(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060269
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】鼻汁分泌抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20240424BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240424BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240424BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P11/02
A61P29/00
A61K36/752
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167542
(22)【出願日】2022-10-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開者 出口貴浩、得永裕美子、銭谷武司、榎本雅夫、村田和也、遠藤雄一 刊行物名 薬理と治療,第49巻,第11号,第1877~1887頁,ライフサイエンス出版株式会社 発行日 令和3年11月20日 (2)公開者 消費者庁 ウェブサイトのアドレス https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42210040230301 外13件 掲載日 令和3年12月28日 (3)公開者 消費者庁 ウェブサイトのアドレス https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42205301190201 外13件 掲載日 令和4年1月26日 (4)公開者 株式会社日経ビーピー ウェブサイトのアドレス https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/22/01/20/09051/ 掲載日 令和4年1月25日 (5)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 ウェブサイトのアドレス https://a-pharma-kindai.co.jp/外2件 掲載日 令和4年10月4日 (6)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 ウェブサイトのアドレス https://a-pharma-kindai.com/外2件 販売を開始した日 令和4年10月4日 (7)公開者 学校法人近畿大学 ウェブサイトのアドレス https://newscast.jp/news/8057185 掲載日 令和4年10月4日 (8)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布先 株式会社キリン堂 配布日 令和3年12月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (9)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布場所 株式会社ICT 配布日 令和3年12月24日 (10)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布先 株式会社キリン堂 配布日 令和4年1月26日 (11)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布場所 株式会社大木 配布日 令和4年4月15日 (12)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布場所 株式会社ICT 配布日 令和4年6月29日 (13)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布先 株式会社大木 配布日 令和3年12月3日 (14)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布先 株式会社大木 配布日 令和4年1月27日 (15)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布場所 近畿大学奈良病院 配布日 令和4年10月17日 (16)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布先 東精版印刷株式会社 配布日 令和4年1月5日 (17)公開者 東精版印刷株式会社 配布先 ニッコーグラビア印刷株式会社 配布日 令和4年3月11日 (18)公開者 株式会社ア・ファーマ近大 配布場所 株式会社ア・ファーマ近大 株主総会 配布日 令和4年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】504061374
【氏名又は名称】株式会社 ア・ファーマ近大
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】出口 貴浩
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZB11
4C088AB62
4C088AC04
4C088BA07
4C088BA14
4C088CA11
4C088NA14
4C088ZA34
4C088ZA59
4C088ZB11
(57)【要約】
