IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンロードの特許一覧

<>
  • 特開-ソックフィルタ 図1
  • 特開-ソックフィルタ 図2
  • 特開-ソックフィルタ 図3
  • 特開-ソックフィルタ 図4
  • 特開-ソックフィルタ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060197
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ソックフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B01D39/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167404
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】592124137
【氏名又は名称】株式会社サンロード
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝敏
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BD01
4D019CB06
4D019DA01
(57)【要約】
【課題】オイルミスト、有機溶剤ミスト、その他ミストや固体粒子などを含む汚れた空気を高効率で長期間に亘って清浄化するソックフィルタを提供する。
【解決手段】平均繊維径が300nm以下で、かつ目付が3g/m以下のナノファイバー不織布と、該ナノファイバー不織布よりも平均繊維径が大きい支持用不織布とを積層した二層構造の複合不織布を少なくとも一組備えると共に、前記複合不織布の外層に強度が10N/5cm以上の補強用不織布を積層して少なくとも三層構造の不織布フィルタを構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が300nm以下で、かつ目付が3g/m以下のナノファイバー不織布と、該ナノファイバー不織布よりも平均繊維径が大きい支持用不織布とを積層した二層構造の複合不織布を少なくとも一組備えると共に、前記複合不織布の外層に強度が10N/5cm以上の補強用不織布を積層して少なくとも三層構造の不織布フィルタを構成したことを特徴とするソックフィルタ。
【請求項2】
複合不織布は、支持用不織布を内層、ナノファイバー不織布を外層として積層してなる請求項1記載のソックフィルタ。
【請求項3】
不織布フィルタは、複合不織布と補強用不織布を一体化してなる請求項1記載のソックフィルタ。
【請求項4】
ナノファイバー不織布、支持用不織布、及び補強用不織布のうち少なくとも一の不織布は、エレクトレット加工を施してなる請求項1記載のソックフィルタ。
【請求項5】
不織布フィルタは、少なくとも三層構造において、0.1~0.3μm粒子の捕集効率が80%以上で、かつ圧力損失が400Pa以下である請求項1記載のソックフィルタ。
【請求項6】
不織布フィルタを円筒状として長手方向に沿って外接合部と内接合部を設けた請求項1記載のソックフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内などで空気中に浮遊する固体粒子のみでなく、オイルミスト、有機溶剤ミスト、その他ミスト(液状粒子)などを含む汚れた空気を長期に亘り、緩やかな排出風速で高度に清浄化するソックフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、作業現場を清浄化するソックフィルタは、該フィルタから排出する空気の流れが緩やかで作業者への負荷が少なく、快適であることから注目されている。作業現場の空気中には、作業者や製品に有害となるミスト(液体粒子)や固体粒子などが浮遊している。
【0003】
これを取り除くため従来、特許文献1に示すような捕集効率の高いエレクトレット化された平均直径0.01デニール(1.2μm)、目付30g/mのポリプロピレン・メルトブロー不織布と平均直径5デニール(28μm)、目付20g/mポリプロピレン・スパンボンド不織布を熱エンボスで接合したソックフィルタが用いられている。その捕集性能は機械的捕集効率だけでなく、エレクレットによる静電気捕集効果を加えて、0.3~0.5μm粒子を98%以上で高度に捕集すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-272316号公報
