(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060165
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20240424BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167332
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 祥子
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA15
2H087NA14
2H087PA12
2H087PA16
2H087PA20
2H087PB15
2H087PB16
2H087PB17
2H087PB18
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA36
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087SA44
2H087SA46
2H087SA49
2H087SA52
2H087SA56
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SB05
2H087SB06
2H087SB13
2H087SB25
2H087SB26
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB45
(57)【要約】
【課題】広画角及び高変倍比を実現しつつ、小型で良好な光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成され、第4レンズ群G4は、正の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、又は、正の屈折力を有するレンズ1枚及び負の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、広角端から望遠端へのズーミングに際して、各レンズ群の間隔が変化し、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群G4を光軸方向に移動させることで行い、所定の条件式を満足させたズームレンズとする。また当該当該ズームレンズを備えた撮像装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、負の屈折力を有する第5レンズ群とから構成され、
前記第4レンズ群は、正の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、又は、正の屈折力を有するレンズ1枚及び負の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、
広角端から望遠端へのズーミングに際して、各レンズ群の間隔が変化し、
無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングは、前記第4レンズ群を光軸方向に移動させることで行い、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.40 ≦ f4/ft ≦ 1.92 ・・・(1)
但し、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項2】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
1.32 ≦ |(1-β4t2)×β5t2| ≦ 15.00 ・・・(2)
但し、
β4t:望遠端における前記第4レンズ群の横倍率
β5t:望遠端における前記第5レンズ群の横倍率
【請求項3】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
|β4t| ≦ 0.84 ・・・(3)
但し、
β4t:望遠端における前記第4レンズ群の横倍率
【請求項4】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
-8.00 ≦ f5/fw ≦ -0.59 ・・・(4)
但し、
f5:前記第5レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項5】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
0.50 ≦ f5×(1-β5w)/fw ≦ 2.80・・・(5)
但し、
f5 :前記第5レンズ群の焦点距離
β5w:広角端における前記第5レンズ群の横倍率
fw:広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項6】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
1.23 ≦ β5w ≦ 2.00 ・・・(6)
但し、
β5w:広角端における前記第5レンズ群の横倍率
【請求項7】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
1.05 ≦ β5t/β5w ≦ 1.90 ・・・(7)
但し、
β5t:望遠端における前記第5レンズ群の横倍率
β5w:広角端における前記第5レンズ群の横倍率
【請求項8】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
-3.30 ≦ f5/ft ≦ -0.30 ・・・(8)
但し、
f5:前記第5レンズ群の焦点距離
【請求項9】
下記の条件式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
-5.00 ≦ f4/f5 ≦ -0.42 ・・・(9)
但し、
f5:前記第5レンズ群の焦点距離
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一眼レフカメラ用の撮像レンズは、ミラー、光学式ファインダー等を配置するため、焦点距離によらず長いフランジバックを確保する必要性があった。しかしながら、近年では、ミラー、光学式ファインダー等を備えない小型のミラーレスカメラの普及が進んでいる。ミラーレスカメラではミラー、光学式ファインダー等を配置する必要がなく、長いフランジバックを必要としない。そのため、小型の撮像装置にあわせて、撮像レンズもバックフォーカスが短く、小型であることが強く求められており、広画角のレンズにおいてもその例外ではない。
