IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

特開2024-60292水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台
<>
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図1A
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図1B
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図2
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図3A
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図3B
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図4
  • 特開-水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060292
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/04 20060101AFI20240424BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01N5/04 A
D06M15/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167587
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰之
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA09
4L033AB07
4L033AC11
4L033CA05
4L033CA18
4L033CA29
(57)【要約】
【課題】低濃度の樹脂溶液であっても、正確な濃度を簡便に測定する方法を提供する。
【解決手段】無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含む保持シール材の製造において、前記水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取し、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱した後、残渣重量を測定する、水溶性樹脂溶液の濃度測定方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含む保持シール材の製造において、前記水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取し、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱した後、残渣重量を測定する、水溶性樹脂溶液の濃度測定方法。
【請求項2】
前記加熱を、高周波加熱器を用いて行う請求項1に記載の濃度測定方法。
【請求項3】
前記加熱の後、蒸発皿を36.5℃以下まで冷却して残渣重量の測定を行う請求項1に記載の濃度測定方法。
【請求項4】
前記冷却を、蒸発皿を冷却台に載置して行う請求項3に記載の濃度測定方法。
【請求項5】
前記冷却台が複数の凹凸を有する請求項4に記載の濃度測定方法。
【請求項6】
前記冷却台が、金属及びセラミックスから選択される少なくとも一種の材料で形成されている請求項4に記載の濃度測定方法。
【請求項7】
前記冷却台が、アルミニウム、カーボン、銅、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の材料で形成されている請求項4に記載の濃度測定方法。
【請求項8】
前記冷却台が、複数の平板が組み合わされて形成されている請求項4に記載の濃度測定方法。
【請求項9】
前記冷却台が、第1の平板と、前記第1の平板から垂直に延びる複数の第2の平板とで形成され、
前記第1の平板が天板であり、前記複数の第2の平板が前記天板を支える脚部である請求項8に記載の濃度測定方法。
【請求項10】
前記天板の幅が前記脚部の幅より大きい請求項9に記載の濃度測定方法。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項に記載の濃度測定方法における蒸発皿の冷却に用いる、蒸発皿用冷却台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性樹脂溶液の濃度測定方法及び蒸発皿用冷却台に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス中のパティキュレートマター(PM)を捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材(マット材)とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0003】
