(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060150
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】車載音響装置および車載音響装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240424BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20240424BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10K15/04 304H
B60R11/02 S
G10K15/04 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167313
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪
【テーマコード(参考)】
3D020
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC02
3D020BC05
3D020BE03
5D220AB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザに不快感を与えず、かつユーザに確実に報知音を聴取させる車載音響装置および車載音響装置の制御方法を提供する。
【解決手段】車載音響装置10は、第1音信号に基づいて車両Cの状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を車室内に出力する。音情報生成部111は、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する。制御情報生成部112は、音情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成する。第1調整部113は、制御情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置であって、
前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、
前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、
前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部と、
を備える車載音響装置。
【請求項2】
前記第1の音の大きさは、前記車室内における前記第1の音の音圧レベルに対応する第1音圧レベルで示され、
前記第2の音の大きさは、前記車室内における前記第2の音の音圧レベルに対応する第2音圧レベルで示される、
請求項1記載の車載音響装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記第1音信号または前記第2音信号の少なくとも一方を所定のゲインで増幅することにより前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整し、
前記制御情報生成部は、前記調整部における前記ゲインを調整する前記制御情報を生成する、
請求項2記載の車載音響装置。
【請求項4】
前記音情報生成部は、現在時刻から過去の所定期間における前記第2音圧レベルの平滑値を前記音情報として生成し、
前記制御情報生成部は、前記平滑値に基づいて前記第1の音の大きさを制御する前記制御情報を生成する、
請求項3記載の車載音響装置。
【請求項5】
前記制御情報生成部は、
前記平滑値が第1所定値未満の場合は、前記ゲインを基準値とし、
前記平滑値が前記第1所定値以上の場合は、前記ゲインを前記平滑値に比例して前記基準値よりも大きくする、
請求項4記載の車載音響装置。
【請求項6】
前記制御情報生成部は、前記第2音圧レベルと前記第1音圧レベルとの差分の絶対値が第2所定値以内となるように前記制御情報を生成する、
請求項2記載の車載音響装置。
【請求項7】
前記制御情報生成部は、前記第2の音の大きさが第1の大きさよりも大きくなるように前記制御情報を生成する、
請求項1記載の車載音響装置。
【請求項8】
前記音情報生成部は、前記第2音信号に基づいて前記第2の音の大きさを示す前記音情報を生成し、
前記制御情報生成部は、前記音情報に基づいて前記第1の音の大きさを制御する前記制御情報を生成し、
前記調整部は、前記制御情報に基づいて前記第1の音の大きさを調整する、
請求項1記載の車載音響装置。
【請求項9】
第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置の制御方法であって、
前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、
前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成し、
前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する、
車載音響装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載音響装置および車載音響装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内には、オーディオ装置またはナビゲーション装置から出力される音の他、車両の状態を示す報知音が出力される。報知音は、他の音と比較して重要性が高いため、ユーザの耳に確実に届くことが望まれる。例えば、下記特許文献1には、報知音の一例である警告音(ニュートラルレンジにおけるアクセルの踏み込みを報知するための音)の音量を、ナビゲーション装置および/またはオーディオ装置によって出力される音(以下、「オーディオ音」という)の音量よりも大きくなるように調節する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、オーディオ音の音量に対して、報知音の音量を具体的にどのように設定するのかが開示されていない。オーディオ音の音量は、入力信号のレベルの違い等の要因により、音量の設定に関わらず変化する場合がある。よって、例えばある時点におけるオーディオ音の音量を基準にして報知音の音量を決めたとしても、報知音の音が非常に大きく聞こえたり、反対にオーディオ音に報知音がかき消されてしまったりする可能性がある。
【0005】
