(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060283
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】発達障害者支援コミュニケーションシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/20 20180101AFI20240424BHJP
【FI】
G16H10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167570
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】508268654
【氏名又は名称】株式会社イノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】子供とのコミュニケーションにより、発達の遅れを客観的・多面的に評価する発達障害者支援コミュニケーションシステム及びプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】被験者とのコミュニケーションにより発達障害を評価するアプリケーションがインストールされた管理サーバと、生体情報測定手段と接続された被験者情報端末と、管理者情報端末と、がネットワークを介して接続され、管理サーバは、被験者情報端末の表示画面に、キャラクターからの口語調表現の質問画面を表示させ、所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段と、被験者の回答である音声をテキストデータに変換させる音声テキストデータ生成手段と、生体情報・回答同期化グラフを作成させ、及び/又は、前記質問ごとに所定の時間内に被験者の回答の有無を表示した質問・回答一覧表を作成させる図表作成手段と、を備える発達障害者支援コミュニケーションシステムにより課題解決できた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者とのコミュニケーションにより客観的・多面的に発達遅れを評価するアプリケーションがインストールされた管理サーバと、前記被験者の緊張度に応じて変化する生体情報を継続的にリアルタイムで測定する生体情報測定手段と接続され、音声を音声信号に変換する音声変換手段と動画を動画信号に変換する動画変換手段とを有し、被験者用アプリケーションがインストールされた被験者情報端末と、管理者用アプリケーションがインストールされた管理者情報端末と、障害者支援従事者用アプリケーションがインストールされた障害者支援従事者情報端末と、がネットワークを介して接続された発達障害者支援コミュニケーションシステムであって、
前記管理者情報端末は、
前記被験者情報端末ごとに交付する被験者ID及びパスワードを含む認証情報を発行する認証情報発行手段と、前記発行した認証情報を記憶する記憶手段と、前記認証情報を前記管理サーバに送信する送受信手段とを有し、
前記管理サーバは、
前記被験者情報端末から認証情報を受信し、記憶されている前記認証情報と一致するかを判断し、一致する場合にログインを認める認証手段と、
前記被験者情報端末の表示画面に、キャラクターと、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクターからの口語調表現の予め設定された質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段と、
前記キャラクター質問画面ごとに、予め設定された前記質問に対する前記被験者の回答である音声をテキストデータに変換させる音声テキストデータ生成手段と、
前記生体情報測定手段からの生体情報を取得する生体情報取得手段と、
記憶手段に記憶された前記テキストデータに関連付けた状態で所定の表示領域に回答がされた時系列で表示されたアイコンと前記生体情報の推移を同一時間軸で表示した生体情報・回答同期化グラフを作成させ、及び/又は、前記質問ごとの前記被験者の回答状況を表示した質問・回答状況一覧表を作成させる図表作成手段と、
前記アイコンと関連付けられた前記テキストデータの吹き出しの表示又は非表示を、前記アイコンのクリック又はタッチにより制御可能な吹き出し表示制御手段と、
少なくとも前記認証情報、前記テキストデータ、前記生体情報、並びに、前記生体情報・回答同期化グラフ及び/又は質問・回答一覧表を記憶する記憶手段と、
前記管理者情報端末又は前記障害者支援従事者情報端末の表示画面に、前記生体情報・回答同期化グラフ、及び/又は、前記質問・回答一覧表を送信する送受信手段と、を備えることを特徴とする発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項2】
前記管理サーバは、前記記憶手段に予め記憶させておいた、前記質問に対する被験者の回答として会話が成立する単語群に、同じ前記質問に対する前記被験者の回答が含まれているか否かを判定させる単語判定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項3】
前記管理サーバがクラウドサーバであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項4】
前記生体情報測定手段が心拍センサー、脳波センサー又は発汗センサーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項5】
前記管理サーバは、さらに、
相談者の被験者情報端末から送信された、被験者の育て方に係る相談内容と複数の相談希望日を含む相談申込情報を、送受信手段で受信し記憶手段に相談申込情報として記憶する相談受付手段と、
前記相談申込情報をもとに、少なくとも相談内容と複数の相談希望日時を含む助言者募集案内を作成する助言者募集案内作成手段と、
前記助言者募集案内を予め登録されている助言登録者情報端末に送信する送受信手段と、
前記助言者募集案内を受信した前記助言登録者情報端末から、前記相談希望日時の中から助言可能日時を表示した助言者情報を受信すると、前記助言者情報をもとに助言者の助言可能日時を一覧情報にする助言者日程一覧作成手段と、
前記相談者の被験者情報端末から、前記助言者の助言可能日時の一覧情報をもとに決定された相談日時情報を受信すると、相談開催日時及びURL情報を含むコミュニティ情報を作成し、前記決定された相談日時が含まれている前記助言者情報を送信した前記助言登録者情報端末に、前記コミュニティ情報を送受信手段により送信する開催連絡手段と、
前記相談開催日時にかつ前記URL情報でアクセスしてきた、前記相談者の被験者情報端末と、前記助言者の助言登録者情報端末との間のコミュニケーションを、チャット又は音声を用いた会話により実現するためのネットワーク上のコミュニティルームを運営するコミュニティルーム運営手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項6】
前記管理サーバは、さらに、
興味あるキーワードと生きがいを感じる活動分野との学習データを用いた、興味あるキーワードの特徴から生きがいを感じる活動分野を予測する機械学習により生成された興味・活動分野モデルを記憶する興味・活動分野モデル記憶手段と、
