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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060205
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240424BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167414
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今村 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】高木 翼
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004CE02
4J004DB03
4J004FA08
4J040DF001
4J040EF282
4J040JA01
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA05
4J040KA16
4J040KA37
4J040LA06
4J040MA10
4J040NA20
4J040PA20
4J040PA30
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】加熱による被着体からの剥離をより容易にできる粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シート10は、シート状の基材5と、発泡剤13を含み、基材5の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層3とを備えている。発泡剤13は熱膨張性のマイクロカプセルであり、粘着剤層3の基材5とは反対側の面には凹凸が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
発泡剤を含み、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記発泡剤は熱膨張性のマイクロカプセルであり、
前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面には、凹凸が形成されており、
加熱により被着体から剥離する粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面には一端から他端に連通する複数の溝が設けられている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の被着体に対する接地面積は前記粘着剤層の平面面積全体の20%以上60%以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の23℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点での対ガラス粘着力は0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項6】
23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後1分時点での対ガラス粘着力をA(N/25mm)、24時間時点での対ガラス粘着力をB(N/25mm)とするとき、B/Aの値は1.0以上1.4以下である、請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層中に含まれる前記発泡剤の含有率は、前記粘着剤層全体の5質量%以上70質量%以下である、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、加熱により被着体と粘着剤層とが剥離可能となる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材と、熱膨張性微小球が添加された粘着剤層とを有する物品の仮固定用粘着シートは、従来から知られている。この粘着シートは、被着体に貼り付けた後、加熱により粘着剤層を膨張させて粘着剤層を被着体から剥離させることができる。このため、この粘着シートは半導体ウェハのダイシング工程や裏面研磨工程等で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラスチック製の基材と、粘着剤層と、基材と粘着剤層との間に設けられたゴム状有機弾性層とを有する粘着シートの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-248240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境意識が高まり、各種材料のリサイクルが世界的に進められている。例えば、被着体に貼り付けられたラベルを加熱により剥離させることができれば、被着体の再利用やリサイクルが容易になる。しかしながら、特許文献1に記載の粘着シートにおいて、粘着剤及び熱膨張性微小球の種類、粘着剤層の厚み等の条件によって加熱時の被着体からの剥離のしやすさは大きく変化するため、実際に使用が可能な粘着シートの構成は非常に限られている。このため、粘着剤や熱膨張性微小球の種類によらず被着体から剥離させやすい粘着シートの実現が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、加熱による被着体からの剥離をより容易にできる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された粘着シートの一例は、シート状の基材と、発泡剤を含み、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを備えている。