本開示の一つの態様は、ユーザに不快感を与えず、かつユーザに確実に報知音を聴取させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る車載音響装置は、第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置であって、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部と、を備える。
【0007】
また、本開示のひとつの態様に係る車載音響装置の制御方法は、第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置の制御方法であって、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成し、前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる車載音響装置10の構成を例示する図である。
【
図2】車両Cにおけるスピーカ18,19-1~19-Nの配置を例示する図である。
【
図3】第2音圧レベルの平滑値と第1音信号に対するゲインとの関係を示すグラフの一例である。
【
図4】第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフの他の例である。
【
図5】車載音響装置10の制御装置11の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。
【
図7】第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフの一例である。
【
図8】第3実施形態にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。
【
図9】第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフの一例である。
【
図10】第1変形例にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:第1実施形態
A-1:システム構成
図1は、第1実施形態にかかる車載音響装置10の構成を例示する図である。車載音響装置10は、自動車等の車両C(
図2参照)に搭載され、スピーカ18,19-1~19-Nから車両Cの車室内に音を出力する。本実施形態では、車載音響装置10から出力される音は、第1の音および第2の音に分類される。詳細は後述するが、第1の音は、車両Cの状態を示す音である。第2の音は、第1の音以外の音であり、一般的には楽曲または音声を示す音である。
【0010】
車載音響装置10は、制御装置11、記憶装置12、入力装置13、第1音信号取得装置14、第2音信号取得装置15、アンプ16,17-1~17-N(Nは2以上の整数)およびスピーカ18,19-1~19-Nを備える。
【0011】
制御装置11は、車載音響装置10の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。例えば、制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより構成される。
【0012】
制御装置11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより、音信号処理部110、音情報生成部111、制御情報生成部112および第1音量調整部113として機能する。音信号処理部110、音情報生成部111、制御情報生成部112および第1音量調整部113の詳細については後述する。
【0013】
記憶装置12は、制御装置11が実行するプログラムを記憶する。記憶装置12は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体(例えば、コンピュータによって読み取り可能なnon transitoryな記録媒体)である。記憶装置12は、不揮発性メモリと、揮発性メモリと、を含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。なお、記憶装置12は、車載音響装置10に対して着脱される可搬型の記録媒体、またはネットワークを介して制御装置11が書込または読出を実行可能な記録媒体(例えばクラウドストレージ)であってもよい。
【0014】
入力装置13は、車両Cのユーザからの入力を受け付ける。車両Cのユーザとは、例えば車両Cの乗員である。入力装置13は、例えば車両Cのユーザから、スピーカ19-1~19-Nから出力する第2の音の音量の指定を受け付ける。以下、入力装置13によって指定された第2の音の音量を「指定音量」という。また、入力装置13は、例えば車両Cのユーザから、スピーカ19-1~19-Nから出力する第2の音の種類の指定を受け付けてもよい。第2の音の種類の指定とは、例えばスピーカ19-1~19-Nから出力する第2の音を、CD(Compact Disc)に記録された楽曲の再生音からラジオ放送に切り替える、等である。入力装置13は、具体的には、例えばタッチパネル、種々の操作ボタンを有する操作盤またはリモコンである。
【0015】
第1音信号取得装置14は、車両Cの状態を示す第1の音に対応する信号(以下「第1音信号」という)を取得する。第1の音は、具体的には、例えば車両Cのウインカーまたはハザードランプ等の稼働音、シフトがリバース(R)時の報知音、車両Cの安全システム52からの警告音等である。第1の音は、後述する第2の音のように車室内に継続的に出力される音ではなく、必要に応じて一時的に車室内に出力される音である。
【0016】
第1の音が、車両Cのウインカーまたはハザードランプ等の稼働音、またはシフトがリバース(R)時の報知音の場合、第1音信号取得装置14は、ウインカーレバー、ハザードランプスイッチ、またはシフトレバー(以下、これら運転者が操作する装置を「操作装置54」という)の操作状態に基づいて生成される第1の音を取得する。また、第1の音が、安全システム52からの警告音の場合、第1音信号取得装置14は、安全システム52が所定の状態を検知した場合に生成される第1音信号を取得する。所定の状態とは、例えば周囲を走行する他の車両または周囲の物体と車両Cとの距離が所定距離以下となった場合、車両Cが走行車線からはみ出す可能性がある場合、または車両Cの走行速度が法定速度を超過している場合等である。第1音信号取得装置14が第1の音を生成してもよい。
【0017】
第1の音は、例えば「カチカチ」、「ピピッ」のような発振音が用いられる。一方で、第1の音は、例えば「速度が超過しています」等の音声や「ポポポーン」等のメロディであってもよい。また、第1音信号は多くの場合、モノラル音信号である。
【0018】
