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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060161
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】船舶推進システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/21 20060101AFI20240424BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20240424BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20240424BHJP
   B63H 21/20 20060101ALI20240424BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B63H21/21
B63H21/14
B63H21/17
B63H21/20
B63B49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167328
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 祐次
(57)【要約】
【課題】電動推進機が駆動されている状態だけでなく、電動推進機が駆動し得る状態も、周囲から認識できる船舶推進システムおよび船舶を提供する。
【解決手段】船舶推進システム100は、船体に取り付けられる電動船外機EM(電動推進機)と、船体の喫水線よりも上に配置され、電動船外機EMの周囲に向けて電動船外機EMの状態を報知する報知装置としてのランプ12と、メインコントローラ101とを含む。メインコントローラ101は、電動船外機EMの駆動が有効となる電動推進機有効モードを含む複数の制御モードを有し、電動推進機有効モード中に、ランプ12を作動(点灯)させて、電動船外機EMが駆動可能な状態であることを報知する報知制御を実行する。船舶推進システム100は、さらに、エンジン船外機OM(エンジン推進機)を備えていてもよい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に取り付けられる電動推進機と、
前記船体の喫水線よりも上に配置され、前記電動推進機の周囲に向けて前記電動推進機の状態を報知する報知装置と、
前記電動推進機の駆動が有効となる電動推進機有効モードを含む複数の制御モードを有し、前記電動推進機有効モード中に、前記報知装置を作動させて、前記電動推進機が駆動可能な状態であることを報知する報知制御を実行するコントローラと、を含む、船舶推進システム。
【請求項2】
前記船体に取り付けられるエンジン推進機をさらに含み、
前記複数の制御モードは、前記エンジン推進機による推進力の発生が有効で、前記電動推進機の駆動が無効となる電動推進機無効モードを含み、
前記コントローラは、前記電動推進機無効モード中は、前記報知装置の作動を停止する報知停止制御を実行する、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項3】
前記電動推進機のプロペラを水中と水面より上との間で上げ下げする昇降装置をさらに含み、
前記コントローラは、前記プロペラが水中にあるときに前記報知制御を有効とし、前記プロペラが水面より上にあるときに前記報知制御を無効とする、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項4】
操船のために使用者によって操作される操作子をさらに含み、
前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作に応答して前記コントローラが前記電動推進機を駆動する操作応答モードを含む、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項5】
前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作状態を表す操作状態値を記憶し、前記操作状態値に応じて前記コントローラが前記電動推進機を駆動する操作保持モードを含む、請求項4に記載の船舶推進システム。
【請求項6】
前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作によることなく前記船体の挙動を制御するための自動モードをさらに含む、請求項4に記載の船舶推進システム。
【請求項7】
前記報知装置は、前記船体に取り付けられる、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項8】
船体に取り付けられる電動推進機と、
前記船体の喫水線よりも上に配置され、前記電動推進機の周囲に向けて前記電動推進機が駆動可能な状態であることを報知する報知装置と、を含む、船舶推進システム。
【請求項9】
前記船体に取り付けられるエンジン推進機をさらに含む、請求項8に記載の船舶推進システム。
【請求項10】
前記電動推進機および前記エンジン推進機が前記船体の船尾に並べて取り付けられ、
前記報知装置が、前記船体の後方から認知可能な報知信号を発生する、請求項9に記載の船舶推進システム。
【請求項11】
船体と、
前記船体に装備される、請求項1~10のいずれか一項に記載の船舶推進システムと、を含む、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進システムおよびそれを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筒状のリムの内方に羽根を固定したプロペラをエンジンおよび電動モータによって駆動するハイブリッド型の船舶推進装置を開示している。プロペラを取り囲むダクトが設けられており、ダクトに対してプロペラが回転される。プロペラまたはダクトに発光体が配置されており、プロペラが回転しているときに、発光体が発光するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-100014号公報(図24図26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、推進力を発生するためには、プロペラおよびダクトは水中に配置されなければならないので、発光体は水中で発光する。そのため、後方の別の船舶の操船者からの認識しやすさの観点から、改善の余地がある。
【0005】
特許文献1のハイブリッド型の船舶推進装置においては、エンジンが運転されていれば、周囲の人々は、その作動音や振動によって、プロペラが回転していることや回転し得る状態であることを容易に知ることができる。
【0006】
しかし、ハイブリッド型であってもエンジンを停止しているときや、エンジンを備えない電動推進機においては、運転時であっても、作動音は小さく、振動は微弱である。したがって、とりわけ、電源が入っている待機状態を、運転時に生じる作動音または振動によって周囲の人々に伝達することは難しい。
【0007】
そこで、この発明の一実施形態は、電動推進機が駆動されている状態だけでなく、電動推進機が駆動し得る状態も、周囲から認識できる船舶推進システムおよび船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一実施形態は、船体に取り付けられる電動推進機と、前記船体の喫水線よりも上に配置され、前記電動推進機の周囲に向けて前記電動推進機の状態を報知する報知装置と、コントローラとを含む、船舶推進システムを提供する。前記コントローラは、前記電動推進機の駆動が有効となる電動推進機有効モードを含む複数の制御モードを有し、前記電動推進機有効モード中に、前記報知装置を作動させて、前記電動推進機が駆動可能な状態であることを報知する報知制御を実行する。
【0009】
この構成によれば、コントローラの制御モードが電動推進機有効モードのときに、報知装置によって、電動推進機が駆動可能な状態であることが報知される。したがって、電動推進機が駆動されている状態だけでなく、電動推進機が駆動し得る状態も、周囲から認識できる。そして、報知装置は、船体の喫水線よりも上に配置されるので、周囲から認識されやすい報知を行うことができる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記船舶推進システムは、前記船体に取り付けられるエンジン推進機をさらに含む。前記複数の制御モードは、前記エンジン推進機による推進力の発生が有効で、前記電動推進機の駆動が無効となる電動推進機無効モードを含む。前記コントローラは、前記電動推進機無効モード中は、前記報知装置の作動を停止する報知停止制御を実行する。
