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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060258
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20240424BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20240424BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240424BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240424BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20240424BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240424BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240424BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20240424BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240424BHJP
   B60L 7/18 20060101ALI20240424BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240424BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20240424BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20240424BHJP
【FI】
B60W20/13
B60W30/18 ZHV
F02D29/02 321C
F02D29/06 D
B60K6/445
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/12
B60L50/16
B60L7/18
B60L58/12
B60W30/14
B60W40/076
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167522
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 英輝
(72)【発明者】
【氏名】都築 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】成田 隆大
【テーマコード(参考)】
3D202
3D241
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB00
3D202BB15
3D202BB16
3D202BB21
3D202BB52
3D202CC02
3D202CC04
3D202CC06
3D202CC58
3D202CC59
3D202DD00
3D202DD02
3D202DD19
3D202DD44
3D202DD45
3D202DD50
3D241BA01
3D241BA46
3D241BB07
3D241CA06
3D241CC02
3D241CC03
3D241CC08
3D241CD07
3D241CD12
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA12Z
3D241DA39Z
3D241DA69Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB32Z
3D241DC01Z
3D241DC21Z
3D241DD12Z
3G093AA07
3G093BA19
3G093BA22
3G093CB07
3G093CB12
3G093DA06
3G093DA13
3G093DB15
3G093DB16
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB24
3G093EA01
5H125AA01
5H125AB01
5H125BD17
5H125CA04
5H125CA09
5H125CA11
5H125CA18
5H125CB02
5H125DD11
5H125DD19
5H125EE27
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE62
5H125EE66
(57)【要約】
【課題】内燃機関等の動力源の作動を停止させて自車両を惰性走行させても、バッテリ等の蓄電装置の蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる車両走行制御装置を提供する。
【解決手段】車両走行制御装置10は、車両100を減速させる減速条件の成立中に車両の蓄電装置23の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、動力源20の作動を停止させた状態で車両を惰性走行させつつ、車両の発電装置22による車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、発電した電力を蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を惰行制御として実行し、減速条件の成立中に蓄電量が第1減速充電閾値よりも大きい場合、回生を行わずに、動力源の作動を停止させた状態で車両を惰性走行させる通常惰行制御を惰行制御として実行する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する制御装置を備えた車両走行制御装置において、
前記制御装置は、
前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行し、
前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行する、
ように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、
前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも小さい第2減速充電閾値以下である場合、前記動力源を作動させて発生させた動力により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電しつつ、前記車両を走行させる動力充電走行制御を実行し、
前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値以下であり且つ前記第2減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生充電惰行制御を実行する、
ように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、前記回生充電惰行制御の実行時、前記車両の電気負荷により消費される前記蓄電装置の電力量に応じた量の電力を発電させるように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、前記回生充電惰行制御の実行時、前記車両の減速度が所定減速度以下に維持されるように、前記発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生により発電される電力量を制限するように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両走行制御装置において、
前記動力源は、内燃機関を含んでおり、
前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行し、
前記制御装置は、前記動力充電加速制御の実行時、前記蓄電量が小さいときには、前記蓄電量が大きいときに比べ、前記動力充電加速制御を実行する時間を長くするように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記動力源を作動させて発生させた動力の一部により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行するように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、前記車両の走行速度が大きいときには、該走行速度が小さいときに比べ、前記加速充電閾値を小さい値に設定するように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の車両走行制御装置において、
前記制御装置は、地図情報及び前記車両の予測走行経路に基づいて前記車両が下り坂を走行することが予測されるときには、前記車両が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、前記加速充電閾値を小さい値に設定するように構成されている、
車両走行制御装置。
【請求項9】
車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する車両走行制御方法において、
前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行し、
前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行する、
車両走行制御方法。
【請求項10】
車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する車両走行制御プログラムにおいて、
前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行し、
前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行する、
ように構成された車両走行制御プログラム。
【請求項11】
車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の内燃機関を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記内燃機関の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する制御装置を備えた車両走行制御装置において、
前記制御装置は、前記車両の走行速度及び前記車両周辺の他車両から前記車両までの距離の少なくとも一方に基づいて前記加速制御及び前記惰行制御を選択的に実行し、
前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により前記車両の発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行し、
前記制御装置は、前記動力充電加速制御の実行時、前記蓄電量が小さいときには、前記蓄電量が大きいときに比べ、前記動力充電加速制御を実行する時間を長くするように構成されている、
車両走行制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行車に追従するように自車両を走行させる追従走行制御を実行する車両走行制御装置が知られている。又、こうした車両走行制御装置として、追従走行制御の実行時、自車両を惰性走行させて減速させることにより、燃費の向上を図るようにした車両走行制御装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の車両走行制御装置においては、自車両を惰性走行させる場合、内燃機関の作動を停止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4677945号公報
【発明の概要】
【0004】