保持シール材としては、例えば、無機質繊維マットに樹脂を添着させて、無機質繊維同士の接着性を向上させた樹脂含浸無機質繊維マットが知られている。このような樹脂含浸無機質繊維マットの製造方法として、無機質繊維マットに樹脂溶液を含浸させる工程と、無機質繊維マットの厚み方向に熱風を通過させることにより無機質繊維マットを乾燥させる工程とを有する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-316965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている製造方法では、樹脂溶液中の樹脂濃度が20重量%程度と高く、市販の測定器を用いて濃度を直接測定することが可能であった。しかしながら、樹脂濃度が1重量%程度と低い場合、市販の測定器では濃度を測定することができず、濃度管理が正確にできないという問題があった。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、低濃度の樹脂溶液であっても、正確な濃度を簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、水溶性樹脂溶液の一部を採取し、採取した水溶性樹脂溶液を加熱し、残渣重量を測定することより、低濃度の樹脂溶液であっても濃度の測定が可能であることを見出した。
すなわち、本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含む保持シール材の製造において、上記水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取し、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱した後、残渣重量を測定することを特徴とする。
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、上記の構成であるため、低濃度の樹脂溶液であっても濃度の正確な測定が可能である。
【0007】
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、上記加熱を、高周波加熱器を用いて行うことが好ましい。
高周波加熱器を用いて加熱を行うと、水溶性樹脂溶液中の溶媒を速く蒸発させることができる。
【0008】
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、上記加熱の後、蒸発皿を36.5℃以下まで冷却して残渣重量の測定を行うことが好ましい。
36.5℃以下で残渣重量の測定を行うと、測定の誤差を少なくすることができる。
【0009】
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、上記冷却を、蒸発皿を冷却台に載置して行うことが好ましい。
迅速に蒸発皿を冷却することが可能であり、濃度測定の作業効率を上げることができる。
【0010】
上記冷却台が複数の凹凸を有することが好ましい。
複数の凹凸により更に冷却効果を高めることができる。
【0011】
上記冷却台が、金属及びセラミックスから選択される少なくとも一種の材料で形成されていることが好ましい。
冷却台にこれらの材料を使用することにより、更に冷却効果を高めることができる。上記冷却台が、アルミニウム、カーボン、銅、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の材料で形成されていることが好ましい。
冷却台にこれらの材料を使用することにより、更に冷却効果を高めることができる。
【0012】
上記冷却台が、複数の平板が組み合わされて形成されていることが好ましい。
複数の平板が冷却フィンとして作用し、冷却効果を高めることができる。
【0013】
上記冷却台が、第1の平板と、上記第1の平板から垂直に延びる複数の第2の平板とで形成され、上記第1の平板が天板であり、上記複数の第2の平板が上記天板を支える脚部であることが好ましい。
上記の構成であると、冷却台がテーブルとして安定し、濃度測定の作業効率を上げることができる。
【0014】
上記天板の幅が上記脚部の幅より大きいことが好ましい。
上記の構成であると、天板のつば(脚部からはみ出す部分)が冷却フィンとして作用し、冷却効果を高めることができる。
【0015】
本発明の蒸発皿用冷却台は、上記の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法における蒸発皿の冷却に用いる。
本発明の蒸発皿用冷却台を用いると、迅速に蒸発皿を冷却することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の一例を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aの冷却台の平面模式図である。
