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特開2024-60317肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060317
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/342 20140101AFI20240424BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240424BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240424BHJP
【FI】
B23K26/342
B23K26/064 Z
B23K26/21 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167622
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】伏野 亮史
(72)【発明者】
【氏名】平岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日笠 昭人
(72)【発明者】
【氏名】月元 晃司
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA32
4E168BA56
4E168CB03
4E168DA24
4E168DA28
4E168EA17
4E168FB03
4E168JB04
4E168KA04
(57)【要約】
【課題】金属部材への熱影響を抑えつつ、溶接ビード同士が重なる部分における融合不良の発生を抑制可能な肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法を提供する。
【解決手段】肉盛溶接方法は、金属部材の表面に、溶接金属粉末を供給しつつレーザビームを照射して、金属部材の表面に肉盛溶接する肉盛溶接方法であって、レーザビームにより溶接金属粉末を溶融及び凝固させて、溶接ビードを金属部材の表面上に形成する溶接ビード形成工程を繰り返し実行して、金属部材の表面上に複数の溶接ビードを形成する。複数の溶接ビードは、溶接ビードの幅方向の一部が互いに重なり合っている。この肉盛溶接方法は、先に形成した溶接ビードに隣接する溶接ビードである隣接溶接ビードを形成する際のレーザビームのエネルギー密度を、隣接溶接ビード中で先に形成した溶接ビードに重ならない部分よりも、先に形成した溶接ビードに重なる部分を高くするように調節する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材の表面に、溶接金属粉末を供給しつつレーザビームを照射して、前記金属部材の表面に肉盛溶接する肉盛溶接方法において、
前記レーザビームにより前記溶接金属粉末を溶融及び凝固させて、溶接ビードを前記金属部材の表面上に形成する溶接ビード形成工程を繰り返し実行して、前記金属部材の表面上に複数の溶接ビードを形成し、
前記複数の溶接ビードは、前記溶接ビードの幅方向の一部が互いに重なり合い、
先に形成した溶接ビードに隣接する溶接ビードである隣接溶接ビードを形成する際の前記レーザビームのエネルギー密度を、前記隣接溶接ビード中で前記先に形成した溶接ビードに重ならない部分よりも、前記先に形成した溶接ビードに重なる部分を高くするように調節する
肉盛溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の肉盛溶接方法において、
光回折格子を用いて前記レーザビームのエネルギー密度を調節する
肉盛溶接方法。
【請求項3】
請求項2に記載の肉盛溶接方法において、
前記溶接ビード形成工程の実行前に、前記金属部材の縁に沿ってタブを設けるタブ配置工程と、
前記複数の溶接ビードを形成した後に、前記タブと共に、前記溶接ビード中の前記タブ上に形成された部分を除去する不要部除去工程と、
を実行する
肉盛溶接方法。
【請求項4】
請求項3に記載の肉盛溶接方法において、
前記複数の溶接ビードのうち、最初に形成する溶接ビードである第一溶接ビードを、前記金属部材と前記タブとにまたがるように形成する
肉盛溶接方法。
【請求項5】
請求項2に記載の肉盛溶接方法において、
前記複数の溶接ビードのうち、最初に形成する溶接ビードである第一溶接ビードを形成する際には、前記第一溶接ビードの幅方向における前記レーザビームのエネルギー密度が均一になるよう調節された光回折格子を用い、
前記複数の溶接ビードのうち、前記第一溶接ビードを除く溶接ビードを形成する際には、前記レーザビームのエネルギー密度が、前記隣接溶接ビード中で前記先に形成した溶接ビードに重ならない部分よりも、前記先に形成した溶接ビードに重なる部分が高くなるように調節された光回折格子を用いる
肉盛溶接方法。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一項に記載の肉盛溶接方法において、
