(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060326
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法およびポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 81/02 20060101AFI20240424BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240424BHJP
C08G 18/83 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C08G81/02
C08F8/30
C08G18/83 030
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167632
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】望月 翔太
【テーマコード(参考)】
4J031
4J034
4J100
【Fターム(参考)】
4J031AA12
4J031AB02
4J031AC09
4J031AD01
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB05
4J034HA02
4J034QB17
4J034RA08
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA27
4J100CA31
4J100HA35
4J100HA61
4J100HC59
4J100HE05
4J100HE17
4J100JA03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ポリオレフィンと極性ポリマーとのブロック共重合体の製造方法であって、安全性が高く、短工程かつ工業的に有利な条件下で、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との相溶性および機械物性に優れた共重合体を与える製造方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)および前記イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体(B)を混合する工程を含む、ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)および
前記イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体(B)
を混合する工程を含む、ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記重合体(B)の官能基が、周期表第15族、16族および17族からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む、請求項1に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記重合体(B)の官能基が、ヒドロキシ基またはアミノ基である、請求項1に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記重合体(B)が,エチレンビニルアルコール共重合体である、請求項1に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合する工程が、80~300℃で行われる、請求項1に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合する工程が、溶融混練で行われる、請求項1または5に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記変性体(A)が、主鎖の少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素二重結合末端率が20%以上であるポリオレフィン(C)と、下記一般式[I]で表される化合物(D)とを付加反応させることにより得られたものであり、前記変性体(A)が、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有し、
前記変性体(A)の製造方法が、任意の順番で、前記ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基の少なくとも1つとを付加反応させる工程a、および前記化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bを含む、請求項1または2に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【化1】
前記一般式[I]において、
sは、2~4の整数であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、
Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R
3)-であり、
R
3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、
Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基である。
【請求項8】
前記変性体(A)が、下記一般式[II]で表される、請求項7に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【化2】
前記一般式[II]において、
s、R
1、R
2、XおよびAは、請求項7で定義するとおりであり、
nは、1~3の整数であり、
s>nであり、
R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基であり、
R
7は、ポリオレフィン(C)に由来する基である。
【請求項9】
前記工程bが異性化促進剤の存在下で行われる,請求項7に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)およびエチレンビニルアルコール共重合体の溶融混練生成物を含む、ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
【請求項11】
エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造および下記一般式[III]で表される構造を有するポリオレフィンブロック共重合体を含む、請求項10に記載のポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
【化3】
前記一般式[III]において、
s、n、R
1、R
2、X、A、R
4、R
5、R
6およびR
7は、請求項8で定義するとおりであり、*は、s-n個存在し、それぞれ独立して、エチレンビニルアルコール共重合体の水酸基との反応部位である。
【請求項12】
前記エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造において、エチレンモノマー由来の単位が20mol%~60mol%、およびビニルアルコールモノマー由来の単位が40mol%~80mol%である、請求項11に記載のポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法およびポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは、成形性、機械物性、透明性、衛生性等に優れることから、フィルム、シート、繊維、不織布、成形品(容器等)、改質剤等として工業用途、生活資材用途等幅広い分野に使用されている。
【0003】
ポリオレフィンは、飽和炭化水素骨格であり無極性であることから、反応性に乏しく、樹脂の改質が難しいことが知られている。また、異樹脂との接着性および相溶性が悪いことも知られている。これらの問題を解決する方法として、過酸化物および無水マレイン酸等の不飽和ジルカルボン無水物を用いたポリオレフィン改質の方法が知られている(特許文献1および2)。
【0004】
一方、近年、主鎖の2つの末端のうち片方の末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィンへのニトリルオキシド基等の極性官能基の導入が試みられている(特許文献3)。化学反応によって末端の炭素-炭素二重結合に極性官能基を導入できれば、ポリオレフィンに反応点を導入できるため、反応性が改善される。すなわち、導入された極性官能基を異樹脂と反応させることによってブロック共重合体の製造が可能となり、他のポリマーとの接着や相溶化が可能となる。
【0005】
架橋剤および変性剤として、イソシアネート基を有する化合物は金属、木工、自動車補修塗料等に広く用いられていることが知られている(特許文献4および5)。イソシアネート基を有する化合物は、イソシアネート基の有する共鳴構造により、アミン基、ヒドロキシ基等活性水素化合物との付加反応を容易に起こすためを起こすため、種々の用途における反応剤として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-106256号公報
【特許文献2】特開平7-173229号公報
【特許文献3】国際公開第2019/107450号
【特許文献4】特開2020-62821号公報
【特許文献5】特開2021-75717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2のポリオレフィン改質方法では、過酸化物の使用により、ポリオレフィンの分子鎖切断および分子量の低下等の副反応が発生し、それに伴い機械物性の低下が生じていた。また、原料である無水マレイン酸は劇物指定されているため、代替材料が求められている。
【0008】