【特許文献2】特開2013-34941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オイルミスト含む空気をフィルタリングすると、特許文献2に記載されているように、液体で流動性のあるオイルミストはエレクトレット繊維表面を被覆して、該繊維がもつ電荷を中和し、静電気効果を消失させて捕集性能を低下させる。このため特許文献2では、繊維表面をフッ素系樹脂のような撥油性を示すもので被覆して、エレクトレット効果の減衰を防ぐ方法が考案されている。しかしながら、その効果も完全ではなく、その静電気効果を徐々に消失させ、やはり長期間使用すると、捕集効率を低下させるという欠点があった。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、オイルミスト、有機溶剤ミスト、その他ミストや固体粒子などを含む汚れた空気を高効率で長期間に亘って清浄化するソックフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明では、平均繊維径が300nm以下で、かつ目付が3g/m以下のナノファイバー不織布と、該ナノファイバー不織布よりも平均繊維径が大きい支持用不織布とを積層した二層構造の複合不織布を少なくとも一組備えると共に、前記複合不織布の外層に強度が10N/5cm以上の補強用不織布を積層して少なくとも三層構造の不織布フィルタを構成するという手段を用いた。
【0008】
微細なオイルミストのような液状粒子や固体粒子などを捕集するには、平均繊維径300nm以下のナノファイバーで構成された目付3g/m以下の不織布層が必要である。また、汚れた空気を取り込む上流側(内層側)に太い繊維径の支持用不織布を配置して大き目のミスト(液状粒子)や固体粒子などをまず捕集して、さらに微細なミストや固体粒子などを下流側(外層側)のナノファイバー不織布で捕集することが有効である。さらに、二組以上の複合不織布を積層したうえで最外層に補強用不織布を積層した五層以上の不織布フィルタを採用すれば、静電気効果でなく、機械的捕集原理で高捕集効率を維持することができる。これに対して積層数が少ない場合は、ナノファイバー不織布、支持用不織布、及び補強用不織布のうち少なくとも一の不織布にエレクトレット加工を施すことで機械的捕集効率を補うことができる。その上ナノファイバーのスリップフロー効果で圧力損失を低く長期間維持することができる。具体的には、不織布フィルタは、少なくとも三層構造において、0.1~0.3μm粒子の捕集効率が80%以上で、かつ圧力損失が400Pa以下とすることが好ましい。補強用不織布は、フィルタリング時の振動とか風圧などに複合不織布が安定した性能を発揮するため最下流(最外層)に配置して補助する。また、補強用不織布は外部からの損傷や光などの影響を防ぐためにも効果を発揮する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気中に浮遊する固体粒子のみでなく、オイルミスト、有機溶剤ミスト、その他ミストなどを高効率で、かつ低圧力損失で長期に亘り捕集し、清浄空気を微風速で作業場内に供給することができる。このため、作業者にとって快適な作業空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るソックフィルタの側面図
図2】同、三層構造のソックフィルタの一部断面図
図3】同、五層構造のソックフィルタの一部断面図
図4】同、七層構造のソックフィルタの一部断面図
図5】同、ソックフィルタの接合部の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1はクリーンルーム内で使用する本発明の耐油性ソックフィルタ1の側面図である。図1に示すように、該ソックフィルタ1は送風機9を設置した送風機ボックス10に付設したソックフィルタ取り付け部11に、該ソックフィルタ1の開口した補強折り返し部7をセットして締め付けバンド12で装着する。そして、該ソックフィルタ1に取り付けた吊り下げ部品(鳩目など)13を吊り上げ部品14で吊り下げて、支持体15に固定して運転する。
【0012】
