第1部分83aは第1圧電層に対応し、圧電体83における第2共通電極86と第1共通電極84との間の第2部分83bは第2圧電層に対応する。振動板82は第3圧電層に対応する。即ちアクチュエータ88は3層構造を有する。
【0025】
図3は、制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。メモリ55には、駆動波形データが記憶されている。駆動波形データは、個別電極85に印加される電圧波形、即ちアクチュエータ88を駆動させる駆動波形を示すデータであり、量子化されたデータである。本実施例においては、駆動波形データDa、Db、Dcがメモリ55に記憶されている。
【0026】
D/Aコンバータ52はデジタル信号をアナログ信号に変換する。アンプ53はアナログ信号を増幅する増幅回路である。スイッチ群54は、複数の第nスイッチ54(n)(n=1、2、・・・)を備える。第nスイッチ54(n)は、例えばアナログスイッチICによって構成される。複数の第nスイッチ54(n)の一端は、共通バスを介して、アンプ53に接続される。各第nスイッチ54(n)の他端は、複数のノズル80に対応した各個別電極85に接続される。つまり、第nスイッチ54(n)は、1つのアクチュエータ88に対して、1つ設けられている。
【0027】
個別電極85、第1共通電極84、及び圧電体83によって第1コンデンサ89aが構成されている。個別電極85、第2共通電極86、及び圧電体83によって第2コンデンサ89bが構成されている。
【0028】
図4は、駆動波形A、B、Cの一例を説明する説明図である。駆動波形A、B、Cは、圧電体83を変形させ、振動板82が振動し、振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81にあるインクを、ディセンダーを通過させてから吐出させるための波形である。例えば、駆動波形Aは、大玉を吐出するための波形であり、駆動波形Bは、中玉を吐出するための波形であり、駆動波形Cは、大玉を吐出するための波形であるが、駆動波形Aとは吐出タイミングが異なる。
図4において、右側は左側よりも過去の状態を示す。
図5~
図7も同様である。駆動波形データDaは、駆動波形Aの量子化データであり、駆動波形データDbは、駆動波形Bの量子化データであり、駆動波形データDcは、駆動波形Cの量子化データである。駆動波形データDaは量子化されたデータAk(k=0、1、2、・・・)を有し、駆動波形データDbは量子化されたデータBkを有し、駆動波形データDcは量子化されたデータCkを有する。
【0029】
図5は、時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
図5において、A、B、Cは、駆動波形A、B、Cにそれぞれ対応することを示す。アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDa、Db、Dcを取得し、時系列データを作成する。時系列データは、データAk、Bk、Ckを時間間隔Δtを設けて順に並べたものであり、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べたものである。時系列データはデジタル信号である。なお、時間間隔Δtは、所定のサンプリング周波数の逆数である。量子化されたデータAk、Bk、Ckは、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する時間ごとに、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べられる。言い換えると、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する長さ以下である。また、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0とは連続し、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0とは連続し、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1とは連続する。つまり、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0との間に、量子化されたデータC0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0との間に、量子化されたデータA0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1との間に、量子化されたデータB0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。なお、サンプリング周波数は、24MHzであり、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、約41nSである。
【0030】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。
図5に示すように、D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、アンプ53に出力する。アンプ53は、入力されたアナログ信号を増幅させて、スイッチ群54に出力する。
図5に示すように、アンプ53にて増幅されたアナログ信号は時分割多重信号を構成する。つまり、時分割多重信号は、データAkのみに対応するアナログ信号、データBkのみに対応するアナログ信号、データCkのみに対応するアナログ信号ではない。また、時分割多重信号は、少なくとも、1つのデータAk、1つのデータBk、1つのデータCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、1つのデータAk+1、1つのデータBk+1、1つのデータCk+1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、が時系列で連続する信号である。例えば、時分割多重信号は、
