(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060270
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】搬送ライン用UV-LED照射装置、搬送ライン及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240424BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01L33/00 L
C08F2/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167543
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 太
(72)【発明者】
【氏名】大村 徳彦
【テーマコード(参考)】
4J011
5F142
【Fターム(参考)】
4J011QA14
4J011QA23
4J011QB24
4J011RA03
4J011SA02
4J011SA03
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
5F142AA13
5F142EA32
5F142EA34
5F142GA31
5F142GA40
(57)【要約】
【課題】環境負荷の高い水銀を用いた紫外線ランプを使用することなく、均一なUV照射を可能とする搬送ラインに使用できる搬送ライン用UV-LED照射装置を提供し、併せて前記搬送ライン用UV-LED照射装置を用いた搬送ライン及び積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】2以上のUV-LED発光素子を備え、前記UV-LED発光素子が特定の要件を満たす、搬送ライン用UV-LED照射装置、搬送ライン及び積層体の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のUV-LED発光素子又は2以上のUV-LED発光素子を備える2以上の面発光ユニットを備え、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが、下記の(1)~(3)を満たす、搬送ライン用UV-LED照射装置。
(1) 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットのピーク照度が、1.0mW/cm2以上である。
(2) 2以上のUV-LED発光素子又は2以上の前記面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成する。
(3) 前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子の間の、前記第1の方向における最長の距離又は前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離が、30mm未満である。
【請求項2】
前記UV-LED発光素子又は面発光ユニットのピーク波長が、240nm以上370nm以下である、請求項1に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置を含む、搬送ライン。
【請求項4】
前記搬送ラインにより搬送される基材の搬送方向である第2の方向と、前記第1の方向が略垂直である、請求項3に記載の搬送ライン。
【請求項5】
前記UV-LED発光素子の前記基材側又は前記面発光ユニット側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側の表面との距離が60mm以下である、請求項3記載の搬送ライン。
【請求項6】
基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、
前記UV硬化性樹脂組成物を、請求項1又は2に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置で硬化する工程と、を含む、積層体の製造方法。
【請求項7】
前記UV-LED発光素子の前記基材側又は前記面発光ユニット側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側の表面との距離が、60mm以下である、請求項6に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定のUV-LED発光素子を特定の配列とした搬送ライン用UV-LED照射装置、前記搬送ライン用UV-LED照射装置を用いた搬送ライン及び積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
UV硬化性樹脂は、光学材料用途、建築資材用途等に広く使用されている。例えばロール状の基材にUV硬化性樹脂を塗布し、塗布面にUV照射を行い、機能層を形成することが知られている。このUV照射には、照射強度を高くすることができるため、低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等の水銀を用いた紫外線ランプが使用されている。
例えば、特許文献1では、紫外線LED光源(スポット光源)を複数用いた硬化方法が記載されている。
特許文献2では、複数の発光ダイオードを用いた紫外線照射装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-112986号公報
