(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060328
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】板材固定具および固定装置
(51)【国際特許分類】
E04B 5/02 20060101AFI20240424BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240424BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
E04B5/02 F
E04B1/58 603
E04B1/00 501N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167634
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】591120088
【氏名又は名称】越井木材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】越井 潤
(72)【発明者】
【氏名】池永 豊
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA20
2E125AA57
2E125AB12
2E125AC16
2E125AC23
2E125AE16
2E125AG07
2E125AG23
2E125AG56
2E125BC06
2E125BF01
(57)【要約】
【課題】施工後の床板の水平方向のずれを効果的に抑制するとともに施工後の床板などの板材が変形しても板材のがたつきやずれが生じ難い板材固定具を提供することを目的とする。
【解決手段】床板固定具1は、縦壁部2と、縦壁部2の幅方向両側の一対の連結板部3と、連結板部3の下面に設けられた少なくとも1個の突起4を含む係止部40とを有する。連結板部3は、その下面3aが延出方向中央部を含む所定範囲において上方に湾曲することにより湾曲凹部3fを形成し、かつ、ねじを縦壁部2の貫通孔2aを通じて根太材(支持材)に対して締め付けた締付状態で湾曲凹部3fが潰れるように弾性変形可能な剛性を有する。突起4は、連結板部3の下面における所定範囲において、湾曲凹部3f内に収容され、前記締付状態で下方に進出して床板(板材)の溝内面に係合する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して所定の第1方向に延びて平行に配設されるとともに互いに対向する側面にそれぞれ前記第1方向に延びる溝が形成された2枚の板材を、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びる支持材に固定するための板材固定具であって、
前記2枚の板材の間で前記第1方向に沿って延びる縦壁部と、
前記縦壁部の幅方向両側から当該幅方向に突出し、かつ、前記縦壁部の延出方向に延びる一対の連結板部と、
前記一対の連結板部のそれぞれの前記支持材に対向する対向面から前記支持材に近づく方向に突出する係止部と
を備え、
前記縦壁部は、前記延出方向における中間部において、前記支持材に近づく方向と平行でかつ前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に貫通するとともにねじが挿通可能な内径を有する貫通孔を有し、
前記一対の連結板部のそれぞれは、前記板材の前記溝に挿入可能な厚さを有し、かつ、当該連結板部の前記対向面が前記延出方向における中央部を含む所定範囲において前記支持材から遠ざかる方向に湾曲することにより湾曲凹部を形成し、かつ、前記ねじを前記縦壁部の前記貫通孔を通じて前記支持材に対して締め付けた締付状態で前記湾曲凹部が潰れるように弾性変形可能な剛性を有し、
前記係止部は、前記連結板部の前記対向面における前記所定範囲において、前記湾曲凹部内に収容され、前記締付状態で前記支持材に近づく方向に進出して前記床板に係合する、
ことを特徴とする板材固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の板材固定具において、
前記一対の連結板部のそれぞれの前記支持材に対して反対側を向く非対向面における前記延出方向の両端部から前記溝の内側の前記支持材から遠い面に当接可能な高さ位置まで前記支持材に遠ざかる方向に突出するとともに前記第3方向に弾性変形可能な一対のバネ部をさらに備えていることを特徴とする板材固定具。
【請求項3】
請求項2に記載の板材固定具において、
前記バネ部は、根本側端部が前記連結板部に連続する板バネからなる本体部と、前記本体部の先端部から前記支持材から遠ざかる方向に突出して前記溝の内側の前記支持材から遠い面に当接する丸みを有する外表面を含む凸部とを備えている、
ことを特徴とする板材固定具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の板材固定具において、
前記縦壁部の前記貫通孔の内径は、前記ねじのねじ山の外径より大きく設定され、
前記貫通孔の内面には、前記ねじに係合可能な突出量で前記貫通孔の内側に突出するとともに前記第3方向に延びる少なくとも1本のリブが形成されている、
ことを特徴とする板材固定具。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の板材固定具において、
前記係止部は、前記連結板部の前記対向面の前記所定範囲において配置された複数の突起を含み、
前記複数の突起のそれぞれは、前記湾曲凹部内に収容されている、
ことを特徴とする板材固定具。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の板材固定具において、
前記縦壁部の延出方向両端部にそれぞれ設けられ、前記板材の側面のそれぞれに当接する当接部をさらに備え、
前記当接部は、前記板材の側面に対向する位置において、前記第3方向から見て円弧状または多角形状を呈するように面取りされた部分を有する、
ことを特徴とする板材固定具。
【請求項7】
請求項4記載の板材固定具と、
前記縦壁部の前記貫通孔に挿入されたねじと
を備え、
前記ねじのねじ山は、前記貫通孔の内面に形成された前記リブに係合している、
ことを特徴とする固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材固定具、および当該板材固定具を備えた固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに隣接して平行に配設された複数の床板を固定するために、隣接する2枚の床板の対向する側面にそれぞれ形成された溝に床板固定具の幅方向両端部をそれぞれ挿入し、当該床板固定具を介してこれら2枚の床板をそれらの下方の根太材に圧接した状態で一括して固定する工法、すなわち、床板の表面にねじや釘の頭部が露出しないで2枚の床板を固定する方法として、いわゆるノンビス工法が知られている。
【0003】