図5において、1つである。
図5において、データC0に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データA0、データB0、データC0の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA0及びデータB0が0の状態のアナログ信号が、データA1、データB1、データC1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA1が0の状態のアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk及びデータBkの組に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データAk―1、データBk―1、データCk―1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータCk―1が0の状態のアナログ信号が、データAk、データBk、データCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk―1及びデータBk―1の組に対応するアナログ信号が孤立しているように見える理由も同様である。よって、
図5のアナログ信号を、1つの時分割多重信号として取り扱うことができる。時分割多重信号において、データAk-1に対応する部分を第1部分、データAkに対応する部分を第2部分、データBk-1に対応する部分を第3部分、データBkに対応する部分を第4部分とすると、第1部分と第2部分との間に第3部分があり、第3部分と第4部分との間に第2部分がある。言い換えると、第1部分と第3部分とは連続し、第3部分と第2部分とは連続し、第2部分と第4部分とは連続する。つまり、時分割多重信号において、第1部分と第3部分との間には、第2部分、第4部分及び他の波形はない。また、時分割多重信号において、第3部分と第2部分との間には、第1部分、第4部分及び他の波形はない。また、時分割多重信号において、第2部分と第4部分との間には、第1部分、第3部分及び他の波形はない。なお、データAk及びCkとの間でも同様な関係が成立し、データBk及びCkとの間でも同様な関係が成立する。1つの時分割多重信号は、1つの吐出駆動周期に収まる。例えば、吐出駆動周波数(噴射周波数)が100kHzであれば、1つの吐出駆動周期(噴射周期)は、10μSであり、1つの時分割多重信号は、10μS未満の長さである。データAk、データBk及びデータCkは、1つの時分割多重信号に各々3個以上あることが好ましい。理由を後述する。
【0031】
制御回路51は、複数の第nスイッチ54(n)の開閉を制御するスイッチ制御信号S1と、駆動波形Aに対応した同期信号S2aと、駆動波形Bに対応した同期信号S2bと、駆動波形Cに対応した同期信号S2cとをスイッチ群54に出力する。なお三つの同期信号S2a、S2b及びS2cを単に同期信号S2とも表す(
図3参照)。スイッチ制御信号S1は、複数の第nスイッチ54(n)のいずれかを選択することを示す第一選択情報と、三つの同期信号S2a、S2b、S2cのいずれかを選択することを示す第二選択情報とを含む。第一選択情報及び第二選択情報は紐づけられている。
【0032】
なお3つの同期信号S2a、S2b及びS2cを生成する同期信号生成回路を制御装置50に設け、制御回路51からトリガ信号を受信した場合に、同期信号生成回路からスイッチ群54に3つの同期信号S2a、S2b及びS2cを出力してもよい。またスイッチ群54が同期信号S2a、S2b及びS2cを生成してもよい。また制御回路51からトリガ信号を受信した場合に、スイッチ群54が同期信号S2a、S2b及びS2cを生成してもよい。
【0033】
図6は、時分割多重信号と、同期信号S2a、S2b及びS2cとの関係を説明する説明図である。同期信号S2a、S2b及びS2cはパルス波である。同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。前述したように、時系列データを構成するデータAk、Bk、Ckは時間間隔Δtを設けて順に並べられている。そのため、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データAkに対応し、駆動波形Aを示す駆動波形信号Paを取得することができる。同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データBkに対応し、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pbを取得することができる。同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データCkに対応し、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcを取得することができる。換言すれば、1つの第nスイッチ54(n)は、1種類の時分割多重信号を入力され、駆動波形Aを示す駆動波形信号Pa、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pb、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcのいずれか1つを分離する。
【0034】
スイッチ群54は、選択された同期信号S2a~S2cが示す開閉タイミングで、選択された第nスイッチ54(n)を開閉させる。換言すれば、スイッチ群54は、所定のサンプリング周波数によって、第nスイッチ54(n)を開閉させる。
【0035】
