(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060313
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電磁結合式ICモジュールおよびデュアルICカード
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
G06K19/077 196
G06K19/077 188
G06K19/077 264
G06K19/077 244
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167617
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】武田 茂憲
(72)【発明者】
【氏名】金子 真士
(72)【発明者】
【氏名】塚田 哲也
(57)【要約】
【課題】電磁結合に対応できないICモジュールを用いて簡便に製造できる電磁結合式ICモジュールを提供する。
【解決手段】電磁結合式ICモジュール1は、基板101と、基板の第一面に設けられた接触通信用端子と、基板において、第一面と反対側の第二面に配置され、接触通信用端子に接続されたICチップ102と、第二面に配置され、ICチップに接続された接続パッド105と、金属製のワイヤで形成されて第二面に配置されたコイル20とを備える。コイルは、ICチップの周囲を周回しており、両端部が接続パッドと電気的に接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第一面に設けられた接触通信用端子と、
前記基板において、前記第一面と反対側の第二面に配置され、前記接触通信用端子に接続されたICチップと、
前記第二面に配置され、前記ICチップに接続された接続パッドと、
金属製のワイヤで形成されて前記第二面に配置されたコイルと、
を備え、
前記コイルは、前記ICチップの周囲を周回しており、両端部が前記接続パッドと電気的に接続されている、
電磁結合式ICモジュール。
【請求項2】
前記ICチップを覆う封止樹脂をさらに備え、
前記コイルの少なくとも一部が前記封止樹脂上に位置する、
請求項1に記載の電磁結合式ICモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁結合式ICモジュールを備える、
デュアルICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁結合式ICモジュールに関する。この電磁結合式ICモジュールを用いたデュアルICカードについても言及する。
【背景技術】
【0002】
接触通信と非接触通信との両方を行えるデュアルICカードが知られている。
デュアルICカードの一般的な構造が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のデュアルICカードは、接触通信用の端子を含むICモジュールと、コイル状のブースタアンテナとを備えている。ICモジュールは、ブースタアンテナと電気的に接続するためのコイルを備えた電磁結合式ICモジュールであり、コイルを介してICモジュールとブースタアンテナとが電磁結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触通信用の端子を含むICモジュールには、上述した電磁結合式のほかに、物理接続用の金属パッドのみを備えて電磁結合に対応できないものも存在する。両者は接触通信用端子およびICチップを備える点で共通しているが、製造工程が異なるため、製品としては全く別のものである。
このため、各々の生産状況によっては、電磁結合可能なICモジュールが十分に調達できない可能性があるが、このような場合に、仮に電磁結合に対応できないICモジュールが容易に調達できたとしても、これをデュアルICカードの製造に用いることは現状困難である。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、電磁結合に対応できないICモジュールを用いて簡便に製造できる電磁結合式ICモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、基板と、基板の第一面に設けられた接触通信用端子と、基板において、第一面と反対側の第二面に配置され、接触通信用端子に接続されたICチップと、第二面に配置され、ICチップに接続された接続パッドと、金属製のワイヤで形成されて第二面に配置されたコイル20とを備える電磁結合式ICモジュールである。
コイルは、ICチップの周囲を周回しており、両端部が接続パッドと電気的に接続されている。
【0007】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る電磁結合式ICモジュールを備えたデュアルICカードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電磁結合式ICモジュールは、電磁結合に対応できないICモジュールを用いて簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一般的な物理接合式ICモジュールの底面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電磁結合式ICモジュールの底面図である。
【
図4】カード本体を構成するインレイの一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るデュアルICカードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図6を参照しながら説明する。
図1に、一般的な物理接合式ICモジュール100の底面図を示す。ICモジュール100は、所定の通信周波数領域において通信可能なICチップ102を基板101の下面(第二面)上に備える。ICチップ102は、封止樹脂103に覆われて保護されている。
基板101において反対側の上面(第一面)には、ICチップ102と接続された接触通信用端子104が形成されている。接触通信用端子104は、ICモジュール100の底面視においては視認できないため、