前記隣接溶接ビードは、前記先に形成した溶接ビードの表面における最厚部を避けるように前記先に形成した溶接ビードに重なり、
前記隣接溶接ビード中で前記重なる部分における前記レーザビームのエネルギー密度は、前記重ならない部分の側に向かうにつれて増加した分布を示す
肉盛溶接方法。
【請求項7】
金属部材の補修方法において、
前記金属部材中で損傷した部分を除去する損傷部除去工程と、
損傷した部分が除かれた前記金属部材の表面に対して、請求項1から5の何れか一項に記載の肉盛溶接方法を実行する肉盛溶接工程と、
を実行する
金属部材の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減肉や亀裂等の損傷が発生した金属部材を補修するための肉盛溶接の技術の一つとして、例えば、ティグアーク溶接が知られている。ティグアーク溶接では、アーク放電を電極から連続的に発生させ、金属部材の補修箇所に形成した溶融池に溶接棒を送給し、ビードを形成することで損傷が発生した箇所を補修する。
【0003】
一方で、ティグアーク溶接と比較してエネルギー密度が高いレーザ溶接も肉盛溶接の技術の一つとして知られている。レーザ溶接では、ティグアーク溶接と比較して、金属部材中に入熱する範囲がより局所的となる。また、金属粉末を溶加材として用いるLMD(Laser Metal Deposition)では、溶接棒を用いるティグアーク溶接と比較して、溶融池が円滑に形成されるため、ビードの形成に時間を要しない。したがって、金属部材への入熱量が相対的に低くなる結果、金属部材中で溶接割れや変形等の熱損傷が発生しにくい。
【0004】
例えば、特許文献1には、レーザ肉盛溶接方法が開示されている。このレーザ肉盛溶接方法では、金属部材の表面に、ある幅の一つの肉盛ビードを形成した後、その先行の肉盛ビードの幅方向に隣り合わせて且つ幅方向端部が重なり合うように次の肉盛ビードを形成する。これにより、全体として幅広の肉盛ビードを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-167320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レーザ肉盛溶接の分野では、ビード同士が重なる部分における融合不良の発生を抑制することが要求される。
【0007】
そこで、本開示は、金属部材への熱影響を抑えつつ、溶接ビード同士が重なる部分における融合不良の発生を抑制可能な肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての肉盛溶接方法は、金属部材の表面に、溶接金属粉末を供給しつつレーザビームを照射して、前記金属部材の表面に肉盛溶接する肉盛溶接方法において、前記レーザビームにより前記溶接金属粉末を溶融及び凝固させて、溶接ビードを前記金属部材の表面上に形成する溶接ビード形成工程を繰り返し実行して、前記金属部材の表面上に複数の溶接ビードを形成し、前記複数の溶接ビードは、前記溶接ビードの幅方向の一部が互いに重なり合い、先に形成した溶接ビードに隣接する溶接ビードである隣接溶接ビードを形成する際の前記レーザビームのエネルギー密度を、前記隣接溶接ビード中で前記先に形成した溶接ビードに重ならない部分よりも、前記先に形成した溶接ビードに重なる部分を高くするように調節する。
【0009】
一態様としての金属部材の補修方法は、金属部材の補修方法において、前記金属部材中で損傷した部分を除去する損傷部除去工程と、損傷した部分が除かれた前記金属部材の表面に対して、上記の肉盛溶接方法を実行する肉盛溶接工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、金属部材への熱影響を抑えつつ、溶接ビード同士が重なる部分における融合不良の発生を抑制可能な肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る溶接装置の概略構成を示す図である。(a)は溶接装置の全体の概略構成を示す概念図であり、(b)は(a)中におけるB-B線方向から溶接ヘッドを見た時の図である。
図2】本開示の実施形態に係る溶接装置が金属部材の表面上に溶接ビードを形成する時の様子を説明する図である。
図3】本開示の実施形態に係る金属部材の補修方法を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態に係る損傷部除去工程を説明するための図である。(a)は金属部材中に発生した損傷部が除去される前の状態を示しており、(b)は損傷部が除去された後の状態を示している。
図5】本開示の実施形態に係るタブ配置工程を説明するための図である。(a)は金属部材にタブが配置される前の状態を示しており、(b)はタブが配置された後の状態を示している。
