(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060297
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】同期機
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20240424BHJP
H02K 21/44 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02K19/10 A
H02K21/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167598
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
【テーマコード(参考)】
5H619
5H621
【Fターム(参考)】
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB15
5H619BB24
5H619PP01
5H619PP08
5H621AA01
5H621BB10
5H621GA04
(57)【要約】
【課題】自立起動を可能とし、且つ、力率を改善させることができる同期機を提供する。
【解決手段】同期機は、環状の継鉄部から半径方向の一方側に向かって突出し、コイルが巻装された歯を有する固定子と、前記固定子よりも半径方向の一方側において、前記歯に空隙をもって配置された突極を有する回転子と、前記歯の半径方向の一方側に設けられた磁石と、を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の継鉄部から半径方向の一方側に向かって突出し、コイルが巻装された歯を有する固定子と、
前記固定子よりも半径方向の一方側において、前記歯に空隙をもって配置された突極を有する回転子と、
前記歯の半径方向の一方側に設けられた磁石と、
を備える同期機。
【請求項2】
前記磁石は前記歯の半径方向の一方側を向く先端面に設けられる、
請求項1に記載の同期機。
【請求項3】
少なくとも1つの前記磁石は、極性の異なる第1磁極および第2磁極が半径方向に並ぶように配置された永久磁石である、
請求項1に記載の同期機。
【請求項4】
少なくとも1つの前記磁石は、直流磁界を発生させる電磁石である、
請求項1に記載の同期機。
【請求項5】
前記突極の周方向における長さは、前記磁石の磁極の周方向における長さと等しい、
請求項1に記載の同期機。
【請求項6】
前記歯は、隣接する歯との周方向における離隔距離が、前記突極の周方向における長さ以下となるように配置される、
請求項1に記載の同期機。
【請求項7】
前記歯は、前記継鉄部から半径方向の一方側に延びる胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記胴部よりも周方向の長さが長い鍔部とを備え、
前記磁石の磁極の周方向における長さをW2、前記胴部の周方向における長さをW3、前記歯の飽和磁束密度をBs、前記磁石の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W3≧Br/Bs×W2を満たす、
請求項1に記載の同期機。
【請求項8】
前記胴部の周方向における長さW3は、前記磁石の磁極の周方向における長さW2と等しい、
請求項7に記載の同期機。
【請求項9】
前記突極は、半径方向に延びる突極胴部と、前記突極胴部の先端側に設けられ、前記突極胴部よりも周方向の長さが長い突極鍔部とを備え、
前記突極鍔部の周方向の長さをW1、前記突極胴部の周方向の長さをW6、前記歯の飽和磁束密度をBs、前記磁石の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W6=Br/Bs×W1を満たす、
請求項1に記載の同期機。
【請求項10】
前記磁石は、一つの前記歯に対し、極性の異なる第1磁極および第2磁極が半径方向に並ぶ磁石部材を周方向に二つ以上配置してなり、
隣接する前記磁石部材は、半径方向の一方側を向く磁極の極性が互いに異なるように配置される、
請求項7に記載の同期機。
【請求項11】
前記歯は、半径方向の一方側を向く先端面に少なくとも一つの凹部を有し、
前記凹部は、前記歯の周方向の端部から前記凹部までの距離、または、二つの前記凹部間の距離が前記突極の周方向の長さと同一となるように配置される、
請求項7に記載の同期機。
【請求項12】
前記凹部は、軸方向から見て前記歯の胴部側に向かうほど周方向の長さが小さくなる楔形状の断面形状を有する、
請求項11に記載の同期機。
【請求項13】
前記歯は、半径方向の一方側を向く先端面に少なくとも一つの凸部を有し、
前記凸部は、前記磁石の磁極の周方向の端部に接する位置に配置される、
請求項7に記載の同期機。
【請求項14】
前記回転子の前記突極を設ける周期は、周方向において磁極の極性が交番する周期と等しい、
請求項10に記載の同期機。
【請求項15】
複数の前記磁石部材のうち、半径方向の一方側を向く磁極が前記第1磁極である磁石部材、または、半径方向の一方側を向く磁極が前記第2磁極である磁石部材の周方向の長さの総和をW2_total、前記胴部の周方向における長さをW3、前記歯の飽和磁束密度をBs、前記磁石の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W2_total<Bs/Br×W3を満たす、
請求項14に記載の同期機。
【請求項16】
前記総和W2_totalは、前記胴部の周方向における長さW3と等しい、
請求項15に記載の同期機。
【請求項17】
前記歯および前記突極の少なくとも一方の軸方向の端面に設けられた張り出し部をさらに備える、
請求項1から16の何れか一項に記載の同期機。
【請求項18】
周方向に積層され、半径方向の一方の端部が前記歯の前記張り出し部に接するように設けられた磁路をさらに備える、
請求項17に記載の同期機。
【請求項19】
前記歯の前記張り出し部は、フランジ部から軸方向に延びる支持部により、前記フランジ部に支持される、
請求項17に記載の同期機。
【請求項20】
前記歯の張り出し部は、周方向に延びる板状の連結部材により連結される、
請求項17に記載の同期機。
【請求項21】
前記磁石の磁極の周方向における長さをW2、周方向に隣り合う前記歯のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に前記第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をW7、前記歯の数をnT、周方向に並ぶ前記磁極の数をnPM、前記突極の数をnpsとしたとき、前記歯の数、前記磁極の数、および前記突極の数は、nTW7=(2nps-nPM)W2を満たすように設定される、
請求項1に記載の同期機。
【請求項22】
前記突極の周方向の幅をW1、隣り合う前記突極間の幅をW1´、前記磁石の磁極の周方向における長さをW2、周方向に隣り合う前記歯のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に前記第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をW7、前記歯の数をnT、周方向に並ぶ前記磁極の数をnPM、前記突極の数をnpsとしたとき、前記突極の幅W1、隣り合う前記突極間の幅W1´、前記磁極の周方向における長さW2、および前記離間距離W7は、nTW7=nps(W1+W1´)-nPMW2を満たすように設定される、
請求項1に記載の同期機。
【請求項23】
前記突極の周方向の幅をW1、隣り合う前記突極間の幅をW1´、前記磁石の磁極の周方向における長さをW2、周方向に隣り合う前記歯のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に前記第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をゼロ、前記歯の数をnT、周方向に並ぶ前記磁極の数をnPM、前記突極の数をnpsとしたとき、前記突極の幅W1、隣り合う前記突極間の幅W1´、および前記磁極の周方向における長さW2は、0=nps(W1+W1´)-nPMW2を満たすように設定される、
請求項1に記載の同期機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、同期機、特にリラクタンス同期機に関する。
【背景技術】
【0002】
