(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060141
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】測量器及び測位システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01C15/00 103B
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167299
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 峻一
(57)【要約】
【課題】少ない人数の作業員であっても建設工事の作業効率を向上させる測量器及び測位システムを提案する。
【解決手段】本発明は、水平方向にレーザを照射し、水平ラインLhを対象物に投影する照射部12と、鉛直面内にレーザを照射し、鉛直ラインLvを対象物に投影する照射部13と、GPS衛星やGNSS衛星等の測位衛星からの電波を受信するアンテナ15と、受信した電波を処理して、照射部12,13の中心の座標を演算する演算部17と、測量器1の姿勢を検出する姿勢検出センサ18とを備える測量器1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水平方向にレーザを照射する第1レーザ照射部と、
測位衛星からの電波を受信する第1アンテナと、
前記受信した電波を処理して、前記第1レーザ照射部の中心の座標を演算する第1演算部と、を備える測量器。
【請求項2】
前記測量器の姿勢を検出する第1姿勢検出部、をさらに備え、
前記第1姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、
前記第1演算部は、前記第1アンテナの座標及び前記第1姿勢検出部の計測値を用いて、前記第1レーザ照射部の中心の座標を演算する、請求項1に記載の測量器。
【請求項3】
少なくとも鉛直面内にレーザを照射する第2レーザ照射部と、
測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサと、
測位衛星からの電波を受信する第1アンテナと、
前記受信した電波を処理して、前記第2レーザ照射部の中心の座標を演算する第1演算部と、を備える測量器。
【請求項4】
前記測量器の姿勢を検出する第1姿勢検出部、をさらに備え、
前記第1姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、
前記第1演算部は、前記第1アンテナの座標及び前記第1姿勢検出部の計測値を用いて、前記第2レーザ照射部の中心の座標を演算する、請求項3に記載の測量器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の測量器と、座標出し器とを備え、
前記座標出し器は、
レーザを対象物の位置出し点に照射する第3レーザ照射部と、
前記第3レーザ照射部の中心の座標と前記対象物の位置出し点との距離を計測するレーザ距離計と、
前記測位衛星からの電波を受信する第2アンテナと、
前記受信した電波を処理して、前記第3レーザ照射部の中心の座標を演算する第2演算部と、
前記座標出し器の姿勢を検出する第2姿勢検出部、を備え、
前記第2姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、
前記第2演算部は、前記第2アンテナの座標及び前記第2姿勢検出部の計測値を用いて、前記第3レーザ照射部の中心の座標を演算する、測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量器及び測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設工事における墨出し作業に関する技術開発が盛んであり、例えば、レーザ光を用いた墨出し装置や墨出し方法に関する発明がなされている。従来の工事測量は、重量のある測機一式の運搬、据付け、バック測量等の準備作業、各種計測等を複数人で行う必要があった。これに対し近年では、衛星測位による工事測量が導入されたことにより、測機が軽量化され、可搬性が向上するとともに、単独測位も可能になってきた。衛星測位による工事測量は、準天頂衛星の機数増加等に伴いcm単位の精度の測位が可能となりつつある。その一方で、電離層の影響や衛星の捕捉数等による変動誤差が生じるため、本設構造物の出来形管理等のmm単位の精度を要求する測位に対しては不適であり、用途が制限される。しかし、建設現場においては、仕上げ面でないコンクリート天端の高さ出しや、岩盤調査の測線明示等の簡易な測量に対して衛星測位による工事測量を利用できる余地は十分にあり、積極的に利用することで建設工事の作業効率を向上させることが望まれている。
