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特開2024-60257抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、インターロイキン10産生亢進剤、皮膚外用組成物、および飲食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060257
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、インターロイキン10産生亢進剤、皮膚外用組成物、および飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20240424BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 31/132 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240424BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240424BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K36/899
A61K31/132
A61P29/00
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167517
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 絹華
(72)【発明者】
【氏名】西村 研吾
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD49
4B018MD57
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG11
4B117LG13
4B117LG16
4C088AB61
4C088AB73
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA11
4C088BA23
4C088CA05
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】 植物由来の有効成分を含む抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、およびIL-10産生亢進剤を提供することを目的とする。植物由来の有効成分を含む、抗炎症作用を有する皮膚外用組成物および飲食品組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、およびIL-10産生亢進剤が、植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、前記1kDa未満の画分が有効成分を含む。皮膚外用組成物および飲食品組成物が、前記抗炎症剤を含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
抗炎症剤。
【請求項2】
前記植物が、大豆および小麦の少なくとも一方である、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項3】
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳およびオカラからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料から抽出されたものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項4】
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆胚芽および小麦胚芽の少なくとも一方から抽出されたものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項5】
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、pH6.0以下の水溶液で抽出する工程を含む方法で得られたものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項6】
前記有効成分が、121℃で15分間の熱処理によって失活しない、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項7】
前記有効成分がエタノールに不溶である、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項8】
炎症性疾患の予防、改善または治療のために用いられる、請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項9】
前記炎症性疾患が関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、または炎症性腸疾患である、請求項8に記載の抗炎症剤。
【請求項10】
請求項1に記載の抗炎症剤を含む、皮膚外用組成物。
【請求項11】
炎症性疾患の予防、改善または治療のために用いられる、請求項10に記載の皮膚外用組成物。
【請求項12】
前記炎症性疾患が関節炎または皮膚炎である、請求項11に記載の皮膚外用組成物。
【請求項13】
前記炎症性疾患が、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、またはアトピー性皮膚炎である、請求項11に記載の皮膚外用組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の抗炎症剤を含む、飲食品組成物。
【請求項15】
炎症性腸疾患の予防、改善または改善のために用いられる、請求項14に記載の飲食品組成物。
【請求項16】
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
TNF-α産生抑制剤。
【請求項17】
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
インターロイキン10産生亢進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、インターロイキン10産生亢進剤、皮膚外用組成物、および飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚炎やかぶれといった皮膚トラブルの原因は、洗剤や金属による外からの刺激が、内分泌系に影響を及ぼすことによって起こる皮膚の炎症である。
【0003】
皮膚の炎症にはTNF-α(すなわち腫瘍壊死因子-α)が関わると考えられている。TNF-αは、それ自身が皮膚や組織を刺激して炎症を引き起こすだけでなく、炎症を起こす別のサイトカインの産生を促し、間接的に炎症を引き起こす。こうしたことから、TNF-αは、炎症を引き起こすサイトカインの司令塔のような物質であると言える。なお、TNF-αを産生する代表的な細胞はマクロファージである。
【0004】
とりわけ、TNF-αの過剰産生は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎などに関わると考えられている。
【0005】
TNF-αの産生はステロイド剤によって抑制することができる。しかしながら、ステロイド剤は、その副作用を理由に使用がためらわれる場合がある。たとえば、皮膚の弱い部分や、乳児の柔らかい肌へのステロイド剤の使用がためらわれる場合がある。
【0006】
ところで、大豆胚芽から抽出した、ポリアミンを含有する抽出物が、紫外線によって誘発される皮膚の紅斑を抑制することが知られている(特許文献1参照)。大豆胚芽から抽出した、ポリアミンを含有する抽出物が、表皮細胞においてPM2.5に惹起されるインターロイキン1α遺伝子やインターロイキン8遺伝子、CYP遺伝子の発現亢進を抑制することも知られている(特許文献2参照)。
【0007】
これら抽出物は大豆を原料とするため、植物由来である。その意味で、すなわち天然物であるという意味で、これら抽出物には高い安全性を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-75495号公報
【特許文献2】WO2019/159588
【特許文献3】特許第5018171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、植物由来の有効成分を含む抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、およびIL-10産生亢進剤を提供することを目的とする。本発明はまた、植物由来の有効成分を含む、抗炎症作用を有する皮膚外用組成物および飲食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために本発明者は、大豆胚芽抽出物や小麦胚芽抽出物を用いて研究をすすめるなかで、1kDa未満の画分が、TNF-α産生抑制作用やインターロイキン10(すなわちIL-10)産生亢進作用を有することを見出した。
【0011】
このような知見に基づき完成された本発明は、次の通りである。
[1]
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
抗炎症剤。
[2]
前記植物が、大豆および小麦の少なくとも一方である、[1]に記載の抗炎症剤。
[3]
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳およびオカラからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料から抽出されたものである、[1]または[2]に記載の抗炎症剤。
[4]
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆胚芽および小麦胚芽の少なくとも一方から抽出されたものである、[1]~[3]のいずれかに記載の抗炎症剤。
[5]
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が、pH6.0以下の水溶液で抽出する工程を含む方法で得られたものである、[1]~[4]のいずれかに記載の抗炎症剤。
[6]