【課題】鼻汁の分泌を抑制できる鼻汁分泌抑制用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】1日あたりの摂取量が200mg以上であるヘスペリジンと、1日あたりの摂取量が50mg以下であるナリルチンを含有することを特徴とする、鼻汁分泌抑制用組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日あたりの摂取量が200mg以上であるヘスペリジンと、1日あたりの摂取量が50mg以下であるナリルチンを含有することを特徴とする、鼻汁分泌抑制用組成物。
【請求項2】
前記ナリルチンの1日あたりの摂取量が30~50mgであることを特徴とする、請求項1に記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
【請求項3】
前記ヘスペリジンの1日あたりの摂取量が200~300mgであることを特徴とする、請求項1に記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
【請求項4】
未成熟なウンシュウミカン果実の乾燥粉末を含有し、
前記ヘスペリジン及び前記ナリルチンが、前記乾燥粉末に含まれるヘスペリジン及びナリルチンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻汁の分泌を抑制できる鼻汁分泌抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻炎は、鼻腔の粘膜に生じた炎症であり、アレルギーに起因した鼻炎として、アレルギー性鼻炎が知られている。アレルギー性鼻炎は、ハウスダストなどの季節に関係無く存在する物質をアレルゲンとする通年性アレルギー性鼻炎と、スギ花粉などの所定の季節に存在する物質をアレルゲンとする季節性アレルギー性鼻炎の2種に大別することができる。通年性アレルギー性鼻炎であっても、季節性アレルギー性鼻炎であっても、その主要な症状は、鼻汁(鼻漏)、くしゃみ、及び鼻閉である。これらの症状は、日常生活のQOL(Quality Of Life)を著しく低下させる。
【0003】
アレルギー性鼻炎の症状を改善する方法としては、抗ヒスタミン薬やステロイドなどの薬物を投与する薬物療法が知られているが、近年、天然物を用いた技術が開発されている。例えば、非特許文献1には、アレルギー性鼻炎の症状を改善するために、ウンシュウミカン果実の乾燥粉末を用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】二村(増田)めぐみ等,「未熟ウンシュウミカン果実含有食品の通年性鼻過敏症に対する症状緩和効果」,アレルギー・免疫,2016年、Vol.23,No.7,106~116頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、鼻汁の症状が改善されたか確認するため、ヘスペリジンの1日の摂取量が177mg、ナリルチンの1日の摂取量が53mgとなるよう、ヘスペリジン及びナリルチンを含むウンシュウミカン果実の乾燥粉末(以下、「CUP」ともいう)を被験者に摂取させ、摂取期間中の鼻かみ回数をスコア化している。このスコアによると、CUP投与群は、CUP投与前との比較において、スコア(鼻かみ回数)が有意に低下している。
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載される鼻かみ回数のスコアによると、CUP投与群は、プラセボ群との比較において、スコア(鼻かみ回数)の有意な低下は認められない。鼻汁の症状は、観察時期によって症状が強くなったり弱くなったりすることがあるため、CUP投与前との比較において、スコア(鼻かみ回数)が有意に低下したとしても、摂取時期を同時期にしたプラセボ群との比較において、スコア(鼻かみ回数)の有意な低下が認められなければ、CUPの投与によって鼻汁の分泌を抑制できたとは言えない。つまり、非特許文献1は、鼻汁の分泌を抑制できる技術を提供するものではない。
【0007】
本発明は、鼻汁の分泌を抑制できる鼻汁分泌抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 1日あたりの摂取量が200mg以上であるヘスペリジンと、1日あたりの摂取量が50mg以下であるナリルチンを含有することを特徴とする、鼻汁分泌抑制用組成物。
[2] 前記ナリルチンの1日あたりの摂取量が30~50mgであることを特徴とする、[1]に記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
[3] 前記ヘスペリジンの1日あたりの摂取量が200~300mgであることを特徴とする、[1]に記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
[4] 未成熟なウンシュウミカン果実の乾燥粉末を含有し、前記ヘスペリジン及び前記ナリルチンが、前記乾燥粉末に含まれるヘスペリジン及びナリルチンであることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一つに記載の鼻汁分泌抑制用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鼻汁の分泌を抑制できる鼻汁分泌抑制用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、錠剤の摂取開始後8週間におけるスコア変化量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態は、鼻汁の分泌を抑制できる鼻汁分泌抑制用組成物に関する。本明細書において、鼻汁の分泌を抑制できるとは、摂取時期を同時期にしたプラセボ群(プラセボを摂取した群)との比較において有意差がある鼻汁分泌抑制を指す。また、有意差があるとは、有意確率が5%未満(P<0.05)であることを指す。群間比較の方法は、データの種別によって適切な有意差検定を選択することができ、例えば、Mann-WhitneyのU検定を用いることができる。
