(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060151
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20240424BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240424BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240424BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/32
C11D7/26
C11D7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167315
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000123491
【氏名又は名称】化研テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 薫夫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】石原 慧太
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB10
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB16
4H003EB19
4H003EB20
4H003EB24
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することを目的とする。
【解決手段】親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、前記第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、前記水の含有率は、20質量%以上であり、前記有機酸に対する前記第1化合物のモル比は、1以上35以下である、洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
前記第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、
前記水の含有率は、20質量%以上であり、
前記有機酸に対する前記第1化合物のモル比は、1以上35以下である、洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物のpHは8.0以上12.0以下である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記有機酸の含有率は、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、
前記第1化合物の含有率は、1質量%以上20質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物は、25℃及び50℃の条件下で外観上均一である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記有機酸は、1分子中に1つ以上のカルボキシ基を有する有機酸、又は1分子中に1つ以上のホスホン酸基を有する有機酸である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記親水性グリコールエーテル化合物は、式(1)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(2)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
4は、炭素数1~11の鎖状及び/又は環状の炭化水素基を示し、前記炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-に置き換わっていてもよく、式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメトキシ基を示し、前記R
5及び前記R
6のいずれかはメトキシ基であり、R
7は水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項7】
前記親水性グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びプロピルセロソルブからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項6に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記有機酸は、親水性酸及び/又は疎水性酸であり、
前記親水性酸は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、プロピオン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、グリシン、フィチン酸、1H-ベンゾトリアゾール-4-カルボン酸、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の親水性酸であり、
前記疎水性酸は、ジエチレントリアミン五酢酸、ビシン、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、アレンドロン酸、及び1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性酸である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
前記親水性含窒素有機化合物は、式(3)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(4)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であり、
前記親水性第4級アンモニウム塩は、式(5)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【化2】
(式(3)中、R
8は、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH(OH)CH
3基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は炭素数1~4の鎖状炭化水素基を示し、R
9は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は-CH
2CH(OH)CH
3基を示し、R
10は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、又はメチル基を示し、式(4)中、R
15、R
16、R