前記有効成分が、121℃で15分間の熱処理によって失活しない、[1]~[5]のいずれかに記載の抗炎症剤。
[7]
前記有効成分がエタノールに不溶である、[1]~[6]のいずれかに記載の抗炎症剤。
[8]
炎症性疾患の予防、改善または治療のために用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載の抗炎症剤。
[9]
前記炎症性疾患が関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、または炎症性腸疾患である、[8]に記載の抗炎症剤。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の抗炎症剤を含む、皮膚外用組成物。
[11]
炎症性疾患の予防、改善または治療のために用いられる、[10]に記載の皮膚外用組成物。
[12]
前記炎症性疾患が関節炎または皮膚炎である、[11]に記載の皮膚外用組成物。
[13]
前記炎症性疾患が、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、またはアトピー性皮膚炎である、[11]に記載の皮膚外用組成物。
[14]
[1]~[9]のいずれかに記載の抗炎症剤を含む、飲食品組成物。
[15]
炎症性腸疾患の予防、改善または改善のために用いられる、[14]に記載の飲食品組成物。
[16]
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
TNF-α産生抑制剤。
[17]
植物由来ポリアミン含有抽出物を含み、
前記植物由来ポリアミン含有抽出物が1kDa未満の画分を含み、
前記1kDa未満の画分が有効成分を含む、
インターロイキン10産生亢進剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物由来の有効成分を含む抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、およびIL-10産生亢進剤を提供することができる。本発明によれば、植物由来の有効成分を含む、抗炎症作用を有する皮膚外用組成物および飲食品組成物を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1について、大豆胚芽抽出物のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。
図2】実施例3について、大豆胚芽抽出物の限外ろ過画分のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。
図3】実施例4について、小麦胚芽抽出物の限外ろ過画分のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。
図4】実施例5について、大豆胚芽抽出物の限外ろ過画分(とりわけ1kDa未満画分)、および小麦胚芽抽出物の限外ろ過画分(とりわけ1kDa未満画分)のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。
図5】実施例6について、オートクレーブ処理大豆胚芽抽出物のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。
図6】実施例7について、大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。50%や60%、70%、80%、90%、95%、100%は、抽出に用いたエタノール水溶液のエタノール濃度である。
図7】実施例8について、大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分のTNF-αの産生抑制作用を示す図である。50%や80%、90%、92%、94%、96%、98%、100%は、抽出に用いたエタノール水溶液のエタノール濃度である。
図8】実施例9について、大豆胚芽抽出物のTNF-α遺伝子発現の抑制作用を示す図である。
図9】実施例10について、大豆胚芽抽出物のTNF-αの産生抑制作用と、デキサメタゾンのTNF-αの産生抑制作用とを示す図である。
図10】実施例11について、大豆胚芽抽出物および小麦胚芽抽出物のIL-10産生亢進作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<1.抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、および飲食品組成物>
本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物は植物由来ポリアミン含有抽出物を含む。なお、「皮膚外用組成物」とは、皮膚に用いられる組成物を意味する。
【0016】
<1.1.植物由来ポリアミン含有抽出物>
植物由来ポリアミン含有抽出物は、ポリアミンを含有する植物抽出物である。植物由来ポリアミン含有抽出物は、植物および/または植物加工物から抽出されることができる。
【0017】
植物として、たとえば双子葉植物、単子葉植物、草本性植物、木本性植物、ウリ科植物、ナス科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、マメ科植物、アオイ科植物、キク科植物、アカザ科植物、マメ科植物を挙げることができる。なかでも、イネ科植物、マメ科植物が好ましい。
【0018】
イネ科植物として、たとえば、小麦、オオムギ、イネ、トウモロコシ、ソルガム、サトウキビ、シバ、オートむぎ、ライムギ、アワを挙げることができる。なかでも、国民一人・一年当たり供給純食料が多く、すなわち、国民一人当たり年間消費量が多く、しかも、安価に入手可能であるという理由で小麦が好ましい。
【0019】
マメ科植物として、たとえば、大豆、アルファルファ、アズキ、インゲンマメ、ササゲを挙げることができる。なかでも、国民一人・一年当たり供給純食料が多く、すなわち、国民一人当たり年間消費量が多く、しかも、安価に入手可能であるという理由で大豆が好ましい。
【0020】
イネ科植物やマメ科植物以外の植物として、たとえば、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、ナタネ、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、シュガービート、キャッサバ、サゴヤシ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、キク、ペチュニア、トレニア、キンギョソウ、シクラメン、カスミソウ、ゼラニウム、ヒマワリ、ワタ、エノキダケ、ホンシメジ、マツタケ、シイタケ、キノコ類、チョウセンニンジン、アガリクス、ウコン、オタネニンジン、柑橘類、バナナ、キウイを挙げることができる。
【0021】
抽出物(すなわち植物由来ポリアミン含有抽出物)を得るための植物の部位として、たとえば、花、蕾、子房、果実、葉、子葉、茎、芽、根、種子、乾燥種子、胚、胚芽などを挙げることができる。なかでも、果実、葉、茎、芽、種子、乾燥種子、胚芽、胚が好ましく、種子、乾燥種子、胚芽、胚がより好ましく、胚芽(たとえば、大豆胚芽、小麦胚芽、コメ胚芽、オオムギ胚芽、トウモロコシ胚芽、マイロ胚芽、ヒマワリ胚芽)がさらに好ましい。なお、植物のからだ全体から抽出物を得てもよいことはもちろんである。
【0022】
植物としては、上述の通り大豆が好ましい。すなわち、植物由来ポリアミン含有抽出物が大豆由来ポリアミン含有抽出物であることが好ましい。大豆由来ポリアミン含有抽出物は、未加工の大豆(たとえば大豆胚芽)から得られたものでもよいし、大豆に何らかの手を加えた製品、すなわち加工物から得られたものでもよい。加工物として、たとえば、必要に応じて発酵させた大豆エキス(たとえば、大豆胚芽エキス、大豆胚エキス)、納豆、豆乳、オカラを挙げることができる。
【0023】
植物としては、上述の通り小麦も好ましい。すなわち、植物由来ポリアミン含有抽出物が小麦由来ポリアミン含有抽出物であることが好ましい。小麦由来ポリアミン含有抽出物は、未加工の小麦(たとえば小麦胚芽)から得られたものでもよいし、小麦に何らかの手を加えた製品、すなわち加工物から得られたものでもよい。加工物として、たとえば、必要に応じて発酵させた小麦エキス(たとえば小麦胚芽エキス、小麦胚エキス)、小麦粉を挙げることができる。
【0024】
なお、植物が、大豆や小麦以外に由来する場合でももちろん、植物由来ポリアミン含有抽出物が加工物から得られたものでもよい。そのような加工物として、たとえば、緑茶、紅茶、ウーロン茶、果汁などを挙げることができる。
【0025】
原料が安価であり、しかも大量に入手可能であり、そのうえポリアミンを豊富に含むという理由で、植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳、およびオカラからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料から抽出されたものであることが好ましい。なかでも、植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆胚芽および小麦胚芽の少なくとも一方から抽出されたものであることがより好ましく、大豆胚芽から抽出されたものであることがさらに好ましい。
【0026】
植物由来ポリアミン含有抽出物は、pH6.0以下の水溶液(以下、「酸性水溶液」と言うことがある。)で抽出されることができる。酸性水溶液で抽出することによって、エタノールやメタノールといった有機溶媒で抽出する場合に比べて、ポリアミンの回収率を高めることができる。しかも、酸性水溶液で抽出することによって、有機溶媒で抽出する場合に比べて、抽出のための有機溶媒の残留を回避できる。したがって、植物由来ポリアミン含有抽出物の安全性を高めることができる。そのうえ、pH6.0以下であることによって、ポリアミンの回収率をいっそう高めることができるとともに、酸性水溶液中でのポリアミンの安定性を向上できる。
【0027】
抽出の手順として、たとえば、植物および/または植物加工物を必要に応じて砕いたうえで、酸性水溶液で植物由来ポリアミン含有抽出物を抽出する、という手順を挙げることができる。より具体的な手順として、たとえば、植物および/または植物加工物に酸性水溶液を加え、必要に応じてポリフェノール吸着剤をさらに加え、植物および/または植物加工物を必要に応じて砕き、酸性水溶液中で植物由来ポリアミン含有抽出物を抽出する、という手順を挙げることができる。
【0028】