【0003】
特許文献1には、大規模土木工事等での各種位置出し作業を行うに際し、作業人員の低減、作業能率の向上、位置出し精度の向上を図ることのできる位置出し装置が開示されている。特許文献1の位置出し装置は、GPS衛星が送り出す電波を受信するアンテナと、該アンテナで受信した信号を処理してアンテナの現在位置を割り出す信号処理装置と、前記アンテナを支持する架台と、該架台に設けられ、アンテナの水平方向の位置調整を行う位置調整装置と、前記アンテナの直下に配され、鉛直下方に向けて光線を照射し、照射対象部位に光線による位置出し点を投影するポインタとを備えたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の位置出し装置は、アンテナ直下のポインタの鉛直下方に位置出し点を投影するに過ぎず、例えば、水平ラインや鉛直ライン等の墨出しを行う構成ではない。
【0006】
このような観点から、本発明は、少ない人数の作業員であっても建設工事の作業効率を向上させる測量器及び測位システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、少なくとも水平方向にレーザを照射する第1レーザ照射部と、測位衛星からの電波を受信する第1アンテナと、前記受信した電波を処理して、前記第1レーザ照射部の中心の座標を演算する第1演算部と、を備える測量器である。
【0008】
このような発明によれば、第1レーザ照射部の中心の座標を求めることができるので、測量器の水平を確保すれば、第1レーザ照射部の高さ位置と同じ標高の水平ラインを岩盤等の対象物に照射できるようになる。また、所定の高さ調整装置を用いれば、照射した水平ラインの高さ位置を目標標高値に合わせることができる。よって、本発明の測量器は、GPS衛星やGNSS衛星等からの電波に基づいて、水平ラインの墨出しを行うことができる。また、衛星測位に使用する機器類は、光波測距儀等に比べて小型かつ軽量であるため、可搬性を向上させることができる。さらに、衛星測位によれば、他の基準点を測量せずとも、自身の位置座標を取得できるため、バック測量等の準備工を削減でき、既知点と周囲の構造物等との位置関係を確認する等の測量ダブルチェックや、対象物に高さ位置を明示する墨出し等の作業を効率よく行うことができる。また、本発明の測量器を土留め杭に固定して変位を計測する等の動態観測への応用も可能となる。
【0009】
また、前記測量器の姿勢を検出する第1姿勢検出部、をさらに備え、前記第1姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、前記第1演算部は、前記第1アンテナの座標及び前記第1姿勢検出部の計測値を用いて、前記第1レーザ照射部の中心の座標を演算する、ことが好ましい。
【0010】
このような測量器によれば、幾何学的な計算により、第1レーザ照射部の中心の座標を求めることができ、第1レーザ照射部の高さ位置と同じ標高の水平ラインを岩盤等の対象物に照射できる。なお、第1アンテナと第1レーザ照射部の中心との距離は、事前に取得できる既知の値である。
【0011】
また、本発明は、少なくとも鉛直面内にレーザを照射する第2レーザ照射部と、測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサと、測位衛星からの電波を受信する第1アンテナと、前記受信した電波を処理して、前記第2レーザ照射部の中心の座標を演算する第1演算部と、を備える測量器である。
【0012】
このような発明によれば、第2レーザ照射部の中心の座標が求まるので、測量器の水平を確保すれば、1軸地磁気センサが検出した方位角(ヨー角)と同じ方位角の鉛直ラインを岩盤等の対象物に照射できる。また、測量器を通過する鉛直軸回りに測量器を回転すれば、照射した鉛直ラインの方位角を目標方位角に合わせることができる。よって、本発明の測量器は、測位衛星からの電波に基づいて、鉛直ラインの墨出しを行うことができる。また、衛星測位に使用する機器類は、光波測距儀等に比べて小型かつ軽量であるため、可搬性を向上させることができる。さらに、衛星測位によれば、他の基準点を測量せずとも、自身の位置座標を取得できるため、バック測量等の準備工を削減でき、既知点と周囲の構造物等との位置関係を確認する等の測量ダブルチェックや、対象物に高さ位置を明示する墨出し等の作業を効率よく行うことができる。また、本発明の測量器を土留め杭に固定して変位を計測する等の動態観測への応用も可能となる。
