(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060209
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】接近検出装置、ディスプレイユニット及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240424BHJP
G06F 3/042 20060101ALI20240424BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20240424BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240424BHJP
G01V 8/12 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G06F3/041 530
G06F3/041 580
G06F3/042 481
G06F3/0346 421
B60R11/02 C
G01V8/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167423
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊知川 禎一
【テーマコード(参考)】
2G105
3D020
5B087
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH02
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D020BE03
5B087AA02
5B087AA09
5B087AB09
5B087AB18
5B087AC01
5B087CC12
5B087CC26
5B087CC33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可動機構を備えたディスプレイの表示面に近接した被検出体を検出する、他の機器や当該他の機器に対する操作に対する被検出体の検出を抑止する接近検出装置、ディスプレイユニット及び情報処理システムを提供する。
【解決手段】ディスプレイ2の表示面に近接した物体を検出する接近検出装置は、複数の赤外線LEDと複数のフォトダイオードを表示面の下方に左右方向に並べて配置し、フォトダイオードが検出した各赤外線LEDが出射した赤外光の反射光の強度より、検出範囲10内の被検出体の位置を検出する。表示面の左右角度が変化したならば、その左右角度で、他の機器や、運転者の他の機器に対する操作が入り込むこととなる範囲を、標準の検出範囲10から除外した範囲が検出範囲10となるように、各赤外線LEDの照射強度を変更する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面の位置と向きとのうちの少なくとも一方である当該表示面の配置状態が可変なディスプレイの前記表示面に近接した物体を検出する接近検出装置であって、
前記ディスプレイの表示面の前方の当該表示面近傍の範囲である検出範囲内の前記物体を検出する、前記検出範囲が可変な近接物体検出部と、
前記表示面の配置状態を検出する配置状態検出手段と、
前記表示面の配置状態と好適検出範囲との対応が予め設定された検出範囲調整手段とを有し、
前記検出範囲調整手段は、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、設定されている当該変化後の配置状態に対応する好適検出範囲が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する現在の検出範囲と異なる場合に、以降、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲を、前記設定されている当該変化後の配置状態に対応する好適検出範囲に変更することを特徴とする接近検出装置。
【請求項2】
自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置された、表示面の位置と向きとのうちの少なくとも一方である当該表示面の配置状態が可変なディスプレイの前記表示面に近接した物体を検出する接近検出装置であって、
前記ディスプレイの表示面の前方の当該表示面近傍の範囲である検出範囲内の前記物体を検出する、前記検出範囲が可変な近接物体検出部と、
前記表示面の配置状態を検出する配置状態検出手段と、
前記近接物体検出部が前記物体を検出する検出範囲を調整する検出範囲調整手段とを有し、
前記検出範囲調整手段は、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、当該変化後の配置状態において、少なくとも前記自動車に備え付きの機器の位置が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲外の位置となるように、当該検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の接近検出装置であって、
前記自動車に備え付きの機器は、ワイパーレバーとウインカーレバーのうちの助手席側にある方のレバーである助手席側レバーであることを特徴とする接近検出装置。
【請求項4】
請求項2記載の接近検出装置であって、