車両には、エアコンやライト等の電装品が搭載されており、それら電装品は、車両のバッテリに蓄えられている電力を使用して作動するが、その電力は、内燃機関が出力する動力により発電されてバッテリに蓄えられたものである。従って、従来の車両走行制御装置は、追従走行制御の実行時、自車両を惰性走行させて減速させている間、内燃機関の作動を停止させているので、このときに電装品が作動していると、バッテリに蓄えられている電力が低下し続け、バッテリの蓄電量が過剰に小さくなってしまう可能性があり、好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関等の動力源の作動を停止させて自車両を惰性走行させても、バッテリ等の蓄電装置の蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる車両走行制御装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両走行制御装置は、車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する制御装置を備えている。前記制御装置は、前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行するように構成されている。又、前記制御装置は、前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行するように構成されている。
【0007】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、減速条件の成立中に蓄電量が小さくなった場合(蓄電量が第1減速充電閾値以下になった場合)、動力源の作動を停止させた状態で車両を惰性走行させつつ、車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、発電した電力を蓄電装置に充電する回生充電惰行制御が惰行制御として実行される。このため、動力源の作動を停止させて車両を惰性走行させても、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0008】
尚、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも小さい第2減速充電閾値以下である場合、前記動力源を作動させて発生させた動力により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電しつつ、前記車両を走行させる動力充電走行制御を実行するように構成されていてもよい。この場合、前記制御装置は、前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値以下であり且つ前記第2減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生充電惰行制御を実行するように構成される。
【0009】
回生充電惰行制御の実行中、車両の電装品等の電気負荷により蓄電装置に蓄えられている電力の消費が継続していることがある。従って、回生充電惰行制御により、車両の走行エネルギーの回生により発電が行われ、発電された電力が蓄電装置に充電されていても、蓄電量の低下が抑えられず、蓄電量が非常に小さくなってしまうこともある。
【0010】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、回生充電惰行制御の実行中に蓄電量が非常に小さくなった場合(蓄電量が第2減速充電閾値以下となった場合)、動力源を作動させて発生させた動力により発電装置を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置に充電する動力充電走行制御が実行される。これにより、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0011】
又、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、前記回生充電惰行制御の実行時、前記車両の電気負荷により消費される前記蓄電装置の電力量に応じた量の電力を発電させるように構成されていてもよい。
【0012】
上述したように、回生充電惰行制御の実行中、車両の電装品等の電気負荷により蓄電装置に蓄えられている電力の消費が継続していることがある。このとき、回生充電惰行制御により発電する電力の量を多くすれば、より早く、蓄電量を第1減速充電閾値まで上昇させることができる。しかしながら、これによると、車両の減速度が大きくなることから、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。一方、動力源の作動を停止させている間に蓄電量が過剰に小さくなることを回避するためには、少なくとも、電気負荷により消費される蓄電装置の電力量に見合った量の電力を発電し、発電した電力を蓄電装置に充電すればよい。
【0013】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、回生充電惰行制御の実行時、車両の電気負荷により消費される蓄電装置の電力量に応じた量の電力が発電される。従って、運転者に違和感を与えてしまうような車両の過大な減速度を発生させることなく、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0014】
又、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、前記回生充電惰行制御の実行時、前記車両の減速度が所定減速度以下に維持されるように、前記車両の走行エネルギーの回生により発電される電力量を制限するように構成されてもよい。
【0015】
先に述べたように、回生充電惰行制御により発電する電力の量を多くすれば、より早く、蓄電量を第1減速充電閾値まで上昇させることができるが、これによると、車両の減速度が大きくなることから、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0016】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、回生充電惰行制御の実行時、車両の減速度が所定減速度以下に維持されるように、車両の走行エネルギーの回生により発電される電力量が制限される。このため、運転者に違和感を与えてしまうような車両の過大な減速度を発生させることなく、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0017】
本発明に係る車両走行制御装置において、前記動力源は、例えば、内燃機関を含んでいる。この場合、前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行するように構成されていてもよい。この場合、前記制御装置は、前記動力充電加速制御の実行時、前記蓄電量が小さいときには、前記蓄電量が大きいときに比べ、前記動力充電加速制御を実行する時間を長くするように構成されてもよい。
【0018】
惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避するためには、加速制御の実行中に十分な量の電力を蓄電装置に充電しておくことも有効である。
【0019】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、加速条件の成立中に蓄電量が小さくなった場合(蓄電量が加速充電閾値以下となった場合)、内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に充電するとともに、残りの動力により車両を加速する動力充電加速制御が加速制御として実行される。そして、その動力充電加速制御の実行時、蓄電量が小さいときには、蓄電量が大きいときに比べ、動力充電加速制御を実行する時間が長くなる。このため、加速制御の実行中に十分な量の電力が蓄電装置に充電されるので、惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0020】
又、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記動力源を作動させて発生させた動力の一部により前記発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行するように構成されてもよい。
【0021】
先に述べたように、惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避するためには、加速制御の実行中に十分な量の電力を蓄電装置に充電しておくことも有効である。
【0022】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、加速条件の成立中に蓄電量が小さくなった場合(蓄電量が加速充電閾値以下となった場合)、動力源を作動させて発生させた動力の一部により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に充電するとともに、残りの動力により車両を加速する動力充電加速制御が加速制御として実行される。このため、加速制御の実行中に十分な量の電力が蓄電装置に充電されるので、惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0023】
又、本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、前記車両の走行速度が大きいときには、該走行速度が小さいときに比べ、前記加速充電閾値を小さい値に設定するように構成されていてもよい。
【0024】
車両の走行速度が大きい場合、車両の走行エネルギーの回生により得られる電力量が大きい。従って、加速制御の実行中に動力源が発生する動力により発電を行わなくても、後の惰行制御の実行中に車両の走行エネルギーの回生により発電を行うことにより、蓄電量を十分に上昇させることができる。そして、動力源が発生する動力による発電を行わなければ、動力源が消費するエネルギー量が少なくなる。
【0025】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、車両の走行速度が大きいときには、車両の走行速度が小さいときに比べ、加速充電閾値が小さい値に設定される。従って、加速制御の実行中、車両の走行速度が大きいときには、蓄電量が小さくなるまで、動力源が発生する動力による発電は行われない。従って、動力源が消費するエネルギー量を少なくしつつ、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0026】
本発明に係る車両走行制御装置において、前記制御装置は、地図情報及び前記車両の予測走行経路に基づいて前記車両が下り坂を走行することが予測されるときには、前記車両が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、前記加速充電閾値を小さい値に設定するように構成されていてもよい。
【0027】
加速制御中に蓄電量が小さくなってしまっても、その後、車両が下り坂を走行するのであれば、車両が下り坂を走行しているときに車両の走行エネルギーの回生による発電を行えば、十分な量の電力を蓄電装置に充電することができる。従って、加速制御の実行中に動力源が発生する動力により発電を行わなくても、後の惰行制御の実行中、車両が下り坂を走行している間に車両の走行エネルギーの回生により発電を行うことにより、蓄電量を十分に上昇させることができる。そして、動力源が発生する動力による発電を行わなければ、動力源が消費するエネルギー量が少なくなる。
【0028】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、車両が下り坂を走行することが予測されるときには、車両が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、加速充電閾値が小さい値に設定される。従って、加速制御の実行中、車両が下り坂を走行することが予測されるときには、蓄電量が小さくなるまで、動力源が発生する動力による発電は行われない。従って、動力源が消費するエネルギー量を少なくしつつ、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0029】
更に、本発明に係る車両走行制御方法は、車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する方法である。そして、本発明に係る車両走行制御方法は、前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行する工程と、前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行する工程とを具備している。