第2音信号取得装置15は、楽曲または音声を示す第2の音に対応する信号(以下「第2音信号」という)を取得する。第2の音は、ユーザの選択や指示に応じて車室内に継続的に出力される音である。第2音信号取得装置15は、例えばCDまたはSDカード等の記録媒体に記憶された音データを読み取って再生することにより(または再生音データを取得することにより)第2音信号を生成してもよい。また、第2音信号取得装置15は、ラジオ放送またはテレビ放送を受信することにより第2音信号を取得してもよい。また、第2音信号取得装置15は、例えば無線通信または有線通信を用いて近傍に位置する電子機器(例えばスマートフォン、ポータブル音楽プレイヤなど)から第2音信号を取得してもよい。
【0019】
また、第2音信号取得装置15は、例えば車両Cに搭載されたナビゲーション装置56から第2音信号を取得してもよい。この場合、第2の音は、例えば車両Cに搭載されたナビゲーション装置56の案内音声である。なお、本実施形態では、ナビゲーション装置56の案内音声が第2の音であるものとするが、ナビゲーション装置56の案内音声が第1の音とされもよい。
【0020】
第2音信号は、多くの場合、2つのチャンネルを有するステレオ音信号である。本実施形態では、第2音信号がステレオ音信号であるものとして説明するが、第2音信号はモノラル音信号であってもよいし、3以上のチャンネルを有する音信号であってもよい。
【0021】
アンプ16は、音信号を増幅し、増幅した音信号をスピーカ18に供給する。他のアンプ17-1~17-Nも同様に、増幅した音信号をスピーカ19-1~19-Nに供給する。本実施形態では、アンプ16,17-1~17-Nのゲインは固定されている。スピーカ18,19-1~19-Nは、アンプ16,17-1~17-Nから供給された音信号に基づく音を出力する。
【0022】
より詳細には、アンプ16には、第1音信号取得装置14が生成した第1音信号が入力される。アンプ16は、第1音信号を増幅し、スピーカ18に出力する。スピーカ18は、アンプ16から入力された第1音信号に基づく音を出力する。すなわち、スピーカ18は、第1の音を出力する。
【0023】
また、アンプ17-1~17-Nには、第2音信号取得装置15が生成した第2音信号が入力される。アンプ17-1~17-Nは、第2音信号を増幅し、スピーカ19-1~19-Nに出力する。スピーカ19-1~19-Nは、アンプ17-1~17-Nから入力された第2音信号に基づく音を出力する。すなわち、スピーカ19-1~19-Nは、第2の音を出力する。
【0024】
図2は、車両Cにおけるスピーカ18,19-1~19-Nの配置を例示する図である。
図2は、N=4の場合、すなわち、車両Cにスピーカ18,19-1~19-4が搭載されている場合を示す。車両Cは、座席P1~P4を備える。座席P1および座席P2は、車両Cの車室の前部に設けられた座席である。座席P1は運転席であり、座席P2は助手席である。座席P3および座席P4は、車両Cの車室の後部に設けられた座席である。座席P3は、運転席である座席P1の後方に位置する座席であり、座席P4は、助手席である座席P2の後方に位置する座席である。
【0025】
また、車両Cは、ドアD1~D4を備える。ドアD1は、座席P1に着席する乗員が乗り降りするためのドアである。なお、乗員はユーザの一例である。ドアD2は、座席P2に着席する乗員が乗り降りするためのドアである。ドアD3は、座席P3に着席する乗員が乗り降りするためのドアである。ドアD4は、座席P4に着席する乗員が乗り降りするためのドアである。
【0026】
スピーカ18は、運転席である座席P1の前方のインスツルメントパネル付近に設けられる。これは、スピーカ18が出力する第1の音は、主に運転者に向けて発せられる音のためである。また、スピーカ19-1は、ドアD1に設けられる。スピーカ19-2は、ドアD2に設けられる。スピーカ19-3は、ドアD3に設けられる。スピーカ19-4は、ドアD4に設けられる。換言すれば、スピーカ19-1は、座席P1に対応する箇所に設けられる。また、スピーカ19-2は、座席P2に対応する箇所に設けられる。また、スピーカ19-3は、座席P3に対応する箇所に設けられる。また、スピーカ19-4は、座席P4に対応する箇所に設けられる。
【0027】
A-2.制御装置11の詳細
次に、制御装置11がプログラムを実行することによって実現する、音信号処理部110、音情報生成部111、制御情報生成部112および第1音量調整部113の詳細について説明する。
【0028】
音信号処理部110は、第2音信号取得装置15から入力された第2音信号の振幅(第2の音の大きさ)および周波数特性を調整して、Nチャンネルの音信号を生成する。音信号処理部110は、入力装置13によって受け付けた第2の音の指定音量に基づいて、第2音信号の振幅を調整する。Nチャンネルの音信号は、それぞれアンプ17-1~17-Nに出力され、スピーカ19-1~19-Nから第2の音として出力される。
【0029】
音情報生成部111は、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する。第1実施形態において、音情報生成部111は、第2音信号に基づいて第2の音の大きさに関する音情報を生成する。より詳細には、音情報生成部111は、現時点においてユーザが聞いている第2の音の大きさを示す音情報を生成する。第2の音の大きさは、例えば車室内における第2の音の音圧レベル(dB SPL)に対応する第2音圧レベルで示される。同様に、第1の音の大きさは、車室内における第1の音の音圧レベルに対応する第1音圧レベルで示される。音情報生成部111は、例えば第2音信号の信号レベル(dBFS)、アンプ17-1~17-Nの特性(例えばゲイン(dB)等)、およびスピーカ19-1~19-Nの特性に基づいて車室内の第2音圧レベルを推定する。なお、音情報生成部111は、例えばスピーカ19-1~19-Nから出力された音をマイクで収音して、実際の第2音圧レベルを検出してもよい。
【0030】
音情報生成部111は、現在時刻から過去の所定期間における第2音圧レベルの平滑値を音情報として生成する。このように平滑値を算出するのは、瞬間的な音の大きさは変動が大きい場合があり、各時刻における第2音圧レベルのみでは第2の音の大きさを正確に把握できない可能性があるためである。平滑値は、例えば現在時刻から過去の所定期間における第2音圧レベルの移動平均であってもよいし、第2音圧レベルに1次ローパスフィルタを適用して得た値であってもよい。
【0031】
平滑値を算出するための「所定期間」の具体的な値は任意である。一例として、音情報は現時点においてユーザが聞いている第2の音の大きさを示すものであるため、数秒程度とするのが適当である。本実施形態では、音情報生成部111は、現在時刻から過去の3秒間における第2音圧レベルの平滑値を音情報として生成する。