本発明の課題は、ポリオレフィンと極性ポリマーとのブロック共重合体の製造方法であって、安全性が高く、短工程かつ工業的に有利な条件下で、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との相溶性および機械物性に優れた共重合体を与える製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体および前記イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体を反応させることにより、安全性が高く、短工程かつ工業的に有利な条件において、相溶性および機械物性に優れたポリオレフィンブロック共重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の[1]~[12]に関する。
【0010】
[1]少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)および前記イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体(B)を混合する工程を含む、ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[2]前記重合体(B)の官能基が、周期表第15族、16族および17族からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む、[1]に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[3]前記重合体(B)の官能基が、ヒドロキシ基またはアミノ基である、[1]に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[4]前記重合体(B)が,エチレンビニルアルコール共重合体である、[1]に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[5]前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合する工程が、80~300℃で行われる、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[6]前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合する工程が、溶融混練で行われる、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[7]前記変性体(A)が、主鎖の少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素二重結合末端率が20%以上であるポリオレフィン(C)と、下記一般式[I]で表される化合物(D)とを付加反応させることにより得られたものであり、前記変性体(A)が、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有し;前記変性体(A)の製造方法が、任意の順番で、前記ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基の少なくとも1つとを付加反応させる工程a、および前記化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【化1】
前記一般式[I]において、sは、2~4の整数であり;R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり;Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R
3)-であり;R
3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり;Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基である。
[8]前記変性体(A)が、下記一般式[II]で表される、[7]に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
【化2】
前記一般式[II]において、s、R
1、R
2、XおよびAは、[7]で定義するとおりであり;nは、1~3の整数であり;s>nであり;R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基であり;R
7は、ポリオレフィン(C)に由来する基である。
[9]前記工程bが異性化促進剤の存在下で行われる,[7]または[8]に記載のポリオレフィンブロック共重合体の製造方法。
[10]少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)およびエチレンビニルアルコール共重合体の溶融混練生成物を含む、ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
[11]エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造および下記一般式[III]で表される構造を有するポリオレフィンブロック共重合体を含む、[10]に記載のポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
【化3】
前記一般式[III]において、s、n、R
1、R
2、X、A、R
4、R
5、R
6およびR
7は、[8]で定義するとおりであり、*は、s-n個存在し、それぞれ独立して、エチレンビニルアルコール共重合体の水酸基との反応部位を表す。
[12]前記エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造において、エチレンモノマー由来の単位が20mol%~60mol%、およびビニルアルコールモノマー由来の単位が40mol%~80mol%である、[11]に記載のポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全性が高く、短工程かつ工業的に有利な条件下で、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との相溶性および機械物性に優れた共重合体を与えるポリオレフィンブロック共重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例で使用したポリオレフィン変性体(A1)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図2】
図2は、実施例1のポリオレフィンブロック共重合体について、引張破壊ひずみ測定用平板状試験片を用いて作製したMD断面を2000倍の拡大倍率で観察したSEM写真である。
【
図3】
図3は、比較例1のポリプロピレンおよびエチレンビニルアルコール共重合体の混合物について、引張破壊ひずみ測定用平板状試験片を用いて作製したMD断面を2000倍の拡大倍率で観察したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「ポリエチレン」は、エチレン単位の割合が50mol%超のエチレンホモポリマーまたはエチレン-(炭素数3以上のα-オレフィン)コポリマーである。ポリエチレンは、1mol%以下のジエン化合物単位を有してもよい。
「ポリプロピレン」は、プロピレン単位の割合が50mol%以上のプロピレンホモポリマーまたはプロピレン-(エチレンもしくは炭素数4以上のα-オレフィン)コポリマーである。ポリプロピレンは、1mol%以下のジエン化合物単位を有してもよい。
「1,3-双極子官能基」とは、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、炭素-窒素三重結合等)と1,3-双極子環化付加反応を起こし得る官能基をいう。
「主鎖」とは、主鎖以外のすべての分子鎖がペンダントと見なされるような線状分子鎖をいう。
「実質的に溶媒が存在しない」とは、製造上不可避的に混入した溶媒以外の溶媒が存在しないことをいう。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0014】
<ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法>
ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法は、少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)および前記イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体(B)を混合する工程を含む。変性体(A)および重合体(B)を混合し、重合体(B)の前記求核性の官能基を変性体(A)のイソシアネート基と反応させることにより、ポリオレフィンブロック共重合体を得ることができる。本発明の製造方法では、過酸化物を使用しないため、変性体(A)の分子鎖の切断はほぼ起こらず、変性体(A)および重合体(B)がイソシアネート基と前記求核性の官能基との反応により結合するため、前記ブロック共重合体の分子量は低下しにくい。また、前記ブロック共重合体は、1分子中にポリオレフィン部と極性ポリマー部が存在するため,単にポリオレフィンと極性ポリマーを混合する場合に比べ、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との親和性および相溶性が向上する。その結果、極性モノマー由来のドメインをポリオレフィン中に微分散化することが可能となり、引張破壊ひずみ等の機械物性に優れたポリオレフィンブロック共重合体を得ることができる。
【0015】
[ポリオレフィン変性体(A)](以下、「変性体(A)」ともいう)
ポリオレフィン変性体(A)は、少なくとも1つのイソシアネート基を有する。変性体(A)のイソシアネート基は、重合体(B)の求核性の官能基と反応して、ポリオレフィンブロック共重合体を生成する。イソシアネート基は、1分子中に1個以上含まれ、好ましくは1~3個である。イソシアネート基は、変性体(A)の末端に結合していても、分子鎖の途中に結合していても、両者に結合していてもよい。変性体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
