(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060249
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】液封ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
F16F13/10 A
F16F13/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167501
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅森 信行
(72)【発明者】
【氏名】古橋 健次
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA20
3J047FA02
(57)【要約】
【課題】比較的簡便な構成によって、液室内における急激な流速の変化を抑制することにある。
【解決手段】振動を受けることで体積が変化する液室(主液室12)と、液室(主液室12)に対して液体を流入出させる流路部14とを備えると共に、流路部14には、流路部14よりも流量が大きくなるように大寸とされたチャンバー部20が設けられており、
チャンバー部20の液室(主液室12)側の形状は、液室(主液室12)側に向かう液体の流れに抵抗してその流れを反転させる抵抗部位22を構成するように形成されていると共に、チャンバー部20の液室(主液室12)側とは反対側の形状は、液室(主液室12)側に向かうにつれて次第に大寸となるように拡開する案内部位21を構成するように形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液室間の液体の移動により振動を抑制する構造を備えた液封ダンパ装置において、
振動を受けることで体積が変化する液室と、前記液室に対して液体を流入出させる流路部とを備えると共に、前記流路部には、前記流路部よりも流量が大きくなるように大寸とされたチャンバー部が設けられており、
前記チャンバー部の液室側の形状は、液室側に向かう液体の流れに抵抗してその流れを反転させる抵抗部位を構成するように形成されていると共に、
前記チャンバー部の液室側とは反対側の形状は、液室側に向かうにつれて次第に大寸となるように拡開する案内部位を構成するように形成されている液封ダンパ装置。
【請求項2】
前記抵抗部位は、前記チャンバー部の液室側の末端側に形成されている請求項1に記載の液封ダンパ装置。
【請求項3】
前記チャンバー部と前記液室とは、前記チャンバー部の液室側の端面に設けられた開口部にて連通している請求項1に記載の液封ダンパ装置。
【請求項4】
前記案内部位から前記抵抗部位に向かう方向を前記チャンバー部の長手方向とした場合に、前記抵抗部位は、液室側に向かう液体を遮るように前記長手方向と交差する方向に延びている請求項1~3のいずれか一項に記載の液封ダンパ装置。
【請求項5】
前記抵抗部位は、前記長手方向と直交する方向に延びている請求項4に記載の液封ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液室間の液体の移動により振動を抑制する液封ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液封ダンパ装置として、エンジンを車体フレームに弾性的に支持する液体封入式マウントが知られている。この液体封入式マウントは、一般に、外筒とセンターボスとの間に一体的に設けられた弾性体と、外筒の内周に封着されたダイアフラムとの間に、液体が封入された上下一対の液室が形成され、これらの液室間をオリフィス流路で連通させると共に、弾性体側の液室の圧力変動を所定の変動範囲で吸収するサブダイアフラムを設けた構造を有する。即ち、車体のバウンド等のショックによる大変位の入力に対しては、弾性体が大きな変形を受けることにより、弾性体側の液室とダイアフラム側の液室との間で、封入液がオリフィス流路を介して液柱共振し、この時のオリフィス流路内での流動抵抗によって大きな減衰力を得る。また、アイドリング時の機関振動等による小振幅の振動入力に対しては、サブダイアフラムの共振運動によって封入液の圧力変動が吸収され、封入液は殆どオリフィス流路を通過せず、動ばね定数が低くなって優れた振動絶縁性を発揮する(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの種の装置では、液室内に急激な流速変化が生じた場合、その液室内に生じた気泡が原因となって異音が発生するおそれがある。