【0013】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物は、ヘスペリジンとナリルチンを含む。
【0014】
ヘスペリジンは、下記式(1)で示される化合物であり、例えば、ウンシュウミカン、レモン、バレンシアオレンジなどの柑橘果実に含まれている。
【化1】
【0015】
ヘスペリジンは、化学的に合成されたヘスペリジンを用いてもよいが、安全性の面から、柑橘果実などの天然物に由来するヘスペリジンを用いることが好ましい。
【0016】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物において、ヘスペリジンは、1日当たりの摂取量が200mg以上である。言い換えれば、ヘスペリジンは、1日に摂取する鼻汁分泌抑制用組成物に含まれるヘスペリジンの総量が200mg以上となるような含有量で鼻汁分泌抑制用組成物に含有されている。例えば、鼻汁分泌抑制用組成物が錠剤の剤形であり、これを1日9錠摂取する場合、ヘスペリジンの含有量は、9錠摂取したときにヘスペリジンが合計で200mg以上摂取されるような量であればよい。
【0017】
ヘスペリジンの1日当たりの摂取量は、200mg以上であればよく、その上限値については特に限定されるものではないが、鼻汁の分泌をより抑制する観点からは、300mg以下であることが好ましく、250mg以下であることがより好ましい。
【0018】
ナリルチンは、下記式(2)で示される化合物であり、ウンシュウミカン、ハッサク、スダチ、グレープフルーツなどの柑橘果実に含まれている。
【化2】
【0019】
ナリルチンは、化学的に合成されたナリルチンを用いてもよいが、安全性の面から、柑橘果実などの天然物に由来するナリルチンを用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物において、ナリルチンは、1日当たりの摂取量が50mg以下である。言い換えれば、ナリルチンは、1日に摂取する鼻汁分泌抑制用組成物に含まれるナリルチンの総量が50mg以下となるような含有量で鼻汁分泌抑制用組成物に含有されている。例えば、鼻汁分泌抑制用組成物が錠剤の剤形であり、これを1日9錠摂取する場合、ナリルチンの含有量は、9錠摂取したときにナリルチンが合計で50mg以下摂取されるような量であればよい。
【0021】
ナリルチンの1日当たりの摂取量は、50mg以下であればよく、その下限値については特に限定されるものではないが、鼻汁の分泌をより抑制する観点からは、30mg以上であることが好ましく、40mg以上であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物において、ヘスペリジンとナリルチンの含有比率は、前述した摂取量を満足するような比率であればよく、特に限定されるものではないが、鼻汁の分泌をより抑制する観点からは、ナリルチンに対するヘスペリジン(ヘスペリジン/ナリルチン)の含有比率が4以上であることが好ましく、4以上5以下であることがより好ましく、4.3以上4.7以下であることが特に好ましい。
【0023】
ここで、ウンシュウミカン果実(果皮を含む果実)には、ヘスペリジンとナリルチンの両方が含まれている。このため、ウンシュウミカン果実の乾燥粉末を本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物に含有させることで、ヘスペリジン及びナリルチンを鼻汁分泌抑制用組成物に含有させてもよい。鼻汁の分泌をより抑制する観点からは、ウンシュウミカン果実の乾燥粉末の中でも、未成熟なウンシュウミカンの乾燥粉末を含有することが好ましい。
【0024】
なお、未成熟なウンシュウミカンとは、果実の着果後の生長過程において、果皮が黄変する前の未成熟な段階の果実を指す。未成熟なウンシュウミカンの具体例としては、着果からその3ヶ月後までの間に収穫されたウンシュウミカンを挙げることができる。未成熟なウンシュウミカンのサイズは、例えば、横径(果心に対して垂直な方向の直径)が2.0cm以上4.5cm以下である。
【0025】
また、ウンシュウミカン果実の乾燥粉末とは、果皮を含むウンシュウミカン果実の乾燥粉末を指す。ウンシュウミカン果実の乾燥粉末は、その製造方法について特に限定されるものではないが、例えば、果皮を含むウンシュウミカン果実を切断し、切断物を日干し、陰干し、乾燥機などによって乾燥させた後、乾燥物をミキサー、ミルなどで粉砕することで得ることができる。なお、乾燥粉末の処理に供されるウンシュウミカン果実(果皮を含む)は、ウンシュウミカン果実(果皮を含む)を冷凍した冷凍物であってもよい。ウンシュウミカン果実の乾燥粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、例えば、100メッシュ(目開き154μm)を通過するような粒度とすることができる。
【0026】
ナリルチンやヘスペリジンの含有量は、液体クロマトグラフ紫外吸光光度計(HPLC-UV、島津製作所社製、LC-20シリーズ-SPD-20A)を用いた逆相クロマトグラフィー法により定量することができる。定量には標準サンプルの測定値と比較する絶対検量線法を用いることができる。例えば、測定サンプルについて3サンプルずつ準備し、その定量結果の平均値を測定結果とすることができる。準備した測定サンプルにメタノールを加えて、30分間の超音波処理を施した後、HPLC-UVに注入することで、ナリルチン及びヘスペリジンを分離することができる。
【0027】
HPLC-UVの分析条件は、例えば、以下の通りである。
カラム:東ソー社製、TSKgel ODS-120T(5μm、250mm×4.6mmi.d.)