前記検出範囲調整手段は、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、当該変化後の配置状態において、前記自動車に備え付きの機器の位置と当該機器を操作する運転者の手の位置の双方が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲外の位置となるように、当該検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【請求項5】
請求項2、3または4記載の接近検出装置であって、
前記表示面の配置状態は、前記表示面の左右方向の向きであることを特徴とする接近検出装置。
【請求項6】
請求項2、3または4記載の接近検出装置であって、
前記近接物体検出部は、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、
前記赤外光源の各々について、順次、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源に予め対応づけられている前記光検出器で検出させる検出動作を実行する検出動作実行手段と、
前記検出動作において各前記光検出器で検出した各前記赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、前記表示面への前記物体の接近を検出すると共に、当該強度の分布より、当該接近した物体の前記表示面の左右方向の位置を算定する接近検知手段とを有することを特徴とする接近検出装置。
【請求項7】
請求項2、3または4記載の接近検出装置であって、
前記近接物体検出部は、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、
前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを有し、
前記検出範囲調整手段は、前記複数の赤外光源の各々の照射強度の組み合わせを変更することにより、前記検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【請求項8】
請求項2、3または4記載の接近検出装置であって、
前記近接物体検出部は、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した複数の光検出器と、
前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを有し、
前記検出範囲調整手段は、前記接近検知手段の、前記複数の光検出器で検出した反射光の強度の各々に対する感度の特性を変更することにより、前記検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【請求項9】
請求項2、3または4記載の接近検出装置であって、
前記近接物体検出部は、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、
前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを有し、
前記検出範囲調整手段は、前記光検出器で検出している前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を0として取り扱うよう前記近接物体検出部に設定するキャリブレーションを実行することにより、前記検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【請求項10】
請求項1、2、3または4記載の接近検出装置と、当該接近検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたことを特徴とするディスプレイユニット。
【請求項11】
請求項1、2、3または4記載の接近検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備え、
前記接近検出装置は、前記表示面に近接した物体を検出したときに、物体の接近を前記データ処理装置に通知し、
前記データ処理装置は、物体の接近の通知に応答して所定の処理を行うことを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手や指などを被検出体として、ディスプレイの表示面に近接した被検出体を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの手や指などを被検出体として、ディスプレイの表示面に近接した被検出体を検出する技術としては、ディスプレイの下側に下辺に沿って配置した、ディスプレイの前上方に向けて赤外光を照射する複数のLEDを順次点灯すると共に、ディスプレイの下辺に沿って配置した複数のフォトダイオードで被検出体による赤外光の反射光を検出し、各LED点灯時に検出された反射光の強度の分布よりディスプレイの表示面に近接した被検出体の水平方向(左右方向)の位置を検知する検知システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、このような検知システムにおいて、ディスプレイが自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に配置されるものである場合に、運転者のワイパーレバーなどの他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまわないように、被検出体の検出範囲を、運転席側ほど、より近傍の範囲となるように設定する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022- 61242号公報
