(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060214
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電源管理システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20240424BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240424BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240424BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240424BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240424BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240424BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240424BHJP
H02J 13/00 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/0606
H01M8/04014
H01M8/04313
H01M8/0432
H01M8/12 101
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167437
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松崎 崚
【テーマコード(参考)】
5G064
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB12
5G064DA01
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB11
5H127AB23
5H127AC16
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA33
5H127BA34
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5H127BB18
5H127BB19
5H127DB74
5H127DB87
5H127DB93
5H127DB98
5H127DC42
5H127DC46
5H127DC90
5H127DC93
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】燃料電池装置の水自立を適切に行いながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行える電源管理システムを提供する。
【解決手段】電源管理システムの管理装置40は、出力増加指令を送信する場合に、複数の燃料電池装置10から取得した、出力抑制運転を行っていることを示す運転情報、及び、貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいて、複数の燃料電池装置10のうち、出力抑制運転を行っておらず、且つ、貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10に対して優先して出力増加指令を送信する出力増加処理、及び、出力低下指令を送信する場合に、運転情報、及び、水量指標情報に基づいて、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令を送信する出力低下処理、の少なくとも一方を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置され、電力系統に連系される前記燃料電池装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信する指令送信処理を行い、
前記燃料電池装置は、前記管理装置から前記出力制御指令を受け取った場合、前記出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、前記出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作し、
前記燃料電池装置は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部と、発電反応に用いられた後に前記燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて燃焼排ガスを生じさせる燃焼部と、前記燃焼部から排出される前記燃焼排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換器と、前記熱交換器による熱回収により前記燃焼排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、前記水タンクで貯留されている貯留水の量である貯留水量を測定する水量測定部と、前記貯留水を前記改質部に供給可能な水供給路と、燃料電池制御部とを備え、前記燃料電池制御部は、前記貯留水量が所定の基準水量未満である場合には前記燃料電池部の発電電力を定格発電電力未満の抑制時電力にさせる出力抑制運転を行い、前記出力抑制運転の停止条件が満たされた場合には前記出力抑制運転を停止させるように構成され、
前記管理装置は、
前記指令送信処理において出力増加指令を送信する場合に、複数の前記燃料電池装置から取得した、前記出力抑制運転を行っていることを示す運転情報、及び、前記貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいて、複数の前記燃料電池装置のうち、前記出力抑制運転を行っておらず、且つ、前記貯留水量の減少度合いが低い前記燃料電池装置に対して優先して前記出力増加指令を送信する出力増加処理、及び、
前記指令送信処理において出力低下指令を送信する場合に、前記運転情報、及び、前記水量指標情報に基づいて、前記複数の前記燃料電池装置のうち、前記貯留水量の減少度合いが高い前記燃料電池装置に対して優先して前記出力低下指令を送信する出力低下処理、の少なくとも一方を行う電源管理システム。
【請求項2】
前記水量指標情報は前記貯留水量の減少速度を含み、
前記管理装置は、前記貯留水量の減少速度が所定の基準減少速度よりも速い場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記水量指標情報は前記貯留水量と前記基準水量との間の水量差を含み、
前記管理装置は、前記貯留水量が前記基準水量以上であるが前記水量差が所定範囲内にある場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記燃料電池装置は、外気温度を測定する外気温度測定部を備え、
前記水量指標情報は前記外気温度測定部が測定する外気温度を含み、
前記管理装置は、外気温度が基準外気温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を空気によって低下させる放熱器と、前記放熱器が取り込む空気の温度である吸気温度を測定する吸気温度測定部とを備え、
前記水量指標情報は前記吸気温度測定部が測定する前記吸気温度を含み、
前記管理装置は、前記吸気温度が基準吸気温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を測定する熱媒体温度測定部を備え、
前記水量指標情報は前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度を含み、
前記管理装置は、前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度が基準熱媒体温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項7】
前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を測定する熱媒体温度測定部と、前記熱交換器に供給される前の前記熱媒体から放熱させる放熱用ファンとを備え、前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度が所定の基準熱媒体温度より高くなるにつれて前記放熱用ファンの回転速度を増大させて放熱能力を上昇させるように構成され、
前記水量指標情報は前記放熱用ファンの前記回転速度を含み、
