(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060288
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】二重床
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20240424BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
E04F15/02 A
E04F15/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167577
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】松原 道彦
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA25
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25X
2E220GB01X
2E220GB34X
2E220GB37Z
2E220GB45X
2E220GB46X
(57)【要約】
【課題】耐荷重性能を高めることが可能となる、二重床を提供すること。
【解決手段】二重床1は、設置面Sに設けられるものであって、下側下地材20と、下側下地材20の上面を覆うように設けられる上側下地材30であり、床仕上げ材40と接着可能な上側下地材30と、を有する本体部10と、設置面Sと本体部10との間に設けられる支持部50であり、本体部10を支持する支持部50と、を備え、上側下地材30を、鋼材で構成し、鋼材は、防錆処理が施された鋼板である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設けられる二重床であって、
下側下地材と、前記下側下地材の上面を覆うように設けられる上側下地材であり、床仕上げ材と接着可能な上側下地材と、を有する本体部と、
前記設置面と前記本体部との間に設けられる支持部であり、前記本体部を支持する支持部と、を備え、
前記上側下地材を、鋼材で構成した、
二重床。
【請求項2】
前記鋼材は、防錆処理が施された鋼板である、
請求項1に記載の二重床。
【請求項3】
前記本体部は、前記上側下地材の上面を覆うように設けられる前記床仕上げ材を備え、
前記床仕上げ材を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成した、
請求項1又は2に記載の二重床。
【請求項4】
前記上側下地材と前記床仕上げ材とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤である、
請求項3に記載の二重床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療施設等の室内施設において、機器の配線を外部に露出しないように収納可能な二重床が知られている。このような二重床としては、例えば、床スラブ上に配置された複数の支持脚と、支持脚上に設けられた床材とを備え、この床材は、木質系材料からなる床下地材と、床下地材の上面に設けられ、且つ合板からなる捨板と、捨板の上面に設けられ、且つフローリング材からなる床仕上げ材とを備える二重床が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の二重床においては、上述したように、捨板が合板からなるので、例えば、医療機器等の繰り返しの移動に伴って捨板が破壊することにより、床仕上げ材に膨れ又は剥がれが生じやすくなるため、当該二重床の耐荷重性能を高めることが難しくなるという問題があった。よって、二重床の耐荷重性能を高める観点からは、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐荷重性能を高めることが可能となる、二重床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の二重床は、設置面に設けられる二重床であって、下側下地材と、前記下側下地材の上面を覆うように設けられる上側下地材であり、床仕上げ材と接着可能な上側下地材と、を有する本体部と、前記設置面と前記本体部との間に設けられる支持部であり、前記本体部を支持する支持部と、を備え、前記上側下地材を、鋼材で構成した。
【0007】
請求項2に記載の二重床は、請求項1に記載の二重床において、前記鋼材は、防錆処理が施された鋼板である。
【0008】
請求項3に記載の二重床は、請求項1又は2に記載の二重床において、前記本体部は、前記上側下地材の上面を覆うように設けられる前記床仕上げ材を備え、前記床仕上げ材を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成した。
【0009】
