(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006026
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65D30/16 A ZBP
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106561
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰士
(72)【発明者】
【氏名】江口 晴登
(72)【発明者】
【氏名】本間 正洋
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064AB25
3E064BA17
3E064BA26
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC08
3E064EA05
3E064EA07
3E064FA04
3E064GA04
3E064HM01
3E064HN05
3E064HN65
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】大容量であっても横倒しによる屈曲及び屈曲によって生じるピン角の発生を抑制できるスタンディングパウチを提供する。
【解決手段】対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされたシール部を有し、内部が収容室とされ正面視で略四角形のパウチ本体と、ガセット部とを有し、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられるスタンディングパウチである。傾斜シール部の幅方向の他方側の端部の位置から、第2サイドシール部と離れた位置まで配置され、トップシール部から下方に延び可撓性フィルムがシールされた第1部分と、幅方向で第1部分と第2サイドシール部との間に位置し可撓性フィルムが非シールの第2部分とを有する。トップシール部の幅方向の最大長さをL1とし、第2部分の幅方向の最小長さをL2とすると、L2/L1で表される値は、0.10以上、0.28以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされたシール部を有し、内部が収容室とされ正面視で略四角形のパウチ本体と、前記パウチ本体の底部に設けられたガセット部とを有し、前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、前記シール部は、前記パウチ本体の幅方向の端縁に配置され上下方向に延びる第1サイドシール部および第2サイドシール部と、前記幅方向の一方側に位置する前記第1サイドシール部から前記隅切部の傾斜に沿って前記上端縁まで延びる傾斜シール部と、前記傾斜シール部と前記幅方向の他方側に位置する前記第2サイドシール部との間に位置し前記上端縁に沿って配置されたトップシール部とを有し、前記傾斜シール部に溶着され前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、
前記傾斜シール部の前記幅方向の他方側の端部の位置から、前記第2サイドシール部と離れた位置まで配置され、前記トップシール部から下方に延び前記可撓性フィルムがシールされた第1部分と、
前記幅方向で前記第1部分と前記第2サイドシール部との間に位置し前記可撓性フィルムが非シールの第2部分とを有し、
前記トップシール部の前記幅方向の最大長さをL1とし、
前記第2部分の前記幅方向の最小長さをL2とすると、
L2/L1で表される値は、0.10以上、0.28以下である、スタンディングパウチ。
【請求項2】
対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされたシール部を有し、内部が収容室とされ正面視で略四角形のパウチ本体と、前記パウチ本体の底部に設けられたガセット部とを有し、前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、前記シール部は、前記パウチ本体の幅方向の端縁に配置され上下方向に延びる第1サイドシール部および第2サイドシール部と、前記幅方向の一方側に位置する前記第1サイドシール部から前記隅切部の傾斜に沿って前記上端縁まで延びる傾斜シール部と、前記傾斜シール部と前記幅方向の他方側に位置する前記第2サイドシール部との間における前記上端縁に位置するトップシール部とを有し、前記傾斜シール部に溶着され前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、
前記傾斜シール部の前記幅方向の他方側の端部と離れた位置から、前記第2サイドシール部と離れた位置まで配置され、前記トップシール部から下方に延び前記可撓性フィルムがシールされた第3部分と、
前記幅方向で前記第3部分と前記第1サイドシール部との間、および前記幅方向で前記第3部分と前記第2サイドシール部との間にそれぞれ対称に配置され前記可撓性フィルムが非シールの第4部分と、
前記幅方向で前記トップシール部の中央に位置し、前記第3部分の下側端部から上側に向かうにつれて前記幅方向の寸法が漸次小さくなる、前記可撓性フィルムが非シールの第5部分とを有し、
前記第3部分の下側端部は、前記幅方向に延びる直線部を有し、
前記トップシール部の前記幅方向の最大長さをL1とし、
前記第4部分の前記幅方向の最小長さをL4とすると、
L4/L1で表される値は、0.10以上、0.21以下である、スタンディングパウチ。
【請求項3】
前記パウチ本体における前記幅方向の最大長さは、200~220mmであり、
前記パウチ本体における最大高さは、280~350mmである、
請求項1または2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記パウチ本体の胴部における前記可撓性フィルムの厚さは、140~240μmである、
請求項1または2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記胴部における前記可撓性フィルムは、ポリエチレンを含む3層~4層で構成される、請求項4に記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記収容室内の前記液体組成物の充填率は、40~75体積%である、
請求項1または2に記載のスタンディングパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤、液体石鹸、シャンプー、液体調味料等の液状物を収容する包装材として、スタンディングパウチがある。スタンディングパウチとしては、可撓性を有するシートで形成されたパウチ本体と、パウチ本体から突出する注出体とを有するものが挙げられる。パウチ本体の底部は、内方に折り込まれたガセット部とされている。このため、スタンディングパウチに内容物を収容した製品は、底部が広がり、自立できる。