図21には、従来技術におけるリラクタンス(磁気抵抗)を利用するリラクタンス同期発電機およびリラクタンス同期電動機などのリラクタンス同期機9(reluctance synchronous machine)の構成が示されている。リラクタンス同期機9は、電磁鋼板を積層して制作した固定子92および回転子93を有する。回転子93は半径方向Drに突出した突極932を有している。固定子92の歯922に巻回された固定子コイル95の起磁力により発生した磁束は、透磁率の高い突極932に引き寄せられて湾曲する。この湾曲を解消しようとする力(リラクタンストルク)が生じることによって、回転子93の突極932が固定子コイル95に引き寄せられて回転する。このように、リラクタンス同期機9は、回転子93の突極性により界磁磁束を発生させて回転するものである。リラクタンス同期機9では、回転子93には永久磁石も励磁巻線も不要であることから、誘導機や同期機と比較すると、構造が簡単であり、堅牢であることが知られている。加えて、リラクタンス同期機9は力率が小さいことが知られている。
【0003】
また、回転子93は電磁鋼板のみからなっており、永久磁石や励磁巻線を持たないため、停電時には回転子の磁束が消滅して自立起動することができない。対策として、例えば特許文献1には、固定子92に永久磁石94を設けて励磁力を与えるリラクタンス発電機9が記載されている。具体的には、特許文献1に記載のリラクタンス発電機9は、(1)固定子92の隣り合う歯922の間に永久磁石を配置し、(2)固定子92の歯922(界磁鉄心)の鍔部分を周方向Dcに二股分割した界磁鉄心歯922A,922Bを有し、(3)歯922に界磁コイル951を、界磁鉄心歯922A,922Bそれぞれに発電コイル952を巻回する構成を有している。また、永久磁石94は起磁力の向きが周方向Dcに沿うように配置される。これにより、例えば風車で回転子93を回転させることで、発電コイル952に誘導起電力を生じさせて自立起動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の上記構成について、(1)永久磁石94を配置するには保持用の金具を要すること、(2)二股に分割した界磁鉄心歯922A,922Bの間の空隙部の分だけ磁束が減り発電出力が低下すること、(3)界磁コイル951と発電コイル952の二種類を備えるのはコストがかかること、などの課題がある。
【0006】
本開示の目的は、自立起動を可能とし、且つ、力率を改善させることができる同期機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、同期機は、環状の継鉄部から半径方向の一方側に向かって突出し、コイルが巻装された歯を有する固定子と、前記固定子よりも半径方向の一方側において、前記歯に空隙をもって配置された突極を有する回転子と、前記歯の半径方向の一方側に設けられた磁石と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の同期機によれば、自立起動を可能とし、且つ、力率を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の第1の断面図である。
【
図1B】第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の第2の断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の対比例に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の対比例に係る突極の構成を示す第1の図である。
【
図6】第1の実施形態の対比例に係る突極の構成を示す第2の図である。
【
図7】第1の実施形態の変形例に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
【
図8】第1の実施形態の変形例に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
【
図9A】第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
【
図9B】第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
【
図9C】第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第3の図である。
【
図9D】第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第4の図である。
【
図9E】第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第4の図である。
【
図10】第2の実施形態の対比例に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図12A】第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
【
図12B】第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
【
図13】第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第3の図である。
【
図14A】第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
【
図14B】第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
【
図14C】第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第3の図である。
【
図14D】第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第4の図である。
【
図14E】第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第5の図である。
【
図15】第6の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
【
図16】第6の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
【
図17】第7の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図18】第8の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図19】第9の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図20】第10の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
【
図21】従来技術におけるリラクタンス同期機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図1~
図8を参照しながら詳しく説明する。なお、本実施形態に係るリラクタンス同期機1は、リラクタンス同期発電機およびリラクタンス同期電動機の何れとしても機能するものである。
【0011】
(リラクタンス同期機の構成)
図1Aは、第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の第1の断面図である。
図1Bは、第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の第2の断面図である。
図2は、第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
図1に示すように、リラクタンス同期機1は、固定子2と、回転子3と、永久磁石4と、コイル5と、回転軸8とを備える。
図1は、リラクタンス同期機1の回転軸8に対して垂直な断面を表している。一般に、リラクタンス同期機1の断面の形状は軸方向Daの位置に依存しない。コイル5は、
図1Aのように一つの歯22に巻回される集中巻きの形態であっても良いし、
図1Bのように複数の歯22に巻回される分布巻きの形態であっても良い。
図1Bの例ではコイル5は隣合う三つの歯22に対して巻回されている。発電機や電動機は3相のコイル5を有するものが一般的であり、
図1Aや
図1Bも三相を表している。しかし、それに限定されることはない。例えばコイル5は5相,6相などであっても良い。
【0012】
固定子2と回転子3とは回転軸8を中心とした同心状に設けられる。固定子2は固定されており、回転子3は回転軸8周りに回転する。
【0013】
固定子2は、軟磁性材料からなる環状の継鉄部21と、半径方向Drの内側に向かって突出し、軟磁性材料の鉄心からなる歯22とを有する。
【0014】
回転子3は固定子2の内側に配置され、軟磁性材料からなる継鉄部31と、継鉄部31から半径方向Drの外側に向かって突出し、軟磁性材料の鉄心からなる突極32とを有する。回転子3の継鉄部31と突極32は回転子3の回転とともに周方向Dcに移動する。
【0015】
永久磁石4は、固定子2の歯22の半径方向Drの内側(先端側)に設けられる。本実施形態では、永久磁石4は、歯22の半径方向Drの内側を向く内側表面22a(先端面)に設けられる。永久磁石4は、内側表面22aに張り付けるなどの方法で、歯22の内側表面22aの全てを覆うことが好ましい。本実施形態では、永久磁石4の周方向Dcにおける長さは、歯22の周方向Dcにおける長さと同じである。また、