【0003】
広画角で小型化が容易なズームレンズとして、最も物体側に負の屈折力のレンズ群が配置されるネガティブリード型のズームレンズが知られている。
【0004】
このようなズームレンズとして、例えば、特許文献1には、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成されるズームレンズが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成されるズームレンズ、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群から構成されるズームレンズと、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成されるズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-056963号公報
【特許文献2】特開2020-190636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ネガティブリード型のズームレンズは、物体側に負の屈折力、像側に正の屈折力を配置する非対称の屈折力配置となるため、諸収差の補正が難しく、ズーム全領域で収差を良好に補正することが難しい。そのため、光学性能を維持しつつ、高変倍比を実現することが困難である。
【0008】
また、変倍比を維持しつつ全長の短縮化を図るには、各レンズ群に配置する屈折力を強めて、各レンズ群の移動量を減らすことが有効である。しかしながら、各レンズ群に配置する屈折力を強めると収差発生量が多くなりやすく、ズーミングに伴う収差変動も大きくなりやすい。従って、小型化を図りつつ高変倍比を実現するには、各レンズ群に対して適切に屈折力を配置することが重要になる。
【0009】
さらに、フォーカス群が大型であると、フォーカス駆動機構も大型になり、鏡筒部分を含むレンズユニット全体の小型化が難しくなる。フォーカス群に配置する屈折力が大きくなると、フォーカス群における収差の発生量が多くなりやすく、フォーカシングの際の収差変動が大きくなりやすい。一方、フォーカス群に配置する屈折力を弱めるとフォーカス群の移動量を大きくする必要が生じ、光学全長が長くなりやすい。これらのことから、レンズユニット全体の小型化を図るにはフォーカス群に適切なレンズ群を選定し、且つ、フォーカス群に適切な屈折力を設定することが必要になる。このためレンズユニット全体の小型化を図るにはフォーカス群の選定と、適切な屈折力配置が重要である。
【0010】
これらの点に関して、上記特許文献1に開示のズームレンズでは、最も像側が正の屈折力を有するレンズ群であり屈折力配置の非対称性が強まりやすくなるため、諸収差の補正がより難しく、ズーム全領域で収差を良好に補正することが難しい。また、最も像側が正の屈折力を有するレンズ群である場合、光学全長を短縮する上で不利な構成である。そのため、光学性能を維持しつつ、高変倍比を実現することも難しい。これらのことから、特許文献1に開示のズームレンズの変倍比は2.02から2.35に留まり、小型化も十分ではない。
【0011】
また、特許文献1に開示のズームレンズでは、3枚のレンズから構成された第2レンズ群をフォーカス群としている。当該第2レンズ群は比較的大型であることから、レンズユニット全体も大型化しやすい構成となっている。
【0012】
同様に、特許文献2に開示のズームレンズでも最も像側が正の屈折力を有するレンズ群であり、第2レンズ群全体、又はその一部をフォーカス群としている。当該ズームレンズの変倍比は2.06から2.2と低く、やはり小型化の面でも十分ではない。
【0013】
そこで、本件発明の課題は、広画角及び高変倍比を実現しつつ、小型で良好な光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、負の屈折力を有する第5レンズ群とから構成され、前記第4レンズ群は、正の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、又は、正の屈折力を有するレンズ1枚及び負の屈折力を有するレンズ1枚から構成され、広角端から望遠端へのズーミングに際して、各レンズ群の間隔が変化し、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群を光軸方向に移動させることで行い、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
0.40 ≦ f4/ft ≦ 1.92 ・・・(1)
但し、
f4:前記第4レンズ群の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0015】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本件発明によれば広画角及び高変倍比を実現しつつ、小型で良好な光学性能を有するズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点位置における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図4】実施例1のズームレンズの望遠端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図5】実施例1のズームレンズの広角端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図6】実施例1のズームレンズの中間焦点位置における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図7】実施例1のズームレンズの望遠端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図8】実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図9】実施例2のズームレンズの広角端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図10】実施例2のズームレンズの中間焦点位置における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図11】実施例2のズームレンズの望遠端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図12】実施例2のズームレンズの広角端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図13】実施例2のズームレンズの中間焦点位置における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図14】実施例2のズームレンズの望遠端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図15】実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図16】実施例3のズームレンズの広角端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図17】実施例3のズームレンズの中間焦点位置における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図18】実施例3のズームレンズの望遠端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図19】実施例3のズームレンズの広角端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図20】実施例3のズームレンズの中間焦点位置における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図21】実施例3のズームレンズの望遠端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図22】実施例4のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図23】実施例4のズームレンズの広角端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図24】実施例4のズームレンズの中間焦点位置における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図25】実施例4のズームレンズの望遠端における無限遠物体フォーカス時における縦収差図である。
【
図26】実施例4のズームレンズの広角端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図27】実施例4のズームレンズの中間焦点位置における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図28】実施例4のズームレンズの望遠端における有限距離物体フォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))における縦収差図である。
【
図29】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0019】
1.ズームレンズ
1-1.光学構成
当該ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、負の屈折力を有する第5レンズ群とから構成される。
【0020】
当該ズームレンズはネガティブリード型の光学構成を採用し、且つ、光学系全体を対称の屈折力配置としている。そのため、広画角化を図りやすい構成であると共に、非対称の屈折力配置を採用する場合に比して収差補正が容易となる。そのため、ズーム全領域で収差を良好に補正することができ、広画角化と高変倍比とを実現することが可能になる。
【0021】
また、光学全長の短縮化を図るには、第1レンズ群の像側は、物体側から順に正の屈折力、負の屈折力が配置されるテレフォトタイプの屈折力配置にすることが好ましい。当該ズームレンズでは、最も物体側に負の屈折力を有する第1レンズ群を配置し、その像側に、物体側から順に、第2レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群に正の屈折力を配置し、最も像側の第5レンズ群に負の屈折力を配置している。すなわち、第1レンズ群の像側をテレフォトタイプの屈折力配置にしているため、光学全長の短縮化を実現することが可能になる。
【0022】
ズームレンズにおいて、一般にレンズ群の数が多ければ、設計の自由度が高くなり、高変倍比を実現しやすい。しかしながら、その一方、レンズ群の数が多いと光学全長が長くなりやすく、小型化には不利である。当該ズームレンズでは5群構成であるため、高変倍比を実現しつつ、小型化を図ることもできる。
【0023】
各レンズ群はそれぞれ上述した屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、例えば、次のような構成とすることができる。
【0024】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、負の屈折力を有するレンズを1枚以上含んで構成される。収差補正の観点から正の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。さらに、少なくとも2枚の負の屈折力を有するレンズと、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズとから構成することが好ましい。負の屈折力を有するレンズを2枚以上配置することにより、第1レンズ群の負の屈折力を複数のレンズで分担できるようになるため、主に広角端における歪曲収差、非点収差の発生を抑制することができる。また、正の屈折力を有するレンズを配置することにより、第1レンズ群内で色収差や歪曲収差を補正できるため、ズーミング時に第1レンズ群を移動させても色収差や歪曲収差の変動を抑制することができ、ズーム全領域において色収差や歪曲収差を良好に補正することができる。
