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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060242
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】半導体処理用組成物及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20240424BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/304 647A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167493
(22)【出願日】2022-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】田野 裕之
【テーマコード(参考)】
2H196
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA01
2H196BA09
2H196CA05
2H196LA03
5F157AA64
5F157AA96
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157BE12
5F157BF22
5F157BF37
5F157BF38
5F157BF49
5F157BF52
(57)【要約】
【課題】保存安定性を向上させることにより、所定期間保存した後でも良好な処理特性を維持することができ、ひいては半導体素子製造の歩留まりを向上させることができる半導体処理用組成物、及びそれを用いた処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体処理用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物と、(C)アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(カルボキシル基を有する化合物及び含窒素複素環化合物を除く。)と、(D)液状媒体と、を含有し、前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M=1.0×10~1.0×10である。
RO(CHO(CHOH ・・・・(1)
ROH ・・・・(2)
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは同じ炭化水素基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される化合物と、
(B)下記一般式(2)で表される化合物と、
(C)アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(カルボキシル基を有する化合物及び含窒素複素環化合物を除く。)と、
(D)液状媒体と、
を含有し、
前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M=1.0×10~1.0×10である、半導体処理用組成物。
RO(CHO(CHOH ・・・・(1)
ROH ・・・・(2)
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは同じ炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)及び前記式(2)中、前記Rが炭素数1以上4以下のアルキル基である、請求項1に記載の半導体処理用組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、メタノールアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びジエチルエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の半導体処理用組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が、水系媒体である、請求項1に記載の半導体処理用組成物。
【請求項5】
さらに、含窒素複素環化合物を含有する、請求項1に記載の半導体処理用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物を用いて半導体基板を処理する工程を含む、処理方法。
【請求項7】
25℃以上65℃以下の温度の請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体処理用組成物を、
半導体基板を300rpm以上1000rpm以下で回転させながら、
半導体処理用組成物供給速度500mL/分以上1500mL/分以下で、
半導体処理用組成物供給時間30秒以上300秒以下の間供給して、
前記半導体基板に接触させる工程を含む、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理用組成物及びそれを用いた処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、フォトリソグラフィー技術を用いて基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。例えば、基板上に配線材料となる金属層、エッチングストップ層、層間絶縁膜等を備えた積層体上にレジスト膜を形成し、パターン状に露光、続いて現像してパターンを形成するフォトリソグラフィー工程及び、プラズマエッチングとプラズマアッシングとを組み合わせたドライエッチング工程を実施することにより半導体素子が製造される。フォトリソグラフィー工程後には、積層体上に形成されたレジスト膜を除去する必要がある。また、ドライエッチング工程後には、処理後に付着した残渣を除去する必要がある。
【0003】
フォトリソグラフィー工程後にレジスト膜を除去する技術としては、有機溶媒を主成分とした組成物を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ドライエッチング工程後の残渣を除去する技術としては、ヒドロキシルアミンを含有する洗浄組成物を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-328338号公報