図2に示すように、永久磁石4は、起磁力の向きが半径方向Drに沿うように配置される。永久磁石4の磁極は、一つの歯22に対して周方向Dcに複数(
図2~
図3)であってもよい。この場合、永久磁石4は、極性の異なる磁極41(例えば、N極)および磁極42(例えば、S極)が周方向Dcに並ぶように配置された複数の磁石401,402からなる。周方向Dcに隣接する永久磁石401,402は半径方向Drの内側を向く磁極の極性が互いに異なるように配置される。例えば、
図2~
図3のように、永久磁石401は磁極41が、磁石402は磁極42が半径方向Drの内側を向くように配置される。また、永久磁石4の磁極は、一つの歯22に対して周方向Dcに単数(
図1A)であってもよい。さらに、二つ以上の歯22に対して磁極が一つであってもよい。
【0016】
コイル5は、主に固定子2の歯22に巻回する。本願では、コイル5は歯22一つに巻回する集中巻きの形態について説明するが、コイル5は複数の歯22を巻回する分布巻きの形態であってもよい。なお、コイル5は、歯22および永久磁石4の両方を巻回して、永久磁石4を支持してもよい。
【0017】
固定子2の歯22と回転子3の突極32とは、固定子2の継鉄部21および回転子3の継鉄部31とを連絡する磁路である。
【0018】
一般に、歯の数と極の数の組み合わせを適切にすると以下で説明するように各継鉄の磁位は一定値となり変動しない。
図1Aでは、歯22は6個、突極32は4個の例を表しているが、これは適切な組み合わせの一例である。
図1Aに示す例では、歯22と突極32のパーミアンスは軸対称である。また、歯22と永久磁石4とコイル5からなる複合体に着目すると、
図1Aの例では、180°離れた位置に対となる複合体がある。このとき、180°離れた位置にある複合体の起磁力を逆向きに設定するならば、すなわち軸対称にするならば、複合体の対は継鉄に対して正負逆方向に同量の起磁力を発生するので、対としてみると複合体の起磁力は相殺する。したがって、固定子2の継鉄部21と回転子3の継鉄部31の磁位は常に0である。相殺の仕方は軸対称に限らない。例えば、歯22が3個、突極32が4個などでもよい。本願は、継鉄部の磁位が一定となるように、または近似的に一定となるように、歯と極の数の組み合わせ、永久磁石4の配置、コイル5の電流を選定することを前提とする。継鉄の磁位が0で一定であるならば、歯は独立しており相互作用を考える必要はない。よって、以下では歯一つを用いて説明する。
【0019】
コイル5に通電すると、磁路に磁束が発生し、同時に歯22および突極32に磁気吸引トルク(リラクタンストルク)が得られる。このとき、本実施形態に係る永久磁石4があることにより、永久磁石4の磁束による磁石トルクが同時に得られる。すなわち、この磁気吸引トルクは磁石補助される。
【0020】
また、本実施形態において、回転子3の突極32の周方向Dcにおける長さW1は、永久磁石4の一つの磁極の周方向Dcにおける長さW2と同一の長さである。なお、突極32の長さW1および磁極の長さW2の差が所定差以内であれば、同一の長さであるとする。
【0021】
図3は、第1の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成の一例を示す図である。
ここでは、
図3を参照しながら、固定子2の歯22の内側表面22aに永久磁石4を設けることの利点を説明する。
図3に示すように、回転子3はθ
1に位置し、そのとき永久磁石4と突極32とは互いに過不足なく交差しているとする。
【0022】
歯22と突極32とが交差する面積の最大値をS、永久磁石4の厚さをtm、固定子2と永久磁石4との空隙Gの厚さ(半径方向Drの距離)をtg、空気の透磁率をμとすると、歯22と突極32とのパーミアンスgは近似的に次式(1)で表される。
【0023】
【0024】
図21に示す一般的なリラクタンス同期電動機9は歯922と突極932との間に永久磁石を持たないので、一般的なリラクタンス同期電動機9のパーミアンスg
Rは次式(2)で表される。
【0025】
【0026】
コイルのインダクタンスはパーミアンスに比例するので、一般的なリラクタンス同期電動機のインダクタンスLRと、本実施形態に係るリラクタンス同期機1のインダクタンスLとの比は、次式(3)となる。
【0027】
【0028】
例えば、表面磁石型同期機(SPM)のようにtm≫tgとすれば、L≪LRとなる。すなわち、本実施形態に係るリラクタンス同期機1は、固定子2の歯22の内側表面22aに設ける永久磁石4を厚くすることにより、コイル5のインダクタンスが小さくなり力率が改善する。これは、本願で開示する技術は、永久磁石4の厚さtmを空隙の厚さtgに対する比率を大きくすれば表面磁石式の同期機として機能し、前記比率を小さくするとリラクタンス同期機として機能することを意味している。さらに、第4の実施形態で後述するように、永久磁石4を歯の鉄心に配置する仕方によって、埋込磁石型同期機(IPM)として機能させることもできる。したがって、本願ではリラクタンス同期機として技術を開示するが、本願の技術はリラクタンス同期機を含む同期機一般に適用できる。
【0029】
図4は、第1の実施形態の対比例に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
ここでは、
図3および
図4を参照しながら、引き続き、永久磁石4を歯22の内側表面22aに配置することにより発電量が向上することを説明する。
【0030】
図4は、永久磁石4を歯22の内側表面22aから埋込深さt
dに配置する場合の例を示している。永久磁石4を歯22に埋め込むと、永久磁石4と回転子3の突極32との間に厚さt
dの鉄心層ができる。この鉄心層により還流磁束Φ
Lが発生し固定子2と回転子3との間の正味の磁束が減る(Φ-Φ
Lとなる)。そうすると、コイル5に発生する誘起電圧が減り、最終的に発電電力が減る。還流磁束Φ
Lの大きさは、原理的には永久磁石4の埋込深さt
dに比例する。従って、埋込厚さt
dは0であることが望ましい。すなわち、
図3の例のように、永久磁石4は歯22の内側表面22aに張り付けるとことが永久磁石4を利用する観点で最良の形態である。なお、永久磁石4の保持強度の向上などを目的として、永久磁石を歯22に埋め込むことも可能である。この場合、埋込深さt
dは強度的な必要最小限とするのがよい。
【0031】
図5は、第1の実施形態の対比例に係る突極の構成を示す第1の図である。
図6は、第1の実施形態の対比例に係る突極の構成を示す第2の図である。
次に、
図2および
図5~
図6を参照しながら、回転子3の突極32の弧の長さ(周方向Dcにおける長さ)を、永久磁石4の磁極の弧の長さに一致させることのメリットを説明する。
【0032】
図3に示すように、回転子3の突極32の弧の長さW1を永久磁石4の一つの磁極41の弧の長さW2に一致させたとする。そうすると、一つの磁極41は突極32を過不足なく覆い、一つの磁極41の磁束Φは全てが一つの突極32に導かれる。これにより、コイル5の鎖交磁束が最大化され、誘起電圧が最大化され、発電量も最大化される。
【0033】
一方、
図5の例のように、突極32の弧の長さW1が磁極41の弧の長さW2より長くしたとする。そうすると、一つの磁極41の磁束Φの一部が隣接する磁極42を通じて還流し、コイル5の鎖交磁束をロスする。
【0034】
また、
図6に示すように、突極32の弧の長さW1を磁極41の弧の長さW2より短くしたとする。そうすると、突極32および磁極41の交差面積そのものが減って、コイル5の鎖交磁束をロスする。
図6は突極32の弧の長さW1を磁極41の弧の長さW2の半分とした場合に、交差面積が半分になり磁束が半分(Φ/2)になる様子を表している。
【0035】
このように、回転子3の突極32の弧の長さW1を永久磁石4の磁極の弧の長さW2に一致させない場合には、鎖交磁束をロスし発電量を最大化できない。
【0036】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係るリラクタンス同期機1は、歯22を有する固定子2と、歯22に空隙Gをもって配置された突極32を有する回転子3と、空隙Gに対面する歯22の半径方向Drの内側に設けられた永久磁石4とを備える。
【0037】
このようにすることで、リラクタンス同期機1は、永久磁石4が発生させる磁束と、回転子3の回転によりコイル5に誘起電圧を生じさせることができるので、停電時であっても自立起動することが可能となる。例えば特許文献1のように固定子の歯を二股に分割する必要はないため、磁束の減少及び発電出力の低下を抑制することができる。すなわち、発電効率を向上させることができる。さらに、一般的な同期機では、回転子に永久磁石を設けている。しかしながら、回転子に永久磁石を設ける構成では、回転時に遠心力によって永久磁石が剥落する可能性があるため、保持のために穴を開けて埋め込むなどの加工が必要であった。これに対し、本実施形態に係るリラクタンス同期機1では、静止している固定子2に永久磁石4を取り付けるので、接着剤で接着するなどの簡易な取り付け手段でも剥落を抑制することが可能である。