【0025】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は、正の屈折力を有するレンズを1枚以上含んで構成される。収差補正の観点から負の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。第2レンズ群を、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズと、少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズとから構成すれば、第2レンズ群内で色収差を補正できる。そのため、ズーミング時に第2レンズ群を移動させても色収差の変動を抑制することができ、ズーム全領域において色収差を良好に補正することができる。
【0026】
(3)第3レンズ群
第3レンズ群は、正の屈折力を有するレンズを1枚以上含んで構成される。収差補正の観点から負の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。第3レンズ群を、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズと、少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズとから構成すれば、第3レンズ群内で球面収差や色収差を補正できる。そのため、ズーミング時に第3レンズ群を移動させても球面収差や色収差の変動を抑制することができ、ズーム全領域において球面収差や色収差を良好に補正することができる。
【0027】
(4)第4レンズ群
第4レンズ群は、正の屈折力を有するレンズを1枚以上含んで構成される。収差補正の観点から負の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。ここで、当該ズームレンズにおいて、第4レンズ群を光軸方向に移動させることで、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングを行う。すなわち、第4レンズ群はフォーカス群である。当該第4レンズ群を、正の屈折力を有するレンズ1枚、又は、正の屈折力を有するレンズ1枚と、負の屈折力を有するレンズ1枚とから構成すれば、フォーカス群を小型、軽量にすることができる。フォーカス群を小型、軽量にすることができれば、フォーカス駆動機構も小型にでき、鏡筒部分も含むレンズユニット全体の小型化が可能になる。より一層の小型化を図る上では、フォーカス群である第4レンズ群は正の屈折力を有するレンズ1枚のみから構成し、フォーカス群をより小型、軽量にすることが好ましい。
【0028】
ここで、第4レンズ群で発生する色収差を抑制し、フォーカシングによる色収差の変動を抑制するためには、第4レンズ群において正の屈折力を有するレンズを以下の条件式を満たす材料により構成することが好ましい。
【0029】
νd ≧ 50.0
但し、
νdはd線におけるアッベ数である。
【0030】
第4レンズ群で発生する色収差をより良好に抑制する上で、上記式の下限値は、55.0、60.0、65.0、又はそれ以上であることが好ましい。
【0031】
(5)第5レンズ群
第5レンズ群は、負の屈折力を有するレンズを1枚以上含んで構成される。収差補正の観点から正の屈折力を有するレンズを含むことも好ましい。第5レンズ群を、少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズと、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズとから構成すれば、第5レンズ群内で色収差を補正できる。そのため、ズーミング時に第5レンズ群を移動させても色収差の変動を抑制することができ、ズーム全領域において色収差を良好に補正することができる。
【0032】
但し、本件発明に係るズームレンズは、上記第1レンズ群~第5レンズ群により実質的に構成される。また、各レンズ群を構成するレンズに関し、上述した正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズは、実質的な屈折力を有するレンズを意味する。また、上述したレンズの枚数は、実質的な屈折力を有するレンズの枚数を意味する。すなわち、当該ズームレンズは、上記レンズ群、或いは、上記レンズ群を実質的に構成するレンズ以外に、実質的な屈折力を有さないレンズや、光学フィルターや平行平面板等のレンズ以外の光学要素等を含んでいてもよい。
【0033】
1-2.ズーミング時の動作
次に、当該ズームレンズのズーミング時の動作を説明する。当該ズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、互いに隣接するレンズ群間の間隔が変化する。各レンズ群の間隔が変化する限り、一部のレンズ群を固定群として光軸方向に固定し、他のレンズ群を可動群として光軸方向に移動させてもよい。しかしながら、ズーミング時に当該ズームレンズを構成する全てのレンズ群(第1レンズ群から第5レンズ群)を可動群にすることが好ましい。全てのレンズ群を可動群とすることにより、高変倍比を実現しやすくすると同時に、各焦点距離において収差補正に有利な位置に各レンズ群を配置することができ、ズーム全領域において収差を良好に補正することが可能である。
【0034】
1-3.フォーカシング時の動作
上記のとおり、当該ズームレンズにおいて第4レンズ群はフォーカス群である。第4レンズ群は、最も物体側に配置される第1レンズ群や最も像側に配置される第5レンズ群に比べて軸外光線高が低く、また、第2レンズ群、第3レンズ群の正の屈折力による収斂作用により軸上光線高も高くならないため、レンズ外径が大きくなり難く、フォーカス群を小型、軽量にすることができる。
【0035】
当該ズームレンズにおいて、ズーミングの際に第4レンズ群と共に他のレンズ群もフォーカス群としてもよい。しかしながら、フォーカス駆動機構を増やさず、鏡筒部分を含むレンズユニット全体の小型化を図るためには、フォーカシングは、第4レンズ群のみを光軸方向に移動させることで行うことが好ましい。
【0036】
1-4.開口絞り
当該ズームレンズにおいて、絞りの位置は特に限定されるものではないが、第2レンズ群と第3レンズ群との間に配置されることが好ましい。ここで、絞りは、軸上光束の径を決定するための開口絞りをいう。第2レンズ群と第3レンズ群との間に絞りを配置することで、レンズ径を小さくすることができ、当該ズームレンズの小径化を図ることが容易になる。例えば、第3レンズ群の物体側に絞りを配置し、ズーミングの際に第3レンズ群と共に光軸方向に移動させることも好ましい。
【0037】