【特許文献2】特開2012-033774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような方法においてレジスト膜や残渣を効率よく除去するためには、使用する直前に組成物を50℃~65℃に加温して用いることが一般的である。一方、商業的な製造の際には、これらの組成物を室温付近で保存する場合が多い。しかしながら、一般的に半導体処理用組成物には性質の異なる複数種の化学物質が含まれており、半導体処理用組成物に含まれている成分が加温又は長期保存により反応するなど変質しやすい。そのため、半導体処理用組成物の処理特性を維持することが困難であり、半導体素子製造の歩留まりを向上させるためには半導体処理用組成物の保存安定性をさらに向上させる必要があった。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、上記課題の少なくとも一部を解決することで、保存安定性を向上させることにより、所定期間保存した後でも良好な処理特性を維持することができ、ひいては半導体素子製造の歩留まりを向上させることができる半導体処理用組成物、及びそれを用いた処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
【0008】
本発明に係る半導体処理用組成物の一態様は、
(A)下記一般式(1)で表される化合物と、
(B)下記一般式(2)で表される化合物と、
(C)アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(カルボキシル基を有する化合物及び含窒素複素環化合物を除く。)と、
(D)液状媒体と、
を含有し、
前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/M=1.0×10~1.0×10である。
RO(CHO(CHOH ・・・・(1)
ROH ・・・・(2)
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは同じ炭化水素基を表す。)
【0009】
前記半導体処理用組成物の一態様において、
前記式(1)及び前記式(2)中、前記Rが炭素数1以上4以下のアルキル基であってもよい。
【0010】
前記半導体処理用組成物の一態様において、
前記(C)成分が、メタノールアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びジエチルエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0011】
前記半導体処理用組成物の一態様において、
前記(D)成分が、水系媒体であってもよい。
【0012】
前記半導体処理用組成物の一態様において、
さらに、含窒素複素環化合物を含有してもよい。
【0013】
本発明に係る処理方法の一態様は、
前記いずれかの態様の半導体処理用組成物を用いて半導体基板を処理する工程を含む。
【0014】
本発明に係る処理方法の一態様は、
25℃以上65℃以下の温度の前記いずれかの態様の半導体処理用組成物を、
半導体基板を300rpm以上1000rpm以下で回転させながら、
半導体処理用組成物供給速度500mL/分以上1500mL/分以下で、
半導体処理用組成物供給時間30秒以上300秒以下の間供給して、
前記半導体基板に接触させる工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る半導体処理用組成物によれば、保存安定性がより向上するため、所定期間保存した後でも良好な処理特性を維持することができ、ひいては半導体素子製造の歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0017】
1.半導体処理用組成物
本発明の一実施形態に係る半導体処理用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される化合物(本明細書において、「(A)成分」ともいう。)と、(B)下記一般式(2)で表される化合物(本明細書において、「(B)成分」ともいう。)と、(C)アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(カルボキシル基を有する化合物及び含窒素複素環化合物を除く。)(本明細書において、「(C)成分」ともいう。)と、(D)液状媒体(本明細書において、「(D)成分」ともいう。)と、を含有し、前記(A)成分の含有量をM[質量%]、前記(B)成分の含有量をM
[質量%]としたときに、M/M=1.0×10~1.0×10である。
RO(CHO(CHOH ・・・・(1)
ROH ・・・・(2)
(上記式(1)及び上記式(2)中、Rは同じ炭化水素基を表す。)
【0018】
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、純水や有機溶媒などの液状媒体で希釈して用いることを目的とした濃縮タイプであってもよいし、希釈せずにそのまま用いることを目的とした非希釈タイプであってもよい。本明細書において、濃縮タイプもしくは非希釈タイプであることを特定しない場合には、「半導体処理用組成物」との用語は、濃縮タイプ及び非希釈タイプの両方を含む概念として解釈される。
【0019】
また、本実施形態に係る半導体処理用組成物は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:以下、「CMP」ともいう。)工程終了後の被処理体の表面に存在するパーティクルや金属不純物などを除去するための洗浄剤、レジストを用いて処理された半導体基板からレジスト膜を除去するためのレジスト除去剤、ドライエッチング工程後の残渣を除去するための洗浄剤、金属配線等の表面を浅くエッチングして表面汚染を除去するためのエッチング剤等の処理剤として使用することができる。
【0020】
すなわち、本明細書における「処理剤」とは、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を添加して希釈することにより調製されたものもしくは上述の非希釈タイプの半導体処理用組成物自体であって、実際に被処理体を処理する際に用いられる液剤のことをいう。上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物は、通常、各成分が濃縮された状態で存在する。そのため、各ユーザーが、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物を液状媒体で希釈して処理剤を調製し、又は非希釈タイプの半導体処理用組成物を処理剤としてそのまま使用し、その処理剤をCMP工程終了後の被処理体表面を洗浄するための洗浄剤、レジスト除去剤、残渣除去用の洗浄剤、又はエッチング剤として使用に供することができる。以下、本実施形態に係る半導体処理用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0021】