前記発泡剤は熱膨張性のマイクロカプセルであり、前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面には、凹凸が形成されており、粘着シートは加熱により被着体から剥離する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に開示された粘着シートによれば、加熱による被着体からの剥離をより容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る粘着シートを示す断面図である。
図2図2は、図1に示す粘着シートから剥離ライナーを剥離した状態の粘着シートを粘着剤層側から見た平面図である。
図3図3(a)は、実施例1で作製した粘着シートのガラス板に対する易剥離性試験の結果を示す写真図であり、(b)は、比較例1で作製した粘着シートの易剥離性試験の結果を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本明細書に開示された実施形態の一例である、粘着シートを示す断面図である。図2は、図1に示す粘着シートから剥離ライナーを剥離した状態の粘着シートを粘着剤層側から見た平面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の粘着シート10は、シート状の基材5と、発泡剤13を含み、基材5の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層3とを備えている。粘着剤層3の面のうち、基材5と反対側の面には、粘着剤層3を保護する剥離ライナー1が設けられていてもよい。発泡剤13は、例えば熱膨張性のマイクロカプセルであり、所定の温度以上に加熱すると膨張する。
【0012】
粘着剤層3の基材5とは反対側の面には凹凸が形成されている。ここで、本明細書でいう凹凸とは、ある基準面から見て溝等の凹部のみが形成されている場合や、凸部のみが形成されている場合も含むものとする。図1及び図2に示す例では、粘着剤層3の下部(基材5とは反対側部分)に格子状の溝9が形成されている。すなわち、粘着剤層3の基材5とは反対側の面には、複数の凸部7が縦方向及び横方向に一定の間隔を空けて形成されている。凸部7の形状は特に限定されないが、図1及び図2に示すように、水平断面が四辺形で厚み方向の断面が台形の錐台形状をしていてもよい。
【0013】
粘着剤層3に溝9を形成するため、図1に示す例では剥離ライナー1の剥離面に格子状の突条11が設けられている。このような突条11は公知のエンボス加工やUVインクを用いた印刷等によって容易に形成することができる。剥離ライナー1以外の方法を用いて粘着剤層3の粘着面に凹凸を形成してもよい。
【0014】
縦方向及び横方向に延びる溝9の幅は特に限定されないが、例えば50μm以上800μm以下であってもよく、100μm以上500μm以下程度であってもよい。図2に示す凸部7の根本部分の縦方向及び横方向の長さは例えば100μm以上800μm以下であってもよく、150μm以上500μm以下であってもよい。溝9の深さは特に限定されないが、例えば10μm以上100μm以下であってもよく、15μm以上60μm以下であってもよい。
【0015】
図示しないが、凸部7の水平断面は四辺形以外に円形や三角形、五角形、六角形であってもよい。また、図1に示す例では各凸部7は一体的に形成された粘着剤層3の一部であるが、粘着剤層3は一体的に形成されていなくてもよく、互いに所定の間隔を空けて分散配置された複数の凸部7により構成されていてもよい。
【0016】
上述の構成により、粘着剤層3の被着体に対する接地面積は、粘着剤層3の平面面積よりも小さくなっている。粘着剤層3の被着体に対する接地面積は、例えば平面面積全体の20%以上60%以下であれば好ましく、30%以上50%以下であればより好ましい。
【0017】
粘着剤層3の基材5とは反対側の面には、一端から他端に連通する複数の溝が設けられていてもよい。この場合、粘着シート10を被着体に貼り付けた際に空気だまりができるのを防ぐことができ、美麗な貼り付け状態を維持しやすくなる。
【0018】
本実施形態の粘着シート10では、剥離ライナー1を剥がして粘着剤層3を被着体に貼り付けた後、加熱することにより、発泡剤13が膨張する。このため、粘着剤層3は厚みが増加するとともに平面サイズも増加し、結果として被着体から剥離可能となる。ここで、「剥離可能」とは、加熱処理により自然剥離する場合と、自然剥離はしなくても粘着シート10に軽く触れるだけで容易に剥離する場合とを含むものとする。
【0019】
本実施形態の粘着シート10では、粘着剤層3に凹凸が形成されているので、粘着剤層3の表面が平坦な場合と比べて発泡剤13を加熱により確実に発泡させることができる。その結果、より確実に粘着シート10を被着体から剥離できるようになる。このため、本実施形態の粘着シート10によれば、粘着剤や発泡剤の種類、粘着剤層の厚み等によらず加熱によって容易に剥離しやすくさせられる。
【0020】
被着体は特に限定されないが、例えば壁、建装材、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製ボトル、半導体ウェハ又はセラミックグリーンシートなどの積層体等であってもよい。
【0021】