酸性水溶液のpHは5.0以下が好ましく、4.0以下が好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.0以下がさらに好ましい。いっぽう、酸性水溶液のpHはたとえば1.0以上であることができる。
【0029】
酸性水溶液として、たとえば、鉱酸を水に溶かした水溶液、有機酸を水に溶かした水溶液、鉱酸および有機酸の両者を水に溶かした水溶液、酸性水を挙げることができる。たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸などの鉱酸を水に溶かした水溶液や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸などの有機酸を水に溶かした水溶液を挙げることができる。なかでも、0.01N~6Nの塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸、クエン酸、乳酸や、0.1%~10%の過塩素酸が好ましく、0.0625N~1Nの塩酸、0.25%~5%の過塩素酸がより好ましい。
【0030】
植物および/または植物加工物を砕くために、たとえば、ミキサー、ブレンダー、ホモジナイザー、乳鉢、超音波破砕機などを使用することができる。植物および/または植物加工物を砕くことによって、植物および/または植物加工物を、たとえば、スラリー状、細粒状、顆粒状または粉末状にしたうえで抽出をおこなうことができる。なお、植物および/または植物加工物を砕く操作は、酸性水溶液中でおこなってもよい。すなわち、酸性水溶液に浸漬したうえで植物および/または植物加工物を砕いてもよい。
【0031】
抽出時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。いっぽう、抽出時間は、48時間以下であってもよく、24時間以下であってもよく12時間以下であってもよく、6時間以下であってもよく、3時間以下であってもよい。抽出温度、すなわち、抽出中の酸性水溶液の温度は、たとえば、10℃以上であってもよく、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよい。いっぽう、抽出温度は、40℃以下であってもよく、35℃以下であってもよく、30℃以下であってもよい。なお、抽出中に、攪拌をおこなってもよい。
【0032】
抽出は、ポリフェノール吸着剤の存在下でおこなってもよい。抽出をポリフェノール吸着剤の存在下でおこなうことによってポリフェノール類を除去することができる。ポリフェノール吸着剤として、たとえば、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEG(ポリエチレングリコール)を挙げることができる。なかでもPVPPが好ましい。ポリフェノール吸着剤の市販品として、ISP社のポリクラール(登録商標)を例示できる。ポリフェノール吸着剤は、たとえば0.1%(w/v)~30%(w/v)、好ましくは0.5%(w/v)~20%(w/v)、より好ましくは1%(w/v)~10%(w/v)となるように酸性水溶液に加えることができる。なお、以下では、「%(w/v)」を「w/v%」と言うことがある。
【0033】
抽出後、必要に応じて、遠心分離および/またはろ過をおこない、抽出液を回収する。
【0034】
抽出液のpHを必要に応じて調整する。抽出液のpHを調整するために、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液といった塩基性水溶液を加えることができる。pH調整後の抽出液のpHは、中性または中性付近であることが好ましく、たとえば6.0以上であってもよく、6.2以上であってもよく、6.5以上であってもよく、6.7以上であってもよい。pH調整後の抽出液のpHは、たとえば8.0以下であってもよく、7.8以下であってもよく、7.5以下であってもよく、7.3以下であってもよい。
【0035】
抽出液は、植物由来ポリアミン含有抽出物としてそのまま使用してもよく、濃度を調整したうえで使用してもよく、乾燥したうえで使用してよく、精製をおこなったうえで使用してもよい。精製として、たとえば、限外ろ過を挙げることができる。なお、抽出液の濃度を調整する場合、ポリアミン濃度が、たとえば0.00001mM~100mMとなるように抽出液のポリアミン濃度を調整してもよい。調整後のポリアミン濃度は、0.00005mM~75mMであってもよく、0.0001mM~50mMであってもよい。ここで「M」は、モル/リットルを表す。いっぽう、調整後のポリアミン濃度は、0.0001重量%~100重量%であってもよく、0.001重量%~75重量%であってもよく、0.01重量%~50重量%であってもよい。
なお、本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物に含まれる植物由来ポリアミン含有抽出物は、精製(たとえば限外ろ過)を経てもよいし、経なくてもよいことを念のため断っておく。
【0036】
植物由来ポリアミン含有抽出物はポリアミンを含有する。ポリアミンとして、たとえば、プトレシン、スペルミジン、スペルミンを挙げることができる。植物由来ポリアミン含有抽出物は、ポリアミンを一種、または二種以上含有することができる。植物由来ポリアミン含有抽出物は、プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンを含有することが好ましい。もちろん、植物由来ポリアミン含有抽出物はこれら以外のポリアミンを含有していてもよい。なお、植物由来ポリアミン含有抽出物が大豆胚芽抽出物である場合、プトレシンや、スペルミジン、スペルミンを含有することが知られている(特許第5018171号公報参照)。植物由来ポリアミン含有抽出物が小麦胚芽抽出物である場合も、プトレシンや、スペルミジン、スペルミンを含有することが知られている(特許第5018171号公報参照)。
【0037】
植物由来ポリアミン含有抽出物は、TNF-α産生抑制作用を示すことができる。植物由来ポリアミン含有抽出物は、IL-10産生亢進作用を示すこともできる。
【0038】
植物由来ポリアミン含有抽出物は、1kDa未満の画分を含む。「1kDa未満の画分」とは、1kDa cut offの限外ろ過膜、すなわち、Nominal Molecular Weight Limit(NMWO)が1kDaである限外ろ過膜を通り抜ける成分を意味する。1kDa cut offの限外ろ過膜を有する製品として、たとえば、1kDa cut offの限外ろ過チューブ(Microsep Advance with 1K Omega,MCP001C41,Pall)を挙げることができる。
【0039】
1kDa未満の画分に含まれ得る物質として、ポリアミン(たとえば、プトレシン、スペルミジン、スペルミン)や、ポリアミン以外の水溶性物質を挙げることができる。
【0040】
1kDa未満の画分に含まれる成分のいくつかが共働して、TNF-α産生抑制作用を発揮すると考えられる。同様に、1kDa未満の画分に含まれる成分のいくつかが共働して、IL-10産生亢進作用を発揮すると考えられる。
【0041】
1kDa未満の画分に含まれる成分のうち、TNF-α産生抑制作用やIL-10産生亢進作用を発揮する成分を「有効成分」と言うことがある。なお、有効成分は、1kDa未満の画分に含まれる成分のうちのいくつかによって構成される可能性がある。
【0042】
有効成分が植物由来であるため、本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物は安全性に優れている。
【0043】
有効成分は、121℃で15分間の熱処理によってTNF-α産生抑制作用を失わないことができる。すなわち、有効成分は、121℃で15分間の熱処理によって失活しないことができる。
【0044】
有効成分は、エタノールに不溶であることができる。
【0045】
植物由来ポリアミン含有抽出物は、抗炎症剤や、TNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物として好適に使用できる。すなわち、植物由来ポリアミン含有抽出物は、そのまま、すなわち添加剤を加えずに、抗炎症剤や、TNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物として好適に使用できる。もちろん、添加剤を加えたうえで、抗炎症剤や、TNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、飲食品組成物として使用することも好ましい。
【0046】
なお、本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物における植物由来ポリアミン含有抽出物の含有量は、用途や製剤形態などに応じて適宜設定できる。たとえば、本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物は、ポリアミン濃度が、たとえば0.00001mM~100mMや、0.00005mM~75mM、0.0001mM~50mMとなるように植物由来ポリアミン含有抽出物を含んでいてもよい。
【0047】
<1.2.他の成分>
本実施形態の抗炎症剤やTNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、飲食品組成物は、植物由来ポリアミン含有抽出物に加えて、一種または二種以上の他の成分をさらに含んでいてもよい。そのような成分として、たとえば、油脂類、ロウ類、鉱物油、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、金属セッケン、ガム質、水溶性高分子化合物、界面活性剤、ビタミン類、アミノ酸、美白剤、保湿剤、育毛剤、抽出物、エキス、微生物培養代謝物、α-ヒドロキシ酸、無機顔料、紫外線吸収剤、収斂剤、抗酸化剤、抗炎症剤、殺菌・消毒薬、頭髪用剤、香料、色素・着色剤、甘味料、栄養強化剤を挙げることができる。
【0048】
油脂類として、アボガド油、アルモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、硬化油、硬化ヒマシ油などを挙げることができる。
【0049】
ロウ類として、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウなどを挙げることができる。
【0050】
鉱物油として、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレン末、スクワレン、スクワラン、プリスタンなどを挙げることができる。