【0032】
なお、第2の音の大きさは、入力装置13により受け付けた第2の音の指定音量に基づいて推定することも可能である。しかしながら、音源によって音信号の収録音圧レベルが異なるため、指定音量が一定であっても、実際に出力される音の大きさには差が生じる。よって、音信号処理部110から出力される第2音信号を用いた方が、より正確に第2の音の大きさを把握できる。
【0033】
制御情報生成部112は、音情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成する。制御情報生成部112は、第1の音が出力された場合に、ユーザ(特に運転者)が第1の音を確実に聞き取れるように、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する。
【0034】
第1実施形態では、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさのうち、第1の音の大きさが調整される。すなわち、制御情報生成部112は、音情報に基づいて第1の音の大きさを制御する第1制御情報を生成する。より詳細には、制御情報生成部112は、第1音量調整部113におけるゲインを調整する第1制御情報を生成する。上述のように、第2の音は継続的に車室内に流れている音であるのに対して、第1の音は必要に応じて一時的に車室内に出力される音である。第1の音の大きさが、現在車室内に流れている第2の音の大きさに合わせて調整される方が、第2の音の継続的な聴取への影響が小さい。よって、第1実施形態では、制御情報生成部112は、第1の音の大きさを調整する第1制御情報を生成する。制御情報生成部112により生成された第1制御情報は、後述する第1音量調整部113に出力される。
【0035】
上述のように、本実施形態では、音情報として第2音圧レベルの平滑値を用いる。よって、制御情報生成部112は、第2音圧レベルの平滑値に基づいて第1制御情報を生成する。平滑値に基づいて第1制御情報を生成することによって、例えば第2の音の音圧レベルの増減が平均化して第1の音の大きさに反映され、ユーザに違和感を与えるのを防止できる。
【0036】
第1音量調整部113は、制御情報生成部112により生成された第1制御情報に基づいて、第1の音の大きさを調整する。第1音量調整部113は、制御情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部の一例である。より詳細には、第1音量調整部113は、第1音信号を所定のゲインで増幅することにより第1の音の大きさを調整する。
【0037】
第1音信号取得装置14は、第1音信号を取得した場合、第1音信号を第1音量調整部113に入力する。第1音信号が入力された場合、第1音量調整部113は、第1制御情報によって指定されるゲインで第1音信号を増幅する。第1音量調整部113によって増幅された第1音信号は、アンプ16に出力され、スピーカ18から第1の音として出力される。
【0038】
A-4:音量調整の詳細
次に、車載音響装置10における音量調整の詳細について説明する。
図3は、第2音圧レベルの平滑値と第1音信号に対するゲインとの関係を示すグラフの一例である。制御情報生成部112は、第2音圧レベルの平滑値がVα未満の場合は、第1音量調整部113におけるゲイン(第1音信号に対する増幅処理のゲイン)を基準値Gxで一定とする。すなわち、制御情報生成部112は、第2音圧レベルの平滑値がVα未満の場合は、ゲインを基準値Gxとする。Vαは第1所定値の一例である。音圧レベルVαは、ロードノイズや車両Cのエンジン音による騒音と同程度の音の大きさである。
【0039】
なお、基準値Gx=0であってもよい。すなわち、第2音圧レベルの平滑値がVα未満の場合は、第1音量調整部113での第1音信号の増幅は行わずに、アンプ16における固定ゲインでの増幅のみを行ってもよい。
【0040】
また、制御情報生成部112は、第2音圧レベルの平滑値がVα以上の場合は、第1音量調整部113におけるゲインを増加させる。具体的には、制御情報生成部112は、第2音圧レベルの平滑値がVα以上の場合は、第1音量調整部113におけるゲインを、平滑値に比例して基準値Gxよりも大きくする。これにより、第2の音の大きさに比例して第1の音が大きくなり、ユーザは第1の音が聞き取りやすくなる。
【0041】
図4は、第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフである。
図4のグラフは、第2の音の大きさ(第2音圧レベル)が線形に増大した場合における第1の音の大きさ(第1音圧レベル)を模式的に示す。
図4のグラフの縦軸は音圧レベル(dB SPL)、横軸は時間である。
【0042】
図3を用いて説明したように、第2音圧レベルの平滑値がVα未満の間は、第1音量調整部113におけるゲインは基準値Gxで一定である。よって、第2音圧レベルがVα未満の間は、第1音圧レベルは一定(
図4では音圧レベルVβ)である。音圧レベルVβは、上述の騒音がある場合でもユーザが聞き取ることができ、かつ、突発的に第1の音が出力されても極度な緊張をユーザに与えない程度の音の大きさが好ましい。
【0043】
第2音圧レベルの平滑値がVα以上になると、第1音量調整部113におけるゲインは基準値Gxよりも大きくなる。よって、第2音圧レベルがVα以上になると、第1音圧レベルも第2音圧レベルに比例して大きくなる。なお、第2音圧レベルの平滑値に基づいて第1音量調整部113のゲインが調整されるため、第2音圧レベルの平滑値がVα以上になってから第1音圧レベルが上昇するまでには、実際にはタイムラグがあるが、
図4ではこれを省略している。
【0044】
ここで、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分は、所定値Vx以内にするのが好ましい。すなわち、制御情報生成部112は、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分の絶対値がVx以内となるように第1制御情報を生成するのが好ましい。Vxは第2所定値の一例である。これは、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分が大きいと、小さい方の音圧レベルの音が聞き取り辛くなるためである。第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分とは、第2音圧レベルから第1音圧レベルを差し引いた値である。第2音圧レベルが第1音圧レベルより大きい場合、その差分は正の値となる。第2音圧レベルが第1音圧レベルより小さい場合、その差分は負の値となる。第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分が一定範囲内(所定値Vx以内)に収められることにより、第1の音と第2の音の両方が聞きやすくなる。