図2図2は、図1Aの冷却台の変形例を模式的に示す断面図である。
図3A図3Aは、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aの冷却台の平面模式図である。
図4図4は、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、実施例1と実施例2における蒸発皿の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0018】
(水溶性樹脂溶液の濃度測定方法)
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法は、無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含む保持シール材の製造において、上記水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取し、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱した後、残渣重量を測定することを特徴とする。以下では「本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法」を「本発明の濃度測定方法」ともいう。
【0019】
保持シール材の製造において、無機繊維に水溶性樹脂を添着させることを目的として、無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含むことがある。無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる方法としては、例えば、フローコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。いずれの含浸方法であっても、通常、調製した水溶性樹脂溶液を投入する薬液槽が製造ラインに備えられている。また、無機繊維マットに含浸させた後の余剰の水溶性樹脂溶液を回収して再利用するための循環槽が製造ラインに備えられていてもよい。
【0020】
本発明の水溶性樹脂溶液の濃度測定方法では、まず、水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取する。
水溶性樹脂溶液に含まれる水溶性樹脂としては、保持シール材に一般に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリレート系ラテックス等が挙げられる。
【0021】
水溶性樹脂溶液に含まれる溶媒は、主に水であるが、水の他に低級アルコール等の親水性の有機溶媒が含まれていてもよい。
【0022】
水溶性樹脂溶液に含まれる固形分は、主に水溶性樹脂であるが、水溶性樹脂の他に添加剤等が含まれていてもよい。
【0023】
本発明の濃度測定方法では、様々な濃度の水溶性樹脂溶液を測定することが可能であるが、市販の測定器で正確に測定することが難しい低濃度(0.01~1.5重量%程度)の樹脂溶液であっても正確な測定が可能である。
【0024】
蒸発皿は、水溶性樹脂溶液から溶媒を蒸発させ、水溶性樹脂を濃縮、又は蒸発乾固させるために使用する。蒸発皿の材質は磁器、ガラス、金属等が挙げられ、高周波加熱器に使用可能であること、乾固させた樹脂を取り除くことが容易であることから、磁器製の蒸発皿が好ましい。磁器製の蒸発皿であると、濃度測定後に蒸発皿を600℃程度の高温で加熱して、蒸発皿の表面に残った水溶性樹脂を炭化させ、洗浄して濃度測定に再利用することができる。
【0025】
濃度測定を行う水溶性樹脂溶液は、薬液槽から採取してもよいし、水溶性樹脂溶液を無機繊維マットに含浸させた後の余剰分を循環槽から採取してもよく、特に限定されない。
【0026】
濃度測定を行う水溶性樹脂溶液は、水溶性樹脂溶液を調製してすぐ採取してもよいし、水溶性樹脂溶液を調製して1時間以上経過した後の、保持シール材の製造途中に採取してもよく、特に限定されない。
【0027】
水溶性樹脂溶液の採取量は、使用する蒸発皿の大きさに合わせて適宜調整すればよい。一例として、10gの水溶性樹脂溶液を採取して1枚の蒸発皿にとり、これを1個の測定用サンプルとし、1度の測定につき3個の測定用サンプルを準備する。複数個の測定用サンプルを用いると、濃度測定の精度を上げることができるため、好ましい。
【0028】
本発明の濃度測定方法では、上記水溶性樹脂溶液を蒸発皿に採取した後、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱する。この加熱により、水溶性樹脂溶液の溶媒を蒸発させる。
上記加熱を行う手段は特に限定されず、ガスバーナー、ガスコンロ、オーブン、高周波加熱器(電子レンジ等)等が挙げられる。上記加熱は、水溶性樹脂溶液中の溶媒を速く蒸発させることができることから、高周波加熱器を用いて行うことが好ましい。
【0029】