【0038】
また、永久磁石4は、歯22の半径方向Drの内側を向く内側表面22aに設けられ、歯22の鉄心と突極32の鉄心の距離を半径方向Drに離隔する。
【0039】
このようにすることで、リラクタンス同期機1は、コイル5のインダクタンスをさらに小さくして力率を効果的に改善することができる。
【0040】
また、永久磁石4は、磁極の方向が半径方向Drとなるように配置される。
【0041】
このようにすることで、リラクタンス同期機1は、固定子2の歯22から回転子3の突極32へ向かう磁束、または、回転子3の突極32から固定子2の歯22へ向かう磁束を発生させることができる。つまり、効率的にトルクを発生させることができる。
【0042】
また、突極32の周方向Dcにおける長さW1は、永久磁石4の磁極の周方向Dcにおける長さW2と等しい。
【0043】
このようにすることで、各磁極の全ての磁束Φを突極32に導くことができるので、コイル5の鎖交磁束が最大化され、誘起電圧が最大化されることとなるため、発電量を最大化することができる。
【0044】
<第1の実施形態の変形例>
図7は、第1の実施形態の変形例に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
なお、第1の実施形態では、永久磁石4を歯22の内側表面22aに設ける構成について説明したが、これに限られることはない。例えば、
図7に示すように、永久磁石4は、歯22の半径方向Drの内側において、歯22の内部に埋め込まれてもよい。
図7の例は、歯22の鉄心の一部が永久磁石4により絶縁されることなく内側表面22aまで導通することが特徴である。導通部分は鉄心が突極32に近接するので、磁気吸引トルクを得ることができる。さらに、回転子3を半径方向Drの外側に、固定子2を半径方向Drの内側に配置するアウターロータの構成であってもよい。
【0045】
永久磁石4を歯22に埋め込む場合でも、埋込深さt
dが小さければ還流磁束Φ
Lは埋込深さt
dにより流路面積が制限され、近似的に歯22の内側表面22aに配置するのと略同等の効果が得られる。具体的には、還流磁束Φ
Lの流路面積が永久磁石4の磁極の磁路面積を超えるまでは近似的な効果があると考える。したがって、
図7に示すように、軸方向Daの何れかの断面において、歯22への永久磁石4の埋込深さt
dが、永久磁石4の総磁石幅Wmの1/2以下であればよい。
【0046】
埋込深さt
dは歯22の内側表面22aと永久磁石4との半径方向Drの距離である。なお、歯22の内側表面22aが平坦(周方向Dcの各位置において回転軸8との距離が等しい)であり、上述の第1の実施形態(
図3)のように永久磁石4を内側表面22aに張り付けた場合、埋込深さt
dは負の値をとる。
【0047】
また、第1の実施形態において、永久磁石4の周方向Dcにおける長さが、歯22の周方向Dcにおける長さと同じである(永久磁石4が内側表面22a全てを覆う)構成について説明したが、これに限られることはない。例えば、
図7に示すように、歯22の一部に永久磁石4が設けられていない(永久磁石4に覆われていない)としても、その比率が小さければ、近似的に第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。永久磁石4が設けられていない部分は、還流磁束の磁路となるが、還流磁束の磁路面積が磁極の磁路面積と等しくなるまでは近似的に効果が得られると考える。したがって、歯22の軸方向Daの何れかの断面において総磁石幅Wmが、歯22の総幅Wtの1/2を超えていればよい。また、総磁石幅Wmは、歯22の総幅Wtより長くしてもよい。
【0048】
図8は、第1の実施形態の変形例に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
埋込深さtdは、歯22の内側表面22aと永久磁石4との最小距離である。例えば
図8のように、永久磁石4が複数の磁石を傾けて配置したものであっても、最小距離が総磁石幅Wmの1/2以下であれば、本変形例の範囲に含まれる。
【0049】
また、総磁石幅Wmは、磁石一つひとつの周方向Dcの最大長さの総和である。例えば
図8のように、永久磁石4が複数の磁石を傾けて配置したものであっても、総磁石幅Wmが歯22の総幅Wtの1/2以下であれば、本変形例の範囲に含まれる。
【0050】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図9~
図10を参照しながら説明する。第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0051】
図9Aは、第2の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
図9Aに示すように、固定子2の歯22は、継鉄部21から半径方向Drの内側に延びる胴部221と、胴部221の先端側に設けられ、胴部221よりも周方向Dcに長い鍔部222とを有する。具体的には、
図9Aの例のように、鍔部222は、半径方向Drの内側に向かうほど周方向Dcにおける長さ(弧の長さ)が長くなるように形成される。このように、胴部221の弧の長さを短くした分、コイル5を巻回するスペースを広く確保できるので、太い巻線を使うことができる。これにより、巻線のジュール発熱が下がり、効率が改善する。
【0052】
また、歯22の胴部221の弧の長さW3は、永久磁石4の一つの磁極の弧の長さW2と同一の長さである。なお、胴部221の長さW3と磁極の長さW2との差が所定差以内であれば、同一の長さであるとする。
【0053】
磁極の残留磁束密度は、最大でも1.3T(テスラ)程度である。磁性鋼板に磁気飽和の傾向が表れるのは磁束密度が2T程度からである。歯22の胴部221の弧の長さW3を永久磁石4の一つの磁極の弧の長さW2に一致させてあれば、永久磁石4により歯22の胴部221に発生する磁束密度は残留磁束密度程度にしかならないので、胴部221で磁束が飽和する恐れなくコイル5の巻回スペースを確保することができる。または、歯の胴部221が磁気飽和を始める限度まで磁路を狭めてもよい。例えば、歯22の飽和磁束密度をBs、永久磁石4の残留磁束密度をBrとしたとき、W3=Br/Bs×W2とすることで、巻回スペースを広げることもできる。なお、W3≧Br/Bs×W2としてもよい。例えば、飽和磁束密度Bsは2.0T、残留磁束密度Brは1.3Tであるが、歯22に用いる磁性鋼板や、永久磁石4に応じて値を変えてもよい。
【0054】
同様に、
図9Bのように突極32が胴部321(突極胴部)および鍔部322(突極鍔部)を有する構成とし、突極32の胴部321の幅W6を、鍔部322の幅W1よりも狭くしてもよい。例えば、W6=Br/Bs×W1としてもよい。これにより、突極32の周方向Dcのパーミアンスを抑制することができる。
図5に示す還流磁束φ
Lの一部は、突極32の胴部の側面を経由するものもある。突極32にも鍔部322を設けて、これを阻害する。
【0055】
また、
図9Cのように、コイル5の巻回スペースは歯22の総幅Wtを超えてもよい。隣の歯のコイル5と接触しなければよい。さらに、総磁石幅Wmも歯22の総幅Wtを超えてもよい。総磁石幅Wmが歯22の総幅Wtを超えるときには、超えた磁石の幅を無視して磁極の弧の長さW2を定めてもよい。
【0056】
また、
図9Dのように、歯22に磁極が奇数個ある場合のように、磁極41の総幅と磁極42の総幅が異なる場合には、総幅が大きい方の磁極の総幅に基づいて胴部221の幅W3を決めてもよい。
図9Dの例では、磁極41の総幅は2×W2であり、磁極42の総幅はW2´である。このとき、胴部221の幅W3は、磁極41の総幅2×W2に基づいて、例えば、W3≧Br/Bs×(2×W2)のように定めてもよい。突極32の幅W1は、W2′とW2の大きい側に定めてもよい。
図9Dの例では、突極32の幅W3は、磁極42の幅W2′に基づいて、例えば、W1=W2′と定めてもよい。
【0057】
図10は、第2の実施形態の対比例に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
例えば、
図10の対比例のように、歯22ひとつについて磁極がひとつ(磁極41のみ、または磁極42のみ)であると、磁束の飽和を防ぐために、胴部221の弧の長さW3を磁極の弧の長さW2に対して相対的に大きくせざるを得ない。その結果、コイル5のスペースが減る。これは、回転子に永久磁石を設ける従来の同期機においても起きることであり、ジュール発熱を勘案しながらコイルの断面積を調節しなければならない。
【0058】
これに対し、
図9Aの例のように、永久磁石4が二つの磁極(第1磁極41,第2磁極42)を有する場合、胴部221の弧の長さW3は、回転子3に対向する鍔部222の弧の長さの半分でよくなり、その分、胴部221の周囲にコイル5を巻回するスペースを広く確保できる。さらに、胴部221において、隣合う歯22の離隔距離が長くなるので、隣りの歯22に漏洩する磁束が減る。よって、リラクタンス同期機1の力率をより改善することができる。