即ち、急激な流速変化が原因となって液室内の圧力が低下した場合、この液室内にキャビテーションによる気泡が発生する。そして液室が復元して圧力が元に戻ることで気泡が消滅し、この気泡消滅時に異音が生じるおそれがある。例えば上記した液体封入式マウントでは、エンジンの振動で弾性体側の液室が引っ張られた際に、体積の増加した弾性体側の液室に液体が一気に流入することで、この弾性体側の液室内に急激な流速変化が生じるおそれがある。このとき弁によって弾性体側の液室へ流入する液体の流速を調整することも考えられるが、そのような適切な弁の成形は困難であり、装置構成が過度に複雑化するおそれがある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、比較的簡便な構成によって、液室内における急激な流速の変化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の液封ダンパ装置は、液室間の液体の移動により振動を抑制する構造を備えている。この種の構造では、比較的簡便な構成によって、液室内における急激な流速の変化を抑制できることが望ましい。そこで本発明の液封ダンパ装置は、振動を受けることで体積が変化する液室と、液室に対して液体を流入出させる流路部とを備えると共に、流路部には、流路部よりも流量が大きくなるように大寸とされたチャンバー部が設けられている。そしてチャンバー部の液室側の形状は、液室側に向かう液体の流れに抵抗してその流れを反転させる抵抗部位を構成するように形成されていると共に、チャンバー部の液室側とは反対側の形状は、液室側に向かうにつれて次第に大寸となるように拡開する案内部位を構成するように形成されている。
【0006】
本発明では、流路部を流れる液体が、次第に拡開する案内部位を通ってチャンバー部内にスムーズに導き入れられる。そして大寸なチャンバー部内では液体の流量が増加することから、このチャンバー部内の液体の流速を極力抑えられるようになる。更に液室側に向かう液体の一部は、チャンバー部に形成された抵抗部位から抵抗を受けることで、液室側とは反対側に反転するようになる。これにより、反転した液体の流れによって液体の流速が更に抑えられて液室に流入するようになり、この液室内における急激な液体の流速変化を極力抑制することが可能となる。そして液封ダンパ装置では、チャンバー部の形状にて抵抗部位と案内部位とが形成されているため、装置構成の簡便化に資する構成となる。
【0007】
第2発明の液封ダンパ装置は、第1発明の液封ダンパ装置において、抵抗部位は、チャンバー部の液室側の末端側に形成されている。本発明では、チャンバー部の液室側の末端側に形成された抵抗部位によって、液室内に流入する液体の流速をより適切に抑制できるようになる。
【0008】
第3発明の液封ダンパ装置は、第1発明の液封ダンパ装置において、チャンバー部と液室とは、チャンバー部の液室側の端面に設けられた開口部にて連通している。本発明では、チャンバー部の端面に開口部を形成することで、液室内に流入する液体の流速を更に適切に抑制できるようになる。
【0009】
第4発明の液封ダンパ装置は、第1発明~第3発明のいずれかの液封ダンパ装置において、案内部位から抵抗部位に向かう方向をチャンバー部の長手方向とした場合に、抵抗部位は、液室側に向かう液体を遮るように長手方向と交差する方向に延びている。本発明では、液室側に向かう液体が長手方向と交差する方向に延びる抵抗部位によって遮られることで、この液体の流れをより確実に反転させられるようになる。
【0010】
第5発明の液封ダンパ装置は、第4発明の液封ダンパ装置において、抵抗部位は、長手方向と直交する方向に延びている。本発明では、液室側に向かう液体が長手方向と直交する方向に延びる抵抗部位によって遮られることで、この液体の流れを更に確実に反転させられるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明によれば、比較的簡便な構成によって、液室内における急激な流速の変化を抑制することができる。また第2発明によれば、液室内における急激な流速の変化をより適切に抑制することができる。また第3発明によれば、液室内における急激な流速の変化を更に適切に抑制することができる。また第4発明によれば、液室内における急激な流速の変化をより確実に抑制することができる。そして第5発明によれば、液室内における急激な流速の変化を更に確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エンジンと車両ボディ間に配設された液封ダンパ装置の概略透視図である。
【
図2】液室と流路とチャンバー部を示す概略断面図である。
【