ポリオレフィン変性体(A)におけるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンは、エチレン以外のα-オレフィンをコモノマーとして0mol%超50mol%未満有してもよい。また、ジエン化合物をコモノマーとして0mol%超1mol%以下有してもよい。ジエンのコモノマーとしての含量は0mol%が好ましい。
ポリプロピレンは、プロピレン以外のα-オレフィンをコモノマーとして0mol%超50mol%以下有してもよい。また、ジエン化合物をコモノマーとして0mol%超1mol%以下有してもよい。ジエンのコモノマーとしての含量は0mol%が好ましい。
α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
ジエン化合物としては、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。
【0017】
[イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する重合体(B)](以下、「重合体(B)」ともいう)
重合体(B)は、イソシアネート基に対して求核性の官能基を有する。前記官能基は、1分子中に1個以上を有し、2個以上であってよく、多い方がよい。前記官能基は、重合体(B)の末端に結合していても、分子鎖の途中に結合していても、両者に結合していてもよい。重合体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
一般的に求核性に優れる観点から、前記官能基は、周期表第15族、16族および17族からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含むことが好ましく、周期表第15族および16族からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含むことがより好ましい。周期表第15族の原子としては、窒素、リン等が挙げられる。周期表第16族の原子としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。周期表第17族の原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
なかでも、前記官能基は、窒素または酸素を含むことが好ましく、具体的には、ヒドロキシ基またはアミノ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることが特に好ましい。前記官能基がヒドロキシ基である場合、変性体(A)と重合体(B)は、ウレタン結合により連結され、アミノ基である場合、ウレア結合により連結される。
【0019】
ヒドロキシ基を有する重合体としては、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等が挙げられる。アミノ基を有する重合体(B)としては、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基を多数有する観点から、重合体(B)は、エチレンビニルアルコール共重合体であることが特に好ましい。
【0020】
入手の容易性の観点から、エチレンビニルアルコール共重合体におけるエチレンモノマー由来の単位の下限値は、20mol%が好ましく、25mol%がより好ましく、27mol%がさらに好ましい。前記エチレンモノマー由来の単位の上限値は、60mol%が好ましく、55mol%がより好ましく、50mol%がさらに好ましい。
また、エチレンビニルアルコール共重合体におけるビニルアルコールモノマー由来の単位の下限値は、40mol%が好ましく、45mol%がより好ましく、50mol%がさらに好ましい。前記ビニルアルコールモノマー由来の単位の上限値は、80mol%が好ましく、75mol%がより好ましく、73mol%がさらに好ましい。
【0021】
エチレンビニルアルコール共重合体は、市販されており、例えば、三菱ケミカル株式会社製ソアノール(登録商標)、株式会社クラレ製エバール(登録商標)等を例示することができる。
【0022】
[ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法]
ポリオレフィンブロック共重合体の製造方法は、前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合することを含む。変性体(A)および重合体(B)の配合比率は質量基準で、99:1~50:50であることが好ましく、99:1~65:35であることがより好ましい。
【0023】
前記変性体(A)および前記重合体(B)を混合する工程は、80~300℃で行われることが好ましく、より好ましくは150~280℃、さらに好ましくは180~220℃である。
【0024】
前記変性体(A)および前記重合体(B)の反応を促進させる観点から、前記混合する工程は、溶融混練で行われることが好ましい。溶融混練の方法としては、二軸押出機、バンバリーミキサー、等の公知の装置を用いる方法が挙げられる。溶融混練の方法の詳細は、例えば、”Thermoplastic Elastomers 2nd.ed.”,Hanser Gardner Publications,1996年,p.153-190に記載されている。
溶融混練を行う場合、すべての成分を一括して溶融混練してもよく、一部の成分を溶融混練した後に残りの成分を加えて溶融混練してもよい。溶融混練は、2回以上行ってもよい。溶融混練後、追加の熱処理を行ってもよい。
【0025】
<ポリオレフィン変性体(A)の好ましい態様>
ポリオレフィン変性体(A)は、主鎖の少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素二重結合末端率が20%以上であるポリオレフィン(C)(以下、「ポリオレフィン(C)」とも記す。)と、下記一般式[I]で表される化合物(D)とを付加反応させることにより得られたものであり;前記変性体(A)が、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有することが好ましい。このような変性体(A)は、任意の順番で、前記ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基の少なくとも1つとを付加反応させる工程a、および前記化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bを含む方法により製造することができる。
【化4】
前記一般式[I]において、sは、2~4の整数であり;R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり;Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R
3)-であり;R
3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり;Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基である。
【0026】
[ポリオレフィン(C)]
ポリオレフィン(C)における「ポリオレフィン」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリオレフィン(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエチレンおよびポリプロピレンの定義は、前述のとおりである。
【0027】
ポリオレフィン(C)は、主鎖の少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合を有する。反応性の観点から、ポリオレフィン(C)における炭素-炭素二重結合末端率は、20%以上であることが好ましく、40%以上がより好ましく、60~200%がさらに好ましい。ポリオレフィン(C)は、主鎖の途中に炭素-炭素二重結合を有してもよく、側鎖の末端または途中に炭素-炭素二重結合を有してもよい。
ここで、炭素-炭素二重結合末端率は、ポリオレフィン(C)の分子鎖1本当たりの末端炭素-炭素二重結合基の存在割合を意味する。ポリオレフィン(C)がすべて、片末端のみが炭素-炭素二重結合基である場合、炭素-炭素二重結合末端率は、100%である。炭素-炭素二重結合末端率は、0~200%の値を取り得る。なお、ポリオレフィン(C)における炭素-炭素二重結合末端率の算出には、側鎖の末端における炭素-炭素二重結合を含まないものとする。
【0028】
炭素-炭素二重結合としては、ビニル基およびビニリデン基が好ましい。炭素-炭素二重結合としては、一般式[I]で表される化合物のニトリルオキシド基との反応性に優れる点から、ビニル基が好ましい。1,3-双極子官能基であるニトリルオキシド基は、立体的に大きいオレフィン結合よりも立体的に小さいオレフィン結合に対して反応性が高い。
【0029】
ポリオレフィン(C)が、主鎖の少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合を有するポリプロピレン(以下、「含二重結合ポリプロピレン」と記す。)の場合、該ポリプロピレンは、一般的に、以下に示す末端基を有する。末端がビニル基である構造としては、構造式(1-a)および(1-f)が挙げられる。末端がビニリデン基である構造としては、構造式(1-b)が挙げられる。
【化5】
【0030】
また、ポリオレフィン(C)が含二重結合ポリプロピレンの場合、該ポリプロピレンは、反応機構上、ポリマー鎖内部に規則的なモノマーユニットに加えて、次のような内部オレフィンが生成し、ポリマーを構成するモノマーユニットとなることがある。
【化6】
【0031】
ポリオレフィン(C)は、一般的には遷移金属触媒を用い、連鎖移動剤を用いないα-オレフィンの配位重合によって製造できる。通常、ポリオレフィンの製造の際には連鎖移動剤によって分子量を調節するため、ポリオレフィンの末端構造は、飽和末端である。一方、遷移金属触媒を用いる配位重合において、水素、有機アルミニウム等の連鎖移動剤を用いない場合、ポリオレフィンの停止末端は炭素-炭素二重結合となる。特に、重合温度によって分子量を調節する重合系において末端二重結合が生成しやすい。また、水素発生を伴い、主鎖の途中および側鎖にも炭素-炭素二重結合が生成し得る。これらについては、Macromolecules,第38巻,2005年,p.6988-6996やTopics in Catalysis,第7巻,1999年,p.145-163等に記載されている。