【0051】
脂肪酸類として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸などの天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソペンタン酸などの合成脂肪酸を挙げることができる。
【0052】
アルコール類として、エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然アルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノールなどの合成アルコール、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、バチルアルコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖などの多価アルコール類などを挙げることができる。
【0053】
エステル類として、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0054】
金属セッケンとして、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛などを挙げることができる。
【0055】
ガム質および水溶性高分子化合物として、アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシアルキルキチン、キトサン、ヒドロキシアルキルキチン、低分子キトサン、キトサン塩、硫酸化キチン、リン酸化キチン、アルギン酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドまたはその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミンなどを挙げることができる。
【0056】
界面活性剤として、アニオン界面活性剤(カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アミン塩、四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤(カルボン酸型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤)、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)などを挙げることができる。
【0057】
ビタミン類として、ビタミンA群ではレチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群では、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群では、アスコルビン酸およびその誘導体、ビタミンD群では、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群では、トコフェロールおよびその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群では、フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)などを挙げることができる。
【0058】
アミノ酸として、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンなどや、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、あるいはピロリドンカルボン酸の如きアミノ酸誘導体などを挙げることができる。
【0059】
美白剤として、アスコルビン酸またはその誘導体、イオウ、胎盤加水分解物、エラグ酸またはその誘導体、コウジ酸またはその誘導体、グルコサミンまたはその誘導体、アルブチンまたはその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸またはその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物またはその抽出物、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、ジユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、油溶性カンゾウエキスなどを挙げることができる。
【0060】
保湿剤として、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ヒドロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸またはそのエステル類、エイコサペンタエン酸またはそのエステル類、ペクチン、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物またはその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ-オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマなどを挙げることができる。
【0061】
育毛剤として、ペンタデカン酸グリセリド、コレウスエキス、ゲンチアナエキス、マツカサエキス、ローヤルゼリーエキス、クマザサエキス、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン、センブリエキス、塩化カルプロニウム、ミノキシジル、フィナステリド、ア
デノシン、ニコチン酸アミド、桑の根エキス、ジオウエキス、5-アミノレブリン酸などを挙げることができる。
【0062】
動物、植物、または生薬の抽出物やエキスとしては、アセンヤク(阿仙薬)、アシタバ、アセロラ、アルテア、アルニカ、アボカド、アマチャ(甘茶)、アロエ、アロエベラ、イラクサ、イチョウ(銀杏葉、銀杏)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、ウスバサイシン(細辛)、ウメ(烏梅)、ウラジロガシ、ウワウルシ、ノイバラ(営実)、ヒキオコシ(延命草)、オウギ(黄耆)、コガネバナ(オウゴン)、ヤマザクラ(桜皮)、キハダ(黄柏)、オウレン(黄連)、オタネニンジン(人参)、オトギリソウ(弟切草)、オドリコソウ、オランダガラシ、オレンジ、イトヒメハギ(遠志)、ウツボグサ(夏枯草)、ツルドクダミ(何首烏)、エンジュ(槐花)、ヨモギ(ガイ葉)、ガジュツ(莪朮)、クズ(葛根)、カノコソウ(吉草根)、カミツレ、キカラスウリ(瓜呂根)、カワラヨモギ(茵チン蒿)、カンゾウ(甘草)、フキタンポポ(款冬花、款冬葉)、キイチゴ、キウイ果実、キキョウ(桔梗)、キク(菊花)、キササゲ(梓実)、ミカン属植物果実(枳実)、タチバナ(橘皮)、キュウリ、ウドまたはシシウド(羌活、独活)、アンズ(杏仁)、クコ(地骨皮、枸杞子、枸杞葉)、クララ(苦参)、クスノキ、クマザサ、グレープフルーツ果実、ニッケイ(桂皮)、ケイガイ(ケイガイ)、エビスグサ(決明子)、マルバアサガオまたはアサガオ(ケン牛子)、ベニバナ(紅花)、ゴバイシ(五倍子)、コンフリー、コパイバ、クチナシ(山梔子)、ゲンチアナ、ホオノキ(厚朴)、ヒナタイノコズチ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウ、チョウセンゴミシ(五味子)、米、米ぬか、ミシマサイコ(柴胡)、サフラン、サボンソウ、サンザシ(山ザ子)、サンショウ(山椒)、サルビア、サンシチニンジン(三七人参)、シイタケ(椎茸)、ジオウ(地黄)、シクンシ(使君子)、ムラサキ(紫根)、シソ(紫蘇葉、紫蘇子)、カキ(柿蒂)、シャクヤク(芍薬)、オオバコ(車前子、車前草)、ショウガ(生姜)、ショウブ(菖蒲)、トウネズミモチ(女貞子)、シモツケソウ、シラカバ、スイカズラ(金銀花、忍冬)、セイヨウキヅタ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウニワトコ、アズキ(赤小豆)、ニワトコ(接骨木)、ゼニアオイ、センキュウ(川キュウ)、センブリ(当薬)、クワ(桑白皮、桑葉)、ナツメ(大棗)、ダイズ、タラノキ、チクセツニンジン(竹節人参)、ハナスゲ(知母)、ワレモコウ(地楡)、ドクダミ(十薬)、フユムシナツクサタケ(冬虫夏草)、トウガラシ、ホオズキ(登呂根)、タチジャコウソウ、リョクチャ(緑茶)、コウチャ(紅茶)、チョウジ(丁子)、ウンシュウミカン(陳皮)、ツバキ、ツボクサ、トウガラシ(番椒)、トウキ(当帰)、トウキンセンカ、ダイダイ(橙皮)、ワレモコウ(地楡)、トウモロコシ(南蛮毛)、トチュウ(杜仲、杜仲葉)、トマト、ナンテン(南天実)、ニンニク(大サン)、オオムギ(麦芽)、ハクセン(白蘚皮)、ジャノヒゲ(麦門冬)、パセリ、バタタ、ハッカ(薄荷)、ハマメリス、バラ、ビワ葉(枇杷葉)、マツホド(茯リョウ)、ブドウまたはその葉、ヘチマ、ボダイジュ、ボタン(牡丹皮)、ホップ、マイカイ(マイ瑰花)、松葉、マロニエ、マンネンロウ、ムクロジ、メリッサ、メリロート、ボケ(木瓜)、モヤシ、モモ(桃仁、桃葉)、ヒオウギ(射干)、ビンロウジュ(檳ロウ子)、メハジキ(益母草)、ヤグルマギク、ユキノシタ(虎耳草)、ヤマモモ(楊梅皮)、ヤシャブシ(矢車)、ハトムギ(ヨクイニン)、モウコヨモギ、ヤマヨモギ、ラベンダー、リンゴ果実、マンネンタケ(霊芝)、レモン果実、レンギョウ(連翹)、レンゲソウ、ゲンノショウコ(老鸛草)、ハシリドコロ(ロート根)、鶏トサカ、牛・人の胎盤抽出物、豚・牛の胃、十二指腸、或いは腸の抽出物若しくはその分解物、水溶性コラーゲン、水溶性コラーゲン誘導体、コラーゲン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、水溶性エラスチン誘導体、シルク蛋白、シルク蛋白分解物、牛血球蛋白分解物などを挙げることができる。
【0063】
微生物培養代謝物として、酵母エキス、亜鉛含有酵母エキス、ゲルマニウム含有酵母エキス、セレン含有酵母エキス、マグネシウム含有酵母エキス、米醗酵エキス、ユーグレナ抽出物、脱脂粉乳の乳酸発酵物などを挙げることができる。
【0064】
α-ヒドロキシ酸として、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などを挙げることができる。
【0065】