1.1.(A)成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
RO(CHO(CHOH ・・・・(1)
(上記式(1)中、Rは炭化水素基を表す。)
【0022】
上記一般式(1)中、Rは、炭化水素基を表すが、炭素数1~18の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~18の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数3~18の環状飽和炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基を挙げることができ、これらの中でも炭素数1~18の脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
【0023】
上記一般式(1)中のRは、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がさらにより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられるが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。
【0024】
(A)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは40質量%であり、より好ましくは50質量%であり、特に好ましくは55質量%である。一方、(A)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量
を100質量%としたときに、好ましくは90質量%であり、より好ましくは85質量%であり、特に好ましくは80質量%である。(A)成分の含有量が前記範囲にあると、良好な処理特性を示し、しかも所定期間保存した後でも良好な処理特性を維持することができる。
【0025】
1.2.(B)成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、(B)下記一般式(2)で表される化合物を含有する。
ROH ・・・・(2)
(上記式(2)中、Rは炭化水素基を表す。)
【0026】
上記一般式(2)中のRは、上記一般式(1)中のRと同じ基である必要がある。上記一般式(2)中、Rは、炭化水素基を表すが、炭素数1~18の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~18の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数3~18の環状飽和炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基を挙げることができ、これらの中でも炭素数1~18の脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
【0027】
上記一般式(2)中のRは、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がさらにより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられるが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。
【0028】
(B)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.00005質量%であり、より好ましくは0.0001質量%であり、特に好ましくは0.0002質量%である。一方、(B)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%であり、より好ましくは0.8質量%であり、特に好ましくは0.6質量%である。(B)成分の含有量が前記範囲にあると、良好な処理特性を示し、しかも所定期間保存した後でも良好な処理特性を維持することができる。
【0029】
1.3.(A)成分と(B)成分との含有比率
本実施形態に係る半導体処理用組成物における(A)成分の含有量をM[質量%]、(B)成分の含有量をM[質量%]としたときに、M/Mの値の下限値は、好ましくは1.0×10であり、より好ましくは1.3×10であり、さらに好ましくは1.5×10であり、特に好ましくは5.0×10である。M/Mの値の上限値は、好ましくは1.0×10であり、より好ましくは7.0×10であり、特に好ましくは5.0×10である。
【0030】
本実施形態に係る半導体処理用組成物において、(A)成分と(B)成分との含有比率であるM/Mの値が前記範囲にあると、半導体処理用組成物の劣化が抑制され、半導体素子製造の歩留まりを向上させることができる。一方、M/Mの値が前記範囲を超える場合、加熱使用時に半導体処理用組成物の劣化が進行しやすく、安定した処理特性が維持できないため好ましくない。
【0031】
1.4.(C)成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、(C)アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(カルボキシル基を有する化合物及び含
窒素複素環化合物を除く。)を含有する。(C)成分を含有することにより、半導体基板からレジスト膜を除去する場合には、レジスト膜の溶解を促進させることができると考えられる。また、CMP終了後の被処理体を洗浄する場合には、半導体基板上の金属酸化膜(例えば、CuO、CuO及びCu(OH)層)や有機残渣(例えばBTA層)をエッチングして効果的に除去できると考えられる。さらに、ドライエッチング工程後の残渣を除去する場合には、残渣の溶解を促進して除去性を向上できると考えられる。
【0032】
(C)成分は、水溶性であることが好ましい。本明細書において「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。また、(C)成分は、アミノ基及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基の他に、さらに水酸基を有することが好ましい。
【0033】
(C)成分としては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3-プロパンジアミン等の第一級アミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン等の第二級アミン;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