【0032】
遷移金属触媒としては、錯体触媒系(フィリップス触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒等)、チーグラー・ナッタ触媒系等が挙げられ、フィリップス触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒が好ましく、製造可能範囲が広いという点から、メタロセン触媒およびポストメタロセン触媒が特に好ましい。また、炭素-炭素二重結合末端率が上記範囲を満たせば必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。
【0033】
(炭素-炭素二重結合末端率の算出方法)
炭素-炭素二重結合末端率とは、ポリオレフィン(C)の全ポリマー鎖のうち、末端に炭素-炭素二重結合基を有する分子鎖の割合を意味する。炭素-炭素二重結合末端率の算出は、特開2021-4376号公報に記載の方法に準じて行うことができる。
【0034】
具体的には、炭素-炭素二重結合末端率は、下式によって計算される。
(炭素-炭素二重結合末端率)=(総炭素-炭素二重結合末端数)/{((総末端数)-(LCB数))÷2}×100
ここで、総炭素-炭素二重結合末端数は、1H-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素-炭素二重結合末端の総数である。総末端数は、1H-NMRおよび13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの末端の総数である。LCB数は、13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素数7以上の分岐鎖が結合する主鎖中のメチン炭素の数である。
【0035】
以下に、含二重結合ポリプロピレンについて、1H-NMRおよび13C-NMRにより、炭素-炭素二重結合末端率を特定する方法を説明する。
【0036】
1.試料調製と測定条件
試料200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)混合溶液2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解する。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用い、120℃にて行う。
炭素-炭素二重結合末端数の定量には、1H-NMRを用いる。1H-NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をする。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
飽和末端の定量には、13C-NMRを用いる。13C-NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角を45°、パルス間隔を18秒、積算回数を3072回、ブロードバンドデカップリング法で測定を実施する。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
【0037】
2.炭素-炭素二重結合末端数の算出方法
末端がビニル基である構造としては、前記構造式(1-a)および(1-f)が挙げられる。1H-NMRでは、構造式(1-a)1-プロペニルと、構造式(1-f)1-ブテニルの不飽和結合のプロトンシグナルは、1H-NMRスペクトルの5.08~4.85ppmと5.86~5.69ppmのシグナルに重なって検出される。そこで、末端ビニル基の数[Vi]は、1-プロペニルと1-ブテニルを合わせた数として、1000モノマーユニット当たりの不飽和結合量として、1H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-a)+構造式(1-f):[Vi]=Ivi×1000/Itotal
【0038】
末端がビニリデン基である構造としては、前記構造式(1-b)が挙げられる。末端ビニリデン基の数[Vd]は、プロピル-ビニリデンの数として、1000モノマーユニット当たりの不飽和結合量として、1H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-b):[Vd]=Ivd×1000/Itotal
同様にして、i-ブテニル基の数[i-ブテニル]、ビニレン末端の数[末端ビニレン]、内部ビニリデンの数[内部ビニリデン]は以下の式から求められる。
構造式(1-d):[i-ブテニル]=Iibu×1000/Itotal
構造式(1-g):[末端ビニレン]=Ivnl×1000/Itotal
構造式(1-m):[内部ビニリデン]=Iivd×1000/Itotal
【0039】
ここで、Ivi、Ivd、Iibu、IvnlおよびIivdは、それぞれ、構造式(1-a)+構造式(1-f)、構造式(1-b)、構造式(1-d)、構造式(1-g)および構造式(1-m)に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Ivi=(I5.08~4.85+I5.86~5.69)/3、
Ivd=(I4.79~4.65)/2、
Iibu=I5.30~5.08、
Ivnl=(I5.58~5.30)/2、
Iivd=(I4.85~4.79)/2
【0040】
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI5.08~4.85は5.08ppmと4.85ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
また、Itotalは、以下の式で示される量である。
Itotal=IC3+Ivi+Ivd+Iibu+Ivnl+Iivd
IC3はプロピレンに基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
IC3=1/6×Imain
Imainとは1H-NMRスペクトルの4.00~0.00pmに検出されるポリマー主鎖と飽和末端のプロトンシグナルの総和である。
【0041】
3.飽和末端の数の算出方法
下記の飽和末端の数は、1000モノマーユニット当たりの数として、13C-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-c):[i-ブチル]=Ii-butyl×1000/Itotal-C
構造式(1-e):[n-ブチル]=Inbu×1000/Itotal-C
構造式(1-h):[n-プロピル]=Inpr×1000/Itotal-C
構造式(1-i):[2,3-ジメチルブチル]=I2,3-dime×1000/Itotal-C
構造式(1-j):[3,4-ジメチルペンチル]=I3,4-dime×1000/Itotal-C
【0042】
さらに、含二重結合ポリプロピレンには、重合体内部にプロピレンの規則的な1,2挿入に基づく構造の他に、プロピレンの不規則な挿入に基づく下記の2,1結合、1,3結合をもちうる。
【化7】
【0043】
ここで、Ii-butyl、Inbu、Inpr、I2,3-dime、I3,4-dimeはそれぞれ、構造式(1-c)、構造式(1-e)、構造式(1-h)、構造式(1-i)および構造式(1-j)に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Ii-butyl=(I23.80~23.70+I25.80~25.70)/2
Inbu=I14.06~14.02
Inpr=(I14.44~14.42+I30.46~30.45)/2
I2,3-dime=(I16.21~16.17+I31.86~31.81)/2
I3,4-dime=I12.0~11.60
【0044】
また、Itotal-Cは、以下の式で示される量である。
Itotal-C=Ii-butyl+Inbu+Inpr+I2,3-dime+I3,4-dime+I1,2-P+I2,1-P+I1,3-P
I1,2-Pは、1,2挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値、I2,1-Pは、2,1挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値、I1,3-Pは、1,3挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
I1,2-P=I48.80~44.50
I2,1-P=(I35.72~35.63+I35.83~35.77)/2
I1,3-P=I37.41-37.21/2
【0045】
4.総末端数の算出方法
総末端数は、13C-NMRおよび1H-NMRのそれぞれで算出される1000モノマーユニット当たりの末端の総数であり、具体的には、1000モノマーユニット当たりの前記構造式(1-a)~構造式(1-j)までの末端の個数の総和である。
【0046】
5.LCB数の算出方法
含二重結合ポリプロピレンは、長鎖分岐(LCB)構造部分を持ち得る。
長鎖分岐数(LCB数)は、13C-NMRにより、49.00~44.33ppmのプロピレン主鎖のメチレン炭素の強度を1000に規格化したときの、31.72~31.66ppmの分岐点の炭素(メチン炭素)並びに44.09~44.03ppm、44.78~44.72ppmおよび44.90~44.84ppmの分岐点の炭素(メチン炭素)に結合する3つのメチレン炭素のシグナル積分強度を用いて下式により算出し、1000プロピレンモノマーユニット当たりの数とする。
LCB数=[(I44.09~44.03+I44.78~44.72+I44.90~44.84+I31.72~31.66)/4]/I49.00~44.33
【0047】
[一般式[I]で表される化合物(D)]
一般式[I]で表される化合物(D)は、1,3-双極子官能基であるニトリルオキシド基を有している。ニトリルオキシド基は、無触媒下でポリオレフィン(C)の不飽和結合との1,3-双極子環化付加反応を進行させることができ、イソキサゾリン骨格を形成する。また、一般式[I]で表される化合物(D)は、ニトリルオキシド基が二量化しにくく、1,3-双極子環化付加反応を進行させる点で有利である。一般式[I]で表される化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化8】