上記加熱は、蒸発皿から水溶性樹脂溶液の溶媒が完全に蒸発するまで行うことが好ましいが、樹脂の濃度を相対的に比較する場合は、溶媒が完全に蒸発していることは必須ではない。例えば、高周波加熱器を用いて特定の条件で加熱を行い、残渣重量を測定して比較することにより、サンプル間の相対濃度を確認することができる。上記特定の条件とは、例えば上記測定用サンプル3個に対して、700W、6分間である。
【0030】
本発明の濃度測定方法では、上記加熱の後、残渣重量を測定する。残渣重量は、加熱により蒸発した溶媒を除く水溶性樹脂溶液の残りの成分と、蒸発皿とを合わせた重量である。
各重量の測定は、上皿台はかり、電子はかり、電子天秤等を用いることができる。
【0031】
上記加熱の後、残渣重量の測定はいつ行ってもよいが、蒸発皿を36.5℃以下まで冷却して行うことが好ましい。はかりを構成している材料、部品やセンサの特性が、温度により変化するため、急激な温度変化を避ける必要があるからである。蒸発皿の温度が36.5℃以下であると、測定の誤差を少なくすることができる。測定用サンプルを複数個使用する場合は、全ての蒸発皿を36.5℃以下まで冷却して残渣重量の測定を行うことが好ましい。
【0032】
残渣重量を測定した後、下記の手順で水溶性樹脂溶液の濃度を算出することができる。
予め水溶性樹脂溶液を蒸発皿に採取する前に蒸発皿の重量を測定し、水溶性樹脂溶液を採取した後に水溶性樹脂溶液と蒸発皿の合計重量を測定する。水溶性樹脂溶液と蒸発皿の合計重量と、上記残渣重量から、下記の計算式より水溶性樹脂溶液の濃度を得ることができる。
(残渣重量-蒸発皿の重量)/(合計重量-蒸発皿の重量)×100=水溶性樹脂溶液の濃度(%)
【0033】
上記加熱の後は、水等の溶媒が蒸発した後であることから、蒸発皿の温度は100℃近くであると考えられる。蒸発皿の冷却は、自然冷却でもよいが、蒸発皿を冷却台に載置して行うことが好ましい。迅速に蒸発皿を冷却することが可能であり、濃度測定の作業効率を上げることができるからである。
【0034】
(蒸発皿用冷却台)
以下では、本発明の濃度測定方法で蒸発皿の冷却に用いる冷却台について説明する。
上記冷却台の形状等は特に限定されず、ステンレス等の金属の平板を冷却台として使用してもよいが、複数の凹凸を有することが好ましい。複数の凹凸により、更に冷却効果を高めることができるからである。上記複数の凹凸は、例えば平板の表面に複数の凹部を設けることにより形成さていてもよい。
【0035】
上記冷却台は、複数の平板が組み合わされて形成されていることが好ましい。複数の平板が組み合わされていることにより、複数の平板が冷却フィンとして作用し、冷却効果を高めることができるからである。
【0036】
図1Aは、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の一例を模式的に示す斜視図である。図1Bは、図1Aの冷却台の平面模式図である。
図1A及び図1Bに示すように、第一の形態である冷却台1Aは、第1の平板11と、上記第1の平板11から垂直に延びる複数の第2の平板12とで形成され、上記第1の平板11が天板であり、上記複数の第2の平板12が上記天板を支える脚部である。上記の構成であると、冷却台がテーブルとして安定し、濃度測定の作業効率を上げることができる。上記複数の第2の平板12は冷却台1Aがテーブルとして安定する様に上記天板を支える脚部として機能する他に、冷却フィンとして作用する。
図1Aに示すように、第1の平板11の上面に蒸発皿20を載置することができる。
【0037】
第1の平板11の平面形状としては、例えば、正方形状、長方形状等の多角形状、円形状、楕円形状、これらの形状を複数種類組み合わせた形状等が挙げられる。
【0038】
複数の第2の平板12の配置は特に限定されないが、熱が移動しやすく冷却効率が高いため、平行で等間隔に配置されていることが好ましいが、この限りではない。例えば、第1の平板11の平面形状が円形状である場合、複数の第2の平板12が第1の平板11の中心から放射状に配列するように設けられていてもよい。
【0039】
冷却台1Aは、上記天板の幅が上記脚部の幅より大きいことが好ましい。上記の構成であると、天板のつば(脚部からはみ出す部分)が冷却フィンとして作用し、冷却効果を高めることができる。
【0040】
冷却台を形成する材料は、特に限定されず、例えばステンレス、アルミニウム、銅等の金属;カーボン;窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックス等が挙げられる。上記冷却台は、金属及びセラミックスから選択される少なくとも一種の材料で形成されていることが好ましい。冷却効果を高めることができるためである。
上記材料はまた、冷却効果を高めることができるため、熱伝導率が100W/m・℃以上の材料が好ましく、アルミニウム、カーボン、銅、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。