図6】本開示の実施形態に係る第一工程における溶接ビード形成工程を説明するための図である。(a)は第一工程における最初の溶接ビード形成工程の開始時の状態を示しており、(b)は第一工程における最初の溶接ビード形成工程の終了時の状態を示している。
図7】本開示の実施形態に係る第一工程を説明するための図である。(a)は二回目の溶接ビード形成工程における開始時を示しており、(b)は二回目の溶接ビード形成工程における途中の状態を示している。
図8】本開示の実施形態に係る溶接ヘッドから照射されたレーザビームの幅方向におけるエネルギー密度の分布を説明するための図である。(a)は図7中におけるVIII-VIII線方向の溶接ビードの断面視であり、(b)は第一溶接ビードを形成する際の幅方向におけるエネルギー密度の分布を示しており、(c)は二回目に形成される溶接ビードの幅方向におけるエネルギー密度の分布を示している。
図9】本開示の実施形態に係る第一工程の終わりを説明するための図である。
図10】本開示の実施形態に係る第二工程を説明するための図である。(a)は第二工程で最初の溶接ビード群を形成する際の最初の溶接ビード形成工程の開始時の状態を示しており、(b)は第二工程で最初の溶接ビード群を形成する際の最後の溶接ビード形成工程の終了時の状態を示している。
図11】本開示の実施形態に係る第二工程で形成された複数の溶接ビード群の溶接方向における一断面を示した図である。
図12】本開示の実施形態に係る不要部除去工程で不要部が除去された後の様子を示した図である。
図13】本開示のその他の実施形態に係る溶接ヘッドから照射されたレーザビームのエネルギー密度の分布を示した図であり、図8で示した部分に対応した図である。
図14】本開示のその他の実施形態に係る溶接ヘッドから照射されたレーザビームのエネルギー密度の分布を示した図であり、図8で示した部分に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示による金属部材の補修方法を実施するための形態を説明する。
【0013】
本実施形態における金属部材の補修方法は、減肉や亀裂等の損傷が発生したガスタービン動静翼や分割環などの金属部材を補修するための方法である。この金属部材の補修方法では、LMD(Laser Metal Deposition)による肉盛溶接をすることが可能な溶接装置を用いて金属部材を補修する。本実施形態における金属部材は、例えば、Ni基合金などの金属によって形成されている。
【0014】
ここで、金属部材の補修方法で用いられる溶接装置について説明する。
図1に示すように、溶接装置1は、溶接ヘッド10と、コリメータ11と、光学回折素子12と、集光レンズ13と、レーザ光源14と、光伝送部15と、粉末供給源16と、シールドガス供給源17とを備えている。
【0015】
溶接ヘッド10は、金属部材の表面に溶接金属粉末を供給しつつ、レーザビームを金属部材の表面に照射する。溶接ヘッド10は、その全体が金属部材に対して一方向へ相対的に移動することができるように移動機構(図示省略)によって保持されている。
【0016】
溶接ヘッド10には、光路10aが形成されている。光路10aの一端は、溶接装置1が肉盛溶接を行う際、溶接ヘッド10における金属部材の表面に対向する先端面10bに開口している。この光路10aの開口部分は、溶接ヘッド10における光出射口10cとされている。光路10aは、光ファイバ等で形成された光伝送部15によって導かれたレーザビームを光出射口10cに導く。光伝送部15は、YAGレーザやファイバレーザ等のレーザ光源14と、光路10aの上記一端側とは反対の側の他端とを互いに接続している。光伝送部15は、レーザ光源14からのレーザビームを光路10a内に導く。
【0017】
また、溶接ヘッド10には、溶接金属粉末を金属部材の表面に供給するための粉末供給路10dが形成されている。粉末供給路10dの一端は、溶接ヘッド10の先端面10bに開口しており、粉末供給路10dの他端は、粉末供給源16に接続されている。また、溶接ヘッド10には、アルゴンガス(Ar)等のシールドガスを供給するためのシールドガス供給路10eが形成されている。シールドガス供給路10eの一端は、溶接ヘッド10の先端面10bに開口しており、シールドガス供給路10eの他端は、シールドガス供給源17に接続されている。
【0018】
なお、粉末供給路10dの開口は、例えば、溶接ヘッド10の先端面10b上に複数が並んで配置されている。図1中の(b)では、三つの粉末供給源16の開口が先端面10bに開口している場合を一例として示している。また、シールドガス供給路10eの開口は、先端面10b上で光路10aの開口及び粉末供給路10dの開口を取り囲むように環状に形成されている。
【0019】
コリメータ11は、溶接ヘッド10の光路10aに設けられている。コリメータ11は、レーザ光源14から光伝送部15を通じて光路10a内に導かれたレーザビームを平行光線のレーザビームに変換する。
【0020】