17は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、式(5)中、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に炭素数1~2の炭化水素基を示す。)
【請求項10】
前記親水性含窒素有機化合物は、モノイソプロパノールアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、N-エチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、及び2-メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の親水性含窒素有機化合物であり、
前記親水性第4級アンモニウム塩は、水酸化テトラエチルアンモニウムである、請求項9に記載の洗浄剤組成物。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物用の原液であって、
前記親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、40質量%以上98.8質量%以下であり、
前記有機酸の含有率は、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記第1化合物の含有率は、1.1質量%以上40質量%以下であり、
水で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる、洗浄剤組成物用の原液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集積回路(IC)及びコンデンサ等の電子部品をプリント基板、カメラモジュール部品等にはんだ付けする際に、ソルダペーストからフラックスが飛散し、電極の周囲に残渣として付着することが知られている(以下、上述のフラックスの残渣を「フラックス残渣」という場合がある。)。
【0003】
フラックス残渣は、はんだ接合部における腐食等の原因となるほか、ワイヤボンディングを行う工程での接合不良及び、樹脂封止をする工程におけるモールド樹脂との密着不良等の原因となりうる。そのため、フラックス残渣は洗浄剤で除去する必要があり、従来から種々の洗浄剤が提案されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-105899号公報
【特許文献2】特開2002-201492号公報
【特許文献3】特開平05-043897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、洗浄剤組成物において、フラックス残渣の洗浄性及び取り扱い性の向上が求められている。また、環境への安全性の観点から、洗浄剤組成物において、揮発性有機化合物(VOC)の低減が求められている。しかしながら、従来の洗浄剤組成物においては、フラックス残渣の洗浄性及び取り扱い性の向上と、揮発性有機化合物(VOC)の低減とを兼備することが困難な場合があった。また、フラックス残渣の洗浄性及び取り扱い性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)が低減されている場合であっても、洗浄剤組成物に含まれる有機酸によって、洗浄対象物に含まれる金属(例えば、亜鉛(Zn)、鉄(Fe))の腐食(言い換えれば「金属影響」)を生じ易い場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る洗浄剤組成物は、親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
該第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、
該水の含有率は、20質量%以上であり、
該有機酸に対する該第1化合物のモル比は、1以上35以下である。
【0008】
本開示の一態様に係る洗浄剤組成物用の原液は、上記の洗浄剤組成物用の原液であって、
該親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、40質量%以上98.8質量%以下であり、
該有機酸の含有率は、0.1質量%以上20質量%以下であり、
該第1化合物の含有率は、1.1質量%以上40質量%以下であり、
水で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の洗浄剤組成物は、
親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
前記第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、
前記水の含有率は、20質量%以上であり、
前記有機酸に対する前記第1化合物のモル比は、1以上35以下である。
【0011】
これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0012】
[2]上記[1]において、前記洗浄剤組成物のpHは8.0以上12.0以下であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0013】
[3]上記[1]又は[2]において、前記有機酸の含有率は、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、
前記第1化合物の含有率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0014】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記洗浄剤組成物は、25℃及び50℃の条件下で外観上均一であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0015】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記有機酸は、1分子中に1つ以上のカルボキシ基を有する有機酸、又は1分子中に1つ以上のホスホン酸基を有する有機酸であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0016】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記親水性グリコールエーテル化合物は、式(1)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(2)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
4は、炭素数1~11の鎖状及び/又は環状の炭化水素基を示し、前記炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-に置き換わっていてもよく、式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメトキシ基を示し、前記R