【0013】
また、前記測量器の姿勢を検出する第1姿勢検出部、をさらに備え、前記第1姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、前記第1演算部は、前記第1アンテナの座標及び前記第1姿勢検出部の計測値を用いて、前記第2レーザ照射部の中心の座標を演算する、ことが好ましい。
【0014】
このような測量器によれば、幾何学的な計算により、第2レーザ照射部の中心の座標を求めることができ、1軸地磁気センサが検出した方位角(ヨー角)と同じ方位角の鉛直ラインを岩盤等の対象物に照射できる。なお、第1アンテナと第2レーザ照射部の中心との距離は既知である。
【0015】
また、本発明は、前記測量器と、座標出し器とを備え、前記座標出し器は、レーザを対象物の位置出し点に照射する第3レーザ照射部と、前記第3レーザ照射部の中心の座標と前記対象物の位置出し点との距離を計測するレーザ距離計と、前記測位衛星からの電波を受信する第2アンテナと、前記受信した電波を処理して、前記第3レーザ照射部の中心の座標を演算する第2演算部と、前記座標出し器の姿勢を検出する第2姿勢検出部、を備え、前記第2姿勢検出部は、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかであり、前記第2演算部は、前記第2アンテナの座標及び前記第2姿勢検出部の計測値を用いて、前記第3レーザ照射部の中心の座標を演算する、測量システムである。
【0016】
このような発明によれば、第3レーザ照射部の中心の座標が求まるので、手に持つ等して姿勢が検出された座標出し器は、レーザ距離計が計測した距離だけ離れた位置出し点を岩盤等の対象物に照射できる。よって、本発明の座標出し器は、測位衛星からの電波に基づいて、位置出し点の座標を求めることができる。つまり、座標出し器は、測量器が奏する上記効果に資する。
また、幾何学的な計算により、第3レーザ照射部の中心の座標を求めることができ、さらには、対象物に照射された位置出し点の座標を求めることができる。なお、第2アンテナと第3レーザ照射部の中心との距離は既知である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少ない人数の作業員であっても建設工事の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】測量器による測位方法の説明図であって、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。
【
図4】座標出し器による測位方法の説明図であって、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。
【
図5】衛星測位をしない場合の座標出し器による測位方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるもではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0020】
[測量器]
図1は、本実施形態の測量器の外観図である。測量器1は、GPS(Global Positioning System)衛星やGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星等を利用した衛星測位及び衛星測量を行う機器である。測量器1は、本体部11と、照射部12,13と、3つの脚部14と、アンテナ15と、表示部16と、演算部17と、姿勢検出センサ18とを備えている。
【0021】
本体部11は、略円柱状体であり、本体部11の頭部は略半球状を呈している。
照射部12は、墨出し用のレーザを水平方向に照射する光源である。照射部12から照射されたレーザは、水平ラインLhとして対象物に投影される。測量器1は、照射部12を複数備えることができる。照射部12から照射されたレーザは、平面視扇状を呈しているが、複数の照射部12から照射されたレーザを組み合わせることで、水平方向の360°レーザを構成できる。