図3】液体の流れる方向を示すチャンバー部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図3を参照して説明する。なお
図1及び
図2には、便宜上、車両の上下方向を示す矢線を図示する。また
図1では、便宜上、液封ダンパ装置の基本構成のみ図示する。また
図2及び
図3では、流路部の径寸法が、液室との接続箇所で若干拡大しているが、流路部の本体部分は、その全長にわたって同じ径寸法に形成されている。そして
図3では、便宜上、主液室と副液室とチャンバー部とを直線的に並べて図示する。
【0014】
液封ダンパ装置10について説明する前に、先ず、車両の前部の構造について説明する。
図1に示す車両2の前部にはエンジンルームERが設けられており、このエンジンルームERの車両後側には車室(図示省略)が設けられている。そしてエンジンルームERにはエンジン3が搭載されており、このエンジン3が、エンジンルームERのフロア側の車両ボディ4にて支持されている。
【0015】
[液封ダンパ装置]
またエンジン3と車両ボディ4間には、
図1に示すように液封ダンパ装置10が配設されている。この液封ダンパ装置10は、本体ゴム部11と、一対の液室(主液室12、副液室13)と、液室12,13間を連通する流路部14とを備えている。また液封ダンパ装置10は、ブラケット50を介して車両ボディ4に取付けられた状態で、その本体ゴム部11によってエンジン3の振動を受けられるように配設されている。そして、エンジン3から振動を受けた液封ダンパ装置10では、その液室12,13間でいわゆる液柱共振が発生することでエンジン3の振動を抑制する減衰力が得られる。
【0016】
そして
図2を参照して、上記した液封ダンパ装置10では、後述するようにエンジン3の振動によって主液室12の体積が変化するように構成されている(
図2中、実線で示した主液室と二点破線で示した主液室の外形形状を参照)。この種の構成では、キャビテーションによる異音発生を回避する観点等から、極力簡便な構成によって、主液室12内の急激な流速変化を抑制することが望ましい。そこで本実施例では、比較的簡便な構成(チャンバー部20)によって、主液室12内の急激な流速の変化を抑制することとした。以下、液封ダンパ装置10の構成を、各液室12,13と、流路部14と、チャンバー部20の順に詳述する。
【0017】
[液室]
先ず、
図1及び
図2に示す主液室12は、本発明の液室に相当し、所定の体積を備えた中空筒状に形成されている。この主液室12は、本体ゴム部11の車両下側に配設されることで、エンジン3の振動を受けられるようになっている。そして主液室12は、その外形を構成する部分が弾性変形可能な素材で形成されることで、その内部体積が増減するように変形することができる。即ち、主液室12は、エンジン3の振動によって車両上側に引張されることで体積が増加するように拡張変形し、その形状が復元することで内部体積が元に戻るようになる。また主液室12は、上記した振動を受けて内部体積が減少するように車両下側に圧縮変形することもできる。また副液室13は、主液室12の車両下側に配設されており、所定の体積を備えた中空状に形成されている。なお副液室13は、その外形を構成する部分は変形しないが、弾性的に変形するダイアフラム構造(図示省略)が設けられることで内部体積を増減させられるように構成されている。
【0018】
[流路部]
また
図2に示す主液室12と副液室13とは、液体の行き来が可能なように流路部14を介して連通している。そして流路部14は、パイプ状(円筒状)に形成されていると共に、抑制すべき振動(周波数)を考慮して長さ寸法が設定されている。例えば
図2に示す流路部14は、平面視で輪状に配置されることで所望の長さ寸法が確保されている。そして主液室12が車両上側に引張されて内部体積が増加することにより、流路部14を通じて副液室13から主液室12に液体が移動するようになる(
図2では、主液室に向かう液体の流れを示す矢線に符号A1を付す)。また主液室12が元の形状に戻ることにより、流路部14を通じて主液室12から副液室13に液体が移動するようになる(
図2では、副液室に向かう液体の流れを示す矢線に符号A2を付す)。こうして主液室12には、流路部14を通じて液体が流入出するように構成されている。
【0019】
[チャンバー部]
そして
図2に示す流路部14の途中には、流路の一部を構成するチャンバー部20が設けられている。このチャンバー部20は、
図3に示すように、その円筒形状をなす本体部分が流路部14よりも流量が大きくなるように大寸に形成されている(本体部分の径寸法φ1>流路部の本体部分の径寸法φ2)。そしてチャンバー部20は、副液室13よりも主液室12に近い流路部14の位置に設けられている。即ち、流路部14では、主液室12とチャンバー部20間の流路部部分14aの長さ寸法が、副液室13とチャンバー部20間の流路部部分14bの長さ寸法よりも短くなっている。