前記管理装置は、前記放熱用ファンの前記回転速度が基準回転速度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する請求項1に記載の電源管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置と、複数の燃料電池装置との間で施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2018-125907号公報)に開示されているように、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念に基づいて、複数の電源装置(電力資源101)と管理装置(仮想発電中央装置103)とを有するシステムが提案されている。また、特許文献2(特開2019-17154号公報)にも、同様のシステムが記載されている。特許文献1及び特許文献2には、燃料電池装置を電源装置として使用するシステムが記載されている。
【0003】
例えば、電源管理システムにおいて、調整力の供出指令を管理装置が受信すると、管理装置は、供出の当日に各施設の電源装置の調整力を電力系統に供出する。このように、分散して配置された複数の電源装置を管理装置によってまとめることにより、複数の電源装置を、一つの発電所や消費市場として機能させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-125907号公報
【特許文献2】特開2019-17154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池装置において、炭化水素などの原燃料ガスを水蒸気改質することで、燃料電池装置のアノードに供給する水素を含む燃料ガスを生成している場合、その水蒸気改質を行うためには水が必要になる。燃料電池装置では、水タンクに貯留している貯留水を水蒸気改質のために供給すると共に、燃料電池装置のアノード及びカソードから排出されるガスを燃焼した後の燃焼排ガスに含まれる水分などを水タンクに回収することも行っている。そのため、水タンクに外部から水を補充しなくても、燃料電池装置の内部で必要な水は、燃料電池装置の内部で生成できるという水自立が成立することが期待される。
【0006】
但し、燃焼排ガスの冷却を十分に行うことができない場合などには、水タンクに回収できる水量が減少し、水タンクでの貯留水量が低下する可能性もある。そのような場合、燃料電池装置では、水自立が成立するように、出力を抑制する運転を行って、水タンクの貯留水量を増加傾向にさせる場合がある。
【0007】
従って、燃料電池装置を電源装置として用いる場合、各燃料電池装置では装置の状態が異なるため、管理装置が各燃料電池装置に対してどれだけの調整力を供出させるのが適当かを決定することは困難である。
【0008】
従って、管理装置から電源装置に対して調整力の供出を指令するとしても、燃料電池装置が上述したような理由で出力を抑制する運転を行っている場合には、出力を上げる運転を指令することは適当ではない。
【0009】
複数の燃料電池を制御して発電をする場合に、個々の燃料電池の出力抑制の状況を把握することで、目的の供出力を出すための発電量を決定し、個々の燃料電池の出力を制御する。出力抑制の起こっていない機体や今後起こりそうな機体を予測し、その度合いに応じて優先的に出力の増減を行う機体を決定する。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池装置の水自立を成立させながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行える電源管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置され、電力系統に連携される前記燃料電池装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信する指令送信処理を行い、
前記燃料電池装置は、前記管理装置から前記出力制御指令を受け取った場合、前記出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、前記出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作し、
前記燃料電池装置は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部と、前記燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部と、発電反応に用いられた後に前記燃料電池部から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて燃焼排ガスを生じさせる燃焼部と、前記燃焼部から排出される前記燃焼排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換器と、前記熱交換器による熱回収により前記燃焼排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンクと、前記水タンクで貯留されている貯留水の量である貯留水量を測定する水量測定部と、前記貯留水を前記改質部に供給可能な水供給路と、燃料電池制御部とを備え、前記燃料電池制御部は、前記貯留水量が所定の基準水量未満である場合には前記燃料電池部の発電電力を定格発電電力未満の抑制時電力にさせる出力抑制運転を行い、前記出力抑制運転の停止条件が満たされた場合には前記出力抑制運転を停止させるように構成され、
前記管理装置は、
前記指令送信処理において出力増加指令を送信する場合に、複数の前記燃料電池装置から取得した、前記出力抑制運転を行っていることを示す運転情報、及び、前記貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいて、複数の前記燃料電池装置のうち、前記出力抑制運転を行っておらず、且つ、前記貯留水量の減少度合いが低い前記燃料電池装置に対して優先して前記出力増加指令を送信する出力増加処理、及び、
前記指令送信処理において出力低下指令を送信する場合に、前記運転情報、及び、前記水量指標情報に基づいて、前記複数の前記燃料電池装置のうち、前記貯留水量の減少度合いが高い前記燃料電池装置に対して優先して前記出力低下指令を送信する出力低下処理、の少なくとも一方を行う点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、指令送信処理において出力増加指令を送信する場合には、複数の燃料電池装置のうち、出力抑制運転を行っていない燃料電池装置、即ち、水タンクでの貯留水量が少なくなっていない燃料電池装置、及び、貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいてその貯留水量の減少度合いが低いと判定できる燃料電池装置に対して優先して出力増加指令が送信される。つまり、貯留水量が現に少ない又は少なくなる傾向が強い燃料電池装置に対して、出力を増加させる運転、即ち、貯留水量が更に減少する又は増加し難くなる方向での運転が指令されることが極力抑制される。
【0013】
また、指令送信処理において出力低下指令を送信する場合には、複数の燃料電池装置のうち、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる燃料電池装置に対して優先して出力低下指令が送信される。つまり、貯留水量が現に少ない又は少なくなる傾向が強い燃料電池装置に対して、出力を低下させる運転、即ち、貯留水量が増加する又は減少し難くなる方向での運転が指令されるようになる。
従って、燃料電池装置の水自立を適切に行いながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行える電源管理システムを提供できる。
【0014】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記水量指標情報は前記貯留水量の減少速度を含み、
前記管理装置は、前記貯留水量の減少速度が所定の基準減少速度よりも速い場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、管理装置は、水量指標情報としての貯留水量の減少速度に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【0016】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記水量指標情報は前記貯留水量と前記基準水量との間の水量差を含み、
