(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060190
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20240424BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167394
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 康治
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】組織構成員の組織業務に対する意識を、構成員自身からのサーベイ回答のみに依拠することなく、客観的かつ精度よく把握することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る分析システムは、構成員の業務に対する意識を前記構成員に対して問い合わせた結果を記述した調査結果データを取得し、さらに前記調査結果データとは別に、前記構成員が前記組織において実施した前記業務の物理的特性を計測した結果を記述した測定結果データを取得し、前記調査結果データと前記測定結果データとの間の相関を計算することにより、前記物理的特性が前記構成員の前記業務に対する意識に影響する程度を推定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織における構成員の業務に対する意識を把握することを支援する分析システムであって、
前記構成員の前記業務に対する意識を前記構成員に対して問い合わせた結果を記述した調査結果データを分析する分析部を備え、
前記分析部は、前記調査結果データとは別に、前記構成員が前記組織において実施した前記業務の物理的特性を計測した結果を記述した測定結果データを取得し、
前記分析部は、前記調査結果データと前記測定結果データとの間の相関を計算することにより、前記物理的特性が前記構成員の前記業務に対する意識に影響する程度を推定する
ことを特徴とする分析システム。
【請求項2】
前記測定結果データは、前記構成員が前記業務を実施した時間長を表す業務時間長を、前記物理的特性の計測結果として記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記構成員の前記業務に対する意識と、前記業務時間長の大きさとの間の相関を計算することにより、前記業務時間長が前記構成員の前記業務に対する意識に影響している程度を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項3】
前記測定結果データは、前記構成員が実施した前記業務の性質ごとに前記業務時間長を集計した結果を記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記構成員の前記業務に対する意識と、前記性質ごとの前記業務時間長との間の相関を計算することにより、前記性質ごとの前記業務時間長が前記構成員の前記業務に対する意識に影響している程度を推定する
ことを特徴とする請求項2記載の分析システム。
【請求項4】
前記測定結果データは、前記性質として、テレワーク業務と残業業務それぞれについて前記業務時間長を集計した結果を記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記構成員の前記業務に対する意識と、前記テレワーク業務または前記残業業務ごとの前記業務時間長との間の相関を計算することにより、前記テレワーク業務または前記残業業務ごとの前記業務時間長が前記構成員の前記業務に対する意識に影響している程度を推定する
ことを特徴とする請求項3記載の分析システム。
【請求項5】
前記測定結果データは、前記構成員が前記業務において他人との間でコミュニケーションをとった時間長を表すコミュニケーション時間長を、前記物理的特性の計測結果として記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記構成員の前記業務に対する意識と、前記コミュニケーション時間長の大きさとの間の相関を計算することにより、前記コミュニケーション時間長が前記構成員の前記業務に対する意識に影響している程度を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項6】
前記測定結果データは、前記構成員がコミュニケーションソフトウェアを用いて他人との間でコミュニケーションをとった時間長を、前記コミュニケーション時間長として記述している
ことを特徴とする請求項5記載の分析システム。
【請求項7】
前記調査結果データは、前記構成員の前記業務に対する意識を数値によって記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記数値の平均値を計算し、
前記分析部は、前記調査結果データが記述している前記数値のうち、前記平均値からの乖離が閾値以上大きいものを特定し、
前記分析部は、前記特定した前記数値と前記測定結果データとの間の相関を計算することにより、前記物理的特性が前記構成員の前記業務に対する意識に影響する程度を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項8】