【0030】
本発明に係る車両走行制御方法によれば、先に述べた理由と同じ理由から、動力源の作動を停止させて車両を惰性走行させても、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0031】
更に、本発明に係る車両走行制御プログラムは、車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の動力源を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行するプログラムである。そして、本発明に係る車両走行制御プログラムは、前記車両を減速させる減速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が第1減速充電閾値以下である場合、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させつつ、前記車両の発電装置による前記車両の走行エネルギーの回生を行って発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電する回生充電惰行制御を前記惰行制御として実行し、前記減速条件の成立中に前記蓄電量が前記第1減速充電閾値よりも大きい場合、前記回生を行わずに、前記動力源の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる通常惰行制御を前記惰行制御として実行するように構成されている。
【0032】
本発明に係る車両走行制御プログラムによれば、先に述べた理由と同じ理由から、動力源の作動を停止させて車両を惰性走行させても、蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0033】
更に、本発明に係る車両走行制御装置は、車両を自律的に加減速する自律走行制御であって、前記車両の内燃機関を作動させて発生させた動力により前記車両を加速する加速制御と、前記内燃機関の作動を停止させた状態で前記車両を惰性走行させる惰行制御と、を含む自律走行制御を実行する制御装置を備えている。そして、前記制御装置は、前記車両の走行速度及び前記車両周辺の他車両から前記車両までの距離の少なくとも一方に基づいて前記加速制御及び前記惰行制御を選択的に実行するように構成されている。更に、前記制御装置は、前記車両を加速する加速条件の成立中に前記車両の蓄電装置の蓄電量が加速充電閾値以下である場合、前記内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により前記車両の発電装置を作動させて発電し、該発電した電力を前記蓄電装置に充電するとともに、残りの前記動力により前記車両を加速する動力充電加速制御を前記加速制御として実行するように構成されている。更に、前記制御装置は、前記動力充電加速制御の実行時、前記蓄電量が小さいときには、前記蓄電量が大きいときに比べ、前記動力充電加速制御を実行する時間を長くするように構成されている。
【0034】
先に述べたように、惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避するためには、加速制御の実行中に十分な量の電力を蓄電装置に充電しておくことも有効である。
【0035】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、加速条件の成立中に蓄電量が小さくなった場合(蓄電量が加速充電閾値以下となった場合)、内燃機関を作動させて発生させた動力の一部により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に充電するとともに、残りの動力により車両を加速する動力充電加速制御が加速制御として実行される。そして、その動力充電加速制御の実行時、蓄電量が小さいときには、蓄電量が大きいときに比べ、動力充電加速制御を実行する時間が長くされる。このため、加速制御の実行中に十分な量の電力が蓄電装置に充電されるので、惰行制御の実行中に蓄電量が過剰に小さくなることを回避することができる。
【0036】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置を示した図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置が搭載される車両(自車両)を示した図である。
図3図3の(A)は、自車両の前方に先行車が存在する場面を示した図であり、図3の(B)は、自車両の前方に先行車が存在しない場面を示した図である。
図4図4は、機関動力と内燃機関のエネルギー効率との関係、及び、モータ動力と第2モータジェネレータのエネルギー効率との関係を示した図である。
図5図5の(A)は、自車両の前方に先行車が存在せず、自車両の後方に後続車が存在する場面を示した図であり、図5の(B)は、自車両の前方に先行車が存在し、自車両の後方に後続車が存在する場面を示した図である。
図6図6は、機関出力動力及びバッテリ蓄電量等の推移を示したタイムチャートを示した図である。
図7図7は、自車速と加速充電閾値との関係を示した図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置について説明する。以下、自車両100の操作者が自車両100に乗車して当該自車両100の運転を行う者(即ち、自車両100の運転者)である場合を例にして、車両走行制御装置10について説明する。従って、本例において、車両走行制御装置10は、図1に示したように、自車両100に搭載されている。
【0039】
しかしながら、自車両100の操作者は、自車両100に乗車せずに当該自車両100の運転を遠隔で行う者(即ち、自車両100の遠隔操作者)であってもよい。自車両100の操作者が遠隔操作者である場合、車両走行制御装置10は、自車両100と、自車両100の運転を遠隔で行うために自車両100の外に設置された遠隔操作設備とにそれぞれ搭載され、以下で説明する車両走行制御装置10の機能は、自車両100に搭載された車両走行制御装置10と、遠隔操作設備に搭載された車両走行制御装置10とでそれぞれ分担して行われることになる。
【0040】
<ECU>
車両走行制御装置10は、制御装置としてのECU90を備えている。ECU90は、エレクトロニックコントロールユニット(電子制御装置)である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。本例において、車両走行制御装置10は、1つのECUを備えたものであるが、後述するように、複数のECUを備え、後述する各種処理をそれらECUにそれぞれ分担して実行させるように構成されてもよい。
【0041】
<内燃機関等>
図1に示したように、自車両100には、内燃機関21、第1モータジェネレータ221、第2モータジェネレータ222及びインバータ223が搭載されている。内燃機関21及びインバータ223は、ECU90に電気的に接続されている。更に、インバータ223は、第1モータジェネレータ221及び第2モータジェネレータ222に電気的に接続されている。
【0042】
図2に示したように、自車両100には、動力分配装置110も搭載されている。動力分配装置110は、内燃機関21、第1モータジェネレータ221、第2モータジェネレータ222及び駆動軸120(ドライブシャフト)の間での動力(又はエネルギー)の伝達経路を切り替える装置であり、内燃機関21、第1モータジェネレータ221、第2モータジェネレータ222及び駆動軸120に接続されている。より具体的には、動力分配装置110は、遊星歯車機構からなり、サンギアが内燃機関21の出力軸(クランクシャフト)に接続され、プラネタリギアが第1モータジェネレータ221の入出力軸に接続され、リングギアが第2モータジェネレータ222の入出力軸及び駆動軸120に接続されている。
【0043】
図2に示したように、自車両100には、バッテリ231も搭載されている。バッテリ231は、インバータ223に電気的に接続されている。バッテリ231は、電力を蓄えるための蓄電装置23である。
【0044】
ECU90は、内燃機関21の作動を制御することにより、内燃機関21が発生する動力の大きさを制御することができる。ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、内燃機関21が発生した動力(機関動力)を動力分配装置110を介して駆動軸120に入力することができる。即ち、ECU90は、自車両100を走行させるための駆動力として機関動力を自車両100に与えることができる。更に、ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、機関動力を動力分配装置110を介して第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221を作動させることもできる。このように、内燃機関21は、動力源としての動力装置20である。
【0045】
尚、ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、駆動軸120に入力される機関動力と第1モータジェネレータ221に入力される機関動力との割合を制御することができる。
【0046】
第1モータジェネレータ221に機関動力が入力されると、第1モータジェネレータ221は、発電を行う。発電された電力は、インバータ223を介してバッテリ231に充電される。従って、第1モータジェネレータ221は、発電を行う発電装置22である。ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、第1モータジェネレータ221に入力される機関動力の大きさを制御し、第1モータジェネレータ221が発電する電力量を制御することができる。
【0047】
又、ECU90は、インバータ223の動作状態を制御することにより、バッテリ231から第1モータジェネレータ221に電力を供給することができる。第1モータジェネレータ221に電力が供給されると、第1モータジェネレータ221は、動力を発生する。従って、第1モータジェネレータ221は、動力源としての動力装置20でもある。ECU90は、インバータ223の動作状態を制御することにより、バッテリ231から第1モータジェネレータ221に供給される電力量を制御し、第1モータジェネレータ221が発生する動力の大きさを制御することができる。
【0048】
例えば、ECU90は、内燃機関21が停止しているときに、第1モータジェネレータ221に電力を供給し、第1モータジェネレータ221が発生した動力を動力分配装置110を介して内燃機関21に入力することにより、内燃機関21を始動させることができる。この場合、第1モータジェネレータ221は、いわゆるスタータモータとして機能する。
【0049】
又、ECU90は、インバータ223の動作状態を制御することにより、バッテリ231から第2モータジェネレータ222に電力を供給することができる。第2モータジェネレータ222に電力が供給されると、第2モータジェネレータ222は、動力を発生する。従って、第2モータジェネレータ222は、動力源としての動力装置20である。ECU90は、インバータ223の動作状態を制御することにより、バッテリ231から第2モータジェネレータ222に供給される電力量を制御し、第2モータジェネレータ222が発生する動力の大きさを制御することができる。
【0050】
第2モータジェネレータ222が発生する動力は、動力分配装置110を介して駆動軸120に入力される。即ち、ECU90は、自車両100を走行させるための駆動力として第2モータジェネレータ222が発生する動力を自車両100に与えることができる。
【0051】
又、ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、自車両100の走行エネルギーを動力分配装置110を介して第2モータジェネレータ222に入力することができる。第2モータジェネレータ222に走行エネルギーが入力されると、第2モータジェネレータ222は、発電を行う。別の言い方をすると、第2モータジェネレータ222は、自車両100の走行エネルギーを回生して発電を行う。従って、第2モータジェネレータ222は、発電を行う発電装置22でもある。ECU90は、動力分配装置110の動作状態を制御することにより、第2モータジェネレータ222に入力される自車両100の走行エネルギーの量を制御し、第2モータジェネレータ222が発電する電力量を制御することができる。
【0052】