【0011】
この構成によれば、エンジン推進機による推進力の発生が有効であっても、電動推進機の駆動が無効となる制御モードのときには、報知装置による報知は行われない。エンジン推進機による推進力の発生が有効なときには、エンジンは運転中であり、したがって、エンジンの運転に伴って生じる作動音および振動によって、周囲の人は、推進力を発生し得る状態であることを容易に知ることができる。したがって、電動推進機無効モード中は、報知を停止することにより、無用な報知を行わず、必要時に報知を行って周囲からの認識を容易にすることができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記船舶推進システムは、前記電動推進機のプロペラを水中と水面より上との間で上げ下げする昇降装置をさらに含む。前記コントローラは、前記プロペラが水中にあるときに前記報知制御を有効とし、前記プロペラが水面より上にあるときに前記報知制御を無効とする。
【0013】
この構成によれば、電動推進機のプロペラが水面よりも上にあるときには、報知制御が無効となるので、無用な報知が行われることがない。それにより、必要時に効果的な報知を行うことができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記船舶推進システムは、操船のために使用者によって操作される操作子をさらに含む。前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作に応答して前記コントローラが前記電動推進機を駆動する操作応答モードを含む。
【0015】
この構成によれば、操作子の操作に応じて電動推進機が駆動され得る制御モードにおいて、報知装置が作動するので、電動推進機が駆動され得る状態を周囲から認識しやすい。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作状態を表す操作状態値を記憶し、前記操作状態値に応じて前記コントローラが前記電動推進機を駆動する操作保持モードを含む。
【0017】
この構成によれば、操作子が操作される場合だけでなく、記憶された操作状態値に応じて電動推進機が駆動される操作保持モードにおいても、報知装置を作動させて、周囲からの認識を容易にすることができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記電動推進機有効モードは、前記操作子の操作によることなく前記船体の挙動を制御するための自動モードをさらに含む。
【0019】
この構成によれば、自動モードによって電動推進機が駆動され得るときに、報知装置を作動させて、周囲からの認識を容易にことができる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記報知装置は、前記船体に取り付けられる。
【0021】
前記報知装置は、船体の喫水線よりも上の位置で、電動船外機に設けられてもよい。
【0022】
この発明の一実施形態は、船体に取り付けられる電動推進機と、前記船体の喫水線よりも上に配置され、前記電動推進機の周囲に向けて前記電動推進機が駆動可能な状態であることを報知する報知装置と、を含む、船舶推進システムを提供する。
【0023】
この構成によれば、電動推進機が駆動され得る状態のときに、報知装置による報知によって、周囲からの認識を容易にすることができる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記船舶推進システムは、前記船体に取り付けられるエンジン推進機をさらに含む。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記電動推進機および前記エンジン推進機が前記船体の船尾に並べて取り付けられる。前記報知装置が、前記船体の後方から認知可能な報知信号を発生する。
【0026】
この構成により、電動推進機がエンジン推進機と並べて取り付けられる船尾の方向、すなわち船体の後方から報知信号が認知可能であるので、電動推進機が駆動可能な状態であることを電動推進機の周囲(とくに後方の別の船舶の操船者)に向けて適切に報知できる。
【0027】
前記報知信号は、光信号であってもよいし、音信号であってもよいし、光信号および音信号の両方であってもよい。
【0028】
この発明の一実施形態は、船体と、前記船体に装備される、前述のような特徴を有する船舶推進システムと、を含む、船舶を提供する。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、電動推進機が駆動されている状態だけでなく、電動推進機が駆動し得る状態も、周囲から認識できる船舶推進システムおよび船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る船舶推進システムが搭載された船舶の構成例を説明するための平面図である。
図2図2は、前記船舶の船首方向に向かって左側から見た側面図である。
図3図3は、船舶を後ろ上方から見下ろして船体後部の構成を示す斜視図である。
図4図4は、エンジン船外機の構成例を説明するための側面図である。
図5図5は、電動船外機の構成例を説明するための側面図である。
図6図6は、船舶の後方から見た電動船外機の背面図である。
図7図7は、船舶推進システムの構成例を説明するためのブロック図である。
図8図8は、ジョイスティックユニットの構成例を説明するための斜視図である。
図9A図9Aは、2機の推進機の両方の推進力を利用する第1ジョイスティックモードの動作例を説明するための図である。
図9B図9Bは、2機の推進機の両方の推進力を利用する第1ジョイスティックモードの動作例を説明するための図である。
図10図10は、1機の推進機のみの推進力を利用する第2ジョイスティックモードの動作例を説明するための図である。
図11図11は、ランプの制御のための制御テーブルの一例を示す。
図12図12は、メインコントローラによるランプの制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶推進システム100が搭載された船舶1の構成例を説明するための平面図であり、図2は、船舶1の船首方向に向かって左側から見た側面図である。
【0033】
船舶1は、船体2と、船体2に取り付けられたエンジン船外機OMと、船体2に取り付けられた電動船外機EMとを含む。エンジン船外機OMおよび電動船外機EMは、いずれも推進機の例である。エンジン船外機OMは、主推進機の一例である。電動船外機EMは、主推進機よりも定格出力の小さい補助推進機の一例である。エンジン船外機OMは、エンジンを動力源とするエンジン推進機の一例である。電動船外機EMは、電動モータを動力源とする電動推進機の一例である。
【0034】
この実施形態では、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMは、いずれも船尾3に取り付けられている。より具体的には、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMは、船体2の左右方向に並んで船尾3に配置されている。エンジン船外機OMは、この例では、船体2の左右方向の中央に配置されており、電動船外機EMは、船体の左右方向の中央よりも外側(この例では左側)に配置されている。
【0035】
船体2の内部には、乗船者のための居住空間4が確保されている。この居住空間4内に操船席5が設けられている。操船席5には、ステアリングホイール6、リモコンレバー7、ジョイスティック8、ゲージ9(表示パネル)などが備えられている。ステアリングホイール6は、船舶1の針路を変更するために使用者によって操作される操作子である。リモコンレバー7は、エンジン船外機OMの推進力の大きさ(出力)およびその方向(前進または後進)を変更するために使用者によって操作される操作子であり、アクセル操作子に相当する。ジョイスティック8は、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7の代わりに、操船のために使用者によって操作される操作子である。
【0036】