これらの(C)成分の中でも、半導体基板上のレジスト膜を除去する効果が特に高い点で、メタノールアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びジエチルエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、エタノールアミン、イソプロパノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが特に好ましい。
【0035】
(C)成分の含有量の下限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。一方、(C)成分の含有量の上限値は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%であり、特に好ましくは3質量%である。(C)成分の含有量が前記範囲にあると、レジスト膜を除去するための性能や、ドライエッチング工程後の残渣を除去するための洗浄性能が高くなるため好ましい。
【0036】
1.5.(D)成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、主成分として(D)液状媒体を含有する。(D)成分は、被処理体の洗浄、エッチング、レジスト膜除去等の処理剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
(D)成分としては、水を主成分とした水系媒体であることが好ましい。このような水系媒体としては、水、水及びアルコールの混合媒体、水及び水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体が挙げられる。これらの水系媒体の中でも、水、水及びアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
【0038】
有機溶媒としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、グリコール系溶剤、含硫黄化合物系溶剤等の極性溶剤や、炭化水素系溶剤等の半導体処理
工程で用いることのできる公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0039】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカルビノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン等が挙げられる。
【0040】
エステル系溶剤は、鎖状のエステル系溶剤であってもよく、環状のエステル系溶剤であってもよい。鎖状のエステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。また、環状のエステル系溶剤としては、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0041】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0042】
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0043】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ
る。
【0044】
含硫黄化合物系溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、スルホラン(Sulfolane)等が挙げられる。
【0045】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0046】
1.6.その他の成分
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、上述の成分の他、洗浄、エッチング、レジスト除去等の処理剤の使用目的に応じて適宜必要な成分を含有してもよい。このような成分としては、水溶性高分子、有機酸、pH調整剤、界面活性剤、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0047】
1.6.1.水溶性高分子
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子を含有することにより、被処理体の表面に吸着して被膜が形成されるため、被処理体の腐食をより低減できる場合がある。なお、上記の通り「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。
【0048】
水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、及びこれらの塩;スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸モノマーとの共重合体や、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等をホルマリンで縮合させた芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位を有する重合体及びこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルオキサゾリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン等のビニル系合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工澱粉などの天然多糖類の変性物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本実施形態で用いられ得る水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1千以上150万以下、より好ましくは3千以上120万以下である。なお、本明細書中における「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0050】
水溶性高分子の含有割合は、半導体処理用組成物の常温における粘度が2mPa・s以下となるように調整するとよい。半導体処理用組成物の常温における粘度が2mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎることで被処理体に半導体処理用組成物を安定して供給できない場合がある。半導体処理用組成物の粘度は、添加する水溶性高分子の重量平均分子量や含有量により影響を受けるので、それらのバランスを考慮しながら調整するとよい。