異なる活動分野ごとにそれぞれ関連づけられる興味のキーワードを引き出すための、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる複数の口語調表現の質問を作成する質問作成手段と、
前記被験者情報端末の表示画面に、キャラクターと、前記被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクターからの口語調表現の前記質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段と、
前記被験者情報端末から前記複数の質問に対する前記被験者の複数の回答の音声情報を、ネットワークを介して受信する送受信手段と、
受信した前記音声情報に対応するテキストデータを生成する音声テキストデータ生成手段と、
前記テキストデータの文字列からキーワードと前記キーワードの出現頻度を検出するキーワード抽出手段と、
前記興味・活動分野モデルに基づいて、抽出した興味を表す前記キーワードの出現頻度の高さの順に、前記被験者が生きがいを感じることが期待できる活動分野を複数予測する生きがい活動分野予測手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム。
【請求項7】
前記管理サーバのコンピュータを、請求項1又は6に記載の発達障害者支援コミュニケーション
システムの各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発達障害なのか発達遅れなのかが評価し難い場合に、特に幼い子供の場合に子供とのコミュニケーションにより、発達の遅れか発達障害かを評価でき、保護者に発達障害の子供の育て方の助言ができ、発達障害の子供の潜在能力を活かせる活動分野を予測する発達障害者支援コミュニケーションシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発達障害は、本人の努力不足や親の育て方の問題ではなく、生まれつきの脳の発達の偏りによる症状で、一般的に低年齢の発達期において発現するが、発達障害には自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害、チック症、吃音などがあり、身体障害に比較して第三者には気づきにくい障害である。そのため、子供の日常の行動や適応状況から発達障害の水準を評価することは極めて困難であり、発達障害の子供であっても、特に親は自分の子供は発達障害ではないと認識するケースがあり、発達障害であることを子供も親も知らないと、発達障害のある子供を健常者の子供だけの学級に入らせると、その子供は生きづらさを感じ、その子供が授業についていくことができず、学級で孤独になり、適切な対応が遅れると登校拒否やひきこもりになったり、うつ病などの二次障害を発症するという問題があった。
【0003】
特許文献1には、自閉症児を含む発達障害者に必要な複数の種類別の事柄を学習するための複数の教材(スケジュール学習用教材、ワーク学習用教材、手順学習用教材、目標達成学習用教材、ルール学習用教材、コミュニケーション学習用教材)を、携帯可能な1つのバインダに配設したものにより、1つのツールのみで発達障害者に必要な複数の事柄を学習することができる発達障害者用ブック型教材ツールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、支援対象者が相手の気持ちを汲み取る感情育成システムと、支援対象者が支援専門家らとチャットを行うチャットシステムと、複数の福祉協力者と支援対象者とのマッチングを行うマッチングシステムと、キャラクター支援動画を支援対象者に配信する動画配信システムとを備え、支援対象者が携帯端末により感情育成システム、チャットシステム、マッチングシステム又は動画配信システムを繰り返し利用することにより、支援対象者の感情が育ち、支援専門家とのメッセージ交換、福祉協力者との交流又はキャラクター支援動画の視聴を通じてコミュニケーションの仕方を養うことで、支援対象者が最終的に自立し、社会参加できるように促す社会適応支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6654755号公報
【特許文献2】特許第6579537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は特許文献2の技術は、いずれも発達障害者であることを家族にも認識された発達障害者に対して、ワーク学習用教材やコミュニケーションの仕方の教材などあらかじめ用意した支援教材を使用した支援プログラムであり、その支援プログラムの対象者であるか否かを知ることはできない、例えば低年齢の子供の発達が遅れているのか否かの評価を客観的にすることはできないという問題があった。また、発達障害の子供の育て方に悩む保護者への助言が得られないという問題もあり、さらに発達障害の子供が将来生きがいを感じる活動分野を予測できないという問題もあった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、子供とのコミュニケーションにより、発達障害か発達遅れかを客観的・多面的に評価でき、保護者に発達障害の子供の育て方の助言ができ、発達障害の子供の潜在能力を活かせる活動分野を予測する発達障害者支援コミュニケーションシステム及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、被験者とのコミュニケーションにより客観的・多面的に発達遅れを評価するアプリケーションがインストールされた管理サーバと、前記被験者の緊張度に応じて変化する生体情報を継続的にリアルタイムで測定する生体情報測定手段と接続され、音声を音声信号に変換する音声変換手段と動画を動画信号に変換する動画変換手段とを有し、被験者用アプリケーションがインストールされた被験者情報端末と、管理者用アプリケーションがインストールされた管理者情報端末と、障害者支援従事者用アプリケーションがインストールされた障害者支援従事者情報端末と、がネットワークを介して接続された発達障害者支援コミュニケーションシステムであって、前記管理者情報端末は、前記被験者情報端末ごとに交付する被験者ID及びパスワードを含む認証情報を発行する認証情報発行手段と、前記発行した認証情報を記憶する記憶手段と、前記認証情報を前記管理サーバに送信する送受信手段とを有し、前記管理サーバは、前記被験者情報端末から認証情報を受信し、記憶されている前記認証情報と一致するかを判断し、一致する場合にログインを認める認証手段と、前記被験者情報端末の表示画面に、キャラクターと、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクターからの口語調表現の予め設定された質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段と、前記キャラクター質問画面ごとに、予め設定された前記質問に対する前記被験者の回答である音声をテキストデータに変換させる音声テキストデータ生成手段と、前記生体情報測定手段からの生体情報を取得する生体情報取得手段と、記憶手段に記憶された前記テキストデータに関連付けた状態で所定の表示領域に回答がされた時系列で表示されたアイコンと前記生体情報の推移を同一時間軸で表示した生体情報・回答同期化グラフを作成させ、及び/又は、前記質問ごとの前記被験者の回答状況を表示