【0059】
なお、
図9Aには、一つの歯22に対し、二つの磁極41,42を有する永久磁石4を設けた例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、一つの歯22に対し、三つ以上の磁極を有する永久磁石4を設けてもよい。さらに、
図9Aでは、隣り合う歯22は、第1磁極41と第2磁極42の配列が周方向Dcについて同一であるように表示しているが、これに限られることはない。例えば、
図9Eのように、一つの磁極(
図9Eでは磁極42)が複数の歯に跨って配置されてもよい。このとき、
図9Eに示すW2‘が磁極42の幅である。回転子3の突極32の周方向Dcにおける長さW1はW2’に一致させてもよい。
【0060】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図11を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0061】
図11は、第3の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
回転子3の突極32は、歯22と交差しない位置では仕事をしない。具体的には
図11において突極32の位置がθ
6のとき、突極32は歯22と交差しないので仕事をしない。これを考慮して、本実施形態では、隣り合う歯22との周方向Dcにおける離隔距離W7を、回転子3の突極32の周方向Dcにおける長さW1(弧の長さ)以下とする。このようにすることで、
図11のθ
6のように突極32が仕事をしない位置を減らし、リラクタンス同期機1の出力を向上させることができる。なお、隣り合う歯22との周方向Dcにおける離隔距離W7が、回転子3の突極32の周方向Dcにおける長さW1(弧の長さ)を超える程度が小さければリラクタンス同期機1の出力は保たれるので、W7≦1.5×W1であれば本願の範囲である。
【0062】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図12~
図13を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0063】
図12Aは、第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
図12Aでは、永久磁石4は、固定子2の一つの歯22に対して周方向Dcに交番する二つ以上の磁極41,42を有する例を示している。また、固定子2の歯22は、隣接する磁極41,42が周方向Dcに接する位置に、一般化すれば磁極の周方向Dcの端部に接する位置に、内側表面22aから半径方向Drの外側に向かって窪んだ凹部223をさらに有している。凹部223は空隙であっても良いし、磁石を埋め込んでも良い。凹部223は、半径方向Drに磁束を通り難くする(パーミアンスを小さくする)ことが目的であり、歯22の鉄心を取り除いてそれを達成する。鉄心を取り除いた部分が凹部223となる。
【0064】
なお、
図12Aに示すように、歯22の周方向Dcの端部から凹部223までの距離W5と、突極32の弧の長さW1とは同一の長さであることが望ましい。上述の各実施形態と同様に、距離W5と突極32の弧の長さW1との差が所定差以内であれば、同一の長さであるとする。例えば、W1がW2と同一の長さであっても、近似的に本実施例と同様の効果は得ることができる。また、一つの歯22に三つ以上の磁極を有する構成では、各磁極が周方向Dcに接する位置それぞれに一つずつ凹部223を設けてもよい。この場合も、歯22の端部から凹部223までの距離W5、および、二つの凹部223間の距離W5が突極32の弧の長さW1と同一の長さとなるように配置されることが望ましい。さらに、一つの歯22に一つの磁極のみを有する構成では、凹部223は設けなくてもよい。この場合、各磁極の両端は隣の歯22との隙間があり、この隙間が凹部223と同様に機能する。
【0065】
図12Bは、第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
凹部223は、固定子2の継鉄部21と突極32を連絡する磁束の方向に沿って歯22Aが深くくり抜かれてもよい。たとえば凹部223は、軸方向Daから見て楔形である。具体的には、
図12Bの例のように、半径方向Drの外側(歯22の胴部221側)に向かうほど、凹部223の周方向Dcの幅は小さくなる。このように凹部223を楔型形状とすることで、半径方向Drの外側に向かうほど磁束の通路が縮小する程度を小さくして、磁束の流れの渋滞を抑制することができる。したがって、凹部223を半径方向Drに深くくりぬくことが可能となる。また、凹部223は、歯22Aの鍔部222に亘って、胴部221にまで(例えば、胴部221の中間付近まで)半径方向Drに形成されていてもよい。凹部223として歯22Aが深くくり抜かれることにより、特に鉄心と磁石の接合面の近くで隣り合う磁極に還流する磁束を制限する追加的な効果が得られる。
【0066】
図12Aおよび
図12Bの突極32Aは、歯22Aの鉄心と完全に交差しており、歯22Aと突極32Aとの間のパーミアンスは最大である。突極32A以外の位置、例えば、突極32Bの位置では、凹部223のため、突極32Bは歯22Bの鉄心と完全には交差できずパーミアンスが小さい。このように、本実施形態では、周方向Dcに周期的なパーミアンスの変化を付けることで、歯22が突極32を吸引するリラクタンストルクの発生が向上し、リラクタンス同期機1の出力を向上させることができる。
【0067】
図13は、第4の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第3の図である。
図13に示すように、固定子2の歯22は、凹部223に代えて、磁極41,42が周方向Dcに接する位置に、一般化すれば磁極の周方向Dcの端部に接する位置に、歯22の内側表面22aから半径方向Drの内側に向かって突出する凸部224を有してもよい。また、
図12の例のように、磁極41,42の周方向Dcの端部に凸部224をさらに有していてもよい。一つの歯に磁極が一つの場合においても、磁極の端部に凸部224を設けてもよい。
【0068】
凸部224は、半径方向Drに磁束が通り易くする(パーミアンスを小さくする)ことが目的であり、歯22を半径方向Drの内側に延長してそれを達成する。凹部223と同様に、凸部224によっても周方向Dcに周期的なパーミアンスの変化が生じ、リラクタンス同期機1の出力を向上させることができる。
【0069】
また、
図13の例では、突極32の弧の長さW1と一つの磁極の弧の長さW2とは同じ長さとする。したがって、
図13のように磁極の両端部に凸部224を設ける場合、周方向Dcの端部の凸部224と、中央部の凸部224との離隔距離は、突極32の弧の長さW1と同一の長さである。上述の各実施形態と同様に、磁極の弧の長さW2と突極の弧の長さW1との差が所定差以内であれば、同一の長さであるとする。
【0070】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図14を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0071】
図14Aは、第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
図14Bは、第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
図14Aに示すように、回転子3は等間隔に配置された複数の突極32を有する。また、永久磁石4は、固定子2の一つの歯22に対し複数の永久磁石401,402,…を周方向に配置してなる。隣接する永久磁石401,402,…は、半径方向Drの内側を向く磁極の極性が互いに異なるように(交番するように)配置される。例えば、
図14Aに示すように、半径方向Drの内側を向く磁極は、第1磁極41a,41b,・・・,41nと、第1磁極と正負を逆にする第2磁極42a,42b,・・・,42nとが交互に配置される。なお、突極32の凹凸の周期が、周方向Dcにおいて交番する磁極41a,42a,41b,42b,…の周期(すなわち、複数の永久磁石401,402,…を配置する周期)に近付くほど、
図4と
図5で述べた還流磁束φ
Lが減少し、リラクタンス同期機1の出力は向上する。つまり、回転子3の凸部(突極32)の弧の長さW1および凹部の弧の長さW1’は、磁極の弧の長さW2と同じ長さとすることが望ましい。また、固定子2の歯22は周方向Dcに等間隔に配置され、リラクタンス同期機1の相の数の倍数が設けられる。一般的なU,V,Wの3相交流に接続するとすれば、例えば、
図14Bのように、歯を6個、磁極数を24個、突極数を13としても良い。
【0072】
隣あう歯の永久磁石の周方向Dcの離隔距離をW7、歯22の数をn
T、永久磁石4の磁極の数をn
PM、突極32の数をn
PSとすると、