図3は、船舶1を後ろ上方から見下ろして船体後部の構成を示す斜視図である。船体2には、その喫水線11(図2参照)よりも上の位置に、すなわち、水面よりも上に、報知装置の一例としてのランプ12が設けられている。この実施形態では、ランプ12は、LED(発光ダイオード)ランプである。また、後方から見て、左右に一対のランプ12が設けられており、この実施形態では、中央に配置されたエンジン船外機OMの両側に振り分けて配置されている。
【0037】
ランプ12は、電動船外機EMの周囲に向けて、光を放射できるように船体2に取り付けられている。より具体的には、ランプ12は、船体2の後方に向けられており、とくに船体2の後方、すなわち電動船外機EMの周辺(とくに後方の別の船舶の操船者)に向けて、電動船外機EMの状態を認識するための光信号を放射するように構成されている。この光信号は、船体2の後方から認知可能な報知信号の一例である。
【0038】
ランプ12は、電動船外機EMが駆動可能な状態のときに、光を発生する。駆動可能な状態とは、電動船外機EMが駆動されてプロペラ60が回転している状態のほか、電動船外機EMに電源が投入されていて駆動可能な待機状態をも含む。
【0039】
図4は、エンジン船外機OMの構成例を説明するための側面図である。エンジン船外機OMは、推進ユニット20と、この推進ユニット20を船体2に取り付ける取り付け機構21とを有している。取り付け機構21は、船体2の船尾3に設けられる後尾板に着脱自在に固定されるクランプブラケット22と、このクランプブラケット22に水平回動軸としてのチルト軸23を中心に回動自在に結合されたスイベルブラケット24とを備えている。推進ユニット20は、スイベルブラケット24に対して、転舵軸25まわりに回動自在であるように取り付けられている。これにより、推進ユニット20を転舵軸25まわりに回動させることによって、転舵角(船体2の中心線に対して推進力の方向がなす方位角)を変化させることができる。また、スイベルブラケット24をチルト軸23まわりに回動させることによって、推進ユニット20のトリム角を変化させることができる。トリム角は、船体2に対するエンジン船外機OMの取り付け角である。
【0040】
推進ユニット20のハウジングは、エンジンカバー(トップカウリング)26とアッパケース27とロアケース28とで構成されている。エンジンカバー26内には、原動機としてのエンジン30がそのクランク軸の軸線が上下方向となるように設置されている。エンジン30のクランク軸下端に連結される動力伝達用のドライブシャフト31は、上下方向にアッパケース27内を通ってロアケース28内にまで延びている。
【0041】
ロアケース28の下部後側には、推進部材としてのプロペラ32が回転自在に装着されている。ロアケース28内には、プロペラ32の回転軸であるプロペラシャフト29が水平方向に通されている。プロペラシャフト29には、ドライブシャフト31の回転が、シフト機構33を介して伝達されるようになっている。
【0042】
シフト機構33は、前進位置、後進位置および中立位置を含む複数のシフト位置(シフト状態)を有している。中立位置は、ドライブシャフト31の回転をプロペラシャフト29に伝達しない遮断状態のシフト位置である。前進位置は、プロペラシャフト29が前進回転方向に回転するようにドライブシャフト31の回転をプロペラシャフト29に伝達する状態のシフト位置である。後進位置は、プロペラシャフト29が後進回転方向に回転するようにドライブシャフト31の回転をプロペラシャフト29に伝達する状態のシフト位置である。前進回転方向とは、船体2に対して前進方向の推進力を与えるプロペラ32の回転方向である。後進回転方向とは、船体2に対して後進方向の推進力を与えるプロペラ32の回転方向である。シフト機構33のシフト位置は、シフトロッド34によって切り換えられる。シフトロッド34は、ドライブシャフト31と平行に上下方向に延びており、その軸まわりの回動によって、シフト機構33を操作するように構成されている。
【0043】
エンジン30に関連して、このエンジン30を始動させるためのスタータモータ35と、始動後にエンジン30の動力によって発電する発電機38とが配置されている。スタータモータ35は、エンジンECU(電子制御ユニット)40によって制御される。発電機38が発生する電力は、エンジン船外機OMに備えられる電装品に供給されるほか、船体2(図1および図2)に収納されるバッテリ130,145(図7参照)を充電するために用いられる。また、エンジン30のスロットルバルブ36を作動させてスロットル開度を変化させ、エンジン30の吸入空気量を変化させるためのスロットルアクチュエータ37が備えられている。スロットルアクチュエータ37は、電動モータからなっていてもよい。スロットルアクチュエータ37の動作は、エンジンECU40によって制御される。
【0044】
また、シフトロッド34に関連して、シフト機構33のシフト位置を変化させるためのシフトアクチュエータ39が設けられている。シフトアクチュエータ39は、たとえば、電動モータからなり、エンジンECU40によって動作制御される。
【0045】
さらに、推進ユニット20に固定された操舵ロッド47には、ステアリングホイール6(図1参照)の操作に応じて駆動される転舵装置43が結合されている。転舵装置43によって、推進ユニット20が転舵軸25まわりに回動され、それによって舵取りを行うことができる。転舵装置43は、転舵アクチュエータ44を備えている。転舵アクチュエータ44は、ステアリングECU41によって制御される。ステアリングECU41は、推進ユニット20に備えられていてもよい。転舵アクチュエータ44は電動モータで構成されていてもよいし、油圧アクチュエータであってもよい。
【0046】
クランプブラケット22とスイベルブラケット24との間には、たとえば液圧シリンダを含み、エンジンECU40によって制御されるチルトトリムアクチュエータ46が設けられている。チルトトリムアクチュエータ46は、チルト軸23まわりにスイベルブラケット24を回動させることにより、推進ユニット20をチルト軸23まわりに回動させる。
【0047】
図5は、電動船外機EMの構成例を説明するための側面図であり、図6は船舶1の後方から見た電動船外機EMの背面図である。
【0048】
電動船外機EMは、船体2への取り付けのためのブラケット51と、推進機本体50とを含む。推進機本体50は、ブラケット51に支持されている。推進機本体50は、ブラケット51に支持されるベース55と、ベース55から下方に延びるアッパハウジング56と、アッパハウジング56の下方に配置された筒状(ダクト状)のロアハウジング57と、ロアハウジング57内に配置された駆動ユニット58とを含む。推進機本体50は、さらに、ベース55を下方から覆うカバー66と、ベース55を上方から覆うカウル67とを備えている。カバー66およびカウル67によって区画される空間には、チルトユニット69および転舵ユニット72が収容されている。この空間には、さらに、チルトユニット69が作動するときに音を発生するブザー75が収容されていてもよい。
【0049】
駆動ユニット58は、プロペラ60と、プロペラ60を回転させる電動モータ61とを含む。電動モータ61は、プロペラ60が径方向内側に固定された筒状のロータ62と、ロータ62を径方向外方から取り囲む筒状のステータ64とを含む。ステータ64はロアハウジング57に固定されており、ロータ62は、ロアハウジング57に対して回転可能に支持されている。ロータ62は、周方向に沿って配置された複数の永久磁石63を有している。ステータ64は、周方向に沿って配置された複数のコイル65を有している。この複数のコイル65に通電することによって、ロータ62を回転でき、それに応じてプロペラ60を回転させて、推進力を発生させることができる。
【0050】
チルトユニット69は、チルトアクチュエータとしてのチルトシリンダ70を含む。チルトシリンダ70は、電動ポンプによって作動油を流動させる電動ポンプ型油圧シリンダであってもよい。チルトシリンダ70の一端は、ブラケット51の下支持部52に結合されており、チルトシリンダ70の他端は、シリンダ連結ブラケット71を介してベース55に結合されている。ブラケット51の上支持部53にチルト軸68が支持されており、ベース55は、チルト軸68を介して、ブラケット51に対してチルト軸68まわりに回転可能に結合されている。チルト軸68は、船体2の左右方向に延びており、したがって、ベース55は、上下に回転可能である。それにより、推進機本体50は、チルト軸68まわりに回転して、上下動することができる。
【0051】