スタンディングパウチは、詰め替え用製品の容器として汎用されている。詰め替え時には、スタンディングパウチから内容物を注出して、ボトル等の正規容器に内容物を充填する。
【0003】
上記のスタンディングパウチは、内容量の大きなもの(大容量製品)が求められている。容量の大型化に伴いスタンディングパウチ上側の沈み込みによる屈曲によって、スタンディングパウチの胴部にピン角が形成されやすくなっている。このピン角が製造時の外装段ボールへの装填時や輸送過程に外装段ボールと接触し、擦れることによってピンホールとなり液漏れする問題が生じている。
【0004】
そのため、上記のスタンディングパウチにおいては、上側における屈曲が生じ難い構成が肝要である。例えば、特許文献1に開示されたスタンディングパウチのように、トップシール部の左右両側を除くほぼ中央部から下側に延びるシール部を設けることで、中央部の強度を大きくして屈曲を抑えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたスタンディングパウチは、容量として600~800mLを挙げており、大容量とはいえない。大容量のスタンディングパウチは、液体組成物の重量が大きく上記の屈曲が生じやすいが、特許文献1には、大容量に対応して屈曲を抑える構成やピン角を抑える構成については言及されていない。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、大容量であっても屈曲の発生を抑制できるスタンディングパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の態様を有する。
[1]対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされたシール部を有し、内部が収容室とされ正面視で略四角形のパウチ本体と、前記パウチ本体の底部に設けられたガセット部とを有し、前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、前記シール部は、前記パウチ本体の幅方向の端縁に配置され上下方向に延びる第1サイドシール部および第2サイドシール部と、前記幅方向の一方側に位置する前記第1サイドシール部から前記隅切部の傾斜に沿って前記上端縁まで延びる傾斜シール部と、前記傾斜シール部と前記幅方向の他方側に位置する前記第2サイドシール部との間に位置し前記上端縁に沿って配置されたトップシール部とを有し、前記傾斜シール部に溶着され前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、前記傾斜シール部の前記幅方向の他方側の端部の位置から、前記第2サイドシール部と離れた位置まで配置され、前記トップシール部から下方に延び前記可撓性フィルムがシールされた第1部分と、前記幅方向で前記第1部分と前記第2サイドシール部との間に位置し前記可撓性フィルムが非シールの第2部分とを有し、前記トップシール部の前記幅方向の最大長さをL1とし、前記第2部分の前記幅方向の最小長さをL2とすると、L2/L1で表される値は、0.10以上、0.28以下である、スタンディングパウチ。
[2]対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされたシール部を有し、内部が収容室とされ正面視で略四角形のパウチ本体と、前記パウチ本体の底部に設けられたガセット部とを有し、前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、前記シール部は、前記パウチ本体の幅方向の端縁に配置され上下方向に延びる第1サイドシール部および第2サイドシール部と、前記幅方向の一方側に位置する前記第1サイドシール部から前記隅切部の傾斜に沿って前記上端縁まで延びる傾斜シール部と、前記傾斜シール部と前記幅方向の他方側に位置する前記第2サイドシール部との間における前記上端縁に位置するトップシール部とを有し、前記傾斜シール部に溶着され前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、前記傾斜シール部の前記幅方向の他方側の端部と離れた位置から、前記第2サイドシール部と離れた位置まで配置され、前記トップシール部から下方に延び前記可撓性フィルムがシールされた第3部分と、前記幅方向で前記第1部分と前記第1サイドシール部との間、および前記幅方向で前記第1部分と前記第2サイドシール部との間にそれぞれ対称に配置され前記可撓性フィルムが非シールの第4部分と、前記幅方向で前記トップシール部の中央に位置し、前記第3部分の下側端部から上側に向かうにつれて前記幅方向の寸法が漸次小さくなる、前記可撓性フィルムが非シールの第5部分とを有し、前記第3部分の下側端部は、前記幅方向に延びる直線部を有し、前記トップシール部の前記幅方向の最大長さをL1とし、前記第4部分の前記幅方向の最小長さをL4とすると、L4/L1で表される値は、0.10以上、0.21以下である、スタンディングパウチ。
[3]前記パウチ本体における前記幅方向の最大長さは、200~220mmであり、前記パウチ本体における最大高さは、280~350mmである、[1]または[2]に記載のスタンディングパウチ。
[4]前記パウチ本体の胴部における前記可撓性フィルムの厚さは、140~240μmである、[1]から[3]のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
[5]前記胴部における前記可撓性フィルムは、ポリエチレンを含む3層~4層で構成される、[4]に記載のスタンディングパウチ。
[6]前記収容室内の前記液体組成物の充填率は、40~75体積%である、[1]から[5]のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、大容量であっても屈曲の発生を抑制できるスタンディングパウチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のスタンディングパウチの第1実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1におけるトップシール部34の周辺を拡大した正面図である。
【
図3】本発明のスタンディングパウチの第2実施形態を示す正面図である。
【
図4】
図3におけるトップシール部34の周辺を拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のスタンディングパウチの実施の形態を、
