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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060145
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A01K89/015 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167304
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 雄一
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EG01
2B108EG06
2B108EG09
(57)【要約】
【課題】釣糸案内体に設けたリブの周囲で、糸絡みが発生し難い構造のレベルワインド装置を有する魚釣用リールを提供する。
【解決手段】魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置を有する。レベルワインド装置は、釣糸を挿通させる釣糸案内体20と、この釣糸案内体20に設けられ、糸絡みを防止するリブ40とを備えており、リブ40と、レベルワインド装置の筒状部21Aのリブと対向する対向部21eとの間の隙間を埋めるように、筒状部21AにОリング30を配設する。リブ40は、筒状部21Aに接触した釣糸を摺動させる形状を有している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置を有する魚釣用リールにおいて、
前記レベルワインド装置は、釣糸を挿通させる釣糸案内体と、この釣糸案内体に設けられ、糸絡みを防止するリブとを備えており、
前記リブと、前記レベルワインド装置の前端部の前記リブと対向する対向部との間の隙間を埋めるように、前記前端部にОリングを配設し、
前記リブは、前記前端部に接触した釣糸を摺動させる形状を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記前端部には、前記リブの対向部となる領域を除いて、前記Оリングが嵌入される固定溝が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記リブの対向部となる領域は平坦部である、ことを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記固定溝に嵌入されたОリングは、前記平坦部の領域で、前記リブの下面に接触した状態で固定される、ことを特徴とする請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記リブは、その前端縁が、前記レベルワインド装置の前端部の前端縁と同一の位置、又は、後方の位置となるような形状に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記レベルワインド装置の前端部の前端縁には、前記リブの前端縁に釣糸を案内する面取りが形成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール前方の側板間に、スプールに釣糸を巻回案内する釣糸案内体を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸受型タイプの魚釣用リールには、左右側板間に回転可能に支持されたスプールに対して釣糸を均等に巻回するように、レベルワインド装置が配設されている。このレベルワインド装置は、一方の側板側に回転可能に配設されたハンドルの巻き取り操作に連動して、スプール前方で左右に往復動する釣糸案内体を備えており、前記釣糸案内に釣糸が挿通されることで、スプールに対して釣糸を均等に巻回することが可能となっている。
【0003】
上記した釣糸案内体には、釣糸放出時の抵抗を軽減するように開口領域が広く形成された開口部と、釣糸巻き取り時に釣糸を案内する幅狭部を備え、クラッチの切換操作に連動して釣糸案内体を回動させる構成が知られている(例えば、特許文献1)。このような構成では、クラッチをOFFにすると、開口部がスプール前方に位置するため、キャスティング操作時にスプールに巻回された釣糸は、釣糸案内体の開口部の内面から大きな抵抗を受けることがなく、仕掛けの飛距離の低下を抑制して安定したキャスティングを行なうことが可能となる。また、クラッチをONに復帰すると、幅狭の案内部がスプール前方に位置するため、釣糸をスプールに対して均等に巻き取ることが可能となる。
【0004】