基材5は、紙製であってもよいし、樹脂フィルム製であってもよい。基材5用の紙は、上質紙、アート紙、コート紙、グロス紙又はキャストコート紙等であってもよい。基材5用の樹脂材料としては、PET等のポリエステル樹脂や、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等であってもよい。基材5は合成紙により形成されていてもよい。環境に配慮する場合、基材5に含まれる樹脂成分を、一部又は全部が生物由来のバイオマス樹脂又は生分解性樹脂とすることができる。
【0022】
基材5の一方又は両方の面には公知の易接着層や帯電防止層等が設けられていてもよい。基材5の粘着剤層3側に易接着層が形成されていることにより、基材5と粘着剤層3との間の密着力を強くすることができる。また、粘着シートをラベルとして使用する場合には、易接着層上に印刷層を形成することができる。印刷層を形成しない場合や、粘着剤層3との密着力を小さくしたい場合には、基材5の粘着剤層3側の面に易接着層を設けなくてもよい。
【0023】
基材5の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上200μm以下であれば好ましく、10μm以上150μm以下であればより好ましい。基材5の厚みが1μm以上であれば一般的な塗工機で使用しやすく、5μm以上であれば取り扱いがしやすくなる。基材5の厚みが300μm以下であれば、製造コストの増加を抑えられる。
【0024】
粘着剤層3は、粘着剤の硬化物により形成される。粘着剤層3の形成に使用される粘着剤は特に限定されず、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤から選ばれた1種、又は2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
アクリル系粘着剤を使用する場合、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤又はキレート系硬化剤、あるいはこれら硬化剤の混合物を使用することが好ましい。粘着剤に添加される硬化剤は、粘着剤に含まれる架橋点の1/2当量以上であってもよい。粘着剤層3中の硬化剤の含有率は、例えば0.01質量%以上3.0質量%以下であってもよい。粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して硬化剤の添加量が0.01質量部未満の場合は、硬化が不十分になったり、硬化しても基材5と粘着剤層3の密着力が強くなり過ぎる場合がある。粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して硬化剤の添加量が3.0質量部を超えると、被着体に対する粘着力が小さくなり過ぎる可能性がある。
【0026】
粘着剤層3を形成するための粘着剤としては、熱水に不溶な溶剤型粘着剤を使用することができる。この場合、粘着剤層3が熱水処理時に溶け出さないので、熱水に可溶な粘着剤を使用する場合に比べて排水処理にかかる費用を低減することができる。
【0027】
粘着剤層3には、発泡剤13以外に本発明の目的が損なわれない範囲で、公知の各種添加剤、例えば粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、充填剤、カップリング剤、帯電防止剤などが適宜添加されていてもよい。
【0028】
粘着シート10のガラス板に対する粘着力は、例えば、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点で0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下であってもよく、0.4N/25mm以上10.0N/25mm以下であってもよい。対ガラス粘着力が0.1N/25mm以上であれば、ラベルとしてガラス瓶に貼付された場合に、常温において当該ガラス瓶から容易に剥がれず、0.4N/25mm以上であればガラス瓶からより脱落しにくくなる。粘着力が15.0N/25mm以下であれば、加熱により発泡剤13が発泡した後に粘着剤層3が被着体から剥離しやすくなり、粘着力が10.0N/25mm以下であれば、被着体から粘着剤層3をより容易に剥離できるようになる。
【0029】
粘着シート10について、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後1分時点での対ガラス粘着力をA(N/25mm)、24時間時点での対ガラス粘着力をB(N/25mm)とするとき、B/Aの値は1.0以上1.4以下であってもよい。B/Aの値がこの範囲にあることで、貼り付けから短時間の間に24時間経過時に近い粘着力を得ることができる。
【0030】
粘着シート10のPET板に対する粘着力は、例えば、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点で、例えば0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下であってもよく、0.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であってもよい。PET板に対する粘着力が0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下の範囲内にあることにより、粘着シート10がPET製容器にラベルとして貼付された場合に、常温において容器から容易に剥がれにくく、且つ加熱により被着体から容易に剥離できるようになる。
【0031】