【特許文献2】特開2015-166770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送ラインに前記の低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等の水銀を用いた紫外線ランプを使用することで、UV硬化性樹脂を硬化することは可能である。低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等は、その発光分布がブロードであり、広い波長の光が照射されるため、吸収する波長の異なる種々の光開始剤に対応することができる。また、ピーク照度を大きくすることが比較的容易であるため、硬化の進行を早めることができ、硬化に要する時間を短縮することも可能である。このような利点はあるものの、これらランプは水銀を使用しているため、その廃棄時に水銀を環境中に放出する可能性がある。
【0005】
通常搬送ラインに硬化用の紫外線ランプを使用する場合には、搬送される基材にUV硬化性樹脂組成物を塗布し、それに対して紫外線ランプを照射して硬化することが行われる。この場合、低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等は、その使用時に多大な熱を発生するためエネルギー消費量が高く、硬化工程において二酸化炭素の排出量が増加するなどの問題もあった。
以上のように、環境負荷の低減の観点から、水銀を使用した光源からLED発光素子への置き換えが検討されている。
【0006】
前記したように、特許文献1及び2では、UV硬化性樹脂組成物の硬化に、紫外線LED光源や複数の発光ダイオードを用いた紫外線照射装置が検討されている。しかし、特許文献1及び2ではLED光源を複数使用する場合に、その配置に関して検討がなされていない。LED光源は、低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等に比べて、分光分布がシャープであるという特徴を有している。UV硬化性樹脂組成物が光重合開始剤を使用する場合には、使用する光重合開始剤に適した波長を照射するLED光源を選択することにより、硬化の効率を上げることができる。一方で、LED光源は低圧水銀ランプや高圧水銀ランプ等と比較して、照度が低いため、硬化に時間を要することがあった。更にLED光源は一般に個々の光源のサイズが小さく、LED光源の形状にもよるが、通常は点光源であるため、これを適切な配置とせず、単に複数使用したとしても、搬送される基材の表面に均一に照射することができないという問題もあった。
【0007】
本開示は、前記のような実情に鑑みてなされたものであり、環境負荷の高い水銀を用いた紫外線ランプを使用することなく、均一なUV照射を可能とする搬送ラインに使用できる搬送ライン用UV-LED照射装置を提供し、併せて前記搬送ライン用UV-LED照射装置を用いた搬送ライン及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]の搬送ライン用UV-LED照射装置、[2]の搬送ライン及び[3]の積層体の製造方法を提供する。
[1] 2以上のUV-LED発光素子又は2以上のUV-LED発光素子を備える2以上の面発光ユニットを備え、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが、下記の(1)~(3)を満たす、搬送ライン用UV-LED照射装置。
(1) 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットのピーク照度が、1.0mW/cm2以上である。
(2) 2以上のUV-LED発光素子又は前記面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成する。
(3) 前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子の間の、前記第1の方向における最長の距離又は前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離が、30mm未満である。
[2] [1]に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置を含む、搬送ライン。
[3] 基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、
前記UV硬化性樹脂組成物を、[1]又は[2]記載の搬送ライン用UV-LED照射装置で硬化する工程と、を含む、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、環境負荷の高い水銀を用いた紫外線ランプを使用することなく、均一なUV照射を可能とする搬送ラインに使用できる搬送ライン用UV-LED照射装置を提供し、併せて前記搬送ライン用UV-LED照射装置を用いた搬送ライン及び積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の第1のUV-LED発光素子群の概念図である。
【
図3】複数のUV-LED発光素子群の概念図である。
【
図4】本実施例及び比較例で使用したUV-LED発光素子と基材との関係を示す概念図である。
【
図5】本実施形態の面発光ユニットの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置、搬送ライン及び積層体の製造方法について説明する。なお、本開示の一実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置、搬送ライン及び積層体の製造方法はあくまで本開示の一実施形態であり、本開示の一実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置、搬送ライン及び積層体の製造方法に限定されるものではない。