図7は、第nスイッチ54(n)の開閉によってアクチュエータ88に入力される駆動波形の模式図である。同期信号S2aが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2aのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2aのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形A1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号か
ら駆動波形信号Paが分離されて、駆動波形信号Paによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Paの凹凸を表すために、データAkを3個以上必要とする。
【0036】
同期信号S2bが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2bのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2bのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形B1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pbが分離されて、駆動波形信号Pbによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pbの凹凸を表すために、データBkを3個以上必要とする。
【0037】
同期信号S2cが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2cのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2cのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形C1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pcが分離されて、駆動波形信号Pcによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pcの凹凸を表すために、データCkを3個以上必要とする。
【0038】
前記所定のサンプリング周波数は、インクジェットヘッド8の共振周波数以上である。インクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインク(液体)を充填していない場合における共振周波数であるか、又は圧力室81にインクを充填している場合における共振周波数である。例えば、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHzである場合、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHz未満となる。具体的には、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振
周波数が90kHzとなる。つまり、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数よりも大きい。
【0039】
図8は、アンプ53の構成を略示する回路図である。アンプ53は自励式のデジタルアンプである。アンプ53は、コンパレータ53aと、レベルシフタ53mと、ゲートドライバ回路53bと、NMOS回路53cと、ブートストラップ回路53dと、ローパスフィルタ53eと、負帰還配線53hとを備える。
【0040】
コンパレータ53aには、正電源VDD1と、負電源VSS1とが接続されている。つまり、コンパレータ53aは、正電源VDD1と、負電源VSS1と接続されるので、両電源構成である。NMOS回路53cには、正電源VDD2と、負電源VSS2とが接続されている(
図9参照)。レベルシフタ53mは、例えばツェナーダイオードを有し、負電源VSS1及び負電源VSS2の基準電圧の差を補正するために、コンパレータ53aから入力された信号のレベルを変更する。
【0041】
コンパレータ53aのプラス入力端子はD/Aコンバータ52に接続され、コンパレータ53aのプラス入力端子にはD/Aコンバータ52からのアナログ信号が入力される。コンパレータ53aの出力端子はレベルシフタ53mを介してゲートドライバ回路53bに接続され、コンパレータ53aの出力信号はレベルシフタ53mにて信号レベルを変更され、ゲートドライバ回路53bに入力される。ゲートドライバ回路53bはNMOS回路53cに接続され、コンパレータ53aからの出力信号に基づいて、NMOS回路53cにオン又はオフ信号を出力する。NMOS回路53cは、ゲートドライバ回路53bからのオン又はオフ信号によって駆動され、ローパスフィルタ(LPF)53eに信号を出力する。
【0042】
ローパスフィルタ53eは、インダクタ53fと、コンデンサ53gとを備える。インダクタ53fの一端はNMOS回路53cに接続され、他端はコンデンサ53gの一端に接続される。コンデンサ53gの他端はグランドに接続される。インダクタ53fの他端及びコンデンサ53gの一端は、スイッチ群54(n)に接続される。即ち、ローパスフィルタ53eはスイッチ群54(n)に信号、即ちアナログ信号を増幅させて生成された時分割多重信号を出力する。負帰還配線53hの一端は、インダクタ53fの他端及びコンデンサ53gの一端に接続され、負帰還配線53hの他端は、コンパレータ53aのマイナス入力端子に接続される。ブートストラップ回路53dはゲートドライバ回路53bと、NMOS回路53cとに接続される。
【0043】