無機顔料として、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミンなどを挙げることができる。
【0066】
紫外線吸収剤として、p-アミノ安息香酸誘導体、サルチル酸誘導体、アントラニル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、ビタミンB6誘導体、オキシベンゾン、ベンゾフェノン、グアイアズレン、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリンなどを挙げることができる。
【0067】
収斂剤として、乳酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、アラントイン、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン、p-フェノールスルホン酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、レソルシン、塩化第二鉄、タンニン酸などを挙げることができる。
【0068】
抗酸化剤として、アスコルビン酸およびその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポールなどを挙げることができる。
【0069】
抗炎症剤として、イクタモール、インドメタシン、カオリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、アセチルサリチル酸、塩酸ジフェンヒドラミン、dまたはdl-カンフル、ヒドロコルチゾン、グアイアズレン、カマズレン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸およびその塩、グリチルレチン酸およびその塩などを挙げることができる。
【0070】
殺菌・消毒薬として、アクリノール、イオウ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルロザニリン、クレゾール、グルコン酸カルシウム、グルコン酸クロルヘキシジン、スルファミン、マーキュロクロム、ラクトフェリンまたはその加水分解物などを挙げることができる。
【0071】
頭髪用剤として、二硫化セレン、臭化アルキルイソキノリニウム液、ジンクピリチオン、ビフェナミン、チアントール、カスタリチンキ、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、塩酸キニーネ、強アンモニア水、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、チオグリコール酸などを挙げることができる。
【0072】
香料として、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリスなどの天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、檜精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精
油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油などの植物性香料、その他合成香料などを挙げることができる。
【0073】
色素・着色剤として、赤キャベツ色素、赤米色素、アカネ色素、アナトー色素、イカスミ色素、ウコン色素、エンジュ色素、オキアミ色素、柿色素、カラメル、金、銀、クチナシ色素、コーン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、スピルリナ色素、ソバ全草色素、チェリー色素、海苔色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、マリーゴールド色素、紫イモ色素、紫ヤマイモ色素、ラック色素、ルチンなどを挙げることができる。
【0074】
甘味料として、砂糖、甘茶、果糖、アラビノース、ガラクトース、キシロース、マンノース、麦芽糖、蜂蜜、ブドウ糖、ミラクリン、モネリンなどを挙げることができる。
【0075】
栄養強化剤として、貝殻焼成カルシウム、シアノコラバミン、酵母、小麦胚芽、大豆胚芽、卵黄粉末、ヘミセルロース、ヘム鉄などを挙げることができる。
【0076】
その他、ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質およびその分解物、動・植物性多糖類およびその分解物、動・植物性糖蛋白質およびその分解物、血流促進剤、消炎剤・抗アレルギー剤、細胞賦活剤、角質溶解剤、創傷治療剤、増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、苦味料、調味料、酵素などを挙げることができる。
【0077】
<1.3.抗炎症剤の好適例>
本実施形態の抗炎症剤は、炎症性疾患の予防、改善または治療のために好適に用いることができる。炎症性疾患として、たとえば、関節炎、皮膚炎、炎症性腸疾患を挙げることができる。関節炎や皮膚炎として、たとえば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患を挙げることができる。炎症性腸疾患として、たとえば潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病を挙げることができる。
【0078】
<1.4.皮膚外用組成物の好適例>
本実施形態の皮膚外用組成物は、たとえば、医薬品、医薬部外品、化粧品として好適に用いることができる。それらの例として、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パックなどの基礎化粧料、洗顔料、皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛・養毛料などの頭髪化粧料、ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛などのメークアップ化粧料、美爪料などの仕上げ用化粧料などを挙げることができる。これに加えて、香水類、浴用剤、歯磨き類、口中清涼剤・含嗽剤、液臭・防臭防止剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ、皮膚外用剤(具体的には医薬品としての皮膚外用剤)などを挙げることもできる。
【0079】
なお、本実施形態の皮膚外用組成物の製剤形態も、適宜設定できることはもちろんである。製剤形態として、たとえば、粉末状、顆粒状、固形状、液状、ゲル状、気泡状、乳液状、クリーム状、軟膏状、シート状、ムース状を挙げることができる。
【0080】
本実施形態の皮膚外用組成物は、炎症性疾患の予防、改善または治療のために好適に用いることができる。炎症性疾患として、たとえば、関節炎、皮膚炎を挙げることができる。とりわけ、TNF-αの過剰産生に起因する炎症性疾患、たとえば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、尋常性天疱瘡、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎の予防、改善または治療のために特に好適に用いることができる。
【0081】
<1.5.飲食品組成物の好適例>
本実施形態の飲食品組成物は、たとえば、一般食品であってもよく、保健機能食品(たとえば特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)であってもよい。なかでも、保健機能食品であることが好ましい。
【0082】
本実施形態の飲食品組成物は、炎症性腸疾患の予防、改善または治療のために好適に用いることができる。炎症性腸疾患として、たとえば潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病を挙げることができる。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
<1.大豆胚芽抽出物の調製>
大豆胚芽抽出物は、特許第5018171号公報の発明の詳細な説明の欄に記載された実施例3の方法で得た。具体的には、100gの大豆胚芽(フォーユー社製)に、500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーで大豆胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中性となるように中和した。中和後の液体画分について、電気透析装置(アシライザー、アストム社製)により脱塩をおこなったうえで凍結乾燥した。このようにして得られた粉末、すなわち大豆胚芽抽出物の粉末を種々の評価に用いた。
なお、大豆胚芽抽出物中のプトレシンや、スペルミジン、スペルミンの量も求めた。これらの量を求めるために、100gの大豆胚芽(フォーユー社製)に希釈内部標準液(1,7-diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)、および500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーで大豆胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中性となるように中和した。中和後の液体画分を用いて、特許第5018171号公報の発明の詳細な説明の欄に記載された方法でプトレシンや、スペルミジン、スペルミンの量を求めた。プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンについて大豆胚芽抽出物中には、プトレシンが23.5mg、スペルミジンが24.0mg、スペルミンが9.6mg含まれており、これらは合計で57.1mgであった。
【0085】
<2.小麦胚芽抽出物の調製>
小麦胚芽抽出物は、特許第5018171号公報の発明の詳細な説明の欄に記載された実施例4の方法で得た。具体的には、100gの小麦胚芽(培焼・ローストタイプ、日清ファルマ社製)に、500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーで小麦胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中性となるように中和した。中和後の液体画分について、電気透析装置(アシライザー、アストム社製)により脱塩をおこなった。脱塩後の小麦胚芽抽出物液(以下、「液体品」と言うことがある。)を種々の評価に用いた。
