(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060232
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御方法、電力制御プログラム及び電力制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240424BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240424BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240424BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02J13/00 301
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J13/00 311R
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167473
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】湊 惇朗
(72)【発明者】
【氏名】鴨山 大輔
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064DA03
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】需要家に設置された蓄電池から商用電力系統に出力させる電力を高精度に制御する。
【解決手段】本電力制御装置は、需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続される電力制御装置である。本電力制御装置は、商用電力系統から上記負荷が電力の供給を受ける受電点を流れる電力を測定する測定部と、上記受電点の基準電力の指令値を上位装置から受信する通信部と、上記指令値と、上記測定部によって測定された測定値とを基に、上記蓄電部の充放電電力を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続される電力制御装置であって、
商用電力系統から前記負荷が電力の供給を受ける受電点を流れる電力を測定する測定部と、
前記受電点の基準電力の指令値を上位装置から受信する通信部と、
前記指令値と、前記測定部によって測定された測定値とを基に、前記蓄電部の充放電電力を制御する制御部と、を備える、
電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電部が放電中かつ前記測定値が前記指令値以上の場合、前記蓄電部からの放電電力を抑制する、
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記蓄電部からの放電電力を抑制し、前記蓄電部からの放電が停止後において、前記測定部によって測定された停止後の前記測定値が前記指令値以上の場合、前記停止後の前記測定値から前記指令値を減算した分の電力を前記蓄電部に充電させる、
請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記電力制御装置には、自然エネルギーを基に発電する発電部が接続され、
前記制御部は、前記測定値が前記指令値以上の場合、前記発電部によって出力される電力を前記蓄電部に充電する制御及び前記発電部によって出力される電力を抑制する制御の少なくとも一方の制御を実行する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続されるコンピュータが、
商用電力系統から前記負荷が電力の供給を受ける受電点を流れる電力を測定する測定ステップと、
前記受電点の基準電力の指令値を上位装置から受信する受信ステップと、
前記指令値と、前記測定ステップにおいて測定された測定値とを基に、前記蓄電部の充放電電力を制御する制御ステップと、を実行する、
電力制御方法。
【請求項6】
需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続されるコンピュータに、
商用電力系統から前記負荷が電力の供給を受ける受電点を流れる電力を測定する測定ステップと、
前記受電点の基準電力の指令値を上位装置から受信する受信ステップと、
前記指令値と、前記測定ステップにおいて測定された測定値とを基に、前記蓄電部の充放電電力を制御する制御ステップと、を実行させる、
電力制御プログラム。
【請求項7】
需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続された電力制御装置、及び、上位装置を含む電力制御システムであって、
前記上位装置は、商用電力系統から前記負荷が電力の供給を受ける受電点の基準電力の指令値を前記電力制御装置に出力し、
前記電力制御装置は、
前記受電点を流れる電力を測定する測定部と、
前記指令値を前記上位装置から受信する通信部と、
前記指令値と、前記測定部によって測定された測定値とを基に、前記蓄電部の充放電電力を制御する制御部と、を備える、