前記管理装置は、前記貯留水量が前記基準水量以上であるが前記水量差が所定範囲内にある場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、管理装置は、水量指標情報としての、貯留水量と基準水量との間の水量差に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【0018】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記燃料電池装置は、外気温度を測定する外気温度測定部を備え、
前記水量指標情報は前記外気温度測定部が測定する外気温度を含み、
前記管理装置は、外気温度が基準外気温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0019】
外気温度が低いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、外気温度が高いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。
そのため、管理装置は、水量指標情報としての外気温度に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【0020】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を空気によって低下させる放熱器と、前記放熱器が取り込む空気の温度である吸気温度を測定する吸気温度測定部とを備え、
前記水量指標情報は前記吸気温度測定部が測定する前記吸気温度を含み、
前記管理装置は、前記吸気温度が基準吸気温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0021】
放熱器は空気によって熱媒体から放熱させることで、熱交換器に供給される熱媒体の温度を低下させる。そのため、放熱器の吸気温度が低いほど、熱交換器に供給される熱媒体の温度を低下させることができ、燃焼排ガスの温度を低下させることができる。つまり、放熱器を動作させる場合、放熱器の吸気温度が低いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、放熱器の吸気温度が高いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。
そのため、管理装置は、水量指標情報としての放熱器の吸気温度に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【0022】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を測定する熱媒体温度測定部を備え、
前記水量指標情報は前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度を含み、
前記管理装置は、前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度が基準熱媒体温度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0023】
熱交換器に供給される熱媒体の温度が低いほど、燃焼排ガスの温度を低下させることができる。つまり、熱交換器に供給される熱媒体の温度が低いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、熱交換器に供給される熱媒体の温度が高いほど、水タンクに回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。
そのため、管理装置は、水量指標情報としての、熱媒体温度測定部が測定する熱媒体の温度に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【0024】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記燃料電池装置は、前記熱交換器に供給される前記熱媒体の温度を測定する熱媒体温度測定部と、前記熱交換器に供給される前の前記熱媒体から放熱させる放熱用ファンとを備え、前記熱媒体温度測定部が測定する前記熱媒体の温度が所定の基準熱媒体温度より高くなるにつれて前記放熱用ファンの回転速度を増大させて放熱能力を上昇させるように構成され、
前記水量指標情報は前記放熱用ファンの前記回転速度を含み、
前記管理装置は、前記放熱用ファンの前記回転速度が基準回転速度以上である場合、前記貯留水量の減少度合いが高いと判定する点にある。
【0025】
放熱用ファンの回転速度が低いほど、熱交換器に供給される熱媒体の温度が低くなっており、水タンクに回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、放熱用ファンの回転速度が高いほど、熱交換器に供給される熱媒体の温度が高く、水タンクに回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。
そのため、管理装置は、水量指標情報としての放熱用ファンの回転速度に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
【
図4】制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、燃料電池装置10及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置40と、アグリゲーションコーディネーター50との関係を示した図である。
図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムは、複数の施設20のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置10と、複数の燃料電池装置10との間で施設20の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置40とを備える。加えて、本実施形態の電源管理システムは、燃料電池装置10と管理装置40との間の通信を中継する通信中継装置としてのルーター6及びリモコン7を備える。
本実施形態において、1台の管理装置40が管理する燃料電池装置10の台数は適宜設定可能である。
【0028】
管理装置40は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター50は、各管理装置40が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0029】
管理装置40は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を含む装置情報を逐次収集して記憶している。尚、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置40は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター50に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。尚、本実施形態において「受電点電力を上げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0030】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0031】
また、管理装置40は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0032】
アグリゲーションコーディネーター50は、各管理装置40から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場、容量市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーター50は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置40に対して分配して伝達する。
【0033】
管理装置40は、アグリゲーションコーディネーター50から供出指令を受け取った場合、その供給指令で指定された調整力等を各施設20に対して分配して伝達する。例えば、管理装置40は、複数の燃料電池装置10に対して、所定の制御対象期間での燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0034】