【特許文献2】特開2021-117189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に配置されるディスプレイに、表示面の上下方向位置を調節可能とする機構や、表示面の上下角度を調整可能とするチルト機構や、表示面の左右角度を調整可能とするスイベル機構(首振り機構)などの表示面の可動機構が設けられることがある。
【0006】
このため、ディスプレイの表示面の位置や角度が標準の配置にあるときに、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまわないように被検出体の検出範囲を設定していても、可動機構によって、ディスプレイの表示面の配置が変更されると、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまうことがある。
【0007】
一方で、ディスプレイの表示面の取り得る配置の全てについて、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出しないように検出範囲を設定することとすれば、各時点において、その時点の表示面の配置においては、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出することのない範囲までも検出範囲から除外してしまうこととなる。
【0008】
そこで、本発明は、表示面の可動機構を備えたディスプレイの表示面に近接した被検出体を検出する接近検出装置において、他の機器や、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまうことを排除しつつ、可及的に好適な検出範囲において被検出体を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、表示面の位置と向きとのうちの少なくとも一方である当該表示面の配置状態が可変なディスプレイの前記表示面に近接した物体を検出する接近検出装置に、前記ディスプレイの表示面の前方の当該表示面近傍の範囲である検出範囲内の前記物体を検出する、前記検出範囲が可変な近接物体検出部と、前記表示面の配置状態を検出する配置状態検出手段と、前記表示面の配置状態と好適検出範囲との対応が予め設定された検出範囲調整手段とを設けたものである。ここで、前記検出範囲調整手段は、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、設定されている当該変化後の配置状態に対応する好適検出範囲が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する現在の検出範囲と異なる場合に、以降、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲を、前記設定されている当該変化後の配置状態に対応する好適検出範囲に変更する。
【0010】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置された、表示面の位置と向きとのうちの少なくとも一方である当該表示面の配置状態が可変なディスプレイの前記表示面に近接した物体を検出する接近検出装置に、前記ディスプレイの表示面の前方の当該表示面近傍の範囲である検出範囲内の前記物体を検出する、前記検出範囲が可変な近接物体検出部と、前記表示面の配置状態を検出する配置状態検出手段と、前記近接物体検出部が前記物体を検出する検出範囲を調整する検出範囲調整手段とを設けたものである。ここで、前記検出範囲調整手段は、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、当該変化後の配置状態において、少なくとも前記自動車に備え付きの機器の位置が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲外の位置となるように、当該検出範囲を調整することを特徴とする接近検出装置。
【0011】
ここで、このような接近検出装置において、前記自動車に備え付きの機器は、ワイパーレバーとウインカーレバーのうちの助手席側にある方のレバーである助手席側レバーであってよい。
また、前記検出範囲調整手段において、前記配置状態検出手段が検出した前記表示面の配置状態が変化したときに、当該変化後の配置状態において、前記自動車に備え付きの機器の位置と当該機器を操作する運転者の手の位置の双方が、前記近接物体検出部が前記物体を検出する前記検出範囲外の位置となるように、当該検出範囲を調整することも好ましい。
また、以上の接近検出装置において、前記表示面の配置状態は、前記表示面の左右方向の向きであってよい。
【0012】
また、以上の接近検出装置において、前記近接物体検出部に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、前記赤外光源の各々について、順次、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源に予め対応づけられている前記光検出器で検出させる検出動作を実行する検出動作実行手段と、