前記調査結果データは、前記構成員の前記業務に対する意識の指標となる調査項目ごとに、前記問い合わせの結果を記述しており、
前記分析部は、前記調査結果データと前記測定結果データとの間の相関を前記調査項目ごとに計算することにより、前記物理的特性が前記構成員の前記業務に対する意識に影響する程度を前記調査項目ごとに推定する
ことを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項9】
前記分析システムはさらに、前記分析部が前記推定を実施した結果を提示する表示部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の分析システム。
【請求項10】
前記分析システムはさらに、前記分析部が前記推定を実施した結果を提示する表示部を備え、
前記表示部は、前記数値のうち前記平均値からの乖離が前記閾値以上であるとき、前記構成員が従事していた前記組織内のプロジェクトまたは前記プロジェクト内の業務を提示する
ことを特徴とする請求項7記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織における構成員の業務に対する意識を把握することを支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化が加速されることにともなう労働人口の減少が現実的な問題となってきている中で、企業・組織は継続的に人的リソースを確保しつつ、確保している人財の活用を促進することにより生産性(競争力)の維持・向上を図っていかなければならないという課題に直面している。また、個人によって、働き方の価値観、エンゲージメント(組織構成員が組織に対して貢献したいという気持ち、業務意欲、などのこと)が高まる因子が異なっている。従来は人と人とのコミュニケーションによりこのような因子を把握してきたが、その精度は必ずしも高くない。これによりエンゲージメントの低下が起こり、最悪のケースでは離職などが発生してしまう可能性がある。
【0003】
下記特許文献1は、『現場や人事が自ら組織を強化していくことを可能とするエンゲージメントシステムを提供すること。』を課題として、『本発明の組織の強化・改善を支援するエンゲージメントシステムは、複数のサーベイ設問に対する回答を集計したサーベイ集計結果を作成するサーベイ回答集計手段と、サーベイ集計結果に応じた少なくとも1つのアクションプランを提案する改善項目提案手段と、アクションプランの選択を受け付けて実施対象アクションプランとして設定するアクションプラン設定手段と、実施対象アクションプランに関する進捗状況の登録を受け付けるアクションプラン進捗管理手段と、を備える。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来のエンゲージメントシステムにおいては、組織構成員に対してサーベイを実施し、その集計結果に基づき改善アクションプランを構築する。このようなサーベイにおいては、構成員自身が入力した回答値に依拠して、構成員の組織業務に対する意識を分析する。しかしサーベイに対する回答は構成員ごとにばらつきがあり、構成員がどのような回答をする傾向にあるのかに依拠した集計結果となる。例えば構成員によっては、評価値を常に低い値で回答する傾向のある者、その反対に高く回答する傾向のある者など、様々な回答が混在するので、各構成員からの回答の集計結果に基づきアクションプランを構築したとしても、必ずしも適切なプランを得ることはできない可能性が考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、組織構成員の組織業務に対する意識を、構成員自身からのサーベイ回答のみに依拠することなく、客観的かつ精度よく把握することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分析システムは、構成員の業務に対する意識を前記構成員に対して問い合わせた結果を記述した調査結果データを取得し、さらに前記調査結果データとは別に、前記構成員が前記組織において実施した前記業務の物理的特性を計測した結果を記述した測定結果データを取得し、前記調査結果データと前記測定結果データとの間の相関を計算することにより、前記物理的特性が前記構成員の前記業務に対する意識に影響する程度を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析システムによれば、組織構成員の組織業務に対する意識を、構成員自身からのサーベイ回答のみに依拠することなく、客観的かつ精度よく把握することができる。本発明のその他の課題、構成、利点、などについては、以下の実施形態を参照することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】月次サーベイデータ131の構成とデータ例を示す。
【
図3】働き方実績データ132の構成とデータ例を示す。
【
図4】月次サーベイデータ131と働き方実績データ132との間の相関を示す図である。
【
図5】分析結果データ133の構成とデータ例を示す。
【
図6】分析部11の動作を説明するフローチャートである。
【
図7】表示部12が分析結果データ133の画面表示イメージを生成した結果を示す画面例である。