尚、本例において、動力装置20は、動力源として、内燃機関21、第1モータジェネレータ221及び第2モータジェネレータ222を備えているが、動力装置20は、動力源として、内燃機関及び1つのモータジェネレータを備えていてもよい。更に、動力装置20は、動力源として、内燃機関のみを備えていていてもよい。この場合、自車両100には、発電装置として、少なくとも1つのジェネレータが搭載される。
【0053】
<制動装置>
更に、自車両100には、制動装置30が搭載されている。制動装置30は、自車両100に制動力を加える制動装置であり、本例においては、油圧ブレーキ装置31である。制動装置30は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置30により自車両100に加えられる制動力を制御することができるようになっている。
【0054】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル51、アクセルペダル操作量センサ52、ブレーキペダル53、ブレーキペダル操作量センサ54、運転支援操作器55、第2運転支援操作器56、車速検出装置57及び周辺情報検出装置60が搭載されている。
【0055】
<アクセルペダル等>
アクセルペダル51は、自車両100を加速するために運転者により操作される機器である。アクセルペダル操作量センサ52は、アクセルペダル51の操作量を検出する機器である。尚、自車両100の操作者が自車両100の遠隔操作者である場合、アクセルペダル51及びアクセルペダル操作量センサ52は、遠隔操作設備に搭載されている。
【0056】
アクセルペダル操作量センサ52は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、アクセルペダル操作量センサ52によりアクセルペダル51の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量APに基づいて運転者の要求する自車両100の加速度をドライバー要求加速度Ga_driverとして算出する。ECU90は、ドライバー要求加速度Ga_driverがゼロよりも大きいときには、後述する自律走行制御(自動運転制御)を実行する場合を除き、ドライバー要求加速度Ga_driverが達成されるように動力装置20から出力される駆動力を制御する通常走行制御を実行する。
【0057】
<ブレーキペダル等>
ブレーキペダル53は、自車両100を減速させるために運転者により操作される機器である。ブレーキペダル操作量センサ54は、ブレーキペダル53の操作量を検出する機器である。尚、自車両100の操作者が自車両100の遠隔操作者である場合、ブレーキペダル53及びブレーキペダル操作量センサ54は、遠隔操作設備に搭載されている。
【0058】
ブレーキペダル操作量センサ54は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、ブレーキペダル操作量センサ54によりブレーキペダル53の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて運転者の要求する自車両100の減速度をドライバー要求減速度Gd_driverとして算出する。ECU90は、ドライバー要求減速度Gd_driverがゼロよりも大きいときには、後述する自律走行制御を実行する場合を除き、ドライバー要求減速度Gd_driverが達成されるように制動装置30から自車両100に加えられる制動力を制御する通常走行制御を実行する。
【0059】
<運転支援操作器等>
更に、自車両100には、運転支援操作器55及び第2運転支援操作器56が搭載されている。尚、自車両100の操作者が自車両100の遠隔操作者である場合、これら運転支援操作器55及び第2運転支援操作器56は、遠隔操作設備に搭載されている。
【0060】
<運転支援操作器>
運転支援操作器55は、運転者により操作されるボタンやスイッチ等の機器である。運転者は、運転支援操作器55を操作することにより、後述する自律走行制御の実行を車両走行制御装置10に要求し、或いは、自律走行制御の停止を車両走行制御装置10に要求することができる。
【0061】
運転支援操作器55は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、自律走行制御を実行していないときに運転支援操作器55が操作された場合、自律走行制御の実行が要求されたと判定し、その後、運転支援操作器55が操作されない限り、自律走行制御の実行が要求されていると判定する。一方、ECU90は、自律走行制御を実行しているときに運転支援操作器55が操作された場合、自律走行制御の実行が要求されていないと判定する。即ち、ECU90は、自律走行制御の停止が要求されたと判定する。
【0062】
<第2運転支援操作器>
第2運転支援操作器56(エコノミー運転支援操作器)は、運転者により操作されるボタンやスイッチ等の機器である。運転者は、第2運転支援操作器56を操作することにより、後述する第2自律走行制御の実行を車両走行制御装置10に要求し、或いは、第2自律走行制御の停止を車両走行制御装置10に要求することができる。
【0063】
第2運転支援操作器56は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、第2自律走行制御を実行していないときに第2運転支援操作器56が操作された場合、第2自律走行制御の実行が要求されたと判定し、その後、第2運転支援操作器56が操作されない限り、第2自律走行制御の実行が要求されていると判定する。一方、ECU90は、第2自律走行制御を実行しているときに第2運転支援操作器56が操作された場合、第2自律走行制御の実行が要求されていないと判定する。即ち、ECU90は、第2自律走行制御の停止が要求されたと判定する。
【0064】
<車速検出装置>
車速検出装置57は、自車両100の走行速度を検出する装置であり、例えば、自車両100の各車輪に設けられた車輪速センサを含んでいる。車速検出装置57は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、車速検出装置57により自車両100の走行速度を自車速Vとして取得する。
【0065】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の状況に関する情報を取得する装置であり、本例においては、電磁波センサ61及び画像センサ62を含んでいる。
【0066】
<電磁波センサ>
電磁波センサ61は、自車両100の周辺の物体に関するデータ(物標データ)を取得するセンサであり、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ)等の電波センサ、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサ、及び、レーザーレーダ(LiDAR)等の光センサである。電磁波センサ61は、電磁波を発信し、その電磁波が物体により反射された場合、その電磁波(反射波)を受信する。物標データは、それら発信された電磁波及び反射波に関する情報である。電磁波センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、電磁波センサ61から物標データを周辺検出情報ISとして取得する。
【0067】
例えば、ECU90は、図3の(A)に示したように、自車両100周辺の他車両である先行車200が存在する場合、周辺検出情報ISとしての物標データに基づいて先行車200を検出することができ、更に、その先行車200と自車両100との間の距離(先行車間距離DF)を取得することができる。
【0068】
先行車200は、自車両100から所定距離以内の距離で自車両100の前方を走行する他車両であって、自車走行車線を走行している他車両である。自車走行車線は、自車両100が走行している車線であり、車両走行制御装置10は、周辺検出情報ISに基づいて自車両100の左側の区画線及び右側の区画線を取得し、それら左側の区画線及び右側の区画線に基づいて自車走行車線を検出することができる。
【0069】
<画像センサ>
画像センサ62は、自車両100の周辺を撮影して画像データを取得するセンサであり、例えば、カメラセンサである。画像センサ62は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、画像センサ62から画像データを周辺検出情報ISとして取得する。
【0070】
ECU90は、周辺検出情報ISとしての画像データに基づいて自車両100の前方の状況を把握することができる。
【0071】
<道路情報取得装置>
道路情報取得装置70は、自車両100が走行している道路に関する情報を取得する装置であり、特に、本例においては、GPS信号を受信して自車両100の現在位置及び自車両100の周辺の地図情報を取得する装置である。自車両100の周辺の地図情報には、自車両100が走行している道路に関する情報(道路情報)が含まれている。
【0072】
本例において、道路情報取得装置70は、GPS受信機71及び地図データベース72を備えている。
【0073】
GPS受信機71は、GPS信号を受信する。GPS受信機71は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、GPS受信機71が受信したGPS信号に基づいて自車両100の現在位置を周辺検出情報ISとして取得する。
【0074】
地図データベース72は、地図情報を保存する機器である。地図データベース72は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、自車両100の現在位置に基づいて地図データベース72から自車両100の周辺の地図情報を周辺検出情報ISとして取得する。ECU90は、地図情報に基づいて、自車両100の進行方向前方、即ち、自車両100が走行するものと予測される道路に下り坂が存在するか否かを判定することができる。
【0075】
尚、周辺情報検出装置60は、道路脇に設けられた設備から無線で発信される道路に関する情報を受信する装置を含んでいてもよく、この場合、その情報を周辺検出情報ISとして取得するように構成されていてもよい。この場合、ECU90は、その周辺検出情報ISに基づいて、自車両100の進行方向前方、即ち、自車両100が走行するものと予測される道路に下り坂が存在するか否かを判定することができる。
【0076】
<車両走行制御装置の作動>
次に、車両走行制御装置10の作動について説明する。車両走行制御装置10は、自車両100を自律的に加減速させて自車両100を走行させる自律走行制御を実行することができるように構成されている。
【0077】
本例において、自律走行制御は、第1自律走行制御及び第2自律走行制御を含んでいる。第1自律走行制御は、第1走行速度制御(第1定速走行制御)及び第1車間距離制御(第1追従走行制御)を含んでおり、第2自律走行制御は、第2走行速度制御(エコノミー走行速度制御)及び第2車間距離制御(エコノミー追従走行制御)を含んでいる。
【0078】
<第1走行速度制御>
第1走行速度制御は、自車速Vが目標速度Vtgtに維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する自律走行制御である。第1走行速度制御は、運転支援条件が成立しており且つ第2運転支援条件が成立していないときに図3の(B)に示したように先行車が存在しない場合に実行される。
【0079】
運転支援条件は、自律走行制御の実行が要求されているとの条件である。第2運転支援条件は、第2自律走行制御の実行が要求されたとの条件である。
【0080】
車両走行制御装置10は、第1走行速度制御の実行中は、自車速Vが目標速度Vtgtよりも小さくなると、自車両100を加速し、自車速Vが目標速度Vtgtよりも大きくなると、自車両100を減速する。
【0081】
即ち、車両走行制御装置10は、第1走行速度制御の実行中は、自車速Vが目標速度Vtgtよりも小さくなったとの加速条件が成立すると、自車両100を加速するための加速制御を実行し、自車速Vが目標速度Vtgtよりも大きくなったとの減速条件が成立すると、自車両100を減速するための減速制御を実行する。
【0082】
尚、車両走行制御装置10は、運転者により目標とする自車両100の走行速度として設定された速度を目標速度Vtgtとして設定する。自車両100の運転者は、走行速度設定ボタン等の走行速度設定操作器を操作することにより目標とする自車両100の走行速度を設定することができる。或いは、車両走行制御装置10は、運転支援操作器55が操作されて運転支援条件が成立した時点の自車速Vを目標速度Vtgtとして設定する。