前記検出動作において各前記光検出器で検出した各前記赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、前記表示面への前記物体の接近を検出すると共に、当該強度の分布より、当該接近した物体の当該表示面の左右方向の位置を算定する接近検知手段とを設けてもよい。
【0013】
また、以上の接近検出装置において、前記近接物体検出部に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを設け、前記検出範囲調整手段において、前記複数の赤外光源の各々の照射強度の組み合わせを変更することにより、前記検出範囲を調整してもよい。
または、以上の接近検出装置において、前記近接物体検出部に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した複数の光検出器と、前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを設け、前記検出範囲調整手段は、前記接近検知手段の、前記複数の光検出器で検出した反射光の強度の各々に対する感度の特性を変更することにより、前記検出範囲を調整してもよい。
【0014】
または、以上の接近検出装置において、前記近接物体検出部に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の左右方向に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面への前記物体の接近を検出する接近検知手段とを有し、前記検出範囲調整手段は、前記光検出器で検出している前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を0として取り扱うよう前記近接物体検出部に設定するキャリブレーションを実行することにより、前記検出範囲を調整してもよい。
【0015】
以上のような接近検出装置によれば、ディスプレイの表示面の位置と向きとのうちの少なくとも一方である配置状態の変化に応答して、物体を検出する範囲である検出範囲を変化後の配置状態に対応するように変更できるので、ディスプレイの表示面の配置状態によらずに、他の機器や他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまうことを排除することができるようになる。また、全ての配置状態において他の機器や他の機器に対する操作を検出しないように検出範囲を固定的に設定する必要がないので、配置状態毎に、可及的に好適な検出範囲を設定することができる。
【0016】
また、本発明は、併せて、以上の接近検出装置と、当該接近検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたディスプレイユニットも提供する。
また、本発明は、併せて、以上の接近検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備えた情報処理システムも提供する。この情報処理システムにおいて、前記接近検出装置は、前記表示面に近接した物体を検出したときに、物体の接近を前記データ処理装置に通知し、前記データ処理装置は、物体の接近の通知に応答して所定の処理を行う。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、表示面の可動機構を備えたディスプレイの表示面に近接した被検出体を検出する接近検出装置において、他の機器や、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体を検出してしまうことを排除しつつ、可及的に好適な検出範囲において被検出体を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るディスプレイの配置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るディスプレイの表示面の可動機構による動きを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る近接検出センサの配置を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る近接検出センサの動作シーケンスを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るディスプレイの表示面の左右角度とレバーの関係を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る検出範囲設定処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る検出範囲の設定例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る近接検出センサの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る情報処理システムの構成を示す。
情報処理システムは自動車に搭載されるシステムであり、カーナビゲーションアプリケーションやメディアプレイヤアプリケーション等を実行するデータ処理装置1、データ処理装置1が映像表示と座標入力に用いるタッチパネル付のディスプレイ2、接近検出装置3、データ処理装置1が利用する、その他の周辺装置4を備えている。また、ディスプレイ2は、データ処理装置1の制御下でディスプレイ2の表示面の位置や向きを調節する可動機構21を備えている。
【0020】