照射部13は、墨出し用のレーザを鉛直面内に照射する光源である。照射部13から照射されたレーザは、鉛直ラインLvとして対象物に投影される。照射部13から照射されたレーザは、側面視扇状を呈しているが、複数の照射部13から照射されたレーザを組み合わせることで、鉛直面内の360°レーザを構成できる。
【0022】
脚部14は、本体部11の底部に設けられ、本体部11を支持する部材である。脚部14の少なくとも2つは伸縮可能であり、伸縮により測量器1が整準する。なお、本実施形態では、特段の事情がない限り、測量器1が整準しているとして説明を続ける。
アンテナ15は、GPS衛星やGNSS衛星等の測位衛星からの電波を受信する受信器である。アンテナ15は、例えば、本体部11の頭頂部に配置できるが、配置位置はこれに限定されない。
表示部16は、例えば、液晶パネルである。表示部16は、例えば、演算部17の演算結果を表示できる。
なお、測量器1は、脚部14に対して本体部11を昇降させる高さ調整装置(図示略)を備えていてもよい。また、測量器1は、本体部11を通過する鉛直軸回りに本体部11を回転させる回転調整装置(図示略)を備えていてもよい。
【0023】
演算部17は、衛星測位及び衛星測量に関する各種演算をする。演算部17は、例えば、本体部11の内部に配置された集積回路として実装できる。演算部17は、例えば、アンテナ15が受信した電波を処理して、照射部12,13の中心の座標を演算することができる。
姿勢検出センサ18は、測量器1の姿勢を検出する。本実施形態では、姿勢検出センサ18は3軸加速度センサである。つまり、測量器1はデジタル水平器を実装している。
【0024】
[測量器による測位方法]
図2は、測量器による測位方法の説明図であって、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。測量器1に対して、所定の座標系(
図2(b)参照)が定められている。測量器1を所定位置に配置して衛星測位を開始したとする。アンテナ15は、GPS衛星やGNSS衛星等の測位衛星からの電波を受信する。演算部17は、アンテナ15が受信した電波を処理して、アンテナ15の位置の座標P0(X01,Y01,Z01)を演算できる。また、姿勢検出センサ18は、測量器1の姿勢を検出し、測量器1のロール角θr0、ピッチ角θp0、ヨー角θy0を取得できる。また、アンテナ15と照射部12の中心との距離L01は、測量器1の設計上決められた既知の値であり、演算部17は、距離L01を事前に取得できる。演算部17は、座標P0(X01,Y01,Z01)、ロール角θr0、ピッチ角θp0、ヨー角θy0、及び距離L01を用いて、幾何学的な計算により、照射部12の中心の座標P1(X02,Y02,Z02)を求めることができる。照射部12による水平ラインの照射方向は、予め調整することができ、例えば、照射部12は、標高Z02の水平ラインを照射できる。よって、照射部12は、標高Z02の水平ラインを対象物に投影(墨出し)することができる。また、所定の高さ調整装置(三脚等)を用いれば、照射した水平ラインの高さ位置を目標標高値に合わせることができる。
【0025】
また、アンテナ15と照射部13の中心との距離L02は、測量器1の設計上決められた既知の値であり、演算部17は、距離L02を事前に取得できる。演算部17は、座標P0(X01,Y01,Z01)、ロール角θr0、ピッチ角θp0、ヨー角(方位角)θy0、及び距離L02を用いて、幾何学的な計算により、照射部12の中心の座標P2(X03,Y03,Z03)を求めることができる。照射部13による鉛直ラインの照射方向は、予め調整することができ、例えば、照射部12は、方位角θy0と同じ方位角の鉛直ラインを照射できる。よって、照射部13は、方位角θy0と同じ方位角の鉛直ラインを対象物に投影(墨出し)することができる。また、測量器1を通過する鉛直軸回りに測量器1を回転すれば、照射した鉛直ラインの方位角を目標方位角に合わせることができる。
【0026】
[座標出し器]
図3は、本実施形態の座標出し器の外観図である。座標出し器2は、GPS衛星やGNSS衛星等を利用した衛星測位及び衛星測量を行う機器である。座標出し器2は、本体部21と、照射部22と、アンテナ23と、表示部24と、演算部25と、姿勢検出センサ26と、レーザ距離計27を備えている。
【0027】
本体部21は、略直方体を呈している。