上記した釣糸案内体は、クラッチ操作と連動して回動する管状体に対して、軸方向(左右方向)に移動可能で管状体と共に一体回動する保持部に取り付けられている。前記保持部には、管状体内に配設されたウォームシャフトの螺円溝に係合する係合ピンが設けられており、ウォームシャフトが回転駆動されることで、釣糸案内体は、螺円溝と係合ピンの係合関係によって軸方向に移動可能となっている。
【0005】
また、上記した構成の両軸受け型リールでは、釣糸が釣糸案内体の部分に絡み付かないような構造にすることが好ましい。例えば、本件特許出願人は、釣糸案内体に糸絡み防止用のリブを設けることで、釣糸案内体付近で釣糸が糸絡みし難い両軸受け型リールを製造している(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-45号
【非特許文献1】DAIWA FISHING TACKLE 2022 第45~48頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した両軸受け型リールでは、釣糸案内体にリブを形成したことで、リブの表面(前端表面)に接触する釣糸を逃がして、釣糸が絡むことが抑制できるものの、リブの下面とレベルワインド装置の係合ピンを保持する筒状部との間には隙間があり、この隙間については考慮されていない。すなわち、細い釣糸を使用した場合において、バックラッシュ等のライントラブルが発生すると、釣糸にループが形成されたり、縒れが発生し、上記した隙間に入り込んで糸絡みすることがあり、容易に解消することができない状況となっている。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、釣糸案内体に設けたリブの周囲で、糸絡みが発生し難い構造のレベルワインド装置を有する魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置を有しており、前記レベルワインド装置は、釣糸を挿通させる釣糸案内体と、この釣糸案内体に設けられ、糸絡みを防止するリブとを備えており、前記リブと、前記レベルワインド装置の前端部の前記リブと対向する対向部との間の隙間を埋めるように、前記前端部にОリングを配設し、前記リブは、前記前端部に接触した釣糸を摺動させる形状を有することを特徴とする。
【0010】
上記した構成の魚釣用リールによれば、釣糸を挿通させる釣糸案内体にリブを形成し、リブと、前記レベルワインド装置の前端部の前記リブと対向する対向部との間の隙間を埋めるように、前記前端部にОリングを配設したことで、隙間内に釣糸が入り込むことが防止され、糸絡みが効果的に防止される。また、リブは、その前端部に接触した釣糸を摺動させる形状を備えているため、リブ部分でも糸絡みすることが効果的に防止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、釣糸案内体に設けたリブの周囲で、糸絡みが発生し難い構造のレベルワインド装置を有する魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る魚釣用リールの一実施形態を示し、前方側から見た斜視図。
図2】本実施形態の釣糸案内体部分の構造を示す分解斜視図。
図3】(a)は本実施形態の釣糸案内体部分の構成を示す部分断面図、(b)は正面図。
図4】レベルワインド装置の釣糸案内体部分を示した部分断面図であり、(a)は従来の構造を示す図、(b)は本実施形態の構造を示す図。
図5】釣糸案内体部分を示す斜視図であり、(a)は従来の構造を示す図、(b)は本実施形態の構造を示す図。
図6】釣糸案内体部分を示す正面図であり、(a)は従来の構造を示す図、(b)は本実施形態の構造を示す図。
図7】釣糸案内体部分を前方上方から見た図であり、(a)は従来の構造を示す図、(b)は本実施形態の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールについて説明する。
なお、以下の説明において、前後方向(前方、後方)、左右方向、上下方向(上方、下方)は、図1で示す方向で定義する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用リールは、左右のフレーム2a,2bを、それぞれ左右のカバー3a,3bで覆った左右側板1A,1Bを備えたリール本体1を有している。前記リール本体1には、左右側板間に位置し、釣竿100に装着されるリール脚が一体形成されている。また、前記左右のフレーム2a,2b間には、スプール軸が軸受を介して回転可能に支持されており、スプール軸には、釣糸が巻回されるスプール3が一体的に固定されている。