5及び前記R
6のいずれかはメトキシ基であり、R
7は水素原子又はメチル基を示す。)これによって、取り扱い性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0017】
[7]上記[6]において、前記親水性グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びプロピルセロソルブからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、取り扱い性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0018】
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、前記有機酸は、親水性酸及び/又は疎水性酸であり、
前記親水性酸は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、プロピオン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、グリシン、フィチン酸、1H-ベンゾトリアゾール-4-カルボン酸、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の親水性酸であり、
前記疎水性酸は、ジエチレントリアミン五酢酸、ビシン、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、アレンドロン酸、及び1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性酸であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0019】
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、
前記親水性含窒素有機化合物は、式(3)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(4)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であり、
前記親水性第4級アンモニウム塩は、式(5)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であることが好ましい。
【化2】
(式(3)中、R
8は、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH(OH)CH
3基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は炭素数1~4の鎖状炭化水素基を示し、R
9は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は-CH
2CH(OH)CH
3基を示し、R
10は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、又はメチル基を示し、式(4)中、R
15、R
16、R
17は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、式(5)中、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に炭素数1~2の炭化水素基を示す。)これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0020】
[10]上記[9]において、前記親水性含窒素有機化合物は、モノイソプロパノールアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、N-エチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、及び2-メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の親水性含窒素有機化合物であり、
前記親水性第4級アンモニウム塩は、水酸化テトラエチルアンモニウムであることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が更に低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0021】
[11]また、本開示の洗浄剤組成物用の原液は、上述の[1]から[10]に記載の洗浄剤組成物用の原液であって、
前記親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、40質量%以上98.8質量%以下であり、
前記有機酸の含有率は、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記第1化合物の含有率は、1.1質量%以上40質量%以下であり、
水で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【0022】
これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~Z」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上Z以下)を意味する。Aにおいて単位の記載がなく、Zにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とZの単位とは同じである。
【0024】
[実施形態1:洗浄剤組成物]
本開示の一実施形態に係る洗浄剤組成物について説明する。
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)の洗浄剤組成物は、
親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
該第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、
該水の含有率は、20質量%以上であり、
該有機酸に対する該第1化合物のモル比は、1以上35以下である。
【0025】
本開示によって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。その理由は、以下の通りと推察される。
【0026】