図1から
図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0012】
<スタンディングパウチの第1実施形態>
図1は、本発明のスタンディングパウチ1の第1実施形態を示す正面図である。
図1に示すように、スタンディングパウチ1は、正面視略四角形のパウチ本体10と、注出体20とを有する。
【0013】
パウチ本体10は、対向する2枚の可撓性フィルム(正面フィルム12、背面フィルム14)の周縁がシールされ、周縁に上端縁13、第一の側縁15、第二の側縁17及び下端縁19が形成されている。すなわち、パウチ本体10の周縁には、シール部10aが形成さている。パウチ本体10の内部には、液体組成物等を収容する収容室11が形成されている。第一の側縁15は、パウチ本体10における幅方向の一方側(
図1では左側)に位置する側縁である。第二の側縁17は、パウチ本体10における幅方向の他方側(
図1では右側)に位置する側縁である。以下の説明では、幅方向の一方側を単に「左側」と呼び、幅方向の他方側を単に「右側」と呼ぶ場合がある。
【0014】
パウチ本体10には、底部16aが収容室11内に折り込まれて、ガセット部16が形成されている。底部16aには、上端縁13側に折曲縁16bが形成されている。底部16aの側縁は、正面フィルム12と背面フィルム14とで挟み込まれ、シールされている。底部16aの下端縁は、正面フィルム12と背面フィルム14とのそれぞれにシールされている。なお、ガセット部16の態様は、これに限定されない。
なお、内容物(液体組成物)の充填前のスタンディングパウチ1の上端縁13は、シールされておらず、開口している。
【0015】
正面視において、パウチ本体10の上端には、直線の隅切部18が形成されている。隅切部18は、上端縁13と、上端縁13に隣接する第一の側縁15とで形成される角部に形成されている。隅切部18は、上方(すなわち、上端縁13の方向)に傾斜している。
パウチ本体10の角部は、隅切部18が形成された角部を除く3つの角部に円弧で隅切が形成されている。
【0016】
注出体20は、隅切部18に設けられている。注出体20の基端22は、隅切部18に位置する、後述するシール部10aの傾斜シール部において、正面フィルム12と背面フィルム14とに挟まれて、固定されている。注出体20は、パウチ本体10から突出している。
【0017】
正面フィルム12は、可撓性を有し、かつ背面フィルム14及び底部16aのフィルムとシールできるものであれば、特に限定されず、公知のフィルムを用いることができる。
正面フィルム12としては、例えば、少なくとも外層と内層とを有する多層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0018】
外層としては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム又は延伸ナイロン(ONY)等が挙げられる。内層としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン又はメタロセン系ポリエチレン等の熱融着性樹脂からなるフィルムが挙げられる。多層ラミネートフィルムは、エチレンビニルアルコール共重合体のフィルム、アルミニウム箔、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したフィルム(例えばアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート:アルミ蒸着PETと以下略す)等のガスバリア性フィルム等を含んでもよい。多層ラミネートフィルムの各構成は、環境素材を含む。
環境素材としては、例えば、植物を原料に作られたバイオマスプラスチックや、使用済みの製品及び製造工程から出る廃棄物を回収し、そこから再利用する再生プラスチック材料、生分解性プラスチックが挙げられる。
【0019】
パウチ本体10の胴部における可撓性フィルムは、ポリエチレンを含む3層~4層で構成されることが好ましい。
可撓性フィルムが3層未満ではスタンディング性が悪くなるため外観不良となり好ましくない。可撓性フィルムが4層を超えるとコストアップになるため好ましくない。可撓性フィルムを3層とすることで、コスト低減に寄与できる。可撓性フィルムを4層とすることで、屈曲の抑制効果を高くできる。
【0020】
3層ラミネートフィルムの層構成としては、ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE、PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ/LLDPE、PET/PET/LLDPE、PET/アルミ蒸着PET/LLDPEが好ましく、ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE、PET/ONY/LLDPE、ONY/PET/LLDPEがより好ましい。
4層ラミネートフィルムの層構成としては、PET/アルミ蒸着PET/ONY/LLDPE、PET/アルミ/ONY/LLDPE、PET/PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ蒸着PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ/ONY/LLDPE、ONY/PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ蒸着PET/PET/LLDPE、ONY/アルミ/PET/LLDPE、ONY/PET/PET/LLDPEが好ましく、PET/アルミ蒸着PET/ONY/LLDPE、PET/アルミ/ONY/LLDPE、PET/PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ蒸着PET/ONY/LLDPE、ONY/アルミ/ONY/LLDPE、ONY/PET/ONY/LLDPEがより好ましい。
なお、層構成の標記は、外層から順に記載されている。即ち、「ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE」であれば、外層がONY、内層がLLDPE、外層と内層との間の中間層がアルミ蒸着PETである。
【0021】
多層ラミネートフィルムの各層の厚さは、パウチ本体10の内容量、収容する液体組成物の組成等を勘案して決定される。多層ラミネートフィルムの各層の厚さは、外層が10~30μm、中間層が10~60μm、内層が80~200μmであることが好ましい。
合計の正面フィルム12の厚さ(全体の厚さ)は、140~240μmが好ましく、160~240μmがより好ましい。
【0022】