1-5.条件式
当該ズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが好ましい。
【0038】
1-5-1.条件式(1)
0.40 ≦ f4/ft ≦ 1.92 ・・・(1)
但し、
f4:第4レンズ群の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0039】
上記条件式(1)は、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離に対する第4レンズ群の焦点距離を規定する式である。条件式(1)を満足させることで、小型化を実現しつつ、フォーカシング、ズーミングに伴う収差変動を抑制することができ、光学性能が良好で、高変倍比のズームレンズを得ることができる。
【0040】
これに対して、条件式(1)の値が下限値を下回ると、第4レンズ群の正の屈折力が強まりすぎ、第4レンズ群中における球面収差や非点収差の発生量が多くなり、フォーカシング、ズーミングに伴う球面収差や非点収差の変動が大きくなるため好ましくない。ズーミングに伴う球面収差や非点収差の変動が大きくなると、高変倍比を実現することが困難になる。
【0041】
一方、条件式(1)の値が上限値を上回ると、第4レンズ群の正の屈折力が弱まりすぎ、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシング時における第4レンズ群の移動量が大きくなるため、光学全長が長くなり、小型化が困難になるため好ましくない。
【0042】
上記効果を得る上で、条件式(1)の下限値は0.45であることがより好ましく、0.50であることがさらに好ましく、0.55であることが一層好ましく、0.60であることがより一層好ましい。また、条件式(1)の上限値は1.80であることがより好ましく、1.70であることがさらに好ましく、1.60であることが一層好ましく、1.50であることがより一層好ましい。なお、これらの好ましい下限値又は上限値を採用する場合、条件式(1)において等号付不等号(≦)を不等号(<)に置換してもよい。他の式についても原則として同様である。
【0043】
1-5-2.条件式(2)
1.32 ≦ |(1-β4t2)×β5t2| ≦ 15.00 ・・・(2)
但し、
β4t:望遠端における第4レンズ群の横倍率
β5t:望遠端における第5レンズ群の横倍率
【0044】
条件式(2)は、フォーカス群である第4レンズ群のピント敏感度を規定する式である。ピント敏感度は、フォーカス群が単位量移動したときの結像面の移動量を表し、条件式(2)を満足させることにより、第4レンズ群のピント敏感度が適正な範囲内となる。
【0045】
これに対して、条件式(2)の値が下限を下回ると、第4レンズ群のピント敏感度が低くなりすぎ、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシング時における第4レンズ群の移動量が大きくなり、光学全長が長くなるため、小型化が困難になり好ましくない。
【0046】
一方、条件式(2)の値が上限を上回ると、第4レンズ群のピント敏感度が高くなりすぎ、第4レンズ群の微小な移動で像位置が大きく変動するようになる。そのため、フォーカシングの際に第4レンズ群の高精度の位置制御が必要となり、好ましくない。
【0047】
上記効果を得る上で、条件式(2)の下限値は、1.40であることがより好ましく、1.50であることがさらに好ましく、1.60であることが一層好ましく、1.70であることがより一層好ましく、1.80であることがさらに一層好ましい。一方、上記条件式(2)の上限値は、14.0であることがより好ましく、13.0であることがさらに好ましく、12.0であることが一層好ましく、11.0であることがより一層好ましい。
【0048】
1-5-3.条件式(3)
|β4t| ≦ 0.84 ・・・(3)
【0049】
上記条件式(3)は、望遠端における第4レンズ群の横倍率の絶対値を規定する式である。条件式(3)を満たす場合、第4レンズ群に入射する軸上光線が光軸と平行に近い状態となる。そのため、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシング時に第4レンズ群を光軸方向に移動させても、第4レンズ群に入射する軸上の光線位置の変動が小さく、フォーカシングの際の球面収差の変動を抑制することができる。
【0050】
これに対して、条件式(3)の値が上限を上回ると、第4レンズ群に入射する軸上光線と光軸とが成す角度が大きくなる。そのため、無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングによって第4レンズ群を移動させると、第4レンズ群に入射する軸上の光線位置が大きく変動することになる。その結果、フォーカシングに伴う球面収差の変動が大きくなるため好ましくない。
【0051】
また、フォーカス群である第4レンズ群のピント敏感度は上記条件式(2)で表される。条件式(3)の値が上限値を上回り、その値が1に近づくと、第4レンズ群のピント敏感度が低くなりやすい。その場合、フォーカシング時における第4レンズ群の移動量が大きくなりやすい。その結果、光学全長が長くなり、小型化が困難になるため好ましくない。
【0052】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は0.65であることがより好ましく、0.60であることがさらに好ましく、0.55であることが一層好ましく、0.50であることがより一層好ましい。
【0053】
1-5-4.条件式(4)
-8.00 ≦ f5/fw ≦ -0.59 ・・・(4)
但し、
f5:第5レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【0054】
上記条件式(4)は、広角端における当該ズームレンズの焦点距離に対する第5レンズ群の焦点距離を規定する式である。条件式(4)を満足させることで、小型化を実現しつつ、収差をより良好に補正することが可能になる。
【0055】
これに対して、条件式(4)の値が下限を下回ると、第5レンズ群の負の屈折力が弱まりすぎ、テレフォトタイプの作用が弱まるため、光学全長が長くなり、小型化が困難になるため好ましくない。また、広角端において第5レンズ群中の歪曲収差、倍率色収差の発生量が少なくなりすぎ、歪曲収差、倍率色収差の補正効果が弱まる。そのため、広角端において、歪曲収差、倍率色収差の補正が難しくなるため好ましくない。