請求項4に記載の二重床は、請求項3に記載の二重床において、前記上側下地材と前記床仕上げ材とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の二重床によれば、下側下地材と上側下地材とを有する本体部と、設置面と本体部との間に設けられる支持部と、を備え、上側下地材を、鋼材で構成したので、従来技術(合板からなる捨板を備える二重床の技術)に比べて、二重床が移動荷重を繰り返し受けても、上側下地材が破壊することを回避でき、二重床の耐荷重性能を高めることが可能となる。また、二重床の帯電防止性を高めることができ、二重床の使用性を向上させることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の二重床によれば、鋼材は、防錆処理が施された鋼板であるので、上側下地材の防錆性を高めることができ、上側下地材を介して二重床の内部に水又は湿気が流入することを回避しやすくなる。
【0012】
請求項3に記載の二重床によれば、本体部は、上側下地材の上面を覆うように設けられる床仕上げ材を備え、床仕上げ材を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成したので、ポリ塩化ビニル樹脂以外の材質に比べて、床仕上げ材の帯電防止性を高めることができ、二重床の使用性を一層向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の二重床によれば、上側下地材と床仕上げ材とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤であるので、エポキシ系接着剤以外の接着剤に比べて、上側下地材と床仕上げ材とを比較的強固に接続でき、二重床の耐荷重性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る二重床の概要を示す斜視図である。
【
図4】二重床の変形例を示す図であって、
図3に対応する領域を示す図である。
【
図5】耐荷重性能確認試験で用いられた二重床の構成の詳細を示す図である。
【
図6】耐荷重性能確認試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る二重床の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、設置面に設けられる二重床に関する。
【0017】
ここで、「設置面」とは、二重床が設置される面を意味する。この設置面は、例えば、建物の床面、及び建物の基礎面等を含む概念であるが、実施の形態では、建物の床面として説明する。
【0018】
また、「建物」の具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、公共施設(一例として、病院施設、研究施設等)、商業施設、オフィスビル、アパートやマンションの如き集合住宅等を含む概念であるが、実施の形態では、病院施設として説明する。
【0019】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0020】
(構成)
最初に、実施の形態に係る二重床の構成について説明する。
【0021】
以下の説明では、
図1のX方向を二重床の左右方向(-X方向を二重床の左方向、+X方向を二重床の右方向)、
図1のY方向を二重床の前後方向(+Y方向を二重床の前方向、-Y方向を二重床の後方向)、
図1のZ方向を二重床の上下方向(+Z方向を二重床の上方向、-Z方向を二重床の下方向)と称する。
【0022】
二重床1は、
図1に示すように、設置面S(具体的には、建物の床面)に少なくとも1つ以上設けられ、概略的に、本体部10及び支持部50を備えている。
【0023】
なお、二重床1に関する特記しない構成については、従来と同様であるものとして説明を省略する。
【0024】
(構成-本体部)
本体部10は、二重床1の基本構造体である。この本体部10は、
図1、
図2に示すように、設置面Sよりも上方に設けられ、下側下地材20、上側下地材30、及び床仕上げ材40を備えている。
【0025】
(構成-本体部-下側下地材)
下側下地材20は、本体部10の基本構造体の一部である。この下側下地材20は、例えば公知の略積層状の下地材等を用いて構成されている。具体的には、
図2に示すように、第1下側下地材21、第2下側下地材22、及び第3下側下地材23を積層して構成されている。
【0026】
このうち、第1下側下地材21は、例えば公知のバーティクルボード等を用いて構成されており、略板状体にて形成されている。
【0027】
また、第2下側下地材22は、例えば公知のラーチ合板等を用いて構成されており、略板状体にて形成され、
図2に示すように、第1下側下地材21よりも上方に設けられている。
【0028】
また、第3下側下地材23は、例えば公知のラワン合板等を用いて構成されており、略板状体にて形成され、
図2に示すように、第2下側下地材22よりも上方に設けられている。
【0029】
また、下側下地材20の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では、以下の通りに設定している。
【0030】
すなわち、下側下地材20の平面形状については、略矩形状に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略矩形状以外の多角形状(一例として、略三角形状等)、略円形状、又は略楕円形状にて設定してもよい。
【0031】
また、下側下地材20の左右方向の長さについては、500mmから700mm程度に設定している。ただし、これに限らず、例えば、500mm未満に設定してもよく、又は700mmを上回るように設定してもよい(一例として、900mmから1850mm程度に設定してもよい)。