した質問・回答状況一覧表を作成させる図表作成手段と、前記アイコンと関連付けられた前記テキストデータの吹き出しの表示又は非表示を、前記アイコンのクリック又はタッチにより制御可能な吹き出し表示制御手段と、少なくとも前記認証情報、前記テキストデータ、前記生体情報、並びに、前記生体情報・回答同期化グラフ及び/又は質問・回答一覧表を記憶する記憶手段と、前記管理者情報端末又は前記障害者支援従事者情報端末の表示画面に、前記生体情報・回答同期化グラフ、及び/又は、前記質問・回答一覧表を送信する送受信手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、請求項1において、前記管理サーバは、前記記憶手段に予め記憶させておいた、前記質問に対する被験者の回答として会話が成立する単語群に、同じ前記質問に対する前記被験者の回答が含まれているか否かを判定させる単語判定手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、請求項1又は2において、前記管理サーバがクラウドサーバであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、請求項1又は2において、前記生体情報測定手段が心拍センサー、脳波センサー又は発汗センサーであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、請求項1において、前記管理サーバは、さらに、相談者の被験者情報端末から送信された、被験者の育て方に係る相談内容と複数の相談希望日時を含む相談申込情報を、送受信手段で受信し記憶手段に相談申込情報として記憶する相談受付手段と、前記相談申込情報をもとに、少なくとも相談内容と複数の相談希望日時を含む助言者募集案内を作成する助言者募集案内作成手段と、前記助言者募集案内を予め登録されている助言登録者情報端末に送信する送受信手段と、前記助言者募集案内を受信した前記助言登録者情報端末から、前記相談希望日時の中から助言可能日時を表示した助言者情報を受信すると、前記助言者情報をもとに助言者の助言可能日時を一覧情報にする助言者日程一覧作成手段と、前記相談者の被験者情報端末から、前記助言者の助言可能日時の一覧情報をもとに決定された相談日時情報を受信すると、相談開催日時及びURL情報を含むコミュニティ情報を作成し、前記決定された相談日時が含まれている前記助言者情報を送信した前記助言登録者情報端末に、前記コミュニティ情報を送受信手段により送信する開催連絡手段と、前記相談開催日時にかつ前記URL情報でアクセスしてきた、前記相談者の被験者情報端末と、前記助言者の助言登録者情報端末との間のコミュニケーションを、チャット又は音声を用いた会話により実現するための、ネットワーク上のコミュニティルームを運営するコミュニティルーム運営手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、請求項1において、前記管理サーバは、さらに、興味あるキーワードと生きがいを感じる活動分野との学習データを用いた、興味あるキーワードの特徴から生きがいを感じる活動分野を予測する機械学習により生成された興味・活動分野モデルを記憶する興味・活動分野モデル記憶手段と、異なる活動分野ごとにそれぞれ関連づけられる興味のキーワードを引き出すための、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる複数の口語調表現の質問を作成する質問作成手段と、前記被験者情報端末の表示画面に、キャラクターと、前記被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクターからの口語調表現の前記質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段と、前記被験者情報端末から前記複数の質問に対する前記被験者の複数の回答の音声情報を、ネットワークを介して受信する送受信手段と、受信した前記音声情報に対応するテキストデータを生成する音声テキストデータ生成手段と、前記テキストデータの文字列からキーワードと前記キーワードの出現頻度を検出するキーワード抽出手段と、前記興味・活動分野モデルに基づいて、抽出した興味を表す前記キーワードの出現頻度の高さの順に、前記被験者が生きがいを感じることが期待できる活動分野を複数予測する生きがい活動分野予測手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載のプログラムは、前記管理サーバのコンピュータを、請求項1又は6に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムの各手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1~4、7に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステム又はプログラムは、被験者の会話時の緊張度や会話の成立性を評価することによって、発達障害の症状を客観的に評価することができ、この客観的な評価により親も納得して適切な進路を子供に進ませることができ、子供に二次障害を生じさせないという効果を奏する。
【0016】
請求項5に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、発達障害者の保護者間で相互に相談し合うことができ、保護者の発達障害者に対する育成の知識を深めることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項6に記載の発達障害者支援コミュニケーションシステムは、発達障害者の隠れた能力を見出し、発達障害者を適切に育成していく支援ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステムのコミュニケーションに係るネットワークの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステムのコミュニティに係るネットワークの構成を示す説明図である。
【
図3】被験者情報端末の表示画面に表示される事例の説明図である。
【
図4】被験者の生体情報と回答との時間軸を同期させた生体情報・回答同期化グラフの事例の説明図である。
【
図5】質問と被験者の回答との一覧を示す質問・回答一覧表の事例の説明図である。
【
図6】質問と被験者の回答との一覧を示す質問・回答一覧表の事例の説明図である。
【
図7】質問と被験者の回答の有無と心拍数との一覧を示す質問・回答一覧表の事例の説明図である。
【
図8】質問と被験者の回答との一覧を示す質問・回答一覧表の事例の説明図である。
【
図9】管理サーバ、管理者情報端末及び障害者支援従事者情報端末の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発達障害は生まれ育った脳の機能の特徴であり、一般的には治療で治すことは困難であると言われています。子供が小さいころには他の子供と比較して例えば言葉の発達が遅れているときに、親は子供が発達障害であることに気づかず、親のしつけが甘いのではと思って子供を強く指導したり、いずれ追いつくだろうと思って健常者ばかりの小学校に通わせます。すると、もし子供が発達障害であれば発達障害は生まれつきのものであるので、子供はストレスが溜り、抑うつ等の精神症状が二次障害として現れるようになることがあります。発達障害の子供には、発達障害の子供が日常生活でのストレスを軽減させ、その子供のもっている能力を活かすように発達障害の特性に合わせた環境を整備することが求められています。