電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御装置、電力制御方法、電力制御プログラム及び電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各地に点在する複数の蓄電池を遠隔から制御する電力供給システムが利用されている。このような電力供給システムにおいて、電力需要の予測を行って蓄電池に充放電させる電力を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
需要家に設置された蓄電池から商用電力系統に出力させる電力を遠隔から指示することで、電力取引市場における電力需給の調整が行われる。しかしながら、需要家における電力需要は変動する上に、変動する電力需要の予測精度も高くないことから、蓄電池から商用電力系統へ出力させる電力を高精度に制御することは困難であった。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、需要家に設置された蓄電池から商用電力系統に出力させる電力及び商用電力系統から受電する電力を高精度に制御できる電力制御装置、電力制御方法、電力制御プログラム及び電力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような電力制御装置によって例示される。本電力制御装置は、需要家に設置された負荷及び蓄電部に接続される電力制御装置である。本電力制御装置は、商用電力系統から上記負荷が電力の供給を受ける受電点を流れる電力を測定する測定部と、上記受電点の基準電力の指令値を上位装置から受信する通信部と、上記指令値と、上記測定部によって測定された測定値とを基に、上記蓄電部の充放電電力を制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記電力制御装置によれば、上記指令値と上記測定値を基に蓄電池の充放電電力が制御される。そのため、上記負荷の消費電力の変動等によって上記受電点を流れる電力に変動があっても、その変動に追随して蓄電池の充放電電力を制御できる。そのため、上記電力制御装置によれば、需要家に設置された蓄電池から商用電力系統に出力させる電力及び商用電力系統から受電する電力を高精度に制御できる。
【0008】
上記電力制御装置は、次の特徴を備えてもよい。上記制御部は、上記蓄電部が放電中かつ上記測定値が上記指令値以上の場合、上記蓄電部からの放電電力を抑制する。上記電力制御装置は、このような特徴を備えることで、受電点を流れる電力の指令値に対する過不足分を蓄電池からの充放電によって補うことができる。
【0009】
ここで、上記電力制御装置は、上記蓄電部からの放電電力を抑制し、前記蓄電部からの放電が停止後において、上記測定部によって測定された停止後の上記測定値が上記指令値以上の場合、上記停止後の上記測定値から上記指令値を減算した分の電力を上記蓄電部に充電させてもよい。上記電力制御装置は、このような特徴を備えることで、蓄電池からの
放電が停止した後においても、なお、受電点を流れる電力が指令値以上となってしまう場合でも、受電点を流れる電力を指令値に可及的に近づけることができる。
【0010】
上記電力制御装置は、次の特徴を備えてもよい。上記電力制御装置には、自然エネルギーを基に発電する発電部が接続され、上記制御部は、上記測定値が上記指令値以上の場合、上記発電部によって出力される電力を上記蓄電部に充電する制御及び上記発電部によって出力される電力を抑制する制御の少なくとも一方の制御を実行する。上記電力制御装置は、このような特徴を備えることで、受電点を流れる電力が指令値以上となることを抑制し、ひいては、商用電力系統に出力させる電力を高精度に制御できる。
【0011】
開示の技術は、電力制御方法、電力制御プログラム、及び、上記上位装置と上記電力制御装置を備える電力制御システムの側面から把握することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、需要家に設置された蓄電池から商用電力系統に出力させる電力を高精度に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力制御システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るPCSの処理ブロックの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、制御電力演算部による蓄電池の充放電制御の一例を示す第1の図である。
【
図4】
図4は、制御電力演算部による蓄電池の充放電制御の一例を示す第2の図である。
【
図5】
図5は、制御電力演算部による蓄電池の充放電制御の一例を示す第3の図である。
【
図6】
図6は、コントローラによる指令値の決定を例示する第1の図である。
【
図7】
図7は、コントローラによる指令値の決定を例示する第2の図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るコントローラの処理フローの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るPCSの処理フローの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1変形例に係る電力制御システムの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2変形例に係る電力制御システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<適用例>
以下、本発明の適用例について、図面を参照して説明する。本発明は、例えば、