背面フィルム14の層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、正面フィルム12と同様である。背面フィルム14の層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、各々、正面フィルム12と同じでもよいし、異なってもよい。
【0023】
パウチ本体10の胴部における可撓性フィルムの厚さは、140~240μmであることが好ましい。
可撓性フィルムの厚さが140μm未満の場合は、屈曲が生じやすくなるとともに、スタンディング性が悪くなるため外観不良となり好ましくない。可撓性フィルムの厚さが240μmを超えた場合は、コストアップになるため好ましくない。
パウチ本体10の胴部における可撓性フィルムの厚さを140~240μmとすることで、コストアップになることなく、屈曲の抑制および外観性の確保に寄与できる。
【0024】
2層構成の底部16aの層構成としては、ONY/LLDPE、アルミ蒸着PET/LLDPEが好ましく、ONY/LLDPEがより好ましい。
3層構成の底部16aの層構成としては、ONY/ONY/LLDPE、PET/ONY/LLDPE、PET/PET/LLDPEが好ましく、ONY/ONY/LLDPEがより好ましい。
各々の厚さの範囲は内容液の容量や組成により選定され、外層が10~30μm、中間層の合計が10~80μm、内層が80~200μmで、合計の厚さは、140μm~240μmが好ましく、より好ましくは160μm~240μmである。
【0025】
パウチ本体10の最大高さH(下端縁19から上端縁13までの距離)は、280~350mmが好ましい。高さHが上記下限値以上であれば、パウチ本体10の内容量をより大きくできる。高さHが上記上限値以下であれば、商品棚に、より容易に陳列できる。
【0026】
パウチ本体10の幅方向の最大長さW(第一の側縁15から第二の側縁17までの距離)は、200~220mmが好ましい。幅Wが上記下限値以上であれば、パウチ本体10の高さHを低くしつつ、内容量をより大きくできる。幅Wが上記上限値以下であれば、液体組成物製品を正立状態としたときに、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。
【0027】
底部16aの折込幅Dは、50~70mmが好ましく、55~65mmがより好ましい。折込幅Dは、下端縁19から、底部16aの折曲縁16bまでの距離である。
【0028】
シール部10aは、第1サイドシール部31と第2サイドシール部32と傾斜シール部33とトップシール部34と第1部分35とを有する。
第1サイドシール部31は、第一の側縁15に沿って形成され上下方向に延びる。第2サイドシール部32は、第二の側縁17に沿って形成され上下方向に延びる。傾斜シール部33は、第1サイドシール部31の上端から隅切部18の傾斜に沿って上端縁13まで延びる。傾斜シール部33の右側の端縁は上下方向に延び、上端縁13と直交する。傾斜シール部33には、注出体20が溶着されている。
【0029】
トップシール部34は、傾斜シール部33と第2サイドシール部32との間に位置し上端縁13に沿って配置されている。トップシール部34は、内容物(液体組成物)の充填前のスタンディングパウチ1において、上端縁13の開口部を形成する領域である。なお、スタンディングパウチ1の製造においては、予めシールして傾斜シール部33、第1サイドシール部31および第2サイドシール部32が形成された状態で内容物を充填した後に、上端縁13をシールしてトップシール部34を形成する。このとき、トップシール部34と傾斜シール部33との境界およびトップシール部34と第2サイドシール部32との境界に隙間が残らないように、トップシール部34は傾斜シール部33および第2サイドシール部32とオーバーラップしてシールされるが、本実施形態におけるトップシール部34は、オーバーラップを考慮せずに、幅方向で傾斜シール部33と第2サイドシール部32との間の範囲に形成されるものと定義する。
【0030】
第1部分35は、傾斜シール部33の右側の端部の位置から、第2サイドシール部32と離れた位置まで配置され、トップシール部34の下端の位置34aから下方に延びる。第1部分35のシールパターンとしては、特に限定されないが、例えば、縦横線型、波型、破線型、格子状などを選択できる。また、第1部分35は、面全体がシールされている必要はなく、例えば、外形輪郭がシールされていれば、外形輪郭の内側がシールされていない構成であってもよい。
【0031】
第1部分35の右側には、可撓性フィルムが非シールの第2部分36が配置されている。つまり、可撓性フィルムが非シールの第2部分36は、幅方向で第1部分35と第2サイドシール部32との間に位置する。
【0032】
図2は、トップシール部34の周辺を拡大した正面図である。
図2に示すように、第1部分35における右側の端縁は、トップシール部34の下端の位置34aの直線に対して角度θ1で傾斜している。第1部分35における左側の端縁は、トップシール部34の下端の位置34aの直線に対して角度θ2で傾斜している。第1部分35は、幅方向の寸法が下側に向かうにつれて短くなる方向に左右両側の端縁が傾斜している。
【0033】
角度θ1としては、50°以上、90°以下であることが好ましい。角度θ1が上記の範囲から外れた場合には、パウチ本体10の屈曲の抑制効果に影響を与えかねない。
角度θ2としては、70°以上、90°以下であることが好ましい。角度θ2が上記の範囲から外れた場合には、パウチ本体10の屈曲の抑制効果に影響を与えかねない。
また、第1部分35および第2部分36において、外形輪郭が交差する箇所についてはR面取りを設けることで応力集中を緩和することができる。
【0034】
トップシール部34の幅方向の最大長さをL1とし、第2部分36の幅方向の最小長さをL2とする。最小長さL2は、第1部分35における右側の端縁を形成する直線と、トップシール部34の下端の位置34aの直線との交点からトップシール部34における右側の端縁までの距離である。
L2/L1で表される値は、0.10以上、0.28以下であることが好ましく、0.14以上、0.18以下であることがより好ましい。
最大長さL1は、一例として、143~165mmである。
最小長さL2は、一例として、14.3~46.2mmであることが好ましく、20.0~29.7mmであることがより好ましい。
【0035】
第1部分35の最大高さをH1とすると、H1/L1で表される値は、0.07以上、0.21以下であることが好ましく、0.105以上、0.175以下であることがより好ましい。
最大高さH1は、10mm以上、35mm以下であることが好ましく、15mm以上、29mm以下であることがより好ましい。
第1部分35および第2部分の作用・効果については後述する。