推進機本体50をチルト軸68まわりに回転して上昇させることをチルトアップといい、推進機本体50をチルト軸68まわりに回転して下降させることをチルトダウンという。チルトシリンダ70を駆動して伸縮させることにより、チルトアップおよびチルトダウンを行える。チルトアップによって、プロペラ60を上昇させて水面よりも上に配置して、推進機本体50をチルトアップ状態とすることができる。また、チルトダウンによって、プロペラ60を下降させて水中に配置して、推進機本体50をチルトダウン状態とすることができる。このように、チルトユニット69は、プロペラ60を上げ下げする昇降装置の一例である。
【0052】
推進機本体50のチルトアップ状態およびチルトダウン状態を検出するために、推進機本体50のブラケット51に対する角度、すなわち、チルト角を検出するチルト角センサ76が備えられている。チルト角センサ76は、チルトシリンダ70の作動ロッドの位置を検出する位置センサであってもよい。
【0053】
転舵ユニット72は、ロアハウジング57およびアッパハウジング56に結合されたステアリング軸73と、転舵モータ74とを含む。転舵モータ74は、ステアリング軸73をその軸線まわりに回転させるための駆動力を発生する転舵アクチュエータの一例である。転舵ユニット72は、さらに、転舵モータ74の回転を減速してステアリング軸73に伝達する減速ギヤを有していてもよい。したがって、転舵モータ74を駆動することにより、ロアハウジング57およびアッパハウジング56をステアリング軸73まわりに回転させ、駆動ユニット58が発生する推進力の方向を左右に変更することができる。アッパハウジング56は、転舵中立位置において船体2の前後方向に延びる板状を成しており、転舵ユニット72によって転舵される舵板としての機能を有している。
【0054】
図7は、船舶1に備えられる船舶推進システム100の構成例を説明するためのブロック図である。船舶推進システム100は、主推進機としてのエンジン船外機OMおよび補助推進機としての電動船外機EMを含む。船舶推進システム100は、電動船外機EMのプロペラ60(図5および図6参照)を水中と水面との間で上げ下げする昇降装置を備えている。この実施形態では、電動船外機EMに組み込まれたチルトユニット69が昇降装置の一例である。チルトユニット69等の昇降装置は、電動船外機EMに組み込まれていてもよいし、電動船外機EMとは別に構成されていてもよい。
【0055】
船舶推進システム100は、メインコントローラ101を備えている。メインコントローラ101は、船体2内に構築された船内ネットワーク102(CAN:コントロールエリアネットワーク)に接続されている。船内ネットワーク102には、リモコンユニット17、リモコンECU90、ジョイスティックユニット18、GPS(Global Positioning System)受信機110、方位センサ111などが接続されている。リモコンECU90には、船外機制御ネットワーク105を介して、エンジンECU40およびステアリングECU41が接続されている。メインコントローラ101は、船内ネットワーク102に接続された様々なユニットと信号を授受し、それにより、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMを制御し、かつその他のユニットを制御する。メインコントローラ101は、複数の制御モードを有し、各制御モードに応じて予め定められた態様で各ユニットを制御する。
【0056】
船外機制御ネットワーク105には、ステアリングホイールユニット16が接続されている。ステアリングホイールユニット16は、ステアリングホイール6の操作角を表す操作角信号を船外機制御ネットワーク105に出力する。その操作角信号は、リモコンECU90およびステアリングECU41によって受信される。ステアリングECU41は、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号またはリモコンECU90が生成する転舵角指令に応答し、いずれかに応じて転舵アクチュエータ44を制御し、それによって、エンジン船外機OMの転舵角を制御する。
【0057】
リモコンユニット17は、リモコンレバー7の操作位置を表す操作位置信号を生成する。
【0058】
ジョイスティックユニット18は、ジョイスティック8の操作位置を表す操作位置信号を生成し、かつジョイスティックユニット18に備えられた操作ボタン180の操作信号を生成する。
【0059】
リモコンECU90は、船外機制御ネットワーク105を介して、エンジンECU40に対し、推進力指令を送出する。推進力指令は、シフト位置を指令するためのシフト指令と、エンジン出力(具体的にはエンジン回転速度)を指令するための出力指令とを含む。また、リモコンECU90は、船外機制御ネットワーク105を介して、ステアリングECU41に対して、転舵角指令を送出する。
【0060】
リモコンECU90は、メインコントローラ101の制御モードに応じて異なる制御動作を実行する。たとえば、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7による操船のための制御モードでは、リモコンECU90は、エンジンECU40に対して、リモコンユニット17が生成する操作位置信号に応じた推進力指令(シフト指令および出力指令)を与える。また、リモコンECU90は、ステアリングECU41に対して、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号に従うように指令する。一方、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7の操作によらない操船のための制御モードでは、リモコンECU90は、メインコントローラ101の指令に従う。すなわち、リモコンECU90は、メインコントローラ101が生成する推進力指令(シフト指令および出力指令)ならびに転舵角指令に従って、推進力指令(シフト指令および出力指令)をエンジンECU40に送出し、かつ転舵角指令をステアリングECU41に送出する。たとえば、ジョイスティック8による操船のための制御モードでは、メインコントローラ101は、ジョイスティックユニット18が生成する信号に応じて、推進力指令(シフト指令および出力指令)ならびに転舵角指令を生成する。それらに従って、エンジン船外機OMの推進力の大きさおよび方向(前進または後進)ならびに転舵角が制御される。
【0061】
エンジンECU40は、シフト指令に応じてシフトアクチュエータ39を駆動してシフト位置を制御し、出力指令に応じてスロットルアクチュエータ37を駆動してスロットル開度を制御する。ステアリングECU41は、転舵角指令に応じて転舵アクチュエータ44を制御し、エンジン船外機OMの転舵角を制御する。
【0062】
電動船外機EMのモータコントローラ80およびステアリングコントローラ81は、船内ネットワーク102に接続されており、メインコントローラ101からの指令に応答して電動船外機EMを作動させるように構成されている。メインコントローラ101は、電動船外機EMに対して、推進力指令および転舵角指令を与える。推進力指令は、シフト指令(回転方向指令)および出力指令を含む。シフト指令は、プロペラ60を停止、前進回転または後進回転させることを指令する回転方向指令である。出力指令は、発生すべき推進力、具体的には回転速度の目標値の指令である。転舵角指令は、転舵角の目標値の指令である。モータコントローラ80は、シフト指令(回転方向指令)および出力指令に応じて電動モータ61を制御する。また、ステアリングコントローラ81は、転舵角指令に応じて転舵モータ74を制御する。
【0063】
メインコントローラ101は、さらに、船内ネットワーク102を介してモータコントローラ80にチルト指令を与える。チルト指令は、電動船外機EMのチルト角の目標値の指令である。モータコントローラ80は、チルト指令に応じて、チルトシリンダ70を作動させて、目標のチルト角へと電動船外機EMをチルトアップまたはチルトダウンさせる。モータコントローラ80には、チルト角センサ76の検出信号が入力されている。それにより、モータコントローラ80は、推進機本体50のチルト角の情報を取得でき、そのチルト角の情報をメインコントローラ101に送信できる。
【0064】
GPS受信機110は、地球を周回する人工衛星からの電波を受信して船舶1の位置を特定し、船舶1の位置を表す位置データと、船舶1の移動速度を表す速度データとを出力する。これらのデータは、メインコントローラ101によって取得され、船舶1の位置および/または方位の表示や制御のために用いられる。