図1に一例を示すPCS10に適用される。PCS10は、商用電力系統40と連系して負荷30に電力を供給するパワーコンディショナである。商用電力系統40から負荷30が電力を受ける受電点2の上流側には、受電点2に流れる電流を測定する電流計1が設けられる。PCS10には、蓄電池20及び太陽光発電パネル21が接続されており、PCS10は、蓄電池20に蓄電された電力及び太陽光発電パネル21によって発電された電力を負荷30に供給する。PCS10、蓄電池20、太陽光発電パネル21及び負荷30は、負荷30を保有する需要家(例えば、個人の住宅や店舗等)に設置される。
【0015】
PCS10は、受電点2の基準電力の指令値をネットワークN1を介してコントローラ50から受信する。仮に一定の電力を蓄電池20に出力させても、負荷30の消費電力の変動や太陽光発電パネル21の発電量の変動により、受電点2を流れる電力は変動する。そこで、PCS10は、受電点2を流れる電力を測定する。そして、PCS10は、受電点2を流れる電力が指令値にしたがうように、指令値が示す電力及び受電点2を流れる電力を基に蓄電池20の充放電電力を制御する。PCS10は、このような制御により、商
用電力系統40に向けて出力させる電力及び商用電力系統40から受電する電力を高精度に制御できる。
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照してPCS10についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係る電力制御システム100の一例を示す図である。電力制御システム100は、PCS10、蓄電池20、太陽光発電パネル21、負荷30及びコントローラ50を備える。電力制御システム100には、商用電力系統40が接続される。
【0017】
商用電力系統40は、例えば、火力発電所、原子力発電所及び水力発電所等の発電所によって発電した電力をPCS10を介して負荷30に供給する。
【0018】
太陽光発電パネル21は、太陽光を電力に変換する太陽電池を用いて発電する発電機である。太陽光発電パネル21は、例えば、住宅や店舗の屋根に設置される。太陽光発電パネル21は、PCS10に接続される。太陽光発電パネル21によって発電可能な発電量は、天候等の影響により変動する。太陽光発電パネル21によって発電された電力は、PCS10からの指示に応じて負荷30に供給されたり、蓄電池20に蓄電されたりする。太陽光発電パネル21は、「自然エネルギーを基に発電する発電部」の一例である。
【0019】
蓄電池20は、太陽光発電パネル21によって発電された電力や商用電力系統40から供給された電力を蓄電する。蓄電池20は、PCS10に接続される。蓄電池20に蓄電された電力は、PCS10からの指示に応じて負荷30へ供給されたり、商用電力系統40に出力されたりする。蓄電池20は、「蓄電部」の一例である。
【0020】
コントローラ50は、アグリゲータによって設置される情報処理装置である。コントローラ50は、受電点2を流れる基準電力の指令値をPCS10に対して出力する。コントローラ50は、「上位装置」の一例である。
【0021】
電流計1は、受電点2の上流側(商用電力系統40側)に設けられ、受電点2を流れる電流を測定する。電流計1は、PCS10の接続端子106に接続される。電流計1は、測定した電流を接続端子106を介してPCS10に出力する。
【0022】
PCS10は、パワーコンディショナである。PCS10は、商用電力系統40、蓄電池20及び太陽光発電パネル21から供給される電力を負荷30に供給する。また、PCS10は、蓄電池20に蓄電された電力を商用電力系統40に向けて出力させる。PCS10は、受電点2を流れる電流の測定値を電流計1から取得し、取得した電流の測定値を基に受電点2を流れる電力を測定する。PCS10は、「電力制御装置」及び「コンピュータ」の一例である。
【0023】
PCS10は、コントローラ50から指令値を受信すると、受電点2を流れる電力及びコントローラ50から受信した指令値を基に、蓄電池20の充放電電力を制御する。
【0024】
ネットワークN1は、PCS10とコントローラ50とを接続するコンピュータネットワークである。ネットワークN1は、例えば、インターネットである。
【0025】
<PCS10のハードウェア構成>
PCS10のハードウェア構成の一例について、
図1を参照して説明する。PCS10は、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、インバータ・コンバータ制御部105、接続端子106、DC/DCコンバータ111、DC/ACコンバータ112、接続バスB1及び接続バスB2を備える。CPU101、主記憶部102
、補助記憶部103、通信部104、インバータ・コンバータ制御部105、接続端子106は、接続バスB1によって相互に接続される。インバータ・コンバータ制御部105、DC/DCコンバータ111及びDC/ACコンバータ112は、接続バスB2によって相互に接続される。
【0026】