図9は、ゲートドライバ回路53b、NMOS回路53c及びブートストラップ回路53dの構成を略示する回路図である。ゲートドライバ回路53bは第1ゲートドライバ53b1と、第2ゲートドライバ53b2とを備える。NMOS回路53cは、第1N型MOSFET53c1と、第2N型MOSFET53c2とを備える。第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1のゲートに接続される。第2ゲートドライバ53b2は第2N型MOSFET53c2のゲートに接続される。第1N型MOSFET53c1のドレインは正電源VDD2に接続される。第1N型MOSFET53c1のソースは第2N型MOSFET53c2のドレインに接続される。第2N型MOSFET53c2のソースは負電源VSS2に接続される。第1N型MOSFET53c1のソースと、第2N型MOSFET53c2のドレインとは、ローパスフィルタ(LPF)53e、即ちインダクタ53fの一端に接続される。即ち、負帰還配線53hは、ローパスフィルタ53eを介して第1N型MOSFET53c1のソース及び第2N型MOSFET53c2のドレインに接続される。ゲートドライバ回路53bは負電源VSS2に接続される。
【0044】
ブートストラップ回路53dは、正電源53d1と、ダイオード53d2と、ブートストラップコンデンサ53d3とを備える。正電源53d1のマイナス端子はグランドに接続され、正電源53d1のプラス端子はダイオード53d2のアノードに接続される。ダイオード53d2のカソードはブートストラップコンデンサ53d3の一端に接続される。ブートストラップコンデンサ53d3の他端は第1N型MOSFET53c1のソースと、第2N型MOSFET53c2のドレインとに接続される。またダイオード53d2のカソードと、ブートストラップコンデンサ53d3の一端とは、第1ゲートドライバ53b1に接続される。即ち、第1ゲートドライバ53b1はダイオード53d2を介して正電源53d1に接続される。上述のように、ゲートドライバ回路53bは負電源VSS2に接続され、第1ゲートドライバ53b1は正電源53d1に接続されるので、ゲートドライバ回路53bは両電源構成である。
【0045】
コンパレータ53aのプラス入力端子に入力された電圧が、マイナス入力端子に入力された電圧よりも小さい場合、コンパレータ53aはゲートドライバ回路53bにLow信号を出力する。ゲートドライバ回路53bにLow信号が入力された場合、第2ゲートドライバ53b2は第2N型MOSFET53c2のゲートにオン信号を出力し、第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1のゲートにオン信号を出力しない。即ち、第2N型MOSFET53c2は導通し、第1N型MOSFET53c1は導通しない。そのため、ブートストラップコンデンサ53d3の他端はグランドに接続され、ブートストラップコンデンサ53d3は正電源53d1によって充電される。換言すれば、ブートストラップコンデンサ53d3は第2N型MOSFET53c2の導通によって充電される。
【0046】
ブートストラップコンデンサ53d3の充電完了後に、コンパレータ53aのプラス入力端子に入力された電圧が、マイナス入力端子に入力された電圧よりも大きくなった場合、コンパレータ53aはゲートドライバ回路53bにHigh信号を出力する。ゲートドライバ回路53bにHigh信号が入力された場合、第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1のゲートにオン信号を出力し、第2ゲートドライバ53b2は第2N型MOSFET53c2のゲートにオン信号を出力しない。即ち、第1N型MOSFET53c1は導通し、第2N型MOSFET53c2は導通しない。
【0047】
第2N型MOSFET53c2の非導通時における第1N型MOSFET53c1のソースの電圧をVSとし、充電されたブートストラップコンデンサ53d3の両端に印加される電圧をVCとすると、ブートストラップコンデンサ53d3の一端の電圧は、VS+VCとなる。そのため、第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1のゲートに、第1N型MOSFET53c1のソースの電圧VSよりも高い電圧の信号、即ちオン信号を出力することができる。即ち、第1ゲートドライバ53b1はブートストラップコンデンサ53d3の充電後の電圧により、第1N型MOSFET53c1を導通させる。換言すれば、ブートストラップコンデンサ53d3の充電後でなければ、第1N型MOSFET53c1を導通させることはできない。第1N型MOSFET53c1の導通によって、電源VDD2の電圧に基づく信号がローパスフィルタ53eに出力される。
【0048】
印刷ジョブをネットワークインターフェース56が受信した場合、即ちネットワークインターフェース56を介して印刷ジョブを受信し、当該印刷ジョブをメモリ55に記憶させた場合、制御回路51は第2N型MOSFET53c2を導通させて、ブートストラップコンデンサ53d3を充電させる。即ち、制御回路51は、印刷を開始する前に、ブートストラップコンデンサ53d3を充電させることができる。
【0049】
実施の形態1に係る印刷装置1にあっては、アンプ53(増幅回路)は自励式のデジタルアンプであり、他励式のデジタルアンプに比べて、その構成が簡素化される。そのため、増幅回路の大型化を抑制することができる。
【0050】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。
図10は、アンプ53、制御回路51及び検知回路57の構成を略示する回路図である。実施の形態2の構成のうち、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
実施の形態2において、ゲートドライバ回路53bはイネーブル機能を有する。ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能がオンになっている場合、即ちゲートドライバ回路53bがコンパレータ53aの出力に応じた出力を行う有効状態にある場合、コンパレータ53aの出力に応じて、第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1をオン又はオフにすることができ、第2ゲートドライバ53b2は第2N型MOSFET53c2をオン又はオフにすることができる。