【0051】
1.6.2.有機酸
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、有機酸を含有してもよい。なお、本明細書における「有機酸」には、上述の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等)は含まれない。有機酸の中でも、下記一般式(3)で表される化合物を好ましく使用することができる。
【0052】
【化1】
(上記一般式(3)中、Rは、炭素数1~20の有機基を表す。)
【0053】
上記一般式(3)中のRにおける炭素数1~20の有機基としては、例えば飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基、不飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基、環状飽和炭化水素基を有する炭素数3~20の有機基、不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6~20の有機基、カルボキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基、ヒドロキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基、カルボキシル基とヒドロキシル基の両方を有する炭素数1~20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、アミノ基とカルボキシル基の両方を有する炭素数1~20の炭化水素基、複素環基を有する炭素数1~20の有機基等を挙げることができる。これらの中でも、飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基、不飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数1~20の有機基、アミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基、カルボキシル基を有する炭素数1~20の炭化水素基、アリール基を有する炭素数6~20の有機基が好ましい。
【0054】
上記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジ酢酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びコハク酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、クエン酸、マロン酸、及びリンゴ酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、クエン酸及びマロン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であるであることが特に好ましい。上記一般式(3)で表される化合物は、汚染物質を効果的に低減又は除去できる場合がある。上記一般式(3)で表される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、有機酸の中でも、下記一般式(4)で表される双性イオン構造を有する化合物を用いることも好ましい。ここで、双性イオン構造とは、半導体処理用組成物中で正電荷を有することのできる官能基を1つ以上と、半導体処理用組成物中で負電荷を有することのできる官能基を1つ以上と、をそれぞれ同一分子内に持つ化合物のことをいう。例えば、半導体処理用組成物中でアンモニウムカチオンなどの正電荷を生成するための官能基と、カルボキシラートアニオンなどの負電荷を生成するための官能基と、を同一分子内に有する分子内塩化合物が挙げられる。
【0056】
【化2】
【0057】
上記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~6のアルカンジイル基を表すが、置換又は非置換の炭素数1~4のアルカンジイル基であることが好ましく、置換又は非置換の炭素数1~2のアルカンジイル基であることがより好ましい。Rは、置換又は非置換の炭素数12~18のアルキル基を表す。
【0058】
上記一般式(4)で表される化合物は、分子の両末端にカルボキシル基を有している。このような構造を有する化合物は、金属イオンに対して高い配位能力を有するため、金属配線材料等の過度のエッチングの進行を効果的に抑制できる場合がある。
【0059】
有機酸の含有量は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%以上0.5質量%以下である。有機酸の含有量が前記範囲にあると、汚染物質を効果的に除去できる場合がある。また、過度のエッチングの進行をより効果的に抑制し、良好な被処理体が得られる場合がある。
【0060】
1.6.3.pH調整剤
本実施形態に係る半導体処理用組成物のpHの下限値は、好ましくは9であり、より好ましくは10であり、pHの上限値は、好ましくは14である。配線材料としてタングステンを含む被処理体を処理するための半導体処理用組成物の場合、pHの下限値は、好ましくは2であり、pHの上限値は、好ましくは7であり、より好ましくは6である。
【0061】
本実施形態に係る半導体処理用組成物において、所望のpHが得られない場合には、pHを上記範囲に調整するためにpH調整剤を別途添加してもよい。pH調整剤としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明において、pHとは水素イオン指数のことを指し、その値は25℃、1気圧の条件下で市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
【0063】
1.6.4.界面活性剤
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を好ましく使用することができる。界面活性剤を添加することにより、CMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を半導体基板上から除去する効果が高まり、より良好な被処理体が得られる場合がある。
【0064】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリ
オキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。上記例示したノニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;アルキルイミノジカルボン酸;リグニンスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、塩の形態で使用してもよい。この場合、カウンターカチオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられるが、カリウムやナトリウムが過剰に含まれることを防止する観点からアンモニウムイオンが好ましい。
【0066】
界面活性剤の含有量は、半導体処理用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下である。
【0067】
1.6.5.含窒素複素環化合物
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、含窒素複素環化合物を含有してもよい。含窒素複素環化合物は、少なくとも1個の窒素原子を有する、複素五員環及び複素六員環から選択される少なくとも1種の複素環を含む有機化合物である。複素環の具体例としては、ピロール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造等の複素五員環;ピリジン構造、ピリミジン構造、ピリダジン構造、ピラジン構造等の複素六員環が挙げられる。該複素環は縮合環を形成していてもよい。具体的には、インドール構造、イソインドール構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キナゾリン構造、シンノリン構造、フタラジン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造等が挙げられる。このような構造を有する複素環化合物のうち、ピリジン構造、キノリン構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造を有する複素環化合物が好ましい。
【0068】
含窒素複素環化合物の具体例としては、アジリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾイソキノリン、プリン、プテリジン、トリアゾール、トリアゾリジン、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、及びこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール及びトリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの含窒素複素環化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
1.7.半導体処理用組成物の調製方法
本実施形態に係る半導体処理用組成物は、特に制限されず、公知の方法により調製する
ことができる。具体的には、水や有機溶媒等の液状媒体に上述した各成分を溶解させて、ろ過することにより調製することができる。上述した各成分の混合順序や混合方法については特に制限されない。
【0070】
本実施形態に係る半導体処理用組成物の調製方法では、必要に応じて、デプスタイプ又はプリーツタイプのフィルタでろ過して粒子量を制御することが好ましい。ここで、デプスタイプのフィルタとは、深層ろ過又は体積ろ過タイプのフィルタとも称される高精度ろ過フィルタである。このようなデプスタイプのフィルタは、多数の孔が形成されたろ過膜を積層させた積層構造をなすものや、繊維束を巻き上げたものなどがある。デプスタイプのフィルタとしては、具体的には、プロファイルII、ネクシスNXA、ネクシスNXT、ポリファインXLD、ウルチプリーツプロファイル等(全て、日本ポール社製)、デプスカートリッジフィルタ、ワインドカートリッジフィルタ等(全て、アドバンテック社製)、CPフィルタ、BMフィルタ等(全て、チッソ社製)、スロープピュア、ダイア、マイクロシリア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0071】
プリーツタイプのフィルタとしては、不織布、ろ紙、金属メッシュなどからなる精密ろ過膜シートをひだ折り加工した後、筒状に成形するとともに前記シートのひだの合わせ目を液密にシールし、かつ、筒の両端を液密にシールして得られる筒状の高精度ろ過フィルタが挙げられる。具体的には、HDCII、ポリファインII等(全て、日本ポール社製)、PPプリーツカートリッジフィルタ(アドバンテック社製)、ポーラスファイン(チッソ社製)、サートンポア、ミクロピュア等(全て、ロキテクノ社製)が挙げられる。
【0072】
2.処理剤
上述のように、各ユーザーは、濃縮タイプの半導体処理用組成物を液状媒体で希釈して処理剤を調製することもできるし、非希釈タイプの半導体処理用組成物を処理剤としてそのまま使用することもできる。そして、その処理剤は、半導体基板表面を洗浄するための洗浄剤、レジスト除去剤、又はエッチング剤として使用に供することができる。
【0073】
ここで、希釈に用いられる液状媒体は、上述の半導体処理用組成物に含有される液状媒体と同義であり、上記例示した液状媒体の中から処理剤の種類に応じて適宜選択することができる。
【0074】
濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する方法としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを途中で合流させて混合し、この混合された処理剤を被処理面に供給する方法がある。この混合は、圧力を加えた状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合させる方法;配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法;配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常行われている方法を採用することができる。
【0075】
また、濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物を供給する配管と液状媒体を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を被処理面に供給し、被処理面上で混合する方法がある。さらに、濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する別の方法としては、1つの容器に、所定量の濃縮タイプの半導体処理用組成物と所定量の液状媒体を入れ混合してから、被処理面にその混合した処理剤を供給する方法がある。