【0083】
<第1車間距離制御>
第1車間距離制御は、先行車間距離DFが目標距離Dtgtに維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する自律走行制御である。第1車間距離制御は、運転支援条件が成立しており且つ第2運転支援条件が成立していないときに図3の(A)に示したように先行車200が存在する場合に実行される。
【0084】
車両走行制御装置10は、第1車間距離制御の実行中は、先行車間距離DFが目標距離Dtgtよりも大きくなると、自車両100を加速し、先行車間距離DFが目標距離Dtgtよりも小さくなると、自車両100を減速する。
【0085】
即ち、車両走行制御装置10は、第1車間距離制御の実行中は、先行車間距離DFが目標距離Dtgtよりも大きくなったとの加速条件が成立すると、自車両100を加速するための加速制御を実行し、先行車間距離DFが目標距離Dtgtよりも小さくなったとの減速条件が成立すると、自車両100を減速するための減速制御を実行する。
【0086】
尚、車両走行制御装置10は、運転者により設定された先行車間距離DFをそのまま目標距離Dtgtとして設定してもよいが、本例においては、自車両100の運転者により設定された先行車間距離DFに基づいて目標距離Dtgtを設定する。
【0087】
より具体的には、車両走行制御装置10は、運転者により設定された先行車間距離DFに基づいて算出した車間時間Tdを目標車間時間Tdtgtとして設定する。車間時間Tdは、自車両100が先行車間距離DFを走行するのに要する時間であり、具体的には、先行車間距離DFを自車速Vで除した値である(Td=DF/V)。従って、目標車間時間Tdtgtは、自車両100が先行車間距離DFを走行するのに要する時間の目標値であり、本例においては、自車両100の運転者により設定された先行車間距離DF(目標先行車間距離DFtgt)を自車速Vで除した値である(Tdtgt=DFtgt/V)。尚、車間時間Tdは、先行車間距離DFが大きいほど大きくなる。
【0088】
車両走行制御装置10は、設定した目標車間時間Tdtgtにその時点の自車両100を乗じて得た値を目標距離Dtgtとして設定する。
【0089】
尚、運転者は、車間距離設定ボタン等の車間距離設定操作器を操作することにより先行車間距離DFを設定することができる。本例において、運転者は、長めの先行車間距離、中程度の先行車間距離及び短めの先行車間距離の中から任意に1つを先行車間距離DFとして設定することができる。
【0090】
又、車両走行制御装置10は、運転支援操作器55が操作されて運転支援条件が成立した時点の先行車間距離DFに対応する車間時間Tdを目標車間時間Tdtgtとして設定するように構成されてもよい。
【0091】
<第2走行速度制御>
第2走行速度制御は、自車速Vが目標速度範囲RVtgt内に維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する自律走行制御である。第2走行速度制御は、運転支援条件が成立しており且つ第2運転支援条件が成立しているときに図3の(B)に示したように先行車が存在しない場合に実行される。
【0092】
目標速度範囲RVtgtは、目標速度Vtgtを含むように設定される範囲であり、本例においては、目標速度Vtgtから所定の値(上限速度設定値ΔVupper)だけ大きい速度を上限値(上限速度Vupper)とし、目標速度Vtgtから所定の値(下限速度設定値ΔVlower)だけ小さい速度を下限値(下限速度Vlower)として設定される範囲である。上限速度設定値ΔVupperと下限速度設定値ΔVlowerとは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0093】
車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行中は、自車速Vが下限速度Vlowerよりも小さくなると、自車両100を加速し、自車速Vが上限速度Vupperよりも大きくなると、自車両100を減速する。
【0094】
即ち、車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行中は、自車速Vが下限速度Vlowerよりも小さくなったとの加速条件が成立すると、自車両100を加速するための加速制御を実行し、自車速Vが上限速度Vupperよりも大きくなったとの減速条件が成立すると、自車両100を減速するための減速制御を実行する。
【0095】
特に、本例においては、車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行中、加速制御として、最適加速制御を実行し、減速制御として、惰行制御を実行する。
【0096】
最適加速制御は、動力装置20のエネルギー効率が所定効率以上に維持されるように動力装置20(本例においては、内燃機関21及び第2モータジェネレータ222)の作動を制御して自車両100を加速する制御であり、本例においては、動力装置20のエネルギー効率が最大効率(又は少なくとも最大効率に極めて近い効率)となるように動力装置20の作動を制御して自車両100を加速する制御である。
【0097】
例えば、機関動力Pengと内燃機関21のエネルギー効率Eengとの関係が図4に線Lengで示した関係にあり、且つ、モータ動力Pmotor(第2モータジェネレータ222が出力する動力)と第2モータジェネレータ222のエネルギー効率Emotorとの関係が図4に線Lmotorで示した関係にある場合、車両走行制御装置10は、内燃機関21のエネルギー効率Eengが最大効率となる動作点(最適動作点)で内燃機関21を作動させる。尚、動作点は、内燃機関21の回転速度(又は回転数)と内燃機関21の負荷とにより定まる点である。
【0098】
内燃機関21が最適動作点で作動されているときには、そのエネルギー効率Eengは、最も高い値(最大効率)であり、機関動力Pengは、図4に示した例において、その最大効率に対応する値(最適機関動力P1)である。尚、図4において、符号P2は、第2モータジェネレータ222のエネルギー効率Emotorが最も高いときのモータ動力の値である。
【0099】
惰行制御は、自車両100が惰性走行するように、動力装置20及び動力分配装置110の作動を制御する制御である。惰行制御によれば、自車両100は、主に、空気抵抗と路面抵抗とにより減速される。従って、惰行制御は、自車両100が主に空気抵抗と路面抵抗とにより減速するように動力装置20及び動力分配装置110の作動を制御する制御であるとも言える。
【0100】
尚、図5の(A)に示したように、自車両100周辺の他車両である後続車300が存在する場合、車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行中、自車速Vが下限速度Vlowerよりも大きくても、自車両100と後続車300との間の距離(後続車間距離DR)が所定の距離(所定後続車間距離DRth)以下になったときには、最適加速制御を実行して自車両100を加速するように構成されてもよい。この場合、車両走行制御装置10は、最適加速制御を開始した後、後続車間距離DRが所定後続車間距離DRthよりも大きくなっても、自車速Vが上限速度Vupperに達するまでは、最適加速制御を継続する。
【0101】
又、後続車300が存在する場合、車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行中、自車速Vと後続車300の走行速度との差を考慮して自車両100が後続車300に近づき過ぎないように最適加速制御を開始するタイミングを決定するように構成されてもよい。
【0102】
尚、後続車300は、自車両100から所定距離以内の距離で自車両100の後方を走行する他車両であって、自車走行車線を走行している他車両である。車両走行制御装置10は、周辺検出情報ISに基づいて後続車300を検出することができ、更に、後続車間距離DRを取得することができる。
【0103】
<第2車間距離制御>
第2車間距離制御は、先行車間距離DFが目標距離範囲RDtgt内に維持されるように自車両100の加減速を自律的に制御する自律走行制御である。第2車間距離制御は、運転支援条件が成立しており且つ第2運転支援条件が成立しているときに図3の(A)に示したように先行車200が存在する場合に実行される。
【0104】
目標距離範囲RDtgtは、目標距離Dtgtを含むように設定される範囲であり、本例においては、目標距離Dtgtから所定の値(上限距離設定値ΔDupper)だけ大きい距離を上限値(上限距離Dupper)とし、目標距離Dtgtから所定の値(下限距離設定値ΔDlower)だけ小さい距離を下限値(下限距離Dlower)として設定される範囲である。言い方を換えると、目標距離範囲RDtgtは、自車両100が先行車間距離DFを走行するのに要する時間の目標値に自車両100の走行速度を乗じた値である目標距離Dtgtよりも第1の値(上限距離設定値ΔDupper)だけ大きい値を上限値とし、目標距離Dtgtよりも第2の値(下限距離設定値ΔDlower)だけ小さい値を下限値とする範囲である、尚、上限距離設定値ΔDupperと下限距離設定値ΔDlowerとは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0105】
車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行中は、先行車間距離DFが上限距離Dupperよりも大きくなると、自車両100を加速し、先行車間距離DFが下限距離Dlowerよりも小さくなると、自車両100を減速する。
【0106】
即ち、車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行中は、先行車間距離DFが上限距離Dupperよりも大きくなったとの加速条件が成立すると、自車両100を加速するための加速制御を実行し、先行車間距離DFが下限距離Dlowerよりも小さくなったとの減速条件が成立すると、自車両100を減速するための減速制御を実行する。
【0107】
特に、本例においては、車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行中も、加速制御として、最適加速制御を実行し、減速制御として、惰行制御を実行する。
【0108】
尚、図5の(B)に示したように、後続車300が存在する場合、車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行中、先行車間距離DFが上限距離Dupperよりも小さくても、後続車間距離DRが所定後続車間距離DRth以下になったときには、最適加速制御を実行して自車両100を加速するように構成されてもよい。この場合、車両走行制御装置10は、最適加速制御を開始した後、後続車間距離DRが所定後続車間距離DRthよりも大きくなっても、先行車間距離DFが下限距離Dlowerに達するまでは、最適加速制御を継続する。
【0109】
又、後続車300が存在する場合、車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行中、自車速Vと後続車300の走行速度との差を考慮して自車両100が後続車300に近づき過ぎないように最適加速制御を開始するタイミングを決定するように構成されてもよい。
【0110】
<バッテリ蓄電量>
ところで、自車両100には、エアコンやヘッドライト、更には、カーナビゲーション装置等のマルチメディア等の電装品41が搭載されている。これら電装品41は、電気負荷40であり、電力を使って作動する。電装品41を作動させる電力は、バッテリ231から電装品41に提供されるので、電装品41が作動していると、バッテリ231に蓄えられている電力(バッテリ電力)が消費される。従って、そのとき、バッテリ231への電力の充電が行われていないと、バッテリ231の蓄電量(バッテリ蓄電量SOC)が過剰に小さくなってしまい、好ましくない。
【0111】
そこで、車両走行制御装置10は、通常走行制御及び第1自律走行制御の実行時、バッテリ蓄電量SOCが所定の値(通常充電閾値SOC_N)以上に維持されるように、機関動力の一部を第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221により発電し、発電した電力をバッテリ231に充電するようになっている。