施設20には、燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電点電力を測定する電力メーター3が設置されている。尚、
図1及び
図2には、燃料電池装置10が1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置10の設置台数は適宜変更可能である。
【0035】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置40に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置40に伝達される。
【0036】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置され、電力系統1に連系される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0037】
燃料電池装置10は、燃料電池部12と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。
【0038】
燃料電池制御部13は、所定の上限出力電力(例えば700Wなど)と下限出力電力(例えば50Wなど)との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うこともできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0039】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。尚、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は燃料電池装置10の出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0040】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置40に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置40に伝達される。
【0041】
図3は、燃料電池装置10の構成を示す図である。筐体35の内部に後述する各機器が収容されている。
燃料電池装置10は、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部17と、燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池部12と、発電反応に用いられた後に燃料電池部12から排出されるガス中に存在する可燃性ガスを燃焼させて燃焼排ガスを生じさせる燃焼部18と、燃焼部18から排出される燃焼排ガスの熱を熱媒体で回収する熱交換器19と、熱交換器19による熱回収により燃焼排ガスから生じる凝縮水を回収して貯留する水タンク22と、水タンク22で貯留されている貯留水の量である貯留水量を測定する水量測定部23と、貯留水を改質部17に供給可能な水供給路と、燃料電池制御部13とを備える。
以下に、燃料電池装置10の構成について具体的に説明する。
【0042】
改質部17は、原燃料ガス流路L1を介して供給される例えば都市ガス等の炭化水素を含む原燃料ガスを水蒸気改質して水素を含む燃料ガスを生成する。改質部17が受け取る原燃料ガスの単位時間当たりの流量は原燃料流量調節部15によって調節される。
【0043】
また、改質部17には、水タンク22に貯えられている水が水ポンプ24及び水流路L8を介して供給され、その水が原燃料ガスの水蒸気改質に用いられる。尚、図示は省略するが、供給される水を気化させる気化器を設けてもよい。
原燃料流量調節部15の動作は燃料電池制御部13が制御する。
【0044】
改質部17で生成された燃料ガスは燃料ガス流路L2を介して燃料電池部12のアノード12aに供給される。また、酸素ガス(空気)が空気流路L3を介して燃料電池部12に供給される。燃料電池部12のカソード12bに供給される空気の単位時間当たりの流量は空気流量調節部16によって調節される。燃料電池部12は、改質部17で生成される燃料ガスが供給されるアノード12aと、酸素ガスが供給されるカソード12bと、それらの間に設けられる電解質層12cとを有する。例えば、電解質層12cは固体酸化物を使用して構成され、その場合には、燃料電池部12は固体酸化物形の発電セルを有する。
空気流量調節部16の動作は燃料電池制御部13が制御する。
【0045】
アノード12aから排出されるアノード排出ガス及びカソード12bから排出されるカソード排出ガスは燃焼部18に供給される。
【0046】
燃焼部18は、アノード12aから排出されるアノード排出ガスに含まれる燃焼成分を燃焼させる。尚、燃焼部18には、カソード12bから排出されるカソード排出ガスも供給され、そのカソード排出ガスに含まれる酸素が燃焼に利用される。そして、燃焼部18で発生した燃焼熱が、改質部17による原燃料ガスの水蒸気改質に利用される。また、改質部17に水蒸気を供給するための気化器が設けられている場合には、燃焼熱が気化器に供給されて水の気化に利用される。
【0047】
燃焼部18から排出される燃焼排ガスは、燃焼排ガス流路L4を介して熱交換器19に供給される。また、熱交換器19には、湯水循環路L5を流れる湯水(本発明の「熱媒体」の一例)が供給される。そして、熱交換器19で、燃焼排ガスと湯水との熱交換が行われる。本実施形態では、この熱交換によって、燃焼排ガスが冷却され、湯水循環路L5を流れる湯水が加熱される。
【0048】
湯水循環路L5は、貯湯タンク25と熱交換器19との間で湯水を循環させる。貯湯タンク25には、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように、即ち、温度成層を形成する状態で湯水が貯えられる。具体的に説明すると、湯水循環路L5は、貯湯タンク25から熱交換器19へ湯水を移送する往路L5aと、熱交換器19から貯湯タンク25へ湯水を移送する復路L5bとで構成され、往路L5aの途中に設けられる循環ポンプ26を有する。
【0049】
このような構成により、貯湯タンク25の下部から湯水循環路L5の往路L5aを介して熱交換器19に供給される湯水はその熱交換器19で加熱され、加熱後の湯水は湯水循環路L5の復路L5bを介して貯湯タンク25の上部に供給される。復路L5bの途中に、熱交換器19から貯湯タンク25へ移送される湯水の温度を測定する温度測定部27が設けられる。本実施形態では、燃料電池制御部13は、復路L5bを流れて貯湯タンク25に流入する湯水の温度(温度測定部27で測定される湯水の温度)が所定の貯湯目標温度(例えば65℃など)になるように循環ポンプ26の動作を制御する。このようにして、貯湯タンク25に温度成層を形成する状態で湯水が貯湯、即ち、蓄熱される。
【0050】
貯湯タンク25の下部から熱交換器19に至る間の湯水循環路L5の往路L5aには、放熱用ファン31aを有する放熱器31が設けられる。放熱用ファン31aが回転することで、湯水循環路L5を流れる湯水からの放熱が促進される。つまり、燃料電池装置10は、熱交換器19に供給される熱媒体としての湯水の温度を空気によって低下させる放熱器31を備える。また、燃料電池装置10は、熱交換器19に供給される前の湯水から放熱させる放熱用ファン31aを備える。
【0051】
湯水循環路L5の往路L5aには、熱交換器19に供給される湯水の温度(熱交換用湯水温度)を測定する湯水温度測定部33が設けられる。つまり、燃料電池装置10は、熱交換器19に供給される熱媒体としての湯水の温度を測定する熱媒体温度測定部としての湯水温度測定部33を備える。
【0052】
燃料電池制御部13は、湯水温度測定部33で測定される熱交換用湯水温度が所定の基準湯水温度(基準熱媒体温度)以下になるように放熱器31を動作させる。例えば、燃料電池制御部13は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度以下である場合には放熱器31を動作させず(即ち、放熱用ファン31aを回転させず)、熱交換用湯水温度が基準湯水温度より高い場合には放熱器31を動作させる(即ち、放熱用ファン31aを回転させる)。更に、燃料電池制御部13は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度より高くなるにつれて、放熱用ファン31aの回転速度を増大させて放熱能力を上昇させる。
【0053】
また、燃料電池制御部13には、筐体35の開口部36を通して筐体35の外部から内部に流入する空気の温度(即ち、外気温度)を測定する外気温度測定部34の測定結果、及び、放熱器31が取り込む空気の温度である吸気温度を測定する吸気温度測定部32の測定結果が伝達される。