(a1)本開示の洗浄剤組成物は、親水性グリコールエーテル化合物と、有機酸と、第1化合物と、水とを含む洗浄剤組成物であって、該第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩であり、該有機酸に対する該第1化合物のモル比は、1以上35以下である。有機酸と、該第1化合物(親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩)との組合せによって、極性的な環境が作られ易い。その為、洗浄の際に有機酸と形成される塩の安定性が高まる。その結果として、該第1化合物によるフラックス残渣の膨潤、溶解作用だけでなく、該塩が形成されることによって該有機酸のフラックス洗浄性が向上すると共に、有機酸が洗浄対象物に含まれる金属に吸着し難くなるため金属影響が低減される。
【0027】
また、該親水性グリコールエーテルと該第1化合物とは親水性である為、該洗浄剤組成物において、疎水性化合物の水への溶解性を高めることができる。加えて、上述の通り、該有機酸と、該第1化合物(親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩)との組合せによって、該第1化合物と有機酸とによって塩が形成され、該第1化合物の親水性が更に向上する。その為、該洗浄剤組成物に疎水性化合物が添加された場合であっても、該洗浄剤組成物全体が均一になり易く、該洗浄剤組成物は取り扱い性に優れる。なお本願において、分離に起因する撹拌等の追加作業を要しない場合や、洗浄剤組成物の安全性が低いことに起因する使用の制限が生じない場合に、洗浄剤組成物の「取り扱い性」が優れていることを示す。
【0028】
(b1)更に、該洗浄剤組成物において、該水の含有率は、20質量%以上である。これによって、該洗浄剤組成物中の水の含有率が十分に高い為、VOCを低減することができる。
【0029】
以上により、本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)を低減することができる。
【0030】
≪洗浄剤組成物の組成≫
<親水性グリコールエーテル化合物>
上記洗浄剤組成物は、親水性グリコールエーテル化合物を含む。これによって、上記洗浄剤組成物において水との分離を抑制することができる。なお、本実施形態において「グリコールエーテル化合物」とは、二価アルコールのエーテル化合物を意味する。本実施形態において、「親水性」とは、20℃の環境下において、対象の化合物に対する水の溶解度が50質量%を超える性質を意味する。ちなみに「疎水性」とは、20℃の環境下において、対象の化合物に対する水の溶解度が50質量%以下である性質を意味する。上記親水性のグリコールエーテル化合物は、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。上記親水性のグリコールエーテル化合物は、市販品をそのまま用いてもよい。
【0031】
上記親水性グリコールエーテル化合物は、式(1)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(2)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であることが好ましい。
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
4は、炭素数1~11の鎖状及び/又は環状の炭化水素基を示し、該炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-に置き換わっていてもよく、式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメトキシ基を示し、該R
5及び該R
6のいずれかはメトキシ基であり、R
7は水素原子又はメチル基を示す。)
【0032】
上記親水性グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル(MG)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノアリルエーテル(AG)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFG)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBG)、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(ETB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBDG)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPDG)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(BzDG)、エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(MEDG)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル(IPDM)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(DMTG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPG)、2-メトキシブタノール(2MB)、3-メトキシブタノール(3MB)、3-メトキシ-3-メチルブタノール(MMB)、及びプロピルセロソルブ(PC)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、プロピルセロソルブ、3-メトキシ-3-メチルブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
【0033】
上記親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、5質量%以上78質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス残渣に対する洗浄性を更に向上することができる。該親水性グリコールエーテル化合物の含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。該親水性グリコールエーテル化合物の含有率の上限は、78質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。該親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、5質量%以上78質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
上記親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、ガスクロマトグラフィーによる分析で求めることができる。ガスクロマトグラフィーによる分析の条件は以下の通りである。
(分析の条件)
装置:ガスクロマトグラフ GC-14B(株式会社島津製作所製)
検出器:熱伝導度型検出器(TCD)
カラム:Thermon-3000(信和化工株式会社製)
気化室温度:160℃
検出器温度:160℃
【0035】