照射部22は、墨出し用のレーザを対象物の位置出し点に照射する。照射部22から照射されたレーザは、位置出し点Lpとして対象物に投影される。
アンテナ23は、GPS衛星やGNSS衛星等の測位衛星からの電波を受信する受信器である。アンテナ23は、例えば、本体部21の上面中央に配置できるが、配置位置はこれに限定されない。
表示部24は、例えば、液晶パネルである。表示部24は、例えば、演算部25の演算結果を表示できる。
【0028】
演算部25は、衛星測位及び衛星測量に関する各種演算をする。演算部25は、例えば、本体部21の内部に配置された集積回路として実装できる。演算部25は、例えば、アンテナ23が受信した電波を処理して、照射部22の中心の座標を演算することができる。
姿勢検出センサ26は、座標出し器2の姿勢を検出する。本実施形態では、姿勢検出センサ26は3軸加速度センサである。つまり、座標出し器2はデジタル水平器を実装している。
レーザ距離計27は、照射部22が対象物にレーザを照射したときに、照射部22の中心の座標と対象物の位置出し点Lpとの距離を計測する。レーザ距離計27は、例えば、三角測距方式や位相差測距方式で距離を計測できるが、これらの方式に限定されない。なお、座標出し器2は、レーザ距離計27の距離の計測に用いる、対象物からの反射光を受光する受光素子(図示略)を備えていてもよい。
【0029】
[座標出し器による測位方法]
図4は、座標出し器による測位方法の説明図であって、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。座標出し器2に対して、所定の座標系(
図4(b)参照)が定められている。座標出し器2を所定位置で手に持って衛星測位を開始したとする。アンテナ23は、GPS衛星やGNSS衛星等の測位衛星からの電波を受信する。演算部25は、アンテナ23が受信した電波を処理して、アンテナ23の位置の座標Q0(X11,Y11,Z11)を演算できる。また、姿勢検出センサ26は、座標出し器2の姿勢を検出し、座標出し器2のロール角θr1、ピッチ角θp1、ヨー角θy1を取得できる。また、アンテナ23と照射部22の中心との距離L11は、座標出し器2の設計上決められた既知の値であり、演算部17は、距離L11を事前に取得できる。演算部25は、座標Q0(X11,Y11,Z11)、ロール角θr1、ピッチ角θp1、ヨー角θy1、及び距離L11を用いて、幾何学的な計算により、照射部22の中心の座標Q1(X12,Y12,Z12)を求めることができる。
【0030】
また、レーザ距離計27は、照射部22が対象物にレーザを照射したときに、照射部22の中心の座標Q1(X12,Y12,Z12)と対象物の位置出し点Lpとの距離L12を計測する。演算部25は、座標Q1(X12,Y12,Z12)、ロール角θr1、ピッチ角θp1、ヨー角θy1、及び距離L12を用いて、幾何学的な計算により、対象物の位置出し点Lpの座標Q2(X13,Y13,Z13)を求めることができる。なお、照射部22によるレーザの照射方向は予め調整することができ、例えば、照射部22は、座標出し器2の姿勢に沿う方向にレーザを照射できる。
【0031】
[衛星測位をしない場合]
V字谷等の衛星からの電波が届きにくい場所であるため、衛星測位の精度を確保できない場合がある。又は、衛星測位の精度を確認するための測位を行う場合がある。これらの場合に対して、衛星測位をしない測位方法について説明する。
図5は、衛星測位をしない場合の座標出し器による測位方法の説明図である。
【0032】
図5に示すように、座標が既知の水準点にポール3を鉛直方向に立設し、ポール3の先端部に座標出し器2を取り付ける。ポール3は、座標出し器2の取り付け位置を中心としたピッチ角を変更可能に座標出し器2を支持でき、所望のピッチ角で座標出し器2を固定できる。座標出し器2は、ポール3に固定したときの姿勢で照射部22からレーザを照射する。水準点の座標をR(X21,Y21,Z21)、ポール3の長さをLqとした場合、座標出し器2の取り付け位置の座標Q3は、Q3(X21,Y21,Z21+Lq)となる。また、座標出し器2の取り付け位置と照射部22の中心との距離L13は、座標出し器2の設計上決められた既知の値であり、演算部17は、距離L13を事前に取得できる。よって、演算部25は、座標Q3(X21,Y21,Z21+Lq)、ロール角θr1、ピッチ角θp1、ヨー角θy1、及び距離L13を用いて、幾何学的な計算により、照射部22の中心の座標Q1(X12,Y12,Z12)を求めることができる。また、すでに説明したとおり、演算部25は、対象物の位置出し点Lpの座標Q2(X13,Y13,Z13)を求めることができる。