図14Bの同期機の歯の数n
T、永久磁石の磁極の数n
PM、突極の数n
PS、の構成例は式(4)のように一般化することができる。
【0073】
【0074】
式(4)は、例えば、同期機を設計する初期の段階に、歯の数、磁極の数、突極の数を決めるときに有益である。それぞれの数を定めたあと、例えば、突極32の凸部の周方向Dcの長さW1を減らして凹部の周方向Dcの長さW1′を増やす事や、隣り合う歯の永久磁石の周方向の離隔W7を減らして磁石の周方向Dcの長さW2を増やす事、などを式(5)が満たされるように微調整してもよい。
【0075】
【0076】
図14Cは、第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第3の図である。
式(4)を用いると、
図14Bの例の他にも、例えば、
図14Cのように、歯を6個、磁極数を24個、突極数を14個、なども同期機を構成する一例として得られる。
【0077】
さらに、式(5)の近似として、W7を0として式(6)のように寸法を調整してもよい。
【0078】
【0079】
図14Dは、第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第4の図である。
図14Dは、歯を6個、磁極数を24個、突極数を14に対し、式(6)に従ってW7を0と調整する例である。
【0080】
回転子3の突極32の凹凸は、凹凸の一つ一つが突極として作用する。したがって、
図14Aのように多数の突極32を設けることにより、リラクタンス同期機1を多極化した効果を得ることができる。このようすることで、リラクタンス同期機1は、減速機が無くても低速で大トルクを得ることができる。このため、例えば、風力発電装置のような低速第トルクの用途に適したリラクタンス同期機1とすることができる。
【0081】
また、一つの歯22に複数(多数)の磁極を配置すれば、コイル5の総数を減らすことができる。この結果、リラクタンス同期機1の製造コストを下げる効果が得られる。
【0082】
なお、一つの歯22が有する第1磁極41a,42a,…,41n(または第2磁極42a,42b,…,42n)の弧の長さの総和W2_totalと、歯22の胴部221の弧の長さW3は同一の長さである。または、歯22の胴部221で磁束飽和しない程度に胴部221の長さW3を短くする。具体的には、W2_total<Bs/Br×W3となるように、磁極の弧の長さの総和W2_totalおよび胴部221の弧の長さW3を設定する。このようにすることで、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
図14Eは、第5の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第5の図である。
火力発電などに使われる同期発電機は、発電機の回転数が系統の周波数に同期している。例えば、周波数が50Hzのエリアでは2極の同期発電機を3000rpmで、60Hzのエリアでは同じく2極の同期発電機を3600rpmで運転することが一般的である。本願の同期機1を2極機として機能させるには、
図14Eのように、(1)分布巻きにし、(2)突極数を2に減らせばよい。
図14Eでは、コイルは3個の歯22を囲むように巻いている。また、歯22の数n
Tを6、磁極数n
PMは6、突極数n
PSは2である。隣あう歯22の磁石の離隔長さW7はW2÷3である。式(4)は磁極の磁束を無駄なく使う場合に有効である。本実施例では、回転数の都合から突極数を強制的に2に減らすので、式(4)は適用しない。突極数n
PSを2に固定して、式(5)を満たすよう、歯数n
T、磁極数n
PMは、突極の周方向長さW1、磁極の周方向長さW2、隣り合う歯の磁極の離隔長さW7の値を決める。
【0084】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図15~
図16を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0085】
図15は、第6の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第1の図である。
図15に示すように、本実施形態に係るリラクタンス同期機1は、少なくとも一部の永久磁石に代えて、電磁石6を備える。電磁石6は、磁極の方向が半径方向Drに一致するよう設けられる。つまり、第1磁極63(例えば、N極)および第2磁極64(例えば、S極)が半径方向Drに並ぶように設けられる。また、
図15の例のように、電磁石6は、一つの歯22に対して複数の電磁石601,602(磁石部材)を備えていてもよい。このとき、周方向に隣接する電磁石601,602は、半径方向Drの内側の磁極が正負が逆の磁極をなすように設けられる。例えば、
図15のように、電磁石601は磁極63が、電磁石602は磁極64が半径方向Drの内側を向くように配置される。さらに、一つの歯22が一つの電磁石6を有していても良いし、周方向Dcに歯総幅Wtより長い電磁石6を備え、複数の歯22が同一の電磁石6を共有してもよい。二つ以上の歯22が同一の電磁石の磁極を共有するのは、例えば、コイル5を分布巻きにするときに有効である。
【0086】
電磁石6(電磁石601,602)は、鉄心61およびコイル62を有する。電磁石6のコイル62には外部から直流電力を供給し、交番しない直流磁界を発生させる。直流磁界であれば、自立起動はバッテリがあれば可能である。なお、全ての永久磁石4の磁極を電磁石6で完全に置き換えてもよいし、永久磁石4と電磁石6とを併用してもよい。
【0087】
また、電磁石6を用いた場合、リラクタンス同期機1の運転条件に応じて磁界の強さを可変とすることができる。これにより、リラクタンス同期機1を最も効率のよい状態で運転させることができる。
【0088】
なお、電磁石6は、超電導電磁石であってもよい。超電導磁石を用いる場合、鉄心61の磁気飽和が磁束の妨げとならないよう、鉄心61は取り除いても良い。超電導電磁石は冷却が必要である。一般の同期機では、電磁石は回転子に設けられるため、回転する回転子の内部に冷却材を流して超電導磁石を冷却することは容易ではない。これに対し、本実施形態では、電磁石6は静止部材である固定子2に設けられるため、一般の同期機と比較して、冷却材を流して電磁石6を冷却することは容易である。
【0089】
図16は、第6の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す第2の図である。
また、
図16に示すように、電磁石6の半径方向Drの内側に、更に永久磁石4を設けてもよい。
【0090】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図17を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0091】
図17は、第7の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
図17は、リラクタンス同期機1を回転軸8の歯22と突極32の位置の子午面の断面を表したものである。紙面の左右方向が軸方向Da、上下方向が半径方向Drを表す。
【0092】
図17に示すように、本実施形態に係るリラクタンス同期機1は、固定子2の歯22の先端部分、ならびに、回転子3の突極32、および、継鉄部21の軸方向Daの端部の少なくとも一方に、軸方向Daに張り出す張り出し部71をさらに備えることを特徴とする。固定子2の張り出し部71を備えるスペースについて説明する。歯22の軸方向Daの長さはAである。歯22にはコイル5が巻回される。歯の軸方向Daについては、歯の長さAよりさらに外側にコイル5を収めるスペースが必要になる。巻線端部のスペース225は、そのためのものである。巻線端部のスペース225において、巻線は主に周方向Dcに巻かれている。固定子2の張り出し部71は、巻線端部のスペース225と回転軸8とに挟まれた空きスペースに新規に設ける。固定子2の張り出し部71は、長さAの歯22と磁石4から胴部221を取り除いて構成する。すなわち、固定子2の張り出し部71は鍔部222と磁石4とから成る。
【0093】
回転子3の張り出し部71は、従来、回転子3は磁性鋼板を軸方向Daの長さAにわたって積層していたものを、積層を長さBまで延長して構成する。
なお、
図17には、固定子2の歯22および回転子3の突極32の両方が張り出し部71を備える構成が例示されているが、他の実施形態では、何れか一方を省略してもよい。
【0094】
まず、
図17を参照しながら、張り出し部71がない状態を説明する。歯22の胴部221にはコイル5が巻回される。張り出し部71が無い状態では、回転子3と固定子2との磁気的な空隙(いわゆるエアギャップ)の軸方向長はAである。これに対し、張り出し部71があると磁気的な空隙の軸方向長はBになる。発電機や電動機はコイル5を筐体内部に配置するのに充分な軸方向距離を有しているので、一般的に、張り出し部71の軸方向長さL1はBがコイル5の軸方向の端部を超えない程度に設定できる。