【0056】
一方、条件式(4)の値が上限を上回ると、第5レンズ群の負の屈折力が強まりすぎ、テレフォトタイプとしての作用が強くなりすぎ、バックフォーカスも短くなりやすい。その結果、第5レンズ群の有効光束径が大きくなり、レンズ外径も大きくなるため、小型化を図る上で好ましくない。また、第5レンズ群において非点収差、コマ収差の発生量が多くなり、非点収差、コマ収差を良好に補正することが困難になり好ましくない。
【0057】
上記効果を得る上で、条件式(4)の下限値は-7.00であることがより好ましく、-6.00であることがさらに好ましく、-5.00であることが一層好ましく、-4.00であることがより一層好ましい。一方、上記条件式(4)の上限値は-0.70であることがより好ましく、-0.80であることがさらに好ましく、-1.00であることが一層好ましく、-1.20であることがより一層好ましい。
【0058】
1-5-5.条件式(5)
0.50 ≦ f5×(1-β5w)/fw ≦ 2.80・・・(5)
但し、
β5w:広角端における第5レンズ群の横倍率
【0059】
上記条件式(5)は、広角端における当該ズームレンズの焦点距離に対する広角端におけるバックフォーカスを規定する式である。第5レンズ群の屈折力と横倍率を適切に設定して条件式(5)を満足させることにより、バックフォーカスが適切な範囲内となり、当該ズームレンズの小型化を図ることがより容易になる。
【0060】
これに対して、条件式(5)の値が下限を下回ると、広角端においてバックフォーカスが短くなり、第5レンズ群の有効光束径が大きくなってレンズ外径が大きくなるため、小型化が困難になり好ましくない。
【0061】
一方、条件式(5)の値が上限を上回ると、広角端におけるバックフォーカスが必要以上に長くなり易く、光学全長が長くなる。したがって、この場合も小型化が困難になるため、好ましくない。
【0062】
上記効果を得る上で、条件式(5)の下限値は0.55であることがより好ましく、0.60であることがさらに好ましく、0.65であることが一層好ましく、0.67であることがより一層好ましい。一方、上記条件式(5)の上限値は2.70であることがより好ましく、2.60であることがさらに好ましく、2.50であることが一層好ましく、2.40であることがより一層好ましい。
【0063】
1-5-6.条件式(6)
1.23 ≦ β5w ≦ 2.00 ・・・(6)
但し、
β5w:広角端における第5レンズ群の横倍率
【0064】
条件式(6)は広角端における第5レンズ群の横倍率を規定する式である。条件式(6)を満足させることで、より小型のズームレンズを実現することが容易になる。
【0065】
また、広角端における焦点距離に対する広角端におけるバックフォーカスは上記条件式(5)で表される。条件式(6)の値が下限値を下回り、広角端における第5レンズ群の横倍率が小さくなると、バックフォーカスが短くなりやすく、その結果、第5レンズ群の有効光束径が大きくなってレンズ外径も大きくなり、小型化が困難になるため好ましくない。一方、条件式(6)の値が上限を上回ると、バックフォーカスが必要以上に長くなりやすく、光学全長が長くなるため、小型化が困難になり好ましくない。
【0066】
上記効果を得る上で、条件式(6)の下限値は1.25であることがより好ましく、1.27であることがさらに好ましく、1.30であることが一層好ましい。一方、上記条件式(6)の上限値は1.90であることがより好ましく、1.80であることがさらに好ましく、1.70であることが一層好ましい。
【0067】
1-5-7. 条件式(7)
1.05 ≦ β5t/β5w ≦ 1.90 ・・・(7)
但し、
β5t:望遠端における第5レンズ群の横倍率
【0068】
条件式(7)は、広角端における第5レンズ群の横倍率に対する望遠端における第5レンズ群の横倍率を規定する式である。条件式(7)を満足させることで、第5レンズ群の変倍分担が適切な範囲内になり、高変倍比と小型化をともに実現することができる。
【0069】
これに対して、条件式(7)の値が下限を下回ると、第5レンズ群の変倍分担が小さくなりすぎ、高変倍比を実現するのが困難となるため、好ましくない。一方、条件式(7)の値が上限を上回ると、第5レンズ群の変倍分担が大きくなりすぎ、ズーミングに際して、第5レンズ群の移動量が大きくなり、光学全長が長くなるため、小型化が困難になり好ましくない。
【0070】
上記効果を得る上で条件式(7)の下限値は、1.07であることがより好ましく、1.10であることがさらに好ましく、1.12であることが一層好ましく、1.15であることがより一層好ましい。一方、上記条件式(7)の上限値は、1.80であることがより好ましく、1.70であることがさらに好ましく、1.60であることが一層好ましい。
【0071】
1-5-8.条件式(8)
-3.30 ≦ f5/ft ≦ -0.30 ・・・(8)
【0072】
条件式(8)は、当該ズームレンズの望遠端における焦点距離に対する第5レンズ群の焦点距離を規定する式である。条件式(8)を満足させることで、小型化を実現すると同時に、収差をより良好に補正することができる。
【0073】
これに対して、条件式(8)の値が下限を下回ると、第5レンズ群の負の屈折力が弱まりすぎ、テレフォトタイプの作用が弱まるため、光学全長が長くなるため好ましくない。
【0074】
一方、条件式(8)の値が上限を上回ると、第5レンズ群の負の屈折力が強まりすぎ、テレフォトタイプの作用が強くなりすぎるため、バックフォーカスが短くなる。その結果、第5レンズ群の有効光束径が大きくなり、小型化を図る上で好ましくない。また、第5レンズ群中において非点収差、コマ収差の発生量が多くなり、非点収差、コマ収差を良好に補正することが困難になるため、好ましくない。
【0075】
上記効果を得る上で、条件式(8)の下限値は-3.00であることがより好ましく、-2.80であることがさらに好ましく、-2.50であることが一層好ましく、-2.30であることがより一層好ましい。一方、上記条件式(8)の上限値は、-0.35であることがより好ましく、-0.40であることがさらに好ましく、-0.45であることが一層好ましく、-0.50であることがより一層好ましい。
【0076】
1-5-9.条件式(9)
-5.00 ≦ f4/f5 ≦ -0.42 ・・・(9)