【0012】
〔搬送ライン用UV-LED照射装置〕
本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置は、2以上のUV-LED発光素子又は2以上のUV-LED発光素子を備える2以上の面発光ユニットを備え、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが、下記の(1)~(3)を満たすものである。
(1) 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットのピーク照度が、1.0mW/cm2以上である。
(2) 2以上のUV-LED発光素子又は前記面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成する。
(3) 前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子の間の、前記第1の方向における最長の距離又は前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離が、30mm未満である。
【0013】
本実施形態のUV-LED照射装置は、後記する搬送ラインに用いられるものである。本実施形態のUV-LED照射装置は、2以上の後記するUV-LED発光素子又は2以上の後記するUV-LED発光素子を備える2以上の後記する面発光ユニットを備えるが、UV-LED発光素子は、前記の(1)~(3)を満たせば、特に制限されるものではない。(1)~(3)を満たさないと、後記する基材に均一にUV照射することができず、基材上の場所によってUV硬化性樹脂組成物の硬化が十分に進行しないこととなる。
【0014】
本開示において「UV-LED発光素子」は、UV光を発光するLED発光素子であり、「UV-LED発光素子」は、一般にスポット光を発光するものである。また、
図5に記載したように、複数のUV-LED発光素子10を組み合わせて、面発光を可能とする面発光ユニット11を形成していてもよい。
【0015】
UV硬化性樹脂組成物の硬化が進行しないとは、後記のように搬送されてきた基材上のUV硬化性樹脂組成物にUVを照射した場合に、UV照射した場所の照射量が十分ではなく、目的とする硬化が進行しないことを意味する。この問題に対して、UV照射の時間を長くすることで改善する方法があるが、そのためには搬送速度を遅くするか、UV-LED発光素子(面発光ユニット)を搬送方向(後記する第2の方向)に複数並べ、累積の照射量を増加させる方法がある。しかし、いずれの方法も生産効率の低下や製造装置の増大など他の問題が生じてしまう。
また、UV硬化性樹脂組成物の硬化が進行しない他の形態としては、搬送されてきた基材上の前面にUV光が均一に照射されず、搬送方向に対して垂直な方向(後記する第1の方向)に硬化した部分と硬化が十分に進行していない部分が混在(以下、第1の方向の重合ムラとも記載する。)してしまうことも挙げられる。
これらを解消するためには、前記の(1)~(3)を満たすことが必要である。
【0016】
前記(1)は、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットの後記するピーク照度が、1.0mW/cm2以上であることを要する。前記ピーク照度が1.0mW/cm2未満であると後記するUV硬化性樹脂組成物の硬化が十分に進行しないこととなる。
【0017】
前記(2)は、2以上のUV-LED発光素子又は2以上の前記面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成することを要する。後記するように、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成しないと、均一にUV照射が行われず、第1の方向の重合ムラが生じてしまう。
【0018】
前記(3)は、前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子の間の、前記第1の方向における最長の距離又は前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離が、30mm未満であることを要する。後記するように、前記UV-LED発光素子が第1の方向に適切に配置されていなと、均一にUV照射が行われず、第1の方向の重合ムラが生じてしまう。
【0019】
本開示において、2以上のUV-LED発光素子をそのまま用いて第1のUV-LED発光素子群としてもよいし、2以上のUV-LED発光素子を組み合わせ、面発光ユニットを形成し、該面発光ユニットを用いて第1のUV-LED発光素子群としてもよい。
本開示において面発光ユニットは、UV-LED発光素子を少なくとも第1の方向もしくは第2の方向に2つ以上備える一つの独立した装置であり、後記する第1の方向にUV-LED発光素子を少なくとも2個備え、後記する第2の方向にUV-LED発光素子を少なくとも2個備える一つの独立した装置である。2以上のUV-LED発光素子をそのまま用いて第1のUV-LED発光素子群とする形態は、各UV-LED発光素子が、独立の装置である点で、面発光ユニットと異なる。
2以上のUV-LED発光素子をそのまま用いた場合には、隣り合うUV-LED発光素子の間の最長の距離が、30mm未満とすることを要する。他方、面発光ユニットを用いる場合には、