なお、小麦胚芽抽出物中のプトレシンや、スペルミジン、スペルミンの量も求めた。これらの量を求めるために、100gの小麦胚芽(培焼・ローストタイプ,日清ファルマ社製)に希釈内部標準液(1,7-diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)、および500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーで小麦胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中性となるように中和した。中和後の液体画分を用いて、特許第5018171号公報の発明の詳細な説明の欄に記載された方法でプトレシンや、スペルミジン、スペルミンの量を求めた。プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンについて小麦胚芽抽出物中には、プトレシンが6.4mg、スペルミジンが23.9mg、スペルミンが14.3mg含まれており、これらは合計で44.6mgであった。
【0086】
<3.抗炎症作用の評価手順の概要>
マクロファージは、体内で免疫システムの司令塔として重要な役割を担うところ、マクロファージは、状況に応じて攻撃モード(M1)/修復モード(M2)に分極する。
試料(たとえば大豆胚芽抽出物、小麦胚芽抽出物)の添加によって、M1マクロファージから分泌される炎症性サイトカイン(たとえばTNF-α)の産生が抑制された場合、その試料が抗炎症作用を有する、と評価することができる。試料の添加によって、M2マクロファージから分泌される抗炎症性サイトカイン(たとえばIL-10)の産生が促進された場合、その試料が抗炎症作用を有する、とより心強く評価することができる。なお、マクロファージの分極モードはM1とM2とにはっきり分けられる訳ではなく、M1とM2との間に連続的なバリエーションがあると言われている。ちなみに、以下では、M1マクロファージを「マクロファージ(M1)」と言うことがある。M2マクロファージを「マクロファージ(M2)」と言うことがある。
ここでは、TNF-α産生量の評価手順の概要を説明する。なぜなら、後述する実施例の多くで、TNF-α産生量を指標に抗炎症作用を評価したためである。
【0087】
<3.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:ヒト急性単球性白血病由来細胞株(THP-1)
継代数:P10以下
継代時の播種密度・培養日数:0.5×10cells/dish~2.0×10cells/dishで2~4日間培養
継代時直前の細胞コンフルエンス:60%~80%
培地:RPMI1640(+L-Glutamine)(11875-119,gibco)(特に記載がない限り、10%FBS、および1%Penicillin-Streptmycin含有)
PMA:ホルボール12‐ミリスタート13‐アセタート(P8139-1MG,SIGMA)
LPS:LPS(L6529-1MG,SIGMA)
TNF-α:TNF-α測定のために次のキットを使用した。
DuoSet ELISA development system Human TNF-α (DY210-05,R&D systems)
DuoSet Ancillary Reagent Kit2 (DY008,R&D systems)
【0088】
<3.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
10cmディッシュで培養したTHP-1細胞培養液を50mL遠心チューブへ移し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、培地適量で懸濁し、細胞計数をおこなった。先に調製しておいたM0誘導用培地(20ng/mL PMA含有培地)で5×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ400μL/well(2.0×10cells/well)へ播種し、COインキュベーター(37℃,5.0%)内で16時間培養した。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
(1)の48ウェルプレートを取り出し、顕微鏡で細胞が接着していることを確認後、RPMI1640に400μL/wellで培地交換し、PMAを除去した。COインキュベーター(37℃,5.0%)内で4時間以上インキュベート後、M1誘導用培地(80ng/mL LPS含有培地)に400μL/wellで培地交換し、COインキュベーター(37℃,5.0%)内で20~22時間培養した。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、これに試料(たとえば、大豆胚芽抽出物、小麦胚芽抽出物)を混合した。これによって試料含有M1誘導用培地を得た。試料含有M1誘導用培地に400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0089】
<4.実施例1_大豆胚芽抽出物の抗炎症作用>
大豆胚芽抽出物が、抗炎症作用を有するかどうかを調べるために、大豆胚芽抽出物が、TNF-αの産生抑制作用を有するかどうかを調べた。
<4.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0090】
<4.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、大豆胚芽抽出物を終濃度0.0001w/v%~0.2w/v%となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(以下、「-LPS」と言うことがある。)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(以下、「Control」と言うことがある。)とを設定した。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0091】
図1に示すように、大豆胚芽抽出物によってTNF-αの産生が抑制された。具体的には、0.001w/v%という低濃度で、TNF-αの産生が抑制された。なお、大豆胚芽抽出物の濃度が高いほど、TNF-αの産生量が低かった。
【0092】
<5.実施例2_大豆胚芽抽出物の限外ろ過分画>
大豆胚芽抽出物を、分子量の違いで簡易的に分画するために限外ろ過をおこなった。具体的には、2w/v%大豆胚芽抽出物溶液3mLを、限外ろ過チューブのポアサイズの大きい順(100kDa→50kDa→30kDa→10kDa→3kDa cut off)に濃縮操作をおこなっていき、分子量の違いで分画した。具体的には、3kDa未満画分、3kDa~10kDa画分、10kDa~30kDa画分、30kDa~50kDa画分、50kDa~100kDa画分、および100kDa以上画分に分画した。なお、各分画は、生理食塩水で3回洗浄後、最終的に生理食塩水で元の液量(すなわち3mL)に戻し、培養実験で使用する液量を各画分でそろえた。使用した限外ろ過チューブおよび遠心機、遠心条件は以下の通りである。
限外ろ過チューブ:“Amicon Ultra” Centrifugal Filters Ultracel(登録商標)の100K(UFC910024)、50K(UFC805096)、30K(UFC903008)、10K(UFC901024)、および3K(UFC800324)
遠心機:CR21F(HITACHI)
遠心条件:6,000rpm,4℃
【0093】
<6.実施例3_大豆胚芽抽出物の限外ろ過画分の抗炎症作用>
どの画分が、TNF-αの産生抑制作用を有するのかを調べた。
<6.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0094】
<6.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、実施例2で調製した大豆胚芽抽出物限外ろ過画分(2w/v%分)が1/20量となるように、大豆胚芽抽出物限外ろ過画分をM1誘導用培地に添加(終濃度0.1w/v%分、各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。大豆胚芽抽出物を終濃度0.1w/v%となるように添加した条件も設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0095】
図2に示すように、3kDa未満の画分でのみ、TNF-αの産生がはっきりと抑制された。他の画分、たとえば3kDa~10kDa画分でも、TNF-αの産生がいくらか抑制されたものの、これは、たとえば3kDa~10kDa画分に、3kDa未満の成分がいくらか残留したためであると考えられる。このたびの結果から、大豆胚芽抽出物中の3kDa未満の成分によって、TNF-α産生抑制作用が発揮されている、と考えられる。
【0096】
<7.実施例4_小麦胚芽抽出物の限外ろ過画分の抗炎症作用>
小麦胚芽抽出物もTNF-αの産生抑制作用を有するのか、もしそれを有するとすれば、どの画分がそれを有するのか、有効な画分(すなわち、TNF-αの産生抑制作用を有する画分)が、小麦胚芽抽出物と大豆胚芽抽出物とで異なるのかを調べた。
<7.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0097】
<7.2.手順>
(1)小麦胚芽抽出物の限外ろ過画分の調製
小麦胚芽抽出物(液体品)を実施例2と同様の方法で限外ろ過し、分子量の違いで簡易的に分画した。具体的には、3kDa未満画分、3kDa~10kDa画分、10kDa~30kDa画分、30kDa~50kDa画分、50kDa~100kDa画分、および100kDa以上画分に分画した。
(2)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(4)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、(1)で調製した小麦胚芽抽出物限外ろ過画分が1/40量となるように、小麦胚芽抽出物限外ろ過画分をM1誘導用培地に添加(終濃度2.5v/v%分、各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。小麦胚芽抽出物(液体品)を終濃度2.5v/v%となるようにM1誘導用培地に添加した条件も設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(Control)とを設定した。