【0015】
本実施形態では、前記スプール3を回転駆動するハンドル5を左側板1A側に設置しており、左フレーム2bと左カバー3bとの間の空間には、ハンドル5の回転駆動力をスプール軸に伝達する公知の動力伝達機構が配設されている。また、いずれかの側板には、スプール軸を動力伝達状態と動力遮断状態に切り換える公知のクラッチ機構が配設されており、このクラッチ機構は、スプール3の後方側の左右側板間に配設されたクラッチレバー8を押し下げ操作することで、クラッチON状態(動力伝達状態)からOFF状態(動力遮断状態)に切り換えるようになっている。なお、クラッチOFF状態からクラッチON状態への復帰は、公知の自動復帰機構によってハンドル5を回転操作することで行うことが可能となっている。
【0016】
前記左右の側板1A,1B間には、スプール3の前方側にレベルワインド装置10が配設されている。
前記レベルワインド装置10は、スプール3に巻回された釣糸を挿通させる釣糸案内体20と、前記駆動力伝達機構を介して回転駆動される螺軸(ウォームシャフト)11と、前記釣糸案内体20に設けられるリブ40とを備えており、釣糸案内体20が螺軸11と係合することによって、左右往復駆動されるよう構成されている。
【0017】
前記螺軸11は、左右側板間に回動可能に保持される管状体(筒体)12内に収容された状態となっており、前記管状体12の外面には、軸方向に延出する長孔12aが形成されている。前記螺軸11の表面には、螺旋溝11aが形成されており、この螺旋溝は、前記長孔12aを介して露出した状態となっている。また、釣糸が挿通する釣糸案内体20は、樹脂等によって一体形成された保持部(本体)21と、保持部21の上部に一体的に固定されて、実際に釣糸が挿通する釣糸挿通部22とを備えており、保持部21には、左右方向に貫通孔21aが形成され、前記管状体12を囲繞するように配置、形成されている。
【0018】
前記管状体12は、前記クラッチ機構のクラッチレバー8の操作に伴って、所定の角度だけ回動駆動される。具体的には、図1に示すクラッチON状態からクラッチレバー8を押し下げてクラッチOFF状態にすると、管状体12は手前側(矢印D1方向)に回動駆動される。
【0019】
前記保持部21と管状体12は、一体回動可能で、かつ、保持部21が管状体12に沿って左右方向に往復動できるように係合されている。具体的には、図3(a)に示すように、管状体12には、径方向に突出する突起12bが複数個所(好ましくは直径方向に2個所)に形成されており、保持部21には、各突起12bが係合するように、対応して凹部21bが形成されている。これらの突起12bと凹部21bが係合することで、保持部21は、管状体12と一体的に回動駆動され、かつ、後述するように、管状体12に対して左右方向に往復駆動可能となっている。なお、突起12bと凹部21bの形成個数、配設位置、形状については、適宜変形することが可能である。
【0020】
前記保持部21は、前方に向けて突出し、レベルワインド装置10の前端部を構成する筒状部(本実施形態では円筒状に構成される)21Aを備えており、その内部には、前記管状体12に形成された長孔12aを介して、螺軸11の表面に形成された螺旋溝11aと係合する係合ピン23が収容されている。
【0021】
前記係合ピン23は、螺旋溝11aと係合する係合部23aと、筒状部21A内に圧入される本体23bとを備えている。前記係合ピン23は、筒状部21Aに圧入された状態で抜け止めされるように構成されている。この抜け止め構造については、図2に示すように、筒状部21Aの直径方向に貫通孔21dを形成しておき、筒状部21Aに係合ピン23の本体23bを圧入し、係合部23aが螺旋溝11aと係合した状態で抜け止めピン25を圧入することで構成される。
なお、本実施形態では、前記本体23bに空洞部23cを形成して係合ピン23の軽量化が図られているが、本体23bは中実状に構成されていても良い。
【0022】
また、前記筒状部21Aには、抜け止めピン25が径方向に抜けないように、抜け止めピン25の圧入位置に対応してОリング30が取着されている。前記筒状部21Aには、円周方向に沿って固定溝21Bが形成されており、Oリング30を固定溝21Bに嵌入することで、筒状部21Aから外れないようにしている。
【0023】
前記保持部21の上面側には、前記釣糸挿通部22が止めビス28等によって固定されている。釣糸挿通部22は、上記した特許文献1と同様、釣糸放出時の抵抗を軽減するように開口領域が広く形成された開口部22Aと、釣糸巻き取り時に釣糸を案内する幅狭部22Bを備えており、例えば、SUS、チタン等の釣糸抵抗が少ない材料によって形成されている。