【0020】
[案内部位]
ここで
図3に示すチャンバー部20の副液室13側(液室側とは反対側)の形状は、主液室12側に向かうにつれて次第に大寸となるように形成することができる。例えば本実施例のチャンバー部20は、その副液室13側の端部形状が円錐台形状に形成されている。これにより、チャンバー部20の円錐台形状に形成された周面200が、径寸法が持続的に大きくなるように傾斜することで、主液室12側に向けて拡開する案内部位21を構成している。そして案内部位21は、副液室13側に向かうにつれて次第に小寸となり、その小寸となった案内部位21の先端部分が、副液室13とチャンバー部20間の流路部部分14bに連通している。
【0021】
[抵抗部位]
また
図3に示すチャンバー部20の主液室12側の形状は、主液室12側に向かう液体の流れに抵抗してその流れを反転させるように形成することができる。例えば本実施例のチャンバー部20は、その本体部分をなす主液室12側の形状が円筒形状に形成されている。これにより、チャンバー部20の液室側の末端をなす端面201は、主液室12側に向かう液体を遮る縦壁状に形成され、この縦壁状の端面201が抵抗部位22を構成している。そしてチャンバー部20の液室側の端面201には、その中央部分に開口部23が形成され、この開口部23が、主液室12とチャンバー部20間の流路部部分14aに連通している。なおチャンバー部20の端面201は、その他の部分に比して形状変更し易い箇所であるため、上記した抵抗部位22を容易に成形することが可能となっている。
【0022】
ここで
図3に示す抵抗部位22は、上記した構成のほか、液室側に向かう液体の流れを遮るように形成することができる。例えば案内部位21から抵抗部位22に向かう方向をチャンバー部20の長手方向とした場合、チャンバー部20の本体部分をなす本体周面24が長手方向に延びるように形成されている。このような場合、抵抗部位22は、長手方向に延びる本体周面24と直交する方向(角度θ=90°)に延びる縦壁形状のほか、本体周面24に対して案内部位21に向けて傾斜する交差方向(90°>角度θ)に延びるように形成することができる。なお抵抗部位22を上記した交差方向(90°>角度θ)に延設する場合、その角度θの下限値は、抵抗部位22を成形可能である限り特に限定しないが、成形時の手間等を考慮すると45°に設定できる。
【0023】
[液封ダンパ装置の働き]
図2に示す液封ダンパ装置10では、エンジン3の振動を受けることで、その内部に封入された液体が流路部14を通じて主液室12と副液室13とを行き来するようになる。この種の液封ダンパ装置10では、上記したようにキャビテーションによる異音発生を回避する観点等から、比較的簡便な構成によって、主液室12内における急激な流速の変化を抑制することが望ましい。そこで
図3に示す液封ダンパ装置10では、その流路部14に、流路部14よりも流量が大きくなるように大寸とされたチャンバー部20が設けられている。そしてチャンバー部20の主液室12側の形状は、主液室12側に向かう液体の流れに抵抗してその流れを反転させる抵抗部位22を構成するように形成されていると共に、チャンバー部20の主液室12側とは反対側の形状は、主液室12側に向かうにつれて次第に大寸となるように拡開する案内部位21を構成するように形成されている。上記した構成によれば、液封ダンパ装置10を比較的簡便な構成で形成しつつ、主液室12内における急激な流速の変化を抑制できるようになる。そこで以下に、液封ダンパ装置10の働きをより具体的に説明する。
【0024】
上記した構成によると、
図3を参照して、エンジン3の振動によって主液室12が車両上側に引張されて内部体積が増加することにより、先ず、副液室13からチャンバー部20に液体が流入するようになる(