(5)培養上清回収・液性因子の測定
(4)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0098】
図3に示すように、小麦胚芽抽出物でもTNF-αの産生が抑制された。そのうえ、小麦胚芽抽出物でも3kDa未満の画分で、TNF-αの産生が抑制された。これらの結果から、TNF-α産生抑制作用は、分子量3kDa未満であり、かつ、大豆胚芽と小麦胚芽との共通物質によって発揮されている可能性が高い、と考えられる。
【0099】
<8.実施例5_大豆胚芽抽出物および小麦胚芽抽出物の1kDa未満画分の抗炎症作用>
TNF-α産生抑制作用を示す成分をいっそう絞り込むために、大豆胚芽抽出物の3kDa未満画分を、1kDa未満画分と、1kDa~3kDa画分とに分けたうえで、どちらの画分が、TNF-αの産生抑制作用を有するのかを調べた。小麦胚芽抽出物についても、どちらの画分が、TNF-αの産生抑制作用を有するのかを調べた。
【0100】
<8.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0101】
<8.2.手順>
(1)1kDa未満画分、および1kDa~3kDa画分の調製
実施例2の方法に準じて、1kDa cut offの限外ろ過チューブ(Microsep Advance with 1K Omega,MCP001C41,Pall)を用いて、大豆胚芽抽出物の3kDa未満画分を、1kDa未満画分と、1kDa~3kDa画分とに分画した。同じように、小麦胚芽抽出物の3kDa未満画分も、1kDa未満画分と、1kDa~3kDa画分とに分画した。
(2)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(4)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、(1)で調製した2w/v%分大豆胚芽抽出物(1kDa未満画分、1kDa~3kDa画分)が1/100量となるように、2w/v%分大豆胚芽抽出物をM1誘導用培地に添加(終濃度0.02w/v%分、各条件n=3)した。いっぽう、小麦胚芽抽出物(1kDa未満画分、1kDa~3kDa画分)が1/40量となるように、小麦胚芽抽出物をM1誘導用培地に添加(終濃度2.5v/v%分、各条件n=3)した。これらを用いて400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。大豆胚芽抽出物を終濃度0.02w/v%となるように添加した条件、大豆胚芽抽出物3kDa未満画分を終濃度0.02w/v%分となるようにM1誘導用培地に添加した条件、小麦胚芽抽出物3kDa未満画分を終濃度2.5v/v%分となるようにM1誘導用培地に添加した条件も設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。
(5)培養上清回収・液性因子の測定
(4)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0102】
図4に示すように、大豆胚芽抽出物でも小麦胚芽抽出物でも、1kDa~3kDa画分ではTNF-αの産生が抑制されず、1kDa未満の画分でTNF-αの産生が抑制された。このたびの結果から、TNF-α産生抑制作用は、分子量1kDa未満であり、かつ、大豆胚芽と小麦胚芽との共通物質によって発揮されている可能性が高い、と考えられる。
【0103】
<9.実施例6_オートクレーブ処理大豆胚芽抽出物の抗炎症作用>
TNF-α産生抑制作用を示す成分が、オートクレーブ処理によって失活するかどうか(すなわち熱失活するかどうか)を調べた。
【0104】
<9.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0105】
<9.2.手順>
(1)大豆胚芽抽出物および大豆胚芽抽出物(3kDa未満画分)のオートクレーブ処理
2w/v%大豆胚芽抽出物を耐熱チューブに入れ、オートクレーブにかけた(121℃,15分)。実施例2で調製した2w/v%分大豆胚芽抽出物(3kDa未満画分)も耐熱チューブに入れ、オートクレーブにかけた(121℃,15分)。
(2)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(4)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、(1)で調製した大豆胚芽抽出物のオートクレーブ処理物、および大豆胚芽抽出物(3kDa未満画分)のオートクレーブ処理物をそれぞれ終濃度0.01w/v%分となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。オートクレーブ前の大豆胚芽抽出物、およびオートクレーブ前の大豆胚芽抽出物(3kDa未満画分)を終濃度0.01w/v%分となるように添加した条件も設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)、添加試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)の2条件を設定した。
(5)培養上清回収・液性因子の測定
(4)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0106】
図5に示すように、オートクレーブ未処理の大豆胚芽抽出物(すなわち、オートクレーブ処理前の大豆胚芽抽出物)でも、オートクレーブ処理された大豆胚芽抽出物(すなわち、オートクレーブ処理後の大豆胚芽抽出物)でも同じようにTNF-αの産生が抑制された。このたびの結果によれば、TNF-α産生抑制作用を示す成分は耐熱性を有すると考えられる。
【0107】
<10.実施例7_大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分の抗炎症作用(1)>
大豆胚芽抽出物粉末を、様々な濃度のエタノール水溶液でさらに抽出し、どの濃度のエタノール水溶液によって抽出された画分がTNF-α産生抑制作用を示すのかを調べ、それによって、TNF-α産生抑制作用を示す成分の水溶性の程度を評価した。
【0108】
<10.1.大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分の調製(4w/v%分)>
大豆胚芽抽出物粉末0.2gを、エタノール水溶液(エタノール濃度50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%)2mLに懸濁または溶解し、振とう機で攪拌(30回転/分、2~3時間、室温)した。遠心(13,000rpm,10分)により上清を回収後、再遠心(13,000rpm,10分)して再び上清を回収した。容器のフタを開け、溶媒をとばし(50℃,17時間)、蒸留水5mLに溶解後(すなわち、4w/v%分エタノール抽出画分を調製した後)、フィルター滅菌して-30℃で保存した。
【0109】
<10.2.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0110】
<10.3.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、10.1.で調製したエタノール抽出画分をそれぞれ終濃度0.02w/v%分となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。大豆胚芽抽出物の水溶液を終濃度0.02w/v%となるように添加した条件を設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0111】
図6に示すように、エタノール濃度50%~90%で抽出された画分で、TNF-αの産生が抑制された。いっぽう、95%で抽出された画分では、TNF-αの産生がわずかに抑制された。100%エタノールで抽出された画分では、TNF-αの産生が一切抑制されなかった。このたびの結果によれば、TNF-α産生抑制作用を示す成分は、水に易溶であり、エタノールには不要であると推察される。
【0112】
<11.実施例8_大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分の抗炎症作用(2)>
TNF-α産生抑制作用を示す成分の水溶性の程度をさらに評価した。具体的には、大豆胚芽抽出物粉末を、高濃度(具体的にはエタノール濃度90%~100%)のエタノール水溶液で抽出し、どの濃度のエタノール水溶液によって抽出された画分がTNF-α産生抑制作用を示すのかを調べ、それによって、TNF-α産生抑制作用を示す成分の水溶性の程度を評価した。
【0113】
<11.1.大豆胚芽抽出物のエタノール抽出画分の調製(4w/v%分)>
大豆胚芽抽出物粉末0.2gを、エタノール水溶液(エタノール濃度90%、92%、94%、96%、98%、100%)2mLに懸濁または溶解し、振とう機で攪拌(30回転/分、2~3時間、室温)した。遠心(13,000rpm,10分)により上清を回収後、再遠心(13,000rpm,10分)して再び上清を回収した。容器のフタを開け、溶媒をとばし(50℃,17時間)、蒸留水5mLに溶解後(すなわち、4w/v%分エタノール抽出画分を調製した後)、フィルター滅菌して-30℃で保存した。
【0114】
<11.2.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0115】
<11.3.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、11.1.で調製したエタノール抽出画分をそれぞれ終濃度0.02w/v%分となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。実施例7で調製した50%エタノール抽出画分、および80%エタノール抽出画分を終濃度0.02w/v%となるように添加した条件も設定した。大豆胚芽抽出物を終濃度0.02w/v%となるように添加した条件も設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0116】