光学回折素子12(DOE:Diffractive Optical Element)は、溶接ヘッド10の光路10aにおけるコリメータ11よりも光出射口10c側に設けられている。光学回折素子12は、コリメータ11を通過することで平行光線のレーザビームをビーム状のレーザビームに整形する。本実施形態における光学回折素子12は、コリメータ11からの平行光線を長矩形状のビームに整形可能な光回折格子12aを有している。
【0021】
集光レンズ13は、溶接ヘッド10の光路10aにおける光学回折素子12よりも光出射口10c側に設けられている。集光レンズ13は、光学回折素子12によって整形されたレーザビームを集光する。集光レンズ13によって集光されたレーザビームは、光路10aを通じて光出射口10cから出射されるとともに、金属部材の表面に照射される。
【0022】
以下、金属部材の表面にレーザビームが照射される領域を「照射領域R」と称する。金属部材の表面上に仮想的に示すことができる照射領域Rの形状の一例を図1中の(b)に示す。本実施形態における照射領域Rは、例えば、長方形状を成している。
【0023】
図2に示すように、溶接ヘッド10は、金属部材100の表面100aに溶接金属粉末Pを供給しつつ、レーザビームLを金属部材100の表面100aに照射することで、供給された溶接金属粉末PがレーザビームLによって金属部材100の表面100a上で溶融され、照射領域Rに溶融池Mを形成する。この際、溶融池Mと周囲の空気との反応を抑制するためのシールドガスGがシールドガス供給路10eから供給され、供給されたシールドガスGは、溶融池Mの周囲を流れる。金属部材100の表面100a上で溶融池Mが形成されるとともに溶接ヘッド10が一方向に移動されることで、金属部材100の表面100a上で一方向に延びる溶接ビード30が形成される。以下、溶接ヘッド10が移動される一方向を「溶接方向Da」と称する。溶接方向Daは、長方形状を成す照射領域Rの短辺が延びる方向に一致する。
【0024】
この際、溶接ビード30は、肉盛溶接をするために加工された金属部材100の表面100aに形成される。溶接ビード30は、金属部材100の表面100aに接触しない表面30aを有している。金属部材100の表面100a上に形成された溶接ビード30の表面30aは、金属部材100の表面100aから離間する側へ凸となる凸曲面状を成している。
【0025】
続いて、本実施形態における金属部材100の補修方法について説明する。図3に示すように、金属部材100の補修方法では、損傷部除去工程S1と、肉盛溶接工程S2とを実行する。
【0026】
(損傷部除去工程)
はじめに、損傷部除去工程S1では、金属部材100中で損傷した部分を除去する。以下、説明の便宜上、金属部材100中の損傷した部分を単に「損傷部100b」と称する。具体的には、図4に示すように、金属部材100の表面中の上面100uにおける亀裂等の損傷部100bが発生した部分を含むように金属部材100の一部分を切削や研削等を行うことで、損傷部100bを除去する。金属部材100がガスタービンの分割環である場合、金属部材100の上面100uには、例えば、分割環の側面などを例示することができる。
【0027】
損傷部100bの除去には、例えば、グラインダー等の工具が用いられる。損傷部除去工程S1では、金属部材100から損傷部100bを除去することで、溶接装置1によって肉盛溶接の対象部分である表面100aが形成される。
図3に示すように、損傷部除去工程S1を終えた後、肉盛溶接工程S2を次に実行する。
【0028】
(肉盛溶接工程)
肉盛溶接工程S2では、損傷部除去工程S1で損傷部100bが除かれた金属部材100の表面100aに対して肉盛溶接を実行する。本実施形態における肉盛溶接方法では、タブ配置工程S20と、第一工程S21と、第二工程S22と、不要部除去工程S23とを実行する。
【0029】
(タブ配置工程)
図5に示すように、タブ配置工程S20では、金属部材100の縁100cに沿ってタブ200を設ける。タブ200は、金属部材100の表面100aを肉盛溶接する際に溶接金属粉末が金属部材100の表面100aから落下することを防止するための部材である。
【0030】
タブ200は、このタブ200の表面200aが金属部材100の表面100aと面一を成すように、金属部材100の縁100cに沿って設けられている。タブ200は、例えば、溶接等によって金属部材100と一体となるように金属部材100に固定される。
図3に示すように、タブ配置工程S20を終えた後、第一工程S21を次に実行する。
【0031】
(第一工程)
第一工程S21では、溶接ビード形成工程S30を繰り返し実行する。図6に示すように、溶接ビード形成工程S30では、レーザビームにより溶融池Mが形成され、溶融池Mに投入された溶接金属粉末が溶融・凝固することで形成された溶接ビード30を金属部材100の表面100a上に形成する。第一工程S21では、溶接ビード形成工程S30を繰り返し実行することで、金属部材100の表面100a上に複数の溶接ビード30を形成する。以下、説明の便宜上、第一工程S21で形成された複数の溶接ビード30をまとめて「溶接ビード群30g」と称する。