図2は、ソックフィルタ1に使用する不織布フィルタ6の断面図で、支持用不織布2にナノファイバー不織布3を接合した複合不織布4に、補強用不織布5を重ね合わせた三層構造となっている。これらの複合構造はフィルタリング時の圧力損失の上昇を防止することから好ましい。補強用不織布5の重ね合わせは複合不織布4と一体化したものでも本発明を妨げない。
【0013】
また、他の不織布フィルタ6は図3に示すように、支持用不織布2にナノファイバー不織布3を接合した複合不織布4に、さらに同様の構成の複合不織布4を重ね、その上に補強用不織布5を重ね合わせた五層構造となっている。
【0014】
さらに図4は、高捕集効率で低圧力損失を達成すための不織布フィルタ6の構造である。目付5g/m以上の支持用不織布2に、目付1.5g/m以下のナノファイバー不織布3を接合して複合不織布4を三組重ねて、その上に補強用不織布5を重ねた七層構造としたものである。これによって高捕集効率99.9%以上が達成できるものである。
【0015】
支持用不織布2の平均繊維径は、ナノファイバー不織布3の平均繊維径より太く、0.5μm以上が好ましく、またその目付は5g/m以上が好ましい。そして、ナノファイバー不織布3の平均繊維径は好ましくは300nm以下で、目付は3g/m以下が好ましく、さらには1.5g/m以下がより好ましい。補強用不織布5の引張強度はJIS L1913における一般不織布の試験方法で、たてよこが10N/5cm以上が好ましく、より好ましくは20N/cm以上のものを採用する。なお、平均繊維径の測定は、100カ所の繊維径を測定して平均化したものである。
【0016】
ナノファイバー不織布3と支持用不織布2の繊維径や目付の選択は、捕集性能の目的要求により決定して接合して複合不織布4を作成する。また、高性能化を求めた複合不織布4の重ね合わせも同一のものでなくてもよく、異なる構成の複合不織布4を重ね合わせてもよい。
【0017】
本発明のソックフィルタによれば、汚れた空気を平均繊維径の太い支持用不織布2でまず清浄化して、大きいミストや固体粒子などをまず捕集(プレフィルタリング)する。次いで、それを通過したさらに微細なミストや固体粒子などを極細繊維径のナノファイバー不織布3で捕集する。こうした順序で捕集することにより、長期間に亘って圧力損失の上昇を防ぐので、ソックフィルタ1として好適である。
【0018】
ナノファイバー不織布は、繊維径が300nm以下とするが、細くなるほどスリップフロー効果で圧力損失を低下させる傾向があり好ましい。ナノフィアバー不織布3はエレクトロスピンニング法といわれる電荷紡糸法などで、支持用不織布2上に形成して一体化して複合不織布4を製造する。一体化するために押し圧ロール加工を行ってもよい。
【0019】
支持用不織布2の素材は、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、レーヨン、フッ素樹脂、ポリビニールアルコール、ポリ乳酸、バイオポリマー素材などを使用する。これら繊維の接着は熱接着、超音波接着、樹脂接着などが用いられる。
【0020】
ナノファイバー不織布3の素材は、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリ乳酸、バイオポリマーなどを使用する。電荷紡糸法ではこの素材を溶媒で溶解して極細繊維化して支持用不織布2に接合して形成する。
【0021】
補強用不織布5は、複合不織布4のフィルタリング時の振動や圧力を補強すると共に、外部からの刺激で損傷を防ぐものであることが好ましい。このために補強用不織布5の強度は10N/cm以上が好ましい。素材はポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン繊維、ポリ乳酸、その他バイオポリマー繊維などが使用できる。さらに、殺虫のため使用される紫外線灯を使用する作業場では、ポリエステル不織布やアクリル不織布などを使用することも可能である。
【0022】
不織布フィルタ6の性能は、測定風速5.3cm/秒、0.1~0.3μm粒子の捕集効率80%以上、圧力損失400Pa以下が実用的で好ましい。ただし、使用する不織布フィルタ6は、目的に応じて捕集効率と圧力損失を選択してソックフィルタ1に用いる。
【0023】