【0054】
貯湯タンク25の下部には、貯湯タンク25に上水を供給するための給水路L6a(L6)が接続され、貯湯タンク25の上部には、貯湯タンク25で貯えている湯水を排出するための出湯路L7が接続される。出湯路L7の途中には給水路L6b(L6)が接続され、貯湯タンク25から出湯される湯水に上水を混合することができる。貯湯タンク25から出湯される湯水に混合する上水の量は、給水路L6bの途中に設けられる調節弁29によって調節される。例えば、燃料電池制御部13は、温度測定部28によって測定される混合後の湯水の温度が所定温度(例えば30℃)になるように、調節弁29の動作を制御する。そして、混合後の湯水は熱源装置30を介して、利用者へと供給される。
【0055】
熱源装置30は、原燃料ガスを燃焼してその燃焼熱により湯水を加熱する。例えば、利用者から40℃の湯水の要求を受け付けている場合、燃料電池制御部13は、熱源装置30によって湯水を40℃に加熱した上で利用者に供給する。
【0056】
燃焼部18から排出される燃焼排ガスには水蒸気も含まれている。そのため、燃焼排ガスを熱交換器19で冷却した場合、水蒸気が凝縮する。そして、その凝縮水は水回収路L9へと流入する。回収された凝縮水は、水精製器21を経由して、水タンク22に供給される。水精製器21は、回収した凝縮水に含まれる不純物を除去するための機器である。例えば、水精製器21は、イオン交換樹脂等を充填しており、回収した凝縮水に含まれる電解質のイオン(例えば、イオン化して溶存している塩類やアンモニアなど)を例えばH+、OH-と交換することで、回収水した凝縮水に含まれる電解質の濃度を相対的に低くさせる(即ち、電気伝導度を低くさせる)機能を果たす。
【0057】
水タンク22には、水タンク22に貯留されている貯留水の量である貯留水量を測定する水量測定部23が設けられている。水量測定部23の測定結果は燃料電池制御部13に伝達される。燃料電池制御部13は、貯留水量が所定の基準水量未満である場合には燃料電池部12の発電電力を定格発電電力未満の抑制時電力にさせる出力抑制運転を行い、出力抑制運転の停止条件が満たされた場合には出力抑制運転を停止させるように構成される。この出力抑制運転が行われることで、貯留水量が増加する又は貯留水量の減少速度が遅くなることが期待される。そして、貯留水量が増加した場合には、燃料電池制御部13によって出力抑制運転が停止される。
【0058】
例えば、水タンク22の容量が2Lの場合、基準水量を1Lに設定することができる。そして、燃料電池制御部13は、貯留水量が1L未満である場合には燃料電池部12の発電電力を定格発電電力(例えば700Wなど)未満の抑制時電力(例えば200Wなど)にさせる出力抑制運転を行う。そして、燃料電池制御部13は、出力抑制運転の停止条件(例えば、貯留水量が1L以上である期間が60分に達したこと等)が満たされた場合には出力抑制運転を停止させる。
【0059】
燃料電池制御部13は、出力抑制運転を行っていることを示す運転情報を管理装置40に伝達する。例えば、燃料電池制御部13は、貯留水量についての情報と出力電力についての情報を運転情報として管理装置40に伝達する。そして、管理装置40は、燃料電池装置10での貯留水量が、記憶部14で記憶している基準水量未満であり、且つ、燃料電池装置10の出力電力が、記憶部14で記憶している出力抑制運転時の出力電力(例えば200W)である場合、その燃料電池装置10が出力抑制運転を行っていると判定する。
【0060】
他の例として、燃料電池制御部13は、出力抑制運転を行っていることを直接示す情報を運転情報として管理装置40に伝達してもよいし、水量測定部23で測定した貯留水量を運転情報として管理装置40に伝達してもよい。管理装置40は、燃料電池装置10の基準水量についての情報を予め記憶しているため、燃料電池装置10から伝達された貯留水量が、記憶部14で記憶している基準水量未満であれば、その燃料電池装置10が出力抑制運転を行っていると判定してもよい。つまり、貯留水量、出力電力も、出力抑制運転を行っていることを示す運転情報の一例になる。
【0061】
また、燃料電池制御部13は、貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報を管理装置40に伝達する。水量指標情報は、例えば、貯留水量、貯留水量の減少速度、貯留水量と基準水量との間の水量差、外気温度、放熱器31の吸気温度、放熱器31の放熱用ファン31aの回転速度、熱交換用湯水温度などである。
【0062】
〔貯留水量の減少速度〕
貯留水量の減少速度が水量指標情報として管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、貯留水量の減少速度が所定の基準減少速度(例えば、貯留水量の減少速度がゼロ等)よりも速い場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、貯留水量の減少速度が基準減少速度以下の場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0063】
管理装置40は、貯留水量の減少速度が基準減少速度よりも速い燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定し、貯留水量の減少速度が基準減少速度を上回る速度幅が大きいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。
【0064】
〔貯留水量と基準水量との間の水量差〕
貯留水量と基準水量との間の水量差が水量指標情報としての管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、貯留水量が基準水量以上であるが水量差が所定範囲内にある場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、貯留水量が基準水量以上であり且つ水量差が所定範囲を超えている場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0065】
例えば、管理装置40は、貯留水量と基準水量との間の水量差が0.3Lの範囲内である燃料電池装置10は貯留水量の減少度合いが高いと判定し、貯留水量が基準水量以上であり且つ水量差が0.3Lより大きい燃料電池装置10は貯留水量の減少度合いが低いと判定してもよい。
【0066】
管理装置40は、水量差が0.3Lの範囲内である燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定する。更に、管理装置40は、水量差が0.3Lの範囲内で、且つ、水量差が小さいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。例えば、水量差が0.05Lである(即ち、貯留水量が1.05Lである)燃料電池装置10と、水量差が0.1Lである(即ち、貯留水量が1.1Lである)燃料電池装置10と、水量差が0.3Lである(即ち、貯留水量が1.3Lである)燃料電池装置10とが存在する場合、管理装置40は、何れの燃料電池装置10も貯留水量の減少度合いが高いと判定し、且つ、貯留水量の減少度合いが高い順に、「水量差が0.05Lである燃料電池装置10」→「水量差が0.1Lである燃料電池装置10」→「水量差が0.3Lである燃料電池装置10」と判定してもよい。
【0067】
〔貯留水量〕
貯留水量が水量指標情報として管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、貯留水量の減少速度を算出できる。そして、管理装置40は、貯留水量の減少速度が所定の基準減少速度よりも速い場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。
或いは、貯留水量が水量指標情報として管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、貯留水量と基準水量との間の水量差を導出できる。そして、管理装置40は、貯留水量が基準水量以上であるが水量差が所定範囲内にある場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。
【0068】
〔外気温度〕
放熱器31は空気によって湯水からの放熱を促進することで、熱交換器19に供給される湯水の温度(熱交換用湯水温度)を低下させる。放熱器31を動作させる場合、外気温度が低いほど、熱交換用湯水温度を低下させることができ、燃焼排ガスの温度を低下させることができる。つまり、放熱器31を動作させる場合、外気温度が低いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、外気温度が高いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。このように、外気温度は、貯留水量の減少度合いの指標となると言える。