【0032】
溶接ビード形成工程S30では、レーザビームを金属部材100の表面100aに照射するとともに、金属部材100の表面100aに溶接金属粉末を供給しつつ、溶接ヘッド10を溶接方向Daに移動させる。これにより、金属部材100の表面100a上で溶接方向Daに延びる溶接ビード30を形成する。
【0033】
本実施形態では、説明の便宜上、溶接ビード形成工程S30を繰り返すことで金属部材100の表面100a上に形成する複数の溶接ビード30のうち、最初に形成する溶接ビード30を「第一溶接ビード301」と称する。溶接ビード形成工程S30で形成された第一溶接ビード301は、タブ200の表面200aと金属部材100の表面100aとにまたがっている。
【0034】
図7に示すように、第一溶接ビード301を形成し終えた後、この第一溶接ビード301と隣接した状態で溶接方向Daに延びる溶接ビード30を形成する。本実施形態では、説明の便宜上、溶接ビード30を形成する際に、先に形成された溶接ビード30を「既成溶接ビード31」と称し、新たに形成する溶接ビード30を「隣接溶接ビード32」と称する。したがって、二回目に形成する溶接ビード30は、既成溶接ビード31である最初に形成された第一溶接ビード301に対して、隣接溶接ビード32となる。
【0035】
図8に示すように、二回目に形成する溶接ビード30である隣接溶接ビード32と、第一溶接ビード301とは、溶接ビード30の幅方向Dwの一部が互いに重なり合っている。溶接ビード30の幅方向Dwは、長方形状を成す照射領域Rの長辺が延びる方向に一致する。
【0036】
また、隣接溶接ビード32は、第一溶接ビード301の表面30aにおける最厚部を避けるように第一溶接ビード301に重なっている。ここでいう「最厚部」とは、溶接ビード30の表面30aのうち、金属部材100の表面100aから最も離間した部分を意味する。
【0037】
ここで、隣接溶接ビード32を形成する際の、溶接ヘッド10から照射されたレーザビームのエネルギー密度は、隣接溶接ビード32中で第一溶接ビード301に重ならない部分よりも、第一溶接ビード301に重なる部分が高くなるように調節されている。
【0038】
換言すれば、照射領域Rにおける第一溶接ビード301がレーザビームによって照らされる部分は、照射領域Rにおける金属部材100の表面100aがレーザビームによって照らされる部分よりもエネルギー密度が高い。すなわち、本実施形態における第一工程S21では、溶接ビード形成工程S30が繰り返される過程で、照射領域Rにおける既成溶接ビード31がレーザビームによって照らされる部分が、照射領域Rにおける金属部材100の表面100aがレーザビームによって照らされる部分よりもエネルギー密度が高い。
【0039】
以下、説明の便宜上、照射領域Rにおける既成溶接ビード31がレーザビームによって照らされる部分を「高エネルギー領域Rh」と称し、照射領域Rにおけるこの高エネルギー領域Rhを除いた部分を「低エネルギー領域Rl」と称する。第一溶接ビード301は、金属部材100の表面100a上に形成される際、照射領域Rの高エネルギー領域Rhがタブ200の表面200a上に配置された状態で形成される。
【0040】
レーザビームのエネルギー密度は、溶接装置1の光学回折素子12が有する光回折格子12aを用いることによって調節されている。すなわち、溶接ヘッド10から出射されたレーザビームのエネルギー密度が、隣接溶接ビード32中で第一溶接ビード301に重ならない部分よりも、第一溶接ビード301に重なる部分が高くなるような光回折格子12aが採用されている。
【0041】
本実施形態では、隣接溶接ビード32中で重なる部分におけるレーザビームのエネルギー密度(高エネルギー領域Rhでのレーザビームのエネルギー密度)は、重ならない部分の側に向かうにつれて増加した分布を示している。より具体的には、隣接溶接ビード32中で重なる部分におけるレーザビームのエネルギー密度は、重ならない部分の側に向かうにつれて線形的に増加した分布を示している。
【0042】
一方、隣接溶接ビード32中で重ならない部分におけるレーザビームのエネルギー密度(低エネルギー領域Rlでのレーザビームのエネルギー密度)は、溶接ビード30の幅方向Dwで均一な分布を示している。
【0043】
図9に示すように、第一工程S21では、溶接ビード形成工程S30を二回以上繰り返すことで溶接ビード群30gを形成する。図9中では、第一工程S21で溶接ビード形成工程S30を四回繰り返した場合に形成された溶接ビード群30gを一例として示している。複数の溶接ビード30から成る溶接ビード群30gは、金属部材100の表面100aの全体を覆っている。
【0044】