粘着シート10のステンレス製BA板に対する粘着力は、例えば、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点で0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下であってもよく、0.4N/25mm以上10.0N/25mm以下であってもよい。
【0032】
粘着剤層3の貯蔵弾性率は特に限定されないが、例えば、23℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件において、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であってもよく、4.0×10Pa以上6.0×10Pa以下であればより好ましい。80℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件において、粘着剤層3の貯蔵弾性率は例えば1×10Pa以上5.0×10Pa以下であってもよい。23℃及び発泡剤の発泡開始温度付近(ここでは80℃)での貯蔵弾性率が低過ぎると加熱剥離時に粘着剤層3内部で破断しやすくなるので、粘着剤が被着体上に残りやすくなる。また、貯蔵弾性率が高過ぎると乾燥条件下で加熱する際に粘着剤層3が被着体から剥離しにくくなる。なお、発泡剤13が含まれていても、23℃における粘着剤層3の貯蔵弾性率は発泡剤13が含まれない場合に近い値となっている。
【0033】
粘着剤層3の厚みは、使用する粘着剤の種類によっても異なるが、例えば2μm以上300μm以下であってもよく、10μm以上200μm以下であれば好ましく、20μm以上100μm以下であればより好ましい。粘着剤層3の厚みが2μm以上であれば、常温で被着体から脱落しにくくすることができる。粘着剤層3の厚みが300μm以下であれば、加熱処理後の剥離時に凝集破壊を生じにくくさせることができ、被着体の汚染を低減しやすくなる。また、発泡剤13の含有率が同じ場合は、粘着剤層3の厚みが厚い方が加熱後に大きく膨張するため被着体から剥離しやすくなるが、製造コストを低減する観点から粘着剤層3の厚みは小さい方が好ましい。
【0034】
粘着剤層3に含まれる発泡剤13は、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等、加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させたマイクロカプセルであってもよい。殻は、熱溶融性物質や熱膨張により伸長又は破壊される物質により構成される。殻の構成材料としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。マイクロカプセルは、公知の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0035】
発泡剤13の発泡開始温度は特に限定されないが、省エネルギーの観点から、粘着剤層3を基材5や被着体から剥離させる際に必要なエネルギーを小さくできる方が好ましい。例えば、発泡剤13の発泡開始温度は50℃以上100℃以下であってもよい。発泡開始温度が50℃以上であることで、夏季等に粘着シート10の意図しない剥離が生じるのを抑えることができる。発泡開始温度が100℃以下であることで、100℃以下の熱水や130℃以下での乾燥状態での処理など、比較的低い温度での処理で基材5及び被着体から粘着剤層3を剥離させることができる。
【0036】
発泡剤13が膨張して最大粒径となる際の温度は、100℃以上140℃以下程度であってもよい。当該温度も発泡開始温度と同様に、比較的低い温度であれば、加熱時の消費エネルギーを小さくできるので、好ましい。
【0037】
発泡剤13として、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー」(グレード:F-30、F-30D、F-36D、F-36LV、F-50、F-50D、F-65、F-65D、HF-36D、HF-48D、FN-100SS、FN-100SSD、FN-180SS、FN-180SSD、F-190D、F-260D、F-2800D)、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル」(グレード:053-40、031-40、007-40)、呉羽化学工業社製「ダイフォーム」(グレード:M330、M430)、積水化学工業社製「アドバンセル」(グレード:EML101、EMH204、EHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401、EM403、EM501)等が挙げられる。
【0038】
発泡剤13の平均粒径は、例えば1μm以上50μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下であってもよい。平均粒径が1μm以上であれば加熱による膨張後に粘着剤層3の両面の凹凸を大きくしやすくなり、粘着剤層3を基材5及び被着体から剥離しやすくできる。粘着剤層3の厚みにもよるが、発泡剤13の平均粒径が50μm以下であれば、加熱前の粘着剤層3の表面の凹凸を小さくでき、被着体からの意図しない剥離を低減しやすくできる。発泡剤13の平均粒径は、粘着剤層3の厚みの5倍以下程度であってもよく、3倍以下であれば好ましく、1倍以下であればより好ましい。
【0039】
また、発泡剤13の平均粒径は、凸部7が四角錐台である場合、凸部7の一辺の長さ未満であることが好ましい。発泡剤13の粒径が凸部7のサイズよりも大きいと、発泡剤13が凸部7内に入り込めなくなり、発泡剤13の熱膨張による剥離が生じにくくなる可能性がある。