<有機酸>
上記洗浄剤組成物は、有機酸を含む。本実施形態において「有機酸」とは、カルボキシ基、ホスホン酸基、スルホ基等を含む酸性の有機化合物を意味する。上記有機酸は、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。上記有機酸は、市販品をそのまま用いてもよい。
【0036】
上記有機酸は、1分子中に1つ以上のカルボキシ基を有する有機酸、又は1分子中に1つ以上のホスホン酸基を有する有機酸であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の金属塩にキレート効果を発揮し、かつ第1化合物と安定的な塩を形成する為、本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響を低減することができる。
【0037】
上記有機酸は、親水性酸及び/又は疎水性酸であり、該親水性酸は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、プロピオン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、グリシン、フィチン酸、1H-ベンゾトリアゾール-4-カルボン酸、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の親水性酸であり、該疎水性酸は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ビシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、アレンドロン酸、及び1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性酸であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の金属塩にキレート効果を発揮し、かつ第1化合物と安定的な塩を形成する為、本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響を低減することができる。該有機酸は、親水性酸及び/又は疎水性酸であり、該親水性酸は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、プロピオン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、及びグリシン、フィチン酸、1H-ベンゾトリアゾール-4-カルボン酸、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、からなる群より選択される少なくとも1種の親水性酸であり、該疎水性酸は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ビシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、及びアレンドロン酸からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性酸であることがより好ましい。これらの親水性酸及びこれらの疎水性酸は1分子中に1つ以上のカルボキシ基を有する有機酸、又は1分子中に1つ以上のホスホン酸基を有する有機酸であることから、フラックス残渣中の金属塩にキレート効果を発揮し、かつ第1化合物と安定的な塩を形成する為、本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響を低減することができる。
【0038】
上記有機酸の含有率は、0.1質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。該有機酸の含有率の下限値は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。該有機酸の含有率の上限値は、4.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。該有機酸の含有率は、0.1質量%以上4.0質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
上記有機酸の含有率は、電位差滴定法により求めることができる。該電位差滴定法による分析の条件は以下の通りである。
(条件)
装置:電位差自動滴定装置 Model AT-710M(京都電子工業株式会社製)
測定温度:20℃
【0040】
<第1化合物>
上記洗浄剤組成物は、第1化合物を含み、該第1化合物は、親水性含窒素有機化合物及び/又は親水性第4級アンモニウム塩である。親水性含窒素有機化合物及び親水性第4級アンモニウム塩の鹸化作用によって、フラックスを構成する樹脂の分子構造が切断される結果、該樹脂が溶け易くなる。その為、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。なお、該「第1化合物」は、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。該「第1化合物」は、市販品をそのまま用いてもよい。
【0041】
上記親水性含窒素有機化合物は、式(3)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物、又は式(4)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であることが好ましい。
【化4】
(式(3)中、R
8は、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH(OH)CH
3基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は炭素数1~4の鎖状炭化水素基を示し、R
9は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、-CH
2CH
2CH
2NH
2基、又は-CH
2CH(OH)CH
3基を示し、R
10は、水素原子、-CH
2CH
2OH基、又はメチル基を示し、式(4)中、R
15、R
16、R
17は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【0042】
上記親水性含窒素有機化合物は、モノイソプロパノールアミン(第一級アミン)、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン(第一級アミン)、3,3’-ジアミノジプロピルアミン(第一級アミン)、N-エチルエタノールアミン(第二級アミン)、ジイソプロパノールアミン(第二級アミン)、ジエタノールアミン(第二級アミン)、N-n-ブチルジエタノールアミン(第三級アミン)、トリエタノールアミン(第三級アミン)、メチルジエタノールアミン(第三級アミン)、及び2-メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の親水性含窒素有機化合物であることが好ましい。これによって、フラックス残渣を膨潤、溶解する為、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。