図1では破線で示している。
【0011】
基板101の下面には、さらに導体で形成された接続パッド105が配置されている。接続パッド105は、ICチップ102と接続されており、半田等を用いてICモジュール100をカード本体側の機構と接続する際に用いられる。
ICモジュール100は、電磁結合用のコイルを備えていないため、カード本体側の機構と電磁結合により接続することはできない。
【0012】
本発明に係る電磁結合式ICモジュールは、上述した物理接合式ICモジュール100を用いて製造できる。
図2に、本実施形態に係る電磁結合式ICモジュール1の平面図を示す。電磁結合式ICモジュール1は、接続パッド105に接続されたコイル20を備えている。コイル20は、線状の導体でICチップ102および封止樹脂103の周囲を周回するように形成されている。
【0013】
図3は、
図2のI-I線における模式断面図である。
図2および
図3に示されるように、コイル20の両端部は、それぞれ異なる接続パッド105上に位置し、当該接続パッドと電気的に接続されている。
コイル20と接続パッド105との接続手段に特に制限はない。具体例を挙げると、半田、熱や超音波による溶接、導電性接着剤、異方性導電膜(ACF)等である。
【0014】
コイル20の周回態様は、後述するカード本体側の機構との電磁結合特性やカード全体のインダクタンス等を考慮して適宜設定できる。
図2では、簡略化して示しているが、コイルの周回数は、一般的に10以上である。
【0015】
コイル20を構成する線状の導体としては、金ワイヤや銅ワイヤ等の金属製ワイヤを例示でき、コストと性能とのバランスの観点からは銅ワイヤが好ましい。
ワイヤの線径も適宜設定できるが、上述した周回数や、一般的な物理接合式ICモジュールの寸法等を考慮すると、100μm以下が好ましく、10μm以上60μm以下がより好ましい。
【0016】
コイル20は、基板101にも接合されていることが好ましい。基板101に接合されることにより、カード本体側の機構との電磁結合状態を安定化させることができる。基板101との接合手段には特に制限はない。具体例を挙げると、熱や圧力による接合や、接着剤による接合等である。熱や圧力により接合する場合、
図3に示されるように、コイル20の一部が基板101の表面を変形させてめり込んでいてもよい。
【0017】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁結合式ICモジュール1は、接続パッド105に接続されたコイル20を備えることにより、物理接合式ICモジュール100に簡便に電磁結合機能を付与できる。したがって、電磁結合式ICモジュールの調達が困難であっても、物理接合式ICモジュールを調達できれば、これに電磁結合機能を付与してデュアルICカードの製造に使用することができる。これは、ICチップの需要に対して供給が必ずしも十分とは言えない昨今の世界状況に鑑みると、大きな利点であると言える。
【0018】
一般的な電磁結合式ICモジュールの多くでは、生産性を考慮し、金属箔のエッチングによりコイルが形成されるが、本実施形態では金属製のワイヤを用いるため、エッチングで用いられるような大掛かりな設備が必要なく、比較的少数の物理接合式ICモジュールに電磁結合を付与する場合にも簡便に適用できる。
【0019】
さらに、エッチングによるコイル形成が困難な、封止樹脂103上にもコイル20を配置することが可能となり、コイルのレイアウト自由度が著しく高い点も利点である。例えば、材料となる物理接合式ICモジュールのロットごとに通信特性を確認してコイルレイアウトを微調整し、電磁結合を常に最適化するといったことも本実施形態の構成では可能であり、所定のマスクを用いるエッチングプロセスではこのようなことは困難である。
【0020】
電磁結合式ICモジュール1と電磁結合されるカード本体側の機構の一例として、
図4にインレイ200の平面図を示す。インレイ200は、電磁結合用コイル201と、ブースタアンテナ202と、インピーダンス調節用のキャパシタンス203とが合成樹脂製のシート204上に設けられた公知の構成を有する。インレイ200を外層となる板状の合成樹脂で挟んで熱および圧力をかけたラミネートで一体化すると、カード本体が完成する。
外層の電磁結合用コイルに対応する位置に電磁結合式ICモジュール1と同等の大きさの段付き穴を形成し、接触通信用端子104を外側に向けて電磁結合式ICモジュール1を穴にはめ込み固定すると、コイル20と電磁結合用コイル201とが非接触状態で対向し、電磁結合可能な位置関係となる。これにより、
図5に示す、本実施形態に係るデュアルICカード3が完成する。デュアルICカード3は、接触通信用端子104による接触通信と、ブースタアンテナ202による非接触通信との両方が可能である。
【0021】
上述した製造過程において、外層に形成する段付き穴は、ラミネートの前後いずれに形成されてもよい。電磁結合式ICモジュール1は、コイル20を構成するワイヤの線径が十分小さいことにより、元となる物理接合式モジュールと比較して、寸法変化はわずかである。このため、外層に形成する段付き穴の寸法を物理接合式モジュールの設定から変更しなくてよい場合が多くなり、この点でも生産性を低下させにくい。
【0022】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0023】
例えば、接続パッドと接続されるコイルの端部を平坦に延ばして接続パッドとの面積を増加させ、電気的接続をより確実にしてもよい。
【0024】
また、コイルは絶縁被覆されていてもよい。コイルが絶縁被覆されていると、接触通信用端子の接続に用いるスルーホールや接続パッドの上でコイルを周回させることも可能になる。このため、コイルレイアウトの自由度を著しく高めることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 電磁結合式ICモジュール
3 デュアルICカード
20 コイル
100 物理接合式ICモジュール
102 ICチップ
103 封止樹脂
104 接触通信用端子
105 接続パッド