【0040】
発泡剤13が加熱前と比べて最も膨張した場合の体積変化率は、例えば5倍以上70倍以下程度であってもよく、7倍以上40倍以下であってもよい。ここでいう体積変化率とは、特開平11-002615号公報の明細書に記載されたシリンダー及びピストンを用いた方法により測定される値を意味する。
【0041】
粘着剤層3における発泡剤13の含有率は、使用する粘着剤にもよるが、粘着剤層3全体の質量に対して5質量%以上70質量%以下であってもよく、10質量%以上60質量%以下であれば好ましく、20質量%以上50質量%以下であればより好ましい。発泡剤13の含有率が低過ぎると加熱しても基材5及び被着体から粘着剤層3が剥離し難く、発泡剤13の含有率が高過ぎると加熱前に被着体に対する粘着力が不十分になりやすい。
【0042】
粘着剤層3中の発泡剤13の平均粒径や含有率、体積変化率等を適宜調整することにより、加熱処理後の粘着剤層3の膜厚増加率を、例えば4倍以上30倍以下にすることができ被着体から粘着剤層3を剥離させやすくできる。粘着剤層3の膜厚増加率は、6倍以上25倍以下であってもよい。ここで、加熱処理後の粘着剤層3での膜厚増加率は、式1により算出された値である。
【0043】
(加熱処理後の粘着剤層の厚み)/(加熱処理前の粘着剤層の厚み)・・・式1
加熱処理前の粘着剤層3の厚みは、23℃、相対湿度50%で測定するものとする。粘着剤層3の厚みは、市販のマイクロメーターを用いて測定することができる。
【0044】
なお、特許文献1には、粘着剤層3と基材5との間に、ゴム弾性を有する中間層を設けることにより、加熱後の粘着シートを被着体から剥離しやすくすることが記載されている。本実施形態の粘着シート10においても、粘着剤層3と基材5との間に中間層が設けられていてもよい。
【0045】
[粘着シートの製造方法]
本実施形態の粘着シート10を作製する際には、まず粘着剤に架橋剤と所定量の発泡剤13とを加えて混合することにより、塗液を作製する。次いで、紙製又は樹脂フィルム製の剥離ライナー1の剥離面に、乾燥後に所望の厚さになるようにコンマ型コーター等により塗液を塗工し、発泡剤13の発泡開始温度以下の低温で乾燥させ、粘着剤層3を形成する。次いで、剥離ライナー1の塗工面を基材5と貼り合わせて粘着シート10を作製した後、例えば40℃で72時間程度エージングを行う。
【0046】
ここで、ラベルとして使用する粘着シートを作製する場合は、粘着剤層3の形成前に公知の印刷機を用いて基材5の少なくとも一方の面に所定デザインの印刷層を形成しておけばよい。この印刷層には、粘着剤層3からの剥離条件等を示すリサイクル情報提示領域が形成されていてもよい。これにより、消費者や処理業者が被着体を適切にリサイクルできるようになる。
【0047】
また、この方法に代えて、剥離ライナー1の剥離面に上述の塗液を塗工した後、剥離ライナー1の塗工面に第2の剥離ライナーを貼り合わせ、次いで上述のエージングを行うことにより、いわゆる基材レス状態の粘着剤層3を作製してもよい。この場合、先に形成した粘着剤層3から第2の剥離ライナーを剥がしてから基材5と貼り合わせることで、粘着シート10を作製できる。
【0048】
[粘着シートの解体方法]
本実施形態の粘着シート10を被着体に貼り付けた後、被着体から剥離させるためには、粘着剤層3が十分に膨張する温度まで粘着シート10を加熱すればよい。例えば、発泡剤13の膨張開始温度が50℃以上100℃以下である場合、当該膨張開始温度以上100℃以下の熱水中での浸漬、又は膨張開始温度より10℃以上高く、130℃以下の乾燥状態での加熱により、粘着剤層3を被着体から剥離させることができる。ただし、粘着シート10は上記条件の範囲すべてで解体される必要はなく、少なくとも1つの条件で解体することができればよい。また、被着体の材質等によって粘着シート10からの剥離のしやすさは変わるが、加熱後の粘着剤層3は全ての種類の被着体から剥離できる必要はなく、少なくとも1種類の被着体から剥離できればよい。実際の使用を考慮すると、PET、ガラス及び金属の少なくとも1つから剥離できることが好ましい。
【0049】
被着体がガラス瓶やペットボトルのように浸漬可能な場合や、100℃を超える熱により変性する場合には熱水処理を行ってもよく、被着体が加熱に耐えられる場合等では、乾燥状態での加熱を行ってもよい。
【0050】
本実施形態の粘着シート10は、例えば家庭内でも容易に被着体から分離できるので、被着体を容易に分別してリサイクルに回すことができる。また、基材5の比重が1未満であれば、ペットボトル等の容器ラベルとして使用される場合に、熱水処理により剥離した粘着シート10を、比重の違いを利用してペットボトル材料(比重約1.38)から水中で容易に分離し、回収しやすくなる。
【0051】
[その他の構成]
以上で説明した粘着シート10の構成は実施形態の一例であり、構成材料や各層の厚さ、物性等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【実施例0052】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
[粘着シートの作製]
<実施例1>