第1の平板11と第2の平板12の材料は、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、複数の第2の平板12の材料は、全て同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0041】
本実施形態において、第1の平板11は、第2の平板12と一体に形成されていてもよいし、第2の平板12が、第1の平板11の裏面に接合する構成としてもよい。また、第2の平板12を第1の平板11の裏面に設けられた溝(不図示)に嵌め込むことにより固定する構成としてもよい。溝に嵌め込む構成の場合、第1の平板11と第2の平板12とを異なる材料で形成することができる。
【0042】
図2は、図1Aの冷却台の変形例を模式的に示す断面図である。
本変形例において、冷却台1A´では、上記複数の第2の平板12Aが、第1の平板11に近い部分で、全ての第2の平板12Aが連結又は一体化されている。全ての第2の平板12Aが連結又は一体化されていると、複数の第2の平板12Aの各々が直接第1の平板11に接続されている場合に比べて構造的に安定するため、好ましい。特に、全ての第2の平板12Aが一体化されている場合には、繰り返し熱応力が加わっても、部分的に異なる温度差による熱膨張に起因する第2の平板12Aと第1の平板11との接続部のゆるみがなく、冷却台1A´がより構造的に安定する。
上記複数の第2の平板12Aが連結又は一体化されている箇所は、脚部の高さを100%としたとき、第1の平板11と第2の平板12Aが接する箇所から5~30%までの位置が好ましい。
【0043】
全ての第2の平板12Aが一体化されている場合、図2に示すように、第2の平板12Aと第2の平板12Aの間の断面形状はアーチ状が好ましい。アーチ形状であることにより、複数の第2の平板12Aのそれぞれが構造的に安定する。
【0044】
本変形例において、第2の平板12Aの厚さは一定でもよいが、図2に示すように、テーパー形状であってもよい。図2では、第2の平板12Aの第1の平板11側から、第2の平板12Aの端部方向に向かって、第2の平板12Aの厚さが薄くなっている。このようなテーパー形状にすることにより、冷却フィンの根元である第2の平板12Aの第1の平板側まで空気が入りやすくなる。
【0045】
次に、第二の形態である冷却台1Bの構造について、図3A及び図3Bを参照して説明する。ここでは第一の形態である冷却台1Aと異なる点のみ説明し、共通する箇所については説明を省略する。
【0046】
図3Aは、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の別の一例を模式的に示す斜視図である。図3Bは、図3Aの冷却台の平面模式図である。
図3A及び図3Bに示すように、第二の形態である冷却台1Bでは、第2の平板12の配置が等間隔ではなく、間隔S1で配置されている第2の平板12Aと、間隔S2で配置されている第2の平板12Bとが設けられている。S1とS2とは、S1>S2の関係である。
【0047】
第2の平板12Bは、蒸発皿から伝達された熱を周囲の空気に放熱する部材である。図3Bに示すように、第2の平板12Bは、間隔S2で平行に配置されている。第2の平板12Bは、冷却台1Bの平面方向において、蒸発皿20と重なる位置に配置されている。
蒸発皿20を、第2の平板12Bと重なる位置に配置することを容易にするために、第1の平板11の表面に目印(不図示)が付されていてもよい。
【0048】
次に、第三の形態である冷却台1Cの構造について、図4を参照して説明する。ここでは第一の形態である冷却台1Aと異なる点のみ説明し、共通する箇所については説明を省略する。
【0049】
図4は、蒸発皿の冷却に用いる冷却台の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、第三の形態である冷却台1Cでは、第1の平板11の裏面側にファン30が設けられている。ファン30が設けられている箇所は、第2の平板12が分断されている。上記複数の第2の平板12をファン30で空冷することにより、冷却効果を高めることができる。
本実施形態では、第2の平板12で形成される脚の高さがファン30の高さと同じか略同じであることが好ましい。放熱がより効率よく行われるからである。ファン30の風の向きは、複数の第2の平板12が延びる方向と同じ方向であることが好ましい。方向が同じであると、放熱が効率よく行われるからである。
【0050】
図4では、冷却台1Cにファン30が1個設けられているが、ファン30を2個以上設けてもよい。2個以上ファン30を設ける場合、2個以上のファン30が重なるように配置されていてもよいし、ファン30が隣り合っていてもよい。
【0051】
図4では、ファン30は、複数の第2の平板12に囲まれる位置に設けられているが、第2の平板12の端部にファン30を設けて、ファン30の風向きが当該端部から第1の平板11方向に向かうようにしてもよい。
【0052】
本発明の濃度測定方法において、蒸発皿の冷却に用いる冷却台も本発明の一つである。