【0048】
一般式[I]において、sは、2~4の整数である。sとしては、高分子間反応を抑制する観点から、2~3の整数が好ましく、2がより好ましい。
【0049】
R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基である。炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基としては、tert-ブチル基、イソブチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基等が挙げられる。
R1およびR2としては、ニトリルオキシド基が二量化しにくい点から、炭素数6~8のアリール基が好ましい。炭素数6~8のアリール基としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、4-クロロフェニル基等が挙げられ、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
R1およびR2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R1およびR2は、分子の対称性が高くなり、化合物が固体化しやすく、室温での保存安定性に優れる点から、同じであることが好ましい。
【0050】
Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R3)-である。Xとしては、化合物の合成が容易である点から、-O-、-S-または-N(R3)-が好ましく、-O-または-S-が好ましく、-O-がより好ましい。
R3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R3としては、化合物の合成が容易である点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
Xにおける2価の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基である。前記炭化水素基における炭素原子は、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基に置き換わっていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。前記炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等の炭化水素基;炭化水素基と各種結合(-O-、-C(=O)-、-NH-、-S-、-S(=O)2-等)との組み合わせ;炭化水素基と極性官能基(ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基等)との組み合わせ;炭化水素基と各種結合と極性官能基との組み合わせ等が挙げられる。前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロシクリル基、ヘテロアリール基、アシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;部分的に前記ハロゲン原子を含有するアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0052】
一般式[I]で表される化合物(D)としては、融点が高くなりやすく、室温での保存安定性に優れる点から、下記の(i)~(ii)のニトリルオキシド化合物であってよい。
(i)一般式[I]において、sが2であり、Aが炭素数2~10のアルキレン基であるニトリルオキシド化合物。
(ii)一般式[I]において、sが2であり、Aが後述する一般式[IV]で表される基であるニトリルオキシド化合物。
【0053】
(i)のように対称性が高く、炭素鎖が短いアルキレン基を導入することによって、ニトリルオキシド化合物の融点を高めることができると考えられる。
(ii)のように対称性が高く、剛直なアリーレン基を有する一般式[IV]で表される基を導入することによって、ニトリルオキシド化合物の融点を高めることができると考えられる。
【0054】
(i)におけるAは、炭素数2~10のアルキレン基である。(i)におけるAとしては、ニトリルオキシド化合物を固体化させ、ポリオレフィンに近い融点を発現させる点から炭素数3~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~6のアルキレン基がより好ましい。
(i)におけるAとしては、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,7-ヘプチレン基、1,8-オクチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,4-シクロへキシレン基、1,4-シクロヘキサジメチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。(i)におけるAとしては、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,4-シクロヘキサジメチレン基、1,4-シクロへキシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基が好ましく、1,4-ブチレン基、1,6-ヘキシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基がより好ましい。
【0055】
(ii)におけるAは、一般式[IV]で表される基である。
-(R4′-O)t-R5′-(O-R4′)t- ・・・[IV]
【0056】
tは、0または1である。tは、ニトリルオキシド化合物の製造のしやすさの点からは、1が好ましく、ニトリルオキシド化合物の融点の点からは、0が好ましい。
R4′は、炭素数2~4のアルキレン基である。R4′としては、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基等が挙げられる。R4′としては、炭素数が小さいほどニトリルオキシド化合物の融点を高めることができる点から、1,2-エチレン基が好ましい。
【0057】
R5′は、一般式[V]で表される基または一般式[VI]で表される基である。R5′としては、ポリオレフィン(C)の変性後にポリオレフィン末端部と導入官能基の距離を長くし、ポリオレフィン変性体(A)の反応性を高める点から、一般式[VI]で表される基が好ましい。
【0058】
【0059】
R6′~R9′は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R6′とR7′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R8′とR9′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。R6′~R9′としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基およびtert-ブチル基がより好ましく、水素原子およびメチル基がさらに好ましい。
【0060】
R10′~R17′は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R10′とR11′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R12′とR13′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R14′とR15′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R16′とR17′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。R10′~R17′としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基およびtert-ブチル基がより好ましく、水素原子およびメチル基がさらに好ましい。
【0061】
uは0または1である。uは、ポリオレフィン(C)の変性後にポリオレフィン末端部と導入官能基の距離を長くし、ポリオレフィン変性体(A)の反応性を高める点から、1が好ましい。
Qは、-C(R18′)(R19′)-、-C(=O)-、-S-または-S(=O)2-である。Qとしては、溶融混練時にポリオレフィンへの溶解性が高くなる点から、-C(R18′)(R19′)-がより好ましい。
R18′およびR19′は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R18′とR19′が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。R18′とR19′が連結した例としては、1,1-シクロへキシレン基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。R18′およびR19′としては、水素原子、メチル基、エチル基およびフェニル基が好ましい。
【0062】
一般式[I]で表される化合物(D)の融点は、25~300℃が好ましく、40~280℃がより好ましく、60~260℃がさらに好ましく、80~240℃が特に好ましい。前記化合物の融点が前記範囲の下限値以上であれば、室温での運動性が低下するため、室温での保存安定性が向上する。前記化合物の融点が前記範囲の上限値以下であれば、溶融反応中に化合物が融解しやすくなり、反応性が高くなる。
一般式[I]で表される化合物の融点を25℃以上とするためには、例えば、Aに対称性の高い構造を加えて分子構造の対称性を高めたり、Aに剛直性の高い基や短鎖の基を導入したりする。
【0063】
[ポリオレフィン変性体(A)の製造方法]