【0112】
尚、通常充電閾値SOC_Nに、制御ヒステリシスを設けてもよい。
【0113】
更に、車両走行制御装置10は、第2自律走行制御の実行時、減速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが所定の値(第1減速充電閾値SOC_D1)以下である場合、惰行制御として、回生充電惰行制御を実行する。
【0114】
回生充電惰行制御は、内燃機関21の作動及び第2モータジェネレータ222の動力源としての作動を停止させた状態で自車両100を惰性走行させつつ、自車両100の走行エネルギー(自車走行エネルギー)を第2モータジェネレータ222に入力して当該第2モータジェネレータ222による自車走行エネルギーの回生を行って発電し、発電した電力をバッテリ231に充電する制御である。
【0115】
即ち、回生充電惰行制御は、動力装置20の作動を停止させた状態で自車両100を惰性走行させつつ、自車走行エネルギーを第2モータジェネレータ222に入力して当該第2モータジェネレータ222による自車走行エネルギーの回生を行って発電し、発電した電力をバッテリ231に充電する制御である。
【0116】
言い方を換えると、回生充電惰行制御は、動力源の作動を停止させた状態で自車両100を惰性走行させつつ、発電装置22による自車走行エネルギーの回生を行って発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電する制御である。
【0117】
尚、第1減速充電閾値SOC_D1は、任意の値に設定されてよいが、本例においては、通常充電閾値SOC_Nよりも小さい値に設定されている。又、第1減速充電閾値SOC_D1に、制御ヒステリシスを設けてもよい。
【0118】
これによれば、第2自律走行制御の実行時、減速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが小さくなった場合(バッテリ蓄電量SOCが第1減速充電閾値SOC_D1以下になった場合)、動力装置20の作動が停止された状態で自車走行エネルギーの回生により発電が行われ、発電された電力がバッテリ231に充電される。このため、動力装置20の作動を停止させて自車両100を惰性走行させても、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0119】
又、第2自律走行制御の実行時に減速条件が成立しているときの発電は、自車走行エネルギーの回生により行われるので、自車両100が減速する。従って、バッテリ231への充電が行われていても、自車両100の減速が阻害されることもない。
【0120】
一方、車両走行制御装置10は、第2自律走行制御の実行時、減速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが第1減速充電閾値SOC_D1よりも大きい場合、通常惰行制御を惰行制御として実行する。
【0121】
通常惰行制御は、第2モータジェネレータ222による自車走行エネルギーの回生を行わずに、動力装置20の作動を停止させた状態(内燃機関21の作動及び第2モータジェネレータ222の動力源としての作動を停止させた状態)で自車両100を惰性走行させる制御である。
【0122】
言い方を換えると、通常惰行制御は、自車走行エネルギーの回生を行わずに、動力源の作動を停止させた状態で自車両100を惰性走行させる制御である。
【0123】
更に、回生充電惰行制御の実行中、電気負荷40によりバッテリ231に蓄えられている電力(バッテリ電力)の消費が継続していることがある。従って、回生充電惰行制御により、自車走行エネルギーの回生により発電が行われ、発電された電力がバッテリ231に充電されていても、バッテリ蓄電量SOCの低下を抑えられず、バッテリ蓄電量SOCが非常に小さくなってしまう可能性がある。
【0124】
そこで、車両走行制御装置10は、第2自律走行制御の実行時、減速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが第1減速充電閾値SOC_D1よりも小さい所定の値(第2減速充電閾値SOC_D2)以下である場合、動力充電走行制御を実行する。
【0125】
動力充電走行制御は、内燃機関21を作動させて発生させた動力を第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221により発電し、発電した電力をバッテリ231に充電しつつ、自車両100を走行させる制御である。
【0126】
別の言い方をすると、動力充電走行制御は、動力源を作動させて発生させた動力により発電装置22を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電しつつ、自車両100を走行させる制御である。
【0127】
例えば、動力充電走行制御は、第2モータジェネレータ222の動力源としての作動を停止した状態(即ち、第2モータジェネレータ222に動力を発生させない状態)で、内燃機関21を作動させて動力を発生させるが、その動力を駆動軸120に入力せずに、内燃機関21が発生した動力の全てを第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221により発電し、発電した電力をバッテリ231に充電することにより、自車両100を惰性走行させる動力充電惰行制御である。
【0128】
別の言い方をすると、動力充電走行制御は、動力装置20を作動させて動力を発生させるが、その動力を駆動軸120に入力せずに、動力装置20が発生した動力の全てにより発電装置22を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電することにより、自車両100を惰性走行させる動力充電惰行制御である。
【0129】
或いは、動力充電走行制御は、第2モータジェネレータ222の動力源としての作動を停止した状態(即ち、第2モータジェネレータ222に動力を発生させない状態)で、内燃機関21を作動させて動力を発生させ、その動力の一部を第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221により発電し、発電した電力をバッテリ231に充電しつつ、残りの動力を駆動軸120に入力し、第1自律走行制御を実行して自車両100を走行させる制御であってもよい。この場合、動力充電走行制御の開始前に第2走行速度制御が実行されていた場合、第1走行速度制御が実行され、動力充電走行制御の開始前に第2車間距離制御が実行していた場合、第1車間距離制御が実行される。
【0130】
別の言い方をすると、動力充電走行制御は、動力装置20を作動させて動力を発生させ、その動力の一部により発電装置22を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電しつつ、残りの動力により自車両100を走行させる制御であってもよい。
【0131】
尚、車両走行制御装置10は、動力充電走行制御の実行中にバッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2よりも大きくなった場合、回生充電惰行制御を再開する。即ち、車両走行制御装置10は、減速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが第1減速充電閾値SOC_D1以下であり且つ第2減速充電閾値SOC_D2よりも大きい場合、回生充電惰行制御を実行する。
【0132】
尚、第2減速充電閾値SOC_D2は、第1減速充電閾値SOC_D1よりも小さい値であれば、任意の値に設定されてよい。又、第2減速充電閾値SOC_D2に、制御ヒステリシスを設けてもよい。
【0133】
車両走行制御装置10によれば、回生充電惰行制御の実行中にバッテリ蓄電量SOCが非常に小さくなった場合(バッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2以下となった場合)、動力装置20を作動させて発生させた動力により第1モータジェネレータ221を作動させて発電し、発電した電力をバッテリ231に充電する動力充電走行制御が実行される。これにより、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0134】
又、上述したように、回生充電惰行制御の実行中、電気負荷40によりバッテリ231に蓄えられている電力(バッテリ電力)の消費が継続していることがある。このとき、回生充電惰行制御により発電する電力の量を多くすれば、より早く、バッテリ蓄電量SOCを第1減速充電閾値SOC_D1まで上昇させることができる。しかしながら、これによると、自車両100の減速度が大きくなることから、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。一方、動力装置20の作動を停止させている間にバッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避するためには、少なくとも、電気負荷40により消費されるバッテリ231の電力量に見合った量の電力を発電し、発電した電力をバッテリ231に充電すればよい。
【0135】
そこで、車両走行制御装置10は、回生充電惰行制御の実行時、電気負荷40により消費されるバッテリ231の電力量に応じた量の電力を第2モータジェネレータ222による自車走行エネルギーの回生により発電させる。
【0136】
これによれば、回生充電惰行制御の実行時、電気負荷40により消費されるバッテリ231の電力量に応じた量の電力が発電される。従って、運転者に違和感を与えてしまうような自車両100の過大な減速度を発生させることなく、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0137】
或いは、車両走行制御装置10は、回生充電惰行制御の実行時、自車両100の減速度が所定減速度以下に維持されるように、第2モータジェネレータ222による自車走行エネルギーの回生により発電される電力量を制限してもよい。
【0138】
先に述べたように、回生充電惰行制御により発電する電力の量を多くすれば、より早く、バッテリ蓄電量SOCを第1減速充電閾値SOC_D1まで上昇させることができるが、これによると、自車両100の減速度が大きくなることから、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0139】
車両走行制御装置10によれば、回生充電惰行制御の実行時、自車両100の減速度が所定減速度以下に維持されるように、自車走行エネルギーの回生により発電される電力量が制限される。このため、運転者に違和感を与えてしまうような自車両100の過大な減速度を発生させることなく、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0140】
又、車両走行制御装置10は、第2自律走行制御の実行時、加速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが所定の値(加速充電閾値SOC_A)以下である場合、動力充電最適加速制御を加速制御として実行する。
【0141】
動力充電最適加速制御は、内燃機関21を最大効率で作動させて発生させた動力の一部を第1モータジェネレータ221に入力して当該第1モータジェネレータ221により発電し、発電した電力をバッテリ231に充電するとともに、残りの動力を駆動力(自車両100を駆動するための動力)として駆動軸120に入力することにより自車両100を加速する加速制御である。
【0142】
別の言い方をすると、動力充電最適加速制御は、内燃機関21を作動させて発生させた動力の一部により発電装置22を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電するとともに、残りの動力により自車両100を加速する加速制御である。
【0143】
更に別の言い方をすると、動力充電最適加速制御は、動力源を作動させて発生させた動力の一部により発電装置22を作動させて発電し、発電した電力を蓄電装置23に充電するとともに、残りの動力により自車両100を加速する加速制御である。
【0144】
惰行制御の実行中にバッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避するためには、加速制御の実行中に十分な量の電力をバッテリ231に充電しておくことも有効である。
【0145】