カラムオーブン温度:40℃
移動相:流速 1.0mL/min、移動相A:移動相B=8:2(移動相A 0.1%リン酸水、移動相B アセトニトリル)
検出波長:UV280nm
【0028】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物は、医薬品、医薬部外品または飲食品などのあらゆる用途で用いることができる。本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物の摂取方法(投与方法)は、特に限定されるものではないが、例えば、経口的に摂取(投与)することができる。
【0029】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物は、前述した摂取量を満足するナリルチンとヘスペリジンのみにより構成されていてもよいが、これらに加えて他の成分が含有されていてもよい。本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物を医薬品、医薬部外品、又は飲食品とする場合、他の成分としては、例えば、還元麦芽糖水飴などの賦形剤、食用油脂などの結合剤、安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、食飲品成分(例えば、ヘスペリジン及びナリルチンを除くウンシュウミカン果実に含まれる食品成分)などの他の成分が含有されていてもよい。
【0030】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物の剤形は、特に限定されるものではなく、適宜設定できる。例えば、本実施形態の改善剤を医薬品、医薬部外品、又は飲食品とする場合、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤等の剤形とすることができる。
【0031】
特に、本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物を飲食品とする場合、通常の飲食品としてもよいが、特定保健用食品や栄養機能食品や機能性表示食品等の保健機能食品としてもよい。飲食品の具体例としては、例えば、栄養補助食品(サプリメント)、牛乳、加工乳、乳飲料、清涼飲料水、酒類、ノンアルコールビール、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、アイスクリーム、キャンディ、グミ、ガム、調製粉乳、流動食、病者用食品、幼児用粉乳等食品、授乳婦用粉乳等食品を挙げることができる。
【0032】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物の摂取頻度は、特に限定されるものではないが、例えば、1日に1~3回とすることができる。本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物の摂取期間は、例えば、7週間以上とすることができる。
【0033】
本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物は、前述した摂取量を満足するナリルチンとヘスペリジンと必要に応じて含有される他の成分とを適宜混合し、常法により製造することができ、その製造方法や製造条件について、特に限定されるものではない。
【0034】
以上説明した本実施形態の鼻汁分泌抑制用組成物によれば、鼻汁の分泌を抑制することができる。分泌を抑制する鼻汁の一例としては、アレルギーに起因した鼻汁(アレルギーに起因して分泌が亢進した鼻汁)を挙げることができる。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[未成熟なウンシュウミカンの乾燥粉末]
和歌山県有田地域で栽培されている未成熟なウンシュウミカン果実(着果から約1ヶ月経過したもの)を採取した。採取したウンシュウミカンを冷凍後、切断して50℃の低定温遠赤外線で乾燥させた。得られた乾燥物を殺菌機を用いて殺菌後、製粉機を用いて粉砕し、100メッシュを通過する粒度の未成熟なウンシュウミカンの乾燥粉末(以下、「CUP」ともいう)を得た。
【0037】
液体クロマトグラフ紫外吸光光度計(HPLC-UV、島津製作所社製、LC-20シリーズ-SPD-20A)を用いた逆相クロマトグラフィー法によって定量したところ、CUP1.71gあたり、215mgのヘスペリジンと48mgのナリルチンが含有されていた。
【0038】
なお、HPLC-UVの分析条件は、以下の通りであった。
カラム:東ソー社製、TSKgel ODS-120T(5μm、250mm×4.6mmi.d.)