【0036】
第1サイドシール部31および第2サイドシール部32のシール幅は、3mm以上、12mm以下であることが好ましく、5mm以上、10mm以下であることがより好ましい。トップシール部34および傾斜シール部33のシール幅は、3mm以上、15mm以下であることが好ましく、5mm以上、12mm以下であることがより好ましい。
【0037】
注出体20は、収容室11の内外を連通し、収容室11内の液体組成物を注出できる部材であればよい。
注出体20としては、円筒状又は多角筒状の注出筒と、注出筒の先端を塞ぐ蓋体とを有するものが挙げられる。
【0038】
注出体20としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の成形体が挙げられる。
【0039】
注出体20の開口径は、収容する液体組成物の物性(例えば、粘度)に応じて適宜決定され、例えば、8.5~21mmとされる。
【0040】
注出体20の長さ(基端から先端までの距離)は、例えば、18~30mmが好ましい。
【0041】
注出体20の大きさは、隅切部18に隣接する第一の側縁15の接線と、上端縁13の接線とで囲われる領域内に収まる大きさが好ましい。即ち、注出体20の先端の好ましい位置は、第一の側縁15よりも第二の側縁17寄りで、かつ上端縁13よりも下端縁19寄りである。スタンディングパウチ1を充填機に供給する際には、スタンディングパウチ1の側縁をガイドに当てて整列させる。注出体20の大きさが、上記の領域内に収まる大きさであれば、注出体20がガイドに当接しないため、スタンディングパウチ1をより容易に整列できる。
【0042】
<液体組成物充填前のスタンディングパウチの製造方法>
スタンディングパウチ1は、従来公知のスタンディングパウチの製造方法に準じて製造される。例えば、正面フィルム12と背面フィルム14とを重ね、両フィルムの間に、底部16aを形成するフィルムを折り込み、かつ、隅切部18において注出体20を両フィルムの間に挟み、重ねたフィルムの周縁をシールしてトップシール部34および第1部分35以外のシール部10aを形成することで、スタンディングパウチ1を得る。
【0043】
<液体組成物>
パウチ本体10に収容される液体組成物としては、例えば、液体洗浄剤組成物、液体柔軟剤組成物、液体漂白剤組成物、液体歯磨組成物、洗口液組成物、液体殺菌剤組成物、液体調味料等が挙げられる。液体洗浄剤組成物としては、衣料用液体洗浄剤組成物、浴室用液体洗浄剤組成物、トイレ用液体洗浄剤組成物、食器用液体洗浄剤組成物等が挙げられる。これらの中でも、液体洗浄剤組成物、液体柔軟剤組成物、液体歯磨組成物、洗口液組成物、浴室用液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0044】
液体組成物の25℃における粘度は、例えば、1~200mPa・sが好ましい。液体歯磨組成物、洗口液組成物、浴室用液体洗浄剤組成物の場合は、通常25℃における粘度が1~10mPa・sである。衣料用液体洗浄剤組成物、液体柔軟剤組成物の場合は、通常25℃における粘度が10~200mPa・sである。
液体歯磨組成物、洗口液組成物、浴室用液体洗浄剤組成物の場合は、TVB-10形粘度計(東機産業社製)のM1ローターを使用し、60回転/分の設定で1分後の粘度を測定した値である(水を含む)。
衣料用液体洗浄剤組成物、液体柔軟剤組成物の場合は、BH形粘度計(東機産業社製)のNo.1ローターを使用し、30回転/分の設定で10回転目の粘度を測定した値である。
試料(液体組成物)は、300mLのトールビーカーに300mLを測り、測定時の試料(液体組成物)の温度は、いずれも25℃である。試料の温度の調整方法としては、例えば、恒温循環水槽(アズワン社製)を用いて、25℃で3時間、調整する方法が挙げられる。
【0045】
スタンディングパウチ1は、1100~2400mLの液体組成物を収容するのに用いられる容器である。すなわち、スタンディングパウチ1は、内容量(充填量)1100~2400mLの容器である。スタンディングパウチ1の内容量は、1100~2400mLであり、1200~2100mLが好ましい。
内容量が1100mL未満では、消費者が容器の大きさの割に容量が少ないと感じるため好ましくない。内容量が2400mLを超えると容器の大きさに対する充填量の適性から外れ生産適性を欠いてしまう。多くのスタンディングパウチ1における液体組成物の充填は、第1サイドシール部31の傾斜開始点付近を設備のチャックでつかみ、上部から液体組成物を充填し、シーラーでトップシールをし、密封する。そのため、内容量が2400mLを超えた場合、チャックで第1サイドシール部31をつかんだ際に内部の液体組成物がトップシール部34まで上昇しシール不良を引き起こす可能性がある。
【0046】
収容室11内の液体組成物の充填率は、40~75体積%であることが好ましく、50~70体積%であることがより好ましい。
充填率が40体積%未満では消費者が容器の大きさの割に容量が少ないと感じる。また、充填量が少なくなり、包材費用が無駄に発生しコスト高となる。充填率が75体積%を超えると容器の大きさに対する充填量の適性から外れ生産適性を欠いてしまう。さらに、充填率が75体積%を超えると、上述したように、チャックで第1サイドシール部31をつかんだ際に内部の液体組成物がトップシール部34まで上昇しシール不良を引き起こす可能性がある。
【0047】
上記の充填率は、下記の式により求められる値である。
充填率(体積%)=(液体組成物の充填量)÷(収容室の満注量)×100
【0048】
上記の式中、満注量は、収容室11の最大容積である。本実施形態の収容室11の満注量は、例えば、1200~2340mLとされる。
パウチ本体10の最大長さWが200mm、最大高さHが290mmでの満注量は、一例として、2300mLである。この場合、液体組成物の充填量は、920~1725mLとされる。
パウチ本体10の最大長さWが200mm、最大高さHが340mmでの満注量は、一例として、2800mLである。この場合、液体組成物の充填量は、1120~2100mLとされる。
パウチ本体10の最大長さWが220mm、最大高さHが340mmでの満注量は、一例として、3400mLである。この場合、液体組成物の充填量は、1360~2550mLとされる。
【0049】
<液体組成物充填からのスタンディングパウチ1の製造方法>
液体組成物の充填は、例えば、パウチ充填包装機等の装置を用い、液体組成物をスタンディングパウチ1のパウチ本体10に充填し、その後にトップシール部34および第1部分35をシールする。
パウチ充填包装機等においては、パウチ本体10の両側縁を把持具で把持して、スタンディングパウチ1を吊し、上端の開口部から液体組成物を充填する。