このようなノンビス工法に用いられる従来の床板固定具は、例えば、特許文献1に記載されるように、上下方向に延びる貫通孔を有し、2枚の床板の間に沿って延びる縦壁部と、当該縦壁の幅方向両側に突出する一対の連結板部と、一対の連結板部のそれぞれの長手方向両端部において上下両側に設けられた上下一対のバネ部とを有する。一対の連結板部は、それぞれ、水平方向に広がる平板状の部分であり、上面および下面が平坦である。
【0004】
この床板固定部を用いて2枚の床板を固定する場合、まず、隣接する2枚の床板の対向する側面において床板の長手方向に溝をあらかじめ形成し、2枚の床板のうちの一方の床板の溝に一対の連結板部の一方を挿入する。このとき、連結板部の上下両側のバネ部が溝の内側の上面および下面に押し当てられて床板に係合することにより、連結板部は床板の溝の内部に仮保持される。その後、他方の床板を一方の床板と平行に配置するとともに、他方の床板の溝に連結板部の他方を挿入することにより、上下両側のバネ部により連結板部は他方の床板の溝の内部にも仮保持される。
【0005】
このときの床板固定具は、縦壁部が2枚の床板に挟まれるとともに一対の連結板部が2枚の床板の溝に挿入されて上下両側のバネ部により仮保持された状態になる。その後、ねじを縦壁部の貫通孔を通して根太材にねじ込むことにより、連結板部が床板の溝の内側下面を押圧する。これにより、2枚の床板を1つの床板固定具およびねじを用いて根太材に圧接した状態で締結することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の床板固定具では、一対の連結板部は、水平方向に広がる平板状の部分であり、当該連結板部の下面が平坦であるので、ねじを締め付けた時に連結板部の平坦な下面が床板の溝の内側下面に面接触するだけなので、床板と固定具との間に強い摩擦力が得られず、施工後の床板のずれ、具体的には水平方向のずれ(特に、長手方向のずれ)を十分に抑制させることが難しい。
【0008】
また、床板が木製の場合には、経年劣化により木が痩せたときに平板状の連結板部がそれに追随して変形または移動しないので、連結板部と床板との間に隙間が生じて、床板のがたつきやずれが生じるおそれがある。一方、床板の樹脂製の場合、熱変形しやすいので、その熱変形に平板状の連結板部が追随しないので、同様に、床板のがたつきやずれが生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、施工後の床板などの板材のずれを効果的に抑制させるとともに施工後の板材が変形しても板材のがたつきやずれが生じ難い板材固定具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の板材固定具は、互いに隣接して所定の第1方向に延びて平行に配設されるとともに互いに対向する側面にそれぞれ前記第1方向に延びる溝が形成された2枚の板材を、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びる支持材に固定するための板材固定具であって、前記2枚の板材の間で前記第1方向に沿って延びる縦壁部と、前記縦壁部の幅方向両側から当該幅方向に突出し、かつ、前記縦壁部の延出方向に延びる一対の連結板部と、前記一対の連結板部のそれぞれの前記支持材に対向する対向面から前記支持材に近づく方向に突出する係止部とを備え、前記縦壁部は、前記延出方向における中間部において、前記支持材に近づく方向と平行でかつ前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向に貫通するとともにねじが挿通可能な内径を有する貫通孔を有し、前記一対の連結板部のそれぞれは、前記板材の前記溝に挿入可能な厚さを有し、かつ、当該連結板部の前記対向面が前記延出方向における前記中央部を含む所定範囲において前記支持材から遠ざかる方向に湾曲することにより湾曲凹部を形成し、かつ、前記ねじを前記縦壁部の前記貫通孔を通じて前記支持材に対して締め付けた締付状態で前記湾曲凹部が潰れるように弾性変形可能な剛性を有し、前記係止部は、前記連結板部の前記対向面における前記所定範囲において、前記湾曲凹部内に収容され、前記締付状態で前記支持材に近づく方向に進出して前記床板に係合する、ことを特徴とする。
【0011】
なお、ここでいう「湾曲凹部が潰れる」とは、完全に湾曲凹部が潰れるだけでなく、湾曲凹部が浅くなるように潰れることも含む。
【0012】
かかる構成によれば、一対の連結板部のそれぞれは、板材の溝に挿入可能な厚さを有し、かつ、当該連結板部の対向面が縦壁部の延出方向における中央部を含む所定範囲において前記支持材から遠ざかる方向に湾曲することにより湾曲凹部を形成し、かつ、ねじを縦壁部の貫通孔を通じて支持材に対して締め付けた締付状態で前記湾曲凹部が潰れるように弾性変形可能な剛性を有している。係止部は、連結板部の下面における前記所定範囲において、前記湾曲凹部内に収容され、前記締付状態で支持材に近づく方向に進出して前記床板に係合する。
【0013】
したがって、ねじを縦壁部の貫通孔を通じて支持材に締め付けた締付状態では、ねじの締結力を受けた板材固定具は、その溝に挿入された連結板部に支持材に近づく方向への力が作用する。これにより、連結板部の対向面が支持材から遠ざかる方向に湾曲して湾曲凹部が形成された状態から弾性変形することにより湾曲凹部が潰れて板材の溝の内側の支持材に近い面に沿った平坦に近づく(あるいは平坦になる)とともに当該連結板部の対向面から突出する係止部が板材の溝の内面に係止するので、板材と固定具との間に強い摩擦力が得られ、施工後の板材のずれを効果的に抑制することが可能である。
【0014】
ここで、床板のずれ防止のために、単に連結板部の平坦な面に突起等の係止部を設けた場合には、係止部が溝の内側の支持材に近い面に引っかかるので、施工時に板材固定具を板材の溝に沿ってスムーズに位置調整することが困難になるが、上記の構成では施工時の位置調整をスムーズに行うことができる。
【0015】
すなわち、上記の構成では、ねじを支持材に締め付ける前には、一対の連結板部の対向面のそれぞれは支持材から遠ざかる方向に湾曲して湾曲凹部が形成された状態であり、連結板部の対向面から支持材に近づく方向に突出する係止部が湾曲凹部内に収容されている。そのため、連結板部を床板側面の溝に挿入された状態では、係止部が溝の内側の支持材に近い面に引っかかることがなく、板材固定具を溝に沿って移動して位置調整することが可能となり、施工時の作業性を向上させることが可能である。
【0016】
しかも、ねじの締結状態において、木製の板材では経年劣化により木が痩せたとき、または樹脂製の板材が熱変形したときには、連結板部がそれに追随して締め付け前の湾曲した状態に近づこうと復元するので、連結板部による板材に対する押圧力の低下を抑制することができる。したがって、施工後に板材が変形しても連結板部の板材に対する当接状態を維持することができ、板材のがたつきやずれの発生を抑制することが可能である。
【0017】