【0052】
ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能がオフになっている場合、即ちゲートドライバ回路53bがコンパレータ53aの出力に応じた出力を行わない無効状態にある場合、第1ゲートドライバ53b1は第1N型MOSFET53c1を強制的にオフにし、第2ゲートドライバ53b2は第2N型MOSFET53c2を強制的にオフにする。制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオン又はオフにする。即ち、ゲートドライバ回路53bは有効状態と無効状態とを切り替えることができ、制御回路51はゲートドライバ回路53bを有効状態又は無効状態にすることができる。
【0053】
印刷装置1は検知回路57を備える。検知回路57はアンプ53の出力電圧を検出し、制御回路51に出力する。検知回路57は電圧検知部に対応する。検知回路57が0ボルトを基準とした第1電圧を検知した場合、制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにする。即ち、制御回路51はゲートドライバ回路53bを無効状態にする。第1電圧は、0ボルトを基準とした所定範囲内の電圧であり、例えば0~0.5Vの範囲内の電圧である。
【0054】
検知回路57が0ボルト以外の電圧を基準とした第2電圧を検知した場合、制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにする。即ち、制御回路51はゲートドライバ回路53bを無効状態にする。第2電圧は、所定期間アンプ53が出力すべき略一定の電圧であり、例えばコンパレータ53aのプラス入力端子に所定期間入力される最大電圧値Vsを基準とした所定範囲内の電圧である。例えばVs-0.5~Vs+0.5Vの範囲内の電圧である。なお最大値Vsは予めメモリ55に記憶されている。第2電圧は、最大電圧値Vsを基準とした所定範囲内の電圧に限定されず、0ボルト以外の電圧を基準とした所定範囲内の電圧であってもよい。以下、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにする処理を第1処理という。
【0055】
図11は、第1処理を実行しない場合におけるアンプ53の出力電圧を示すグラフである。
図11の横軸は時間を示し、右側が過去、左側が未来を示す。後述する
図12、
図15及び
図16においても同様である。第1処理を実行しない場合、制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能を常時オンにする。換言すれば、第1処理を実行しない場合、ゲートドライバ回路53bがイネーブル機能を備えていないのと同じ状態である。
【0056】
図11のAに示すように、アンプ53の出力波形はVs付近において、脈動するように波打つ。
図11のBに示すように、アンプ53の出力波形は0ボルト付近において、脈動するように波打つ。即ち、アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53の出力波形は波打つ。これは以下の理由による。
【0057】
アンプ53のプラス入力端子に略一定の電圧が入力される。コンパレータ53aのマイナス入力端子に入力される電圧が、プラス入力端子に入力される電圧よりも高くなった場合、コンパレータ53aはLow信号を出力する。第2N型MOSFET53c2がオンになり、第1N型MOSFET53c1がオフになり、NMOS回路53cの出力電圧が下降する。負帰還配線53hを介してコンパレータ53aのマイナス入力端子に入力される電圧が下降し、プラス入力端子に入力される電圧よりも低くなる。コンパレータ53aはHigh信号を出力し、第2N型MOSFET53c2がオフになり、第1N型MOSFET53c1がオンになることによって、NMOS回路53cの出力電圧が上昇する。負帰還配線53hを介してコンパレータ53aのマイナス入力端子に入力される電圧が上昇し、プラス入力端子に入力される電圧よりも高くなる。再び、コンパレータ53aがLow信号を出力し、第2N型MOSFET53c2がオンになり、第1N型MOSFET53c1がオフになることによって、NMOS回路53cの出力電圧が下降する。
【0058】
NMOS回路53cにおける上述の動作によって生成される波形は、ローパスフィルタ53eを通じて平均化され、出力される。そのため、アンプ53の出力波形は脈動するように波打つ形状となる。アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53の出力波形が波打つので、正確な駆動波形の生成が阻害され、インクの吐出精度及び記録用紙200に形成される画像の精度が悪化するおそれがある。
【0059】
図12は、第1処理を実行する場合におけるアンプ53の出力電圧を示すグラフである。制御回路51は第1処理を実行する。検知回路57が第1電圧又は第2電圧を検知した場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、検知回路57が第1電圧又は第2電圧を検知していない場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオンにする。
【0060】
図12のA′に示すように、検知回路57が第2電圧を所定時間検知した場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能を所定時間オフにするので、負帰還配線53hを介してコンパレータ53aのマイナス入力端子に入力される電圧は所定時間略一定となり、アンプ53の出力波形は、Vs付近において、直線的な形状を有する。
【0061】