車両走行制御装置10によれば、加速条件が成立しているときにバッテリ蓄電量SOCが小さくなった場合(バッテリ蓄電量SOCが加速充電閾値SOC_A以下となった場合)、内燃機関21を作動させて発生させた動力の一部により発電を行い、発電した電力をバッテリ231に充電するとともに、残りの動力により自車両100を加速する動力充電加速制御が加速制御として実行される。このため、加速制御の実行中に十分な量の電力がバッテリ231に充電されるので、惰行制御の実行中にバッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0146】
尚、加速充電閾値SOC_Aは、任意の値に設定されてよいが、本例においては、通常充電閾値SOC_Nよりも大きい値に設定されている。又、加速充電閾値SOC_Aに、制御ヒステリシスを設けてもよい。
【0147】
ところで、車両走行制御装置10は、通常惰行制御の実行中にバッテリ電力低下量ΔSOCを演算により取得して記憶している。バッテリ電力低下量ΔSOCは、通常惰行制御の実行中に電気負荷40による消費により低下したバッテリ蓄電量SOCである。
【0148】
車両走行制御装置10は、動力充電最適加速制御の実行時、少なくとも、バッテリ電力低下量ΔSOCに相当する量の電力が第1モータジェネレータ221により発電されるように機関動力の一部を第1モータジェネレータ221に入力する。
【0149】
又、本例においては、車両走行制御装置10は、動力充電最適加速制御の実行時、バッテリ電力低下量ΔSOCに相当する電力量、及び、当該動力充電最適加速制御の実行中に電気負荷40により消費される電力量が第1モータジェネレータ221により発電されるように機関動力の一部を第1モータジェネレータ221に入力し、残りの機関動力を駆動力(自車両100を駆動するための動力)として駆動軸120に入力する。
【0150】
より具体的には、下式1に従って算出される機関動力Pmを第1モータジェネレータ221に入力し、下式2に従って算出される機関動力Pdを駆動軸120に入力する。
【0151】
Pm=Pac+Pbc …(1)
Pd=Pe*-Pm …(2)
Pbc=f(SOC)+f(Es/T) …(3)
【0152】
上式1において、「Pac」は、当該動力充電最適加速制御の実行中に電気負荷40により消費される電力量を発電するのに必要な機関動力であり、「Pbc」は、バッテリ電力低下量ΔSOCに基づいて算出される電力量を発電するのに必要な機関動力であって、上式3により算出される機関動力である。
【0153】
又、上式3において、「f(SOC)」は、バッテリ蓄電量SOCに基づいてバッテリ231に充電する必要のある単位時間当たりの電力量を発電するのに必要な機関動力であり、その値は、バッテリ蓄電量SOCが小さいほど大きくなる。
【0154】
更に、上式3において、「Es」は、通常惰行制御の実行中に電気負荷40による消費により低下したバッテリ蓄電量SOC、即ち、バッテリ電力低下量ΔSOCであり、「T」は、動力充電最適加速制御の予測実行時間(動力充電最適加速制御が実行される時間として予測される時間)であり、「f(Es/T)」は、バッテリ電力低下量ΔSOCに基づいてバッテリ231に充電する必要のある単位時間当たりの電力量を発電するのに必要な機関動力であり、その値は、バッテリ電力低下量ΔSOCが大きいほど大きくなり、予測実行時間Tが短いほど大きくなる。
【0155】
又、上式2において、「Pe*」は、内燃機関21を最大効率で作動したときに内燃機関21から動力分配装置110に入力される動力(最適動力)である。
【0156】
以上説明した制御によれば、例えば、第1走行速度制御の実行中、バッテリ蓄電量SOCは、図6に示したように推移する。即ち、図6に示した例においては、時刻t60までは、通常惰行制御が実行されており、従って、機関動力がゼロであり、駆動トルク(機関動力により駆動軸120に入力されるトルク)もゼロであり、従って、自車速Vが徐々に低下している。又、時刻t60までの期間、バッテリ231に蓄えられている電力(バッテリ電力)が電気負荷40により消費され続けていることから、バッテリ電力消費量SOC_C(電気負荷40により消費されるバッテリ電力の量)は、ゼロよりも大きくなっており、従って、バッテリ蓄電量SOCが徐々に低下している。
【0157】
そして、時刻t60の時点で、自車速Vが下限速度Vlowerに達すると、最適加速制御が開始される。このとき、バッテリ蓄電量SOCが加速充電閾値SOC_Aよりも小さいので、最適加速制御として、動力充電最適加速制御が開始される。従って、時刻t60において、内燃機関21が始動される。このとき、バッテリ231から第1モータジェネレータ221に電力が供給され、それにより、第1モータジェネレータ221が発生する動力により内燃機関21が始動されるので、時刻t60において、バッテリ電力消費量SOC_Cが上昇する。このため、バッテリ蓄電量SOCが低下する。そして、内燃機関21が始動されると、バッテリ231から第1モータジェネレータ221への電力供給が停止されるので、バッテリ電力消費量SOC_Cが低下する。
【0158】
時刻t60において、内燃機関21が始動されると、機関出力動力(内燃機関21から出力される動力)が最適動力Peまで上昇し、それに伴って、駆動トルクが上昇し、それにより、自車速Vが徐々に上昇する。尚、自車速Vが上昇するにつれて、駆動トルクは、徐々に低下される。
【0159】
又、内燃機関21が始動されると、機関出力動力の一部が第1モータジェネレータ221に入力されて当該第1モータジェネレータ221により発電が行われ、発電された電力がバッテリ231に充電されるので、バッテリ電力消費量SOC_Cは、負の値となり、バッテリ蓄電量SOCが上昇する。
【0160】
このときに、第1モータジェネレータ221に入力される機関動力は、上式1により算出される機関動力Pmであり、駆動軸120に入力される機関動力は、上式2により算出される機関動力Pdである。
【0161】
そして、時刻t61において、自車速Vが上限速度Vupperに達すると、動力充電最適加速制御が停止されて、通常惰行制御が開始される。このため、内燃機関21の作動が停止されるので、機関出力動力がゼロとなり、それに伴って、駆動トルクもゼロとなる。又、バッテリ電力消費量SOC_Cは、上昇して正の値となり、その結果、バッテリ蓄電量SOCが低下する。尚、このときのバッテリ電力消費量SOC_Cは、電気負荷40により消費されるバッテリ電力に相当する。
【0162】
このようにして、バッテリ231に電力が充電される。
【0163】
又、車両走行制御装置10は、動力充電最適加速制御の開始時点において、バッテリ蓄電量SOCが小さいときには、バッテリ蓄電量SOCが大きいときに比べ、動力充電最適加速制御を実行する時間を長くするように構成されてもよい。特に、本例において、車両走行制御装置10は、動力充電最適加速制御の開始時点において、バッテリ蓄電量SOCが小さいほど、動力充電最適加速制御を実行する時間を長くするように構成されてもよい。
【0164】
これによれば、バッテリ蓄電量SOCが小さいときには、バッテリ蓄電量SOCが大きいときに比べ、動力充電最適加速制御を実行する時間が長くなる。このため、動力充電最適加速制御の実行中に十分な量の電力がバッテリ231に充電されるので、惰行制御の実行中にバッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0165】
尚、車両走行制御装置10は、第2走行速度制御の実行時は、上限速度Vupperを大きくすることにより、動力充電最適加速制御を実行する時間を長くする。又、車両走行制御装置10は、第2車間距離制御の実行時は、下限距離Dlowerを小さくすることにより、最適加速制御を実行する時間を長くする。
【0166】
又、動力充電最適加速制御の予測実行時間Tは、自車両100が上り坂を走行しているときには、自車両100が平地を走行しているときに比べ、長くなり、又、動力充電最適加速制御の予測実行時間Tは、自車両100が上り坂を走行している場合において、上り坂の勾配が大きいときには、その勾配が小さいときに比べ、長くなる。
【0167】
又、自車速Vが大きい場合、自車走行エネルギーの回生により得られる電力量が大きい。従って、加速制御の実行中に動力装置20が発生する動力により発電を行わなくても、後の惰行制御の実行中に自車走行エネルギーの回生により発電を行うことにより、バッテリ蓄電量SOCを十分に上昇させることができる。そして、動力装置20が発生する動力による発電を行わなければ、動力装置20が消費するエネルギー量が少なくなる。
【0168】
そこで、車両走行制御装置10は、自車速Vが大きいときには、自車速Vが小さいときに比べ、加速充電閾値SOC_Aを小さい値に設定する。特に、車両走行制御装置10は、自車速Vが大きいほど、加速充電閾値SOC_Aを小さい値に設定する。本例においては、車両走行制御装置10は、図7に示したように、自車速Vが所定範囲Rv内の値であるときには、自車速Vが大きいほど、加速充電閾値SOC_Aを小さい値に設定し、自車速Vが所定範囲Rvの下限値V1よりも小さいときには、加速充電閾値SOC_Aを比較的大きい一定値に設定し、自車速Vが所定範囲Rvの上限値V2よりも大きいときには、加速充電閾値SOC_Aを比較的小さい一定値に設定する。
【0169】
これによれば、自車速Vが大きいときには、自車速Vが小さいときに比べ、加速充電閾値SOC_Aが小さい値に設定される。従って、加速制御の実行中、自車速Vが大きいときには、バッテリ蓄電量SOCが小さくなるまで、動力装置20が発生する動力による発電は行われない。従って、動力装置20が消費するエネルギー量を少なくしつつ、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0170】
同様に、車両走行制御装置10は、自車速Vが大きいときには、自車速Vが小さいときに比べ、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を小さい値に設定する。特に、車両走行制御装置10は、自車速Vが大きいほど、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を小さい値に設定する。本例においては、車両走行制御装置10は、自車速Vが所定範囲内の値であるときには、自車速Vが大きいほど、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を小さい値に設定し、自車速Vが所定範囲の下限値よりも小さいときには、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を比較的大きい一定値に設定し、自車速Vが所定範囲の上限値よりも大きいときには、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を比較的小さい一定値に設定する。
【0171】
これによれば、自車速Vが大きいときには、自車速Vが小さいときに比べ、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2が小さい値に設定される。従って、惰行制御の実行中、自車速Vが大きいときには、バッテリ蓄電量SOCが小さくなるまで、動力装置20が発生する動力による発電は行われない。従って、動力装置20が消費するエネルギー量を少なくしつつ、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0172】
又、加速制御中にバッテリ蓄電量SOCが小さくなってしまっても、その後、自車両100が下り坂を走行するのであれば、自車両100が下り坂を走行しているときに自車走行エネルギーの回生による発電を行えば、十分な量の電力をバッテリ231に充電することができる。従って、加速制御の実行中に動力装置20が発生する動力により発電を行わなくても、後の惰行制御の実行中、自車両100が下り坂を走行している間に自車走行エネルギーの回生により発電を行うことにより、バッテリ蓄電量SOCを十分に上昇させることができる。そして、動力装置20が発生する動力による発電を行わなければ、動力装置20が消費するエネルギー量が少なくなる。
【0173】
そこで、車両走行制御装置10は、道路情報取得装置70により取得した周辺検出情報ISに含まれる地図情報及び自車両100が走行するものと予測される経路(自車両100の予測走行経路)に基づいて自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、自車両100が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、加速充電閾値SOC_Aを小さい値に設定する。