上記の板材固定具において、前記一対の連結板部のそれぞれの前記支持材に対して反対側を向く非対向面における前記延出方向の両端部から前記溝の内側の前記支持材から遠い面に当接可能な高さ位置まで前記支持材から遠ざかる方向に突出するとともに前記第3方向に弾性変形可能な一対のバネ部をさらに備えているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、ねじの締め付け前に板材固定具の連結板部を板材の溝に挿入したときに、前記支持材から遠ざかる方向に湾曲した連結板部の対向面の延出方向両端部が溝の内側の支持材に近い面に当接するとともに、連結板部の支持材に対して反対側を向く非対向面の両端部から支持材から遠ざかる方向に突出する一対のバネ部が溝の内側の支持材から遠い面に当接する。これにより、仮保持の際の保持力が向上し、作業者が手で支えなくても固定具が板材の溝に嵌合した状態で安定して保持される。
【0019】
上記の板材固定具において、前記バネ部は、根本側端部が前記連結板部に連続する板バネからなる本体部と、前記本体部の先端部から前記支持材から遠ざかる方向に突出して前記溝の内側の前記支持材から遠い面に当接する丸みを有する外表面を含む凸部とを備えているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、板材固定具の連結板部を板材の溝に挿入したときに、バネ部では、板バネからなる本体部の先端部において前記支持材から遠ざかる方向に突出する凸部が溝の内側の支持材から遠い面に強く押し当てられる。これにより、ねじの締め付け前の仮保持の際の保持力がさらに向上し、作業者が手で支えなくても固定具が板材の溝に嵌った状態でさらに安定して保持される。しかも、凸部は丸みを有する外表面を有しているので、板材固定具を溝に沿ってスムーズに位置調整することが可能である。
【0021】
上記の板材固定具において、前記縦壁部の前記貫通孔の内径は、前記ねじのねじ山の外径より大きく設定され、前記貫通孔の内面には、前記ねじに係合可能な突出量で前記貫通孔の内側に突出するとともに前記第3方向に延びる少なくとも1本のリブが形成されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、ねじを縦壁部の当該ねじの外径よりも大きい貫通孔に挿入したときに貫通孔の内面から突出するリブにねじの複数段のねじ山が係合することより貫通孔内部に確実に仮保持される。このため、板材固定具とねじを合体した状態で、現場での移動、固定具の板材への仮組付けなどの一連の作業をスムーズに行うことが可能である。また、ねじの紛失のおそれが低減する。
【0023】
上記の板材固定具において、前記係止部は、前記連結板部の対向面の前記所定範囲において配置された複数の突起を含み、前記複数の突起のそれぞれは、前記湾曲凹部内に収容されている、のが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、係止部が連結板部の対向面において複数の突起を含む構成でも、複数の突起は、連結板部の対向面の湾曲によって形成された湾曲凹部内に収容されていることにより、ねじ締め付け前の状態では複数の突起が板材の溝の内面に確実に食い込まないので、板材固定具を板材の溝に沿ってよりスムーズに移動して位置調整することが可能である。
【0025】
上記の板材固定具において、前記縦壁部の延出方向両端部にそれぞれ設けられ、前記板材の側面のそれぞれに当接する当接部をさらに備え、前記当接部は、前記板材の側面に対向する位置において、前記第3方向から見て円弧状または多角形状を呈するように面取りされた部分を有する、のが好ましい。
【0026】
かかる構成では、ねじの締め付け前の状態で板材固定具を溝に沿って移動させる際に当接部の面取りされた部分が板材の側面に当接するので、隣接する2枚の板材を配置するにあたって、当該板材の側面を当接部に当接させるだけで隣接する2枚の板材の間の隙間を決定することができ、施工時の作業性を向上させることができる。しかも、当接部が面取りされているので、当接部が板材の側面に引っかかるおそれがなく、より容易に板材固定具の位置調整が可能になる。
【0027】
本発明の固定装置は、請求項4記載の板材固定具と、前記縦壁部の前記貫通孔に挿入されたねじとを備え、前記ねじのねじ山は、前記貫通孔の内面に形成された前記リブに係合している、ことを特徴とする。
【0028】
上記のように構成された固定装置は、貫通孔の内面にリブが形成された板材固定具と、ねじとを備え、ねじの複数段のねじ山が貫通孔の内面に形成された第3方向に延びるリブに係合することにより、ねじが貫通孔内部に確実に仮保持される。このため、板材固定具とねじを合体した状態で、現場での移動、固定具の板材への仮組付けなどの一連の作業をスムーズに行うことが可能である。また、ねじの紛失のおそれが低減する。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の板材固定具によれば、施工後の板材のずれを効果的に抑制させるとともに施工後に板材が変形しても板材のがたつきやずれが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る床板固定具を用いて複数の床板を根太材に固定した施工後の状態を示す斜視説明図である。
【
図2】
図1の床板固定具およびその周辺の拡大図である。
【
図3】
図2の床板固定具の斜め上方から斜視図である。
【
図4】
図2の床板固定具の斜め下方から斜視図である。
【
図5】
図2の床板固定具の正面図(
図2の第2方向から見た図)である。
【
図8】
図2の床板固定具の側面図(
図2の第1方向から見た図)である。
【
図11】
図10の連結板部の下面および2つの突起の部分の拡大図である。
【
図12】
図5の床板固定具にねじを仮保持した一体構造の正面図である。
【
図14】
図1の床板固定具を用いて床板を根太材に固定する作業の工程を示す床板の長手方向(第1方向)から見た断面説明図であって、ねじを仮保持した床板固定具の連結板部を2枚の床板のうちの一方の床板の溝に挿入する途中の状態を示す図である。
【
図15】
図1の床板固定具を用いて床板を根太材に固定する作業の工程を示す断面説明図であって、一方の連結板部を1枚目の床板の溝に挿入して仮保持した状態を示す図である。
【
図16】
図1の床板固定具を用いて床板を根太材に固定する作業の工程を示す断面説明図であって、2枚目の床板を1枚目の床板と平行に並べるとともに他方の連結板部を2枚目の床板の溝に挿入して仮保持した状態を示す図である。
【
図17】
図1の床板固定具を用いて床板を根太材に固定する作業の工程を示す断面説明図であって、ねじを根太材にねじ込むことにより、2枚の床板の固定が完了した状態を示す図である。
【
図18】床板の幅方向(第2方向)から見たときの
図16に示される床板の溝に挿入された連結板部が上方に湾曲した状態で仮保持されていることを示す断面説明図である。
【
図19】床板の幅方向(第2方向)から見たときの
図17に示される連結板部がねじの締め付け後に平板状に変形するとともに連結板部の下面の突起が溝の内側下面に食い込んでいることを示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の板材固定具の実施形態に係る床板固定具1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1~2には、本実施形態に係る床板固定具1を用いて複数の床板100を根太材101に固定した施工後の状態が示されている。