第一工程S21における最後の溶接ビード形成工程S30で形成される溶接ビード30は、金属部材100の表面100aとタブ200の表面200aとにまたがっている。この際、第一工程S21における最後の溶接ビード形成工程S30で形成される溶接ビード30は、金属部材100の表面100a上に形成される際、照射領域Rの低エネルギー領域Rlが金属部材100の表面100aとタブ200の表面200aとにまたがるように配置された状態で形成される。
図3に示すように、第一工程S21を終えた後、第二工程S22を次に実行する。
【0045】
(第二工程)
第二工程S22では、溶接ビード形成工程S30を繰り返し実行する。図10に示すように、第二工程S22における溶接ビード形成工程S30では、レーザビームにより形成された溶融池Mへ投入された溶接金属粉末が溶融・凝固することにより形成された溶接ビード30を、先に形成された溶接ビード群30gの溶接ビード30の表面30a上に形成する。
【0046】
第二工程S22では、溶接ビード形成工程S30を繰り返し実行することで、第一工程S21で形成された溶接ビード群30gの上に複数の溶接ビード30を形成する。つまり、第二工程S22では、第一工程S21で形成された溶接ビード群30gの上に新たな溶接ビード群30gを形成する。図10中では、第二工程S22で溶接ビード形成工程S30を四回繰り返した場合に形成された新たな溶接ビード群30gを一例として示している。
【0047】
本実施形態では、説明の便宜上、第一工程S21で形成された溶接ビード群30gを「第一溶接ビード群301g」と称する。また、先に形成された溶接ビード群30gの上に新たな溶接ビード群30gを形成する際に、先に形成された溶接ビード群30gを「既成溶接ビード群31g」と称し、この既成溶接ビード群31gの上で層を成すように新たに形成される溶接ビード群30gを「重畳溶接ビード群32g」と称する。したがって、第二工程S22で最初に形成する溶接ビード群30gは、既成溶接ビード31である第一溶接ビード群301gに対して、重畳溶接ビード群32gとなる。
【0048】
第二工程S22では、第一溶接ビード群301gの上に重畳溶接ビード群32gを形成した後、この重畳溶接ビード群32gを既成溶接ビード群31gとして、新たな重畳溶接ビード群32gをこの既成溶接ビード群31gの上に層を成すように形成する。図11に第一工程S21で形成された第一溶接ビード群301gの上に、新たな三層の溶接ビード群30gを形成した場合を一例として示す。
【0049】
ここで、第二工程S22で形成された重畳溶接ビード群32gの幅方向Dwにおける寸法は、既成溶接ビード群31gの幅方向Dwにおける寸法よりも短い。すなわち、図11に示すように、第一工程S21で形成された第一溶接ビード群301gの幅方向Dwにおける寸法L1は、第二工程S22で最初に形成された第一溶接ビード群301gに対する重畳溶接ビード群32gの幅方向Dwにおける寸法L2よりも長い。さらに、第二工程S22で最初に形成された既成溶接ビード群31gの幅方向Dwにおける寸法L2は、この既成溶接ビード群31gに対する重畳溶接ビード群32gの幅方向Dwにおける寸法L3よりも長い。さらに、第二工程S22で二回目に形成された既成溶接ビード群31gの幅方向Dwにおける寸法L3は、この既成溶接ビード群31gに対する重畳溶接ビード群32gの幅方向Dwにおける寸法L4よりも長い。したがって、第二工程S22で形成された互いに層を成す複数の溶接ビード群30gは、重畳されるにつれて溶接ビード30の幅方向Dwにおける寸法が短くなる。
図3に示すように、第二工程S22を終えた後、不要部除去工程S23を次に実行する。
【0050】
(不要部除去工程)
不要部除去工程S23では、第二工程S22で複数の溶接ビード30から成る溶接ビード群30gを形成した後、タブ200と共に、溶接ビード30中のタブ200上に形成された部分を不要部Xとして除去する。また、不要部除去工程S23では、例えば、損傷部100bを除去する前の金属部材100の上面100uの位置よりも上方に盛り上がった溶接ビード30を不要部Xとして除去する。例えば、図11中では、金属部材100、及び溶接ビード30中に二点鎖線で示されている領域以外の部分を不要部Xとして示している。
【0051】
具体的には、図12に示すように、不要部除去工程S23では、損傷部100bを除去する前の金属部材100が有していた形状となるように不要部Xを削除することで、溶接ビード30を含んだ金属部材100を元の形状へと復旧する。不要部Xの除去には、例えば、グラインダー等の工具が用いられる。
不要部除去工程S23を終えることで、肉盛溶接方法を実行する肉盛溶接工程S2が終了する。
【0052】
(作用効果)
金属部材100の表面100aに溶接ビード30が形成された際、この溶接ビード30の表面30aは、金属部材100の表面100aから離間する側へ凸となる曲面状を成す。複数の溶接ビード30が溶接ビード30の幅方向Dwに隣接した状態で幅方向Dwの一部が互いに重なり合うように肉盛溶接を行う場合、既成溶接ビード31の表面30aに照射されたレーザビームがこの表面30a上の曲面では、金属部材100の表面100aと比べてエネルギー密度が相対的に低下する。このため、レーザビームのエネルギー密度が溶接ビード30の幅方向Dwで均一に分布せず、溶接ビード30の幅方向Dwで溶接ビード30同士が重なり合う部分への入熱量が不十分になる場合がある。