これらはクラッチをOFF状態にすると、管状体12と共に保持部21が回動して、開口部22Aがスプール3の前方に位置し(釣糸放出状態)、クラッチをON状態にすると、管状体12と共に保持部21が逆向きに回動して、幅狭部22Bがスプール3の前方に位置する(釣糸案内状態)。
【0024】
上記した構成のレベルワインド装置10によれば、キャスティング操作時にクラッチをOFFにすると、スプール前方には、開口領域が広く形成された開口部22Aが位置するため、放出される釣糸は、開口部22Aの内面から大きな抵抗を受けることがなく、仕掛けの飛距離の低下を抑制して安定したキャスティングを行なうことが可能となる。また、クラッチをONに復帰すると、幅狭部22Bがスプール前方に位置する(図1参照)。この状態でハンドル5を巻き取り操作すると、釣糸案内体20(釣糸挿通部22)は、回転駆動される螺軸11の螺旋溝11aと係合する係合ピン23によって左右方向に往復駆動されるため、釣糸は、スプール3に対して均等に巻回される。
【0025】
一般的に、スプール3に巻回された釣糸は、バックラッシュ現象等のライントラブルが発生すると、ループ状になったり縒れた状態となって糸絡みが生じ易くなる。特に、本実施形態では、釣糸案内体20が回動駆動されることから、糸絡みが生じ易い構造となっており、このような糸絡みが生じ難いように、前記釣糸案内体20にはリブ40が設けられている。
【0026】
本実施形態のリブ40は板状で、釣糸案内体20の保持部21の中央に一体的に設けられている。
具体的に、前記保持部21の前部には、螺軸11の螺旋溝11aと係合する係合ピン23を収容する筒状部21Aが前方に向けて突出するように形成されており、筒状部21Aの上方領域の隙間や段部には、釣糸が入り込んで糸絡みが生じ易くなっている。このため、リブ40は、釣糸がこの部分に入り込まないように、保持部21の前側中央部分に、前方に突出するように一体形成されている。
【0027】
前記リブ40は、ライントラブル等を引き起こした釣糸が、筒状部21A、及び、その近傍に接触した際に抜け易い形状(抜ける方向に摺動させる形状)に形成されている。本実施形態のように、リブを板状に形成した場合、図2図3に示すように、その前端縁40aを、筒状部21A側から上側(釣糸挿通部22側)に移行するに従って、保持部21の中央部に向けて接近するような傾斜状にすることで、釣糸は上方に抜け易くなる。
【0028】
また、本実施形態では、抜け止めピン25が径方向に抜けないように、抜け止めピン25の圧入位置に対応して筒状部21AにОリング30を取着している。このOリング30と、リブ40の下面40bとの間に、図4(a)に示すような隙間(ギャップG)が生じていると、ライントラブル等が生じた際、ギャップGに釣糸が入り込んで糸絡みが発生することがある。このため、前記Oリング30については、リブ40との関係で、筒状部21Aのリブ40の下面40bと対向する対向部21eとの隙間を埋めるように構成されている。
【0029】
前記隙間を埋める構成については、Оリング30とリブ40の下面40bとの間に釣糸が入り込まないようになっていれば良い。具体的には、使用される釣糸の径が細いものであっても、図3(a)に示す隙間Tが0.3mm以下になっていれば釣糸が入り込むことが防止される。特に、Оリング30が、リブ40の下面40bと接触する状態(潰れるような状態も含む:間隔Tが0mm)になっていれば、釣糸が入り込むことを確実に防止することができる。
【0030】
本実施形態では、上述したように、筒状部21Aに、Oリング30を圧入して固定するための固定溝21Bが円周方向に沿って形成されており、Oリング30が筒状部21Aから外れ難くなるようにしている。
この固定溝21Bについては、筒状部21Aの全周に亘って形成するのではなく、前記リブ40の対向部となる領域(対向部21e)を除いて形成しておくことが好ましい。このように、一部に溝を形成しないことで、Oリング30の固定作業を容易に行うことが可能になると共に、釣糸が入り易い部分には固定溝が存在していないため、釣糸が引っ掛かることもない。
【0031】
また、上記した固定溝が形成されない対向部21eは、平坦状に構成する(平坦部21e´を形成する)ことが好ましく、これにより、釣糸が引っ掛かり難く、Оリング30をより固定し易くすることができる。この場合、固定溝が形成されていない平坦部21e´の幅Wについては、余り広すぎるとOリング30が抜け易くなってしまい、狭すぎるとOリング30が嵌め難くなるため、筒状部21Aの直径をDとした場合、0.45D<W<0.65Dにすることが好ましい(図3(b)参照)。