図2に示すように、ディスプレイ2は接近検出装置3と一体化されたディスプレイユニット10の形態で、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に表示面を後方に向けて配置される。
また、可動機構21は、データ処理装置1からの制御に従って、
図3aに示すようなディスプレイ2の表示面の左右角度(左右方向の向き)の調節や(スイベル機構/首振り機構)、
図3bに示すような上下角度(上下方向の向き)の調節や(チルト機構)、
図3cに示すように上下方向位置の調節を行う。なお、図中の前方向は、ディスプレイ2のおおよその表示方向である。
【0021】
図1に戻り、近接検出装置3は、ユーザの手や指などを被検出体として、ディスプレイ2の表示面への被検出体の接近と、接近した被検出体の水平方向の座標を検出し、検出した水平方向の座標を検出位置としてデータ処理装置1に通知し、データ処理装置1は、通知された検出位置に応じた処理を行う。
接近検出装置3は、近接検出センサ31と近接検出コントローラ32を備えている。
近接検出センサ31は、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1とPD2の、赤外光を検出する2つのフォトダイードを備えている。
また、近接検出コントローラ32は、LED1、LED2、LED3、LED4を駆動して発光させる駆動部321、PD1とPD2が出力する電流信号をPD1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号に変換し出力する検出部322、駆動部321と検出部322の動作を制御すると共に検出部322が変換した信号が表す赤外光の強度より、ディスプレイ2の表示面に近接した被検出体の水平方向の座標を算定し、検出位置としてデータ処理装置1に通知する検出制御部323とを備えている。
【0022】
次に、
図4a、bに示すように、LED1、LED2、LED3、LED4は、当該順序で左から右に向かって、ディスプレイ2の下辺の少し下の位置におおよそ等間隔で配置されている。
また、PD1は、LED1とLED2の中間の位置に配置され、入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し、PD2は、LED3とLED4の中間の位置に配置され、それぞれ入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し出力する。
図4a、b中の矢印は、LED1、LED2、LED3、LED4の指向角の中心軸を表しており、LED1、LED2、LED3、LED4は、ディスプレイ2の前方上方に向けて斜めに赤外光を照射する。
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、
図5に示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御する。
ここで、各サイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号L1を出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号L2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号L3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号L4を出力するピリオドとを含む。
【0023】
ここで、駆動部321は、検出制御部323から設定された照射強度I1で発光するようにLED1を駆動し、検出制御部323から設定された照射強度I2で発光するようにLED2を駆動し、検出制御部323から設定された照射強度I3で発光するようにLED3を駆動し、検出制御部323から設定された照射強度I4で発光するようにLED4を駆動する。
【0024】
そして、検出制御部323は、x1をLED1の水平方向の座標、x2をLED2の水平方向の座標、x3をLED3の水平方向の座標、x4をLED4の水平方向の座標として、検出部322で検出した強度信号L1、L2、L3、L4の強度分布の重心として求まる水平方向の座標Xを式1により求める。
【0025】
式1:X=(X1×L1+X2×L2+X3×L3+X4×L4)/(L1+L2+L3+L4)
そして、検出制御部323は、求めた水平方向の座標Xを、検出位置としてデータ処理装置1に通知する
さて、ここで、ディスプレイ2の表示面が所定の高さの位置で正立した状態を表示面の標準状態として、標準状態において、被検出体の位置を検出する領域である検出範囲10を上下方向に見た範囲が
図6aに示すように設定されている場合を考える。なお、図中でハッチングを施した範囲が、検出範囲10を上下方向に見た範囲である。
【0026】
この場合、
図6aに示すように、標準状態において、ワイパーレバーとウインカーレバーのうちの助手席側にある方のレバーである助手席側レバーや、運転者の助手席側レバーに対する操作に対して、被検出体を検出してしまわないように検出範囲10を設定していても、その検出範囲10を維持したままでは、
図6b、cに示すように、ディスプレイ2の表示面の左右角度が変更されると、検出範囲10も移動し、助手席側レバーや、運転者の助手席側レバーに対する操作に対して被検出体を検出してしまうようになる。
【0027】
また、
図6にはディスプレイ2の表示面の左右角度の変更について示したが、ディスプレイ2の表示面の上下方向位置の変更や、上下角度の変更の際にも、同様の事象が生じる場合がある。