【0020】
子供が小さいころには他の子供と比較して発達が遅れているのでは思ったときに、その子供が発達障害であるのか、発達遅れであるのかを適切に評価することが、子供の成長にとって重要ですが、発達障害か発達遅れかの評価は極めて難しいことが知られています。また、万一、子供が発達障害であることを知ったときにどのような環境にすればよいかを親は経験がないのでとまどうという問題が生じています。
【0021】
発明者は、子供の行動が、発達障害によるものなのか、又は、発達遅れによるものなのかがよくわからない段階において、子供が診察を受けているという感覚にならずに、子供が発達障害であるのか、発達遅れであるのかを評価でき、発達障害の子供の育て方にとまどう保護者への助言ができ、発達障害の子供の潜在能力を活かせる活動分野を予測できるシステムを提供しようと本発明を想到するに至った。
【0022】
発明者は、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害、チック症、吃音等の発達障害の中で、落ち着きがない等の症状の注意欠如・多動性障害、及び、思わず起こってしまう素早い身体の動き等の症状のチック症は被験者の行動を見て評価するべきとし、本発明では、緊張が生じやすい人との話をするのではなくキャラクターとお話をする感覚で症状の評価に参加してもらえるようにし、環境になじむのに時間がかかったり、言葉の発達が遅かったり、偏食が強いとか、自分の興味あることには熱中するとか等の症状の自閉症スペクトラム障害、読むことのみや計算することのみ等の特定の領域の学習が難しい症状の学習障害、並びに、なかなか話しだせない等の症状の吃音について、発達障害の兆候の有無を評価できるシステムを想到した。
【0023】
また、発達障害の子供には、発達障害の子供が生活しやすくするようにするために、発達障害の特質に合わせ、周囲の人に配慮してもらう環境をつくることが必要であります。その環境をつくるのは発達障害の子供の親が中心になってもらう必要がありますが、親は自分が体験したことのない、初めての対応をすることになり発達障害の症状に合わせた環境にするための知識を十分には有していない場合があります。このような親の知識向上を図る必要から、親同士の情報交換の場の提供も発明者は想到した。
【0024】
また、発達障害の子供は、好奇心が強かったり集中力が高かったりする分野に優れた活動をすることが期待できるので、好奇心が強かったり集中力が高い分野、言い換えると興味があったり好きな分野を引き出すコミュニケーション方法の提供を発明者は想到した。
【0025】
本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステム1は、被験者が発達障害をもっているのかどうか、発達障害のある被験者の発達障害としてのレベルはどうか等を、コミュニケーションを通して行うシステムである。さらに、発達障害のある被験者の保護者同士のコミュニティを形成し前記被験者の育成のヒントを提供するシステムである。
【0026】
本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステム1は、さらに、被験者がこれからの成長段階や大人になったときに生きがいを感じて活動する分野がどこかを、前記被験者の興味がある分野、すなわち、スポーツならばバスケットボール、テニス等、芸術・文芸ならば絵画、彫刻、書道、作家、マンガ家、ユーチューバー、プログラマー、研究者、教師、Eースポーツプレイヤー、料理研究家等の分野を探ることができるシステムである。
【0027】
本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステム1には、発達障害か発達遅れかの評価の対象者である被験者、前記被験者の保護者、メンタル面の専門家である作業療法士、児童指導員、社会福祉士又は精神保健福祉士などの障害者支援従事者、発達障害者支援コミュニケーションシステム1の運営を行う管理者が参加して運用するシステムである。なお、障害者支援従事者と管理者が兼ねる場合もある。
【0028】
本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステム1は、
図1、
図9に示すように、被験者とのコミュニケーションにより客観的・多面的に発達遅れを評価するアプリケーションがインストールされた管理サーバ3と、前記被験者の緊張度に応じて変化する生体情報を継続的にリアルタイムで測定する生体情報測定手段10と接続され、音声を音声信号に変換する音声変換手段14と動画を動画信号に変換する動画変換手段13とを有し、被験者用アプリケーションがインストールされた被験者情報端末4と、管理者用アプリケーションがインストールされた管理者情報端末3と、障害者支援従事者用アプリケーションがインストールされた障害者支援従事者情報端末5と、がネットワーク6を介して接続された発達障害者支援コミュニケーションシステム1であって、前記管理者情報端末3は、前記被験者情報端末4ごとに交付する被験者ID及びパスワードを含む認証情報を発行する認証情報発行手段21と、前記発行した認証情報を記憶する記憶手段22と、前記認証情報を前記管理サーバ2に送信する送受信手段23とを有し、前記管理サーバ2は、前記被験者情報端末4から認証情報を受信し、記憶されている前記認証情報と一致するかを判断し、一致する場合にログインを認める認証手段35と、前記被験者情報端末4の表示画面11に、キャラクターと、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクターからの口語調表現の予め設定された質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段33と、前記キャラクター質問画面ごとに、予め設定された前記質問に対する前記被験者の回答である音声をテキストデータに変換させる音声テキストデータ生成手段34と、前記生体情報測定手段10からの生体情報を取得する生体情報取得手段36と、記憶手段32に記憶された前記テキストデータに関連付けた状態で所定の表示領域に回答がされた時系列で表示されたアイコン15と前記生体情報の推移を同一時間軸で表示した生体情報・回答同期化グラフ17を作成させ、及び/又は、前記質問ごとの前記被験者の回答状況を表示した質問・回答状況一覧表18a~18dを作成させる図表作成手段37と、前記アイコン15と関連付けられた前記テキストデータの吹き出し16の表示又は非表示を、前記アイコン15のクリック又はタッチにより制御可能な吹き出し表示制御手段38と、少なくとも前記認証情報、前記テキストデータ、前記生体情報、並びに、前記生体情報・回答同期化グラフ17及び/又は質問・回答一覧表18a~18dを記憶する記憶手段32と、前記管理者情報端末3の表示画面11、又は、前記障害者支援従事者情報端末5の表示画面61に、前記生体情報・回答同期化グラフ17、及び/又は、前記質問・回答一覧表18a~18dを送信する送受信手段31と、を備える。
【0029】