図5における面発光ユニット内での隣り合う発光素子間の距離35も30mm未満であることを要し、更に、前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離も30mm未満であることを要する。面発光ユニット内での隣り合う発光素子間の距離は通常面発光ユニットの間の距離より小さいため、面発光ユニットを用いる場合には、面発光ユニット内のUV-LED発光素子間の距離ではなく、面発光ユニット間の距離により発明を特定する。このため本開示においては、UV-LED発光素子をそのまま用いた場合のUV-LED発光素子間の距離の説明は、特段の断りがない場合には、そのまま面発光ユニットを用いた場合の面発光ユニット間の距離の説明とすることができる。
【0020】
<搬送ライン用>
前記のように本実施形態のUV-LED照射装置は、搬送ラインに用いられる。搬送ラインは、例えば後記する基材を搬送し、後記するUV-LED照射装置により基材にUV照射する装置である。前記搬送ラインは、本実施形態のUV-LED照射装置を備えれば特に制限されるものではないが、前記UV-LED照射装置以外に、基材の搬送装置及び基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する装置のほか、乾燥装置、接着剤等の塗布装置及び加熱装置を必要に応じて適宜備えていてもよい。
【0021】
<UV-LED照射装置>
図1で示すように、本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置1は、2以上のUV-LED発光素子10を備えることを要する。2以上のUV-LED発光素子10は、前記のように少なくとも第1の方向20に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群5を形成することを要する。
図1において、UV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子間の距離は、UV-LED発光素子をそのまま使用する場合には、その外縁間の距離のうち最短のものを意味する。
図1に示すようにUV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子が3個であれば、隣り合う素子間の距離25及び26があるが、隣り合う素子間の距離25の方が、隣り合う素子間の距離26より長いため、前記の(3)においては、隣り合う素子間の距離25が30mm未満であることを要する。30mm以上であると、UV-LED発光素子から照射されるUV光は直線性が高いため、素子間にUV照射の照射量が不十分な領域ができるため、均一なUV照射とはならない。上限値としては、28mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、15mm以下であることがより更に好ましく、12mm以下であることが特に好ましく、下限値としては前記距離が小さい方がUV光の照射が均一になり、硬化がより進行するため好ましいため特に限定されず、0mmであってもよく、0.5mm以上であることが好ましいが、隣り合う素子間の距離が小さくなるとUV-LED発光素子の数を多くする必要が生じる。このため、UV-LED照射装置をコンパクトにし、搬送ラインに設置の際に制限が生じないようするため、また消費電力を抑えるためには、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、8mm以上が更に好ましい。
【0022】
面発光ユニットを用いる場合には、UV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニット間の距離は、その外縁間の距離のうち最短のものを意味する。
図1において、UV-LED発光素子10を面発光ユニットと読み替え、前段落のUV-LED発光素子の距離に関する説明も面発光ユニットの距離の説明と読み替える。UV-LED発光素子群を形成する面発光ユニットが3個であれば、隣り合う素子間の距離25及び26があるが、隣り合う素子間の距離25の方が、隣り合う素子間の距離26より長いため、前記の(3)においては、隣り合う素子間の距離25が30mm未満であることを要する。30mm以上であると、面発光ユニットから照射されるUV光は直線性が高いため、素子間にUV照射の照射量が不十分な領域ができるため、均一なUV照射とはならない。上限値としては、28mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、15mm以下であることがより更に好ましく、12mm以下であることが特に好ましく、下限値としては前記距離が小さい方がUV光の照射が均一になり、硬化がより進行するため好ましいため特に限定されず、0mmであってもよく、0.5mm以上であることが好ましいが、UV-LED照射装置の設計上の制約から、5mm以上であることが好ましい。
【0023】
面発光ユニット内での隣り合うUV-LED発光素子間の距離は、30mm未満であるこが好ましく、28mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、15mm以下であることがより更に好ましく、12mm以下であることが特に好ましく、下限値としては前記距離が小さい方がUV光の照射が均一になり、硬化がより進行するため好ましいため特に限定されず、0mmであってもよく、0.5mm以上であることが好ましいが、UV-LED照射装置の設計上の制約から、5mm以上であることが好ましく、製造容易性の観点等から適宜選択し得る。
【0024】
前記UV-LED発光素子群は、前記UV-LED発光素子が第1の方向に沿って配列して形成される。
図1ではUV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子が3個の場合の概念図を記載したが、UV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子の個数は、2個以上であれば特に限定されない。1つのUV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子の個数の上限値は、特に限定されず、基材のサイズ、搬送ラインのサイズ等により、適宜選択し得る。