図1では、根太材101が1本しか示されていないが、実際の施工では、複数の根太材101が所定の第1方向D1に並んで配置され、複数の床板100が複数の床板固定具1を用いてそれぞれの根太材101に固定される。なお、床板100は本発明の「板材」に対応し、根太材は本発明の「支持材」に対応する。
【0033】
複数の床板100は、互いに隣接して所定の第1方向D1に延びて平行に配設されている。隣接する2枚の床板100の対向する側面100b、すなわち、それぞれの床板100の両側の側面100bには、第1方向D1に延びる溝100aが形成されている。当該2枚の床板100は、第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って延びる根太材101に載置され、床板固定具1により根太材101に取り付けられている。根太材101は、一般的には木製または金属製の柱状体または筒状体であるが、板状の部材でもよい。
【0034】
図1~2に示されるように、床板固定具1は、隣接する2枚の床板100の対向する側面100bのそれぞれの溝100aに後述の連結板部3を挿入して仮保持された状態で、ねじ51により根太材101に締結される。これにより、隣接する2枚の床板100を床板固定具1によって根太材101に圧接した状態で固定する工法、すなわちノンビス工法を達成することが可能である。1枚の床板100を取り付けるために用いる床板固定具1の数量や配置位置は、床板100の長さや取付強度等を考慮して適宜設定される。
【0035】
なお、床板100としては、本実施形態では木製の板が用いられているが、樹脂製の板材、またはその他のデッキに利用可能な板材(例えば、合板、厚紙、石膏ボードなど)などを用いることが可能である。
【0036】
(床板固定具1の具体的構成)
図3~9に示されるように、床板固定具1は、具体的には、所定の延出方向Xに延びる長尺の縦壁部2と、縦壁部2の幅方向Yの両側から幅方向外側にそれぞれ延びる一対の連結板部3と、連結板部3の下面3a(すなわち、根太材101に対向する対向面)に設けられた複数の突起4を含む係止部40と、連結板部3の上面3b(すなわち、根太材101に対して反対側を向く非対向面)に設けられた一対のバネ部5と、縦壁部2の延出方向のX両端部に設けられた一対の当接部6とを備える。
【0037】
なお、
図3~9に示される方向X、Y、Zは、それぞれ縦壁部2の延出方向X、縦壁部2の幅方向Y、上下方向Zを示している。これらの方向X、Y、Zは、床板固定具1の全体の延出方向、幅方向、上下方向と一致していることを考慮して、本明細書中では、適宜、床板固定具1の延出方向X、幅方向Y、上下方向Zと呼ぶ場合がある。上下方向Zは、根太材101に近づく方向と平行でかつ第1方向D1および第2方向D2と直交する第3方向である。
【0038】
縦壁部2は、2枚の床板100に挟まれた状態で第1方向D1に沿って延びることが可能な形状を有しており、縦壁形状を有する長尺の部分で構成されている。具体的には、
図5~6に示されるように、縦壁部2は、当該縦壁部2の延出方向Xにおける中心およびその周辺の部分である中間部21と、当該中間部21の延出方向Xの両側に位置する一対のテーパ部分22と、一対のテーパ部分22のそれぞれにおける中間部21に対して反対側に位置し、中間部21よりも幅が狭い一対の幅狭部分23とを有する。テーパ部分22は、中間部21に連続する部分では中間部21と同じ幅を有し、中間部21から延出方向Xに遠ざかるにつれて、幅が狭くなり、幅狭部分23に連続する部分では幅狭部分23と同じ幅になる。
【0039】
したがって、
図6に示されるように、縦壁部2を平面視で見れば、縦壁部2の延出方向Xの中間部21で最も幅が広く、当該中間部21の幅方向Yの両端面は、互いに平行を保ちながら延出方向Xに延びている。また、中間部21の延出方向Xの両側の一対のテーパ部分22は、延出方向Xの両端に向かうにつれては幅が狭くなっている。さらに、一対のテーパ部分22のそれぞれにおける中間部21に対して反対側には、中間部21よりも幅が狭い一対の幅狭部分23が一定の幅で延出方向Xに延びている。
【0040】
また、
図5に示されるように、縦壁部2は、幅方向Y(
図5の紙面垂直方向)で見た場合、全体的に略ひし形形状を有し、すなわち、縦壁部2の全体の形状では、延出方向Xの中間部で最大高さを有し、延出方向Xの両端部に行くにつれて、高さが低くなっている。
【0041】
したがって、
図5~6に示される縦壁部2は、後述の貫通孔2aが形成された中間部21の幅方向Yおよび上下方向Zの寸法を十分に確保してねじ51から押圧力に耐えうる強度を保ちながら、中間部21以外の部分、すなわち、一対のテーパ部分22および一対の幅狭部分23の幅方向Yおよび上下方向Zの寸法を小さくすることによって縦壁部2に要する材料を削減することが可能である。
【0042】
なお、
図5に示される縦壁部2の下面2c(すなわち、中間部21の下面)と連結板部3の下面3aの両端部3a1との上下方向Zの距離Bが、
図17に示される床板100の溝100aの内側下面100cと床板100の下面100eとの距離C以下であれば、
図17に示されるねじ51の締付状態では、縦壁部2の下面2cが根太材101に当接または離間する位置になる。したがって、ねじ51の締付途中で縦壁部2が根太材101に当接することによってねじ51の締付不良が生じることを防止することが可能である。
【0043】
また、
図5に示される縦壁部2の上面2e(すなわち、中間部21の上面)と連結板部3の下面3aの両端部3a1との上下方向Zの距離Dが、
図17に示される床板100の溝100aの内側下面100cと床板100の上面100fとの距離Eより短ければ、
図17に示されるねじ51の締め付け後の状態では、縦壁部2の上面2eが床板100の上面100fよりも下方の位置になり、床板固定具1およびねじ51が床板100の上面100fよりも上方に突出しないので、ねじ51が外から見えないノンビス工法を達成することが可能である。
【0044】
本実施形態では、縦壁部2における延出方向Xの長さが連結板部3と同じ長さであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、連結板部3よりも短くても長くてもよい。また、縦壁部2における上下方向の寸法についても、本発明ではとくに限定せず、連結板部3と同じ寸法(すなわち同じ厚さ)であってもよい。
【0045】
縦壁部2は、延出方向Xにおける中間部21において、上下方向Z(第3方向)に貫通するとともにねじ51が挿通可能な内径、すなわちねじ51のねじ山51aの外径よりも大きく、ねじ51の頭部51cの外径よりも小さい内径を有する貫通孔2aを有する。
【0046】
さらに、縦壁部2の上面において延出方向Xの中間部に貫通孔2aに挿入されたねじ51の頭部51c(
図12~13参照)が挿入可能な凹部2bが形成されている。凹部2bの深さは、ねじ51の頭部51cの上下方向の寸法よりも大きく設定されているので、ねじの締結状態では、頭部51cは凹部2bに完全に収容される。
【0047】
また、
図6~7、
図9、
図13に示されるように、縦壁部2の貫通孔2aの内面には、ねじ51のねじ山51a(