カラムオーブン温度:40℃
移動相:流速 1.0mL/min、移動相A:移動相B=8:2(移動相A 0.1%リン酸水、移動相B アセトニトリル)
検出波長:UV280nm
【0039】
[CUP錠(実施例1)]
CUP1.71gと、還元麦芽糖水飴(三菱商事フードテック社製のアマルティMR-50)256.5mgと、食用油脂(日油社製のTP-9)103.5mgを混合し、得られた混合物を打錠(圧縮成形)して9錠の錠剤(以下、「CUP錠」ともいう)を得た。得られた9錠のCUP錠を1日分の被験食品(実施例1)とした。
【0040】
[プラセボ錠(比較例1)]
CUP錠と同じ色になるような色素(池田糖化工業社製のカラメル SF-720、ヤエガキ醗酵技研社製のサフイエローSP1000の混合物)と、CUP錠と同じ風味になるような柑橘香料(高田香料社製のドライコート グレープフルーツ#3261)を用意した。用意した色素及び柑橘香料の混合物12.2mgと、還元麦芽糖水飴1860.6mgと、食用油脂(日油社製のTP-9)197.1mgを混合し、得られた混合物を打錠(圧縮成形)して9錠の錠剤(以下、「プラセボ錠」ともいう)を得た。得られた9錠のプラセボ錠を1日分の被験食品(比較例1)とした。
【0041】
[被験者]
被験者の候補として、日ごろから鼻汁(鼻漏)の症状があり、症状緩和の目的で医薬品を常用していない20歳~64歳の成人男女を集めた。これらの候補者を対象に鼻汁(鼻漏)の症状について1週間の観察期間を設け、健康診断を含めた事前検査を実施した。事前検査の結果から、実施医師責任者である耳鼻科専門医が、アレルギー(ハウスダストやダニに対するアレルギー)に起因した鼻汁の症状を有すると判断した80名を無作為に2群(後述するプラセボ群及びCUP群)に割り付けた。
【0042】
なお、割付け担当者は乱数を用いて割付け表を作成し、被験食品に割付け番号を付与した。割付け表は割付け担当者が封緘し、割付け表開封時まで密封保管した。割付けは、被験者及び医師の目に触れないように保管した。
【0043】
[試験]
プラセボ錠を摂取する群(以下、「プラセボ群」ともいう)およびCUP錠を摂取する群(以下、「CUP群」ともいう)の2群について、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。プラセボ群の被験者は、試験期間中、1日9錠のプラセボ錠を毎日摂取した。CUP群の被験者は、試験期間中、1日9錠のCUP錠を毎日摂取した。錠剤の摂取時期(試験時期)は、プラセボ群とCUP群で同時期とした。
【0044】
プラセボ群とCUP群の被験者は、錠剤の摂取開始前8週間と摂取開始後の8週間、毎日、鼻汁の症状を日誌に記録した。日誌に記載する項目は、鼻アレルギー診療ガイドライン(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会,鼻アレルギー診療ガイドライン,通年性鼻炎と花粉症,ライフ・サイエンス,2016年及び2020年)に示される鼻アレルギー日記に準じて作成し、鼻汁(鼻かみ回数)を5段階で評価させた。5段階の評価基準は、以下の通りとした。
<評価基準>
スコア 0:1日の鼻かみ回数が1回未満
スコア 1:1日の鼻かみ回数が5~1回
スコア 2:1日の鼻かみ回数が10~6回
スコア 3:1日の鼻かみ回数が20~11回
スコア 4:1日の鼻かみ回数が21回以上
【0045】
プラセボ群とCUP群の各群ごとに、錠剤の摂取開始前8週間における鼻汁のスコアの平均値(以下、「摂取前スコア」ともいう)を求めるとともに、錠剤の摂取開始後8週間の各週ごとの鼻汁のスコアの平均値(以下、「摂取後スコア」ともいう)を求めた。錠剤の摂取開始後8週間の各週ごとに、摂取後スコアと摂取前スコアの差(=「摂取後スコア」-「摂取前スコア」)を求め、錠剤の摂取前後におけるスコアの変化量(以下、「スコア変化量」ともいう)を求めた。
【0046】
また、錠剤の摂取開始後8週間の各週におけるスコア変化量について、プラセボ群とCUP群の2群をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。統計解析はIBM SPSS Statistics バージョン26,Microsoft Excelを用いて行い、いずれも有意水準は両側検定で5%未満(P<0.05)を有意差ありとした。
【0047】
なお、試験を実施した被験者の80名のうち、3名の被験者は、観察期間のうち、8週目の評価が不足していたため、評価対象から除外した。
【0048】
結果を
図1に示す。また、具体的な摂取前スコア、錠剤摂取開始後4週目のスコア変化量、錠剤摂取開始後8週目のスコア変化量を表1に示す。なお、
図1及び表1において、数値は平均値±標準誤差を示す。
【0049】
【0050】
図1に示すように、CUP錠を摂取したCUP群は、7週目及び8週目において、プラセボ錠を摂取したプラセボ群と比較して鼻汁のスコア変化量が有意に大きかった。この結果から、1日に9錠摂取される実施例1のCUP錠は、鼻汁の分泌を抑制できることが理解できた。