また、前記管理サーバ2は、単語判定手段39を備えており、前記単語判定手段39は、前記記憶手段32に予め記憶させておいた、前記質問に対する被験者の回答として会話が成立する単語群に、同じ前記質問に対する前記被験者の回答が含まれているか否かを判定させる。
【0030】
本発明の発達障害者支援コミュニケーションシステム1は、被験者とのコミュニケーションにより客観的・多面的に発達遅れを評価するアプリケーションがインストールされた管理サーバ2と、前記被験者の緊張度に応じて変化する生体情報を継続的にリアルタイムで測定する生体情報測定手段10と接続され、被験者用アプリケーションがインストールされた被験者情報端末4と、管理者用アプリケーションがインストールされた管理者情報端末3と、障害者支援従事者用アプリケーションがインストールされた障害者支援従事者情報端末5と、がネットワーク6を介して接続されている。
【0031】
前記被験者としては、親として発達障害なのか発達遅れなのかが気になる子供や、健常者と少し異なる行為が発達障害に起因しているかどうかが気になる子供又は大人等を対象としている。
【0032】
管理者が被験者の保護者と連絡をとった後に、管理者は前記管理者情報端末3を操作する。前記管理者情報端末3は、管理者用アプリケーションがインストールされ、制御手段20、前記被験者情報端末4ごとに交付する被験者ID及びパスワードを含む認証情報を発行する認証情報発行手段21と、前記発行した認証情報を記憶する記憶手段22と、前記認証情報を前記管理サーバ2に送信する送受信手段23とを備えている。また、図示はしていないが、例えばパソコンのような一般的な情報端末が備えているカメラ等の撮影手段13a、動画を動画信号に変換する動画変換手段13、及び、音声を音声信号に変換するマイクロフォン等の音声変換手段14を備えている。前記制御手段20が、前記管理者情報端末3内の各手段を制御する。
【0033】
前記管理者情報端末3の制御手段20は、前記被験者情報端末4からのコミュニケーションを希望する申請メールを送受信手段23で受信すると、前記認証情報発行手段21に前記被験者情報端末4ごとに交付する被験者ID及びパスワードを含む認証情報を発行させ、前記認証情報を前記記憶手段22に記憶させるとともに、前記送受信手段23に前記認証情報を、申請した前記被験者情報端末4及び前記管理サーバ2に送信させる。
【0034】
前記障害者支援従事者情報端末5は、障害者支援従事者用アプリケーションがインストールされ、制御手段60、表示画面61と、前記管理サーバ2から被験者とのコミュニケーション状況に係る情報を受信する送受信手段63と、種々の情報を表示画面面61に表示する表示手段62と、を備えている。また、図示はしていないが、例えばパソコンのような一般的な情報端末が備えているカメラ等の撮影手段13a、動画を動画信号に変換する動画変換手段13、及び、音声を音声信号に変換するマイクロフォン等の音声変換手段14を備えている。前記制御手段60が、前記障害者支援従事者情報端末6内の各手段を制御する。
【0035】
前記被験者情報端末4は、被験者用アプリケーションがインストールされ、制御手段70、送受信手段71、種々の情報を表示画面11に表示する表示手段72、被験者の顔の表情を撮影するカメラ等の撮影手段13a、動画を動画信号に変換する動画変換手段13、及び、被験者の音声を音声信号に変換する、例えばマイクロフォン等の音声変換手段14と、備え、前記制御手段70が、前記被験者情報端末4内の各手段を制御する。そして、前記被験者情報端末4は、生体情報取得手段10と接続されている。
【0036】
前記管理サーバ2は、ネットワーク上のクラウドサーバ、前記管理者情報端末3と同じ施設内、又は、前記管理者情報端末3とは異なる施設内に設置されて専用サーバ又はレンタルサーバ等があり、いずれでもよい。管理者、被験者、障害者支援従事者がそれぞれ離れている場合は前記クラウドサーバが適している。
【0037】
前記管理サーバ2は、客観的・多面的に発達遅れを評価するアプリケーションがインストールされており、制御手段30、送受信手段31、記憶手段32、キャラクター質問画面表示手段33、音声テキストデータ生成手段34、認証手段35、生体情報取得手段36、図表作成手段37、吹き出し表示制御手段38、単語判定手段39、相談受付手段41、助言者募集案内作成手段42、助言者日程一覧作成手段43、開催連絡手段44、コミュニティルーム運営手段45、興味・活動分野モデル記憶手段51、質問作成手段52、キーワード抽出手段53、及び、生きがい活動分野予測手段54を備えている。前記制御手段30が、前記管理サーバ2内の各手段を制御する。
【0038】
前記認証手段35は、前記被験者情報端末4の送受信手段71から認証情報を受信すると、記憶手段32に記憶されている前記認証情報と一致するかを判断し、一致する場合にログインを認める。認証情報が一致したときはそのまま次に進み、認証情報が一致しないときは「認証情報が一致しません」等の参加不可のお知らせを前記被験者情報端末4の送受信手段71に送受信手段31から送信する。
【0039】
前記キャラクター質問画面表示手段33は、
図3に示すように、前記被験者情報端末4の表示画面11に、キャラクター7と、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクター7からの口語調表現の予め設定された質問を表示手段72により表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問を表示する表示画面11に切り替える。
【0040】
例えば、
図3に示すように、表示画面11に子供のキャラクター7が「わたしはあおいろがすき。あなたはなにいろがすき?」というように口頭で質問をする。このときに同時に「好きな色を教えてね」という文字列のコメントも表示する。質問は口頭なので被験者が忘れたり、意味が理解できなかったときのために、口頭での質問を補完するために、口頭による質問と同じ内容で文字列にした質問を表示する。これにより、被験者に何を答えるかについて正しく気付かせることができる。
【0041】
そして、前記質問を発してから、又は、前記表示画面11に表示してから所定の時間を経過すると、回答の有無にかかわらず次に設定している質問を行う。被験者から所定の時間内に回答があると、前記被験者は緊張が解けている、又は、発達障害や発達遅れの傾向はないのではないかと解釈ができ、前記被験者から所定の時間内に回答がないと、前記被験者はまだ緊張状態にある、又は、発達障害や発達遅れの傾向があるのではないかと解釈ができる。
【0042】
次に、被験者が口頭で回答するので、その回答の音声を音声信号に変換する、例えばマイクロフォン等の音声変換手段14により変換した音声信号を送受信手段71により前記管理サーバ2に送信された後に、前記音声テキストデータ生成手段34が、前記質問に対する前記被験者の回答である音声信号をテキストデータに変換する。前記キャラクター7による1つずつの質問とその質問に対応した回答とが、テキストデータに変換されて、制御手段30により前記記憶手段32に記憶される。
【0043】
テキストデータに変換させることにより、質問に対する回答を関連させて記憶をすることができ、発達障害や発達遅れに関する分析をすることができるようになる。
【0044】