【0095】
発電機や電動機の出力は、回転子3と固定子2の磁気的な空隙の面積に比例する。このため、空隙の軸方向長をAからBにすることにより、発電機や電動機の出力をB/A倍にする効果が得られる。本実施形態のリラクタンス同期機1は、第2の実施形態で述べたように、歯22ひとつあたりにコイル5が占有する体積が大きいため、巻線端部の張り出しも利用する価値がある。
【0096】
<第8の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図17~
図18を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0097】
図17に、固定子2の張り出し部71を通る磁束φexを表している。固定子2の張り出し部71を通る磁束φexは、軸の中央に向かって軸方向Daに流れる。一般に、発電機および電動機の鉄心は、磁性鋼板を軸方向Daに積層して構成される。固定子2の張り出し部71も同様である。このため、固定子2の張り出し部71において磁束が軸方向Daに流れるときには、軸方向Daの磁束は磁性鋼板を一枚ずつ横切らなければならず、磁性鋼板を横切るときの磁気抵抗のために磁束が減少し、張り出し部71の効果が充分に得られない。
【0098】
そこで、
図18のように、固定子2の張り出し部71は電磁鋼板を回転軸8に平行に積層して磁気抵抗を低減する。固定子2の張り出し部71を通る磁束φexは、半径方向Drの成分もあるので、積層の方向は半径方向Drに平行、かつ、軸方向Daに平行、が最も好ましい。積層の向きの変更は、固定子2の張り出し部71の全部であっても良いし、一部であっても良い。
【0099】
固定子2の張り出し部71にほぞを設け、歯22の対面する位置にほぞ穴を設け、ほぞ継ぎによって接合してもよい。
【0100】
<第9の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図19を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0101】
図19は、第9の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
図19に示すように、本実施形態に係るリラクタンス同期機1において、歯22の張り出し部71は、筐体のフランジ部Fから軸方向Daに延びる支持部73により、フランジ部Fに支持される。フランジ部Fと固定子2の張り出し部71の接合はほぞ継ぎによってもよい。
【0102】
このようにすることで、張り出し部71の強度を向上することができる。
【0103】
<第10の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態に係るリラクタンス同期機1について
図20を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0104】
図20は、第10の実施形態に係るリラクタンス同期機の構成を示す図である。
図20に示すように、本実施形態に係るリラクタンス同期機1において、歯22の張り出し部71は、周方向Dcに延びる連結部材74により連結されることを特徴とする。連結部材74は、非磁性材料で形成される。連結部材74は、軸方向Daに、張り出し部71を超えて配置してもよい。
【0105】
このようにすることで、張り出し部71の強度を向上することができる。
【0106】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0107】
例えば、第3~第5および第7~第10の実施形態については、第2の実施形態の構成(
図9A)に対して各実施形態の構成を適用する例について説明したが、これに限られることはない。第1の実施形態の構成(
図1~
図3)またはその変形例の構成(
図7~
図8)に対して各実施形態の構成を適用してもよい。
【0108】
<付記>
上述の実施形態に記載の同期機1は、例えば以下のように把握される。
【0109】
(1)本開示の第1の態様によれば、同期機1は、環状の継鉄部21から半径方向Drの一方側に向かって突出し、コイル5が巻装された歯22を有する固定子2と、固定子2よりも半径方向の一方側において、歯22に空隙Gをもって配置された突極32を有する回転子3と、歯22の半径方向Drの一方側に設けられた磁石4,6と、を備える。
【0110】
このようにすることで、同期機1は、磁石4,6が発生させる磁束と、回転子3の回転によりコイル5に誘起電圧を生じさせることができるので、停電時であっても自立起動することが可能となる。また、磁石4,6による磁石補助を得ることで、コイル5のインダクタンスを小さくして力率を改善することができる。さらに、一般的な同期機では、回転子に永久磁石を設けている。しかしながら、回転子に永久磁石を設ける構成では、回転時に遠心力によって永久磁石が剥落する可能性があるため、保持のために穴を開けて埋め込むなどの加工が必要であった。これに対し、本実施形態に係る同期機1では、静止している固定子2に永久磁石4を取り付けるので、接着剤で接着するなどの簡易な取り付け手段でも剥落を抑制することが可能である。
【0111】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る同期機1において、磁石4,6は前記歯の半径方向Drの一方側を向く先端面22aに設けられる。
【0112】
このようにすることで、同期機1は、コイル5のインダクタンスをさらに小さくして力率を効果的に改善することができる。
【0113】
(3)本開示の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る同期機1において、少なくとも1つの磁石は、極性の異なる第1磁極41および第2磁極42が半径方向に並ぶように配置された永久磁石4である。
【0114】
このようにすることで、同期機1は、固定子2の歯22から回転子3の突極32へ向かう磁束、または、回転子3の突極32から固定子2の歯22へ向かう磁束を発生させることができる。つまり、効率的にリラクタンストルクを発生させることができる。
【0115】
(4)本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る同期機1において、少なくとも1つの磁石は、直流磁界を発生させる電磁石6である。
【0116】
このようにすることで、同期機1は、バッテリで電磁石6に直流電力を供給することにより自立起動することができる。また、電磁石6を用いた場合、同期機1の運転条件に応じて磁界の強さを可変とすることができる。これにより、同期機1を最も効率のよい状態で運転させることができる。
【0117】
(5)本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る同期機1において、突極32の周方向Dcにおける長さは、磁石4,6の磁極の周方向Dcにおける長さと等しい。
【0118】
このようにすることで、各磁極の全ての磁束Φを突極32に導くことができるので、コイル5の鎖交磁束が最大化され、誘起電圧が最大化されることとなるため、発電量を最大化することができる。
【0119】
(6)本開示の第6の態様によれば、第1から第5の何れか一の態様に係る同期機1において、歯22は、隣接する歯22との周方向Dcにおける離隔距離W7が、突極32の周方向Dcにおける長さ以下となるように配置される。
【0120】
このようにすることで、同期機1は、突極32が仕事をしない位置を減らし、出力を向上させることができる。
【0121】
(7)本開示の第7の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る同期機1において、歯22は、継鉄部21から半径方向Drの一方側に延びる胴部221と、胴部221の先端側に設けられ、胴部221よりも周方向Dcの長さが長い鍔部222とを備え、磁石4の磁極の周方向Dcにおける長さをW2、胴部221の周方向Dcにおける長さをW3、歯22の飽和磁束密度をBs、磁石4の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W3≧Br/Bs×W2を満たす。
【0122】
このようにすることで、同期機1は、胴部221で磁束が飽和することを抑制しつつ、コイル5を巻回するスペースを確保することができる。
【0123】
(8)本開示の第8の態様によれば、第7の態様に係る同期機1において、胴部221の周方向Dcにおける長さW3は、磁石4の磁極の周方向における長さW2と等しい。
【0124】
このようにすることで、同期機1は、胴部221で磁束が飽和することをより確実に抑制することができる。
【0125】
(9)本開示の第9の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る同期機1において、突極32は、半径方向Drに延びる突極胴部321と、突極胴部321の先端側に設けられ、突極胴部321よりも周方向Dcの長さが長い突極鍔部322とを備え、突極鍔部322の周方向Dcの長さをW1、突極胴部321の周方向の長さをW6、歯の飽和磁束密度をBs、磁石の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W6=Br/Bs×W1を満たす。