図13参照)に係合可能な複数(4本)のリブ2dが貫通孔2aの中心側に突出して形成されている。複数(4本)のリブ2dは、貫通孔2aの周方向に等間隔に配置され、ねじ51のねじ山51a(
図13参照)に係合可能な突出量で貫通孔2aの内側に突出するとともに上下方向Zに延びている。これらのリブ2dは、ねじ51が貫通孔2aに圧入されたときに圧潰することによりねじ51のねじ山51aに係合するように構成されている。なお、
図9および
図13に示される複数のリブ2dは、貫通孔2aの上下方向のほぼ中間位置に形成されているが、ねじ51の仮保持効果を高めるために、適宜リブ2dの位置および長さを変更してもよい。なお、リブ2dは、圧潰するだけでなく、ねじ51が貫通孔2aにねじ込まれることによりねじ山51aに係合するなどにより、ねじ51を仮保持できるものであれば具体的な構成は問わない。
【0048】
また、リブ2dは、ねじ山51aに係合可能な形態であればよく、ねじ51のねじ山51a形成部分の全体に係合可能な長さだけでなく、ねじ山51aの一部に係合する長さでもよい。また、リブ2dは、上下方向Zに断続的に伸びていてもよい。
【0049】
一対の連結板部3は、縦壁部2の幅方向Y両側から当該幅方向Yに突出し、かつ、縦壁部2の延出方向Xに延びる長尺の板状の部分である。
【0050】
図16および
図18に示されるように、一対の連結板部3のそれぞれは、床板100の溝100aに挿入可能な厚さを有する。
【0051】
具体的には、
図8に示される本実施形態の連結板部3は、幅方向Yに略平行に延びる下面3aと、縦壁部2から幅方向Y外側に離れるにしたがって下方へ下がる方向に延びる上面3bとを有しているので、連結板部3を
図8の紙面垂直方向(延出方向X)で見ればくさび形状を有している。連結板部3は、縦壁部2に幅方向Yにおいて最も近い位置で最大の厚さtを有する。この
図8に示される連結板部3の最大厚さtは、上面3bのうち縦壁部2に最も近い端部3b2と下面3aの延出方向両端部3a1との垂直距離をいう。したがって、連結板部3の下面3aと上面3bの端部3b2との距離(最大厚さt)は、床板100の溝100aの上下方向Zの幅(高さ)よりも短くなるように設定され、これにより、溝100aに連結板部3を挿入することが可能である。
【0052】
さらに、
図5および
図10に示されるように、一対の連結板部3の下面3a(対向面)のそれぞれは、当該連結板部3の延出方向Xにおける中央部C1が上方(根太材101から遠ざかる方向)に突出するように当該延出方向Xの所定範囲A(すなわち、中央部C1を含む延出方向Xの範囲)において上方に湾曲することにより湾曲凹部3fを形成している。すなわち、連結板部3の下面3aは、所定範囲Aに湾曲部分3cにより湾曲凹部3fを形成している。
【0053】
本実施形態の床板固定具1では、
図5および
図10に示されるように、連結板部3の延出方向Xの両側端部おいて、板バネからなる本体部5aを有する一対のバネ部5が配置され、当該バネ部5が上下方向Zに揺動できるように、上下方向Zに貫通する貫通孔3eが形成されている。このため、連結板部3の下面3aが湾曲して湾曲凹部3fが形成されている所定範囲Aは、延出方向Xに離間する貫通孔3eに挟まれた範囲に設定されるが、一対のバネ部5は本発明の必須の構成ではないので、一対のバネ部5が無い床板固定具の場合には、上記の湾曲凹部3fが形成される所定範囲Aよりも広く設定することが可能である。
【0054】
さらに、一対の連結板部3のそれぞれは、ねじ51を縦壁部2の貫通孔2a通じて根太材101に対して締め付けた締付状態で前記凹部3fが潰れるようにときに弾性変形可能な剛性を有する。本実施形態の床板固定具1は、上記の連結板部3の剛性を充足するために、例えば、床板固定具1の全体をガラス繊維入りのポリカーボネートなどの樹脂材料による一体成形によって製造される。
【0055】
また、本実施形態では、連結板部3において樹脂成形時の肉抜きにより
図4および
図7に示すように下方に開口する凹部3d(肉抜き部分)が延出方向Xに複数形成されており、連結板部3の曲げ剛性が弱くなっている。このため、ねじ51の締め付け時に連結板部3は弾性変形しやすい。
【0056】
係止部40は、一対の連結板部3のそれぞれの下面3aから下方に突出し、ねじ51の締付状態のときに床板100の溝100aの内側下面100cに係止する部分である。本実施形態の係止部40は、複数の突起4を含む。なお、本発明の係止部40は、複数の突起4を含む構成だけでなく、種々の形態が採用される。例えば、係止部40は、1本の突起4のみを含む構成、または突起以外の溝100aに係止可能なもの、例えば、幅方向Yまたは当該幅方向Yに傾斜する方向に延びる突条などを含む構成でもよい。
【0057】
本実施形態では、複数の突起4は、先端(すなわち、下端)が尖った円錐状の部分であり、一対の連結板部3のそれぞれの下面3aから下方に突出する。本実施形態では、1つの連結板部3当たり、10個の突起4が設けられているが、突起4は、少なくとも1つあればよい。
【0058】
図10~11に示されるように、複数の突起4は、それぞれ湾曲凹部3f内に収容されている。言い換えれば、突起4は、連結板部3の下面3aにおける延出方向Xにおける中央部C1を含む前記所定範囲A(すなわち、湾曲部分3cの範囲)の湾曲凹部3f内に収容されている。突起4は、上記の湾曲凹部3f内において、すなわち、突起4の下端4aの高さ位置が連結板部3の下面3aの延出方向Xの両端部(以下、下面両端部と呼ぶ)3a1の高さ位置以上の高さになる範囲内において、当該連結板部3の下面3aから下方に突出している。突起4は、ねじ51の締付状態で湾曲凹部3fが潰れることにより、下方に進出して床板100の溝100aの内側下面100c(
図17参照)に係合することが可能である。
【0059】
複数の突起4は、例えば、
図7に示される一対の連結板部3のぞれぞれの延出方向Xの中央領域では、中央領域よりも延出方向Xの外側の領域よりも多く配置されている。例えば、連結板部3の延出方向中間側では、幅方向Yに並ぶように3個の突起4を設けることにより、連結板部3の延出方向Xの中間側に近い位置に多く配置している。これにより、後述するように、ねじ51を締め付けることにより、多数の突起4が連結板部3の延出方向Xの中間側において床板100の溝100aの内側下面100cに食い込んで床板100の高い保持力を発生することが可能である。
【0060】
図5に示されるように、ねじ51締め付け前の状態における連結板部3の下面3aの延出方向Xにおける中央部C1の高さH1は、下面両端部3a1の高さ(水平に広がる基準面Sの高さ)よりも0.2mm以上高くなるように設定されている。また、連結板部3の下面3aからの突起4の突出量H2は、0.2mm以下に設定されている。この場合、連結板部3の下面3aの湾曲部分3cの延出方向Xにおける長さ、すなわち所定範囲Aの長さは、25~30mm程度に設定すれば、ねじ51の締め付け時に湾曲部分3cを確実に平坦にすることが可能である。
【0061】
なお、
図10に示されるように、連結板部3の下面3aに複数の肉抜き部分3dが延出方向Xに沿って形成され、下面3aの湾曲部分3cが延出方向Xにおいて不連続の場合には、不連続の湾曲部分3cを通る湾曲した仮想線Imを引き、仮想線Imに基づいて、連結板部3の下面3aの延出方向Xにおける中央部C1の高さH1を求めるとともに湾曲凹部3fの範囲を規定すればよい。