【0032】
また、前記リブ40については、その前端縁40aが、筒状部21Aの前端縁21fと同一の位置(同一面内)、又は、後方の位置となるような形状に形成されていることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、図3(a)で示したように、リブ40は、前端縁40aが上方に移行するに従い、保持部21の中央部に向けて接近するような傾斜形状となっている。このような構成のリブでは、最も前方の位置をPとした場合、筒状部21Aの前端縁21fの最も前方の位置P1よりも後方側になるように形成する(筒状部21Aをリブ40の前端縁40aに対して前方に突出させる)ことで、筒状部21A部分に釣糸がループ状に絡まろう(或いは、絡まった)としても、容易に抜けることが可能となる。なお、筒状部21Aのリブ40の前端縁40aに対する前方への突出量については、絡んだ釣糸が前端縁40aにスムーズに移行し易くなるように、0.3mm以下に形成することが好ましい。
【0034】
また、前記筒状部21Aの前端縁21fには、前記リブ40の前端縁40aに釣糸を案内するように面取り21hを形成しておくことが好ましい。このような面取り21hを形成しておくことで、Oリング30の部分やその近傍に釣糸が接触しても、リブ40の前端縁40a側に案内され、スムーズに外れるようになる。
なお、この面取り21hは、釣糸が外れる機能を発揮するものであれば良く、その幅は0.3mm以上あれば良い。また、幅を広くし過ぎると、係合ピン23を収容する筒状部21Aが薄肉厚化して強度が低下するので、1.0mm以下、好ましくは、0.7mm以下にすることが好ましい。
【0035】
次に、図4から図7を参照して、上記のように構成されたレベルワインド装置の釣糸案内体と、従来型の釣糸案内体とを比較して説明する。これらの図では、(a)は従来の構造を示しており、(b)は本実施形態の構造を示している。また、参照符号については、同一の参照符号が付されている。
【0036】
本実施形態では、筒状部21Aに取着されたОリング30と、リブ40の下面40bとの間に、図4(a)に示すようなギャップGを生じさせることなく、Oリング30は、リブ40との関係で、図4(b)に示すように、筒状部21Aのリブ40の下面40bと対向する対向部21eとの隙間を埋めるように配設されている。このため、キャスティング時等、ライントラブル等が生じても、釣糸はОリングよりも奥に入り込むことはなく、糸絡みすることが防止される。また、入り込まなかった釣糸は、リブ40の前端縁40aの傾斜面によって上方に抜けることから、釣糸案内体20に設けたリブ40の周囲で、糸絡みが発生し難い構造のレベルワインド装置となる。
【0037】
また、釣糸がOリング30部分に接触しようとしても、本実施形態では、糸絡みし易いリブ40の周囲である対向部となる領域(対向部21e)にОリング用の固定溝21Bが形成されていないので、固定溝21Bのエッジ部分や、Оリング30と固定溝21Bのエッジ部分との間に釣糸が引っ掛かるようなこともない。また、固定溝21Bが一部に形成されていないことで、Oリング30の固定作業を容易に行うことが可能になる。
【0038】
さらに、釣糸がОリング30の部分に入ろうとしても、面取り21hを形成したことで、釣糸が引っ掛かることはなく、スムーズに外れることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0040】
本発明は、レベルワインド装置10の釣糸案内体20の部分に特徴があり、それ以外の構成、例えば、リール本体の大きさ、形状、その他の機能部材などについては、特に限定されることはない。また、釣糸案内体20は、クラッチの作動と共に回動するように構成したが、釣糸案内体は左右に往復駆動されるだけで回動されない構成であっても良い。また、釣糸挿通部22の構成、螺軸に係合する係合ピンの保持構造等についても適宜変形することが可能である。
【0041】
さらに、糸絡みを防止するリブ40の形状については、釣糸が引っ掛かり難い構成になっていれば、前端縁40aを曲線にしたり、肉厚を変えるなど、その形状や配設位置、構成材料等、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 リール本体
1A,1B 左右側板
3 スプール
10 レベルワインド装置
20 釣糸案内体
21 保持部
21A 筒状部
21B 固定溝
21e 対向部
21h 面取り
22 釣糸挿通部
30 Оリング
40 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7