【0126】
このようにすることで、同期機1は、還流磁束の発生を抑制することができる。
【0127】
(10)本開示の第10の態様によれば、第7の態様に係る同期機1において、磁石4,6は、一つの歯22に対し極性の異なる第1磁極41,63および第2磁極42,64が半径方向Drに並ぶ磁石部材を周方向Dcに二つ以上配置してなり、隣接する磁石部材は、半径方向Drの一方側を向く磁極の極性が互いに異なるように配置される。
【0128】
例えば、二つの磁極を有する場合、胴部221の弧の長さW3は、回転子3に対向する鍔部222の弧の長さの半分でよくなり、その分、胴部221の周囲にコイル5を巻回するスペースを広く確保できる。さらに、胴部221において、隣合う歯22の離隔距離が長くなるので、隣りの歯22に漏洩する磁束が減る。よって、同期機1の力率をより改善することができる。
【0129】
(11)本開示の第11の態様によれば、第7の態様に係る同期機1において、歯22は、半径方向Drの一方側を向く先端面22aに少なくとも一つの凹部223を有し、凹部223は、歯22の周方向Dcの端部から凹部223までの距離W5、または、二つの凹部間の距離W5が突極32の周方向の長さW1と同一となるように配置される。
【0130】
このようにすることで、同期機1は、周方向Dcに周期的なパーミアンスの変化を付けることができるので、歯22が突極32を吸引するリラクタンストルクの発生が向上し、出力を向上させることができる。
【0131】
(12)本開示の第12の態様によれば、第11の態様に係る同期機1において、凹部223は、軸方向Daから見て歯22の胴部221側に向かうほど周方向Dcの長さが小さくなる楔形状の断面形状を有する。
【0132】
このように凹部223を楔型形状とすることで、半径方向Drの外側に向かうほど磁束の通路が縮小する程度を小さくして、磁束の流れの渋滞を抑制することができる。したがって、凹部223を半径方向Drに深くくりぬくことが可能となる。凹部223として歯22Aが深くくり抜かれることにより、特に鉄心と磁石の接合面の近くで隣り合う磁極に還流する磁束を制限する追加的な効果を得ることができる。
【0133】
(13)本開示の第13の態様によれば、第7の態様に係る同期機1において、歯22は、半径方向Drの一方側を向く先端面22aに少なくとも一つの凸部224を有し、凸部224は、磁石4の磁極の周方向Dcの端部に接する位置に配置される。
【0134】
このようにすることで、同期機1は、周方向Dcに周期的なパーミアンスの変化を付けることができるので、歯22が突極32を吸引するリラクタンストルクの発生が向上し、出力を向上させることができる。
【0135】
(14)本開示の第13の態様によれば、第10の態様に係る同期機1において、回転子3の突極32を設ける周期は、周方向Dcにおいて磁極の極性が交番する周期と等しい。
【0136】
このようにすることで、同期機1は、減速機が無くても低速で大トルクを得ることができる。このため、例えば、風力発電装置のような低速第トルクの用途に適した同期機1とすることができる。
【0137】
(15)本開示の第15の態様によれば、第14の態様に係る同期機1において、複数の磁石部材のうち、半径方向Drの一方側を向く磁極が第1磁極41,63である磁石部材、または、半径方向Drの一方側を向く磁極が第2磁極42,64である磁石部材の周方向Dcの長さの総和をW2_total、胴部221の周方向Dcにおける長さをW3、歯22の飽和磁束密度をBs、磁石4,6の磁極の残留磁束密度をBrとしたとき、W2_total<Bs/Br×W3を満たす。
【0138】
このようにすることで、同期機1は、胴部221で磁束が飽和することを抑制しつつ、コイル5を巻回するスペースを確保することができる。
【0139】
(16)本開示の第16の態様によれは、第15の態様に係る同期機1において、総和W2_totalは、胴部221の周方向Dcにおける長さW3と等しい。
【0140】
このようにすることで、同期機1は、より確実に胴部221で磁束が飽和することを抑制することができる。
【0141】
(17)本開示の第17の態様によれば、第1から第16の何れか一の態様に係る同期機1は、歯22および突極32の少なくとも一方の軸方向Daの端面に設けられた張り出し部71をさらに備える。
【0142】
このようにすることで、同期機1は、張り出し部71によって磁気的な空隙の軸方向長を伸ばすことができるため、その分、出力を向上させることができる。
【0143】
(18)本開示の第18の態様によれば、第17の態様に係る同期機1は、周方向Dcに積層され、半径方向Drの一方の端部が歯22の張り出し部71に接するように設けられた磁路72をさらに備える。
【0144】
このようにすることで、同期機1は、張り出し部71の軸方向Daの磁気抵抗を少なくすることができる。
【0145】
(19)本開示の第19の態様によれば、第17または第18の態様に係る同期機1において、歯22の張り出し部71は、フランジ部Fから軸方向Daに延びる支持部73により、フランジ部Fに支持される。
【0146】
このようにすることで、張り出し部71の強度を向上することができる。
【0147】
(20)本開示の第20の態様によれば、第17または第18の態様に係る同期機1において、歯22の張り出し部71は、周方向Dcに延びる板状の連結部材74により連結される。
【0148】
このようにすることで、張り出し部71の強度を向上することができる。
【0149】
(21)本開示の第21の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る同期機1において、磁石4,6の磁極の周方向Dcにおける長さをW2、周方向Dcに隣り合う歯22のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をW7、歯22の数をnT、周方向Dcに並ぶ磁極の数をnPM、突極32の数をnpsとしたとき、歯22の数、磁極の数、および突極32の数は、nTW7=(2nps-nPM)W2を満たすように設定される。
【0150】
このようにすることで、同期機1を設計する際に、歯22の数、磁極の数、突極32の数を適切に決定することができる。
【0151】
(22)本開示の第22の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る同期機1において、突極32の周方向の幅をW1、隣り合う突極32間の幅をW1´、磁石4,6の磁極の周方向Dcにおける長さをW2、周方向Dcに隣り合う歯22のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をW7、歯22の数をnT、周方向Dcに並ぶ磁極の数をnPM、突極32の数をnpsとしたとき、突極32の幅W1、隣り合う突極32間の幅W1´、磁極の周方向Dcにおける長さW2、および離間距離W7は、nTW7=nps(W1+W1´)-nPMW2を満たすように設定される。
【0152】
このようにすることで、同期機1を設計する際に、歯22の数、磁極の数、突極32の数を決定した後に、各構成の幅や離間距離などの寸法を適切に調整することができる。
【0153】
(23)本開示の第23の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係る同期機1において、突極32の周方向の幅をW1、隣り合う突極32間の幅をW1´、磁石4,6の磁極の周方向Dcにおける長さをW2、周方向Dcに隣り合う歯22のうち一方の歯に設けられる第1の磁石と、他方の歯に第1の磁石と対向して設けられる第2の磁石との離間距離をゼロ、歯22の数をnT、周方向Dcに並ぶ磁極の数をnPM、突極32の数をnpsとしたとき、突極32の幅W1、隣り合う突極32間の幅W1´、および磁極の周方向Dcにおける長さW2は、0=nps(W1+W1´)-nPMW2を満たすように設定される。
【0154】
このようにすることで、同期機1を設計する際に、歯22の数、磁極の数、突極32の数を決定した後に、各構成の幅や離間距離などの寸法を適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0155】
1 リラクタンス同期機(同期機)
2 固定子
21 継鉄部
22 歯
22a 内側表面
221 胴部
222 鍔部
223 凹部
224 凸部
225 巻線端部のスペース
3 回転子
31 継鉄部
32 突極
321 胴部(突極胴部)
322 鍔部(突極鍔部)
4 永久磁石(磁石)
401,402 永久磁石(磁石部材)
5 コイル
6 電磁石(磁石)
601,602 電磁石(磁石部材)
61 鉄心
62 コイル
8 回転軸
71 張り出し部
72 磁路
73 支持部
74 連結部材
F フランジ部
G 空隙