【0076】
濃縮タイプの半導体処理用組成物に液状媒体を加えて希釈する際の希釈倍率としては、濃縮タイプの半導体処理用組成物1質量部を、液状媒体を添加して1~500質量部(1~500倍)に希釈することが好ましく、20~500質量部(20~500倍)に希釈することがより好ましく、30~300質量部(30~300倍)に希釈することが特に
好ましい。なお、上述の濃縮タイプの半導体処理用組成物に含有される液状媒体と同じ液状媒体で希釈することが好ましい。このように半導体処理用組成物を濃縮された状態とすることにより、処理剤をそのまま運搬し保管する場合と比較して、より小型な容器での運搬や保管が可能になる。その結果、運搬や保管のコストが低減できる。また、そのまま処理剤を濾過等するなどして精製する場合よりも、より少量の処理剤を精製することになるので、精製時間の短縮化を行うことができ、これにより大量生産が可能になる。
【0077】
3.処理方法
本実施形態に係る処理方法は、上述の半導体処理用組成物を用いて半導体基板を処理する工程を含む。本実施形態に係る処理方法は、特にネガ型及びポジ型フォトレジストを含めたフォトレジストを除去する際に好ましく使用できる。
【0078】
本実施形態に係る半導体処理用組成物をフォトレジストの除去に用いる場合、以下の2通りの使用態様が挙げられる。第1に、リソグラフィー法により得られたフォトレジストパターンを形成し、これをマスクとして導電性金属膜や層間膜を選択的にエッチングし、微細回路を形成した後、フォトレジストパターンを除去する場合である。第2に、エッチング工程後のフォトレジストパターンをプラズマアッシング処理し、該プラズマアッシング後の残渣物(フォトレジスト変質膜、金属デポジション等)を除去する場合である。
【0079】
前記フォトレジストの除去方法は、例えば、
(I)半導体基板上にフォトレジスト層を設ける工程、
(II)半導体基板と上述の半導体処理用組成物を接触させる工程、
(III)前記半導体基板をリンス液で処理する工程、
を含むことができる。
【0080】
前記工程(II)で使用する半導体基板としては、例えば、金属配線が形成された半導体基板、あるいは金属配線と層間膜とが形成された半導体基板を用いることができる。この場合、金属配線としては、例えば、アルミニウム(Al)系配線や銅(Cu)系配線等を例示することができる。また、層間膜としては、例えば、有機SOG膜等の絶縁膜、低誘電体膜等を例示することができる。
【0081】
前記工程(I)で使用されるフォトレジストとしては、例えば、(i)ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂とを含有するポジ型フォトレジスト、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型フォトレジスト、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型フォトレジスト、(iv)光により酸を発生する化合物、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型フォトレジスト等が挙げられる。
【0082】
前記工程(II)において、上述の半導体処理用組成物は、温度調節機能があるタンクに入れて一定温度に保ち、該組成物をノズルの先端から滴下する、もしくはスプレーすることで半導体基板と接触させることが好ましい。
【0083】
前記工程(II)において、上述の半導体処理用組成物の供給温度は、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。また、25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。
【0084】
前記工程(II)において、上述の半導体処理用組成物と半導体基板とを接触させる方法としては、浸漬法、シャワー法、パドル法など公知の方法により実施することができるが、半導体基板を回転可能なテーブル上に固定して回転させながら半導体処理用組成物と
接触させることが好ましい。この場合、半導体基板の回転速度は1000rpm以下が好ましく、800rpm以下がより好ましい。また、300rpm以上が好ましく、400rpm以上がより好ましい。
【0085】
前記工程(II)において、半導体基板を回転可能なテーブル上に固定して回転させながら半導体処理用組成物と接触させる場合、半導体処理用組成物供給速度は1500mL/分以下が好ましく、1000mL/分以下がより好ましい。また、500mL/分以上が好ましく、600mL/分以上がより好ましい。さらに、前記の供給速度の範囲において、半導体処理用組成物供給時間は300秒以下が好ましく、200秒以下がより好ましい。また、30秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましい。
【0086】
上述のような条件で半導体処理用組成物と半導体基板とを接触させることにより、フォトレジストの除去、アッシング処理後残渣物の除去、半導体基板の腐食防止を効果的に発現することができる。特に、プラズマアッシング処理後の残渣物(フォトレジスト変質膜、金属デポジション等)を除去する場合、プラズマアッシング後、半導体基板表面にフォトレジスト残渣(フォトレジスト変質膜)や金属膜エッチング時に発生した金属デポジションが残渣物として付着、残存する。これら残渣物を上述の半導体処理用組成物に接触させることで、半導体基板上の残渣物を効果的に除去することができる。プラズマアッシングは、フォトレジストパターンを除去する方法であるが、プラズマアッシングによりフォトレジストパターンが一部変質膜として残ることがしばしばあり、このような場合のフォトレジスト変質膜の完全な除去に本実施形態に係る処理方法は特に有効である。
【0087】
前記工程(III)で使用することのできるリンス液としては、例えば純水や低級アルコールのような有機溶媒等が挙げられる。また、リンス液で処理した後、乾燥処理を行ってもよい。
【0088】
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0089】
4.1.半導体処理用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、下表1又は下表2に示す各成分を投入し、5分間攪拌することにより、実施例1~14及び比較例1~10の各半導体処理用組成物を得た。
【0090】
4.2.評価方法
<色変化評価>