【0032】
また、下側下地材20の前後方向の長さについては、500mmから700mm程度に設定している。ただし、これに限らず、例えば、500mm未満に設定してもよく、又は700mmを上回るように設定してもよい(一例として、900mmから1850mm程度に設定してもよい)。
【0033】
また、下側下地材20の上下方向の長さについては、30mmから40mm程度に設定している。より詳細には、第1下側下地材21=20mm程度に設定し、第2下側下地材22=12mm程度に設定し、及び第3下側下地材23=6mm程度に設定している(つまり、下側下地材20を構成する下地材(第1下側下地材21、第2下側下地材22、及び第3下側下地材23)は、下方側に向かうにつれて上下方向の長さを長く設定している)。
【0034】
ただし、これに限らず、例えば、30mm未満に設定してもよく、又は40mmを上回るように設定してもよい。また、下側下地材20を構成する下地材は、上方側に向かうにつれて上下方向の長さを長く設定してもよい。
【0035】
(構成-本体部-上側下地材)
上側下地材30は、本体部10の基本構造体の他の一部であると共に、床仕上げ材40と接着可能なものである。この上側下地材30は、略板状体にて形成されており、
図2に示すように、下側下地材20の上面を覆うように設けられている。
【0036】
また、上側下地材30の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では、以下の通りに設定している。
【0037】
すなわち、上側下地材30の平面形状については、下側下地材20の平面形状と同一に設定している。
【0038】
また、上側下地材30の左右方向の長さについては、下側下地材20の左右方向の長さと同一に設定しており、上側下地材30の前後方向の長さについては、下側下地材20の前後方向の長さと同一に設定している。
【0039】
また、上側下地材30の上下方向の長さについては、下側下地材20の上下方向の長さよりも短く設定しており、例えば、3mmから4mm程度に設定してもよい。
【0040】
また、上側下地材30の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、上側下地材30は、鋼材で構成されている。具体的には、防錆処理が施された鋼板(例えば、溶融亜鉛合金メッキ鋼板等)で構成されている。
【0041】
このような構成により、鋼材以外の材質に比べて、二重床1が移動荷重を繰り返し受けても、上側下地材30が破壊することを回避しやすくなると共に、二重床1の帯電防止性を高めることができる。また、上側下地材30の防錆性を高めることができ、上側下地材30を介して二重床1の内部に水又は湿気が流入することを回避しやすくなる。
【0042】
ただし、これに限らず、例えば、上側下地材30は、溶融亜鉛合金メッキ鋼板以外の鋼板(一例として、メッキ処理の如き表面処理が施されていない鋼材等)で構成されてもよい。
【0043】
(構成-本体部-床仕上げ材)
床仕上げ材40は、本体部10の基本構造体の他の一部であって、本体部10の意匠性を高めるためのものである。この床仕上げ材40は、略板状体にて形成されており、
図2に示すように、上側下地材30の上面を覆うように設けられている。
【0044】
また、床仕上げ材40の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では、以下の通りに設定している。
【0045】
すなわち、
図1に示すように、床仕上げ材40の平面形状については、上側下地材30の平面形状と同一に設定している。
【0046】
また、床仕上げ材40の左右方向の長さについては、上側下地材30の左右方向の長さと同一に設定しており、床仕上げ材40の前後方向の長さについては、上側下地材30の前後方向の長さと同一に設定している。
【0047】
また、床仕上げ材40の上下方向の長さについては、上側下地材30の上下方向の長さよりも短く設定しており、例えば、0.6mmから3.2mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、上側下地材30の上下方向の長さ以上に設定してもよい。
【0048】
また、床仕上げ材40の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、床仕上げ材40は、ポリ塩化ビニル樹脂で構成されている。具体的には、後述する試験結果に基づいて、他のタイル材と溶接可能であり、且つ目地部を有しないビニルタイル材であって、ポリ塩化ビニル樹脂製のビニルタイル材で構成されている。
【0049】
このような構成により、ポリ塩化ビニル樹脂以外の材質に比べて、床仕上げ材40の帯電防止性を高めることができ、二重床1の使用性を一層向上させることができる。また、上記ビニルタイル材以外のタイル材に比べて、床仕上げ材40の帯電防止性及び設置性を高めながら、二重床1の意匠性を維持できる。
【0050】
ただし、これに限らず、例えば、床仕上げ材40は、ビニルタイル材以外の材質(一例として、公知のフロア材(例えば、厚さ2mmから3mm程度の耐動荷重性及び帯電防止性を有する単層塩化ビニルシート、又は複層塩化ビニル床シート))を用いて構成されてもよい。
【0051】
(構成-本体部-その他の構成)