【0025】
「第1の方向に沿って」とは、
図2において、第1のUV-LED発光素子群中のUV-LED発光素子(面発光ユニット)の第一の辺31の方向に沿って、UV-LED発光素子(面発光ユニット)が配列することを意味する。この場合第2の辺32の方向が第2の方向21と平行となる。
【0026】
UV-LED発光素子群が複数ある場合には、
図3に示すように、第二の方向の最も上流にあるUV-LED発光素子群を第1のUV-LED発光素子群として、以降下流側に順番に第2のUV-LED発光素子群、下流側のn番目のUV-LED発光素子群を第nのUV-LED発光素子群と命名する。
【0027】
第1のUV-LED発光素子群について以上記載したが、本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置は、1つのUV-LED発光素子群のみを有していてもよく、2つ以上のUV-LED発光素子群を有していてもよい。複数の群を有する場合には、
図3に示すように、UV-LED発光素子11のように第1のUV-LED発光素子群と第2のUV-LED発光素子群に跨って存在するUV-LED発光素子がないことが好ましい。第2のUV-LED発光素子群を構成するUV-LED発光素子は、前記第1の方向に沿って、かつ、前記第1のUV-LED発光素子群と重ならないように配置されることが好ましい。
UV-LED発光素子10に換えて、面発光ユニット11を備える場合も同様である。
【0028】
図4に、第1のUV-LED発光素子群5、第2のUV-LED発光素子群6及び第nのUV-LED発光素子群7を備える搬送ライン用UV-LED照射装置の模式図を示した。
図4の各UV-LED発光素子群は、面発光ユニット11を備えており、4個の面発光ユニット11が、第1の方向に沿って配列している。
第1のUV-LED発光素子群5は基材より外側まで面発光ユニット11が備わっているが、このように基材の外側まで第1のUV-LED発光素子群5がなくてもよく、第nのUV-LED発光素子群7の右側のように、面発光ユニット11の右端が基材の右端より内側にあってもよい。このように内側にある場合には、基材と発光素子間又は面発光ユニット間の距離30は、30mm未満であることが好ましい。
【0029】
本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置が有するUV-LED発光素子群の数は、特に限定されず、基材のサイズ、搬送ラインのサイズ等により、適宜選択し得る。UV-LED発光素子群が複数存在する場合には、第1のUV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子と、第2のUV-LED発光素子群を形成するUV-LED発光素子が第1の方向にずれた配置(いわゆる千鳥配置)となっていてもよい。
【0030】
<UV-LED発光素子>
本実施形態で使用するUV-LED発光素子(面発光ユニットが含むUV-LED発光素子についても同様である。)は、紫外光領域の照射が可能であり、ピーク照度が、1.0mW/cm2以上であれば、特に限定されない。UV-LED発光素子は、スポット光源であることが好ましい。UV-LED発光素子又は面発光ユニットのピーク強度は例えば実施例に記載の方法で測定することができる。また、面発光ユニットのピーク強度も例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
UV-LED発光素子及び面発光ユニットの形状は特に制限されるものではない。UV照射を均一にすることができるため、正方形又は長方形であることが好ましい。また、UV-LED発光素子及び面発光ユニットの形状は、使用するすべてが同じ形、同じ面積であることが好ましい。これにより、UV-LED発光素子及び面発光ユニットの隙間を少なく配列することができるため均一なUV照射ができるため好ましく、また、入手も容易となるため好ましい。
【0031】
(ピーク照度)
本実施形態で使用するUV-LED発光素子及び面発光ユニットは、ピーク照度が、1.0mW/cm2以上であることを要する。上限値としては特に限定されるものではないが、ピーク照度が大きくなり、発熱により照射対象の劣化を防ぐため、及び消費電力を低減するため、600.0mW/cm2以下であることが好ましく、300.0mW/cm2以下であることがより好ましく、100.0mW/cm2以下であることが更に好ましく、80.0mW/cm2以下であることがより更に好ましく、50.0mW/cm2以下であることが特に好ましい。
ピーク照度は、実施例記載の方法により測定することができる。
【0032】
(ピーク波長)
前記UV-LED発光素子又は面発光ユニットのピーク波長が、240nm以上370nm以下であることが好ましい。前記範囲であると、照射対象の劣化を防ぎ、後記するUV硬化性樹脂組成物を十分に硬化できるため好ましい。UV硬化性樹脂組成物及び使用する光重合開始剤の種類により、ピーク波長は適切に選択すればよい。
ピーク波長は、実施例記載の方法により測定することができる。
【0033】
(UV-LED発光素子群)
本実施形態におけるUV-LED発光素子群は、前記のように2以上のUV-LED発光素子又は面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は面発光ユニットが第1の方向に沿って配列したものを意味する。本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置は、前記のように1又は2以上のUV-LED発光素子群を有していてもよい。