【0062】
また、本実施形態では、
図5および
図10に示されるように、複数の突起4が連結板部3の下面3aにおいて延出方向Xに離間して配置されている。
【0063】
複数の突起4のそれぞれの長さH2は、連結板部3の下面3aの湾曲部分3cの中央部C1の最大高さ位置H1から延出方向Xに向かうにつれて当該突起4の長さが短くになるように設定されている。言い換えれば、複数の突起4のそれぞれの突出量H2は、各突起4の延出方向Xの位置において、連結板部3の下面両端部3a1を通る基準面Sと上方に湾曲した連結板部3の下面3aとによって形成される上下方向Zの隙間の大きさ(連結板部3の下面3aの延出方向Xにおける中央部C1の高さが最大高さH1になる隙間の大きさ)以下になるように、設定される。
【0064】
一対のバネ部5は、
図3に示されるように、一対の連結板部3の延出方向Xのそれぞれの上面(根太材101に対して反対側を向く非対向面)における両端部から床板100の溝100aの内側上面100d(根太材101から遠い面)に当接可能な高さ位置まで上方に突出するとともに上下方向Zに弾性変形可能な部分である。
【0065】
図3に示されるように、本実施形態では、バネ部5は、板バネで構成された本体部5aと、本体部5aの先端部5a1に設けられた凸部5bとを有する。バネ部5は、樹脂材料などで連結板部3と一体成形されている。板バネからなる本体部5aは、幅方向Yに延びるとともに縦壁部2に近づくにつれて上方に向かう方向に傾斜している。本体部5aの根本側端部5a2は、連結板部3の幅方向Yの外側端部に連続している。凸部5bは、本体部5aの先端部5a1から上方に突出している。
【0066】
なお、バネ部5は、連結板部3のそれぞれの上面3bの延出方向Xの両端部から上方に突出するとともに上下方向Zに弾性変形可能なものであればよく、本発明では板バネに限定せず、ゴム製や樹脂製の軟質パッドなどを採用してもよい。
【0067】
凸部5bは、略半球状の丸みを有する外表面を有するので、ねじ51の締め付け前には、床板100の溝100aの内側上面100dに当接した状態で床板固定具1を溝100aに沿って移動して位置調整しても、凸部5bが上記内側上面100dに引っかかるおそれがない。
【0068】
図3~4に示されるように、床板固定具1は、縦壁部2の延出方向Xの両端部に設けられ、幅方向Yの両端部が縦壁部2から幅方向Yの外側に突出することにより隣接する床板100の側面100bのそれぞれに当接する当接部6をさらに備える。
【0069】
当接部6は、延出方向Xから見て矩形板状の部分であり、幅方向Yの両端部は面取りされている。具体的には、
図3および
図6に示されるように、当接部6の幅方向Yの両端部において上下方向Zに延びる円弧状に面取りされた略半円柱状の面取り部分6aを有する。平面視(上下方向Zから見た場合)では、当接部6の幅は、縦壁部2のうち最も幅が広い中間部21の幅と同じに設定されているので、縦壁部2の中間部21の幅方向Yの両側面、および当該縦壁部2の延出方向Xの両端部の当接部6は床板100の側面100bに同時に当接することになる。したがって、縦壁部2の中間部21および縦壁部2の延出方向Xの両側の一対の当接部6によって、2枚の隣接する床板100を平行に案内するとともに当該2枚の床板100の隙間を一定間隔に維持することが可能である。面取り部分6aは、円弧状に面取りされた構成だけでなく、幅方向Yの内側へ向かうにつれて延出方向Xに向かう方向に傾斜した斜面で構成されてもよい。
【0070】
(床板固定具1を用いた床板100の固定方法)
上記のように構成された床板固定具1を用いて、隣接する2枚の床板100を固定する場合、以下の手順で行われる。
【0071】
まず、予備段階として、
図12~13に示されるように、ねじ51を床板固定具1の縦壁部2の貫通孔2aに挿入し、ねじ山51aを貫通孔2a内部のリブ2dに当該リブ2dを押し潰しながらねじ込みまたは押し込んで係合することにより、ねじ51を床板固定具1に仮保持した状態にしておく。なお、このように、ねじ51を床板固定具1にあらかじめ仮保持しておけば、ねじ51および床板固定具1が合体した1つの固定装置60を構成することが可能になり、この状態で保管および輸送することができるので便利であり、施工現場の作業性も向上する。
【0072】
ついで、
図14に示されるように、第2方向D2に延びる根太材101の上に1枚目の床板100を当該根太材101に直交する方向(
図14の紙面垂直方向、
図1の第1方向D1)に配置する。
【0073】
そして、ねじ51を仮保持した床板固定具1を、
図1の根太材101の上の所定の位置で床板100の溝100aに仮保持する。
図1では1本の根太材101しか示されていないが、実際の施工では、第1方向D1に並ぶ複数の根太材101のそれぞれの上方の位置において、複数の床板固定具1を床板100の溝100aに仮保持する。なお、
図14~17に示される床板固定具1は、縦壁部2については延出方向Xにおける中央に形成された貫通孔2aを通る断面が示され、連結板部3については延出方向Xにおける端部であってバネ部5が形成されている部分の断面が示されている。
【0074】
具体的には、まず、ねじ51を仮保持した床板固定具1の一方の連結板部3を、床板100の側面100bの溝100aに挿入する。連結板部3を溝100aに挿入するときに、縦壁部2の延出方向Xの中間部21の側面、および一対の当接部6の丸みを有する面取り部分6a(
図3および
図6参照)を床板100の側面100bに当接することにより、床板固定具1の延出方向Xを床板100が延びる第1方向D1に一致させることが可能である。
【0075】
連結板部3を溝100aに挿入完了後は、
図15および
図18に示される状態になる。この状態では、連結板部3が上方に湾曲して湾曲凹部3fが形成された状態であり、突起4が湾曲凹部3fに収容されている。このような突起4が収容された状態では、突起4の下端が溝100aの内側下面100cから離間しているか、または突起4の下端と下面両端部3a1が同じ高さの場合はわずかに接している。そのため、突起4が溝100aの内側下面100cに引っかかることがなく、床板固定具1を溝100aに沿ってスムーズに移動して根太材101の上の所定の位置に配置されるように位置調整することが可能である。
【0076】
また、
図15および
図18に示される状態では、上方に湾曲した連結板部3の下面両端部3a1が溝100aの内側下面100cに当接するとともに上面3bの中間部3b1が溝100aの内側上面100dに当接する。それととともに、連結板部3の上面3bの両端部から上方に突出する一対のバネ部5では、板バネからなる本体部5aが下方に撓められた状態で半球状の凸部5bが溝100aの内側上面100dに当接する。これにより、ねじ51の締め付け前に床板固定具1を床板100の溝100aに挿入した仮保持状態では溝100aの内面に5点(すなわち、連結板部3の下面両端部3a1、上面3bの中間部3b1、および一対のバネ部5)で支持されている。したがって、床板固定具1は、床板100が延びる第1方向D1(