【0065】
方位センサ111は、船舶1の方位を検出して、方位データを生成する。その方位データはメインコントローラ101によって利用される。
【0066】
メインコントローラ101には、コントロールパネルネットワーク106を介して、ゲージ9が接続されている。ゲージ9は、操船のための各種情報を表示するための表示装置である。ゲージ9は、コントロールパネルネットワーク106を介してリモコンECU90、モータコントローラ80およびステアリングコントローラ81と接続されている。それにより、ゲージ9は、エンジン船外機OMの運転状態、電動船外機EMの運転状態、船舶1の位置および/または方位などの情報を表示することができる。ゲージ9には、タッチパネルやボタン等の入力装置10が備えられていてもよい。使用者が入力装置10を操作することにより、操作信号がコントロールパネルネットワーク106に送出され、様々な設定や指令が行えるようになっていてもよい。
【0067】
エンジン船外機OMの電源を投入し、さらにエンジン30を始動および停止させるためのパワースイッチユニット120がリモコンECU90に接続されている。パワースイッチユニット120は、エンジン船外機OMの電源を投入/遮断するためのパワースイッチ121と、エンジン30を始動するためのスタートスイッチ122と、エンジン30を停止するためのストップスイッチ123とを含む。
【0068】
パワースイッチ121のオン操作によって、リモコンECU90は、エンジン船外機OMへの電源供給のための制御を実行する。具体的には、バッテリ130(たとえば12V)とエンジン船外機OMとの間に介装された電源リレー(図示せず)をオンする。エンジン船外機OMに電源が投入されている状態で、スタートスイッチ122が操作されると、リモコンECU90は、エンジンECU40に対して始動指令を与える。それにより、エンジンECU40はスタータモータ35(図4参照)を作動させてエンジン30を始動する。エンジン30の運転中は、発電機38(図4参照)が発生する電力によってバッテリ130が充電される。エンジン運転中にストップスイッチ123が操作されると、リモコンECU90は、エンジンECU40に対してエンジン停止指令を与える。それに応答して、エンジンECU40は、エンジン30を停止するための制御を実行する。リモコンECU90は、エンジン船外機OMに電源が投入されているかどうか、およびエンジン30が運転中かどうかを表すエンジン船外機状態情報を、船内ネットワーク102を介してメインコントローラ101に与える。
【0069】
電動船外機EMの電源を投入/遮断するための別のパワースイッチユニット140が、電動船外機EMに接続されている。パワースイッチユニット140に備えられるパワースイッチ141のオン/オフ操作によって、電動船外機EMに電力を供給するバッテリ145(たとえば48V)と電動船外機EMとの間の回路が開閉され、電動船外機EMの電源を投入/遮断できる。モータコントローラ80は、電動船外機EMに電源が投入されているかどうか、すなわち電動船外機EMが駆動可能な状態かどうかを表す電動船外機状態情報を船内ネットワーク102を介してメインコントローラ101に与える。バッテリ145は、DC/DCコンバータ146(電圧変換器)を介して、エンジン船外機OMの発電機38(図4参照)が発生する電力を受けることができる。
【0070】
船内ネットワーク102には、さらにアプリケーションスイッチパネル150が接続されている。アプリケーションスイッチパネル150は、予め定義した機能の実行を指令するための複数のファンクションスイッチ151を含む。たとえば、ファンクションスイッチ151は、自動操船を指令するためのスイッチを含んでいてもよい。より具体的には、船舶1の方位を維持する自動操舵、船舶1の針路を維持する自動操舵、指定した複数の地点を順に通過させる自動操舵、所定の航走パターン(ジグザグパターン、スパイラルパターンなど)のための自動操舵などのためのスイッチが設けられていてもよい。また、電動船外機EMをチルトアップまたはチルトダウンさせるための機能がいずれかのファンクションスイッチ151に割り当てられてもよい。
【0071】
メインコントローラ101は、複数の制御モードでエンジン船外機OMおよび電動船外機EMの制御を実行する。複数の制御モードは、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの状態によって定義される複数のモードを含む。具体的には、電動モード、エンジンモード、デュアルモードおよびエクステンダモードである。メインコントローラ101は、エンジン船外機状態情報および電動船外機状態情報に基づいて、それらのいずれかの制御モードに従って動作する。
【0072】
電動モードは、電動船外機EMの電源が投入されており、エンジン船外機OMの電源が遮断されている状態の制御モードである。すなわち、電動船外機EMのみに推進力を発生させる制御モードが電動モードである。エンジンモードは、エンジン船外機OMの電源が投入されてエンジン30が運転中であり、電動船外機EMの電源が遮断されている状態の制御モードである。すなわち、エンジン船外機OMのみに推進力を発生させる制御モードがエンジンモードである。デュアルモードおよびエクステンダモードは、電動船外機EMの電源が投入されており、かつエンジン船外機OMのエンジン30が運転中であるときの制御モードである。デュアルモードは、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの両方の推進力を利用する制御モードである。エクステンダモードは、電動船外機EMの推進力のみを利用する制御モードであり、エンジン30はバッテリ145を充電するための発電のために運転される。推進力発生の観点からは、電動モードとエクステンダモードとは同じである。デュアルモードおよびエクステンダモードのいずれかの選択は、使用者の設定または指令に委ねられてもよい。このような設定または指令は、たとえば、ゲージ9に備えられた入力装置10を操作することによって行える。
【0073】
船内ネットワーク102には、ランプ12が接続されている。ランプ12は、メインコントローラ101からの指令に応じて光を発生する。すなわち、メインコントローラ101は、ランプ12を点灯して電動船外機EMが駆動可能な状態であることを報知する報知制御を実行する。ランプ12の点灯は、連続点灯であってもよいし、点滅であってもよい。
【0074】
図8は、ジョイスティックユニット18の構成例を説明するための斜視図である。ジョイスティックユニット18は、前後左右(すなわち、360度の全方位)に傾倒させることができ、かつ軸まわりに回す(ツイストする)ことができるジョイスティック8を備えている。ジョイスティックユニット18は、この例では、さらに、複数の操作ボタン180を備えている。複数の操作ボタン180は、ジョイスティックボタン181および保持モード設定ボタン182~184を含む。
【0075】
ジョイスティックボタン181は、ジョイスティック8を用いる制御モード(操船モード)、すなわち、ジョイスティックモードを選択するときに操船者によって操作される操作子である。
【0076】
保持モード設定ボタン182,183,184は、位置/方位保持系の制御モード(保持モードの例)を設定するために使用者によって操作される操作ボタンである。より具体的には、保持モード設定ボタン182は、船舶1の位置および船首方位(または船尾方位)を保持する定点保持モード(Stay Point)を設定するために操作される。保持モード設定ボタン183は、船舶1の位置を保持し船首方位(または船尾方位)は保持しない位置保持モード(Fish Point)を設定するために操作される。保持モード設定ボタン184は、船首方位(または船尾方位)を保持し位置の保持は行わない方位保持モード(Drift Point)を設定するために操作される。
【0077】
メインコントローラ101の制御モードは、操作系の観点からは、通常モード、ジョイスティックモードおよび保持モードに分類できる。
【0078】