【0034】
〔搬送ライン〕
本実施形態の搬送ラインは、搬送ライン用UV-LED照射装置を含む搬送ラインであることを要する。前記のように本実施形態の搬送ライン用UV-LED照射装置は均一にUV照射ができるという優れた特性を有する。このため、本実施形態の搬送ラインも均一にUV照射ができるという優れた特性を有する。
本実施形態の搬送ラインは、後記する基材を搬送し、前記の搬送ライン用UV-LED照射装置によりUVを照射する。この基材の搬送方向が、前記の第2の方向に該当し、前記搬送ラインにより搬送される基材の搬送方向である第2の方向と、前記第1の方向が略垂直であることが好ましい。
【0035】
前記UV-LED発光素子の前記基材側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側又は面発光ユニット側の表面との距離は特に限定されないが、UV照射により後記するUV硬化性樹脂組成物を十分に硬化できるため、60mm以下であることが好ましい。
下限値は特に限定されるものではないが、搬送の際にUV-LED発光素子の表面にUV硬化性樹脂組成物等が接触しないため、基材の歪み等の影響も考慮すると、1mm以上60mm以下であることが好ましく、3mm以上50mm以下であることがより好ましく、5mm以上40mm以下であることが更に好ましく、8mm以上30mm以下であることがより更に好ましい。
【0036】
前記搬送ラインの搬送ライン用UV-LED照射装置内での基盤の搬送速度は、UV硬化性樹脂組成物の種類、光重合開始剤の種類、UV硬化性樹脂組成物の塗布量等により適宜決定すればよいが、1m/分以上100m/分以下が好ましく、2m/分以上80m/分以下がより好ましく、3m/分以上60m/分以下が更に好ましい。
【0037】
前記搬送ラインは、本実施形態のUV-LED照射装置を備えれば特に制限されるものではないが、前記UV-LED照射装置以外に、基材の搬送装置及び基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する装置のほか、乾燥装置、接着剤等の塗布装置及び加熱装置を必要に応じて適宜備えていてもよい。
【0038】
(基材)
本実施形態で使用される基材は、特に制限はなく、所望の性能に応じて適宜選択すればよく、取扱性を向上するため、紙基材、繊維基材、樹脂基材等が好ましく挙げられる。UV硬化性樹脂組成物を塗布できる材質であることが好ましい。基材は、単層であっても、積層体であってもよい。
【0039】
紙基材としては、例えばチタン紙、クラフト紙、リンター紙、樹脂含浸紙、薄葉紙、和紙等が挙げられる。繊維基材としては、例えば不織布、織布が挙げられ、例えばガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維で構成される繊維基材、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の各種合成樹脂の有機繊維で構成される繊維基材、またこれらの複合体等の基材が挙げられる。
【0040】
樹脂基材としては、セルロースアシレート;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを用いて基材を作製してもよい。
【0041】
基材は、他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
【0042】
基材の厚さは、特に制限はなく、所望の性能に応じて適宜選択すればよく、機械的物性の確保、取扱性を向上させるため、通常10μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上150μm以下、更に好ましくは30μm以上120μm以下である。また、基材として紙基材を用いる場合、取扱性を向上するため、その坪量は、通常20g/m2以上150g/m2以下、好ましくは30g/m2以上100g/m2以下である。
【0043】
基材は、搬送ラインに供給し、連続的に加工することができるため、ロール状のシートであることが好ましい。
【0044】
〔積層体の製造方法〕
本実施形態の積層体の製造方法は、基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、前記UV硬化性樹脂組成物を、前記の搬送ライン用UV-LED照射装置で硬化する工程と、を含む、積層体の製造方法であることを要する。
【0045】
<塗布する工程>
基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する工程は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式により行うことが好ましく、グラビア印刷法がより好ましい。
【0046】
(UV硬化性樹脂組成物)
本実施形態で用いられるUV硬化性樹脂組成物は、UV硬化性樹脂を含んでいれば特に限定されない。組成物としているが、1種のUV硬化性樹脂のみからなるものであってもよく、必要に応じて、2種以上のUV硬化性樹脂、重合開始剤及び溶剤等を含んでいてもよい。
【0047】
(重合開始剤)
前記の重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書参照)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書参照)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書参照)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書参照)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書参照)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書参照)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書参照)が含まれる。