こうして得られたスタンディングパウチ1は、底部16aが下方に押し下げられ、ガセット部16が広がって、正立状態で自立できる。
【0050】
<スタンディングパウチ1の製造後の後工程>
製造されたスタンディングパウチ1は、後工程として、パンク検査機における検査工程、ケーサー横送り工程、V字バケット移載工程、装填工程および箱正立工程を経て外装段ボールに梱包される。検査工程では、横向きに寝かせた状態でコンベアで搬送されたスタンディングパウチ1に対して、下端縁19側から上端縁13に亘って順次、上側から加圧し、例えば、画像処理を用いてスタンディングパウチ1の異常(シール不良、ピンホール)の有無を検査する。
【0051】
ケーサー横送り工程では、横向きに寝かせたスタンディングパウチ1をプッシャーで押してケーサーのコンベア上に搬送する。スタンディングパウチ1は、第一の側縁15および第二の側縁17が延びる方向をコンベアの幅方向とした状態で横向きに搬送される。ケーサーのコンベアで搬送されたスタンディングパウチ1は、V字バケット移載工程において、第一の側縁15が上側で第二の側縁17が下側でコンベアに支持された横立ちにされた状態でロボット等によって複数個(例えば、3個)が移載される。装填工程においては、横向きに寝かせた複数のスタンディングパウチ1が幅方向に互いに一部重ねられた状態で外装段ボールに押し込まれて装填される。このとき、外装段ボールは底部が横向きに開口した状態で設置され、スタンディングパウチ1は、外装段ボールの開口に上端縁13側から押し込まれる。スタンディングパウチ1が装填された外装段ボールは、箱正立工程において横向きから正立させた後に封緘される。
【0052】
上記の後工程におけるパンク検査においては、下端縁19側を加圧した際の内圧の上昇に伴い、上端縁13側において相対的に曲げ強度が小さい箇所に屈曲が生じやすい。横向きに寝かせたスタンディングパウチ1におけるトップシール部34は、ケーサー横送り工程ではプッシャーで押されて沈み込むことで屈曲が生じやすい。また、パウチ本体10は、V字バケット移載工程では第二の側縁17が下側でコンベアに支持されて横立ちにされ、装填工程では幅方向に互いに一部重ねられた状態で押し込まれるため、第一の側縁15および第二の側縁17と平行な折り線で幅方向に二つ折りされる曲げ力が加わる。また、パウチ本体10は、トップシール部34の左側が傾斜シール部33と繋がり、トップシール部34の右側が第2サイドシール部と繋がっているため、両端の曲げ強度が大きい。そのため、第1部分35が設けられていない場合には、プッシャーで押されてトップシール部34において曲げ強度が最も小さい幅方向の中心位置にて沈み込んで屈曲が生じる。そして、パウチ本体10の胴部は、上記沈み込みで生じた屈曲を起点として、曲げ力によって幅方向の中心を折り線として屈曲する。上端縁13側から見た平面視で、屈曲が幅方向の中心を折り線として生じた場合に、スタンディングパウチ1の中心位置からのピン角の突出量は最大となる。従って、装填工程においてスタンディングパウチ1を外装段ボールに押し込んで装填したとき、箱正立工程において外装段ボールを正立させたとき、および梱包後の輸送時において、ピン角が外装段ボールと擦れることで液漏れが生じる場合がある。
【0053】
これに対して、本実施形態では、トップシール部34の幅方向中心に、トップシール部34から下方に延びる第1部分35と、幅方向で第1部分35と第2サイドシール部32との間に位置し可撓性フィルムが非シールの第2部分36とを有する。第1部分35を有することで、幅方向中心における曲げ強度を大きくできる。そのため、トップシール部34は、パンク検査において内圧の上昇時の屈曲、プッシャーで押されたときの沈み込みは、幅方向中心からずれた位置で生じ、結果として、屈曲およびピン角の位置も幅方向中心からずれた位置で生じることで、スタンディングパウチ1の中心位置からのピン角の突出量を小さくできる。そのため、ピン角が外装段ボールと擦れて液漏れが生じることを抑制できる。また、屈曲によりピン角が生じた場合でも、屈曲部における折り線の交差角が大きくなりやすくなり、ピン角が鋭利なものから鈍角化することで、液漏れが生じることを抑制できる。
【0054】
また、非シールの第2部分36を有することで、パンク検査時に内圧の上昇による屈曲およびプッシャーで押されたときの沈み込みを、トップシール部34において曲げ強度が小さく、スタンディングパウチ1の中心位置からのピン角の突出量が小さい、幅方向で第2部分36が配置された右端側の位置に生じさせやすくなる。一方、第2部分36が第2サイドシール部32に近接した位置のみに配されると、曲げ強度が大きいトップシール部34と第2サイドシール部との交差部の影響が大きくなり、上記沈み込みおよび屈曲が幅方向の中心側で生じる可能性がある。
【0055】
上述したL2/L1で表される値が0.10未満の場合には、第2部分36が第2サイドシール部32に近接し、曲げ強度が大きいトップシール部34と第2サイドシール部との交差部の影響が大きくなり、上記沈み込みおよび屈曲が幅方向の中心側で生じる可能性がある。上述したL2/L1で表される値が0.28を超えた場合には、非シールの第2部分36の幅方向の最小長さが大きくて上記沈み込みおよび屈曲が幅方向の中心側で生じる可能性がある。
本実施形態では、L2/L1で表される値を0.10以上、0.28以下とすることで、上記沈み込みおよび屈曲を幅方向中心からずれた位置で生じさせ、ピン角の突出量を小さくできる。その結果、ピン角が外装段ボールと擦れて液漏れが生じることを抑制できる。
L2/L1で表される比は1100~2400mLの液体組成物を収納し、かつ、スパウトが付いているスタンディングパウチ1であることにより、上端縁13の中央部に屈曲が生じやすいがために、幅方向で注出体20の反対側に特定の幅を持った第2部分36を設けることにより、横倒しによる屈曲と屈曲によるピン角の抑制効果の両方の効果を得られることを見出した。
【0056】
上述したH1/L1で表される値が0.07未満の場合には、屈曲の抑制効果に影響を及ぼし、0.21を超えた場合には、外観性が低下する。
本実施形態では、H1/L1で表される値を0.07以上、0.21以下とすることで、屈曲の抑制効果および外観性を向上させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のスタンディングパウチ1では、1100~2400mLの大容量を収容するサイズであっても屈曲の発生および液漏れを抑制することが可能になる。
【0058】
<スタンディングパウチの第2実施形態>
図3は、本発明のスタンディングパウチ1の第2実施形態を示す正面図である。
図4は、
図3におけるトップシール部34の周辺を拡大した正面図である。
これらの図において、
図1および