【0077】
条件式(9)は、第5レンズ群の焦点距離に対する第4レンズ群の焦点距離を規定する式である。条件式(9)を満足させることで、第4レンズ群と第5レンズ群の屈折力の比が適切な範囲となり、主として非点収差を良好に補正することができる。
【0078】
これに対して、条件式(9)の値が下限を下回ると、第4レンズ群の正の屈折力に対して、第5レンズ群の負の屈折力が強くなりすぎ、非点収差を良好に補正することが困難になるため、好ましくない。
【0079】
一方、条件式(9)の値が上限を上回ると、第5レンズ群の負の屈折力に対して、第4レンズ群の正の屈折力が強くなりすぎ、非点収差を良好に補正することが困難になるため好ましくない。
【0080】
上記効果を得る上で、条件式(9)の下限値は-4.50であることがより好ましく、-4.00であることがさらに好ましく、-3.50であることが一層好ましく、-3.00であることがより一層好ましい。一方、上記条件式(9)の上限値は、-0.45であることがより好ましく、-0.50であることがさらに好ましく、-0.55であることが一層好ましく、-0.60であることがより一層好ましい。
【0081】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子はズームレンズの像側に設けられることが好ましい。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。
【0082】
上記ズームレンズは、広画角及び高変倍比を実現しつつ、小型で良好な光学性能を有する。また、バックフォーカスが短い。そのため、ミラー、光学式ファインダー等を備えないミラーレス一眼カメラなどに特に好適である。
【0083】
図29は、当該撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。撮像装置1は、撮像装置本体2と、当該撮像装置本体2に対して着脱可能な鏡筒3と、ズームレンズの像側に配置された撮像素子21と、カバーガラス22とを有する。鏡筒3内に上記本件発明に係るズームレンズ、絞り31、ズーミング時及びフォーカシング時にレンズ群を駆動するための駆動機構等が収容される。
【0084】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0085】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ断面図である。
【0086】
実施例1のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成される。開口絞りSTOPは、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3との間に配置される。
【0087】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1は像側へ移動し、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5は物体側へ移動する(図中各レンズ群の下方に示す矢印参照、以下同じ)。無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群G4を物体側方向に移動させることで行う。
【0088】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズから構成される。
【0089】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズから構成される。
【0090】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズから構成される。
【0091】
第4レンズ群G4は、正の屈折力を有するレンズ1枚から構成される。
【0092】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズから構成される。
【0093】
なお、
図1において、「IMG」は像面であり、具体的には、CCDセンサ、CMOSセンサなどの撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、「CG」はカバーガラスである。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0094】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「面データ」、「非球面データ」、「可変間隔」(無限遠物体に合焦時/有限距離物体に合焦時)、「諸元」「群焦点距離」を示す。また、各式に用いる値及び各式の値を実施例4の後にまとめて示す。
【0095】
「面データ」において、「S」は面番号であり、面番号は物体側から像面側への面の順番を示す。「R」は各レンズ面の曲率半径(mm)を示し、「D」は光軸上のレンズ肉厚および空気間隔(mm)を示す。「Nd」及び「νd」はそれぞれd線(λ=587.6nm)の波長における屈折率およびアッべ数を示す。「S」の欄において、面番号の前に表示する「*」はその面が非球面であることを示し、「絞り」はその面が開口絞りSTOPであることを示している。また、「R」の欄において「INF」は「無限大」を意味し、そのレンズ面が平面であることを示す。また、「R」の欄における符号は物体側に凸の場合を正とする。また、「D」の欄において、「可変D(8)」等と示すのは、当該光軸上の間隔が変倍時に変化する可変間隔であることを意味する。
【0096】
「非球面データ」では、各非球面形状を、面頂点を原点とし、光軸に垂直方向の座標をH、Hにおける光軸方向の変位量をX(H)、近軸曲率半径をR、円錐係数をε、4次の非球面係数B,6次の非球面係数C,8次の非球面係数D,10次の非球面係数Eとしたとき、次の式(1)で表したときの各係数の値を示している。
【0097】
【0098】