【0053】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0054】
本開示(1)は、無機繊維マットに水溶性樹脂溶液を含浸させる工程を含む保持シール材の製造において、前記水溶性樹脂溶液の一部を蒸発皿に採取し、採取した水溶性樹脂溶液を蒸発皿とともに加熱した後、残渣重量を測定する、水溶性樹脂溶液の濃度測定方法である。
【0055】
本開示(2)は、前記加熱を、高周波加熱器を用いて行う本開示(1)に記載の濃度測定方法である。
【0056】
本開示(3)は、前記加熱の後、蒸発皿を36.5℃以下まで冷却して残渣重量の測定を行う本開示(1)又は(2)に記載の濃度測定方法である。
【0057】
本開示(4)は、前記冷却を、蒸発皿を冷却台に載置して行う本開示(3)に記載の濃度測定方法である。
【0058】
本開示(5)は、前記冷却台が複数の凹凸を有する本開示(4)に記載の濃度測定方法である。
【0059】
本開示(6)は、前記冷却台が、金属及びセラミックスから選択される少なくとも一種の材料で形成されている本開示(4)又は(5)に記載の濃度測定方法である。
【0060】
本開示(7)は、前記冷却台が、アルミニウム、カーボン、銅、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の材料で形成されている本開示(4)~(6)のいずれかに記載の濃度測定方法である。
【0061】
本開示(8)は、前記冷却台が、複数の平板が組み合わされて形成されている本開示(4)~(7)のいずれかに記載の濃度測定方法である。
【0062】
本開示(9)は、前記冷却台が、第1の平板と、前記第1の平板から垂直に延びる複数の第2の平板とで形成され、前記第1の平板が天板であり、前記複数の第2の平板が前記天板を支える脚部である本開示(8)に記載の濃度測定方法である。
【0063】
本開示(10)は、前記天板の幅が前記脚部の幅より大きい本開示(9)に記載の濃度測定方法である。
【0064】
本開示(11)は、本開示(4)~(10)のいずれかに記載の濃度測定方法における蒸発皿の冷却に用いる、蒸発皿用冷却台である。
【0065】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
磁器製の蒸発皿(タキシン社製6-563-02磁製平皿、φ75mm)を3個用意し、重量測定器(METTLER TOLEDO社製、DRAGON303)を用いて空の蒸発皿の重量を測定した。水溶性樹脂溶液の原液(アクリレート系ラテックスの50重量%水溶液)10.5kgに、水392.7kgを加えて、樹脂濃度1.30重量%の水溶性樹脂溶液を調製した。水溶性樹脂溶液10gを各蒸発皿に採取した。高周波加熱器として、電子レンジ(アイリスオーヤマ社製IMG-T177-6-W)を用い、水溶性樹脂溶液が入った3個の蒸発皿を同時に700Wで6分間加熱した。加熱後、1分ごとに非接触式温度計(マザーツール社製MT-7)で蒸発皿の温度を計測し、3個の平均温度を記録した。全ての蒸発皿の温度が36.5℃以下になったことを確認して、蒸発皿の重量を再度測定し、水溶性樹脂溶液の濃度を求めた。水溶性樹脂溶液の濃度は、各蒸発皿について、それぞれ1.20重量%、1.21重量%、1.20重量%であった。加熱後の蒸発皿の温度変化を図5に示す。
【0067】
(実施例2)
図1A図1B図2に示す冷却台1A´について、寸法及び材質が以下の通りである態様を、実施例2の冷却台とした。
実施例1と同様に、水溶性樹脂溶液が入った3個の蒸発皿を同時に加熱した後、冷却台の天板に3個の蒸発皿を均等に置き、1分ごとに蒸発皿の温度を計測した。全ての蒸発皿の温度が36.5℃以下になったことを確認して、蒸発皿の重量を再度測定し、水溶性樹脂溶液の濃度を求めた。水溶性樹脂溶液の濃度は、各蒸発皿について、それぞれ1.29重量%、1.28重量%、1.29重量%であった。加熱後の蒸発皿の温度変化を図5に示す。
(冷却台の寸法及び材料)
材料:アルミニウム
第1の平板11の大きさ:縦20cm、横30cm、厚さ0.2cm
第2の平板12の大きさ:縦3.5cm、横21cm、厚さ0.2cm
第2の平板12の枚数:17枚
第2の平板12の配置間隔:0.8cm
【0068】
実施例1、2では、本発明の測定方法により得られた濃度のサンプル間の差が小さく、低濃度の水溶性樹脂溶液であっても濃度を精度よく測定できることが分かった。
【0069】
図5は、実施例1と実施例2における蒸発皿の温度変化を示すグラフである。実施例1では、蒸発皿が36.5℃以下まで冷却するために約8分間必要であったが、実施例2では約4分間であった。本発明の濃度測定方法において、複数の平板が組み合わされ、熱伝導率が高い材料で作製された冷却台を用いることで、蒸発皿の冷却を効率よく行えることが分かった。
【符号の説明】
【0070】
1A、1A´、1B、1C 冷却台
11 第1の平板
12、12A、12B、12C 第2の平板
20 蒸発皿
30 ファン

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5