CPU101は、マイクロプロセッサーユニット(MPU)、プロセッサーとも呼ばれる。CPU101は複数のMPUで構成してもよく、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、CPU101以外のプロセッサー、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサー、ベクトルプロセッサー、画像処理プロセッサー等の専用プロセッサーで行われてもよい。また、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。CPU101は、プロセッサーと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラーユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。PCS10では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、PCS10は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102及び補助記憶部103は、CPU101が読み取り可能な記録媒体である。
【0027】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0028】
補助記憶部103は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部104を介して接続されるPCS20等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、コンピュータネットワーク等で接続された、他の情報処理装置及び外部記憶装置が含まれる。なお、補助記憶部103は、例えば、ネットワーク上のコンピュータ群であるクラウドシステムの一部であってもよい。
【0029】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。また、補助記憶部103は、例えば、Compact Disc(CD)ドライブ装置、Digital Versatile Disc(DVD)ドライブ装置、Blu-ray(登録商標) Disc(BD)ドライブ装置等である。また、補助記憶部103は、Network Attached Storage(NAS)あるいはStorage Area Network(SAN)によって提供されてもよい。
【0030】
通信部104は、例えば、ネットワークN1とのインターフェースである。通信部104は、ネットワークN1を介してコントローラ50等の外部の装置と通信を行う。
【0031】
インバータ・コンバータ制御部105は、CPU101からの指示に応じて、後述するDC/DCコンバータ111及びDC/ACコンバータ112を制御する。インバータ・コンバータ制御部105には、接続バスB2によってDC/DCコンバータ111及びDC/ACコンバータ112が接続される。
【0032】
接続端子106は、外部装置をPCS10に接続する端子である。接続端子106は、例えば、Universal Serial Bus(USB)規格にしたがった接続ポートである。
【0033】
DC/DCコンバータ111は、蓄電池20及び太陽光発電パネル21から入力される直流電力を所定の電圧の直流電力に変換する。DC/DCコンバータ111は、変換した直流電力をDC/ACコンバータ112に出力する。また、DC/DCコンバータ111は、DC/ACコンバータ112から入力された直流電力を蓄電池20に蓄電させる。なお、
図1ではひとつのDC/DCコンバータ111が蓄電池20及び太陽光発電パネル21から入力される直流電力を所定の電圧の直流電力に変換するが、蓄電池20用のDC/DCコンバータ111と、太陽光発電パネル21用のDC/DCコンバータ111とが夫々設けられてもよい。
【0034】
DC/ACコンバータ112は、DC/DCコンバータ111から入力される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換する。DC/ACコンバータ112によって変換された交流電力は、負荷30に供給されたり商用電力系統40に出力されたりする。また、DC/ACコンバータ112は、商用電力系統40から入力された交流電力を直流電力に変換し、DC/DCコンバータ111に入力する。
【0035】
<PCS10の処理ブロック>
図2は、実施形態に係るPCS10の処理ブロックの一例を示す図である。PCS10は、電力測定部11、制御電力演算部12及び制御実績記憶部13を備える。PCS10は、主記憶部102に実行可能に展開されたコンピュータプログラムをCPU101が実行することで、上記PCS10の、電力測定部11、制御電力演算部12及び制御実績記憶部13等の各部としての処理を実行する。
【0036】
電力測定部11は、電流計1によって測定された受電点2を流れる電流を基に受電点2を流れる電力を測定する。
【0037】
制御電力演算部12は、電力測定部11によって測定された受電点2を流れる電力及びコントローラ50から受信した指令値を基に、蓄電池20の充放電電力を演算する。制御電力演算部12は、演算した充放電電力を蓄電池20に充放電させる。
【0038】
制御電力演算部12は、例えば、受電点2を流れる電力よりも指令値が大きい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、蓄電池20に放電させる電力を増加させればよい。制御電力演算部12は、例えば、受電点2を流れる電力よりも指令値が大きい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、蓄電池20の放電電力を指令値から受電点2を流れる電力を減算した分の電力だけ増加させればよい。