図2に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図3に示すように、本実施形態のスタンディングパウチ1は、第3部分35Aと第4部分36Aとを有する。第3部分35Aは、傾斜シール部33の右側の端部と離れた位置から、第2サイドシール部32の左側の離れた位置まで幅方向に延びて配置されている。第3部分35Aの下側端部は、幅方向に延びる直線部38Aを有している。第3部分35Aの下側端部が直線部38Aを有することで、直線部38Aを有さない場合より第3部分35Aの面積が広くなり曲げ強度が大きくなる。
第3部分35Aは、トップシール部34から下方に延び可撓性フィルムがシールされた部分である。第3部分35Aのシールパターンとしては、特に限定されないが、例えば、縦横線型、波型、破線型、格子状などを選択できる。また、第3部分35Aは、面全体がシールされている必要はなく、例えば、外形輪郭がシールされていれば、外形輪郭の内側がシールされていない構成であってもよい。
【0060】
図4に示すように、第3部分35Aの最大高さをH3とすると、H3/L1で表される値は、0.07以上、0.21以下であることが好ましく、0.07以上、0.175以下であることがより好ましい。
H3/L1で表される値が0.07未満の場合、パウチ本体10の屈曲の分散効果が低くなる。H3/L1で表される値が0.21を超えた場合、外観性が低下する。
H3/L1で表される値を0.07以上、0.21以下とすることで、屈曲の分散効果および外観性を向上させることができる。
最大高さH3は、10mm以上、35mm以下であることが好ましく、10mm以上、29mm以下であることがより好ましい。
【0061】
第3部分35Aは、可撓性フィルムが非シールの第5部分37を有する。第5部分37は、幅方向でトップシール部34の中央に位置する。第5部分37は、第3部分35Aの下側端部から上側に向かうにつれて幅方向の寸法が漸次小さくなる左右対称の略三角形状である。
【0062】
図4は、トップシール部34の周辺を拡大した正面図である。
図4に示すように、第5部分37を形成する端縁同士は、角度θ3で交差している。角度θ3としては、80°以上、120°以下であることが好ましい。角度θ3が上記の範囲から外れた場合には、パウチ本体10の屈曲の抑制効果に影響を与えかねない。
【0063】
第5部分37の最大高さをH2とすると、H2/L1で表される値は、0.10以上、0.18以下であることが好ましく、0.12以上、0.14以下であることがより好ましい。
H2/L1で表される値が0.10未満または0.18を超えた場合、パウチ本体10の屈曲の分散効果が低くなる。
第5部分37の上側の端部は、トップシール部34の下端の位置34aよりも下側である。つまり、第3部分35Aは、幅方向の中心位置にも設けられている。
【0064】
第4部分36Aは、第3部分35Aの幅方向の両側に左右対称に配置されている。第4部分36Aは、可撓性フィルムが非シールの部分である。第4部分36Aは、幅方向で第3部分35Aと第1サイドシール部31との間、および幅方向で第3部分35Aと第2サイドシール部32との間にそれぞれ配置されている。
【0065】
第4部分の幅方向の最小長さをL4とすると、L4/L1で表される値は、0.10以上、0.21以下であることが好ましく、0.14以上、0.18以下であることがより好ましい。
最小長さL4の定義は、最小長さL2と同様である。
本実施形態では、L4/L1で表される値を0.10以上、0.21以下とすることで、上記沈み込みおよび屈曲を幅方向中心からずれた位置で生じさせ、ピン角の突出量を小さくできる。その結果、ピン角が外装段ボールと擦れて液漏れが生じることを抑制できる。
最小長さL4は、一例として、14.3~30.0mmであることが好ましく、20.0~25.7mmであることがより好ましい。
【0066】
上記のL4/L1で表される比は、1100~2400mLの液体組成物を収納し、かつ、注出体20を有するスタンディングパウチ1であることにより、上端縁13の中央部に屈曲が生じやすいがために、上端縁13の中央部に第5部分37を設け、かつ、第3部分35Aの左右両側に特定の幅を持った第4部分36Aを設けることで屈曲が分散し屈曲によるピン角の抑制効果を得られることを見出した。
【実施例0067】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0068】
(使用材料)
<スタンディングパウチ>
各例では、以下に示す3つのサンプルとした。
各例のスタンディングパウチの各部材の材質を以下に示す。
[サンプル1]
・注出体:内径8.7mm、長さ22mm、材質:高密度ポリエチレン(HDPE)。
・正面フィルム及び背面フィルム(3層):ONY15μm/アルミ蒸着PET12μm/LLDPE150μm。
・底部(2層):ONY25μm/LLDPE150μm。
・最大長W=200mm×最大高さH=340mm×底部折込幅=60mm。
・第1、第2サイドシール部幅:7.5mm。
・トップシール部幅:8.0mm。
・トップシール部の最大長さL1:143mm。
・満注容量:2800mL。
[サンプル2]
・注出体:内径8.7mm、長さ22mm、材質:高密度ポリエチレン(HDPE)。
・正面フィルム及び背面フィルム(3層):ONY15μm/アルミ蒸着PET12μm/LLDPE150μm。
・底部(2層):ONY25μm/LLDPE150μm。
・最大長W=200mm×最大高さH=290mm×底部折込幅=60mm。
・第1、第2サイドシール部幅:7.5mm。
・トップシール部幅:8.0mm。
・トップシール部の最大長さL1:143mm。
・満注容量:2300mL。
[サンプル3]
・注出体:内径8.7mm、長さ22mm、材質:高密度ポリエチレン(HDPE)。
・正面フィルム及び背面フィルム(4層):PET12μm/アルミ蒸着PET12μm/ONY15μm/LLDPE180μm。
・底部(3層):ONY25μm/ONY15μm/LLDPE180μm。
・最大長W=220mm×最大高さH=340mm×底部折込幅=65mm。
・第1、第2サイドシール部幅:7.5mm。
・トップシール部幅:8.0mm。
・トップシール部の最大長さL1:165mm。
・満注容量:3400mL。
【0069】
(実施例1~12、比較例1~8)
表1~3の仕様に従い、スタディングパウチを作製した。
実施例1~4、9、11、比較例3~4は、第1実施形態で説明した
図1および
図2に示した第1部分および第2部分を有する形状のスタディングパウチである。
実施例5~8、10、12、比較例5~7は、第2実施形態で説明した
図3および
図4に示した第1部分および第2部分を有する形状のスタディングパウチである。
比較例1は、第1部分および第2部分を有さない形状のスタディングパウチである。