液状の市販の溶剤型アクリル系粘着剤A(樹脂固形分50wt%)100質量部に対して市販の液状のイソシアネート系硬化剤(硬化剤成分45wt%含有)2.5質量部を添加してなる粘着剤組成物に、発泡剤A(松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアー(登録商標)HF-48D」)を、粘着剤の樹脂固形分に対して30質量%添加し、混合することにより塗液を作製した。次いで、公知のコンマ型コーターを用いて剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが50μmになるように上述の塗液を塗布し、80℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、市販のPETフィルム(基材)の一方の面と貼り合わせて粘着シートを作製した。剥離ライナーとして、日榮新化(株)製の剥離紙「MX2」を使用した。この剥離ライナーは、MD方向の幅が170μm、TD方向の幅が190μmの格子状の凸状体が剥離面に形成されており、凹部の開口部上端は1辺が280μmの正方形であった。開口部の深さは33μmであった。
【0054】
基材として、厚みが50μmの東レ(株)製PETフィルム(商品名「ルミラー(登録商標)S28」;比重約1.4)を使用した。次いで、40℃、72時間の条件で粘着シートのエージングを行った。
【0055】
<比較例1>
剥離ライナーとして平坦な剥離面を有する市販の剥離ライナー(東洋紡(株)製E7002)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0056】
表1に使用した発泡剤の情報を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[粘着シートの評価]
<易剥離性の評価試験>
実施例1及び比較例1で作製した粘着シートを80mm×80mmのサイズに切り出すことで試料片を作製し、当該試料片の粘着面を、表面処理が施されていないガラス板又はBA(ステンレス)板に貼り合わせた。24時間経過後に、試料片が貼り付けられたガラス板又はBA板を120℃に設定した乾燥炉内に投入し、15分後に自然剥離の有無を目視で確認した。両条件において、粘着剤層が自然剥離していない場合は、手で剥離可能かどうかを判断した。自然剥離する場合は〇(良)、自然剥離しないが手で触ると簡単に剥離する場合を△(可)、剥離できないか、剥離できても粘着剤成分が被着体に残る場合は×(不可)と判断した。
【0059】
<粘着力の測定>
粘着シートの剥離ライナーを剥がして被着体に貼り付けた後、JIS Z 0237に準拠する方法により貼り付けてから1分後及び24時間後の粘着力を測定した。具体的には、幅25mmに裁断した粘着シートの試験片を被着体であるガラス板又はBA板に貼り付けてから23℃、相対湿度50%で1分又は24時間静置した。これらの試験片を剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で万能材料試験機を用いて剥離するのに要する力を粘着力(N/25mm)として測定した。
【0060】
<粘着剤層の貯蔵弾性率の測定>
液状の粘着剤A100質量部にイソシアネート系硬化剤を2.5部添加した粘着剤組成物を準備し、これらの粘着剤組成物を用いて厚み50μmの粘着剤層を有する基材レステープを作製した。次いで、この基材レステープを40℃、72時間の条件でエージングした。次いで、粘着剤層のみを総厚さが1mmになるまで積層した後、直径8mmの大きさに打ち抜いてタブレットを作製した。このタブレットをレオメーター(製品名:AR2000ex)のプレート間に挟み、周波数1Hz、相対湿度50%、ひずみ量0.05%の条件で貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定し、tanδを算出した。温度は23℃と80℃の両方で測定した。
【0061】
<接地面積率の算出方法>
粘着シートから剥離ライナーを剥がして透明なPETフィルムと貼り合わせ、2kgゴムローラーを2往復させて圧着した。この状態で、粘着シートの任意の領域(流れ方向1cm×幅方向1cmの正方形の領域)を顕微鏡を用いて撮影し、「100×(PETフィルムと粘着剤層との接地面積の合計面積)/(領域全体の面積)」により接地面積の割合(すなわち、接地面積率)を算出した。
【0062】
[測定結果]
粘着剤層の貯蔵弾性率の測定結果を表2に示す。各試験片の粘着力の測定結果を表3に示す。各試験片の易剥離性試験の結果を表4に示す。ガラス板に対する易剥離性試験の結果を図3(a)、(b)に示す。同図(a)は実施例1で作製した粘着シートの結果を示し、同図(b)は比較例1で作製した粘着シートの結果を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
表4に示すように、凹凸が形成された剥離面を有する剥離ライナーを使用した実施例1の粘着シートは、加熱により自然剥離したのに対し、平坦な剥離面を有する剥離ライナーを使用した比較例1の粘着シートは、加熱によって剥離できなかった。表3に示す粘着力の測定結果では、実施例1の粘着シートと比較例1の粘着シートとの間に大きな違いが見られないにも関わらず、加熱した場合には実施例1の粘着シートのみが自然剥離できた。このことにより、粘着剤層に凹凸を形成することで、加熱時に自然剥離が容易になることが確認できた。
【0066】
また、実施例1の粘着シートでの接地面積率は37%、比較例1の粘着シートでの接地面積率は100%であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本明細書に開示された粘着シートは、仮固定用のテープやラベルとして種々の用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 剥離ライナー
3 粘着剤層
5 発泡剤
7 凸部
9 溝
10 粘着シート
11 突条
13 発泡剤
図1
図2
図3