【0045】
所定値Vxは、例えば12dB程度が好ましい。これは、第1音圧レベルと第2音圧レベルとの差が12dB程度であれば、ユーザが第1の音を聞き取れる可能性が高いためである。また、所定値Vxは20dB未満とするのが好ましい。第1音圧レベルと第2音圧レベルとの差が20dB以上であると、第1の音の大きさが第2の音の大きさに比べて小さく、ユーザが第1の音を聞き取りづらくなる可能性が高いためである。
【0046】
また、本実施形態では、第1の音の大きさが第2の音の大きさを超えないようにゲインが調整される。これは、ユーザが継続的に聞いている第2の音よりも大きい音量で第1の音が突然出力されると、ユーザが驚いて運転操作に支障をきたす可能性があるためである。制御情報生成部112は、第1の音の大きさを、ユーザが継続的に聞いている第2の音を超えない大きさに調整する。すなわち、制御情報生成部112は、第2の音の大きさが第1の音の大きさよりも大きくなるように第1制御情報を生成する。
【0047】
A-5:制御装置11の動作
図5は、車載音響装置10の制御装置11の動作を示すフローチャートである。制御装置11は、第2音信号取得装置15が第2音信号を取得したか否かを判断する(ステップS20)。第2音信号を取得しない場合(ステップS20:NO)、制御装置11は、処理をステップS23に移行させる。
【0048】
第2音信号を取得した場合(ステップS20:YES)、制御装置11は、音信号処理部110として機能し、第2音信号の振幅(第2の音の大きさ)および周波数特性を調整する(ステップS21)。その後、制御装置11は、調整後のNチャンネルの第2音信号をアンプ17-1~17-Nに出力する(ステップS22)。アンプ17-1~17-Nに出力された第2音信号に基づいて、スピーカ19-1~19-Nは第2の音を出力する。
【0049】
制御装置11は、音情報生成部111として機能し、第2音信号に基づいて第2の音の大きさに関する音情報を生成する(ステップS23)。なお、ステップS20において第2音信号を取得しない場合も、音情報生成部111は、「第2音圧レベル=0」を示す音情報を生成する。
【0050】
制御情報生成部112は、音情報に基づいて、第1の音の大きさを制御する第1制御情報を生成する(ステップS24)。具体的には、制御情報生成部112は、第1音量調整部113におけるゲインを調整するための第1制御信号を生成する。制御情報生成部112は、生成した第1制御情報を第1音量調整部113に出力する。第1制御情報は、第2の音の大きさによって逐次変化する。制御情報生成部112は、第1音信号取得装置14による第1音信号の取得の有無にかかわらず、第1制御情報を生成し、第1音量調整部113に出力する。すなわち、第1の音の大きさは、第1の音の出力の有無に関わらず逐次決められている。これにより、突発的に出力される第1の音を、第2の音の大きさに合わせた適切な大きさで出力することができる。
【0051】
制御装置11は、第1音信号取得装置14が第1音信号を取得したか否かを判断する(ステップS25)。第1音信号を取得しない場合(ステップS25:NO)、制御装置11は、処理をステップS20に移行させる。
【0052】
第1音信号を取得した場合(ステップS25:YES)、制御装置11は、第1音量調整部113として機能し、第1制御情報に基づいてゲインを設定し、第1音信号の振幅(大きさ)を調整する(ステップS26)。その後、制御装置11は、第1音信号をアンプ16に出力する(ステップS27)。アンプ16に出力された第1音信号に基づいて、スピーカ18は第1の音を出力する。
【0053】
A-6:第1実施形態まとめ
以上説明したように、第1実施形態において、車載音響装置10は、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する。よって、第1の音および第2の音の大きさの調整を行わない場合と比較して、第1の音および第2の音の少なくとも一方の聞き取り易さが向上される。
【0054】
また、車載音響装置10は、第1の音の大きさとして、車室内における第1の音の音圧レベルを用い、第2の音の大きさとして、車室内における第2の音の音圧レベルを用いる。車室内の音圧レベルは、例えばスピーカ19-1~19-Nの指定音量の設定値等を用いる場合と比較して、ユーザが実際に認識する音の大きさに近い。よって、第1の音の大きさの調整の精度が向上される。
【0055】
また、車載音響装置10は、第1音信号を増幅する際のゲインを調整することにより、第1の音の大きさを調整する。よって、第1の音が適切な大きさに調整される。
【0056】
また、車載音響装置10は、現在時刻から過去の所定期間における第2音圧レベルの平滑値に基づいて制御情報を生成する。よって、刻々と変化する第2音圧レベルが平滑化され、第2音圧レベルの瞬間的な大きさを用いるのと比較して、第1の音がより適切な大きさに調整される。
【0057】
また、車載音響装置10は、第2音信号の平滑値がVα未満の場合は、第1音量調整部113のゲインを基準値Gxとし、平滑値がVα以上の場合は、ゲインを平滑値に比例して基準値Gxよりも大きくする。よって、簡易な処理で第1の音の大きさが決定され、車載音響装置10の処理負荷が軽減される。また、車室内に出力されている第2の音が小さい場合でも、これに追従して第1の音が過度に小さくなるのが回避される。
【0058】
また、車載音響装置10は、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分の絶対値を所定値Vx以内とする。よって、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分の絶対値が所定値Vxを超える場合と比較して、第1の音および第2の音の聞き取り易さが向上する。例えば一方の音が大きくなり過ぎて、ユーザが不快になったり、他方の音が聞こえづらくなったりすることが防止される。
【0059】
また、車載音響装置10は、第2の音が第1の音よりも大きくなるように制御情報を生成する。よって、第1の音が突発的に出力された場合でも、ユーザに対して過度な動揺を与えるのが防止される。
【0060】
また、車載音響装置10は、第2の音の大きさに基づいて、第1の音の大きさを調整する。よって、車両Cの状態を示す第1の音がユーザの聞き取りやすい音圧レベルに調整され、ユーザが第1の音を聞き逃したり、大きすぎる第1の音に驚いてユーザが運転操作を誤ったりする可能性が低減される。また、第2の音は継続的に出力される場合が多いので、第2の音の大きさが頻繁に変化すると、ユーザが不快に感じる場合がある。第2の音の大きさに基づいて第1の音の大きさを調整することで、ユーザは第2の音を落ち着いて聞くことができる。