【0069】
外気温度が水量指標情報としての管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、外気温度が基準外気温度以上である場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、外気温度が基準外気温度未満である場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0070】
例えば、管理装置40は、外気温度が基準外気温度(例えば30℃など)以上である燃料電池装置10は貯留水量の減少度合いが高いと判定し、外気温度が基準外気温度未満である燃料電池装置10は貯留水量の減少度合いが低いと判定してもよい。
【0071】
管理装置40は、外気温度が基準外気温度(例えば30℃など)以上である燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定し、更に、基準外気温度を上回る温度幅が大きいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。例えば、外気温度が32℃である燃料電池装置10と外気温度が35℃である燃料電池装置10とが存在する場合、管理装置40は、両方の燃料電池装置10で貯留水量の減少度合いが高いと判定し、且つ、外気温度が35℃である燃料電池装置10の方が貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。
【0072】
〔放熱器31の吸気温度〕
放熱器31は空気によって湯水から放熱させることで、熱交換器19に供給される湯水の温度(熱交換用湯水温度)を低下させる。放熱器31を動作させる場合、吸気温度測定部32で測定される放熱器31の吸気温度が低いほど、熱交換器19に供給される湯水の温度である熱交換用湯水温度を低下させることができ、燃焼排ガスの温度を低下させることができる。つまり、放熱器31を動作させる場合、放熱器31の吸気温度が低いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、放熱器31の吸気温度が高いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。このように、放熱器31の吸気温度は、貯留水量の減少度合いの指標となると言える。
【0073】
放熱器31の吸気温度が水量指標情報としての管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、放熱器31の吸気温度が基準吸気温度以上である場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、放熱器31の吸気温度が基準吸気温度より低い場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0074】
管理装置40は、吸気温度が基準吸気温度以上である燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定する。更に、管理装置40は、吸気温度が基準吸気温度を上回る温度幅が大きいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。
【0075】
〔熱交換用湯水温度〕
湯水温度測定部33で測定される熱交換器19に供給される湯水の温度である熱交換用湯水温度が低いほど、燃焼排ガスの温度を低下させることができる。つまり、熱交換用湯水温度が低いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、熱交換用湯水温度が高いほど、水タンク22に回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。このように、熱交換用湯水温度は、貯留水量の減少度合いの指標となると言える。
【0076】
熱交換器19に供給される湯水(熱媒体)の温度である熱交換用湯水温度が水量指標情報としての管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度(基準熱媒体温度)以上である場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度より低い場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0077】
管理装置40は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度以上である燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定し、更に、熱交換用湯水温度が基準湯水温度を上回る温度幅が大きいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。
【0078】
〔放熱器31の放熱用ファン31aの回転速度〕
燃料電池制御部13は、湯水温度測定部33で測定される熱交換用湯水温度が基準湯水温度(基準熱媒体温度)以下である場合には放熱器31を動作させず(即ち、放熱用ファン31aを回転させず)、熱交換用湯水温度が基準湯水温度より高い場合には放熱器31を動作させる(即ち、放熱用ファン31aを回転させる)。更に、燃料電池制御部13は、熱交換用湯水温度が基準湯水温度より高くなるにつれて、放熱用ファン31aの回転速度を増大させて放熱能力を上昇させる。
【0079】
つまり、放熱用ファン31aの回転速度が低いほど、熱交換用湯水温度が低くなっており、水タンク22に回収される凝縮水の量は多くなる(即ち、貯留水量の減少度合いが低くなる)と推測でき、放熱用ファン31aの回転速度が高いほど、熱交換用湯水温度が高くなっており、水タンク22に回収される凝縮水の量は少なくなる(即ち、貯留水量の減少度合いが高くなる)と推測できる。このように、放熱用ファン31aの回転速度は、貯留水量の減少度合いの指標となると言える。
【0080】
放熱用ファン31aの回転速度が水量指標情報としての管理装置40に伝達される場合、管理装置40は、放熱用ファン31aの回転速度が基準回転速度以上である場合、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる。また、管理装置40は、放熱用ファン31aの回転速度が基準回転速度より低い場合、貯留水量の減少度合いが低いと判定できる。
【0081】
管理装置40は、放熱用ファン31aの回転速度が基準回転速度以上である燃料電池装置10が複数台存在する場合、その何れもが貯留水量の減少度合いが高いと判定し、更に、放熱用ファン31aの回転速度が基準回転速度を上回る回転速度幅が大きいほど、貯留水量の減少度合いがより高いと判定してもよい。
【0082】
上述したように、管理装置40は、複数の燃料電池装置10に対して、燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。そして、燃料電池装置10は、管理装置40から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0083】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置10において予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置40は、複数の燃料電池装置10に対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置10は、管理装置40から受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。例えば、第2運転モードは、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力で維持する運転、燃料電池装置10の出力電力を電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転などである。
【0084】
尚、上述したように、燃料電池装置10は、第1運転モード及び第2運転モードの何れで動作していても、貯留水量が所定の基準水量未満である場合には燃料電池部12の発電電力を定格発電電力未満の抑制時電力にさせる出力抑制運転を行い、出力抑制運転の停止条件が満たされた場合には出力抑制運転を停止させる。