図3では、流路部とチャンバー部内に生じる液体の大まかな流れを矢線で示す)。このとき流路部14を流れる液体は、次第に拡開する案内部位21を通ってチャンバー部20内にスムーズに導き入れられる。そして流路部14よりも大寸なチャンバー部20内では液体の流量が増加することから、このチャンバー部20内で主液室12側に向かう液体の流速を極力抑えられるようになる。そして、チャンバー部20内を流れる液体が、そのチャンバー部20の主液室12側の末端に到達することで、その末端をなす端面201に設けられた抵抗部位22に当てられるようになる。この抵抗部位22は、主液室12に向かう液体の流れに抵抗する、即ち、液体の流れを遮るように縦壁状に形成されている。このため主液室12側に向かう液体の一部は、末端側の抵抗部位22から抵抗を受けることで、主液室12側とは反対側に反転する。これにより、反転した液体の流れによって液体の流速が更に抑えられた状態で、その液体がチャンバー部20の開口部23を通じて主液室12に流入するようになる。更に液封ダンパ装置10では、主液室12に近いチャンバー部20の端面201に抵抗部位22と開口部23を設け、さらに開口部23と主液室12とを比較的短い流路部部分14aで連通している。このため、チャンバー部20の開口部23から流出した液体を、その流速を極力維持しつつ主液室12に流入させることができる。こうしてエンジン3の振動で主液室12が引っ張られた際においても、液体が比較的緩やかに主液室12に流入するようになり、この主液室12内における急激な流速の変化を極力抑制することができる。
【0025】
以上説明した通り、
図2及び
図3に示す液封ダンパ装置10によれば、そのチャンバー部20によって主液室12内の急激な流速の変化を抑制できるようになり、キャビテーションによる異音発生を極力回避することができる。そして液封ダンパ装置10では、チャンバー部20の形状にて抵抗部位22と案内部位21とが形成されているため、装置構成の簡便化に資する構成となる。このため本実施例によれば、比較的簡便な構成によって、主液室12内における急激な流速の変化を抑制することができる。
【0026】
更に本実施例では、チャンバー部20の主液室12側の末端側に形成された抵抗部位22によって、主液室12内に流入する液体の流速をより適切に抑制できるようになる。また本実施例では、チャンバー部20の端面201に開口部23を形成することで、主液室12内に流入する液体の流速を更に適切に抑制できるようになる。また本実施例では、主液室12側に向かう液体が長手方向と交差する方向に延びる抵抗部位22によって遮られることで、この液体の流れをより確実に反転させられるようになる。特に主液室12側に向かう液体が長手方向と直交する方向に延びる抵抗部位22によって遮られることで、この液体の流れを更に確実に反転させられるようになる。
【0027】
本実施形態の液封ダンパ装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、チャンバー部の構成を例示したが、チャンバー部の構成を限定する趣旨ではない。例えばチャンバー部は、流路部の適宜の位置に複数又は単数設けることができ、その外形形状も円筒形状のほか、角筒形状などの適宜の形状に設定できる。また抵抗部位をなす端面と本体周面とは、略直角に交わっていてもよく、湾曲しつつ交わっていてもよい。また開口部は、チャンバー部の端面から本体周面にかけての適宜の位置に形成することができる。また抵抗部位の形成位置は、主液室に対する急激な流速の変化を抑制できる限り特に限定しないが、チャンバー部の末端側に設けることが望ましく、例えば本体部分を長手方向に二等分した場合、その本体部分の主液室側の部分に形成することができる。そして抵抗部位を端面形状にて形成する場合、この端面形状を、主液室側に凸の曲面状に形成してもよく、主液室側に凸のV字形状に形成することもできる。また抵抗部位は、チャンバー部の本体周面を内側に凹ませた突出部分で形成してもよく、この突出部分をチャンバー部の末端側に設けることができる。そして案内部位をなす周面は、直線的又は曲線的な傾斜面(テーパ面)形状に形成することができ、階段状に形成してもよい。そして流路部は、適宜の向きに延設でき、例えば
図2に示す上下方向に延設することもできる。また流路部の径寸法を途中で変更することもでき、この場合には、チャンバー部の寸法を、案内部位に連通する流路部部分(
図2では符号14bで示す部分)の寸法を基に設定することができる。
【0028】
そして本実施形態では、液封ダンパ装置をエンジンと車両ボディ間に配設する例を説明したが、同装置の配設位置を限定する趣旨ではない。液封ダンパ装置は、振動する部材に当てられるように配設することができ、エンジンのほか、例えばトランスミッションなどのパワーユニットと別の車両用の部材間に配設することができる。
【符号の説明】
【0029】
2 車両
3 エンジン
4 車両ボディ
10 液封ダンパ装置
11 本体ゴム部
12 主液室(本発明の液室)
13 副液室
14 流路部
14a (主液室とチャンバー部間の)流路部部分
14b (副液室とチャンバー部間の)流路部部分
20 チャンバー部
21 案内部位
22 抵抗部位
23 開口部
24 本体周面
50 ブラケット
200 (チャンバー部の副液室側の)周面
201 (チャンバー部の主液室側の)端面