【0043】
上記親水性第4級アンモニウム塩は、式(5)で表され、且つ20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える化合物であることが好ましい。
【化5】
(式(5)中、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に炭素数1~2の炭化水素基を示す。)
【0044】
上記親水性第4級アンモニウム塩は、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)であることが好ましい。これによって、フラックス残渣を膨潤、溶解する為、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。
【0045】
上記第1化合物の含有率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。該含有率が1質量%未満の場合、洗浄性の低下及び金属影響が生じ易くなる傾向があり、該含有率が20質量%超の場合、pHが上昇し作業者の安全性が損なわれる易くなる傾向がある。その為、上記第1化合物の含有率を上記範囲に調整することで、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。該第1化合物の含有率の下限値は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましい。該第1化合物の含有率の上限値は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。該第1化合物の含有率は、1質量%以上20%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
上記第1化合物の含有率は、電位差滴定法により求めることができる。該電位差滴定法による分析の条件は、上述の「有機酸の含有率」の分析条件と同一である。
【0047】
上記有機酸に対する上記第1化合物のモル比は、1以上35以下である。これによって、該有機酸に対する該第1化合物の量が十分である為、該有機酸が該第1化合物と結合することにより、該有機酸による洗浄対象物中の金属への影響を防ぐことができる。該モル比の下限値は、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。該モル比の上限値は、35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、25以下であることが更に好ましい。該モル比は、1以上35以下であることが好ましく、5以上30以下であることがより好ましく、10以上25以下であることが更に好ましい。
【0048】
該モル比は、上述の方法により求められた「第1化合物の含有率」と、上述の方法により求められた「有機酸の含有率」とに基づいて算出することにより求めることができる。
【0049】
<水>
上記洗浄剤組成物は、水を含む。上記水は、各種工業製品の原料として用いられる水、水道水等であれば特に制限はない。上記水は、蒸留水であってもよいし、イオン交換水であってもよい。本実施形態の一側面において、上記水は、その電気伝導率が1~300μS/cmであってもよいし、1~100μS/cmであってもよい。
【0050】
上記水の含有率は、20質量%以上である。これによって、本実施形態に係る洗浄剤組成物においてVOCを低減することができる。上記水の含有率の下限値は、25質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。上記水の含有率の上限値は、93質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましい。上記水の含有率は、20質量%以上93質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上75質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
上記水の含有率は、カールフィッシャー水分計による分析で求めることができる。カールフィッシャー水分計による分析の条件は以下の通りである。
(カールフィッシャー水分計の分析条件)
装置:カールフィッシャー水分計 MKS-500(京都電子工業株式会社製)
測定方法:容量滴定法
測定温度:20℃
【0052】
<その他の成分>
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、本発明の効果が奏される限り、その他の成分を更に含んでいてもよい。該その他の成分としては、例えば、界面活性剤、防錆剤、pH調整剤、キレート剤、増粘剤、湿潤剤、蒸発遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、香料及び防腐剤等が挙げられる。
【0053】
≪洗浄剤組成物の特性≫
<pH>
上記洗浄剤組成物のpHは8.0以上12.0以下であることが好ましい。該pHが8.0未満の場合、該洗浄剤組成物において洗浄性の低下及び金属影響が認められ易くなる傾向があり、該pHが12.0超の場合、作業者の安全性が損なわれ易くなる傾向がある。その為、上記洗浄剤組成物のpHを上記範囲に調整することで、フラックス洗浄性及び取り扱い性に更に優れ、且つ金属影響を更に低減することができる。上記洗浄剤組成物のpHの下限値は、8.0以上であることが好ましく、8.5以上であることがより好ましく、9.0以上であることが更に好ましい。上記洗浄剤組成物のpHの上限値は、12.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることが更に好ましい。上記洗浄剤組成物のpHは、8.0以上12.0以下であることが好ましく、8.5以上11.0以下であることがより好ましく、9.0以上10.0以下であることが更に好ましい。
【0054】
上記洗浄剤組成物のpHは、以下の方法により求めることができる。すなわち、pH計(Docu-PH ザルトリウス株式会社製)を用いて、測定温度25℃の条件で測定することにより求めることができる。
【0055】
<外観>
前記洗浄剤組成物は、25℃及び50℃の条件下で外観上均一であることが好ましい。これによって、保管、運送、使用時に撹拌等の特別な制限なく運用し易くなる為、取り扱い性に更に優れる。ここで「外観上均一である」とは、静置時に上記洗浄剤組成物が外観上2層以上に分離しないことを意味する。「静置時」とは、上記洗浄剤組成物が、重力以外の外力を受けていない状態を4時間維持した時を意味する。より具体的には、上記「静置時」は上記洗浄剤組成物が、振動、回転及び撹拌されていない状態を4時間維持した時と把握することもできる。本実施形態の一側面において、上記洗浄剤組成物は、25℃及び50℃以外の温度において、外観上均一であってもよいし、外観上2層以上に分離していてもよい。