ポリオレフィン変性体(A)の製造方法は、特に限定されないが、ポリオレフィン(C)と、一般式[I]で表される化合物(D)とを付加反応させることを含む方法が好ましい。該製造方法は、任意の順番で、ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基の少なくとも1つとを付加反応させる工程a、および前記化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bを含むことが好ましい。前記製造方法により、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有するポリオレフィン変性体(A)を、短工程かつ工業的に有利な条件下で製造することができる。
なかでも、ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基とを効率よく反応させる観点から、工程a、工程bの順に行うことがより好ましい。
【0064】
一般式[I]で表される化合物(D)の配合量は、ポリオレフィン(C)100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.01~8質量部がより好ましく、0.05~6質量部がさらに好ましい。また、一般式[I]で表される化合物(D)の配合量は、ポリオレフィン(C)の炭素-炭素二重結合の1当量に対して、0.1~8.0当量となる量であることが好ましく、0.5~5.0当量となる量であることがより好ましく、1.0~3.0当量となる量であることがさらに好ましい。
【0065】
(異性化促進剤)
一般式[I]で表される化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bは、異性化促進剤の存在下で行われることが好ましい。
異性化促進剤は、前記化合物(D)のニトリルオキシド基をイソシアネート基へ変換する反応を促進する成分である。異性化促進剤の存在下で、ポリオレフィン(C)と、前記化合物(D)とを付加反応させることにより、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有するポリオレフィン変性体を短工程で効率的に製造しやすくなる。
【0066】
異性化促進剤は、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オクチル酸亜鉛等の脂肪酸金属塩系等の化合物が挙げられる。異性化促進効率からステアリン酸を主骨格としたものがより好ましく、ステアリン酸カルシウムがさらに好ましい。異性化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
異性化促進剤の配合量は、ポリオレフィン(C)100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.005~8質量部がより好ましく、0.01~6質量部がさらに好ましい。また、異性化促進剤の配合量は、ポリオレフィン(C)の炭素-炭素二重結合の1当量に対して、0.005~1当量となる量であることが好ましく、0.01~0.8当量となる量であることがより好ましく、0.05~0.4当量となる量であることがさらに好ましい。
【0068】
ポリオレフィン変性体(A)は、例えば、異性化促進剤の存在下または不存在下で、ポリオレフィン(C)と一般式[I]で表される化合物(D)とを混合し、熱処理して得られる。熱処理は、溶媒中で行ってもよく、実質的に溶媒が存在しない条件下で溶融混練しながら行ってもよい。
【0069】
溶媒としては、炭化水素系のものであってもよく、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。溶媒を用いる場合、混合温度は、50~200℃が好ましく、60~180℃がより好ましく、80~150℃がさらに好ましい。溶媒を用いる場合、混合時間は、30分~24時間が好ましく、1時間~15時間がより好ましく、2時間~10時間がさらに好ましい。
【0070】
熱処理は、生産性の点から、実質的に溶媒が存在しない条件下で溶融混練し、ポリオレフィン(C)と一般式[I]で表される化合物(D)とを付加反応させることが好ましい。
【0071】
溶融混練の方法としては、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の装置を用いる方法が挙げられる。溶融混練の方法の詳細は、例えば、”Thermoplastic Elastomers 2nd.ed.”,Hanser Gardner Publications,1996年,p.153-190に記載されている。
溶融混練を行う場合、すべての成分を一括して溶融混練してもよく、一部の成分を溶融混練した後に残りの成分を加えて溶融混練してもよい。溶融混練は、2回以上行ってもよい。溶融混練後、追加の熱処理を行ってもよい。
【0072】
実質的に溶媒が存在しない場合、つまり溶融混練を行う場合、溶融混練温度は、80~300℃であることが好ましい。ポリオレフィン(C)および一般式[I]で表される化合物(D)の混合物を80~300℃で溶融混練することにより、前記ポリオレフィン(C)の二重結合と前記化合物(D)のニトリルオキシド基の少なくとも1つとを付加反応させる工程a、および前記化合物(D)におけるニトリルオキシド基の少なくとも1つをイソシアネート基へ変換する工程bを1回の操作を行うことができ、生産性の点で有利である。
溶融混練温度は、100~280℃がより好ましく、120~260℃がさらに好ましい。混練時間とは、押出機による溶融混練では滞留時間をいう。溶融混練時間は、1秒~30分が好ましく、10秒~5分がより好ましい。
【0073】
以上説明したポリオレフィン変性体(A)の製造方法にあっては、炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィンを用いているため、ポリオレフィンを工業的に有利な高温条件下にて一般式(I)で表される化合物で変性できる。
【0074】
<ポリオレフィン変性体(A)の構造>
ポリオレフィン変性体(A)は、前記ポリオレフィン変性体(A)の製造方法によって得られたものであることが好ましい。ポリオレフィン変性体(A)は、イソキサゾリン骨格およびイソシアネート基をそれぞれ少なくとも1つ有する。
【0075】
本発明の別の態様では、ポリオレフィン変性体(A)は、下記一般式[II]で表される。
【化10】
sは、2~4の整数であり、
nは、1~3の整数であり、
s>nであり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、
Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R
3)-であり、
R
3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、
Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、
R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基であり、
R
7は、ポリオレフィン(C)に由来する基である。
【0076】
一般式[II]において、sは、2~4の整数である。sは、ポリオレフィン変性体(A)の粘度上昇を抑えるという観点から、2~3の整数が好ましく、2がより好ましい。
【0077】
nは、1~3の整数である。nとしては、ポリオレフィン変性体(A)のフィラー分散剤としての使用、および他樹脂との反応によりブロックコポリマーを製造するという観点から、1~2の整数が好ましく、1が特に好ましい。ただし、s>nである。
【0078】
R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基である。R1およびR2の例としては、一般式[I]におけるR1およびR2と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0079】
Xは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R3)-であり、R3は、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。Aは、s価の少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基である。X、R3およびAの例としては、一般式[I]におけるX、R3およびAと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0080】
R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基である。炭素数1~8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基等が挙げられる。この中でも炭素数1~8のアルキル基が好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。R4としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基およびn-ヘキシル基が好ましい。R5およびR6としては、二重結合周りの立体障害を小さくし、反応性を高めるという点から、水素原子およびメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0081】
R7は、ポリオレフィン(C)に由来する基である。ポリオレフィン(C)は、上述の通りである。
【0082】
(ポリオレフィン変性体(A)の構造特定)
ポリオレフィン変性体(A)のイソキサゾリン骨格の特定は、1H-NMRにより行うことができる。具体的には、ポリオレフィン変性体(A)をo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)混合溶液および化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解する。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用い、120℃にて行う。
【0083】
図1は、実施例で使用したポリオレフィン変性体(A1)の
1H-NMRスペクトルである。ポリオレフィン変性体(A1)は、一般式[II]のR
4、R
5およびR