図12のB′に示すように、検知回路57が第1電圧を所定時間検知した場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能を所定時間オフにするので、負帰還配線53hを介してコンパレータ53aのマイナス入力端子に入力される電圧は所定時間略一定となり、アンプ53の出力波形は、0V付近において、直線的な形状を有する。即ち、アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53は略一定の電圧を出力する。そのため、正確な駆動波形の生成を実現することができる。
【0062】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13は、アンプ53、制御回路51及び検知回路57の構成を略示する回路図である。
【0063】
実施の形態3においては、実施の形態2と異なり、アンプ53はスイッチ53nを備える。スイッチ53nは、ローパスフィルタ53eの出力側、即ちアンプ53の出力端子とグランドとの接続又は接続の解除を行う。制御回路51はスイッチ53nの開閉を制御する。なおスイッチ53nはアンプ53に含まれなくてもよく、アンプ53以外の部品として使用してもよい。実施の形態3に係る印刷装置1は、スイッチ53nを備える以外は、実施の形態2と同様な構成である。
【0064】
検知回路57が第1電圧を検知した場合、制御回路51はスイッチ531を閉じ、検知回路57が第1電圧を検知していない場合、制御回路51はスイッチ531を開く。検知回路57が第2電圧を検知した場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、検知回路57が第2電圧を検知していない場合、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオンにする。
【0065】
検知回路57が第1電圧を所定時間検知した場合、制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、スイッチ53nを所定時間閉じる。アンプ53の出力波形は、0V付近において、直線的な形状を有する。即ち、アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53は略一定の電圧を出力する。そのため、正確な駆動波形の生成を実現することができる。
【0066】
実施の形態2の場合、検知回路57が第1電圧を所定時間検知し、制御回路51が第1処理を実行しても、換言すれば、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにしても、0V付近において、オフセット電圧が残るおそれがある。しかし、実施の形態3においては、スイッチ53nを閉じるので、オフセット電圧の発生を防止することができる。
【0067】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態4に係る構成の内、実施の形態1~3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図14はアンプ53及び制御回路51の構成を略示する回路図である。ゲートドライバ回路53bはイネーブル機能を有する。制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオン又はオフにする。D/Aコンバータ52は、D/Aコンバータ52から出力される信号のレベル、即ちアンプ53に入力される信号のレベルを変更することができる。
【0068】
NMOS回路53cの正電源VDD2の電圧は可変である。制御回路51は正電源VDD2の電圧を変更することができる。アンプ53はスイッチ53nを備える。スイッチ53nは、ローパスフィルタ53eの出力とグランドとの接続又は接続の解除を行う。制御回路51はスイッチ53nの開閉を制御する。制御回路51は、メモリ55に記憶されている駆動波形データを読み出し、駆動波形データをデジタルデータとしてD/Aコンバータ52に出力する。駆動波形データは複数の信号レベルを示す情報を含む。D/Aコンバータ52は、いずれかの信号レベルのアナログ信号を出力する。アンプ53の増幅率は可変値であり、例えば10倍である。ユーザは、アンプ53の増幅率を事前に設定可能である。
【0069】
制御回路51はメモリ55から駆動波形データを取得し、取得した駆動波形データが0ボルトを示す信号である場合、即ち、アンプ53から出力されるべき目標電圧を示す信号として、0ボルトを示す信号が制御回路51に入力された場合、制御回路51は、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、スイッチ53nを所定時間閉じる。そのためアンプ53の出力波形は、0V付近において、直線的な形状を有する。以下、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、スイッチ53nを所定時間閉じる処理を第2処理という。
【0070】
制御回路51がメモリ55から駆動波形データを取得し、取得した駆動波形データが0ボルトよりも高い電圧であって、所定期間アンプ53が出力すべき略一定の電圧を示す場合、例えばコンパレータ53aのプラス入力端子に所定期間入力される最大電圧値Vsを示す場合、制御回路51は電源VDD2の供給電圧を目標電圧Vsに変更する。
【0071】
また、コンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積が目標電圧Vs、即ち供給電圧よりも高くなるように、制御回路51はD/Aコンバータ52に、D/Aコンバータ52から出力される信号のレベルを選択させる。換言すれば、目標電圧が0ボルトよりも高い電圧である場合、制御回路51は電源VDD2の供給電圧を、目標電圧であって、コンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積よりも低い電圧に変更する。以下、供給電圧を目標電圧に変更する処理及びコンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積が目標電圧よりも高くなるようにする処理を第3処理という。