次に、被験者情報端末4に備えられているカメラ等の撮影手段13aは、被験者の顔の表情を撮影しており、動画変換手段13によりカメラで撮影した動画をリアルタイムで所定の動画信号に変換している。前記変換された動画信号は被験者情報端末4の送受信手段71から前記管理サーバ3の送受信手段31及び前記障害者支援従事者情報端末5の送受信手段63に送信される。
【0045】
前記障害者支援従事者情報端末5に送信された動画信号は、前記障害者支援従事者情報端末5の表示画面61に表示手段62により、被験者の顔の表情の動画をリアルタイムで表示する。
【0046】
前記障害者支援従事者は、表示画面61に表示された被験者の顔の表情が、被験者が表示画面11に表示された質問をするキャラクターから目をそむける行動を頻繁にすることを観察すると、被験者は自閉症スペクトラム障害の懸念があるという評価ができる。
【0047】
前記生体情報取得手段36は、生体情報測定手段10から被験者の生体情報を取得する手段であり、例えば、生体情報測定手段10としては心拍センサー、脳波センサー又は発汗センサーなどがある。いずれであっても、被験者の緊張度を把握可能な測定方法であればいずれでもよい。
【0048】
前記心拍センサーの場合は、被験者の一定時間内に心臓が拍動する回数である心拍数を測定し、緊張しているときは高くなり平常になると下がり落ち着く心拍数で緊張レベルを評価し、前記脳波センサーの場合は、被験者のα波、β波及びθ波の脳波の波形を測定し、緊張しているときにはβ波の波形が強く表れ、リラックスしてくるとα波の波形が強く表れることにより緊張レベルを評価し、前記発汗センサーの場合は、精神的興奮によって汗腺から汗が分泌されるので寒すぎない部屋や暑すぎない部屋で被験者の汗の量を測定することにより緊張レベルを評価する。
【0049】
前記図表作成手段37は、例えば
図4に示すように、前記記憶手段32に記憶された前記テキストデータに関連付けた状態で、生体情報・回答同期化グラフ17の中の所定の表示領域に表示されるアイコン15と、前記生体情報の時系列での変化グラフとを同一時間軸で表示した生体情報・回答同期化グラフ17を作成させ、及び/又は、前記質問ごとに所定の時間内に前記被験者の回答の有無、被験者の心拍数、被験者の回答等を表示した質問・回答一覧表18a~18dを作成させる。
【0050】
前記生体情報・回答同期化グラフ17は、
図4に示すように、被験者が回答したときの時間軸の位置に表示した複数のアイコン15と、生体情報として心拍数の推移の折れ線グラフを表示したものである。心拍数の推移と回答したタイミングを同一の時間軸で表示しているのでどんな回答のときにどのレベルの緊張であったかを知ることができる。
【0051】
前記アイコン15は、前記記憶手段32に記憶されている前記テキストデータに関連付けており、前記吹き出し表示制御手段38により、前記アイコン15を1回クリックすると前記テキストデータが記載された吹き出し16を前記アイコン15のところから表示させ、次に前記アイコン15を1回クリックすると前記吹き出し16を非表示にしたり、あるいは、前記アイコン15をタッチしている時間のみ前記吹き出し16を前記アイコン15のところから表示させ、前記アイコン15からアンタッチ状態にすると前記吹き出し16を非表示にするなどの吹き出し16の表示又は非表示の制御をする。
【0052】
図4に示すような前記生体情報・回答同期化グラフ17は、被験者の回答の前記テキストデータと、前記被験者の心拍数等の前記生体情報とを時間軸を同期させたグラフであるので、被験者がコミュニケーションを開始して、どのくらい経過後に緊張が和らぐかの個人個人の心理状態を把握することができる。
【0053】
例えば、
図4に示すような前記生体情報・回答同期化グラフ17において、アイコン15をクリックして吹き出し16を読むと好きだと回答がされ、前記アイコン15で回答があったことを示すときと同じ時間の心拍数が高くなる傾向がみられる被験者は好きなことには気持ちが高揚するタイプの傾向があるので何か高揚を高める支援が好ましいとか、前記アイコン15で回答があったことを示すときと同じ時間の心拍数にあまり変化が見られない被験者はいつも落ち着いているタイプの傾向があるので落ち着くような環境にする支援が好ましいとか、というように被験者の個人個人の心理状態の特性を活かした支援をすることができる。
【0054】
次に、前記質問・回答状況一覧表には、
図5、
図6又は
図8に示すように、特定の被験者1名について評価したいときには、特定の被験者がどんな質問に対してどんな回答をしたかが一覧でわかるように作成した個人別の前記質問・回答状況一覧表18a、18b又は18dがあり、
図7に示すように、被験者の集団について傾向を把握したいときは例えば質問に対する回答の有無及び回答時の心拍数を一覧にした集団を捉えた前記質問・回答状況一覧表18cがある。
【0055】
また、
図7示すように、名前についての質問1から色についての質問4までの間の心拍数の推移は、測定者NO.1の女子のように質問を続けていくと心拍数が徐々に下がる傾向の被験者や、測定者NO.4の女子のように質問を続けていっても心拍数がほとんど変わらない被験者もおられる。回答がない無言の状況が所定の時間続いたら被験者がまだリラックスしていないという推定ができ、あまりにも長いときは発達障害者の兆候があるのではないかという推定ができる。
【0056】
図7から、男子・女子でみると、男子は最初の質問から回答しているが女子は質問の最初のころは緊張しやすいのか無回答が多いことがわかる。また、
図7から、男子は6歳の子を除くと平均で3つ以上回答していることがわかる。このように被験者一人ひとりのみならず集団として傾向を把握することができる。
【0057】
また、
図5に示すように、例えば、「あなたは何色が好き?」という質問に対して、被験者が「あなたは何色が好き。」とオウム返しを複数回する場合は、被験者は自閉症スペクトラム障害の懸念があるという評価ができる。
【0058】
また、
図6に示すように、例えば、「あなたは何色が好き?」という質問に対して、被験者が「あお、あお、あお、あお」と同じ回答を繰り返す場合は、被験者は自閉症スペクトラム障害の懸念があるという評価ができる。
【0059】
また、前記単語判定手段39は、前記記憶手段32に予め記憶させておいた、前記質問に対する被験者の回答として会話が成立する単語群に、同じ前記質問に対する前記被験者の回答が含まれているか否かを判定させる。前記回答した単語が会話が成立する単語群に含まれている判定のときは健常者であると評価でき、前記回答した単語が会話が成立する単語群に含まれていないという判定のときは発達障害者の傾向があるのではないかという評価をする。
【0060】
次に、前記記憶手段32は、少なくとも前記認証情報、前記テキストデータ、前記生体情報、並びに、前記生体情報・回答同期化グラフ17及び/又は質問・回答一覧表18a~18dを記憶する。
【0061】
前記送受信手段31は、前記管理者情報端末3の表示画面11に、及び、前記障害者支援従事者情報端末5の表示画面61に、前記生体情報・回答同期化グラフ17、及び/又は、前記質問・回答一覧表18a~18dを送信する。
【0062】
発達障害の症状に該当するか否かの評価は、被験者とキャラクターとの会話をもとに、例えば、
図4に示すような前記生体情報・回答同期化グラフ17、及び/又は、
図5~