【
図8】表示部12が分析結果データ133の画面表示イメージを生成した結果を示す別画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る分析システム1の構成図である。分析システム1は、組織における構成員の業務に対する意識を把握することを支援するシステムである。ここでは組織として企業を想定し、構成員としてその企業の従業員を想定する。分析システム1は、ネットワークを介して、業務システム2およびユーザ端末3と接続されている。
【0011】
業務システム2は、構成員が業務を実施する際に用いる、あるいは構成員が業務を実施する際にそのサポートや業務管理のための機能を提供する、情報システムである。業務システム2は、サーベイシステム21、コラボレーションツール22、勤怠システム23、などによって構成されている。
【0012】
サーベイシステム21は、構成員の業務に対する意識を調査するシステムである。例えばサーベイシステム21は、構成員に対してアンケート形式の問い合わせを提供し、構成員がその問い合わせに対して回答した結果を記録および集計する。集計結果は月次サーベイ結果として分析システム1に対して送信される。
【0013】
コラボレーションツール22は、構成員が互いにコミュニケーションを取る際に用いる機器またはソフトウェアであり、例えば社内IP電話、チャットツール、Web会議システム、などによって構成されている。コラボレーションツール22は、構成員同士がコラボレーションツール22を用いてコミュニケーションを取った時間長を、構成員ごとに記録および集計する。この記録は勤怠システム23を介してまたは直接に、分析システム1に対して送信される。
【0014】
勤怠システム23は、構成員の業務時間を管理する情報システムである。勤怠システム23は、業務時間を構成員ごとに記録するとともに、その業務の物理的特性を併せて記録する。ここでいう物理的特性は、構成員の業務に対する意識の持ち方に対して影響を与える可能性がある業務の特性であり、業務内容とは別の業務の客観的な(すなわち計測可能な)特性のことである。ここでは業務の物理的特性の例として、(a)業務が残業として実施されたか否か、(b)業務がテレワークとして実施されたか否か、を挙げるが、その他特性を記録してもよい。勤怠システム23は、業務時間のうち残業時間とテレワーク時間として実施された時間長を、構成員ごとに記録する。(c)業務において他人との間でコミュニケーションを実施したか否か、についても業務の物理的特性の1つとみなすことができる。したがってコミュニケーション時間も構成員ごとに記録している。
【0015】
分析システム1は、分析部11、表示部12、記憶装置13を備える。分析部11は、サーベイシステム21から構成員ごとの月次サーベイ結果を受け取り、月次サーベイデータ131(調査結果データ)として記憶装置13へ格納する。分析部11は、構成員ごとの業務時間記録を勤怠システム23から受け取り、働き方実績データ132(測定結果データ)として記憶装置13へ格納する。分析部11は、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132を用いて、構成員の業務に対する意識を分析し、その結果を分析結果データ133として記憶装置13へ格納する。表示部12は分析結果データ133を適当な表示形式へ変換して提示する。
【0016】
ユーザ端末3は、業務システム2に対してアクセスしてその機能を利用する(例:サーベイシステム21に対して問い合わせの回答を入力する)。ユーザ端末3は、分析システム1に対してアクセスして分析結果を受け取る。
【0017】
図2は、月次サーベイデータ131の構成とデータ例を示す。サーベイシステム21はサーベイ項目を構成員に対して提示し、構成員はサーベイ項目ごとに回答を入力する。サーベイ項目は、構成員の業務に対する意識についてのものであり、例えば業務意欲の高低に関するものである。構成員は例えば数値選択肢のなかからいずれかを選択することによって、サーベイ項目に対して回答する。
図2のデータ例においては、数値が高いほど、業務意欲が高いことを示唆しているように、サーベイ項目と回答を構成した例を示した。サーベイは例えば月毎に実施することができるが、これに限らない。本実施形態においては便宜上、月毎にサーベイを実施することとし、その結果を月次サーベイデータ131として記録することとした。
【0018】
図3は、働き方実績データ132の構成とデータ例を示す。分析部11は、勤怠システム23を介して、構成員ごとの業務時間記録(構成員が実施した業務の物理的特性を計測した結果)を取得する。分析部11はさらに、コラボレーションツール22から、構成員が実施したコミュニケーション時間長を取得する。分析部11は、これらの時間長を働き方実績データ132として記録する。
【0019】
これらの時間長は、互いに重複している部分がある(例:残業をテレワークとして実施した)。より詳細な分析結果を得たい場合は、このような重複部分と重複しない部分を分けて記録してもよい。本実施形態においては、重複部分を区別することなく記録することとした。したがって各時間長は、重複して計上されている部分を含んでいる。
【0020】