【0061】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0062】
図6は、第2実施形態にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。第1実施形態では、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさのうち、第1の音の大きさが調整された。これに対して、第2実施形態では、第2の音の大きさが調整される。
【0063】
第2実施形態では、音情報生成部111は、第1の音の大きさおよび第2の音の大きさに関する音情報を生成する。音情報生成部111は、音情報のうち、第2の音の大きさに関する情報については、第1実施形態と同様に生成する。また、音情報生成部111は、音情報のうち、第1の音の大きさに関する情報については、例えば第1音信号取得装置14による第1音信号の取得の有無に基づいて生成する。第1の音は、第2の音と異なり、ユーザによる指定音量の調整が行われない。また、第1音信号は車両C内の記憶装置に記憶されており、その波形は既知である。よって、音情報生成部111は、第1の音の大きさ(第1音圧レベル)を予め推定可能である。
【0064】
音情報生成部111は、第1音信号取得装置14により第1音信号が取得された場合、すなわち第1の音が出力される場合には、第1音圧レベルを推定し、音情報を生成する。また、音情報生成部111は、第1音信号取得装置14により第1音信号が取得されていない場合には、第1の音は出力されない、すなわち第1音圧レベルはゼロであるものとして音情報を生成する。
【0065】
第2実施形態では、制御情報生成部112は、音情報に基づいて、第2の音の大きさを制御する第2制御情報を生成する。より詳細には、制御情報生成部112は、後述する第2音量調整部114におけるゲインを調整する第2制御情報を生成する。詳細は後述するが、制御情報生成部112は、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分の絶対値が所定値Vx以内となるように第2制御情報を生成する。所定値Vxは第2所定値の一例である。また、本実施形態では、第2音量調整部114は、第2の音の大きさを調整する必要がない場合、第2制御情報を生成しない。
【0066】
図6に示すように、第2実施形態において、車載音響装置10には、第1音量調整部113に代えて、第2音量調整部114が設けられている。第2音量調整部114は、制御情報生成部112により生成された第2制御情報に基づいて、第2の音の大きさを調整する。第2音量調整部114は、制御情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部の一例である。第2音量調整部114は、第2音信号を所定のゲイン(第2制御情報によって指定されるゲイン)で増幅または減衰することにより第2の音の大きさを調整する。第2音量調整部114によって調整された第2音信号は、アンプ17-1~17-Nに出力され、スピーカ19-1~19-Nから第2の音として出力される。
【0067】
図7は、第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフの一例である。
図7のグラフの縦軸は音圧レベルであり、横軸は時刻である。上述のように、制御情報生成部112は、第2音圧レベルV2と第1音圧レベルV1との差分の絶対値が所定値Vx以内となるように第2制御情報を生成する。
【0068】
例えばグラフの領域Aは、第2音圧レベルV2=Vγで第2の音が出力されると同時に、時刻T1からT2の間、第1音圧レベルV1=Vδで第1の音が出力される場合を示す。時刻T1の直前における第2音圧レベルV2と第1音圧レベルV1との差分の絶対値は、所定値Vxを超えている。すなわち、Vγ-Vδ>|Vx|である。この場合、制御情報生成部112は、第1の音が出力される時刻T1からT2の間、V2=Vεとする(第2の音を小さくする)ように第2音量調整部114のゲインを設定する。Vε=Vδ+Vxである。これにより、第2音圧レベルV2と第1音圧レベルV1との差分の絶対値が所定値Vxとなり、第1の音をユーザが聴取しやすくなる。
【0069】
また、例えばグラフの領域Bは、第2音圧レベルV2=Vζで第2の音が出力されると同時に、時刻T3からT4の間、第1音圧レベルV1=Vδで第1の音が出力される場合を示す。時刻T3の直前における第2音圧レベルV2と第1音圧レベルとの差分の絶対値は、所定値Vx以下である。すなわち、Vζ-Vδ≦|Vx|である。この場合、第2の音の大きさを変更する必要がないため、制御情報生成部112は、第2制御情報を生成しない。すなわち、第2の音の大きさは変更されない。
【0070】
また、例えばグラフの領域Cは、第2音圧レベルV2=Vηで第2の音が出力されると同時に、時刻T5からT6の間、第1音圧レベルV1=Vδで第1の音が出力される場合を示す。時刻T5の直前における第2音圧レベルV2と第1音圧レベルV1との差分の絶対値は、所定値Vxを超えている。すなわち、Vη-Vδ>|Vx|である。しかしながら、Vη<Vδであり、第2音圧レベルV2は第1音圧レベルV1よりも小さい。この場合、制御情報生成部112は、第2制御情報を生成しないようにしてもよい。これは、第2の音を大きくすることにより第1の音が聞き取り辛くなるのを防ぐためである。
【0071】
以上説明したように、第2実施形態では、第1の音が出力される場合には、第2の音の大きさが調整される。よって、楽曲や音声を示す第2の音が、第1の音の聞き取りの邪魔にならない程度の大きさに調整され、ユーザが第1の音を聞き逃す可能性が低減される。
【0072】
C:第3実施形態
本開示の第3実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において機能が第1実施形態または第2実施形態と同様である要素については、第1実施形態または第2実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0073】
図8は、第3実施形態にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。第1実施形態では、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさのうち、第1の音の大きさが調整された。また、第2実施形態では、第2の音の大きさが調整された。第3実施形態では、第1の音の大きさおよび第2の音の大きさの両方が調整される。