図8に示すような前記質問・回答一覧表18a~18dを作成して、1つずつのグラフや一覧表からの評価で判断せずに、できるだけ多くの異なる質問に対しての回答から総合的に評価するので、評価の適切性が保たれる。よって、管理者又は障害者支援従事者は、被験者と会って面接しなくても被験者とは遠隔の場所にいても、被験者が話しやすいキャラクターとの会話の中から、発達障害の懸念があるかの評価をすることができる。
【0063】
本発明によって発達障害が懸念させるという評価になったときは、専門的支援機関の支援を受け、発達障害の子供をその子供の特性に応じた環境をつくり、子供のストレスが生じにくい環境での生活にすることができる。
【0064】
次に、発明者は、発達障害の子供をもつ親である保護者間で発達障害の症状に応じてどのような環境をつくればいいかについてのお互いの知識を深める機能を加えた発達障害者支援コミュニケーションシステム1を想到した。
【0065】
前記発達障害者支援コミュニケーションシステム1として、前記管理サーバ2は、さらに、
図9に示すように、相談者の被験者情報端末4から送信された、被験者の育て方に係る相談内容と複数の相談希望日時を含む相談申込情報を、送受信手段31で受信し記憶手段32に相談申込情報として記憶する相談受付手段41と、前記相談申込情報をもとに、少なくとも相談内容と複数の相談希望日時を含む助言者募集案内を作成する助言者募集案内作成手段42と、前記助言者募集案内を予め登録されている助言登録者情報端末8に送信する送受信手段31と、前記助言者募集案内を受信した前記助言登録者情報端末8から、前記相談希望日時の中から助言可能日時を表示した助言者情報を受信すると、前記助言者情報をもとに助言者の助言可能日時を一覧情報にする助言者日程一覧作成手段43と、前記相談者の被験者情報端末4から、前記助言者の助言可能日時の一覧情報をもとに決定された相談日時情報を受信すると、相談開催日時及びURL情報を含むコミュニティ情報を作成し、前記決定された相談日時が含まれている前記助言者情報を送信した前記助言登録者情報端末8に、前記コミュニティ情報を送受信手段31により送信する開催連絡手段44と、前記相談開催日時にかつ前記URL情報でアクセスしてきた、前記相談者の被験者情報端末4と、前記助言者の助言登録者情報端末8との間のコミュニケーションを、チャット又は音声を用いた会話により実現するための、ネットワーク上のコミュニティルームを運営するコミュニティルーム運営手段45と、を備える。
【0066】
前記相談受付手段41は、相談者の被験者情報端末4の送受信手段71から送信された、被験者の育て方に係る相談内容と複数の相談希望日時を含む相談申込情報を、送受信手段31で受信し記憶手段32に相談申込情報として記憶する。前記相談内容としては、例えば「自閉症スペクトラム障害の幼稚園年長の子供にはどのような環境で育てればよいか」とか「読み書きの学習障害の子供の育て方でのポイントを教えてほしい」等の相談内容と、例えば「11月1日の9時から16時の間の1時間、11月3日の9時から17時までの間の1時間」という複数の相談希望日時を表示した相談申込情報を受付後に相談申込情報として記憶する。
【0067】
次に、前記助言者募集案内作成手段42は、前記相談申込情報をもとに、少なくとも相談内容と複数の相談希望日時を含む助言者募集案内を作成する。前記助言者募集案内には、相談内容について助言を求めたい方がおられるので、対応可能な方は助言をお願いしたい旨を表示する。
【0068】
次に、前記送受信手段31により、前記助言者募集案内を予め登録されている助言登録者情報端末8に送信する。助言登録者情報端末8は、例えば、
図1、
図2又は
図7に示すように、発達障害の子供を育てておられる方の被験者情報端末4b~4e、発達障害の子供を育てられた方の被験者情報端末4b~4e、又は、メンタル面の専門家である作業療法士、児童指導員、社会福祉士又は精神保健福祉士などの障害者支援従事者の障害者支援従事者情報端末5のうちから、発達障害の子供の子育てに関する相談に対して助言してもよいとか、同じ悩みの方とコミュニケーションをとりたいと事前に登録された方の情報端末である。よって、前記助言登録者情報端末8は、相談に対して、助言したり同じ悩みの共有をしたり等のコミュニケーションをしてもよいと、前記記憶手段32に登録されて記憶されている被験者情報端末4b~4e、又は、障害者支援従事者情報端末5である。
【0069】
前記助言を相談者が受けると発達障害の我が子に適した育て方を把握することができ、同じ悩みについて保護者同士でコミュニケーションをすると発達障害の我が子の子育てについての精神的なストレスを和らげることが期待できる。
【0070】
前記登録された方々の関心がある分野がグループ分けできる場合には、相談項目別に助言登録者情報端末8をグループごとに分けていてもよい。この場合には、例えば、「自閉症スペクトラム障害の幼稚園年長の子供にはどのような環境で育てればよいか」の相談には「自閉症スペクトラム障害グループ」の助言登録者情報端末8に送信し、「読み書きの学習障害の子供の育て方でのポイントを教えてほしい」の相談には「学習障害グループ」の助言登録者情報端末8に送信するというように設定されてもよい。
【0071】
次に、前記助言者日程一覧作成手段43は、前記助言者募集案内を受信した前記助言登録者情報端末8から、前記相談希望日時の中から助言可能日時を表示した助言者情報を受信すると、前記助言者情報をもとに助言者の助言可能日時を一覧情報にする。
【0072】
これは、相談者と助言者との日程上のマッチィング可能日時を調整するためであり、先に相談者側が相談したい日時を複数提示する。
【0073】
次に、前記開催連絡手段44は、前記相談者の被験者情報端末4から、前記助言者の助言可能日時の一覧情報をもとに決定された相談日時情報を受信すると、相談開催日時及びURL情報を含むコミュニティ情報を作成し、前記決定された相談日時が含まれている前記助言者情報を送信した前記助言登録者情報端末8に、前記コミュニティ情報を送受信手段31により送信する。
【0074】
これにより、相談者と助言者とのマッチングできる日時が決定し、相談する日時とコミュイケーションをする会議案内が参加者全員に伝達される。
【0075】
一方、前記決定された相談日時が含まれていない前記助言者情報を送信した前記助言登録者情報
端末8に対しては、お断りメール文を作成し、前記お断りメール文を送受信手段31により送信する。
【0076】
次に、前記コミュニティルーム運営手段45は、前記相談開催日時にかつ前記URL情報でアクセスしてきた、前記相談者の被験者情報端末4と、前記助言者の助言登録者情報端末8との間のコミュニケーションを、チャット又は音声を用いた会話により実現するための、ネットワーク上のコミュニティルームを運営する。
【0077】
前記コミュニティルームの運営をする形態は、インターネット上でコミュニケーションをする形態であって、文字によるチャット機能を備えたコミュニティルームの形態、相談者や助言者等のコミュニティルームに入室した方々にそれぞれ対応するキャラクターであるアバターの画像での会話を処理するコミュニティルームの形態、又は、ZOOM等の相談者や助言者等の各自の顔の画像を表示しての会話を処理するコミュニティルームの形態がある。
【0078】
前記コミュニティルームに入室すると入室した保護者同士で1対1で、又は、複数人の間で種々のコミュニケーションをチャットやアバターでの会話等ですることができる。そして、発達障害の被験者の保護者として、育てた経験のない、又は、育てた経験が浅い保護者が、育てた経験が深い保護者から適切な助言を得ることができ、初めて発達障害の懸念のあると知ったときに経験の深い保護者の助言を納得のいくまで得ることができる。これにより、発達障害の子供の子育ての経験の浅い保護者はうまくいった育て方を学び発達障害の子供である被験者を適切に育てることができるようになる。