【0033】
また、
図5に示すように、水平器4を用いることもできる。水平器4は、例えば、気泡式であり、ポール3に取り付けるための取付部を備えてもよい。水平器4を用いることで、座標出し器2の垂直姿勢を確保することができ、座標出し器2のロール角θr1を0とみなすことができる。この場合、姿勢検出センサ26は、ピッチ角θp1及びヨー角θy1を監視できれば、座標出し器2の姿勢を実質的に検出できる。よって、例えば、姿勢検出センサ26を2軸加速度センサとすることができ、3軸加速度センサから2軸加速度センサへのグレードダウンによる座標出し器2のコスト削減が可能となる。
なお、
図5を用いた説明は、座標出し器2を用いた場合の説明であるが、照射部12,13の中心の座標を求めることに関しては、測量器1を用いた場合にもあてはまる。
【0034】
[具体例]
図6は、レーザ墨出しの具体例である。UAV(Unmanned Aerial Vehicle)測量等の出来形計測結果に基づいて、現地の岩盤における特定の範囲Aについて追い掘削が必要であることが判明し、範囲Aを示すマーキングをレーザ墨出しで行う場合について説明する。
【0035】
まず、作業員は、範囲Aへのレーザ射程範囲内に測量器1を固定配置する。測量器1の固定方法として、例えば、三脚5や、ピンポール(図示せず)を用いることができるが、これらに限定されない。次に、作業員は、測量器1で衛星測位を行う。すると、すでに説明したように、演算部17が照射部12の中心の座標を求め、照射部12が岩盤に対して水平ラインLh及び鉛直ラインLvを照射する。表示部16は、例えば、水平ラインLhが明示する標高、及び鉛直ラインLvが明示する方位角(ヨー角)を表示することができる。作業員は、明示された標高及び方位角を表示部16から確認できる。次に、作業員は、高さ調整装置(図示略)によって測量器1の高さ位置を調整し、照射部12の中心の高さを目標標高値に合わせる。ここで、目標標高値は、範囲Aの上辺の高さ位置である。その結果、水平ラインLhが範囲Aの上辺に投影される。また、作業員は、回転調整装置(図示略)によって測量器1の方位角を調整し、照射部12の中心の方位角を目標方位角に合わせる。ここで、目標方位角は、範囲Aの右辺の方位角である。その結果、鉛直ラインLvが範囲Aの右辺に投影される。油圧ショベル6は、水平ラインLh及び鉛直ラインLvを参照して範囲Aに対して追い掘削を行うことができる。
【0036】
また、作業員は、座標出し器2を手に持ち衛星測位を行う。すると、すでに説明したように、演算部25が照射部22の中心の座標を求め、照射部22が岩盤表面の位置出し点Lpに向けてレーザを照射する。表示部16は、例えば、位置出し点Lpの座標、照射部22の中心の座標と位置出し点Lpとの距離を表示することができる。作業員は、位置出し点Lpの座標、照射部22の中心の座標と位置出し点Lpとの距離を表示部24から確認できる。また、作業員が座標出し器2を動かすことで、座標出し器2は、岩盤表面の目標位置の座標を取得できる。
【0037】
例えば、岩盤表面上に設けた位置出し点Lpが範囲Aの右上隅であり、水平ラインLhと鉛直ラインLvとの岩盤表面上の交点が位置出し点Lpに一致している場合、照射部22が位置出し点Lpに向けてレーザを照射することで、演算部25は交点の座標を計算でき、表示部16は交点の座標を表示できる。よって、油圧ショベル6は、表示された交点の座標に基づいて、範囲Aの法線方向に所定距離(例えば、現場監督から指示された距離)だけ岩盤を掘削できる。また、レーザの照射先が交点から水平ラインLhに沿って移動するように作業員が座標出し器2を動かすことで、油圧ショベル6の掘削箇所を案内できる。また、作業員は、座標出し器2を動かして岩盤上に配設されている構造物(図示略)に設けた位置出し点Lpにレーザを照射すると、表示部24から位置出し点Lpの座標を確認できる。よって、作業員は、構造物と範囲Aとの位置関係を定量的に確認できる。
【0038】