【0039】
制御電力演算部12は、例えば、蓄電池20が放電中かつ受電点2を流れる電力よりも指令値が小さい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、蓄電池20に放電させる電力を減少させればよい。制御電力演算部12は、例えば、受電点2を流れる電力よりも指令値が小さい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、蓄電池20の放電電力を受電点2を流れる電力から指令値を減算した分の電力だけ減少させればよい。
【0040】
ここで、制御電力演算部12は、蓄電池20からの放電を停止しても受電点2を流れる電力が指令値より大きい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、商用電力系統40から供給される電力を蓄電池20に充電させればよい。別法として
、制御電力演算部12は、蓄電池20からの放電を停止しても受電点2を流れる電力が指令値より大きい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、別法として、制御電力演算部12は、蓄電池20からの放電を停止しても受電点2を流れる電力が指令値より大きい場合、受電点2を流れる電力が指令値と可及的に等しくなるように、太陽光発電パネル21によって出力される電力を蓄電池20に充電させてもよい。さらなる別法として、太陽光発電パネル21によって出力される電力を減少させてもよい。
【0041】
なお、制御電力演算部12は、受電点2を流れる電力と指令値とが等しい場合、蓄電池20による現在の充放電量を維持すればよい。
【0042】
制御実績記憶部13は、コントローラ50から受信した指令値、制御電力演算部12によって演算された蓄電池20の充放電電力、及び、蓄電池20に充放電させたときに受電点2を流れた電力を対応付けて補助記憶部103に記憶させる。制御実績記憶部13は、例えば、補助記憶部103に記憶させる処理を所定間隔で実行してもよい。
【0043】
<制御電力演算部12による蓄電池20の充放電制御>
図3から
図5は、制御電力演算部12による蓄電池20の充放電制御の一例を示す図である。
図3は、コントローラ50からの指令値と負荷30の消費電力に対する蓄電池20の充放電量の変動の一例を示す図である。
図3の縦軸は電力を例示し、横軸は時間を例示する。
図3の実線301は、コントローラ50からPCS10が受信した指令値を例示する。
図3の点線302は、負荷30の消費電力の変動を例示する。
図3において指令値と消費電力の変動との間に並ぶ複数の矢印303は、蓄電池20に放電させる放電電力を例示する。
【0044】
負荷30による消費電力が変動すると、受電点2を流れる電力も変動する。制御電力演算部12は、電力測定部11によって測定された受電点2を流れる電力の変動に追随して、蓄電池20の充放電電力を変動させることができる。そのため、商用電力系統40に向けて放電される電力をコントローラ50からの指令値に可及的に等しくすることができる。
【0045】
図4は、コントローラ50からの指令値と受電点2を流れる電力とに対する蓄電池20の充放電量の変動の一例を示す図である。
図4の縦軸は電力を例示し、横軸は時間を例示する。
図4の実線311は、コントローラ50からPCS10が受信した指令値を例示する。
図4の点線312は、受電点2を流れる電力の変動を例示する。
図4において指令値と受電点2を流れる電力の変動との間に並ぶ複数の矢印313は、蓄電池20に充放電させる充放電電力を例示する。
【0046】
図4において区間R1及びR3では、受電点2を流れる電力は指令値以下となっている。このような場合、制御電力演算部12は、受電点2を流れる電力に応じた量の電力を蓄電池20に放電させることで、商用電力系統40に向けて放電される電力をコントローラ50からの指令値に可及的に等しくすることができる。
図4において区間R2では、受電点2を流れる電力は指令値より大きくなっている。このような場合、制御電力演算部12は、受電点2を流れる電力のうちコントローラ50からの指令値を超える電力を蓄電池20に蓄電させることで、受電点2を流れる電力をコントローラ50からの指令値に可及的に等しくすることができる。
【0047】
図5は、ベースラインに対する差分が指令値としてコントローラ50から指示される場合における、コントローラ50からの指令値と受電点2を流れる電力とに対する蓄電池20の充放電量の変動の一例を示す図である。ベースラインは、コントローラ50によって予測された負荷30の消費電力である。
【0048】
図5の縦軸は電力を例示し、横軸は時間を例示する。
図5の実線324は、コントローラ50によって予測された負荷30の消費電力である。
図5の実線321は、実線324との差分で示されるコントローラ50からPCS10が受信した指令値を例示する。
図5の点線322は、負荷30の消費電力の変動を例示する。
図5において指令値と消費電力の変動との間に並ぶ複数の矢印323は、蓄電池20に放電させる放電電力を例示する。
【0049】
図5を参照すると理解できるように、コントローラ50によって予測されたベースライン(
図5の実線324)と、負荷30の実際の消費電力(
図5の点線322)とは乖離している。しかしながら、本実施形態では、電力測定部11によって受電点2を流れる電力を測定し、測定した受電点2を流れる電力とコントローラ50からの指令値とに基づいて蓄電池20の充放電電力を決定するため、ベースラインが実際の消費電力から乖離していても、受電点2を流れる電力をコントローラ50からの指令値に可及的に等しくすることができる。