【0056】
≪洗浄剤組成物の製造方法≫
本実施形態に係る洗浄剤組成物の製造方法は、上記親水性グリコールエーテル化合物と、上記有機酸と、上記第1化合物と、上記水とを準備する工程と、該親水性グリコールエーテル化合物と、該有機酸と、該第1化合物とを、該水に添加する工程を含む。当該添加する工程は、どのような手法を用いてもよい。添加する工程としては、例えば、フラスコに該親水性グリコールエーテル化合物、該有機酸、該第1化合物、及び該水を加えること、及び化学プラント等において、工業的規模で該親水性グリコールエーテル化合物、該有機酸、該第1化合物、及び該水を加えること等が挙げられる。
【0057】
≪洗浄対象物の洗浄方法≫
本実施形態に係る洗浄対象物の洗浄方法は、
洗浄対象物の洗浄方法であって、上記洗浄剤組成物を上記洗浄対象物の表面又は隙間に接触させることを含む。
【0058】
上記洗浄剤組成物を上記洗浄対象物の表面又は隙間に接触させる方法は特に制限されない。当該方法は、例えば、浸漬、塗布、及びスプレー又はシャワーによる噴霧などの方法によって、大気中、減圧下、又は加圧下で常温下又は加熱下で接触させることが挙げられる。浸漬によって上記洗浄剤組成物を上記洗浄対象物の表面又は隙間に接触させる場合、必要に応じて、撹拌処理、超音波処理、バブリング処理、揺動等の操作を行ってもよい。当該方法は、加温した上記洗浄剤組成物が投入された洗浄剤槽に、上記洗浄対象物を浸漬して、洗浄することが好ましい。浸漬する時間は、1分間~60分間であることが好ましい。
【0059】
本実施形態の一側面において、上記洗浄対象物の隙間を洗浄する場合、撹拌されている上記洗浄剤組成物に上記洗浄対象物を浸漬することが好ましい。この場合、シャワー洗浄及び超音波洗浄のときと比較して、洗浄対象物への負荷が低減される傾向がある。
【0060】
本実施形態の洗浄対象物の洗浄方法は、上記洗浄剤組成物の温度を20~70℃とすることが好ましく、30~60℃とすることがより好ましく、40~50℃とすることが更に好ましい。
【0061】
その後、水、含水アルコール、又は含水グリコールエーテルによるリンスを行って、乾燥で洗浄剤組成物を、上記洗浄対象物から除去すればよい。
【0062】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス残渣を除去するために好適に用いることができる。すなわち、上記洗浄剤組成物は、フラックス洗浄用であることが好ましい。
【0063】
[実施形態2:洗浄剤組成物用の原液]
本開示の一実施形態に係る洗浄剤組成物用の原液について説明する。
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)の洗浄剤組成物用の原液は、
本実施形態1に係る洗浄剤組成物用の原液であって、
該親水性グリコールエーテル化合物の含有率は、40質量%以上98.8質量%以下であり、
該有機酸の含有率は、0.1質量%以上20質量%以下であり、
該第1化合物の含有率は、1.1質量%以上40質量%以下であり、
水で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【0064】
本開示によって、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減された洗浄剤組成物を提供することが可能になる。なお、上記洗浄剤組成物用原液を上述の倍率(体積比率)で希釈することで、実施形態1に係る洗浄剤組成物を得ることができる。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
≪洗浄剤組成物の作製≫
以下のようにして、試料1~試料31、試料33~試料54、及び試料101~試料106、試料110、及び試料111に係る洗浄剤組成物を作製した。
【0067】
<準備する工程>
試料1~試料31、試料33~試料54、及び試料101~試料106、試料110、及び試料111に係る洗浄剤組成物を作製する為の原料として、以下の親水性グリコールエーテル化合物と、以下の有機酸と、以下の親水性含窒素有機化合物と、以下の第4級アンモニウム塩と、以下の水とを準備した。
(親水性グリコールエーテル化合物)
プロピルセロソルブ:ダウ・ケミカル日本株式会社製
3-メトキシ-3-メチルブタノール:株式会社クラレ製
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
トリエチレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
(有機酸)
ニトリロトリスメチレンホスホン酸(親水性酸):キレスト株式会社製
クエン酸(親水性酸):富士フイルム和光純薬株式会社製
リンゴ酸(親水性酸):富士フイルム和光純薬株式会社製
グリコール酸(親水性酸):ケマーズ株式会社製
プロピオン酸(親水性酸):富士フイルム和光純薬株式会社製
2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸:キレスト株式会社製
HEDP(親水性酸):キレスト株式会社製
グリシン(親水性酸):富士フイルム和光純薬株式会社製
p-トルエンスルホン酸一水和物(親水性酸):富士フイルム和光純薬株式会社製
DTPA:キレスト株式会社製
DHEG:キレスト株式会社製
EDTMP:キレスト株式会社製
ラウリン酸:富士フイルム和光純薬株式会社製
アレンドロン酸:東京化成工業株式会社製
1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸:富士フイルム和光純薬株式会社製
(親水性含窒素有機化合物)
モノイソプロパノールアミン(第一級アミン):東京化成工業株式会社製
3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン(第一級アミン):東京化成工業株式会社製
N-エチルエタノールアミン(第二級アミン):日本乳化剤株式会社製
2-メチルイミダゾール:東京化成工業株式会社製
N-n-ブチルジエタノールアミン(第三級アミン):日本乳化剤株式会社製
トリエタノールアミン(第三級アミン):東京化成工業株式会社製
(第4級アンモニウム塩)
TEAH:東京化成工業株式会社製
(疎水性含窒素有機化合物)
ジメチルステアリルアミン:富士フイルム和光純薬株式会社製
n-ドデシルアミン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジ-n-ブチルアミン:富士フイルム和光純薬株式会社製
1,2,3-ベンゾトリアゾール:東京化成工業株式会社製
(疎水性溶剤)
プロピレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
ジプロピレングリコールジメチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤株式会社製
ベンジルアルコール:東京応化工業株式会社製
(水)
蒸留水
【0068】
<添加する工程>
次いで、上記原料のうち該蒸留水(水)以外の原料を、表1~表4に記載された組成で、該蒸留水(水)に添加した。なお、表1~表4の「配合組成[質量%]」の欄において、「-」で示されている成分は、試料に含まれていないことを意味する。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
以上の工程を実行することにより、表1~表4に示した構成を有する試料1~試料31、試料33~試料54、試料101~試料106、試料110、及び試料111に係る洗浄剤組成物を作製した。
【0074】
≪洗浄剤組成物の特性評価≫
各試料に係る洗浄剤組成物について、「pH」を測定し、「外観」、「洗浄性」、「金属影響」、及び「取り扱い性」を評価した。
【0075】
<pH>
各試料に係る洗浄剤組成物について、pHを上記実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果をそれぞれ表1~表4の「pH(水で100倍に希釈された場合)」の欄に記す。
【0076】
<外観>
各試料に係る洗浄剤組成物について、外観を上記実施形態1に記載の方法により求めた。なお、各試料に係る洗浄剤組成物に関し、試料作製直後と、該試料作製から1週間後との両方において、外観を評価した。得られた結果をそれぞれ表1~表4の「外観」の欄に記す。
【0077】
<洗浄性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の手順で洗浄性を評価した。
【0078】
(テストピースの準備)
以下の手順で洗浄性を評価するためのテストピースを準備した。まず、20mm×40mmの銅板(株式会社スタンダードテストピース製)を用意した。該銅板に対し、評価ペーストとして「MB-T100」(千住金属工業株式会社製)を印刷した。その後、該銅板を250℃で3分間ホットプレート上で静置することでリフローを行った。以上の手順で、テストピースを作製した。
【0079】
(洗浄性の評価試験)
以下の手順で、各試料に係る洗浄剤組成物の洗浄性を評価した。まず、ビーカー(500ml)に上記洗浄剤組成物を400ml加えて、50℃になるまで加温した。次に加温された洗浄剤組成物を500rpmで撹拌して水相と有機相とが分散するようにした。上述の分散した状態を維持しながら上記洗浄剤組成物に上記テストピースを浸漬した。上記テストピースを上記洗浄剤組成物に浸漬してから所定時間経過後に上記テストピースを取り出し、水洗及び乾燥を行った後、実体顕微鏡(倍率40倍)を用いて表面観察し、フラックス残渣が完全に除去することが可能な時間を測定するとともに、以下の基準に照らして、洗浄性評価を行った。なお、洗浄性の評価がA又はBであることは、洗浄剤組成物の洗浄性が高いことを意味する。得られた結果を表1~表4の「洗浄性」の欄に記す。但し、フラックスの焦げ付き箇所は該評価の対象外とした。
(評価の基準)
A:洗浄時間が10分未満である。
B:洗浄時間が10分以上15分未満である。
C:洗浄時間が15分以上20分未満である。
D:洗浄時間が20分以上25分以下である。
E:洗浄時間が25分以上である。
【0080】
試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物は、実施例に該当する。一方、試料101~試料106、試料110、及び試料111に係る洗浄剤組成物は、比較例に該当する。試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)は、試料101~試料104、及び試料110(比較例)に比して、優れた洗浄性を有することが確認された。
【0081】
<金属影響>
各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の手順で金属影響を評価した。
(鉄(Fe)への影響)
冷間圧延鋼板SPCC(JIS G 3141:2017)をアセトンに20分間浸漬させて脱脂を行った。脱脂後のSPCCを各試料に係る洗浄剤組成物に50℃で30分間浸漬させた。その後、SPCCを水でリンスした後、該SPCCの外観変化を目視にて確認し、以下の「金属影響の評価の基準」に照らして鉄(Fe)への影響を評価した。
(亜鉛(Zn)への影響)
純亜鉛板を各試料に係る洗浄剤組成物に50℃で30分間浸漬させた。次いで、水でリンスした後、外観変化を実体顕微鏡(倍率:40倍)にて確認し、以下の「金属影響の評価の基準」に照らして亜鉛(Zn)への影響を評価した。
(金属影響の評価の基準)
A:60分以上変化が認められない。
B:45分以上60分未満で変化が認められる。
C:30分以上45分未満で変化が認められる。
D:15分以上30分未満で変化が認められる。
E:15分未満で変化が認められる。
【0082】
試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)は、試料101、試料104~試料106、及び試料111(比較例)に比して、金属影響が低減されていることが確認された。
【0083】
<取り扱い性>
洗浄剤組成物の外観が均一であることは、該洗浄剤組成物の「取り扱い性」が優れていることを意味する。ここで、該「取り扱い性」が優れていることとは、特に分離に起因する撹拌等の追加作業を要しないことを意味する。試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)は外観が均一である一方で、試料102に係る洗浄剤組成物(比較例)は外観が均一でない(言い換えれば、分離が生じている)ことが分かった。よって、試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)は、試料102に係る洗浄剤組成物(比較例)に比して、優れた「取り扱い性」を有することが分かった。
【0084】
<VOCの低減>
洗浄剤組成物において、水の含有率が20質量%以上であることは、水の含有率が高いことを意味し、且つ揮発性有機化合物(VOC)が低減されていることを意味する。試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)において、水の含有率は20質量%以上である為、VOCが低減されていることが分かった。
【0085】
以上により、試料1~試料31、及び試料33~試料54に係る洗浄剤組成物(実施例)は、フラックス洗浄性及び取り扱い性に優れ、且つ金属影響及び揮発性有機化合物(VOC)が低減されていることが分かった。
【0086】
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0087】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。