【0053】
上記によれば、隣接溶接ビード32を形成する際のレーザビームのエネルギー密度が隣接溶接ビード32中で既成溶接ビード31に重ならない部分よりも、既成溶接ビード31に重なる部分が高くなるように調節されている。これにより、レーザビームのエネルギー密度を全体的に上昇させることなく、溶接ビード30同士が重なり合う部分への入熱量を上昇させることができる。したがって、金属部材100への熱影響を抑えつつ、溶接ビード30同士が重なる部分における融合不良の発生を抑制することができる。
【0054】
また、上記によれば、光回折格子12aを用いてレーザビームのエネルギー密度が調節されるため、上記の作用をより高精度に実現することができる。
【0055】
また、上記によれば、溶接ビード30を形成する前に、金属部材100の縁100cに沿ってタブ200が設けられる。これにより、例えば、金属部材100の表面100aに溶接ビード30を形成する際、金属部材100の表面100aからの溶接金属粉末の落下が抑制される。さらに、複数の溶接ビード30が形成された後に、このタブ200と共に溶接ビード30中のタブ200上に形成された部分が除去される。これにより、金属部材100の縁100cの部分で、溶接ビード30の厚みを増加させることができる。
【0056】
また、上記によれば、金属部材100の表面100aに最初に形成する溶接ビード30である第一溶接ビード301が、金属部材100とタブ200とにまたがるように形成される。これにより、例えば、第一溶接ビード301を形成した際、第一溶接ビード301中の溶接ビード30の幅方向Dwでレーザビームのエネルギー密度が高い部分によって形成された一部をタブ200と共に除去することができる。すなわち、第一溶接ビード301中における入熱量が比較的多い部分をタブ200と共に除去することができる。したがって、第一溶接ビード301を形成する場合と他の溶接ビード30を形成する場合とで、光回折格子12aを変更させる必要がない。
【0057】
また、上記によれば、隣接溶接ビード32が、既成溶接ビード31の表面30aにおける最厚部を避けるように既成溶接ビード31に重なるとともに、隣接溶接ビード32中で重なる部分におけるレーザビームのエネルギー密度が、重ならない部分の側に向かうにつれて増加した分布を示している。すなわち、隣接溶接ビード32を形成する際の溶接ビード30同士が重なる部分におけるエネルギー密度が、幅方向Dwにおける既成溶接ビード31の表面30aの傾きが急峻になるにつれて高くなる。つまり、既成溶接ビード31の表面30aの形状に即した分布を示している。したがって、例えば溶接ビード30の幅方向Dwに均一な分布を示す場合と比較して、より適切に入熱させることができる。その結果、溶接ビード30同士が重なる部分における融合不良の発生をより抑制することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0059】
なお、図13に示すように、第一工程S21で第一溶接ビード301を形成する際には、第一溶接ビード301の幅方向Dwにおけるレーザビームのエネルギー密度が均一になるように調節された光回折格子12aを用いてもよい。この際、例えば、第一溶接ビード301を形成する場合と他の溶接ビード30を形成する場合とで、溶接装置1の光学回折素子12を取り換える操作によって互いに異なる光回折格子12aを用いてもよい。また、例えば、二台の溶接装置1を用意するとともに、これら溶接装置1が、互いに異なる光回折格子12aを有する光学回折素子12を備えていてもよい。これにより、第一溶接ビード301中における入熱量が比較的多い部分を生じさせることがない。
【0060】
また、図14に示すように、第一工程S21で複数の溶接ビード30を形成する際には、隣接溶接ビード32中で重なる部分におけるレーザビームのエネルギー密度が、重ならない部分の側に向かうにつれて指数関数的に増加した分布を示していてもよい。これにより、より適切に入熱させることができる。
【0061】
[付記]
上記実施形態に記載の肉盛溶接方法、及び金属部材の補修方法は、例えば、以下のように把握される。
【0062】
(1)第1の態様における肉盛溶接方法では、金属部材100の表面100aに、溶接金属粉末を供給しつつレーザビームを照射して、前記金属部材100の表面100aに肉盛溶接する肉盛溶接方法において、前記レーザビームにより前記溶接金属粉末を溶融及び凝固させて、溶接ビード30を前記金属部材100の表面100a上に形成する溶接ビード形成工程S30を繰り返し実行して、前記金属部材100の表面100a上に複数の溶接ビード30を形成し、前記複数の溶接ビード30は、前記溶接ビード30の幅方向Dwの一部が互いに重なり合い、先に形成した溶接ビード30に隣接する溶接ビード30である隣接溶接ビード32を形成する際の前記レーザビームのエネルギー密度を、前記隣接溶接ビード32中で前記先に形成した溶接ビード30に重ならない部分よりも、前記先に形成した溶接ビード30に重なる部分を高くするように調節する。