【0072】
図15は、第2処理及び第3処理を実行しない場合におけるアンプ53の出力電圧を示すグラフである。第2処理を実行しない場合、制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能を常時オンにし、スイッチ53nを常時開く。換言すれば、第2処理を実行しない場合、アンプ53がスイッチ53nを備えず、ゲートドライバ回路53bがイネーブル機能を備えていないのと同じ状態である。第3処理を実行しない場合、制御回路51は常時電源VDD2の供給電圧を変更せず、D/Aコンバータ52から出力される信号のレベルを変更しない。換言すれば、第3処理を実行しない場合、電源VDD2の電圧は可変ではなく、D/Aコンバータ52は出力信号のレベルを変更する機能を有さないのと同じ状態である。
【0073】
図15のCに示すように、アンプ53の出力波形は0ボルト付近において、脈動するように波打つ。
図15のDに示すように、アンプ53の出力波形はVs付近において、脈動するように波打つ。即ち、アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53の出力波形は波打つ。その理由は実施の形態2で述べた理由と同じである。なお
図15において、電源VDD2の供給電圧Vkは最大電圧値Vsよりも大きい。
【0074】
図16は、第2処理及び第3処理を実行する場合におけるアンプ53の出力電圧を示すグラフである。0ボルトを示す信号が制御回路51に入力された場合、制御回路51は第2処理を実行する。制御回路51はゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、スイッチ53nを所定時間閉じる。
図16のC′に示すように、アンプ53の出力波形は、0V付近において、直線的な形状を有する。
【0075】
取得した駆動波形データが0ボルトよりも高い電圧であって、所定期間アンプ53が出力すべき略一定の電圧を示す場合、例えばコンパレータ53aのプラス入力端子に所定期間入力される最大電圧値Vsを示す場合、制御回路51は第3処理を実行する。
図16に示すように、制御回路51は電源VDD2の供給電圧Vkを目標電圧Vsに変更する。また
図16の一点鎖線で示すように、制御回路51はD/Aコンバータ52の出力信号のレベルを変更し、コンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積Vpが目標電圧Vs、即ち供給電圧Vkよりも高くなるようにする。
図16のD′に示すように、アンプ53は供給電圧Vkを超える増幅はできないので、アンプ53の出力電圧は供給電圧Vkに固定される。上述のように第2処理を実行することによって、アンプ53が略一定の電圧を出力すべき場合に、アンプ53は略一定の電圧を出力する。そのため、正確な駆動波形の生成を実現することができる。
【0076】
(実施の形態5)
以下本発明を実施の形態5に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。
図17は、アンプ53、制御回路51及び検知回路57の構成を略示する回路図である。実施の形態5に係る構成の内、実施の形態1~4と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施の形態5において、印刷装置1は検知回路57を備える。検知回路57はアンプ53の出力電圧を検出し、制御回路51に出力する。NMOS回路53cの正電源VDD2の電圧は可変である。制御回路51は正電源VDD2の電圧を変更することができる。
【0077】
検知回路57が0ボルトを基準とした前記第1電圧(実施の形態2参照)を検知した場合、制御回路51は、ゲートドライバ回路53bのイネーブル機能をオフにし、スイッチ53nを所定時間閉じる。そのためアンプ53の出力波形は、0V付近において、直線的な形状を有する。即ち、検知回路57の検知結果に基づいて、前記第2処理(実施の形態4参照)を実行する。
【0078】
検知回路57が0ボルト以外の電圧を基準とした前記第2電圧(実施の形態2参照)を検知した場合、制御回路51は第1電源53kの供給電圧を目標電圧Vsに変更する。また制御回路51はD/Aコンバータ52の出力信号のレベルを変更し、コンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積が目標電圧Vs、即ち供給電圧よりも高くなるようにする。換言すれば、目標電圧が0ボルトよりも高い電圧である場合、制御回路51は第1電源52kの供給電圧を、目標電圧であって、コンパレータ53aのプラス端子に入力される電圧とアンプ53の増幅率との積よりも低い電圧に変更する。即ち、検知回路57の検知結果に基づいて、前記第3処理(実施の形態4参照)を実行する。
【0079】
実施の形態1~5では、振動板82、圧電体83、第1共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成したが、これに限られない。共通電極は1つであってもよい。即ち、2層材であってもよい。2層材は、振動板82、圧電体83、共通電極及び個別電極85から構成される。
【0080】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 印刷装置
51 制御回路(制御部)
53 アンプ(増幅回路)
53a コンパレータ(両電源コンパレータ)
53b ゲートドライバ回路(両電源ゲートドライバ)
53c NMOS回路
53c1 第1N型MOSFET
53c2 第2N型MOSFET
53m レベルシフタ
53n スイッチ
53h 負帰還配線
57 検知回路(電圧検知部)
88 アクチュエータ(エネルギー付与素子)
VDD2 正電源
VSS2 負電源