図4は、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132との間の相関を示す図である。ここではある構成員に着目し、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132を対比して示した。月次サーベイに対する各構成員の回答は、構成員ごとに個人差があり、構成員ごとに固有の回答傾向を有することがある。例えば構成員によっては、評価値を常に低い値で回答する傾向のある者、その反対に高く回答する傾向のある者など、様々な回答が混在する。そこで本実施形態においては、構成員の主観に依拠しない(または依拠する程度が小さい)、業務の物理的特性を、回答結果と比較することにより、両者の相関関係を推定することとした。
【0021】
図4のデータ例においては、4月におけるサーベイ項目『職場で周囲とうまくやれている』の回答値が低い(すなわち業務意欲が低いと想定される)。4月はテレワーク時間が他の月よりも多いので、このことがサーベイ結果に対して影響を与えているのではないかと推定される。反対に8月は残り2つのサーベイ項目の回答値が高い(すなわち業務意欲が高いと想定される)。8月はコミュニケーション時間が他の月よりも長いので、このことがサーベイ結果に対して影響を与えているのではないかと推定される。このように、月次サーベイデータ131が記述している構成員の業務に対する意識と、働き方実績データ132が記述している物理的特性との間の相関を分析することにより、業務の物理的特性が構成員の業務意識に対して与える影響を推定することができると考えられる。
【0022】
このような分析は、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132との間の相関を分析することにより実施できる。ただし、業務の物理的特性が業務意識に対して与える影響が大きいとき、月次サーベイデータ131においては、他の月の回答結果とは異なる回答結果が得られていると想定される。同様に働き方実績データ132においては、他の月とは異なる計測結果が得られていると想定される。そこで両データ間の相関を分析する際には、他の月とは大きく異なるデータ値を有する月(以下ではこのデータ値を特異点と呼ぶ場合がある)について特に着目してもよい。
【0023】
具体的には、他の月とは大きく異なるデータ値を有する月については、両データ間の相関度を他の月よりも大きく評価してもよい。各月のデータ値が特異点であるか否かについては、各月のデータ値の平均値からの乖離度(例:平均値に対する割合、偏差値、など)に基づき判定すればよい。
【0024】
図5は、分析結果データ133の構成とデータ例を示す。分析部11は、サーベイ項目ごとに回答値の平均値を計算し、サーベイ項目期間平均として記録する。分析部11は、業務の物理的特性(働き方実績項目)ごとに時間長の平均値を計算し、働き方実績項目期間平均値として記録する。分析部11は、これらの平均値に基づき、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132それぞれにおける特異点を識別することができる。
図5においてはこの特異点を『乖離月』として記述した。
【0025】
分析部11はさらに、月次サーベイデータ131における特異点(データ値が他の月とは大きく異なる月)と働き方実績データ132における特異点が同期している(すなわち両データにおける特異点は同じ月である)場合、それぞれのデータ値を、乖離月実績値として記録する。これにより、特異点における月次サーベイデータ131と働き方実績データ132との間のデータ値の相関を、より明確に識別することができる。
図5のデータ例においては、(a)サーベイ項目『職場で周囲とうまくやれている』が低いとき、テレワーク時間が長いこと、(b)サーベイ項目『仕事のやりがいを感じている』が高いとき、コミュニケーション時間が長いこと、を識別できる。
【0026】
特異点が複数ある場合は、特異点ごとに1つのレコードを作成する。例えば月次サーベイデータ131における特異点が2つある(データ値が他の月とは大きく異なる月が2つある)場合、その月ごとに1つのレコード(1つの行)を作成する。あるいは、月次サーベイデータ131上におけるある特異点について、働き方実績データ132上の特異点が2つあるような場合も考えられる(例:月次サーベイデータ131においては4月が特異点であり、働き方実績データ132上の4月データはテレワーク時間と残業時間がともに特異点である)。この場合は、月次サーベイデータ131における1つの特異点について、働き方実績データ132の2つの特異点に対応する2つのレコードを作成する。
【0027】
図6は、分析部11の動作を説明するフローチャートである。分析部11は、構成員ごとに本フローチャートを実施する。以下
図6の各ステップについて説明する。
【0028】
(
図6:ステップS601~S602)
分析部11は、サーベイシステム21から月次サーベイ結果を所定期間分(例えば1年分)取得し、その期間における回答値の平均値をサーベイ項目ごとに計算する(S601)。分析部11は、勤怠システム23(コミュニケーション時間についてはコラボレーションツール22から取得してもよい)から業務時間記録を所定期間分(月次サーベイと同じ期間)取得し、その期間における業務時間長の平均値を、業務の物理的特性ごとに計算する(S602)。