【0048】
(溶剤)
溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
溶剤を用いる場合には、乾燥工程を更に行うことが好ましい。
【0049】
<硬化する工程>
前記硬化する工程は、搬送ライン用UV-LED照射装置を用いて、UV照射し、前記基材上に塗布したUV硬化性樹脂組成物を硬化すれば特に限定されるものではない。
硬化する工程では、前記UV-LED発光素子の前記基材側又は面発光ユニット側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側の表面との距離が60mm以下であると、UV光が基材上のUV硬化性樹脂組成物に均一に照射され、重合が進行するため好ましい。照射条件は前記したとおりである。
【0050】
本開示は、例えば、以下の[1]~[7]を提供する。
[1] 2以上のUV-LED発光素子又は2以上のUV-LED発光素子を備える2以上の面発光ユニットを備え、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが、下記の(1)~(3)を満たす、搬送ライン用UV-LED照射装置。
(1) 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットのピーク照度が、1.0mW/cm2以上である。
(2) 2以上のUV-LED発光素子又は2以上の前記面発光ユニットを含み、前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットが第1の方向に沿って配列した第1のUV-LED発光素子群を形成する。
(3) 前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合うUV-LED発光素子の間の、前記第1の方向における最長の距離又は前記第1のUV-LED発光素子群を形成する隣り合う面発光ユニットの間の、前記第1の方向における最長の距離が、30mm未満である。
[2] 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニットのピーク波長が、240nm以上370nm以下である、[1]に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置。
[3] [1]又は[2]に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置を含む、搬送ライン。
【0051】
[4] 前記搬送ラインにより搬送される基材の搬送方向である第2の方向と、前記第1の方向が略垂直である、[3]に記載の搬送ライン。
[5] 前記UV-LED発光素子の前記基材側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側又は前記面発光ユニット側の表面との距離が60mm以下である、[3]又は[4]に記載の搬送ライン。
[6] 基材上にUV硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、
前記UV硬化性樹脂組成物を、[1]又は[2]に記載の搬送ライン用UV-LED照射装置で硬化する工程と、を含む、積層体の製造方法。
[7] 前記UV-LED発光素子又は前記面発光ユニット側の前記基材側の表面と、前記基材のUV-LED発光素子側の表面との距離が、60mm以下である、[6]に記載の積層体の製造方法。
【実施例0052】
以下、本開示について、実施例及び比較例を参照して更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(評価及び観察方法)
【0053】
(1) 基材密着性
実施例及び比較例で得られた積層体のUV硬化性樹脂組成物の硬化物がある表面について、縦10マス、横10マスの合計100マスの碁盤目状にクロスカットした。カット間隔は1mmとした。カットの際は、基材の上部にまでカッターの刃が到達するようにクロスカットした。
クロスカットを施したサンプルの表面に、粘着テープ(ニチバン株式会社製、製品名「セロテープ(登録商標)」)を貼り付け、5回剥離試験を行い、剥離が生じていない場合に、表2では、基材密着性を〇と、剥離が生じた場合には×とした。〇は合格を意味し、×は不合格を意味する。
【0054】
(2) 耐スチールウール性(耐SW性)
実施例及び比較例で得られた積層体のUV硬化性樹脂組成物の硬化物がある表面に、#0000のスチールウールを押し当て、荷重500g/cm2で10往復擦った後、サンプルの裏面に黒色板を配置し、蛍光灯の照明下で、積層体のUV硬化性樹脂組成物の硬化物側から傷が視認できるか否かを目視で評価した。表2では、傷が視認できないものを〇と、傷が視認できた場合には×とした。〇は合格を意味し、×は不合格を意味する。
【0055】
(3) 鉛筆硬度
実施例及び比較例で得られた積層体を5cm×10cmの大きさに切断したサンプルを作製した。JIS K5600-5-4:1999に準拠して、荷重500g、速度1.4mm/秒の条件で、前記サンプルのUV硬化性樹脂組成物の硬化物の面の鉛筆硬度を測定した。