円筒状のソックフィルタ1の長手方向に設けた外接合部16は、図5に示すようにオーバーロック方式で縫製し、外接合部16と平行する長手方向の内接合部17は本縫いで縫製し、その内外接合間に吊り下げ部品(鳩目など)13を設ける。ソックフィルタ1の先端部8は、空気による応力集中を防ぐため円形状に接合することが好ましい。接合方法としては、縫製としてオーバーロック、偏平縫い、本縫い方式などや超音波接着などを用いる。さらに、漏れ防止に縫製部に目止め剤を用いることが好ましい。また、ソックフィルタ1の円筒直径が400mm以上には、外接合部をもう1カ所増やす場合もある。
【0024】
ソックフィルタ1の開口側にある補強折り返し部7は、運転時の送付機9による振動や気流による振動などによりソックフィルタ取り付け部11の端との接触摩擦で、ソックフィルタ1が損傷することを防ぐために有用である。このため、不織布フィルタ6を折り返して2重にして補強している。ソックフィルタ1の形状は、円筒状以外に封筒状、半円状などを使用目的に従って選択する。
【0025】
なお、作業現場によっては汚れた空気に含まれる粒子が、オイルミストは少なく固体粒子が多い場合もある。この場合には、固体粒子の捕集に有効なエレクトレット化不織布が好ましい。このため、支持用不織布2、ナノファイバー不織布3、補強用不織布5の少なくとも1つがエレクトレット加工されていることが好ましい。この素材にはエレクトレット化が可能なポリプロピレン、フッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリエステルなどを用いることが好ましい。製法には、コロナ荷電法や流動帯電法などを用いる。これによって、汚れた空気の成分に依存しない優れた不織布フィルタ6ができ、好ましいソックフィルタ1となる。
【実施例0026】
平均繊維径100nm、目付0.3g/m2のポリフッ化ビニリデン・ナノファイバー不織布3を、平均繊維径1.7μm、目付17g/mのポリプロピレン・メルトブロー不織布からなる支持用不織布2に接合して複合不織布4を作成した。この複合不織布4に、平均繊維径18μm、目付20g/mのポリプロピレン・スパンボンド不織布からなる補強用不織布5を重ね合わせて三層構造の不織布フィルタ6とした。該フィルタ6の初期性能は、0.3μm粒子を用いた測定風速5.3cm/秒での捕集効率は96.3%、圧力損失38Paであった。補強用不織布5の引張強度はたて28N/5cm、よこ24N/5cmであった。
【0027】
該フィルタ6を用いて、内層(上流側)に支持用不織布2、中層にナノファイバー不織布3、外層(下流側)に補強用不織布5を配置したソックフィルタ1を作成した。その形状は、先端部8が円形状からなる内径300mm、長さ280cmの円筒状ソックフィルタ1である。これを長さ3m、幅2m、高さ2.5mの直方体クリーンブースの中に設置した。ソックフィルタルタ1の長さ方向に、50cm毎に吊り下げ部品(鳩目)13を設けて吊り上げ部品14で吊り下げて支持体15に固定した。また、このソックフィルタ1の補強した折り返し部7をもつ開口部を送風機ボックス10の取り付け部11に締め付けバンド12で取り付けた。
【0028】
ソックフィルタ1の円筒状接合は、外接合部16をインターロック縫製で、内接合部17を本縫いで接合し、さらに円形状先端部8はインターロック縫製で接合した。
【0029】
このソックフィルタ1をクリーンブース内に取り付けて清浄化テストを行った。送風機の空気取り込み口付近で、アトマイザーにより低濃度のオイルミストを一定量発生させて空気と混合し、送風機に供給した。この運転を1日4時間で行い、クリーンブース内の空気清浄度の経日変化をパーティクルカウンターで測定した。その結果、クリーンブース内の清浄度はクリーンルームISO規格14644-1の清浄度クラス7を1ケ月後も維持していた。また、ソックフィルタ1の圧力損失の変化も殆ど認められなかった。その上、ソックフィルタ1のフィルタ面からの排出する空気速度は5cm/秒という低風速で、人体への負荷を感じることなく快適であった。
【実施例0030】
平均繊維径70nm、目付0.6g/mのポリフッ化ビニリデン・ナノファイバー不織布を、平均繊維径15μm、目付18g/mのポリエステル不織布からなる支持用不織布2に接合して複合不織布4を作成した。この複合不織布4を二組重ね合わせ、さらに、最外層には補強用不織布5として平均繊維径20μm、目付20g/mのポリエステルスパンボンド不織布を重ね合わせて五層構造の不織布フィルタ6を作った。このフィルタ6の初期性能は、0.1μm粒子を用いた風速5.3cm/秒での捕集効率は99.98%、圧力損失98.1Paであった。補強用不織布5の引張強度はたて31N/5cm、よこ25N/5cmであった。