また、下側下地材20、上側下地材30、及び床仕上げ材40の接続方法については任意であるが、実施の形態では以下の通りに接続している。
【0052】
すなわち、下側下地材20と上側下地材30とを、左右方向及び前後方向において相互に間隔を隔てて配置される複数の固定具(例えば、ビス等)によって接続している。また、床仕上げ材40を上側下地材30に対して接着剤によって接続している。
【0053】
このような接続方法により、二重床1の意匠性を確保しながら、下側下地材20、上側下地材30、及び床仕上げ材40を強固に接続することができる。
【0054】
また、上記接着剤の具体的な種類については任意であるが、実施の形態では、後述する試験結果に基づいて、エポキシ系接着剤が用いられている。
【0055】
これにより、エポキシ系接着剤以外の接着剤に比べて、上側下地材30と床仕上げ材40とを比較的強固に接続でき、二重床1の耐荷重性能を高めることができる。
【0056】
ただし、これに限らず、例えば、ウレタン系接着剤、又は床仕上げ材40専用の接着剤等が用いられてもよい。
【0057】
(構成-支持部)
支持部50は、本体部10を支持するものである。この支持部50は、
図2に示すように、設置面Sと本体部10との間に設けられており、複数の支持部材50aを備えている。
【0058】
(構成-支持部-支持部材)
支持部材50aは、支持部50の基本構造体である。この支持部材50aは、例えば公知の支持部材を用いて構成されており、具体的には、
図2に示すように、支持部材本体51、本体側接続部52、及び台座部53を備えている。
【0059】
(構成-支持部-支持部材-支持部材本体)
支持部材本体51は、支持部材50aの基本構造体である。この支持部材本体51は、例えば長尺な鋼製の中空状(又は中実状)の柱状体で形成されており、
図2に示すように、当該支持部材本体51の長手方向が上下方向に略沿うように設けられている。
【0060】
(構成-支持部-支持部材-本体側接続部)
本体側接続部52は、支持部材50aと本体部10とを接続するためのものである。この本体側接続部52は、例えば鋼製の板状体で形成されており、
図2に示すように、本体部10と支持部材本体51との相互間において、略水平に配置され、本体部10及び支持部材本体51の各々に対して固定具、嵌合構造、又は溶接等によって接続されている。
【0061】
(構成-支持部-支持部材-台座部)
台座部53は、支持部材50aを設置面Sに載置するためのものである。この台座部53は、例えば公知の台座部材(一例として、ゴム等の弾性材料からなる弾性台座部材)等を用いて構成されており、
図2に示すように、支持部材本体51と設置面Sとの相互間に設けられ、支持部材本体51に対して固定具、嵌合構造、又は溶接等によって接続されている。
【0062】
(構成-支持部-その他の構成)
また、支持部50の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、二重床1に設計荷重が載荷された状態(以下、「載荷状態」と称する)において、本体部10の撓み量が閾値未満となるように、支持部50が構成されている。
【0063】
具体的には、
図3に示すように、平面視において、本体部10の各角部に支持部材50aがそれぞれ配置されると共に、本体部10の角部よりも内側の部分(
図3では、本体部10の中央部分)に支持部材50aが少なくとも1つ以上配置されるように、支持部50が構成されている。
【0064】
このような構成により、載荷状態における本体部10の撓み量を閾値未満に設定しやすくなることから、二重床1の耐荷重性能を高めることができる。
【0065】
ただし、これに限らず、例えば、
図4に示すように、平面視において、本体部10の各角部のみに支持部材50aがそれぞれ配置されるように、支持部50が構成されてもよい。
【0066】
このような二重床1により、従来技術(合板からなる捨板を備える二重床の技術)に比べて、二重床1が移動荷重を繰り返し受けても、上側下地材30が破壊することを回避でき、二重床1の耐荷重性能を高めることが可能となる。また、二重床1の帯電防止性を高めることができ、二重床1の使用性を向上させることが可能となる。
【0067】
(二重床の設置方法)
続いて、二重床1の設置方法について説明する。
【0068】
実施の形態に係る二重床1の設置方法は、第1形成工程、第2形成工程、及び設置工程を含んでいる。
【0069】
(二重床の設置方法-第1形成工程)
最初に、第1形成工程について説明する。
【0070】
第1形成工程は、本体部10を形成する工程である。
【0071】
具体的には、まず、工場又は二重床1が設置される現場(以下、「設置現場」と称する)において、下側下地材20と上側下地材30とを、左右方向及び前後方向において相互に間隔を隔てて配置される複数の固定具によって接続する。次いで、床仕上げ材40を上側下地材30に対して接着剤によって接続することにより、本体部10を形成する。
【0072】
(二重床の設置方法-第2形成工程)
次に、第2形成工程について説明する。
【0073】
第2形成工程は、第1形成工程の後に、二重床1を形成する工程である。
【0074】
具体的には、工場又は設置現場において、支持部50の本体側接続部52を本体部10(具体的には、下側下地材20)に対して固定具、嵌合構造、又は溶接等によって接続することにより、二重床1を形成する。