通常モードは、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号に応じて転舵制御を行い、かつリモコンレバー7の操作信号(操作位置信号)に応じて推進力制御を行う制御モードである。この実施形態では、通常モードは、メインコントローラ101のデフォルト制御モードである。転舵制御とは、具体的には、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号またはリモコンECU90が生成する転舵角指令に応じて、ステアリングECU41が転舵アクチュエータ44を駆動させる制御動作をいう。これにより、エンジン船外機OMのボディが左右に転舵して、船体2に対する推進力の方向が左右に変化する。推進力制御とは、具体的には、リモコンECU90がエンジンECU40に与える推進力指令(シフト指令および出力指令)に応じて、エンジンECU40がシフトアクチュエータ39およびスロットルアクチュエータ37を駆動させる制御動作をいう。これにより、エンジン船外機OMのシフト位置が前進位置、後進位置またはニュートラル位置に設定され、かつエンジン出力(具体的にはエンジン回転速度)が変化する。
【0079】
ジョイスティックモードは、ジョイスティックユニット18のジョイスティック8の操作信号に応じて転舵制御および推進力制御を行う制御モードである。
【0080】
ジョイスティックモードでは、エンジン船外機OMが推進力を発生可能なモードにおいては、エンジン船外機OMに対する転舵制御および推進力制御が行われる。すなわち、メインコントローラ101がリモコンECU90に転舵角指令および推進力指令を与え、リモコンECU90がそれらをステアリングECU41およびエンジンECU40に与える。
【0081】
また、ジョイスティックモードでは、電動船外機EMが推進力を発生可能なモードにおいては、電動船外機EMに対する転舵制御および推進力制御が行われる。電動船外機EMに対する転舵制御とは、具体的には、メインコントローラ101が電動船外機のステアリングコントローラ81に与える転舵角指令に応じて、ステアリングコントローラ81が転舵ユニット72を駆動させる制御動作をいう。これにより、電動船外機EMの駆動ユニット58およびアッパハウジング56が左右に回動して、船体2に対する推進力の方向が左右に変化する。電動船外機EMに対する推進力制御とは、具体的には、メインコントローラ101が電動船外機EMのモータコントローラ80に与える推進力指令(シフト指令および出力指令)に応じて、モータコントローラ80が電動モータ61の回転方向および回転速度を制御する動作をいう。これにより、プロペラ60の回転方向が前進方向または後進方向に設定され、かつプロペラ60の回転速度が変化する。
【0082】
図9A図9Bおよび図10は、2種類のジョイスティックモードを説明するための図であり、ジョイスティック8の操作とそれに対応する船体2の挙動とを示す。より具体的には、図9Aおよび図9Bは、2機の推進機(この実施形態ではエンジン船外機OMおよび電動船外機EM)の両方の推進力を利用する第1ジョイスティックモードの動作例を示す。図10は、1機の推進機(この実施形態ではエンジン船外機OMおよび電動船外機EMのいずれか一方)のみの推進力を利用する第2ジョイスティックモードの動作例を示す。
【0083】
メインコントローラ101は、デュアルモード中にジョイスティックボタン181によってジョイスティックモードが指令されると、第1ジョイスティックモードに従って制御処理を実行する。また、メインコントローラ101は、デュアルモード以外(電動モード、エンジンモードおよびエクステンダモードのいずれか)のときに、ジョイスティックボタン181によってジョイスティックモードが指令されると、第2ジョイスティックモードに従って制御処理を実行する。
【0084】
図9Aおよび図9Bに示す第1ジョイスティックモードにおいては、メインコントローラ101は、ジョイスティック8の傾倒方向を進行方向指令と解釈し、ジョイスティック8の傾倒量を当該方向への推進力の大きさの指令と解釈する。また、メインコントローラ101は、ジョイスティック8の軸周りの回動方向(中立位置を基準とした回動方向)を回頭方向指令と解釈し、回動量(中立位置を基準とした回動量)を回頭速度指令と解釈する。そして、メインコントローラ101は、それらの指令を実現するための転舵角指令および推進力指令をリモコンECU90に入力し、かつ電動船外機EMのステアリングコントローラ81およびモータコントローラ80に入力する。リモコンECU90は、転舵角指令および推進力指令をエンジン船外機OMのステアリングECU41およびエンジンECU40にそれぞれ送信する。それにより、エンジン船外機OMは、指令された転舵角へと転舵され、かつ指令された推進力を発生するようにシフト位置およびエンジン回転速度を制御する。また、電動船外機EMは、指令された転舵角へと駆動ユニット58およびアッパハウジング56を転舵させ、かつ指令された推進力を発生するように電動モータ61の回転方向および回転速度を制御する。
【0085】
第1ジョイスティックモードにおいては、ジョイスティック8を回動させることなく傾倒させる操作を行うと、船体2は、回頭することなく、すなわち、方位を保持した状態で、ジョイスティック8の傾倒方向へと移動する。つまり、船体2が並進移動する船体挙動となる。この並進移動の例が、図9Aに表されている。並進移動は、典型的には、2機の推進機の推進力作用線(推進力の方向に沿って引いた直線)を船体2内で交差させ、一方の推進機を前進運転し、他方の推進機を後進運転することによって実現される。それにより、2機の船外機OM,EMが発生する推進力の合力方向へと船体2が並進する。たとえば、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの一方を前進運転し、かつ他方を後進運転する状態で、それらの推進力の大きさを等しくすると、船体2を真横に並進移動させることができる。ただし、図9Aの例では、船首方向への前進または船尾方向への後進に関しては、エンジン船外機OMの推進力のみを用いている。
【0086】
また、第1ジョイスティックモードにおいて、ジョイスティック8を傾倒させることなく回動させる操作(ねじり操作)を行うと、船体2は位置をほとんど変えることなくジョイスティック8の回動方向へと回頭する。すなわち、船体2がその場回頭を行う船体挙動となる。その場回頭の例が図9Bに表されている。その場回頭は、この例では、電動船外機EMの推進力のみを利用している。
【0087】
第1ジョイスティックモードにおいて、ジョイスティック8を傾倒させ、かつ回動する操作を行うと、船体2がジョイスティック8の傾倒方向に移動しながら、ジョイスティック8の回動方向に回頭する船体挙動が得られる。ただし、一般的には、ジョイスティック8を傾倒させて行う並進動作(図9A参照)によって船体2の位置を調節し、ジョイスティック8を回動させて行うその場回頭(図9B参照)によって船体2の方位を調節するように操船するのが容易である。
【0088】
図10に示す第2ジョイスティックモードにおいては、1機の推進機の推進力のみを用いるので、2機の推進機の推進力の合成を利用する並進移動(図9A参照)は不可能である。すなわち、第2ジョイスティックモードは、第1ジョイスティックモードにおいて提供される所定の船体挙動、具体的には並進移動を無効にする制御モードである。その場回頭に関しては、図9Bの例では、電動船外機EMの推進力のみを用いるので、デュアルモードのみならず、電動モードおよびエクステンダモードにおいても利用可能とされてもよい。
【0089】
第2ジョイスティックモードにおいては、メインコントローラ101は、ジョイスティック8の前後方向への傾倒を推進力指令(シフト指令および出力指令)と解釈する。ジョイスティック8の左右方向への傾倒は無視される。つまり、ジョイスティック8の傾倒操作が行われたとき、ジョイスティック8の傾倒方向の前後方向成分のみが有効な入力となり、その前後方向成分が推進力指令と解釈される。より具体的には、前後方向成分が前方に傾倒されたときの値であれば前進シフト指令と解釈され、前後方向成分が後方に傾倒されたときの値であれば後進シフト指令と解釈される。そして、前後方向成分の大きさが推進力の大きさに関する指令(出力指令)であると解釈される。このように解釈された推進力指令がメインコントローラ101からリモコンECU90(エンジンモード中)またはモータコントローラ80(電動モードまたはエクステンダモード中)に入力される。一方、第2ジョイスティックモードにおいて、メインコントローラ101は、ジョイスティック8の軸周りの回動を転舵角指令と解釈する。すなわち、メインコントローラ101は、ジョイスティック8の軸周りの回動方向および回動量に応じた転舵角指令をリモコンECU90(エンジンモード中)またはステアリングコントローラ81(電動モードまたはエクステンダモード中)に入力する。