【0063】
これにより、レーザビームのエネルギー密度を全体的に上昇させることなく、溶接ビード30同士が重なり合う部分への入熱量を上昇させることができる。
【0064】
(2)第2の態様における肉盛溶接方法では、(1)の肉盛溶接方法であって、光回折格子12aを用いて前記レーザビームのエネルギー密度を調節してもよい。
【0065】
これにより、上記の作用をより高精度に実現することができる。
【0066】
(3)第3の態様における肉盛溶接方法では、(2)の肉盛溶接方法であって、前記溶接ビード形成工程S30の実行前に、前記金属部材100の縁100cに沿ってタブ200を設けるタブ配置工程S20と、前記複数の溶接ビード30を形成した後に、前記タブ200と共に、前記溶接ビード30中の前記タブ200上に形成された部分を除去する不要部除去工程S23と、を実行してもよい。
【0067】
これにより、金属部材100の表面100aに溶接ビード30を形成する際、金属部材100の表面100aからの溶接金属粉末の落下が抑制される。また、金属部材100の縁100cの部分で溶接ビード30の厚みを増加させることができる。
【0068】
(4)第4の態様における肉盛溶接方法では、(3)の肉盛溶接方法であって、前記複数の溶接ビード30のうち、最初に形成する溶接ビード30である第一溶接ビード301を、前記金属部材100と前記タブ200とにまたがるように形成してもよい。
【0069】
これにより、例えば、第一溶接ビード301を形成した際、第一溶接ビード301中の溶接ビード30の幅方向Dwでレーザビームのエネルギー密度が高い部分によって形成された一部をタブ200と共に除去することができる。
【0070】
(5)第5の態様における肉盛溶接方法では、(2)の肉盛溶接方法であって、前記複数の溶接ビード30のうち、最初に形成する溶接ビード30である第一溶接ビード301を形成する際には、前記第一溶接ビード301の幅方向Dwにおける前記レーザビームのエネルギー密度が均一になるよう調節された光回折格子12aを用い、前記複数の溶接ビード30のうち、前記第一溶接ビード301を除く溶接ビード30を形成する際には、前記レーザビームのエネルギー密度が、前記隣接溶接ビード32中で前記先に形成した溶接ビード30に重ならない部分よりも、前記先に形成した溶接ビード30に重なる部分が高くなるように調節された光回折格子12aを用いてもよい。
【0071】
これにより、第一溶接ビード301中における入熱量が比較的多い部分を生じさせることがない。
【0072】
(6)第6の態様における肉盛溶接方法では、(1)から(4)の何れかの肉盛溶接方法であって、前記隣接溶接ビード32は、前記先に形成した溶接ビード30の表面30aにおける最厚部を避けるように前記先に形成した溶接ビード30に重なり、前記隣接溶接ビード32中で前記重なる部分における前記レーザビームのエネルギー密度は、前記重ならない部分の側に向かうにつれて増加した分布を示してもよい。
【0073】
これにより、より適切に入熱させることができる。
【0074】
(7)第7の態様における金属部材100の補修方法では、金属部材100の補修方法において、前記金属部材100中で損傷した部分を除去する損傷部除去工程S1と、損傷した部分が除かれた前記金属部材100の表面100aに対して、(1)から(5)の何れかの肉盛溶接方法を実行する肉盛溶接工程S2と、を実行する。
【符号の説明】
【0075】
1…溶接装置 10…溶接ヘッド 10a…光路 10b…先端面 10c…光出射口 10d…粉末供給路 10e…シールドガス供給路 11…コリメータ 12…光学回折素子 12a…光回折格子 13…集光レンズ 14…レーザ光源 15…光伝送部 16…粉末供給源 17…シールドガス供給源 30…溶接ビード 30a,100a,200a…表面 30g…溶接ビード群 31…既成溶接ビード 31g…既成溶接ビード群 32…隣接溶接ビード 32g…重畳溶接ビード群 100…金属部材 100b…損傷部 100c…縁 100u…上面 200…タブ 301…第一溶接ビード 301g…第一溶接ビード群 Da…溶接方向 Dw…幅方向 G…シールドガス L…レーザビーム M…溶融池 P…溶接金属粉末 R…照射領域 Rh…高エネルギー領域 Rl…低エネルギー領域 S1…損傷部除去工程 S2…肉盛溶接工程 S20…タブ配置工程 S21…第一工程 S22…第二工程 S23…不要部除去工程 S30…溶接ビード形成工程 X…不要部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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