【0075】
(二重床の設置方法-設置工程)
続いて、設置工程について説明する。
【0076】
設置工程は、第2形成工程の後に、二重床1を設置面Sに設置する工程である。
【0077】
具体的には、まず、工場又は設置現場から設置面Sまで、公知の搬送手段(例えば、車両等)を用いて(又は、人力で)二重床1を搬送する。次いで、二重床1の台座部53が設置面Sに載置されるように、二重床1を配置することにより、二重床1を設置面Sに設置する。
【0078】
このような設置方法により、二重床1を設置面Sに簡易に設置することができる。
【0079】
(試験結果)
続いて、本件出願人が行った各種の試験結果について説明する。ここでは、各種の二重床に関する耐荷重性能確認試験について説明する。
【0080】
(試験結果-試験の概要)
最初に、耐荷重性能確認試験の概要について説明する。
【0081】
「耐荷重性能確認試験」とは、各種の二重床が各種の移動荷重を繰り返し受けた際の耐荷重性能を確認するための試験である。
【0082】
(試験結果-試験の概要-試験方法)
この耐荷重性能確認試験の試験方法については、公知の耐キャスター試験(例えば、JIS A 1454 高分子系張り床材試験方法等)を参照して、以下の通りに実施した。
【0083】
すなわち、各種の二重床を載台に設置した状態で、キャスターを介して当該二重床の上面に対して所望の荷重を載荷させながら、キャスターがスウィブル軌跡(具体的には、キャスターの車輪が二重床の上面の6カ所で反転するような曲線状の軌跡)を描くように、載台を直角方向及び平行方向に作動させる。そして、所定サイクルごとに上記二重床の状態を目視観察及び打音検査し、上記二重床に異常(例えば、床仕上げ材40の剥離や膨れが生じること等)が発生するまで、上記載荷を繰り返す。
【0084】
また、上記所望の荷重については、第1荷重及び第2荷重に大別されており、第1荷重=2000Nに設定され、第2荷重=1000N(手術台を想定した荷重)に設定された。そして、第1荷重及び第2荷重の各々に関する耐荷重性能確認試験が、各種の二重床に対してそれぞれ行われた。以下では、耐荷重性能確認試験のうち、第1荷重に関する耐荷重性能確認試験を「第1耐荷重性能確認試験」と称し、第2荷重に関する耐荷重性能確認試験を「第2耐荷重性能確認試験」と称する。
【0085】
(試験結果-試験の概要-各種の二重床の構成の詳細)
耐荷重性能確認試験に用いられる各種の二重床(具体的には、支持部を除いた二重床)は、
図5に示すように、10種類に区分けされる(以下では、「第1二重床」から「第10二重床」と称する)。
【0086】
このうち、第1二重床は、下側下地材=本願発明に係る下側下地材20(以下、「本願下側下地材」と称する)、上側下地材=ラワン合板(具体的には、厚さが9mmのラワン合板)、床仕上げ材=なし、上側下地材と床仕上げ材とを接着する接着剤(以下、「接着剤」と称する)=なし、で構成された二重床である。
【0087】
また、第2二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=ラワン合板、床仕上げ材=フロア材、接着剤=エポキシ系接着剤、で構成された二重床である。
【0088】
また、第3二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=ラワン合板、床仕上げ材=フロア材、接着剤=ウレタン系接着剤、で構成された二重床である。
【0089】
また、第4二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=ラワン合板、床仕上げ材=他のタイル材と溶接可能であり、且つ目地部を有しないビニルタイル材であって、ポリ塩化ビニル樹脂製のビニルタイル材(以下、「ビニルタイル材」と称する)、接着剤=エポキシ系接着剤、で構成された二重床である。
【0090】
また、第5二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=ラワン合板、床仕上げ材=ビニルタイル材、接着剤=床仕上げ材専用の接着剤(以下、「専用接着剤」と称する)、で構成された二重床である。
【0091】
また、第6二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=溶融亜鉛合金メッキ鋼板(具体的には、厚さが3.2mmの溶融亜鉛合金メッキ鋼板)、床仕上げ材=フロア材(公知のフロア材)、接着剤=エポキシ系接着剤、で構成された二重床である。
【0092】
また、第7二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=溶融亜鉛合金メッキ鋼板、床仕上げ材=フロア材、接着剤=ウレタン系接着剤、で構成された二重床である。
【0093】
また、第8二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=溶融亜鉛合金メッキ鋼板、床仕上げ材=ビニルタイル材、接着剤=エポキシ系接着剤、で構成された二重床である。
【0094】
また、第9二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=溶融亜鉛合金メッキ鋼板、床仕上げ材=ビニルタイル材、接着剤=ウレタン系接着剤、で構成された二重床である。
【0095】