【0174】
これによれば、自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、自車両100が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、加速充電閾値SOC_Aが小さい値に設定される。従って、加速制御の実行中、自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、バッテリ蓄電量SOCが小さくなるまで、動力装置20が発生する動力による発電は行われない。従って、動力装置20が消費するエネルギー量を少なくしつつ、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0175】
同様に、車両走行制御装置10は、道路情報取得装置70により取得した周辺検出情報ISに含まれる地図情報及び自車両100が走行するものと予測される経路(自車両100の予測走行経路)に基づいて自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、自車両100が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2を小さい値に設定する。
【0176】
これによれば、自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、自車両100が下り坂を走行することが予測されないときに比べ、第1減速充電閾値SOC_D1及び第2減速充電閾値SOC_D2が小さい値に設定される。従って、惰行制御の実行中、自車両100が下り坂を走行することが予測されるときには、バッテリ蓄電量SOCが小さくなるまで、動力装置20が発生する動力による発電は行われない。従って、動力装置20が消費するエネルギー量を少なくしつつ、バッテリ蓄電量SOCが過剰に小さくなることを回避することができる。
【0177】
尚、上述した実施形態は、第2自律走行制御の実行中に惰行制御を実行する車両走行制御装置に本発明を適用したものであるが、本発明は、通常走行制御の実行中に運転者がアクセルペダルを解放している間(即ち、アクセルペダル操作量がゼロである間)、内燃機関等の動力源の作動を停止した状態で車両を惰性走行させるようになっている車両走行制御装置にも適用可能である。
【0178】
<車両走行制御装置の具体的な作動>
次に、車両走行制御装置10の具体的な作動について説明する。車両走行制御装置10は、図8に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、車両走行制御装置10は、図8に示したルーチンのステップS800から処理を開始し、その処理をステップS805に進め、運転支援条件が成立しているか否かを判定する。
【0179】
車両走行制御装置10は、ステップS805にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS810に進め、第2運転支援条件が成立しているか否かを判定する。車両走行制御装置10は、ステップS810にて「No」と判定した場合、処理をステップS815に進め、先行車200が存在するか否かを判定する。車両走行制御装置10は、ステップS815にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS820に進め、第1車間距離制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0180】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS815にて「No」と判定した場合、処理をステップS825に進め、第1走行速度制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0181】
又、車両走行制御装置10は、ステップS810にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS830に進め、先行車200が存在するか否かを判定する。車両走行制御装置10は、ステップS830にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS835に進め、図9に示したルーチンを実行する。従って、車両走行制御装置10は、処理をステップS835に進めると、図9に示したルーチンのステップS900から処理を開始し、その処理をステップS905に進め、第2車間距離制御に係る減速条件が成立しているか否かを判定する。
【0182】
車両走行制御装置10は、ステップS905にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS910に進め、バッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2よりも大きく且つ第1減速充電閾値SOC_D1以下であるか否かを判定する。
【0183】
車両走行制御装置10は、ステップS910にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS915に進め、回生充電惰行制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS995を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0184】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS910にて「No」と判定した場合、処理をステップS920に進め、バッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2以下であるか否かを判定する。
【0185】
車両走行制御装置10は、ステップS920にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS925に進め、動力充電惰行制御又は第1車間距離制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS995を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0186】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS920にて「No」と判定した場合、処理をステップS930に進め、通常惰行制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS995を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0187】
又、車両走行制御装置10は、ステップS905にて「No」と判定した場合、処理をステップS935に進め、バッテリ蓄電量SOCが加速充電閾値SOC_A以下であるか否かを判定する。
【0188】
車両走行制御装置10は、ステップS935にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS940に進め、動力充電最適加速制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS995を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0189】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS935にて「No」と判定した場合、処理をステップS945に進め、通常最適加速制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS995を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0190】
一方、車両走行制御装置10は、図8に示したルーチンのステップS830にて「No」と判定した場合、処理をステップS840に進め、図10に示したルーチンを実行する。従って、車両走行制御装置10は、処理をステップS840に進めると、図10に示したルーチンのステップS1000から処理を開始し、その処理をステップS1005に進め、第2走行速度制御に係る減速条件が成立しているか否かを判定する。
【0191】
車両走行制御装置10は、ステップS1005にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS1010に進め、バッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2よりも大きく且つ第1減速充電閾値SOC_D1以下であるか否かを判定する。
【0192】
車両走行制御装置10は、ステップS1010にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS1015に進め、回生充電惰行制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS1095を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0193】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS1010にて「No」と判定した場合、処理をステップS1020に進め、バッテリ蓄電量SOCが第2減速充電閾値SOC_D2以下であるか否かを判定する。
【0194】
車両走行制御装置10は、ステップS1020にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS1025に進め、動力充電惰行制御又は第1走行速度制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS1095を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0195】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS1020にて「No」と判定した場合、処理をステップS1030に進め、通常惰行制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS1095を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0196】
又、車両走行制御装置10は、ステップS1005にて「No」と判定した場合、処理をステップS1035に進め、バッテリ蓄電量SOCが加速充電閾値SOC_A以下であるか否かを判定する。
【0197】
車両走行制御装置10は、ステップS1035にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS1040に進め、動力充電最適加速制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS1095を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0198】
一方、車両走行制御装置10は、ステップS1035にて「No」と判定した場合、処理をステップS1045に進め、通常最適加速制御を実行する。次いで、車両走行制御装置10は、ステップS1095を経由して処理をステップS895に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0199】
以上が車両走行制御装置10の具体的な作動である。
【0200】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0201】
10…車両走行制御装置、20…動力装置(動力源)、21…内燃機関、22…発電装置、221…第1モータジェネレータ、222…第2モータジェネレータ、23…蓄電装置、231…バッテリ、90…ECU、100…自車両、200…先行車、300…後続車

図1
図2
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図6
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図10