比較例2は、第2部分を有さず、トップシール部の幅方向全体に亘って第1部分が設けられた形状のスタディングパウチである。
比較例8は、実施例6に対して第5部分が設けられない形状のスタディングパウチである。
【0070】
種々検討した結果、25℃における粘度が1~10mPa・sの液体組成物がピン角が発生し易い。よって作製したスタンディングパウチに、表中の仕様に従って内容物として最も低粘度な水(25℃での粘度1mPa・s)を充填し評価した。
角度θ1は、70°とした。
角度θ2は、70°とした。
角度θ3は、比較例7では130°であり、且つ、第3部分の下側端部に直線部を有さない形状とし、他の例では90°とした。
第1実施形態の第1部分および第2実施形態の第1部分は、いずれも全面シールパターンとした。
得られたスタンディングパウチについて、横倒しによる屈曲の有無、屈曲によるピン角の発生率を評価し、その結果を表中に示す。
【0071】
(評価方法)
<横倒しによる屈曲の有無>
スタンディングパウチの製造プロセスでは、横向きに寝かせた状態で搬送するとともに、ケーシング工程においては、寝かせた状態で外装段ボールに押し込んで装填する。寝かせた状態での屈曲は最終的に外装段ボールを正立に反転させた際のピン角の形成しやすさに影響する。そこで、スタンディングパウチを横向きに寝かせた状態で上述したパンク検査を模した状態とした際に、上端縁側に強い屈曲が生じるかについて評価を行った。
具体的には、スタンディングパウチを横向きに寝かせた状態で、スタンディングパウチの胴材部の下端縁側を10kgの荷重を掛けて押し、上端縁側に屈曲が生じるか否かをn=5にて評価を行った。
【0072】
≪評価基準≫
◎:上端縁側の沈み込みも屈曲も5回中何れも生じない。
〇:5回中何れも上端縁側が僅かに沈み込むが屈曲はない。
△:上端縁側が沈み込む屈曲が5回中4回以上認められる。
×:上端縁側が沈み込む強い屈曲が5回中4回以上認められる。
評価結果が、「◎」、「〇」を良好(OK)とし、評価結果が、「△」、「×」を不良(NG)とした。
【0073】
<屈曲によるピン角の発生率>
液漏れに繋がるピン角の形成のしやすさの有無を確認するために、ケーシング工程を模した方法にて評価を行った。
上記サンプル1では、外装段ボール(H-BOX)に注出体が付いている方向からスタンディングパウチを6袋挿入し、3~5秒の時間をかけて正立反転を行い、屈曲によるピン角が発生した袋の個数をカウントした。1つのスタンディングパウチにピン角が複数発生した場合でも、ピン角が発生したスタンディングパウチ1袋としてカウントを行い、1セット6袋の確認を10回行い、ピン角発生率%(ピン角発生率=ピン角が発生した袋の数/60×100)を算出して評価した。
サンプル2では、1セット4袋の確認を15回行った以外はサンプル1と同様の方法で評価を行った。
【0074】
≪評価基準≫
5:発生率が0%。
4:発生率が0%を超え、5%未満。
3:発生率が5%以上、10%未満。
2:発生率が10%以上、25%未満。
1:発生率が25%以上。
評価結果(評点)が、「5」、「4」、「3」を良好(OK)とし、評価結果が「2」、「1」を不良(NG)とした。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
表1~3に示すように、1100~2400mLの液体組成物を収容し、L2/L1で表される値が、0.10以上、0.28以下である実施例1~4、9、11およびL4/L1で表される値が、0.10以上、0.21以下であり、第3部分の下側端部が幅方向に延びる直線部を有する実施例5~8、10、12は、横倒しによる屈曲の有無が「〇」以上であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「3」以上の良好な評価が得られた。
【0079】
これに対して、第1部分および第2部分を有さない形状の比較例1は、横倒しによる屈曲の有無が「×」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「1」となり、両方の評価において不良評価であった。
第2部分を有さず、トップシール部の幅方向全体に亘って第1部分が設けられた比較例2は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
L2/L1で表される値が0.07である比較例3は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
L2/L1で表される値が0.245である比較例4は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
L4/L1で表される値が0.07である比較例5は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
L4/L1で表される値が0.245である比較例6は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
第3部分の下側端部が幅方向に延びる直線部を有しない比較例7は、横倒しによる屈曲の有無が「×」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「1」となり、両方の評価において不良評価であった。
第5部分を有さない比較例8は、横倒しによる屈曲の有無が「△」であり、屈曲によるピン角の発生率の評点が「2」となり、両方の評価において不良評価であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、本発明の効果を発揮できることを確認できた。
【0080】
なお、液体組成物を水に代えて、液体組成物A(衣料用液体洗浄剤組成物 トップスーパーNANOXの粘度(25℃)=180mPa・s、ライオン社製)、液体組成物B(液体柔軟剤組成物 ソフランプレミアム消臭 フレッシュグリ-ンアロマの香りの粘度(25℃)=100mPa・s、ライオン社製)を実施例2~3及び実施例6~7で使用したスタンディングパウチに充填して液体組成物製品としたところ、上述の実施例2~3及び実施例6~7と同様の結果となった。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
1…スタンディングパウチ、 10…パウチ本体、 10a…シール部、 11…収容室、 12…正面フィルム(可撓性フィルム)、 13…上端縁、 14…背面フィルム(可撓性フィルム)、 16…ガセット部、 16a…底部、 18…隅切部、 20…注出体、 31…第1サイドシール部、 32…第2サイドシール部、 33…傾斜シール部、 34…トップシール部、 35…第1部分、 35A…第3部分、 36…第2部分、 36A…第4部分、 37…第5部分