【0074】
第3実施形態では、音情報生成部111は、第1の音の大きさおよび第2の音の大きさに関する音情報を生成する。制御情報生成部112は、音情報に基づいて、第1の音の大きさを制御する第1制御情報および第2の音の大きさを制御する第2制御情報を生成する。
【0075】
図8に示すように、第3実施形態において、車載音響装置10には、第1音量調整部113と、第2音量調整部114とが設けられている。第1音量調整部113は、制御情報生成部112により生成された第1制御情報に基づいて、第1の音の大きさを調整する。第2音量調整部114は、制御情報生成部112により生成された第2制御情報に基づいて、第2の音の大きさを調整する。第1音量調整部113および第2音量調整部114は、制御情報に基づいて、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部の一例である。
【0076】
図9は、第1の音の大きさと第2の音の大きさとの関係を模式的に示すグラフの一例である。
図7のグラフの縦軸は音圧レベルであり、横軸は時刻である。制御情報生成部112は、第2音圧レベルV2と第1音圧レベルV1との差分の絶対値が所定値Vx以内となるように、第1制御情報および第2制御情報を生成する。
【0077】
図9では、第2音圧レベルV2=Vιで第2の音が出力されると同時に、第1の音が出力される場合を示す。第1の音が出力される期間は、時刻T7からT8である。制御情報生成部112は、第2音圧レベルV2が、Vιよりも小さいVκとなるように、第2制御情報を生成する。Vκ=Vι-Vzである。Vzは、第2の音を継続して聞いているユーザに対して大きな違和感を与えない程度の音圧レベルの変化量である。
【0078】
また、制御情報生成部112は、第1音圧レベルV1がVλとなるように、第1制御情報を生成する。Vλ=Vκ-Vxである。Vxは、第1実施形態および第2実施形態で説明した所定値(第2所定値)である。
【0079】
第1実施形態では、第2の音の大きさを変化させずに第1の音の大きさを決定したが、車室内に出力される音の大きさが全体として非常に大きくなる場合がある。第3実施形態では、ユーザに大きな違和感を与えない程度に第2の音の大きさを小さくした上で、第1の音の大きさを決定する。これにより、車室内に出力される音の大きさが過度に大きくなるのを防止して、車載音響装置10から出力される音をユーザが聞きやすくすることができる。
【0080】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0081】
D-1:第1変形例
上述した実施形態では、第1の音を出力するスピーカ18およびこれに接続するアンプ16と、第2の音を出力するスピーカ19-1~19-Nおよびこれに接続するアンプ17-1~17-Nとが、別個に設けられていた。これに限らず、第1の音を出力するスピーカと、第2の音を出力するスピーカとが区別されなくてもよい。
【0082】
図10は、第1変形例にかかる車載音響装置10の構成を示すブロック図である。
図10に示す構成では、スピーカ18およびアンプ16は設けられておらず、スピーカ19-1~19-Nおよびアンプ17-1~17-Nが設けられている。
図10に示す構成では、音信号処理部110とアンプ17-1~17-Nとの間に合成部115が設けられている。合成部115は、第1音量調整部113にも接続されている。合成部115は、音信号処理部110で処理された第2音信号、および第1音量調整部113で調整された第1音信号を合成し、合成した音信号(以下「合成音信号」という)をアンプ17-1~17-Nに出力する。アンプ17-1~17-Nは合成音信号を増幅し、スピーカ19-1~19-Nに出力する。スピーカ19-1~19-Nは、合成音信号に基づいて第1の音と第2の音とを出力する。
【0083】
なお、
図10では、第1の音がN個のスピーカ19-1~19-N全てから出力されるように構成されているが、第1の音は、スピーカ19-1~19-Nのうち少なくとも1つから出力されればよい。例えば、運転者が着席する運転席(座席P1)に対応して設けられているスピーカ19-1(
図2参照)から第1の音が出力されてもよい。この場合、合成部115は、アンプ17-1と音信号処理部110との間に設けられている。
【0084】
第1変形例によれば、第1の音を出力するスピーカと第2の音を出力するスピーカとが区別されていない場合でも、第1の音の大きさと第2の音の大きさとが個別に調整され、それぞれの音の聞き取り易さが向上される。
【0085】
D-2:第2変形例
上述した実施形態では、制御情報生成部112は、第1の音の大きさを一律に決定した。これに限らず、制御情報生成部112は、第1の音の内容に応じて第1の音の大きさを変えてもよい。具体的には、例えばウインカーまたはハザード等の稼働音は、ユーザの安全との関連性は低い。よって、制御情報生成部112は、第1の音がウインカーまたはハザード等の稼働音の場合は、相対的に小さな音量で第1の音を出力する第1制御情報を生成する。相対的に小さな音量とは、第2の音の聴取を妨げない程度の音圧レベルである。一方、安全システム52の報知音は、ユーザの安全との関連性が高い。よって、制御情報生成部112は、第1の音が安全システム52の報知音の場合は、相対的に大きな音量で第1の音を出力する第1制御情報を生成する。相対的に大きな音量とは、例えばユーザの注意を引く程度の音圧レベルであり、第2の音よりも大きい音量であってもよい。
【0086】
第2変形例によれば、制御情報生成部112は、第1の音の内容に応じて第1の音の大きさを変化させる。これにより、第2の音の聞き取りやすさと、第1の音に基づく安全性の向上とが両立される。
【0087】
D-3:第3変形例
上述した実施形態では、音情報生成部111は、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成した。これに限らず、音情報生成部111は、第1の音の周波数帯または第2の音の周波数帯の少なくとも一方に関する音情報を生成してもよい。この場合、音情報生成部111は、例えば第1音信号を構成する周波数帯を第2音信号が含むか否かを解析する。具体的には、音情報生成部111は、例えば第1音信号を構成する周波数帯のみを透過するフィルタに第2音信号を通し、第2音信号に第1音信号を構成する周波数帯が含まれるかを判断する。
【0088】