6がいずれも水素であるが、
図1に示すとおり、R
4の水素原子のシグナルは4.1~4.8ppmの範囲に観測され、R
5およびR
6の水素原子のシグナルは2.3~3.0ppmの範囲に観測され、これに基づき、イソキサゾリン骨格を特定することができる。R
4、R
5およびR
6が炭素数1~8のアルキル基の場合も同様に、
1H-NMRによりイソキサゾリン骨格を特定することができる。
【0084】
ポリオレフィン変性体(A)中のイソシアネート基の特定は、IR測定により行うことができる。具体的には、ポリオレフィン変性体(A)のペレットを用いて40mm×30mm×0.5mmtのプレス片を作製し、IR測定を行い、2243cm-1付近に観測されるイソシアネート基のピーク高さからイソシアネート基の吸光度を算出する。イソシアネート基のピーク高さは、2210cm-1と2310cm-1とを結んだ直線をベースラインとした場合の2243cm-1のピーク高さである。
【0085】
<ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物>
本発明の別の態様は、少なくとも1つのイソシアネート基を有するポリオレフィン変性体(A)およびエチレンビニルアルコール共重合体の溶融混練生成物を含む、ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物である。ポリオレフィン変性体(A)は、前記ポリオレフィン変性体(A)の製造方法によって得られたものであることが好ましい。
ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物は、ポリオレフィン部とエチレンビニルアルコール共重合体部との相溶性に優れ、さらに前記ブロック共重合体は、高分子量を維持できるため、得られた成形体は機械物性に優れている。
【0086】
ポリオレフィンブロック共重合体は、エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造および下記一般式[III]で表される構造を有することが好ましい。
【化11】
一般式[III]において、s、n、R
1、R
2、X、A、R
4、R
5、R
6およびR
7は前記したとおりであり;*は、s-n個存在し、それぞれ独立して、エチレンビニルアルコール共重合体の水酸基との反応部位である。
ポリオレフィンブロック共重合体は、ポリオレフィン変性体(A)のイソシアネート基とエチレンビニルアルコール共重合体の水酸基とが反応して、ウレタン結合を形成している。
【0087】
前記エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造において、エチレンモノマー由来の単位は、20mol%~60mol%であることが好ましく、25mol%~55mol%であることがより好ましく、27mol%~50mol%であることがさらに好ましい。同様に、前記エチレンビニルアルコール共重合体に由来する構造において、ビニルアルコールモノマー由来の単位は、40mol%~80mol%であることが好ましく、45mol%~75mol%であることがより好ましく、50mol%~73mol%であることが好ましい。
【0088】
ポリオレフィンブロック共重合体樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分(樹脂、フィラー、添加剤等)を配合して組成物としてもよい。
他の成分は、ポリオレフィン変性体(A)および重合体(B)の混合前、これらを混合して反応している間、または反応が完了したポリオレフィンブロック共重合体に配合することができる。また、他の成分は、ポリオレフィン変性体(A)および重合体(B)の各製造時に配合してもよい。
他の成分の配合量は、ポリオレフィンブロック共重合体100質量部に対して、通常0.001~200質量部である。
【0089】
フィラーとしては、無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン等)、有機フィラー(繊維、木粉、セルロースパウダー等)が挙げられる。
添加剤としては、酸化防止剤(フェノール系、イオウ系、リン系、ラクトン系、ビタミン系等)、耐候安定剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリジアミン系、アニリド系、ベンゾフェノン系等)、熱安定剤、光安定剤(ヒンダードアミン系、ベンゾエート系等)、帯電防止剤、造核剤、顔料、吸着剤(酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物)、金属塩化物(塩化鉄、塩化カルシウム等)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩、滑剤、鉱物油、シリコーン化合物等が挙げられる。
【0090】
<ポリオレフィンブロック共重合体の用途>
ポリオレフィンブロック共重合体は、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との相溶性および機械物性に優れており、金属、木工、自動車補修用塗料、異樹脂との接着改質剤等の分野で好適に使用することができる。
【実施例0091】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
【0092】
<物性測定、分析等>
(融点測定1)
融点測定装置(Stuart Scientific社製、SMP3)を用いて、一般式[I]で表される化合物を1℃/分の条件で昇温し、固体がすべて融解した時点での温度(℃)を、一般式[I]で表される化合物の融点とした。
(融点測定2)
ポリオレフィン(C)の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)測定によって求めた。試料の温度を一旦200℃まで上げて5分間静置した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。
【0093】
(炭素-炭素二重結合末端率の算出方法)
ポリオレフィン(C)の炭素-炭素二重結合末端率の算出は、特開2021-4376号公報に準じて行った。
試料200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)混合溶液2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用い、120℃にて行った。
【0094】
炭素-炭素二重結合末端数の定量には、1H-NMRを用いた。1H-NMRの測定条件は、試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回とした。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
飽和末端数およびLCB数の定量には、13C-NMRを用いた。13C-NMRの測定条件は、試料の温度120℃、パルス角を45°、パルス間隔を18秒、積算回数を3072回とし、ブロードバンドデカップリング法で測定を実施した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0095】
上記の1H-NMRおよび13C-NMR測定結果に基づき、明細書に記載の方法に従い、総炭素-炭素二重結合末端数、総末端数およびLCB数を算出し、以下の式から炭素-炭素二重結合末端率を算出した。
(炭素-炭素二重結合末端率)=(総炭素-炭素二重結合末端数)/{((総末端数)-(LCB数))÷2}×100
ここで、総炭素-炭素二重結合末端数は、1H-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素-炭素二重結合末端の総数である。総末端数は、1H-NMRおよび13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの末端の総数である。LCB数は、13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素数7以上の分岐鎖が結合する主鎖中のメチン炭素の数である。
【0096】
(イソキサゾリン骨格の特定)
ポリオレフィン変性体のイソキサゾリン骨格の特定は、1H-NMRにより行った。具体的には、ポリオレフィン変性体をo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)混合溶液および化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用い、120℃にて行った。
【0097】
(イソシアネート基の特定)
ポリオレフィン変性体中のイソシアネート基の特定は、IR測定により行った。具体的には、ポリオレフィン変性体のペレットを用いて40mm×30mm×0.5mmtのプレス片を作製し、IR測定を行い、2243cm-1付近に観測されるイソシアネート基のピーク高さからイソシアネート基の吸光度を算出した。イソシアネート基のピーク高さは、2210cm-1と2310cm-1とを結んだ直線をベースラインとした場合の2243cm-1のピーク高さである。
【0098】
(MFR測定)
実施例および比較例1のペレットについて、JIS K 7210に準じて、MFR(温度230℃および荷重2.16kg)の測定を行った。
【0099】
(引張破壊ひずみ測定)
成形機(東芝機械社製EC20型射出成形機)および下記の金型を用い、下記条件にて物性評価用平板状試験片を作製した。
・金型:物性評価用平板状試験片(40×80×2t(mm))1個取り。
・成形条件:成形温度200℃、金型温度40℃、射出圧力40MPa、射出時間8秒、冷却時間12秒。
作製した平板状試験片を、JIS K 7161-5Aに準拠した試験片サイズに打ち抜いた。得られたサンプルについて、JIS K 7161-1に準じて、23℃、50%RHにて引張破壊ひずみを測定した。
引張破壊ひずみが20%以上であれば、機械物性が良好であり、50%以上であれば、機械物性が特に優れていると判断した。
【0100】
<ポリオレフィン(C)>
(PP1:プロピレンホモポリマー)
[PP1の製造]
<触媒合成例1>
(1)メタロセン錯体の合成
(1-a)rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成(錯体(1-a)):