そこで、本実施形態では、ディスプレイ2の表示面の位置や角度などの配置によらずに、他の機器や、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体の位置を検出してしまわないように、検出範囲10を変更する検出範囲設定処理を、検出制御部323において行う。
以下では、ディスプレイ2の表示面の左右角度の変更に対して行う検出範囲設定処理を例にとり説明する。
図7に、この検出範囲設定処理の手順を示す。
ここで、検出範囲設定処理の開始時には、検出制御部323の検出位置(水平座標X)の検出動作は停止している。
さて、図示するように、検出制御部323は、この処理において、まず、可動機構21がディスプレイ2の表示面の左右角度を調整する動作を停止している(角度を固定している)状態となるのを待つ(ステップ702)。左右角度を調整する動作を停止しているかどうかは、可動機構21から状態を取得することにより判定する。
そして、左右角度を調整する動作を停止している状態となったならば(ステップ702)、可動機構21からディスプレイ2の表示面の左右角度を取得する(ステップ704)。
そして、左右角度に応じて検出範囲10を調整する範囲調整処理を行う(ステップ706)。
このステップ706の範囲調整処理では、取得した左右角度に応じて、LED1、LED2、LED3、LED4の照射強度I1、I2、I3、I4を決定し、駆動部321に設定する。ここで、以降、駆動部321は設定された照射強度I1、I2、I3、I4で発光するようにLED1、LED2、LED3、LED4を駆動する。
【0028】
ここで、ステップ706の範囲調整処理で駆動部321に設定するLED1、LED2、LED3、LED4の照射強度I1、I2、I3、I4は、予め設定しておいた、左右角度と照射強度I1、I2、I3、I4との関係に従って行う。
ここで、この左右角度と照射強度I1、I2、I3、I4との関係は、
図8a、b、c、dに示すように、
図8aに示す表示面が標準状態にあるときの検出範囲10から、表示面が、その左右角度にあるときに、助手席側レバー等の他の機器や、運転者の他の機器に対する操作が入り込むこととなる範囲を除外した
図8b、c、dに示す範囲が検出範囲10となるように定めている。
【0029】
ここで、一般的には、標準状態にあるときの検出範囲10から除外する範囲は運転席側の範囲となるので、ステップ706では、運転席側のLED(LED4、または、LED3とLED4)の照射強度I3、I4のみを、取得した左右角度に応じて決定して設定してもよい。
【0030】
図7に戻り、検出制御部323は、次に、検出位置(水平座標X)の検出動作を開始する(ステップ708)。
以降、可動機構21のディスプレイ2の表示面の左右角度を調整する動作の開始を監視し(ステップ710)、動作が開始されたならば、検出位置(水平座標X)の検出動作を停止し(ステップ712)、ステップ702からの処理に戻る。
以上、検出制御部323が行う検出範囲設定処理について説明した。
このような検出範囲設定処理によれば、ディスプレイ2の表示面の左右角度によらずに、他の機器や当該他の機器に対する操作に対して被検出体の位置を検出してしまうことを排除しつつ、可及的に好適な検出範囲10において被検出体の位置を検出することができる。
【0031】
なお、以上では、ディスプレイ2の表示面の左右角度の変更に対して検出範囲10を調整する場合を例にとり検出範囲設定処理を説明したが、ディスプレイ2の表示面の上下方向位置の変更や、上下角度の変更に対しても、同様に検出範囲設定処理を行うことができ、これにより、表示面の上下方向位置や上下角度によらずに、運転者の他の機器に対する操作に対して被検出体の位置を検出してしまうことを排除しつつ、可及的に好適な検出範囲10において被検出体の位置を検出することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態では、LED1、LED2、LED3、LED4の照射強度I1、I2、I3、I4を変更することにより、表示面の左右角度に応じて検出範囲10を変更したが、検出範囲10の変更は以下のように、LED1、LED2、LED3、LED4の発光に対して検出した反射光の強度に対する感度の特性を変更することにより行ってもよい。
【0033】
すなわち、駆動部321がLED1のみを発光したときのPD1の出力値をA1、駆動部321がLED2のみを発光したときのPD1の出力値をA2、駆動部321がLED3のみを発光したときのPD2の出力値をA3、駆動部321がLED4のみを発光したときのPD2の出力値をA4として、検出部322を、上述したL1、L2、L3、L4として、L1=W1×A1、L2=W2×A2、L3=W3×A3、L4=W4×A4を出力するように構成する。そして、検出制御部323が
図7に示した検出範囲設定処理のステップ706の範囲調整処理において、取得した左右角度に応じて、W1、W2、W3、W4を、検出範囲10が上述した左右角度に応じた範囲となるように決定し、検出部322に設定する。
【0034】
なお、この場合にも、検出部322に設定するW1、W2、W3、W4の決定は、予め設定しておいた、左右角度とW1、W2、W3、W4との関係に従って行う。
もしくは、反射光の強度に対する感度の特性の変更による検出範囲10の変更は以下のように行ってもよい。