また、第10二重床は、下側下地材=本願下側下地材、上側下地材=溶融亜鉛合金メッキ鋼板、床仕上げ材=ビニルタイル材、接着剤=専用接着剤、で構成された二重床である。
【0096】
(試験結果-耐荷重性能確認試験の試験結果の詳細)
続いて、耐荷重性能確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0097】
まず、上側下地材の材質の違いについては、
図6に示すように、第6二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第2二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多く、第8二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第4二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。また、第6二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第2二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が若干少ないものの、第8二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第4二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。
【0098】
このことから、上側下地材がラワン合板であるよりも溶融亜鉛合金メッキ鋼板である方が、二重床の耐荷重性能を高められることが確認された。
【0099】
また、床仕上げ材の材質の違いについては、
図6に示すように、第8二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第6二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が若干少なかったものの、第8二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第6二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。また、第9二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第7二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多く、第9二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第7二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。
【0100】
このことから、床仕上げ材がフロア材であるよりもビニルタイル材である方が、二重床の耐荷重性能を高められることが確認された。
【0101】
また、接着剤の材質の違いについては、
図6に示すように、第6二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第7二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。また、第8二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果は、第9二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が少ないものの、第10二重床の第1耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。また、第6二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第7二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。また、第8二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果は、第9二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果、及び第10二重床の第2耐荷重性能確認試験の試験結果よりも回数が多かった。
【0102】
このことから、接着剤がウレタン系接着剤及び専用接着剤であるよりもエポキシ系接着剤である方が、二重床の耐荷重性能を高められることが確認された。
【0103】
以上のような試験結果より、上側下地材30を鋼材で構成することの有効性、床仕上げ材40をタイル材で構成することの有効性、及び接着剤がエポキシ系接着剤であることの有効性が、それぞれ確認できた。
【0104】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、下側下地材20と上側下地材30とを有する本体部10と、設置面Sと本体部10との間に設けられる支持部50と、を備え、上側下地材30を、鋼材で構成したので、従来技術(合板からなる捨板を備える二重床の技術)に比べて、二重床1が移動荷重を繰り返し受けても、上側下地材30が破壊することを回避でき、二重床1の耐荷重性能を高めることが可能となる。また、二重床1の帯電防止性を高めることができ、二重床1の使用性を向上させることが可能となる。