【0050】
<コントローラ50による指令値の決定方法>
コントローラ50は、負荷30の消費電力の予測を基に、ベースラインを決定する。負荷30の消費電力の予測には、公知の様々な手法を採用することができる。コントローラ50は、決定したベースラインとの差分として受電点2の基準電力の指令値を決定する。コントローラ50は、所定間隔(例えば、30分に1回)で決定した指令値をPCS10に通知する。
【0051】
図6及び
図7は、コントローラ50による指令値の決定を例示する図である。
図6は逆潮流がある場合を例示し、
図7は逆潮流が無い場合を例示する。
図6及び
図7の縦軸は電力を例示し、横軸は時間を例示する。
図6の実線334及び
図7の実線344は、コントローラ50が予測した負荷30の消費電力を例示する。
図6の実線331及び
図7の実線341は、受電点2の基準電力を例示する。
図6の点線332及び
図7の点線342は、負荷30の消費電力の変動を例示する。
図6の矢印333は、コントローラ50がベースライン(実線334)との差分で示す指令値を例示する。
図7の矢印343は、コントローラ50がベースライン(実線344)との差分で示す指令値を例示する。
【0052】
ここで、比較例として、コントローラ50からの指令値によって示される電力を蓄電池20に充放電させるPCSについて検討する。このようなPCSの場合、負荷30の消費電力が変動すると受電点2を流れる電力が指令値から乖離してしまう。そのため、コントローラ50は、負荷30の消費電力の変動に応じてPCSに対して指令値を瞬時に出力することになる。
【0053】
一方、本実施形態に係るPCS10では、測定した受電点2を流れる電力とコントローラ50からの指令値とに基づいて蓄電池20の充放電電力を決定する。そのため、PCS10は、負荷30の消費電力が変動しても、その変動に追随して受電点2を流れる電力を実線331で例示される電力値に制御できる。そのため、コントローラ50は、負荷30の消費電力の変動に応じて頻繁に指令値をPCS10に対して出力しなくともよくなる。コントローラ50は、例えば、30分に1回の頻度で指令値をPCS10に対して出力すればよい。
【0054】
<処理フロー>
図8は、実施形態に係るコントローラ50の処理フローの一例を示す図である。以下、
図8を参照して、コントローラ50の処理フローの一例について説明する。
【0055】
コントローラ50の処理フローにおいて、ステップS1からステップS3までの処理は
、所定時間毎(例えば、30分毎)に繰り返し実行される。ステップS1では、コントローラ50は、ベースライン、すなわち、負荷30の消費電力を推定する。ステップS2では、コントローラ50は、ステップS1で推定したベースラインとの差分で示される指令値を決定する。ステップS3では、コントローラ50は、ステップS2で決定した指令値をPCS10に出力する。
【0056】
図9は、実施形態に係るPCS10の処理フローの一例を示す図である。以下、
図9を参照して、PCS10の処理フローの一例について説明する。
【0057】
ステップS11では、制御電力演算部12は、コントローラ50から指令値を受信したか否かを判定する。受信した場合(ステップS11でYES)、受信した指令値を補助記憶部103に記憶させた上で、処理はステップS12に進められる。受信していない場合(ステップS11でNO)、ステップS11の処理が繰り返される。
【0058】
ステップS12では、電力測定部11は、受電点2の電力を測定する。ステップS13では、補助記憶部103に記憶させた指令値とステップS12で測定した受電点2の電力とを基に、蓄電池20に充放電させる電力を決定する。ステップS14では、制御電力演算部12は、ステップS13で決定した電力を蓄電池20に充放電させる。制御実績記憶部13は、蓄電池20に充放電させた電力、コントローラ50から受信した指令値、受電点2の電力を対応付けて、補助記憶部103に記憶させる。
【0059】
ステップS15では、制御電力演算部12は、コントローラ50から指令値を受信したか否かを判定する。受信した場合(ステップS15でYES)、処理はステップS16に進められる。受信していない場合(ステップS15でNO)、処理はステップS12に進められる。
【0060】
ステップS16では、制御電力演算部12は、補助記憶部103に記憶させた指令をステップS15で受信した指令値で更新する。その後、更新された指令値を用いて、ステップS12からステップS15の処理が実行される。
【0061】
<実施形態の作用効果>
実施形態によれば、コントローラ50から受信する指令値と電力測定部11によって測定された受電点2を流れる電力の測定値を基に蓄電池20の充放電電力が制御される。受電点2を流れる電力は電流計1によって実測されることから、負荷30の消費電力や太陽光発電パネル21の発電電力に変動があっても、その変動に追随して蓄電池20の充放電電力が制御される。そのため、本実施形態によれば、需要家に設置された蓄電池20から商用電力系統40に出力させる電力及び商用電力系統40から受電する電力を高精度に制御できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、PCS10は、負荷30の消費電力や太陽光発電パネル21の発電電力に変動に追随して蓄電池20の充放電電力を制御できるため、負荷30の消費電力が変動する度にコントローラ50から指令値を受信しなくとも、高精度に蓄電池20の充放電電力を制御できる。すなわち、本実施形態によれば、コントローラ50による指令値の出力頻度が抑制されても、蓄電池20の充放電電力の制御が高精度に行われる。