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムを、特開2012-149160号公報の合成例1の方法に準じて合成した。
【0101】
(1-b)rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成(錯体(1-b)):
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムを、特開平11―240909号公報の実施例7の方法に準じて合成した。
【0102】
(2)メタロセン触媒の調製
(2-a)イオン交換性層状ケイ酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lの3つ口フラスコに、蒸留水645.1gと98%硫酸82.6gを加え、95℃まで昇温した。この水溶液に、イオン交換性層状ケイ酸塩(モンモリロナイト、水澤化学工業社製ベンクレイKK、Al=9.78質量%、Si=31.79質量%、Mg=3.18質量%、Al/Si(モル比)=0.320、平均粒径14μm)100gを添加し、95℃で320分反応させた。320分後、蒸留水0.5Lを加えて反応を停止し、得られた反応物を濾過することでケーキ状固体物255gを得た。
このケーキ状固体物1gには、0.31gの化学処理モンモリロナイト(中間物)が含まれていた。化学処理モンモリロナイト(中間物)の化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量% Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222であった。
上記ケーキ状固体物に蒸留水1545gを加えスラリー化し、40℃まで昇温した。得られたスラリーに水酸化リチウム・水和物5.734gを固体のまま加え、40℃で1時間反応させた。1時間後、反応スラリーを濾過し、1Lの蒸留水で3回洗浄し、再びケーキ状固体物を得た。
回収したケーキ状固体物を110℃の常圧乾燥機で乾燥し、化学処理モンモリロナイト80gを得た。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%であった。
得られた化学処理モンモリロナイトは、200℃のオイルバスで2時間以上減圧乾燥を行い、以降の操作に用いた。
【0103】
(2-b)予備重合
実験は、特に断らない限り、充分に乾燥させて水分を除去した器具を用いて窒素雰囲気下で行った。1Lの3つ口フラスコに、上記(2-a)の減圧乾燥後の化学処理モンモリロナイト10gを入れ、さらにヘプタン66mLを加えた。このスラリーにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を34.0mL)を撹拌させながら加えて、その後1時間撹拌した。1時間後、得られたスラリーを、残液率が1/100になるまでヘプタンで洗浄し、全容量を50mLとし化学処理モンモリロナイトスラリーを調製した。
別の200mLフラスコで、上記錯体(1-a)105μmolをトルエン21mLに溶解し、錯体溶液1を調製した。さらに、別の200mLフラスコで、上記錯体(1-b)45μmolをトルエン9mLに溶解し、錯体溶液2を調製した。
上記化学処理モンモリロナイトスラリーにトリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.6mL)を加えた後、上記錯体溶液1を全量加えて20分間室温で撹拌した。その後、この溶液にさらにトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.25mL)を加えた後、上記錯体溶液2を全量加えて、1時間室温で撹拌した。1時後、このスラリーにヘプタンを170mL追加した後、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にした後、プロピレンを5g/時間でフィードし、撹拌しながら4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。1時間後、オートクレーブ内のスラリーを、1Lの3つ口フラスコに抜き出した。得られたスラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残ったスラリー部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて5分撹拌した。その後、撹拌しながら40℃で1時間減圧乾燥することにより予備重合触媒30.9gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.09であった。この予備重合触媒を触媒1とした。
【0104】
<重合>
20Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却し、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)18.7mLおよび水素0.85N(normal)Lを導入した。次いで、液体プロピレン5000gを導入し、63℃まで昇温した。その後、予備重合ポリマーを除いた質量で230mgの上記触媒1を高圧アルゴンでオートクレーブ内に圧送して重合を開始し、速やかに70℃まで昇温した。そのまま70℃で保持し、重合開始から1時間後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。その結果、約1730gの重合体パウダー(PP1)が得られた。PP1の炭素-炭素二重結合末端率は65.2%、融点(Tm)は156℃であった。
【0105】
<一般式[I]で表される化合物>
下記式[VII]で表される融点95℃の化合物を国際公開第2019/107450号の実施例2Aに従って合成した。
【化12】
【0106】
<異性化促進剤>
ステアリン酸カルシウム(日油株式会社製、カルシウムステアレート)
【0107】
<ポリオレフィン変性体(A1)の製造>
ポリオレフィン変性体(A1)の製造には、二軸混練機であるテクノベル社製の「KZW15」を用いた。
ポリ袋内にPP1を300g、式[VII]で表される化合物をPP1の炭素-炭素二重結合に対して2当量、およびステアリン酸カルシウムをPP1の炭素-炭素二重結合に対して0.10当量混合し、混合物を得た。
あらかじめ180℃まで熱したKZW15のフィーダー内に、前記混合物を全量投入し、スクリュー回転数400rpmにて反応を開始した。溶融混練を10秒行った後、ダイ出口より得られたストランドをカットし、ポリオレフィン変性体(A1)のペレットを回収した。
【0108】
得られたペレットを用いて40mm×30mm×0.5mmtのプレス片を作製し、IR測定を行ったところ、2243cm
-1付近に観測されるイソシアネート基のピークを確認した。
ポリオレフィン変性体(A1)の
1H NMRスペクトルを
図1に示す。
図1に示すとおり、一般式[II]におけるR
4の水素原子のシグナルは4.1~4.8ppmの範囲に観測され、R
5およびR
6の水素原子のシグナルは2.3~3.0ppmの範囲に観測され、これに基づき、イソキサゾリン骨格の存在を確認することができた。
【0109】
実施例1
ポリオレフィン変性体(A1)のペレット240g、およびエチレンビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」とも記す)(B1)のペレット(ソアノール(登録商標)A4412B、三菱ケミカル株式会社製、エチレン含量:44mol%、ビニルアルコール含量:56mol%)60gを混合し、あらかじめ190℃まで熱したKZW15のフィーダー内に、前記混合物を全量投入し、スクリュー回転数400rpmにて反応を開始した。溶融混練を10秒行った後、ダイ出口より得られたストランドをカットし、重合体1をペレットとして回収した。
【0110】
実施例2
ポリオレフィン変性体(A1)のペレットおよびEVOH(B1)のペレットの配合量を各々150gに変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体2をペレットとして回収した。
【0111】
比較例1
ポリオレフィン変性体(A1)のペレットの代わりにPP1を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合体C1をペレットとして回収した。
【0112】
比較例2
ポリオレフィン変性体(A1)のペレットの代わりにPP1を使用した以外は、実施例2と同様にして、重合体C2をペレットとして回収した。
【0113】
実施例1および2並びに比較例1および2の配合並びにMFRおよび引張破壊ひずみの測定結果を表1に示す。
【0114】
【0115】
<考察>
表1に示すように、ポリオレフィン変性体(A1)およびEVOH(B1)を溶融混練して得られた実施例1および2のポリオレフィンブロック共重合体は、単にプロピレンホモポリマーとEVOH(B1)との混合物を溶融混練して得られた比較例1および2に比べ、MFRが低下し、分子量が増加した結果、引張破壊ひずみが大きく向上していることがわかる。この現象は、実施例1および2では、ブロック共重合体が生成していることに由来すると考えられる。
図2および3に、それぞれ、実施例1および比較例1の重合体から得られた成形品の断面SEM写真を示す。各図の楕円で囲んだ部分を比較すると、
図3では、EVOHドメイン(写真黒色部分)が延伸し、横方向に長く伸びており、大きな塊となっているのに対し、
図2では、EVOHドメインが細かいサイズで多数存在していることがわかる。すなわち、実施例1のポリオレフィンブロック共重合体では、ポリオレフィン中のEVOHドメインの分散性が劇的に向上しており、両者の相溶性が大きく改善していることがわかる。
本発明の製造方法によって、安全性が高く、短工程かつ工業的に有利な条件下で、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との相溶性および機械物性に優れたポリオレフィンブロック共重合体を製造することができる。ポリオレフィンブロック共重合体は、金属、木工、自動車補修用塗料、異樹脂との接着改質剤等の分野で好適に使用することができる。