「可変間隔」では、無限遠物体にフォーカス時における各レンズ群間の可変間隔と、有限距離物体合焦時(但し、撮影倍率が1/40倍とする)の可変間隔を示している。「諸元」には、ズーム比、広角端、中間焦点位置、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離(mm)、FNo、画角(°)を示している。FNo、画角(°)はd線における値である。「群焦点距離」は、当該ズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示している。なお、以下に示す各数値実施例において長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。これらの各表における事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0099】
また、
図2~
図4に広角端、中間焦点位置、望遠端における当該ズームレンズの無限遠合焦時の縦収差図を示す。また、
図5~
図7に広角端、中間焦点位置、望遠端における当該ズームレンズの有限距離物体に合焦時(撮影倍率1/40倍(1:40))の縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図の縦軸は開放Fナンバーとの割合、横軸がデフォーカスであり、FNoはFナンバーを示し、g、d、C、はそれぞれ、g線(λ=435.8nm)、d線(λ=587.6nm)、C線(λ=656.3nm)の波長における球面収差を表す。非点収差図は、縦軸が半画角、横軸がデフォーカスであり、ωは半画角(°)を示し、Sはサジタル方向、Tはタンジェンシャル方向の収差を表す。歪曲収差図は、縦軸が半画角、横軸が%であり、ωは半画角(°)を示す。なお、非点収差図と歪曲収差図はd線における値である。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以下では説明を省略する。
【0100】
[面データ]
S R D Nd νd
1 93.1655 1.200 1.77250 49.63
2 21.4413 5.103
3 49.4447 1.200 1.72916 54.67
4 28.2014 0.250 1.53610 41.21
*5 23.7483 5.423
6 -190.6717 1.130 1.59282 68.62
7 22.4194 5.921 1.71736 29.50
8 132.8071 可変D( 8)
9 46.0133 2.875 1.74077 27.76
10 -120.6478 1.230
11 -45.0465 1.000 1.94594 17.98
12 -107.1159 可変D(12)
(絞り)13 INF 0.500
14 21.4204 5.697 1.45860 90.19
15 -89.9499 5.654
16 33.0978 5.140 1.43700 95.10
17 -24.4911 1.000 1.95375 32.32
18 52.5498 0.250 1.53610 41.21
*19 88.6919 2.339
20 -285.0439 1.862 1.92286 20.88
21 -65.0589 可変D(21)
22 41.9892 4.307 1.53775 74.70
23 -38.6998 可変D(23)
24 -212.3477 2.089 1.94594 17.98
25 -53.2793 0.100
*26 31.1757 1.760 1.85135 40.10
*27 15.0077 4.194
28 -48.2827 7.350 1.43700 95.10
29 -16.0886 1.154 1.77250 49.63
30 -45.9766 可変D(30)
31 INF 2.500 1.51680 64.20
32 INF 1.000
(像面) 33 INF
【0101】
[非球面データ]
ε B C D E
第5面 1.0000 -1.22718E-05 -2.16771E-08 -5.92463E-12 -5.68903E-14
第19面 1.0000 3.40418E-05 3.07984E-08 3.02768E-11 -1.73289E-13
第26面 1.0000 -1.42911E-04 9.87900E-07 -4.97114E-09 1.10995E-11
第27面 1.0000 -1.63582E-04 1.11564E-06 -6.17434E-09 1.28669E-11
【0102】
[可変間隔]
・無限遠物体にフォーカス時
広角端 中間 望遠端
D( 8) 20.992 9.044 1.497
D(12) 18.762 9.555 1.498
D(21) 3.891 5.242 4.066
D(23) 1.992 4.876 12.659
D(30) 11.353 20.912 29.075
【0103】
・有限距離物体にフォーカス時(撮影倍率1/40倍(1:40))
広角端 中間 望遠端
D(21) 3.682 5.021 3.785
D(23) 2.201 5.098 12.939
【0104】
[諸元]
ズーム比 2.77
広角端 中間 望遠端
焦点距離(mm) 17.51 29.14 48.50
FNo 4.12 4.12 4.12
画角(°) 111.0 73.6 46.1
【0105】
[群焦点距離]
群番号 群焦点距離
G1 -20.27
G2 94.77
G3 49.27
G4 38.16
G5 -36.62
実施例2のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成される。開口絞りSTOPは、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3との間に配置される。
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1は一旦像側に移動した後に物体側へ移動し、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5は物体側へ移動する。無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群G4を物体側方向に移動させることで行う。
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズから構成される。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズから構成される。
第5レンズ群G5は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズ、正の屈折力を有するレンズ、負の屈折力を有するレンズから構成される。