【0085】
図4は、制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
図4に示した例では、制御情報(出力制御指令)において、12時~15時の間が制御対象期間に指定されている。そのため、この燃料電池装置10は、12時~15時の制御対象期間は、第1運転モードで動作し、それ以外の非制御対象期間は、第2運転モードで動作する。
【0086】
燃料電池装置10は、管理装置40から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする。但し、燃料電池装置10が出力抑制運転を行っている場合、出力制御指令に応じない方が好ましい場合や、出力制御指令に応じた方が好ましい場合などがある。
【0087】
そのため、本実施形態の管理装置40は、指令送信処理において出力増加指令(出力制御指令)を送信する場合に、複数の燃料電池装置10から取得した、出力抑制運転を行っていることを示す運転情報、及び、貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいて、複数の燃料電池装置10のうち、出力抑制運転を行っておらず、且つ、貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10に対して優先して出力増加指令を送信する出力増加処理、及び、指令送信処理において出力低下指令(出力制御指令)を送信する場合に、運転情報、及び、水量指標情報に基づいて、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令を送信する出力低下処理、の少なくとも一方を行う。
【0088】
以下に、管理装置40が、複数の燃料電池装置10のうち、どの燃料電池装置10に対して出力制御指令を送信するのかを決定する手法例について説明する。例えば、燃料電池装置10は、運転情報及び水量指標情報を含む装置情報を管理装置40に対して逐次送信している。その結果、管理装置40は、運転情報に基づいて、各燃料電池装置10が出力抑制運転を行っているか否かを判定できる。更に、管理装置40は、燃料電池装置10が出力抑制運転を行っていない場合であっても、水量指標情報に基づいて、貯留水量の減少度合いの高低、即ち、将来に出力抑制運転が行われる可能性が高いか否かを判定できる。
【0089】
尚、以下の説明では、管理装置40が、4台の燃料電池装置10A、10B、10C、10D(10)に対して出力制御指令を送信する場合を説明する。また、燃料電池装置10A、10B、10C、10Dのそれぞれが、上限出力電力(700W)と下限出力電力(50W)との間で電力線2への出力電力を調節できるものとする。
【0090】
〔判定手法例1〕
判定手法例1は、以下の表1に示すように、管理装置40が、指令送信処理において出力増加指令を送信する場合に、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10に対して優先して出力増加指令を送信する出力増加処理の例である。
【0091】
【0092】
表1に示す例では、燃料電池装置10A、10B、10C、10D全てに、出力電力をプラス方向に変化させる上げ余力が存在している。但し、燃料電池装置10Aは、出力抑制運転を行っているため、管理装置40は、燃料電池装置10Aには出力増加指令を送信しない。残りの燃料電池装置10B、10C、10Dを貯留水量の減少度合いが低い順、即ち、貯留水量が多い順に並べると、燃料電池装置10B→燃料電池装置10C→燃料電池装置10Dの順になる。その結果、管理装置40は、合計で600Wの出力電力上昇のうち、燃料電池装置10Aに対しては出力上昇を割り振らず、燃料電池装置10Bに対して出力上昇幅:300Wを割り振り、燃料電池装置10Cに対して出力上昇幅:200Wを割り振り、燃料電池装置10Dに対して出力上昇幅:100Wを割り振る。つまり、管理装置40は、燃料電池装置10Bに対して出力電力:700Wで動作させる指令を与え、燃料電池装置10Cに対して出力電力:600Wで動作させる指令を与え、燃料電池装置10Dに対して出力電力:500Wで動作させる指令を与えることになる。
【0093】
尚、出力上昇幅の割り振りの手法は上述したものに限定されない。例えば、貯留水量の減少度合いが最も低い燃料電池装置10から順に最大の出力上昇幅を割り振ってもよい。表1に示した例の場合、必要な600Wの出力電力上昇のうち、先ず、貯留水量の減少度合いが最も低い燃料電池装置10Bに対して最大の出力上昇幅:300Wを割り振り、更に、貯留水量の減少度合いが二番目に低い燃料電池装置10Cに対して最大の出力上昇幅:300Wを割り振ってもよい。
【0094】
〔判定手法例2〕
判定手法例2は、以下の表2に示すように、管理装置40が、指令送信処理において出力低下指令を送信する場合に、複数の燃料電池装置10のうち、出力抑制運転を行っておらず、且つ、貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令を送信する出力低下処理の例である。
【0095】
【0096】
表2に示す例では、出力低下処理での出力低下の限度は200Wに設定されている。つまり、この例では、管理装置40は、出力抑制運転を行っている燃料電池装置10Aを、出力低下指令の送信対象からは除外している。そのため、燃料電池装置10B、10C、10Dには、出力電力をマイナス方向に変化させる下げ余力が存在している。燃料電池装置10B、10C、10Dを貯留水量の減少度合いが高い順、即ち、貯留水量が少ない順に並べると、燃料電池装置10D→燃料電池装置10C→燃料電池装置10Bの順になる。その結果、管理装置40は、合計で1000Wの出力電力低下のうち、燃料電池装置10Aに対しては出力低下を割り振らず、燃料電池装置10Bに対して出力低下幅:200Wを割り振り、燃料電池装置10Cに対して出力低下幅:300Wを割り振り、燃料電池装置10Dに対して出力低下幅:500Wを割り振る。つまり、管理装置40は、燃料電池装置10Bに対して出力電力:500Wで動作させる指令を与え、燃料電池装置10Cに対して出力電力:400Wで動作させる指令を与え、燃料電池装置10Dに対して出力電力:200Wで動作させる指令を与えることになる。
【0097】
尚、出力低下幅の割り振りの手法は上述したものに限定されない。例えば、貯留水量の減少度合いが最も高い燃料電池装置10から順に最大の出力低下幅を割り振ってもよい。表2に示した例の場合、必要な1000Wの出力電力上昇のうち、先ず、貯留水量の減少度合いが最も高い燃料電池装置10Dに対して最大の出力低下幅:500Wを割り振り、更に、貯留水量の減少度合いが二番目に高い燃料電池装置10Cに対して最大の出力上昇幅:500Wを割り振ってもよい。
【0098】
以上のように、本実施形態では、指令送信処理において出力増加指令を送信する場合には、複数の燃料電池装置10のうち、出力抑制運転を行っていない燃料電池装置10、即ち、水タンク22での貯留水量が少なくなっていない燃料電池装置10、及び、貯留水量の減少度合いの指標となる水量指標情報に基づいてその貯留水量の減少度合いが低いと判定できる燃料電池装置10に対して優先して出力増加指令が送信される。つまり、貯留水量が現に少ない又は少なくなる傾向が強い燃料電池装置10に対して、出力を増加させる運転、即ち、貯留水量が更に減少する又は増加し難くなる方向での運転が指令されることが極力抑制される。また、指令送信処理において出力低下指令を送信する場合には、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量の減少度合いが高いと判定できる燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令が送信される。つまり、貯留水量が現に少ない又は少なくなる傾向が強い燃料電池装置10に対して、出力を低下させる運転、即ち、貯留水量が増加する又は減少し難くなる方向での運転が指令されるようになる。従って、燃料電池装置10の水自立を適切に行いながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行える電源管理システムを提供できる。
【0099】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
【0100】
<2>
上記実施形態において、管理装置40は、出力増加処理及び出力低下処理の両方を行ってもよいし、或いは、何れか一方を行ってもよい。
【0101】
<3>
上記実施形態では、管理装置40が、一種類の水量指標情報に基づいて出力増加処理及び出力低下処理を行う例を説明したが、上述した複数種類の水量指標情報のうちの二種類以上の水量指標情報に基づいて出力増加処理及び出力低下処理を行っても良い。