測定には、東洋精機製作所の鉛筆硬度試験機(品番:NP型鉛筆引掻塗膜硬度試験機)を用いた。メンディングテープ(スリーエム社、品番「810-3-18」)を用いて、カットしたサンプルの両端部を鉛筆硬度試験機の土台に貼り合わせた。5回の鉛筆硬度試験を行い、4回以上の傷等の外観異常が認められなかった際の硬度を、各サンプルの鉛筆硬度の値とした。例えば、2Hの鉛筆を用いて、5回の試験を行い、4回外観異常が生じなければ、その防眩性積層体の鉛筆硬度は2Hである。外観異常については、変色は含まず、傷及び凹みについて確認を行った。鉛筆硬度2H以上が合格レベルである。表2では、硬度2H以上を〇と、2H未満を×とした。〇は合格を意味し、×は不合格を意味する。
【0056】
(4) 反応率
実施例及び比較例で得られた積層体のUV硬化性樹脂組成物の硬化物がある表面について、硬化前と硬化後について、反射型FT-IRにより測定し、重合性基に存在する特有のピークの減少量により、反応率を算出した。具体的には、硬化後のUV硬化性樹脂組成物の硬化物の重合性基中の不飽和炭化水素基のC=C伸縮振動に対応する820~800cm-1のピーク強度をA、重合性基中のエステル基におけるC=O伸縮振動に対応する1780~1650cm-1のピーク強度をBとする。硬化前のUV硬化性樹脂組成物の重合性基中の不飽和炭化水素基のC=C伸縮振動に対応する820~800cm-1のピーク強度をA*、重合性基中のエステル基におけるC=O伸縮振動に対応する1780~1650cm-1のピーク強度をB*とする。反応率は、(1-(A/B)/(A*/B*))×100で計算される。
反応率は、高い方がUV硬化性樹脂組成物の硬化が進んでいることを意味し、20%以上であれば、実用に耐える積層体であると評価した。
【0057】
(5) ピーク照度及び積算露光量
ピーク照度及び積算露光量の測定は、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製、商品名:UIT-250)にセパレート型受光器として波長域220~310nmの場合は校正波長254nmであるUVD-S254(ウシオ電機株式会社製)を使用し、波長域310~390nmの場合は校正波長365nmであるUVD-S365(ウシオ電機株式会社製)を使用してピーク照度を測定した。
積算露光量は、以下実施例記載のUV照射時間10秒に得られたピーク照度を用いて、ピーク照度×10mJ/cm2として算出した。
紫外線照射時のピーク照度、積算露光量は、UV-LED発光素子の出力(%)を変化させることにより調整した。
【0058】
[実施例1~4及び比較例1~2]
厚さ80μmのトリアセチルセルロース樹脂フィルム(富士フイルム社製、商品名:TD80UL)を基材として用い、前記基材上に、下記のUV硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥(70℃、1分)した。乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みは5μmであった。基材のUV硬化性樹脂組成物を塗布した表面側に、
図5に図示した面発光ユニット11(ピーク波長:285nm)を備えるUV-LED照射装置により10秒間UV照射を行い、UV硬化性樹脂組成物を硬化して、積層体を製造した。
実施例1~4及び比較例1~2の製造に使用したUV-LED照射装置の、ピーク照度、面発光ユニット間の距離を表1に記載した。同一のUV-LED照射装置におけるすべての隣り合う面発光ユニット間の距離は、表1に記載したものとした。面発光ユニットの基材側の表面と、基材のUV硬化性樹脂組成物を塗布した表面との距離は、20mmとした。基材の搬送速度は3m/分とした。
【0059】
(UV硬化性樹脂組成物)
・ウレタンアクリレート(商品名「UV1700B」、三菱ケミカル社製、10官能) 60質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 40質量部
・有機粒子 3質量部
(球状ポリアクリル-スチレン共重合体、平均粒子径2.0μm、屈折率1.55)
・シリカ粒子 1質量部
(フュームドシリカ、日本アエロジル社製、平均一次粒子径:12nm)
・光重合開始剤 1質量部
(商品名「Omnirad184」、IGM Resins B.V.社)
・光重合開始剤 0.2部
(商品名「Omnirad907」、IGM Resins B.V.社)
・光重合開始剤 1.5部
(ESACUREONE、Lamberti社)
・シリコーン系レベリング剤 0.1部
(商品名:TSF4460、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)
・トルエン 100質量部
・イソプロピルアルコール 30質量部
・シクロヘキサノン 15質量部
【0060】
【0061】
実施例1~4及び比較例1~2で得られた積層体の反応率、基材密着性、耐SW性及び鉛筆硬度を表2に記載した。
【0062】
【0063】
実施例1~4で製造された積層体は、いずれも反応率は20%を超えており、UV照射が基材表面に均一に行われていることが分かった。また、実施例1~4で製造された積層体は、いずれも基材密着性、耐SW性及び鉛筆硬度が合格レベルであることが分かった。
実施例3、4及び比較例1はUV-LED発光素子間の距離を25mmとして、ピーク強度を変えたが、比較例1のようにピーク照度を1.0mW/cm2未満とすると、反応率が低下して、基材とUV硬化性樹脂組成物の硬化物との密着性が劣ることが分かった。
実施例4と比較例2は、ピーク強度を1.0mW/cm2とし、UV-LED発光素子間の距離を25mm又は30mmとした。比較例2のように30mm以上とするとUV照射が基材表面に均一に行うことができず、その結果として実施例4と比較して第1の方向の重合ムラが生じ、基材密着性及び耐SW性が劣ることが分かった。