【0031】
このフィルタ6は、内層(上流側)に支持用不織布2、中層にナノファイバー不織布3を接合した複合不織布4を二組積層し、さらに、最外層に補強用不織布5を重ね合わせた五層構造である。
【0032】
このフィルタ6を用いて、実施例1と同様の先端部が円形状の内径300mm、長さ280cmの円筒状のソックフィルタ1を作成した。ソックフィルタ1の接合は、外接合部16をインターロック縫製で、内接合部17を本縫いで接合した。さらに先端部8はオーバーロック縫製とした。その上に、目止め剤を塗布して縫い目からの空気漏れを防止した。このソックフィルタ1を実施例1と同様な方法で直方体クリーンブース内に設置して清浄化テストを行った。
【0033】
送風機の空気取り込み口付近で、アトマイザーにより低濃度のオイルミストを一定量発生させて空気と混合し、送風機に供給した。この運転を1日3時間で2か月間行った。クリーンブース内の空気清浄度をパーティクルカウンターで毎日測定したが、クリーンブース内の清浄度はクリーンルームISO14644-1規格の清浄度クラス6を2ケ月後も維持していた。また、ソックフィルタ1の圧力損失も殆ど変化が認められなかった。そのうえ、ソックフィルタ1の空気排出速度は4cm//秒の低風速で快適であった。
【実施例0034】
実施例1に用いた複合不織布4にコロナ印加荷電でポリフッ化ビニリデン・ナノファイバー不織布3と、支持用不織布としてポリプロピレン・メルトブロー不織布をエレクトレット化した複合不織布4を作成した。これに、平均繊維径20μm、目付25g/mのポリプロピレン・スパンボンド不織布からなる補強用不織布5を重ね合わせて三層構造の不織布フィルタ6をした。
【0035】
このフィルタ6の初期性能は、0.3μm粒子を用いた風速5.3cm/秒での捕集効率は99.11%、圧力損失44.1Paであった。補強用不織布5の引張強度はたて39N/5cm、よこ31N/5cmであった。
【0036】
このフィルタ6を用いて、実施例1と同様の先端部が円形状の内径300mm、長さ280cmの円筒状のソックフィルタ1を作成した。ソックフィルタ1の接合は、外接合部16と内接合部17を超音波ミシンで接合した。さらに先端部8も超音波ミシンで接合した。
【0037】
このソックフィルタ1を実施例1と同様な方法で直方体クリーンブース内に設置して清浄化テストを行った。送風機の空気取り込み口付近で、アトマイザーにより低濃度のオイルミストを一定量発生させて空気と混合し、送風機に供給した。この運転を1日3時間で行った。クリーンブース内の空気清浄度の経日変化をパーティクルカウンターで測定した。クリーンブース内の清浄度はクリーンルームISO規格14644-1の清浄度クラス7を1ケ月後も維持していた。また、ソックフィルタ1の圧力損失も殆ど変化が認められなかった。そのうえ、ソックフィルタ1のフィルタ面からの空気排出速度は5cm/秒の低風速で快適であった。
【0038】
なお、比較例1として、平均繊維径2.1μm、目付30g/mのエレクトレット化ポリプロピレン・メルトブロー不織布に、平均繊維径20μm、目付20g/mのポリプロピレン・スパンボンド不織布を接合した複合フィルタ4を用いて、実施例1と同サイズのソックフィルタ1を同接合方法で作成した。この複合フィルタ4の初期性能は、0.3μm粒子を用いた風速5.3cm/秒での捕集効率は98.6%、圧力損失56.1Paであった。
【0039】
これによりソックフィルタ1を作成し、クリーンブース内に取り付けて、実施例1と同様に送風機の空気取り込み口に近くで、アトマイザーにより低濃度のオイルミストを発生させて空気と混合しながら供給して長期間の試験を行った。この運転を1日4時間で行い、クリーンブース内の清浄度をパーティクルカウンターで測定した。初期にはクリーンルーム規格14644-1のISOクラス7を満たしていたが、徐々にエレクトレット静電気効果が消失し、性能低下して1ケ月後には規格外に達した。
【符号の説明】
【0040】
1 ソックフィルタ
2 支持用不織布
3 ナノファイバー不織布
4 複合不織布
5 補強用不織布
6 不織布フィルタ
7 ソックフィルタ補強折り返し部
8 ソックフィルタ先端部
9 送風機
10 送風機ボックス
11 ソックフィルタ取り付け部
12 ソックフィルタ締め付けバンド
13 吊り下げ部品
14 吊り上げ部品
15 支持体
16 ソックフィルタ外接合部
17 ソックフィルタ内接合部
図1
図2
図3
図4
図5