【0102】
その場合、複数種類の水量指標情報をどのような優先順位で参照するのかを予め記憶部14に記憶しておき、管理装置40は、その優先順位に基づいて、複数の燃料電池装置10に割り振る出力上昇幅及び出力低下幅を決定してもよい。例えば、管理装置40は、複数の燃料電池装置10における複数種類の水量指標情報とそれらの優先順位に基づいて、それら複数の燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い方から順又は低い方から順に並べる。そして、管理装置40は、出力増加指令を送信する場合、貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10に対して優先して出力増加指令を送信し、出力低下指令を送信する場合、貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令を送信する。
【0103】
一例として、貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10に対して優先して出力低下指令を送信する出力低下処理を行う場合、優先順位の高い方から順に、「貯留水量と基準水量との間の水量差」→「貯留水量の減少速度」→「外気温度」→「放熱器31の吸気温度」→「放熱器31の放熱用ファン31aの回転速度」→「熱交換用湯水温度」となる場合を考える。この例であれば、管理装置40は、先ず、貯留水量が基準水量以上であるがその水量差が所定範囲内にある燃料電池装置10は優先順位が高いと判定され、更に、その燃料電池装置10のうち、水量差が小さいほど優先順位が高いと判定されて、出力低下指令が優先して送信される。また、管理装置40は、水量差が同じであれば、貯留水量の減少速度が最も早い燃料電池装置10が優先順位が高いと判定するというように、複数の水量指標情報を優先順位の順に参照すればよい。
【0104】
例えば、1台の燃料電池装置10Aにおいて「貯留水量と基準水量との間の水量差」が100mL且つ「外気温度」が35℃であり、別の燃料電池装置10Bにおいて「貯留水量と基準水量との間の水量差」が50mL且つ「外気温度」が30℃である場合を考える。この場合、「外気温度」は燃料電池装置10Aの方が高いものの、出力低下指令が優先的に行われるのは、「貯留水量と基準水量との間の水量差」が小さい方の燃料電池装置10Bである。そして、管理装置40は、合計で500Wの出力電力低下を指令する場合、燃料電池装置10Bに対して300Wの出力低下を指令し、燃料電池装置10Aに対して200Wの出力低下を指令することを行う。
【0105】
他の例として、1台の燃料電池装置10Aにおいて「貯留水量と基準水量との間の水量差」が100mL且つ「外気温度」が35℃であり、別の燃料電池装置10Bにおいて「貯留水量と基準水量との間の水量差」が100mL且つ「外気温度」が30℃である場合を考える。つまり、管理装置40は、優先順位が最も高い「貯留水量と基準水量との間の水量差」は互いに同じであるので、次に優先順位の高い「外気温度」を参照する。そして、管理装置40は、「外気温度」が高い方の燃料電池装置10Aを、出力低下指令が優先的に行われる装置として決定する。
【0106】
<4>
上記実施形態において、管理装置40は、出力抑制運転を行っている燃料電池装置10Aを、出力増加指令の送信対象及び出力減少指令の送信対象に含めてもよい。
【0107】
<5>
上記実施形態では、具体的な数値を例示して説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0108】
<6>
上記実施形態では、燃料電池装置10が、通信中継装置としてのリモコン7及びルーター6を介して管理装置40と情報通信する例を説明したが、他の装置を介して管理装置40と通信してもよい。例えば、LTE等の携帯電話の通信規格を利用した通信中継装置を用いて、燃料電池装置10と管理装置40との間の情報通信を行ってもよい。
【0109】
<7>
上記実施形態では、水量指標情報を何らかの基準値と対比することで、各燃料電池装置10での貯留水量の減少度合いの高低を判定する例を説明したが、水量指標情報を何らかの基準値と対比せずに、各燃料電池装置10での貯留水量の減少度合いの高低を判定してもよい。例えば、管理装置40は、複数の燃料電池装置10の水量指標情報同士を対比することで、相対的に貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10、及び、相対的に貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10を決定してもよい。
【0110】
例えば、管理装置40は、貯留水量の減少速度を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量の減少速度が相対的に速い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、貯留水量の減少速度が相対的に遅い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0111】
また、管理装置40は、貯留水量を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、貯留水量が相対的に少ない燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、貯留水量が相対的に多い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0112】
また、管理装置40は、複数の燃料電池装置10の外気温度を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、外気温度が相対的に高い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、外気温度が相対的に低い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0113】
また、管理装置40は、放熱器31の吸気温度を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、放熱器31の吸気温度が相対的に高い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、放熱器31の吸気温度が相対的に低い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0114】
また、管理装置40は、熱交換器19に供給される湯水(熱媒体)の温度である熱交換用湯水温度を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、熱交換用湯水温度が相対的に高い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、熱交換用湯水温度が相対的に低い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0115】
また、管理装置40は、放熱用ファン31aの回転速度を水量指標情報として参照する場合、複数の燃料電池装置10のうち、放熱用ファン31aの回転速度が相対的に高い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが高い燃料電池装置10として決定し、放熱用ファン31aの回転速度が相対的に低い燃料電池装置10を貯留水量の減少度合いが低い燃料電池装置10として決定してもよい。
【0116】
<8>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、燃料電池装置の水自立を適切に行いながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行える電源管理システムに利用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 :電力系統
4 :電力負荷装置
10(10A、10B、10C、10D) :燃料電池装置
12 :燃料電池部
13 :燃料電池制御部
17 :改質部
18 :燃焼部
19 :熱交換器
20 :施設
22 :水タンク
23 :水量測定部
27 :温度測定部
28 :温度測定部
31 :放熱器
31a :放熱用ファン
32 :吸気温度測定部
33 :湯水温度測定部(熱媒体温度測定部)
34 :外気温度測定部
40 :管理装置