図1参照)に離間して配置された複数の根太材101の上の所定位置でそれぞれ安定した状態で仮保持される。これにより、作業員が手で保持しなくても、複数の床板固定具1が床板100の溝100aに仮保持された状態が維持される。
【0077】
ついで、
図16に示されるように、根太材101の上に2枚目の床板100(
図16の左側の床板100)を1枚目の床板100と隣り合って平行になるように配置する。そして、2枚目の床板100を1枚目の床板100に近づけることにより、ねじ51を仮保持した床板固定具1の他方の連結板部3を、2枚目の床板100の側面100bの溝100aに挿入する。このとき、2枚目の床板100はその側面100bが複数の縦壁部2の中間部21の側面、および一対の当接部6の丸みを有する面取り部分6a(
図3および
図6参照)に当接するまで、スライドさせる。これにより、2枚目の床板100は、1枚目の床板100に対して均等な隙間を介して隣接した状態で並置される。
【0078】
この
図16に示される状態でも、2枚の床板100の溝100aにそれぞれ挿入された一対の連結板部3が上方に湾曲して湾曲凹部3fが形成されるとともに突起4が湾曲凹部3fに収容された状態にあるので、突起4が溝100aの内側下面100cに引っかかることがなく、床板固定具1を溝100aに沿ってスムーズに移動して位置調整することが可能である。
【0079】
その後、
図17に示されるように、2枚の床板100の隙間からドライバーなどの工具でねじ51を回転させることにより、ねじ51が縦壁部2の貫通孔2aを貫通した状態で、当該ねじ51の先端部51bが根太材101にねじ込まれる。
図1では1本の根太材101しか示されていないが、実際の施工では、第1方向D1に並ぶ複数の根太材101のそれぞれにねじ51による締結が行われる。
【0080】
ねじ51の締め付け時には、
図17および
図19に示されるように、ねじ51の頭部51cが縦壁部2を押し下げることによって、床板固定具1は、ねじ51の締結力を受けて、一対の連結板部3が2枚の床板100の溝100aにそれぞれ挿入された状態で下方へ移動する。これにより、連結板部3が上方に湾曲して湾曲凹部3fが形成された状態から弾性変形して湾曲凹部3fが潰れて床板100の溝100aの内側下面100cに沿った平坦な状態になるとともに当該連結板部3の下面3aから突出する突起4が床板100の溝100aの内面に係止するので強い保持力が得られる。
【0081】
なお、ねじ51の締め付けた締付状態では、縦壁部2の下面2c(
図5および
図17参照)は、根太材101から離間していても当接していてもよい。
【0082】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の床板固定具1は、
図1~2に示されるように、隣接して所定の第1方向D1に延びて平行に配設されるとともに互いに対向する側面100bにそれぞれ第1方向D1に延びる溝100aが形成された2枚の床板(板材)100を、当該2枚の床板100の下方において第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って延びる根太材(支持材)101に固定するための固定具である。
【0083】
床板固定具1は、
図3~9に示されるように、2枚の床板100の間で第1方向D1に延びる縦壁部2と、縦壁部2の幅方向Y両側から当該幅方向Yに突出し、かつ、縦壁部2の延出方向Xに延びる一対の連結板部3と、一対の連結板部3のそれぞれの下面3a(根太材101に対向する対向面)から下方(根太材101に近づく方向)に突出する少なくとも1つの突起4を備えた係止部40とを備える。
【0084】
縦壁部2は、延出方向Xにおける中間部21において、上下方向Z(第3方向)に貫通するとともにねじ51が挿通可能な内径を有する貫通孔2aを有する。
【0085】
一対の連結板部3のそれぞれは、床板100の溝100aに挿入可能な厚さtを有している。また、上記の連結板部3の下面3aは、当該連結板部3の延出方向Xにおける中央部C1を含む所定範囲Aにおいて上方(根太材101から遠ざかる方向)に湾曲することにより湾曲凹部3fを形成している。さらに、連結板部3は、ねじ51を縦壁部2の貫通孔2aを通じて根太材101に対して締め付けた締付状態で前記湾曲凹部3fが潰れるように弾性変形可能な剛性を有する。
【0086】
係止部40の突起4は、
図11に示されるように、連結板部3の下面3aにおける延出方向Xにおける所定範囲Aにおいて前記湾曲凹部3fに収容され、前記締付状態で下方に進出して床板100に係合する。
【0087】
かかる構成によれば、一対の連結板部3のそれぞれは、床板100の溝100aに挿入可能な厚さtを有し、かつ、当該連結板部3の下面3aが延出方向Xにおける中央部C1を含む所定範囲Aにおいて上方に湾曲することにより湾曲凹部3fを形成し、かつ、ねじ51を縦壁部2の貫通孔2aを通じて根太材101に対して締め付けた締付状態で前記湾曲凹部3fが潰れるように弾性変形可能な剛性を有する。係止部40の突起4は、連結板部3の下面3aにおける所定範囲Aにおいて、前記湾曲凹部3fに収容され、前記締付状態で下方に進出して床板100に係合する。
【0088】
したがって、
図17および
図19に示されるように、ねじ51を縦壁部2の貫通孔2aを通じて根太材101に締め付けた締付状態では、ねじ51の締結力を受けた床板固定具1は、連結板部3が溝100aに挿入された状態で下方へ移動する。そして、溝100aに挿入された連結板部に下方への力が作用する。これにより、連結板部3の下面3aが上方に湾曲して湾曲凹部3fが形成された状態から弾性変形することにより湾曲凹部3fが潰れて床板100の溝100aの内側下面100cに沿った平坦に近づく(あるいは平坦になる)とともに当該連結板部3の下面3aから突出する係止部40の突起4が床板100の溝100aの内面(内側下面100c)に係止するので、床板100と床板固定具1との間に強い摩擦力が得られ、施工後の床板100のずれ、具体的には水平方向(すなわち、長手方向である第1方向D1およびそれに直交する第2方向D2の両方)のずれを効果的に抑制することが可能である。
【0089】
この構成では、
図15および
図18に示されるように、ねじ51を根太材101に締め付ける前には、一対の連結板部3の下面3aのそれぞれは上方に湾曲して湾曲凹部3fが形成された状態であり、連結板部3の下面3aから下方に突出する係止部40の突起4が湾曲凹部3f内に収容されている。そのため、連結板部3を床板側面100bの溝100aに挿入された状態では、突起4が溝100aの内側下面100cに引っかかることがなく、床板固定具1を溝100aに沿って移動して位置調整することが可能となり、施工時の作業性を向上させることが可能である。
【0090】
したがって、上記の構成では、施工後の床板100の水平方向のずれを効果的に抑制するとともに施工時の床板固定具1の溝100aに沿った位置調整を許容することを達成することが可能である。
【0091】