本実施形態によれば、測量器1は、GPS衛星やGNSS衛星等からの電波に基づいて、水平ライン及び鉛直ラインの墨出しを行うことができる。また、衛星測位に使用する機器類は、光波測距儀等に比べて小型かつ軽量であるため、可搬性を向上させることができる。さらに、衛星測位によれば、他の基準点を測量せずとも、自身の位置座標を取得できるため、バック測量等の準備工を削減でき、既知点と周囲の構造物等との位置関係を確認する等の測量ダブルチェックや、対象物に高さ位置を明示する墨出し等の作業を効率よく行うことができる。また、本発明の測量器を土留め杭に固定して変位を計測する等の動態観測への応用も可能となる。また、座標出し器2は、測量器1が奏する上記効果に資する。よって、少ない人数の作業員であっても建設工事の作業効率を向上させることができる。
【0039】
[その他]
(a):本実施形態では、測量器1は、墨出し用のレーザを水平方向及び鉛直面内に照射する構成をとっていた。しかしながら、測量器1は、墨出し用のレーザを水平方向にのみ照射する構成をとってもよい。また、測量器1は、墨出し用のレーザを鉛直面内にのみ照射する構成をとってもよい。
(b):本実施形態では、測量器1の姿勢検出センサ18は3軸加速度センサであった。しかしながら、姿勢検出センサ18は、例えば、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記測量器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかでよい。ここで、3種類の加速度センサの少なくとも1種類を地磁気センサにしてもよい。つまり、加速度センサと地磁気センサの組み合わせとしてもよい。また、水平器は、例えば、気泡式、丸型、角度測定式とすることができるが、これらに限定されない。また、3種類の加速度センサ及び3種類の地磁気センサは独立したモジュールに分割して構成してもよい。
(c):本実施形態では、座標出し器2の姿勢検出センサ26は3軸加速度センサであった。しかしながら、姿勢検出センサ26は、例えば、(1)3軸加速度センサ、(2)3軸地磁気センサ、(3)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸加速度センサ、(4)水平器及び前記座標出し器の方位角を検出する1軸地磁気センサ、の少なくとも何れかでよい。ここで、3種類の加速度センサの少なくとも1種類を地磁気センサにしてもよい。つまり、加速度センサと地磁気センサの組み合わせとしてもよい。また、水平器は、例えば、気泡式、丸型、角度測定式とすることができるが、これらに限定されない。また、3種類の加速度センサ及び3種類の地磁気センサは独立したモジュールに分割して構成してもよい。
(d):本実施形態では、現地の岩盤へのレーザ墨出しについて例示した。しかしながら、本実施形態によるレーザ墨出しの対象物は上記に限られず、例えば、建物の壁であってもよい。例えば、測量器1が水平ライン及び鉛直ラインの交点を壁面の基準点に位置合わせするように墨出し用レーザを照射し、配管を埋設する予定の点であり、基準点から離れた壁面上の点に座標出し器2が座標出し用レーザを照射する。これにより、埋設予定の配管に座標を持たせることができ、配管工事を円滑に進めることができる。
(e):本実施形態では、測量器1の表示部16が演算部17の演算結果を表示するようにした。しかしながら、例えば、測量器1と無線又は有線で通信可能に接続された外部端末(例:スマートフォン)を用意し、外部端末が演算部17の演算結果を表示するように構成してもよい。なお、表示部16及び外部端末は、GNSS等の受信状況や、墨出しの結果と設計図との対比等を表示してもよい。
(f):本実施形態では、座標出し器2の表示部24が演算部25の演算結果を表示するようにした。しかしながら、例えば、座標出し器2と無線又は有線で通信可能に接続された外部端末(例:スマートフォン)を用意し、外部端末が演算部25の演算結果を表示するように構成してもよい。なお、表示部24及び外部端末は、GNSS等の受信状況や、墨出しの結果と設計図との対比等を表示してもよい。
(g):本実施形態で採り上げた発明特定事項は適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 測量器
11 本体部
12 照射部(第1レーザ照射部)
13 照射部(第2レーザ照射部)
14 脚部
15 アンテナ(第1アンテナ)
16 表示部
17 演算部(第1演算部)
18 姿勢検出センサ(第1姿勢検出部)
2 座標出し器
21 本体部
22 照射部(第3レーザ照射部)
23 アンテナ(第2アンテナ)
24 表示部
25 演算部(第2演算部)
26 姿勢検出センサ(第2姿勢検出部)
27 レーザ距離計