【0090】
エンジンモードのとき、リモコンECU90は、転舵角指令および推進力指令をエンジンECU40に送信する。それにより、エンジン船外機OMは、転舵角指令に応じた転舵角へと転舵され、かつ指令された推進力を発生するようにシフト位置およびエンジン回転速度が制御される。電動モードまたはエクステンダモードのときは、モータコントローラ80は、推進力指令に従って電動モータ61を駆動し、ステアリングコントローラ81は、転舵角指令に従って転舵モータ74を駆動する。
【0091】
保持モード設定ボタン182,183,184の操作によってそれぞれ設定される、前述の定点保持モード(Stay Point)、位置保持モード(Fish Point)、および方位保持モード(Drift Point)は、保持モードの例である。これらの保持モードにおいては、操船者の手動操作を伴うことなく、エンジン船外機OMおよび/または電動船外機EMの出力および転舵角が制御される。
【0092】
たとえば、定点保持モード(Stay Point)においては、メインコントローラ101は、GPS受信機110が生成する位置データおよび速度データと、方位センサ111が出力する方位データとに基づいて、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの出力および転舵角を制御する。それにより、船体2の位置変動および方位変動が抑制される。定点保持モードは、デュアルモードにおいて利用可能な保持モードである。
【0093】
また、位置保持モード(Fish Point)においては、メインコントローラ101は、GPS受信機110が生成する位置データおよび速度データに基づいて、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの少なくとも一方の出力および転舵角を制御する。それにより、船体2の位置変動が抑制される。
【0094】
さらに、方位保持モード(Drift Point)においては、メインコントローラ101は、方位センサ111が生成する方位データに基づいて、エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの少なくとも一方の出力および転舵角を制御する。それにより、船体2の方位変動が抑制される。
【0095】
位置保持モードおよび方位保持モードは、電動モード、エンジンモード、デュアルモードおよびエクステンダモードのいずれにおいても利用可能な保持モードである。
【0096】
ジョイスティックモード中に、使用者は、所定の保持操作(以下「ジョイスティックホールド操作」という。)を行うことにより、ジョイスティック8の操作状態値(この実施形態では、前後方向の操作状態値)を保持する操作保持モード(以下「ジョイスティックホールドモード」という。)を指令することができる。
【0097】
ジョイスティックホールド操作は、たとえば、ジョイスティック8を前方または後方に傾倒させた状態で、ジョイスティックボタン181を長押しする操作であってもよい。ジョイスティックホールド操作が行われると、メインコントローラ101は、その操作時のジョイスティック8の操作位置の前後方向成分を操作状態値としてメモリ101M(図7参照)に記憶し、その記憶した操作状態値に基づいてエンジン船外機OMおよび/または電動船外機EMの推進力を制御する。
【0098】
メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモード中は、ジョイスティック8のねじり操作に応じて、エンジン船外機OMおよび/または電動船外機EMの転舵制御を実行する。また、メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモード中にジョイスティック8が前後方向に傾倒操作されると、所定値(たとえば10%)ずつ出力(推進力)を増減する出力制御を実行してもよい。この操作によって、推進力の指令が零になると、メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモードを解除して、通常のジョイスティックモードに復帰してもよい。また、メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモード中にジョイスティックボタン181が操作されると、ジョイスティックホールドモードを解除して、通常のジョイスティックモードに復帰してもよい。さらに、メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモード中にリモコンレバー7が操作されると、ジョイスティックホールドモードを解除して通常モードに復帰してもよい。
【0099】
ジョイスティックホールドモード中に、自動操舵機能(オートパイロット)を利用することもできる。すなわち、ジョイスティックホールドモードによって推進力を保持しながら、アプリケーションスイッチパネル150(図7参照)から、方位保持、コース保持、トラックポイントまたはパターンステアの自動操舵機能を指令できる。それにより、メインコントローラ101は、ジョイスティックホールドモード中に自動操舵制御を行う。
【0100】
エンジン船外機OMおよび電動船外機EMの両方の推進力の利用が可能なデュアルモード中にジョイスティックホールドモードに入ると、メインコントローラ101は、電動船外機EMを駆動せず、専らエンジン船外機OMのみの推進力を利用する航走制御を行ってもよい。ジョイスティックホールドモードは、長距離の移動の際に使用者の操作負担を軽減することを目的とする制御モードであるので、高速航走に適するエンジン船外機OMの推進力を用いることが適切だからである。この場合、メインコントローラ101は、電動船外機EMを自動的にチルトアップさせてプロペラ60を水面よりも上に配置し、電動船外機EMが航走抵抗となることを回避する制御を行ってもよい。
【0101】
図11は、メインコントローラ101によるランプ12の制御のための制御テーブルの例を示す。前述のとおり、エンジン船外機OMの電源状態およびエンジン運転状態と、電動船外機EMの電源状態とによって、メインコントローラ101の制御モードは、エンジンモード、デュアルモード(ハイブリッドモード)、電動モードおよびエクステンダモードに分類される。以下、これらを「推進機モード」と総称する場合がある。
【0102】
一方、メインコントローラ101の制御モードは、操作系の観点から、通常モード、ジョイスティックモードおよび保持モードに分類される。以下、これらを「操船モード」と総称する場合がある。
【0103】
通常モードは、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7の操作による操船のための制御モードである。この場合、電動船外機EMはチルトアップされてプロペラ60が水面よりも上に配置され、航走抵抗となることを回避することが好ましい。通常モードでは、典型的には、メインコントローラ101は、電動船外機EMを停止状態に保持する。したがって、この実施形態では、通常モードのときには、メインコントローラ101は、ランプ12を消灯状態に制御する。通常モードは、電動船外機EMの駆動が無効となる電動推進機無効モードの一例であり、メインコントローラ101は、ランプ12の作動(点灯)を停止する報知停止制御を実行する。
【0104】
ジョイスティックモードは、操作者のジョイスティック8の操作による操船のための制御モードである。前述のとおり、通常のジョイスティックモード(図9A図9Bおよび図10参照)のほか、ジョイスティックホールドモードがあり、さらにジョイスティックホールドモードと自動操舵(オートパイロット)とを併用したモードがある。通常のジョイスティックモードは、ジョイスティック8の操作に応当する操作応答モードの一例である。ジョイスティックホールドモードは、操作保持モードの一例である。オートパイロットは、自動モードの一例であり、したがって、ジョイスティックホールドモードと自動操舵(オートパイロット)とを併用したモードは、自動モードの一例であり得る。
【0105】
エンジンモード中のジョイスティックモードは、エンジン船外機OMのみが駆動され、電動船外機EMは駆動されない電動推進機無効モードである。したがって、メインコントローラ101は、ランプ12を作動(点灯)させず、消灯状態に制御する(報知停止制御)。
【0106】