上記で得られた半導体処理用組成物を調製直後及び60℃で7日間保存した後でLovibonds社製、PFXi-195/1型比色計を用いてAPHA カラー(ハーゼン色数)を測定して、色変化を評価した。なお、色変化は保存による成分変質の指標とすることができ、調製直後と比較して60℃で7日間保存後の色変化がより小さい場合が好ましい。
【0091】
<レジスト除去特性評価>
銅配線を備えたシリコンウェハ(株式会社アドバンテック社製、製品型式ADV-3CMP754)をCMP装置(アプライドマテリアルジャパン株式会社製、型番「Reflexon LK CMP」)の上に載置し、CMPを行いウェハ表面に過剰に積層されている銅の層を除去して、銅配線が表面に露出するように処理した。CMP装置の条件は、プラテン回転数は90rpm、研磨ヘッド回転数は72rpm、研磨ヘッド圧は3psi、スラリー流量は毎分150mLであり、処理時間は100秒間とした。CMPスラリー
はJSR株式会社製、製品名CMS7501を用いた。CMPパッドはJSR株式会社製、製品名CMP7305-fpjを用いた。
【0092】
この化学機械研磨したウェハの表面にフォトレジスト(JSR株式会社製、製品名「ARX-3917」)をスピンコーターを用いて1000rpmで塗布した後、ホットプレートを用いて1分間100℃に加熱し、厚さ100nmの膜を得た。このようにして作成したレジスト塗布シリコンウェハを評価用ウェハとした。
【0093】
得られた評価用ウェハを東京エレクトロン株式会社製の枚葉式洗浄装置「CELLESTATM(セレスタ)-i」に載置し、下表1又は下表2に記載の処理条件及び半導体処理用組成物により評価用ウェハを処理した。さらに、評価用ウェハを800rpmで回転させながら、25℃の超純水を毎分1200mLで60秒間滴下し、最後に何も滴下しない状態で評価用ウェハを1000rpmで30秒間回転させて表面の液膜を振り切り乾燥させた。
【0094】
目視にて乾燥後の評価用ウェハ上のレジスト除去の状況を観察した。一方、上記で得られた半導体処理用組成物を60℃の恒温保管庫にて7日間静置保管後、同様に評価用ウェハを用いてレジスト除去の状況を観察した。評価基準は以下の通りである。評価結果を下表1又は下表2に示す。
(評価基準)
・A:レジスト膜が残留しておらず、実用に供することができる良好な除去結果である。・B:レジスト膜が一部残留しており、実用に供することができないやや不良な除去結果である。
・C:レジスト膜が明らかに残留しており、実用に供することができない不良な除去結果である。
【0095】
4.3.評価結果
下表1又は下表2に、半導体処理用組成物の組成、処理条件及び評価結果を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
上表1及び上表2において、各成分の数値は質量%を表す。各実施例及び各比較例において、各成分の合計量は100質量%となり、残量はイオン交換水である。ここで、上表1又は上表2の各成分についての説明を補足する。
【0099】
<(A)成分>
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤株式会社製、商品名「BDG」・ジエチレングリコールモノエチルエーテル:東京化成工業株式会社製、商品名「Diethylene Glycol Monoethyl Ether」
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル:東京化成工業株式会社製、商品名「Diethylene Glycol Monomethyl Ether」
<(B)成分>
・ブタノール:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「1-ブタノール」
・エタノール:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「エタノール」
・メタノール:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「メタノール」
<(C)成分>
・モノエタノールアミン:東京化成工業株式会社製、商品名「2-Aminoethanol」
・モノイソプロパノールアミン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「(±)-1-アミノ-2-プロパノール」
<(D)成分>
・プロピレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「プロピレングリコール」
・シクロヘキサノン:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「シクロヘキサノン」
・スルホラン:住友精化株式会社製、商品名「スルフォラン」
<他添加剤(含窒素複素環化合物)>
・ベンゾトリアゾール:東京化成工業株式会社製、商品名「1,2,3-Benzotriazole」
・5-メチル-1H-べンゾトリアゾール:東京化成工業株式会社製、商品名「5-Methyl-1H-benzotriazole」
・1,2,4-トリアゾール:東京化成工業株式会社製、商品名「1,2,4-Triazole」
【0100】
上表1に示す通り、(A)成分の含有量M[質量%]と(B)成分の含有量M[質量%]の比M/Mが1.0×10~1.0×10である半導体処理用組成物のレジスト除去特性は良好であった。また、実施例1~14の半導体処理用組成物は、60℃で7日保存した後のレジスト除去特性についても良好な結果であった。
【0101】
一方、比較例1、3、8の半導体処理用組成物のように、M/Mが1.0×10未満である場合には、60℃で7日保存した後のレジスト除去特性は不良であり、保存安定性が悪いことが明らかであった。また、比較例2、4、7、9の半導体処理用組成物のように、M/Mが1.0×10を超える場合にも、60℃で7日保管した後のレジスト除去特性は不良であり、やはり保存安定性が悪いことが明らかであった。比較例5、10の半導体処理用組成物のように、(C)成分を含有しない場合には、調製直後からレジスト除去特性は不良であった。比較例6の半導体処理用組成物のように、(A)成分及び(B)成分を含有しない場合には、調製直後からレジスト除去特性は不良であった。
【0102】
上表1及び上表2の結果によれば、M/Mが1.0×10~1.0×10の範囲内である半導体処理用組成物を用いた場合に、製造直後のレジスト除去特性と、60℃で7日保存した後のレジスト除去特性とを良好に両立できることが明らかとなった。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。