第1音信号を構成する周波数帯を第2音信号が含まない場合、第2の音の大きさを調整しなくても第1の音は聞こえづらくならない。よって、この場合は、制御情報生成部112による第2の音の大きさの調整を行わないようにしてもよい。また、第1音信号を構成する周波数帯を第2音信号が含む場合、第2の音の大きさ全体を調整するのではなく、第1音信号を構成する周波数帯をカットすることにより、第1の音を聞こえやすくしてもよい。
【0089】
D-4:第4変形例
車載音響装置10の機能(音信号処理部110、音情報生成部111、制御情報生成部112、第1音量調整部113、第2音量調整部114および合成部115)は、前述の通り、制御装置11を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置12に記憶されたプログラムの協働により実現される。
【0090】
以上のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置がネットワークを介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0091】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0092】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る車載音響装置は、第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置であって、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成する制御情報生成部と、前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する調整部と、を備える。以上の構成によれば、第1の音の大きさおよび第2の音の大きさの調整を行わない場合と比較して、第1の音または第2の音の少なくとも一方の聞き取り易さが向上される。
【0093】
態様1の具体例(態様2)において、前記第1の音の大きさは、前記車室内における前記第1の音の音圧レベルに対応する第1音圧レベルで示され、前記第2の音の大きさは、前記車室内における前記第2の音の音圧レベルに対応する第2音圧レベルで示される。車室内の音圧レベルは、例えばスピーカの指定音量の設定値等を用いる場合と比較して、ユーザが実際に認識する音の大きさに近い。よって、以上の構成によれば、第1の音の大きさまたは第2の音の大きさの少なくとも一方の調整の精度が向上される。
【0094】
態様2の具体例(態様3)において、前記調整部は、前記第1音信号または前記第2音信号の少なくとも一方を所定のゲインで増幅することにより前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整し、前記制御情報生成部は、前記調整部における前記ゲインを調整する前記制御情報を生成する。以上の構成によれば、第1の音または第2の音の少なくとも一方が適切な大きさに調整される。
【0095】
態様3の具体例(態様4)において、前記音情報生成部は、現在時刻から過去の所定期間における前記第2音圧レベルの平滑値を前記音情報として生成し、前記制御情報生成部は、前記平滑値に基づいて前記第1の音を制御する前記制御情報を生成する。以上の構成によれば、刻々と変化する第2音圧レベルが平滑化され、第2音圧レベルの瞬間的な大きさを用いるのと比較して、第1の音または第2の音の少なくとも一方がより適切な大きさに調整される。
【0096】
態様4の具体例(態様5)において、前記制御情報生成部は、前記平滑値が第1所定値未満の場合は、前記ゲインを基準値とし、前記平滑値が前記第1所定値以上の場合は、前記ゲインを前記平滑値に比例して前記基準値よりも大きくする。以上の構成によれば、簡易な処理で第1の音の大きさが決定され、車載音響装置の処理負荷が軽減される。また、車室内に出力されている第2の音が小さい場合でも、これに追従して第1の音が過度に小さくなるのが回避される。
【0097】
態様2の具体例(態様6)において、前記制御情報生成部は、前記第2音圧レベルと前記第1音圧レベルとの差分の絶対値が第2所定値以内となるように前記制御情報を生成する。以上の構成によれば、第2音圧レベルと第1音圧レベルとの差分の絶対値が第2所定値を超える場合と比較して、第1の音および第2の音の聞き取り易さが向上する。例えば一方の音が大きくなり過ぎて、ユーザが不快になったり、他方の音が聞こえづらくなったりすることが防止される。
【0098】
態様1の具体例(態様7)において、前記制御情報生成部は、前記第2の音の大きさが前記第1の音の大きさよりも大きくなるように前記制御情報を生成する。以上の構成によれば、第1の音が突発的に出力された場合でも、ユーザに対して過度な動揺を与えるのが防止される。
【0099】
態様1の具体例(態様8)において、前記音情報生成部は、前記第2音信号に基づいて前記第2音の大きさを示す前記音情報を生成し、前記制御情報生成部は、前記音情報に基づいて前記第1の音の大きさを制御する前記制御情報を生成し、前記調整部は、前記制御情報に基づいて前記第1の音の大きさを調整する。以上の構成によれば、車両の状態を示す第1の音がユーザの聞き取りやすい音圧レベルに調整され、ユーザが第1の音を聞き逃したり、大きすぎる第1の音に驚いてユーザが運転操作を誤ったりする可能性が低減される。また、第2の音は継続的に出力される場合が多いので、第2の音の大きさが頻繁に変化すると、ユーザが不快に感じる場合がある。第2の音の大きさに基づいて第1の音の大きさを調整することで、ユーザは第2の音を落ち着いて聞くことができる。
【0100】
本開示のひとつの態様(態様9)に係る車載音響装置の制御方法は、第1音信号に基づいて車両の状態を示す第1の音を車室内に出力すると共に、第2音信号に基づいて楽曲または音声を示す第2の音を前記車室内に出力する車載音響装置の制御方法であって、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方に関する音情報を生成する音情報生成部と、前記音情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を制御する制御情報を生成し、前記制御情報に基づいて、前記第1の音の大きさまたは前記第2の音の大きさの少なくとも一方を調整する。
【符号の説明】
【0101】
10…車載音響装置、11…制御装置、12…記憶装置、13…入力装置、14…第1音信号取得装置、15…第2音信号取得装置、16,17-1~17-N…アンプ、18,19-1~19-N…スピーカ、52…安全システム、54…操作装置、56…ナビゲーション装置、110…音信号処理部、111…音情報生成部、112…制御情報生成部、113…第1音量調整部、114…第2音量調整部、115…合成部、C…車両。