図7に示すように、エタノール濃度90%以下で抽出された画分では、大豆胚芽抽出物と同程度にTNF-αの産生が抑制された。いっぽう、90%を超えるエタノール濃度の画分では、エタノール濃度が高くなるほど、TNF-αの産生抑制の程度が弱まり、エタノール濃度98%で抽出された画分、すなわち98%画分では、TNF-αの産生が一切抑制されなかった。水をわずかに含有する96%画分でTNF-αの産生がいくらか抑制され、100%エタノールで抽出された画分では、TNF-αの産生が一切抑制されなかったことに照らすと、TNF-α産生抑制作用を示す成分は、水に易溶であり、エタノールには不要であると推察される。
【0117】
<12.実施例9_TNF-α遺伝子発現の抑制>
大豆胚芽抽出物が、M1マクロファージのTNF-α遺伝子の発現になんらかの影響を与えるかどうかを調べた。
<12.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0118】
<12.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、大豆胚芽抽出物を終濃度0.1w/v%、または実施例2で調製した大豆胚芽抽出物限外ろ過3kDa未満画分を終濃度0.1w/v%分となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。
(4)細胞の回収・RNA抽出
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を除去し、細胞をPBSで1回洗浄したのち、RNeasy Plus Mini Kit(74136,QIAGEN)を用いてRNA抽出を行った。抽出したRNA濃度はNanoDrop 2000(Thermo Scientific)にて測定した。
(5)リアルタイムPCR
リアルタイムPCRのために、以下の試薬や装置を使用した。
One-step qPCR Kit:RNA-directTM Realtime PCR Master Mix (QRT-101,TOYOBO)
プライマー:Taqman GAPDH(内在性control)(Hs02786624_g1,GAPDH VIC,PN4448489,Thermo Scientific)
プライマー:Taqman TNF-α(Hs01113624_g1 TNF,Thermo Scientific)
装置:7500 Real Time PCR system(Applied Biosystems)
装置メニューは次の通りであった。
・7500 (96well)
・Quantitation-Comparative CT(ΔΔCT)
・Taqman(登録商標) Reagent
・Standard
(4)で抽出したRNA溶液と、One-step qPCR Kitの試薬と、プライマーとをキットのプロトコルに従い、所定の濃度で混合した。このとき、RNA濃度が各条件で200ng/wellとなるように混合した。専用プレートへ分注し、プレートシールを念入りに貼り、スピンダウンの上、装置にセットして反応をスタートさせた。
比較CT法により、条件「-LPS」を1とした最終相対定量(RQ)値を算出した。
【0119】
図8に示すように、LPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と比較して、LPSでM1分極誘導をかけたControlのRQ値が4以上であったことから、M1分極誘導の結果、TNF-αの発現が大幅に増強した。これに対して、M1分極誘導をかけたうえで大豆胚芽抽出物、および大豆胚芽抽出物限外ろ過3kDa未満画分を添加することによって、TNF-αの発現が強力に抑制された。このたびの結果から、大豆胚芽抽出物、および大豆胚芽抽出物限外ろ過3kDa未満画分によるTNF-αの産生の抑制は、TNF-α遺伝子の発現が抑制されることによることが明らかとなった。
【0120】
<13.実施例10_デキサメタゾンとの抗炎症作用の比較(TNF-α指標)>
TNF-α産生量を指標に、大豆胚芽抽出物の抗炎症作用と、デキサメタゾンの抗炎症作用とを比較した。なお、デキサメタゾンは、急性・慢性炎症、自己免疫疾患、アレルギー性疾患などに使用されるステロイド系抗炎症薬である。
【0121】
<13.1.使用した細胞や試薬など>
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
【0122】
<13.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(3)試料添加
M1誘導用培地を必要量調製したのち、大豆胚芽抽出物を終濃度0.1w/v%となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。比較対象としてデキサメタゾンを終濃度1nM~1000nMとなるように添加した条件を設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(すなわちControl)とを設定した。1回の実験で1条件あたりn=3で実験をおこなった。
(4)培養上清回収・液性因子の測定
(3)で培養開始後、6時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のTNF-α濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0123】
図9に示すように、デキサメタゾンは、10nM(すなわち0.01μM)以上で強いTNF-α産生抑制作用を発揮した。10nMデキサメタゾンと同程度のTNF-α産生抑制作用を0.1w/v%大豆胚芽抽出物が発揮した。
【0124】
なお、デキサメタゾンの経口薬の一般的な摂取量は、デカドロン錠0.5mg/デカドロン錠4mg 処方箋医薬品説明書(日医工)によれば、0.5mg/日~8mg/日である。1人の体重を60kg(=60L)であったとすると、デキサメタゾンの経口薬の一般的な摂取量は、1人1日あたり20nM~340nMとなる。経口摂取されたデキサメタゾンのうち、どれだけの量が吸収され患部に届いているかは明白ではないものの、このたびの結果によれば、0.1w/v%大豆胚芽抽出物の抗炎症作用は、デキサメタゾンを低用量服用した際の抗炎症作用と同程度ではないかと推察される。
【0125】
<14.実施例11_デキサメタゾンとの抗炎症作用の比較(IL-10指標)>
IL-10産生量を指標に、抽出物(大豆胚芽抽出物や小麦胚芽抽出物)の抗炎症作用と、デキサメタゾンの抗炎症作用とを比較した。
【0126】
<14.1.使用した細胞や試薬など>
IL-10測定のために次のキットを使用したこと以外は、「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した細胞や試薬などを使用した。
DuoSet ELISA development system Human IL-10(DY217B-05,R&D systems)
DuoSet Ancillary Reagent Kit2(DY008,R&D systems)
【0127】
<14.2.手順>
(1)マクロファージ(M0)への分極誘導
「3.抗炎症作用の評価手順の概要」に記載した通り。
(2)マクロファージ(M1)への分極誘導、および試料添加
(1)の48ウェルプレートを取り出し、顕微鏡で細胞が接着していることを確認後、400μL/wellで培地交換によりPMAを除去し、COインキュベーター(37℃,5.0%)内で4時間以上インキュベートした。
M1誘導用培地(80ng/mL LPS含有培地)を必要量調製したのち、大豆胚芽抽出物を終濃度0.1w/v%、または実施例2で調製した大豆胚芽抽出物3kDa未満画分を終濃度0.1w/v%分となるように、または小麦胚芽抽出物(液体品)を終濃度2.5v/v%となるようにM1誘導用培地に添加(各条件n=3)し、400μL/wellで培地交換してCOインキュベーター(37℃,5.0%)内で培養を開始した。比較対象としてデキサメタゾンを終濃度10nMとなるように添加した条件を設定した。コントロールとして、M0分極誘導後にLPSを全く添加しない条件(すなわち-LPS)と、試料として大塚蒸留水またはPBSを用いた条件(Control)とを設定した。1回の実験で1条件あたりn=3で実験をおこなった。
(3)培養上清回収・液性因子の測定
(2)で培養開始後、72時間後に培養上清を回収し、-80℃フリーザーへ保存した。後日解凍して、培養上清中のIL-10濃度を、キットのプロトコルにしたがって測定した。
【0128】
図10に示すように、ControlのIL-10産生量は、-LPSのIL-10産生量よりも高かった。これは、IL-10が、M2(抗炎症性)マクロファージが分泌するサイトカインであるものの、LPS刺激によっても若干産生されるためである。
そのため、IL-10を指標に抗炎症作用を議論する際は、IL-10産生量が、Controlと比べて高いかどうかに着目すべきである。
0.1w/v%大豆胚芽抽出物、0.1w/v%分大豆胚芽抽出物3kDa未満画分、および2.5v/v%小麦胚芽抽出物の条件では、ControlよりIL-10産生量が高かった。いっぽう、デキサメタゾンでは、IL-10の産生はControlと同程度であった。つまり、デキサメタゾンによってIL-10産生は促進されなかった。デキサメタゾンがIL-10産生を抑制する、ということを報告する文献(参考文献1および2参照)があるところ、このたびの結果は、それらの文献の報告に沿う。これら抽出物がIL-10産生を促進したのに対して、デキサメタゾンがIL-10産生を促進しなかったことから、これら抽出物は、ステロイド剤であるデキサメタゾンとは異なる機序で抗炎症作用を発揮する、と考えられる。
参考文献1:Bessler H.et al., Effect of Dexamethasone on IL-10 and IL-12p40 Production in Newborns and Adults, Biol Neonate 80:262-266(2001).
参考文献2:L.Cannarile et al., Dexamethasone Modulates IL-13 and IL-10 Expression, International Journal of Immunopathology and Phamacology, Vol.10(3):175-182(1997).
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、抗炎症剤、TNF-α産生抑制剤、IL-10産生亢進剤、皮膚外用組成物、および飲食品組成物を提供することができるため、産業上の利用可能性を有する。
図1
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図10