しかも、ねじ51の締付状態において、木製の床板では経年劣化により木が痩せたとき、または樹脂製の床板が熱変形したときには、連結板部3がそれに追随して締め付け前の湾曲した状態に近づこうと復元するので、連結板部3による床板100に対する押圧力の低下を抑制することができる。したがって、施工後に床板100が変形しても連結板部3の床板100に対する当接状態を維持することができ、床板100のがたつきやずれの発生を抑制することが可能である。
【0092】
(2)
本実施形態の床板固定具1は、一対の連結板部3のそれぞれの上面3b(根太材101に対して反対側を向く非対向面)における延出方向Xの両端部から床板100の溝100aの内側上面100d(根太材101から遠い面)に当接可能な高さ位置まで上方(根太材101から遠ざかる方向)に突出するとともに上下方向Z(第3方向)に弾性変形可能な一対のバネ部5を備えている。
【0093】
かかる構成によれば、
図15および
図18に示されるように、ねじ51の締め付け前に床板固定具1の連結板部3を床板100の溝100aに挿入したときに、上方に湾曲した連結板部3の下面3aの延出方向Xの両端部(下面両端部3a1)が溝100aの内側下面100cに当接するとともに、連結板部3の上面3bの両端部から上方に突出する一対のバネ部5が溝100aの内側上面100dに当接する。これにより、仮保持の際の保持力が向上し、作業者が手で支えなくても固定具が床板100の溝100aに嵌合した状態で安定して保持される。
【0094】
また、ねじ締め付け後では、連結板部3の下面3aの突起4が溝100aの内側下面100cに食い込んだ状態でも、連結板部3の延出方向Xにおける両端部を一対のバネ部5によって下方に押し付けるので、連結板部3の両端部の浮き(すなわち、両端部が溝100aの内側下面100cから離れること)を防止することが可能である。
【0095】
(3)
本実施形態の床板固定具1では、バネ部5は、根本側端部5a2が連結板部3(具体的には、連結板部3の幅方向Yの外側端部)に連続する板バネからなる本体部5aと、本体部5aの先端部5a1から上方に突出して床板100の溝100aの内側上面100dに当接するする丸みを有する外表面を含む凸部5bとを備えている。
【0096】
かかる構成によれば、
図15および
図18に示されるように、床板固定具1の連結板部3を床板100の溝100aに挿入したときに、バネ部5では、板バネからなる本体部5aの先端部5a1において上方に突出する凸部5bが溝100aの内側上面100dに強く押し当てられる。これにより、ねじ51の締め付け前の仮保持の際の保持力がさらに向上し、作業者が手で支えなくても床板固定具1が床板100の溝100aに嵌った状態でさらに安定して保持される。しかも、凸部5bは丸みを有する外表面を有しているので、床板固定具1を溝100aに沿ってスムーズに位置調整することが可能である。
【0097】
(4)
本実施形態の床板固定具1では、縦壁部2の貫通孔2aの内径は、ねじ51のねじ山51aの外径より大きく設定されている。貫通孔2aの内面には、ねじ51に係合可能な突出量で貫通孔2aの内側に突出するとともに上下方向Zに延びる少なくとも1本のリブ2dが形成されている。
【0098】
かかる構成によれば、
図13に示されるように、ねじ51を縦壁部2の当該ねじの外径よりも大きい貫通孔2aに挿入したときに貫通孔2aの内面から突出するリブ2dにねじ51の複数段のねじ山51aが係合することより貫通孔2a内部に確実に仮保持される。このため、床板固定具1とねじ51を合体した状態で、現場での移動、固定具の床板への仮組付けなどの一連の作業をスムーズに行うことが可能である。また、ねじ51の紛失のおそれが低減する。
【0099】
(5)
本実施形態の床板固定具1では、
図5および
図10に示されるように、係止部40は、連結板部3の下面3aの所定範囲Aにおいて複数の突起4を含む。複数の突起4のそれぞれは、前記湾曲凹部3f内に収容されている。
【0100】
かかる構成によれば、係止部40が連結板部3の下面3aにおいて複数の突起4を含む構成でも、複数の突起4は、連結板部3の下面3aの湾曲によって形成された湾曲凹部3f内に収容されていることにより、ねじ締め付け前の状態では複数の突起4が床板100の溝100aの内面に確実に食い込まないので、床板固定具1を床板100の溝100aに沿ってよりスムーズに移動して位置調整することが可能である。
【0101】
(6)
本実施形態の床板固定具1は、縦壁部2の延出方向Xの両端部にそれぞれ設けられ、床板100の側面100bのそれぞれに当接する当接部6を備える。本実施形態の当接部6は、床板100の側面100bに対向する位置において、
図3および
図6に示されるように、平面視において(上下方向Zから見て)円弧状または多角形状を呈するように面取りされた面取り部分6aを有する。
【0102】
かかる構成では、ねじ51の締め付け前の状態で床板固定具1を溝100aに沿って移動させる際に当接部6の丸みを有する面取り部分6aが床板100の側面100bに当接するので、隣接する2枚の床板100を配置するにあたって、当該床板100の側面100bを当接部6に当接させるだけで隣接する2枚の床板100の間の隙間を決定することができ、施工時の作業性を向上させることができる。しかも、当接部6が面取り部分6aを有しているので、当接部6が床板100の側面100bに引っかかるおそれがなく、より容易に床板固定具1の位置調整が可能になる。
【0103】
(7)
本実施形態の固定装置60は、
図12~13に示されるように、上記のリブ2dを備えた床板固定具1と、縦壁部2の貫通孔2aに挿入されたねじ51とを備える。ねじ51のねじ山51aは、貫通孔2aの内面に形成されたリブ2dに係合している。この構成により、ねじ51が貫通孔2a内部に確実に仮保持される。このため、床板固定具1とねじ51を合体した状態で、現場での移動、床板固定具1の床板100への仮組付けなどの一連の作業をスムーズに行うことが可能である。また、ねじ51の紛失のおそれが低減する。
【0104】
(変形例)
上記の実施形態では、板材固定具の一例として床板100を根太材101に固定する床板固定具1を例に挙げて説明しているが、本発明はこれ限定されるものではなく、壁や柵などの垂直面の施工にも本発明の板材固定具を適用することが可能である。
【0105】
例えば、住宅などの壁部分を施工する場合には、互いに離間して水平方向に延びる複数の下地材(支持材)に対して、垂直方向に延びる複数の板材を本発明の板材固定具を用いて固定することが可能である。この場合も、上記実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0106】
上記実施形態では、支持材の一例として床の根太材を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、支持材は、床の根太材、壁の下地材、柵の縦杭などを含む広い概念である。
【符号の説明】
【0107】
1 床板固定具(板材固定具)
2 縦壁部
2a 貫通孔
2d リブ
3 連結板部
3a 下面
3a1 下面両端部
3b 上面
3c湾曲部分
3f 湾曲凹部
4 突起
5 バネ部
5a 本体部
5b 凸部
6 当接部
6a 面取り部分
21 中間部
40 係止部
51 ねじ
60 固定装置
100 床板(板材)
100a 溝
100b 側面
101 根太材(支持材)
S 基準面