【0063】
本実施形態では、蓄電池20が放電中、かつ、電力測定部11によって測定された測定値が指令値以上の場合、蓄電池20からの放電電力が抑制される。また、本実施形態では、電力測定部11によって測定された測定値が指令値未満の場合、蓄電池20からの放電電力を増大させる。そのため、本実施形態によれば、受電点2を流れる電力の指令値に対する過不足分を蓄電池20からの充放電によって補うことができる。
【0064】
ここで、本実施形態では、蓄電池20からの放電を抑制し、蓄電池20からの放電が停止された後において測定された測定値が指令値以上の場合には、停止後に測定された測定値から指令値を減算した分の電力を蓄電池20に充電させる。本実施形態によれば、例えば、蓄電池20からの放電を抑制しても太陽光発電パネル21から出力される電力等により受電点2を流れる電力が指令値以上となってしまう場合でも、受電点2を流れる電力を指令値に可及的に近づけることができる。
【0065】
また、本実施形態では、受電点2を流れる電力が指定値以上の場合には、太陽光発電パネル21によって出力される電力が抑制される。太陽光発電パネル21によって出力される電力が抑制されることで受電点2を流れる電力が減少し、ひいては、受電点2を流れる電力を指令値に可及的に近づけることができる。
【0066】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、蓄電池20の充放電量及び太陽光発電パネル21によって出力される電力量を1台のPCS10が制御したが、PCS10が蓄電池20の充放電量を制御し、太陽光発電パネル21の発電量は他のPCSが制御してもよい。
図10は、第1変形例に係る電力制御システム100Aの一例を示す図である。電力制御システム100Aでは、蓄電池20をPCS10Aが制御し、太陽光発電パネル21をPCS10Bが制御する。そして、PCS10Aは、受電点2を流れる電力及びコントローラ50から受信した指令値を基に蓄電池20の充放電量を制御する。
【0067】
第1変形例によっても、受電点2を流れる電力及びコントローラ50から受信した指令値を基に蓄電池20の充放電量を制御されることから、蓄電池20から商用電力系統40に出力させる電力を高精度に制御できる。
【0068】
<第2変形例>
以上説明した実施形態では、電流計1は蓄電池20及び太陽光発電パネル21と、商用電力系統40との間に設けられたが、電流計1が設けられる位置はこのような位置に限定されない。
図11は、第2変形例に係る電力制御システム100Bの一例を示す図である。電力制御システム100Bでは、電流計1は、商用電力系統40及び太陽光発電パネル21と、蓄電池20との間に配置される。このような位置に電流計1が配置されることで、太陽光発電パネル21による発電量の影響を除外して、蓄電池20による充放電量を制御できる。
【0069】
<その他の変形>
以上説明した実施形態では、蓄電池20がPCS10に接続されたが、蓄電池20に代えて、または、蓄電池20に加えて、電気自動車がPCS10に接続されてもよい。そして、蓄電池20に代えて、または、蓄電池20に加えて、電気自動車に備えられる蓄電池が用いられてもよい。また、たとえば、太陽光発電パネル21及び、PCS10Bが接続されない構成が考えられる。
【0070】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0071】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0072】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリ、外付け型のハードディスクドライブやSolid State Drive(SSD)等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体として内蔵型のハードディスクドライブ、SSDやROM等がある。
【0073】
<付記1>
需要家に設置された負荷(30)及び蓄電部(20)に接続される電力制御装置(10)であって、
商用電力系統(40)から前記負荷(30)が電力の供給を受ける受電点(2)を流れる電力を測定する測定部(1、11)と、
前記受電点(2)の基準電力の指令値を上位装置(50)から受信する通信部(12)と、
前記指令値と、前記測定部(12)によって測定された測定値とを基に、前記蓄電部(20)の充放電電力を制御する制御部(12)と、を備える、
電力制御装置(10)。
【符号の説明】
【0074】
1・・電流計
2・・受電点
10・・PCS
10A・・PCS
10B・・PCS
11・・電力測定部
12・・制御電力演算部
13・・制御実績記憶部
20・・蓄電池
21・・太陽光発電パネル
30・・負荷
40・・商用電力系統
50・・コントローラ
100・・電力制御システム
100A・・電力制御システム
101・・CPU
102・・主記憶部
103・・補助記憶部
104・・通信部
105・・インバータ・コンバータ制御部
106・・接続端子
111・・DC/DCコンバータ
112・・DC/ACコンバータ
B1・・接続バス
B2・・接続バス
N1・・ネットワーク