【0105】
また、鋼材は、防錆処理が施された鋼板であるので、上側下地材30の防錆性を高めることができ、上側下地材30を介して二重床1の内部に水又は湿気が流入することを回避しやすくなる。
【0106】
また、本体部10は、上側下地材30の上面を覆うように設けられる床仕上げ材40を備え、床仕上げ材40を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成したので、ポリ塩化ビニル樹脂以外の材質に比べて、床仕上げ材40の帯電防止性を高めることができ、二重床1の使用性を一層向上させることができる。
【0107】
また、上側下地材30と床仕上げ材40とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤であるので、エポキシ系接着剤以外の接着剤に比べて、上側下地材30と床仕上げ材40とを比較的強固に接続でき、二重床1の耐荷重性能を高めることができる。
【0108】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0109】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0110】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0111】
(二重床について)
上記実施の形態では、二重床1が、床仕上げ材40を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、床仕上げ材40を省略してもよい。
【0112】
(下側下地材について)
上記実施の形態では、下側下地材20は、第1下側下地材21、第2下側下地材22、及び第3下側下地材23を積層して構成されていると説明したが、これに限らない。例えば、第1下側下地材21、第2下側下地材22、又は第3下側下地材23のいずれかを省略してもよい。あるいは、第1下側下地材21、第2下側下地材22、及び第3下側下地材23に加えて、他の下地材を積層して構成されてもよい。
【0113】
(床仕上げ材について)
上記実施の形態では、床仕上げ材40は、他のタイル材と溶接可能であり、且つ目地部を有しないビニルタイル材であって、ポリ塩化ビニル樹脂製のビニルタイル材で構成されていると説明したが、これに限らない。例えば、ビニルタイル材以外のタイル材で構成されてもよい。あるいは、他のタイル材と溶接不能なビニルタイル材で構成されてもよい。あるいは、目地部を有するビニルタイル材で構成されてもよい。
【0114】
(付記)
付記1の二重床は、設置面に設けられる二重床であって、下側下地材と、前記下側下地材の上面を覆うように設けられる上側下地材であり、床仕上げ材と接着可能な上側下地材と、を有する本体部と、前記設置面と前記本体部との間に設けられる支持部であり、前記本体部を支持する支持部と、を備え、前記上側下地材を、鋼材で構成した。
【0115】
付記2の二重床は、付記1に記載の二重床において、前記鋼材は、防錆処理が施された鋼板である。
【0116】
付記3の二重床は、付記1又は2に記載の二重床において、前記本体部は、前記上側下地材の上面を覆うように設けられる前記床仕上げ材を備え、前記床仕上げ材を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成した。
【0117】
付記4の二重床は、付記3に記載の二重床において、前記上側下地材と前記床仕上げ材とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤である。
【0118】
(付記の効果)
付記1に記載の二重床によれば、下側下地材と上側下地材とを有する本体部と、設置面と本体部との間に設けられる支持部と、を備え、上側下地材を、鋼材で構成したので、従来技術(合板からなる捨板を備える二重床の技術)に比べて、二重床が移動荷重を繰り返し受けても、上側下地材が破壊することを回避でき、二重床の耐荷重性能を高めることが可能となる。また、二重床の帯電防止性を高めることができ、二重床の使用性を向上させることが可能となる。
【0119】
付記2に記載の二重床によれば、鋼材は、防錆処理が施された鋼板であるので、上側下地材の防錆性を高めることができ、上側下地材を介して二重床の内部に水又は湿気が流入することを回避しやすくなる。
【0120】
付記3に記載の二重床によれば、本体部は、上側下地材の上面を覆うように設けられる床仕上げ材を備え、床仕上げ材を、ポリ塩化ビニル樹脂で構成したので、ポリ塩化ビニル樹脂以外の材質に比べて、床仕上げ材の帯電防止性を高めることができ、二重床の使用性を一層向上させることができる。
【0121】
付記4に記載の二重床によれば、上側下地材と床仕上げ材とを接着する接着剤は、エポキシ系接着剤であるので、エポキシ系接着剤以外の接着剤に比べて、上側下地材と床仕上げ材とを比較的強固に接続でき、二重床の耐荷重性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0122】
1 二重床
10 本体部
20 下側下地材
21 第1下側下地材
22 第2下側下地材
23 第3下側下地材
30 上側下地材
40 床仕上げ材
50 支持部
50a 支持部材
51 支持部材本体
52 本体側接続部
53 台座部
S 設置面