【0029】
(
図6:ステップS603)
分析部11は、以下のステップをサーベイ項目ごとに実施する。
【0030】
(
図6:ステップS604)
分析部11は、サーベイ回答値がS601における平均値から閾値以上乖離している月があるか否か(すなわち特異点が存在するか否か)を判定する。この閾値はサーベイ項目ごとに適宜定める。存在しない場合はS603のループを次のサーベイ項目へ進める。存在する場合はS605へ進む。
【0031】
(
図6:ステップS605~S606)
分析部11は、S604で特定した乖離月において、業務時間長がS602における平均値から閾値以上乖離している物理的特性が存在しているか否かを判定する。この閾値は物理的特性毎に適宜定める。存在しない場合はS603のループを次のサーベイ項目へ進める。存在する場合はその月における閾値を超えたサーベイ回答値と業務時間長を分析結果データ133の乖離月実績値としてそれぞれ記録する(S606)。
【0032】
図7は、表示部12が分析結果データ133の画面表示イメージを生成した結果を示す画面例である。表示部12は、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132との間の相関を視覚的に把握できるような画面イメージを生成する。例えば
図7に示すように両データをテーブル形式で併記するとともに、特異点(平均値から乖離した月)が両データ間で同期している場合はそのデータ値を強調表示する。ここでは
図5と同じデータ例を用いた。ユーザ端末3は、分析システム1に対してこの画面を送信するようにリクエストし、表示部12はそのリクエストを受け取ると分析結果データ133に基づき
図7の画面を生成して送信する。
【0033】
表示部12は、両データの相関を画面表示するとともに、分析部11による分析結果を文章によって表現した文字列メッセージを表示してもよい。
図7のデータ例においては、この構成員はテレワーク時間が長いとき『職場で周囲とうまくやれている』の回答値が低く、コミュニケーション時間が長いときその他2つのサーベイ項目の回答値が高いので、その旨のメッセージを表示している。
【0034】
図8は、表示部12が分析結果データ133の画面表示イメージを生成した結果を示す別画面例である。
図8においては、サーベイ項目ごとに毎月のサーベイ回答値と業務時間それぞれの変化をグラフによって示した。これにより、特にデータ値が平均から大きく外れた月(乖離月または特異点)における両データ間の相関を、視覚的に把握できる。さらに
図7と同様のメッセージを表示してもよい。
図8においてはサーベイ項目ごとに分けてメッセージを付与した。
【0035】
表示部12はさらに、特異点においてその構成員が従事していた組織内プロジェクトまたはそのプロジェクトにおいてその構成員が従事していた業務について、併せて提示してもよい。構成員が従事していたプロジェクトおよびそのプロジェクトにおいて従事していた業務についての情報は、業務システム2内のプロジェクト管理システム、勤怠システム23、あるいはその他適当なシステム上で管理しておき、分析システム1が適当なタイミングでその情報を取得して表示部12がこれを提示すればよい。
【0036】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態において、コラボレーションツール22の具体例を例示したが、これに限るものではない。構成員とその他の者との間のコミュニケーション時間を計測することができれば、その他任意タイプのデバイス、ソフトウェア、システム、などをコラボレーションツール22として用いることができる。
【0037】
以上の実施形態において、分析部11は、月次サーベイデータ131と働き方実績データ132それぞれにおいて同じ月に発生した特異点の相関を分析することを説明したが、両データの相関は特異点以外のデータ点(例えばデータ全体にわたる相関を求める)について計算してもよい。例えば月次サーベイデータ131における特異点が、その1か月前における働き方の結果によって生じるような場合、働き方実績データ132上の特異点は月次サーベイデータ131上の特異点の1か月前において生じる。このような場合における両データ間の相関を得るために、ある期間(例:1年間)にわたる両データ全体の相関を求めてもよい。
【0038】
以上の実施形態において、働き方実績データ132が記述する業務の物理的特性の例として、残業時間、テレワーク時間、コミュニケーション時間を例示したが、その他の物理的特性について働き方実績データ132として記録してもよい。すなわち、構成員の業務に対する意識へ影響がある可能性を有し、かつ客観的に計測可能な特性であれば、その他の物理的特性であってもよい。
【0039】
以上の実施形態において、分析システム1が分析する組織は企業でなくともよく、組織業務は営利業務でなくともよい。少なくともその組織において組織運営に関して継続して実施される行為であれば、これをその組織における業務とみなし、組織業務に対する組織構成員の意識を分析することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:分析システム
11:分析部
12:表示部
131:月次サーベイデータ
132:働き方実績データ
133:分析結果データ
2:業務システム