【0079】
前記管理サーバ2は、さらに、
図9に示すように、興味あるキーワードと生きがいを感じる活動分野との学習データを用いた、興味あるキーワードの特徴から生きがいを感じる活動分野を予測する機械学習により生成された興味・活動分野モデルを記憶する興味・活動分野モデル記憶手段51と、異なる活動分野ごとにそれぞれ関連づけられる興味のキーワードを引き出すための、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる複数の口語調表現の質問を作成する質問作成手段52と、前記被験者情報端末4の表示画面11に、キャラクター7と、前記被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクター7からの口語調表現の前記質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替えるキャラクター質問画面表示手段33と、前記被験者情報端末4から前記複数の質問に対する前記被験者の複数の回答の音声情報を、ネットワーク6を介して受信する送受信手段31と、受信した前記音声情報に対応するテキストデータを生成する音声テキストデータ生成手段34と、前記テキストデータの文字列からキーワードと前記キーワードの出現頻度を検出するキーワード抽出手段53と、前記興味・活動分野モデルに基づいて、抽出した興味を表す前記キーワードの出現頻度の高さの順に、前記被験者が生きがいを感じることが期待できる活動分野を複数予測する生きがい活動分野予測手段54と、を備える。
【0080】
前記興味・活動分野モデル記憶手段51は、興味あるキーワードと生きがいを感じる活動分野との学習データを用いて、興味あるキーワードから生きがいを感じる活動分野を予測する機械学習により生成された興味・活動分野モデルを記憶手段32に記憶する。
【0081】
前記学習データとしては、例えば、発達障害の方で大人になって生きがいを感じて活躍されているあらゆる活動分野の方々に子供の時に興味を持ったことを聞き、その興味あるキーワードと現在の活動分野とを学習データとする。さらには、第一線で活躍しておられる健常者の大人の活動分野の情報と、前記大人が子供の時に興味があったことを調査した興味のキーワード情報とを学習データとする。興味あることには熱中しやすく、子供の時から興味あることを見出せば生きがいを感じる活動分野で早くから活躍できる。
【0082】
そして、前記学習データをもとに機械学習させて、興味あるキーワードの特徴から、例えば出現頻度が多いキーワードから、生きがいを感じる活動分野を予測できる興味・活動分野モデルを生成する。
【0083】
前記質問作成手段52は、異なる前記活動分野ごとにそれぞれ対応するキーワードを把握するための複数の質問を作成する。被験者がどこに興味があるかはわからないので、種々の分野に関する質問をして被験者の興味を表すキーワードを探る質問を作成する。そして、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる複数の口語調表現の質問を作成する。
【0084】
前記キャラクター質問画面表示手段33は、前記被験者情報端末4の表示画面11に、キャラクター7と、被験者が少なくとも単語レベルで回答できる前記キャラクター7からの口語調表現の前記質問を表示させ、前記表示した前記キャラクター質問画面を所定の時間経過後に次のキャラクター質問画面に切り替える。質問に対して無言はあまり興味はないと評価できる。
【0085】
前記送受信手段31は、前記被験者情報端末4から前記複数の質問に対する前記被験者の複数の回答の音声情報を、ネットワーク6を介して受信する。
【0086】
前記音声テキストデータ生成手段34は、受信した前記音声情報に対応するテキストデータを生成する。これにより、
図4に示すように、前記生体情報・回答同期化グラフ17にアイコン15のクリックで吹き出し16に回答を文字列で表示でき、
図5に示すように質問・回答一覧表18aや、
図6に示すように質問・回答状況一覧表18bに質問と回答をセットで、文字列でわかりやすく表示できる。これにより、発達障害の評価をしやすくできる。
【0087】
前記キーワード抽出手段53は、興味あるキーワードの特徴を把握することができ、前記テキストデータの文字列からキーワードの出現頻度を検出し偏りのある前記キーワードを少なくとも1つ以上抽出する。多方面からの質問に対して興味ある分野についてはその分野に関する言語が多くなる傾向が一般的にあるので、キーワードの出現頻度で興味ある分野を把握することができる。
【0088】
前記生きがい活動分野予測手段54は、前記興味・活動分野モデルに基づいて、抽出した興味を表す前記キーワードの特徴として出現頻度の高さの順に、前記被験者が生きがいを感じることが期待できる活動分野を複数予測する。
【0089】
例えば、
図8に示す質問・回答状況一覧表18dの一覧表から、興味・好き・楽しいという前向きなキーワードを、前記興味・活動分野モデルをもとに活動分野を予測すると、「かけっこが楽しい」、「ボール遊びが楽しい」、「大きいボールが好き」、「蹴るのが好き」、「みんなと遊ぶのは楽しい」の5つのキーワードは「脚を使ったボール遊びを集団でする運動」に関連すると判断して活動分野「サッカー」を予測し、「本を読むのが好き」、「工作が好き」、「車は好き」の3つのキーワードは「知的にモノづくりを行うこと」に関連すると判断して活動分野「技術者」を予測する。この場合、出現頻度は、多い順に「サッカー」、「技術者」であるので、生きがいを感じる活動分野は第一にサッカー分野、第二に技術者分野であると予測する。
【0090】
プログラムは、前記管理サーバ2のコンピュータを、発達障害者支援コミュニケーションシステム1の各手段として機能させる。
【符号の説明】
【0091】
1 発達障害者支援コミュニケーションシステム
2 管理サーバ
3 管理者情報端末
4 被験者情報端末
5 障害者支援従事者情報端末
6 ネットワーク
7 キャラクター
8 助言登録者情報端末
10 生体情報測定手段
11 表示画面
13 動画変換手段
13a 撮影手段
14 音声変換手段
15 アイコン
16 吹き出し
17 生体情報・回答同期化グラフ
18a 質問・回答状況一覧表
18b 質問・回答状況一覧表
18c 質問・回答状況一覧表
18d 質問・回答状況一覧表
20 制御手段
21 認証情報発行手段
22 記憶手段
23 送受信手段
30 制御手段
31 送受信手段
32 記憶手段
33 キャラクター質問画面表示手段
34 音声テキストデータ生成手段
35 認証手段
36 生体情報取得手段
37 図表作成手段
38 吹き出し表示制御手段
39 単語判定手段
41 相談受付手段
42 助言者募集案内作成手段
43 助言者日程一覧作成手段
44 開催連絡手段
45 コミュニティルーム運営手段
51 興味・活動分野モデル記憶手段
52 質問作成手段
53 キーワード抽出手段
54 生きがい活動分野予測手段
60 制御手段
61 表示画面
62 表示手段
63 送受信手段
70 制御手段
71 送受信手段
72 表示手段