デュアルモード中のジョイスティックモードでは、ジョイスティック8の操作によって並進および/または回頭する通常のジョイスティックモードは、電動船外機EMの推進力が利用される電動推進機有効モードである。そこで、メインコントローラ101は、ランプ12を作動(点灯)させる報知制御を実行する。一方、ジョイスティックホールドモード中(自動操舵を併用する場合を含む)は、前述のとおり、メインコントローラ101は、専らエンジン船外機OMの推進力を利用する航走制御を行うので、電動船外機EMが停止状態に保持される電動推進機無効モードである。そして、典型的には、電動船外機EMはチルトアップされて、プロペラ60は水面よりも上に配置されている。そこで、メインコントローラ101は、ランプ12を作動(点灯)させず、消灯状態に制御する(報知停止制御)。
【0107】
電動モードおよびエクステンダモード中のジョイスティックモードは、エンジン船外機OMは推進力発生のために駆動されず、専ら電動船外機EMが駆動されて推進力を発生させる電動推進機有効モードである。そこで、メインコントローラ101は、ランプ12を作動(点灯)させる報知制御を実行する。
【0108】
保持モード(Set Point)には、前述のとおり、位置および方位を保持するモード(Stay Point)、位置のみを保持するモード(Fish Point)、方位のみを保持するモード(Drift Point)がある。これらは自動モードの一例である。メインコントローラ101は、保持モード中は、エンジンモード、デュアルモード、電動モードおよびエクステンダモードのいずれにおいても、ランプ12を作動(点灯)させて報知制御を実行する。デュアルモード、電動モードおよびエクステンダモードにおける保持モードは、電動船外機EMの駆動が有効となる電動推進機有効モードである。
【0109】
エンジンモード中は、典型的には、電動船外機EMはチルトアップされてプロペラ60が水面よりも上に配置される。エンジンモードは、電動船外機EMが無効となる電動推進機無効モードであり、ランプ12を用いる報知は無効とされる。ただし、エンジンモード中の保持モードは、電動船外機EMの駆動が無効となる電動推進機無効モードであるが、この実施形態では、報知制御が実行される。もっとも、エンジンモードにおいては、エンジン30が運転中であるので、エンジン船外機OMのプロペラ32が駆動し得る状態であることは、エンジン30の運転音および振動によって周囲に伝わる。したがって、エンジンモード中の保持モードにおいては、メインコントローラ101は、ランプ12を作動(点灯)させず、消灯状態に制御してもよい(報知停止制御)。
【0110】
ジョイスティックモード中のランプ12の点灯は、連続点灯であってもよいし、点滅であってもよい。同様に、保持モード中のランプの点灯も、連続点灯であってもよいし、点滅であってもよい。たとえば、ジョイスティックモード中にはランプを連続点灯し、保持モード中にはランプを点滅するようにしてもよい。保持モード中には、電動船外機EMは、断続的に駆動されるので、点滅状態とすることによって、電動船外機EMの運転状態を周囲に適切に伝達できる。
【0111】
図11の制御テーブルを別の観点で見ると、メインコントローラ101は、電動船外機EMがチルトダウンされてプロペラ60が水中にあるときに、ランプ12を点灯させる報知制御を有効としている。また、メインコントローラ101は、電動船外機EMがチルトアップされてプロペラ60が水面よりも上にあるときには、ランプ12を消灯状態とし、報知制御を無効としている。ただし、エンジンモード中は、例外的に、メインコントローラ101は、保持モード中であることを報知するために、電動船外機EMのプロペラ60が水面よりも上にあっても、ランプ12を点灯させてもよい。
【0112】
図12は、ランプ12の作動に関するメインコントローラ101の制御例を説明するためのフローチャートである。メインコントローラ101は、現在の制御モードを調べる。すなわち、推進機モード(エンジンモード、デュアルモード、電動モード、エクステンダモード)および操船モード(通常モード、ジョイスティックモード、保持モード)を調べる(ステップS1,S2)。それらに基づき、メインコントローラは、図11の制御テーブルに従い、報知制御または報知停止制御を実行し、ランプ12を点灯または消灯する(ステップS3)。
【0113】
以上のように、この実施形態によれば、メインコントローラ101の制御モードが電動推進機有効モードのときに、メインコントローラ101は、ランプ12を点灯させることにより、電動船外機EMが駆動可能な状態であることを周囲に報知する。それにより、電動船外機EMが駆動されている状態だけでなく、駆動可能な待機状態も、ランプ12によって周囲(とくに後方の別の船舶の操船者)から認識することができる。ランプ12は、船体2の喫水線11よりも上に配置されているので、ランプ12が発する光信号は周囲から認識されやすく、したがって、効果的な報知を行える。とくに、ランプ12は、船体2の後方に向けて光を発生するので、電動船外機EMが配置される船尾3の方向に向けて光が発生される。それにより、電動船外機EMの周囲(とくに後方の別の船舶の操船者)に対して適切な報知を行える。
【0114】
一方、メインコントローラ101は、エンジン船外機OMによる推進力の発生が有効であっても、電動船外機EMの駆動が無効となる電動推進機無効モードのときには、ランプ12を点灯させない。それにより、無用な報知を行わず、必要時にランプ12を点灯させて報知を行うことで、効果的な報知を行うことができる。
【0115】
また、前述のとおり、メインコントローラ101は、電動船外機EMのプロペラ60が水面よりも上にあるときにはランプ12を点灯させず、プロペラ60が水中にあるときにランプ12による報知制御が有効になる。それにより、無用な報知を行わず、必要時にランプ12を点灯させることができるので、効果的な報知を行うことができる。
【0116】
また、この実施形態では、ジョイスティック8の操作に応答して電動船外機EMが駆動され得るジョイスティックモードにおいても、メインコントローラ101は、ランプ12を点灯させる。それにより、周囲に対して適切な報知を行うことができる。また、保持モード等の自動モード中にもメインコントローラ101はランプ12を点灯(たとえば点滅)させるので、周囲に対する適切な報知を行うことができる。
【0117】
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明はさらに他の形態で実施することができる。
【0118】
たとえは、前述の実施形態では、報知装置の一例としてのランプ12が船体2に取り付けられているが、同様のランプを電動船外機EMに取り付けてもよい。取付位置は、船体2の喫水線11よりも上とすることが好ましい。
【0119】
また、前述の実施形態では、ランプ12が発生する光信号を報知信号としているが、音信号を発生する報知装置を、ランプ12の代わりに、またはランプ12とともに、用いてもよい。
【0120】
また、主推進機はエンジンで駆動されるエンジン推進機である必要はなく、比較的出力の大きな電動推進機を主推進機としてもよい。同様に、補助推進機は電動推進機である必要はなく、比較的出力の小さなエンジン推進機を補助推進機としてもよい。また、2機以上の主推進機が備えられてもよく、同様に、2機以上の補助推進機が備えられてもよい。さらに、船体に取り付けられる推進機の数は一つであってもよい。
【0121】
また、電動推進機の取り付け位置は、船尾に限らず、たとえば、トローリングモータ等の電動推進機を船首等の船体の他の位置に取り付けてもよい。
【0122】
また、前述の実施形態では、船外機の形態の推進機について説明したが、推進機の形態は、船内機、船内外機(スターンドライブ)、ウォータジェット等の他の形態であってもよい。
【0123】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1:船舶、2:船体、3:船尾、8:ジョイスティック、11:喫水線、12:ランプ、18:ジョイスティックユニット、30:エンジン、60:プロペラ、61:電動モータ、69:チルトユニット、70:チルトシリンダ、100:船舶推進システム、101:メインコントローラ、101M:メモリ、120:パワースイッチユニット、140:パワースイッチユニット、150:アプリケーションスイッチパネル、181:ジョイスティックボタン、182:保持モード設定ボタン、183:保持モード設定ボタン、184:保持モード設定ボタン、EM:電動船外機、OM:エンジン船外機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12