すなわち、検出部322を、A1がTha1を超えているときにL1=A1、Tha1を超えていないときにL1=0を出力し、A2がTha2を超えているときにL2=A2、Tha2を超えていないときにL2=0を出力し、A3がTha3を超えているときにL3=A3、Tha3を超えていないときにL3=0を出力し、A4がTha4を超えているときにL4=A4、Tha4を超えていないときにL4=0を出力するように構成する。
【0035】
そして、検出制御部323が
図7に示した検出範囲設定処理のステップ706の範囲調整処理において、取得した左右角度に応じて、Tha1、Tha2、Tha3、Tha4を、検出範囲10が上述した左右角度に応じた範囲となるように決定し、検出部322に設定する。
【0036】
なお、この場合にも、検出部322に設定するTha1、Tha2、Tha3、Tha4の決定は、予め設定しておいた、左右角度とTha1、Tha2、Tha3、Tha4との関係に従って行う。
もしくは、反射光の強度に対する感度の変更による検出範囲10の変更を、以下のように行ってもよい。
すなわち、検出制御部323において、しきい値設定関数F()と式1で求まるXを用いて、Thb=F(X)で定まるThbを、L1、L2、L3、L4の最大値、もしくは、L1、L2、L3、L4の合計が超えていないときには検出位置を出力しないように構成する。
そして、検出制御部323が
図7に示した検出範囲設定処理のステップ706の範囲調整処理において、しきい値設定関数F()を、検出範囲10が上述した左右角度に応じた範囲となるように設定する。
なお、この場合にも、ステップ706で設定するしきい値設定関数F()は、予め設定しておいた、左右角度としきい値設定関数F()との関係に従って行う。
もしくは、検出範囲10の変更は検出部322のキャリブレーションを利用して以下のように行ってもよい。
すなわち、駆動部321がLED1のみを発光したときのPD1の出力値をA1、駆動部321がLED2のみを発光したときのPD1の出力値をA2、駆動部321がLED3のみを発光したときのPD2の出力値をA3、駆動部321がLED4のみを発光したときのPD2の出力値をA4として、検出部322を、上述したL1、L2、L3、L4として、L1=A1-c1、L2=A2-c2、L3=A3-c3、L4=A3-c3を出力するように構成する。
ここで、c1は被検出体が近接していないときに出力されるA1の大きさであり、c2は被検出体が近接していないときに出力されるA2の大きさであり、c3は被検出体が近接していないときに出力されるA3の大きさであり、c4は被検出体が近接していないときに出力されるA4の大きさであり、したがって、c1、c2、c3、c4は、0点に対応するPD1、PD2の出力である。また、c1、c2、c3、c4は、計測制御部が行うキャリブレーション動作によって設定される。
【0037】
キャリブレーション動作では、たとえば、c1=c2=c3=c4=0を検出部322に設定した状態で、
図5の動作シーケンスを行ってA1、A2、A3、A4を取得し、c1=A1、c2=A2、c3=A3、c4=A4を求め、求めたc1、c2、c3、c4を検出部322に設定する。
そして、検出制御部323が
図7に示した検出範囲設定処理のステップ706の範囲調整処理において、以上のキャリブレーション動作を行うようにする。このようにしても、その時点の検出範囲10内にある他の機器や、他の機器を操作している手などが存在する範囲を除外した範囲に、検出範囲10を更新することができる。
【0038】
なお、検出位置(水平座標X)の検出動作中に、検出部322において、A1<c1、A2<c2、A3<c3、A4<c4のいずれかが発生したならば、検出部322はキャリブレーション動作の実行を検出制御部323に要求し、要求を受けた検出制御部323は検出動作を一時停止しキャリブレーション動作を行う。
【0039】
また、以上の実施形態では、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1、PD2の2つのフォトダイオードを用いたが、赤外線LEDの数は4以外の数であって良く、フォトダイオードの数は2以外の数であって良い。
たとえば、
図9aに示したように左右に配列した3つの赤外線LED(LED1-LED3)と赤外線LED間に配置した2つのフォトダイオード(PD1-PD2)を用いたり、
図9bに示したように左右に配列した5つの赤外線LED(LED1-LED5)と赤外線LED間に配置した3つのフォトダイオード(PD1-PD3)を用いたり、
図9cに示すように左右に配列した6つの赤外線LED(LED1-LED6)と赤外線LED間に配置した3つのフォトダイオード(PD1-PD3)を用いたりすることができる。
【0040】
なお、いずれの場合も、各赤外線LEDの赤外光の反射光は、その赤外線LEDに隣接するいずれかのフォトダイオードPDで検出するようにする。
また、以上の実施形態では、ディスプレイ2の表示面の位置や角度などの配置によらずに、存在や操作に対して被検出体の位置を検出してしまわないように検出範囲10を変更する他の機器の例として助手席側レバーを示したが、自動車の各種スイッチ類や自動車のエアコンの吹き出し口等を、当該他の機器としたり、当該他の機器に含めたりしてよい。
【符号の説明】
【0041】
1…データ処理装置、2…ディスプレイ、3…接近検出装置、4…周辺装置、10…ディスプレイユニット、10…検出範囲、21…可動機構、31…近接検出センサ、32…近接検出コントローラ、321…駆動部、322…検出部、323…検出制御部。